説明

被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物及びその成形体

【課題】熱インプリント時に優れたインプリント性及び転写性を有する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物、及び、その樹脂組成物を使用して熱インプリントを行い各種パターンを転写した樹脂成形体又は透明樹脂成形体を提供する。
【解決手段】被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、重量平均分子量が60〜180万で、分子量分布係数(Mw/Mn)=1.5〜5の高分子量熱可塑性樹脂(A)と、重量平均分子量が1〜20万で、分子量分布係数(Mw/Mn)=1.1〜5の低分子量熱可塑性樹脂(B)とを含有し、GPC法によるその樹脂組成物の分子量分布図には、[樹脂(A)の分子量分布ピーク量]:[樹脂(B)の分子量分布ピーク量]=7〜9:3〜1となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被スタンパー部材に用いる熱可塑性樹脂組成物に関し、より詳細には、熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスで、各種パターンの微細構造を転写させるに際して、優れたインプリント性及び転写性を有する被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、このような特徴を有する熱可塑性樹脂組成物を被スタンパー部材に用いて、各種パターンの微細構造を転写させてなる各種の産業分野に機能性部品として有用な樹脂成形体に関する。さらに、本発明は、このような特徴を発揮させる熱可塑性樹脂組成物の中で、特に光透明性に優れて、各種の光学部品(又は光学素子)として有用な微細構造転写されてなる透明樹脂成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オプトエレクトロデバイス、光学デバイス、半導体デバイス、デイスプレイデバイス、光記録媒体等のデバイス部材表面に施される微細構造は、一層、微細化及び/又は緻密化の傾向にある。そのような技術領域にある各種の先端材料として、例えば、超微細構造を有する半導体デバイスや、半導体レーザ、発光ダイオード、受光素子、光コネクタ、光スイッチ、回折格子光フィルター、波長光変換素子、光導波路型波長フィルター、携帯パソコン用光配線としての光導波路、波長分離多重通信方式の増幅器に用いられる利得等価フィルターなどの光学デバイスや光電子デバイス(又は非線形光電子素子)等を挙げることができる。
【0003】
また、音楽や映像の記録媒体として広く活用されているCD、DVD等の光デイスク用ピックアップレンズにおいても、次世代記録媒体であるディスクに刻まれるサブミクロンオーダーのビット情報をレーザ光で読み取る光ピックアップ光学系の重要な役割を果す構造部材として、プラスチック非球面対物レンズなども同様の技術領域にある先端材料と言える。さらに、CD、DVD等の光記録媒体は、表面に微細構造が転写した光透明性樹脂成形体であり、従来から可視光線領域(420〜750μm)における光透過率が、90%以上である光透明性に優れるPMMA、PC及びPSポリマー樹脂等が用いられている。そして、それらのメディアは高密度化が求められ、その情報信号を読み取る光ピックアップレンズも、より高精細化が求められている。また、光記録媒体の熱可塑性樹脂としては、PMMA樹脂から環状ポリオレフィン樹脂への転換も検討されている。
【0004】
このような各種のデバイス部材表面にサブミクロンオーダー乃至はナノオーダーの微細構造を形成させるために、LSI等の半導体デバイスの製造技術として開発されてきたホトリソグラフィー微細化技術が、その基盤技術として多大な貢献を果たしてきた。そのデバイス部材の表面に施す凹凸状微細構造のライン&スペース、ドット、ホールなどの各種パターンは、より微細に形成することが求められている。
【0005】
そこで、このような微細な先端技術領域に対処すべく、基盤技術としてのリソグラフィ転写に代替させて熱ナノインプリント転写法が期待されている。この熱ナノインプリント転写法では、超微細構造が施されているスタンパー材(又はモールド)に、熱溶融下に被スタンパー部材である熱可塑性樹脂を高速射出させる又は押圧又は押印させて、被スタンパー部材表面に、超微細構造を転写させるものである。
【0006】
また、このナノインプリント転写は、従来から、光ディスク製作等では良く知られていたホットエンボス転写技術を発展させて、特に重要である転写解像度を格段に高められる転写技術であるとも言われている。すなわち、従来からのホットエンボスプロセスでは、例えば、ポリカーボン基板をそのガラス転移温度より高い温度加熱下に、ニッケルモールドでプレスして、基板に0.5μm程度のパターンを転写させることができる。一方、ナノインプリントは、モールドの凹凸さえ小さくすれば、その解像度は、100nm以下、特に数10nm以下の超微細パターン転写をも可能にする。よって、ナノインプリント技術の導入は、転写解像度を格段に飛躍させる次世代転写技術として期待されているとも言える。
【0007】
このように期待されるナノインプリント転写において、スタンパー材(又は金型)の微細構造が精度良く被スタンパー材に転写されること、及び、スタンパー材からの被スタンパー部材が容易に離型することが重要な技術要素になる。スタンパー材としては、SiC、石英、GaAs及びSi(半導体)、Ta(DVD、CD用ピックアップレンズの微小プラスチック光学部品の加工用金型)が使用されている。また、携帯電話、PDAなどのデイスプレイデバイス用反射防止体用の金型等においては、基板材料に0.1μm以下の微細パターンを施こしたナノインプリント用極微細モールド(微細金型)等が使用されている。
【0008】
ナノインプリント転写法における被スタンパー部材として、[特許文献1]には、各種の有機ポリマー部材が記載されている。さらに、[特許文献1]には、フッ素化ポリイミド、ポリシラン、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート等の有機ポリマーを被スタンパー部材とする光導波路の分岐部に、ホットエンボス法により、微細加工を施したすグレーティング部を形成させた光導波路型WDM合波器が提案されている。
【0009】
また、[特許文献2]には、熱可塑性樹脂からなる厚さ1〜5mmの素材板(被スタンパー部材)に熱間プレスして、素材板の転写面に深さが0.5〜500μmの多数の溝を配列させ、その溝の配列ピッチが、その溝深さの1.5倍以上である微細構造樹脂板が提案されている。その微細構造を転写させるプレス方法として、150〜180℃、プレス圧40〜60Kg/cmの熱プレス方法が記載されている。また、熱プレス法で微細構造が転写された樹脂板として、光透過性が良好で光拡散材の配合が容易であるポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン等の光透明性熱可塑性樹脂が記載されている。
【0010】
また、[特許文献3]には、スタンパに施こされた微細パターンをポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂等の厚さ100〜200μmの熱可塑性樹脂基板に転写させた微細構造体の製造方法が記載されている。
【0011】
【特許文献1】特開2005−331582号公報
【特許文献2】特開2001−353777号公報
【特許文献3】特開2003−094445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
無機・有機の工業部材に求められる技術課題は、益々高機能化、多機能化の方向にある。CD、DVDなどの光記録媒体や、発光ダイオード、受光素子、光コネクタ、光スイッチ、回折格子光フィルター、波長光変換素子、光導波路型波長フィルター等の光学素子及び光電子素子は、その表面にはドット、ライン及びスペース等の各種パターンの超微細構造を設けて、各種の機能を有する構造部材として広く利用されている。
【0013】
このようなナノテク構造部材に施されるドット、ライン及びスペース等からなる各種パターンのサイズは、その構造部材として求められる機能にもよるが、通常、600nm以下であり、ナノサイズ領域が要求される場合は10nm〜数100nmである。従って、超微細サイズ領域の熱ナノインプリントに用いる被スタンパー部材は、転写欠陥等を発生させることなく、精度よく効果的に転写できることを要求される。
【0014】
本発明の目的は、各種パターンの微細構造を転写するときに、優れたインプリント性及び転写性を有する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を提供することである。また、本発明の目的は、このような特徴を有する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を被スタンパー部材に用いて、各種パターンの微細構造を転写した樹脂成形体を提供することである。さらに、本発明の目的は、特に光透明性に優れる被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物に、各種パターンの微細構造を転写して、各種の光学特性及び/又は各種の光電子特性に優れた透明樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
被スタンパー部材用熱可塑性樹脂は、熱圧着転写時に優れた流延性を有し、熱インプリント後に、スタンパー材からスムーズに離型又は剥離し、微細構造のパターンが明確に、精度よく安定に形成される「インプリント性」を要求される。また、被スタンパー部材用熱可塑性樹脂は、転写される微細構造の各種パターンに関して、2次元方向(転写面の面方向)において転写が偏在することなく、3次元方向(深さ又は高さ方向)において転写欠陥を発生させない「転写性」が要求される。このような偏在や欠陥等を防止するために、被スタンパー部材用熱可塑性樹脂は、熱圧着転写時に十分な流延性(又は流動性)を有することが好ましい。また、被スタンパー部材用熱可塑性樹脂は、スタンパー材からの離型又は剥離のために、スタンパー材に対して低い熱融着性であることが好ましい。
【0016】
そこで、本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、所定の高分子量体の熱可塑性樹脂成分(A)と所定の低分子量体の熱可塑性樹脂成分(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物が、「インプリント性」及び「転写性」に優れることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0017】
<本発明が提供する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物>
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、スタンパー材に施されているパターンに対して、熱流延状態下に一様な熱圧着性を発揮させることができる。さらに、インプリント後にはスタンパー材に施されている微細構造パターンからスムーズに離型又は剥離される良好な「インプリント性」を発揮させることができる。また、本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、転写面の2次元方向の転写偏在及び3次元方向の転写欠陥を発生させることのない優れた「転写性」を発揮させることができる。
【0018】
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、GPC法による重量平均分子量(Mw)が60〜180万の範囲にあって、且つ分子量分布係数(Mw/Mn)=1.5〜5の範囲にある高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と、重量平均分子量(Mw)が1〜20万の範囲にあって、且つ分子量分布係数(Mw/Mn)=1.1〜5の範囲にある低分子量熱可塑性樹脂成分(B)とを含有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物のGPC法による重量基準で図示される分子量分布図は、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)及び低分子量熱可塑性樹脂成分(B)が、それぞれ別のピークを示し、[前記熱可塑性樹脂(A)の分子量分布ピーク量]:[前記熱可塑性樹脂(B)の分子量分布ピーク量]=7〜9:3〜1の特徴的な量比パターン(一例として[図1])を示す。
【0020】
このような高分子量体樹脂成分(A)及び低分子量体樹脂成分(B)の特徴的な量比パターン図となる本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、熱インプリント時に、優れた「インプリント性」と優れた「転写性」を発揮させることができる。
【0021】
<本発明が提供する微細構造が転写された樹脂成形体>
本発明によれば、厚さが50nm〜500μmの広範囲に及ぶ被スタンパー部材樹脂面に対しても、熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスにおいて、優れた「インプリント性」及び「転写性」を発揮させることができ、2次元方向へのパターンの転写偏在や、3次元方向への転写欠陥等の無い微細構造転写の樹脂成形体を提供する。
【0022】
<本発明が提供する微細構造転写の機能性透明樹脂成形体>
また、本発明によれば、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と低分子量熱可塑性樹脂成分(B)とを含有する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物が、光透明性に優れる樹脂組成物(又は可視光線透過率が、少なくとも85%以上の樹脂組成物)である場合、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスで各種パターンの微細構造を転写された透明樹脂成形体を提供する。
【0023】
本発明が提供する透明樹脂成形体は、光透明性に優れていることから、転写された微細構造に関係して、各種の光学特性及び/又は各種の非線形光電子特性を発揮することができ、各種の光学素子や、各種の非線形光電子素子として有用なものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、含有される高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と低分子量熱可塑性樹脂成分(B)の分子量分布係数(Mw/Mn)が極めてシャープであるため、スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物のGPC法を介して得られる分子量分布図には明確な2つのピークがあり、[高分子量熱可塑性樹脂成分(A)の分子量分布ピーク量]:[低分子量熱可塑性樹脂成分(B)の分子量分布ピーク量]=7〜9:3〜1となっている。
【0025】
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、熱インプリント時に適度な流動性を有しているために、転写面の面方向での転写偏在や鉛直方向への転写欠陥を発生させない優れた「転写性」を有している。さらに、熱インプリント後にスタンパー材から容易に剥離できて樹脂の変形が起こらない「インプリント性」に優れている。従って、本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を使用して熱インプリントした樹脂成形体は、スタンパー材の微細構造が精度良く転写された高精度の成形体となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスで、各種パターンの微細構造を転写させる本発明による被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物及びその微細構造転写の機能性樹脂成形体を、実施する最良の形態について、以下に更に説明をする。
【0027】
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、それぞれ極めてシャープな分子量分布係数(Mw/Mn)を有する「高分子量熱可塑性樹脂成分(A)」と「低分子量熱可塑性樹脂成分(B)を含有していることを特徴とする。
【0028】
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、GPC法による重量平均分子量(Mw)が60〜180万の範囲にあり、その分子量分布係数(Mw/Mn)=1.5〜5の範囲にある高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と、重量平均分子量(Mw)が1〜20万の範囲にあり、その分子量分布係数(Mw/Mn)=1.1〜5の範囲にある低分子量熱可塑性樹脂成分(B)とを含有する。
【0029】
「高分子量熱可塑性樹脂成分(A)」は、GPC法による重量平均分子量(Mw)が60〜180万の範囲にあり、好ましくは、70〜150万で、更に好ましくは、90〜130万である。また、その分子量分布係数(Mw/Mn)=1.5〜5の範囲にあるが、好ましくは1.5〜4の範囲で、更に好ましくは1.5〜3である。高分子量熱可塑性樹脂成分(A)の重量平均分子量及び分子量分布係数が所定の範囲から外れると、熱インプリント後の転写時の剥離性(又は離型性)に劣るものとなる。
【0030】
「低分子量熱可塑性樹脂成分(B)」は、GPC法による重量平均分子量(Mw)が1〜20万の範囲にあり、好ましくは、3〜15万で、更に好ましくは、5〜10万である。また、その分子量分布係数(Mw/Mn)=1.5〜5の範囲にあるが、好ましくは1.5〜4の範囲で、更に好ましくは1.5〜3である。低分子量熱可塑性樹脂成分(B)の重量平均分子量及び分子量分布係数が所定の範囲から外れると、熱インプリント時の流動性に劣り2次元方向の転写偏在や3次元方向の転写欠陥が生じやすくなる。
【0031】
また、[図1]に示すように、本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物のGPC法による重量基準で表す分子量分布図は、2つの明確なピークが示される。2つのピークは、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)由来するピークと低分子量熱可塑性樹脂(B)に由来するピークである。そして、その2つのピークは、[高分子量熱可塑性樹脂成分(A)の分子量分布ピーク量]:[低分子量熱可塑性樹脂(B)の分子量分布ピーク量]=7〜9:3〜1の比となっている。この比は、より好ましくは、7.5〜8.5:2.5〜1.5である。この比が所定の範囲から外れると、熱インプリント時の流動性や熱インプリント後の剥離性に劣るものとなる。
【0032】
<本発明が提供する被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物の調製>
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、所定の重量平均分子量及び所定の分子量分布係数(Mw/Mn)を有する「高分子量熱可塑性樹脂成分(A)」及び「低分子量熱可塑性樹脂(B)」を選定して適宜調製できる。
【0033】
樹脂の分子量及び分子量分布の測定は、所定の温度下にあるGPC装置カラム内を展開させる溶離液に、所定の温度下に樹脂を溶解して行う。例えば、PMMAなどのアクリル系樹脂は、溶離液としてTHFを用い、25〜50℃の温度で溶解する。また、PP、PEなどのポリオレフィン系樹脂には、通常、溶離液としてオルトジクロロベンゼンを用い、100〜145℃の温度で溶解する。前者の場合、高速GPC装置(例えば、東ソー(株)製のHLC−8220GPC)を用い、後者の場合、高温GPC装置(例えば、東ソー(株)製のHLC−8121GPC/HT)を用いる。
【0034】
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物として使用できる樹脂は、透明性に優れた、例えば、スチレン樹脂(91%、110℃)、PMMA(93%、107℃)やPEMA等のアクリル樹脂、ポリ乳酸(PLA)、環状ポリオレフィン(90〜91%、100〜163℃)、ポリカーボネート(PC、90%、145〜150℃)を挙げることができる。上記括弧内に記載する数値は、それぞれ可視光線透過率%及びTg℃である。これらの樹脂を使用した成形体は、樹脂の光学特性により各種の光学素子や各種の非線形光電子素子として好適に用いることができる。
【0035】
さらに、本発明に使用できる樹脂として、PE、PP等のポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン樹脂等のポリアミド(PA)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT、40〜60℃)、ポリエチレンテレフタレート(PET、70℃)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE、150℃)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、143℃)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)及びテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン系樹脂(PSU、190℃)、ポリアミドイミド(PAI、289℃)ポリアリレート(PAR、193℃)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES、225℃)、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリアリレート樹脂等を挙げることができる。なお、上記括弧内に記載する数値はTg℃を示す。これらの樹脂は、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0036】
本発明に使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスでのハンドリング性の観点から、好ましくは40〜290℃、より好ましくは60〜210℃である。
【0037】
本発明の被スタンパー部材用熱硬化性樹脂組成物は、インプリント性や転写性の効果を損なわない範囲で、後述するその他の添加剤を含有させることができる。添加剤を含有する場合、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と低分子量熱可塑性樹脂成分(B)との合計量は、被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、95〜100質量部、より好ましくは98質量部以上である。
【0038】
また、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と低分子量熱可塑性樹脂成分(B)との配合料は、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)の100質量部当たり、低分子量熱可塑性樹脂成分(B)が12.5〜37.5質量部の範囲で含有させることができるが、特に樹脂の流延性(又は流動性)を向上させる観点から、好ましくは、18.8〜31.3質量部の範囲である。
【0039】
<熱圧着転写プロセスによる微細構造転写方法>
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、被スタンパー部材として利用できる。被スタンパー部材の厚さは、「インプリント性」及び「転写性」の観点から、50nm〜500μmが好ましい。熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱転写プロセスで、厚さ50nm〜500μmの被スタンパー部材に対して、所定の微細構造パターンを有するスタンパー材をインプリントさせることにより、微細構造パターンが転写された樹脂成形体を得ることができる。この方法により、例えば、直径が50〜1500nmの凸型又は凹型のドットや、ピッチが60nm〜2μmの凸型又は凹型のラインを有する樹脂成形体を作成することができる。この凹部深さ又は凸部の高さは、20nm〜3μm範囲にある超微細構造とすることもできる。
【0040】
前記の熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱転写プロセスにおけるインプリント温度(Tp)は、被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりやや高い温度とする。好ましくは、Tg+10<Tp<Tg+50とすることで、被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物の有している優れた「インプリント性」及び「転写性」を効果的に利用することができる。
【0041】
前記の熱転写プロセスとしては、熱インプリント成形及び射出圧縮成型以外に、押出成形、ブロー成形、真空成形等を挙げることができる。
【0042】
被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を厚さ50nm〜500μmの被スタンパー部材とするためには、被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融して成型する方法と、溶剤に溶解した溶液を各種の塗工機によりシート状にし乾燥して溶剤を除去する方法がある。利用できる塗工機として、スピンコート、ディップコート、ダイコート、グラビヤコート等を挙げることができる。溶剤は、樹脂との溶解性等を考慮して選定する。例えば、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エステル等のエステル系、イソブタノールやブタノール等のアルコール系、トルエンキシレン等の芳香族系、エーテル系、グリコール系等が挙げらる。
【0043】
<微細構造転写された機能性樹脂成形体の用途>
本発明の樹脂成形体及び透明性樹脂成形体は、その樹脂表面に20nm〜3μm程度の凹凸を有している。本発明の樹脂成形体及び透明性樹脂成形体は、回折格子光フィルター、波長光変換素子、偏光フィルム、ホログラフィックディフューザー、光導波路型波長フィルター、携帯パソコン用光配線としての光導波路、透過型ブレーズド回折格子、光ピックアップ部の回折格子、波長分離フィルター、波長分離多重通信方式の増幅器に用いられる利得等化フィルター及び偏光変換素子、フレネルレンズ(太陽光集光レンズ、OHPの拡大投影用レンズ)、マイクロレンズアレイ、各種非球面レンズ、射出成型非球面レンズ(フィールドレンズ、リレーレンズ)、透過型スクリーンに用いられるフルネルシート(垂直拡散用レンチキュラーシート)、CDやDVD等光記録媒体、LED拡散フィルム、LED集光板、燃料電池用セパレータ、外部診断用チップ、細胞培養チップ、臓器代用部材等の各種産業分野で利用できる。
【0044】
<その他の添加剤>
また、本発明による被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物には、その被スタンパー部材としての「インプリント性」及び「転写性」を阻害させない限りにおいて、公知の添加剤、例えば、熱安定剤、分散剤、防腐剤、撥水剤、粘度調節剤、タレ止め防止剤、表面張力調整剤、消泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗菌・防カビ剤、芳香剤、蛍光剤等を適宜配合させることができる。
【0045】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0046】
(参考例1〜6)
代表的な熱可塑性樹脂であるPMMA樹脂を用いて、本発明による被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を調製するため、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)として(Mw)=80万と113万、低分子量体樹脂成分(B)として(Mw)=5万,10万,14万のPMMAを調製した(参考例1〜5)。また、比較例として(Mw)=14万で且つ分子量分布係数(Mw/Mn)が広い低分子量体と狭い低分子量体を調製した(参考例6)。
【0047】
(参考例1)[高分子量熱可塑性樹脂成分(A);(Mw)=80万のPMMA]
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5質量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)0.5質量部を添加した。次いで、メタクリル酸メチル(MMA)100質量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部を30分かけて滴下した。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温しその温度で1.5時間保持した。得られたエマルション(E−1)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は84.4万、分子量分布は3.2であった。
【0048】
(参考例2)[高分子量熱可塑性樹脂成分(A);(Mw)=113万のPMMA]
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.25重量部を添加した。次いで、MMA100重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を30分かけて滴下し。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度で1.5時間保持した。得られたエマルション(E−2)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は113万、分子量分布は3.0であった。
【0049】
(参考例3)[低分子量熱可塑性樹脂成分(B);(Mw)=5万のPMMA]
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.5重量部を添加した。次いで、MMA100重量部、N−ドデシルメルカプタン(NDM)5重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を30分かけて滴下し、さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−3)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は5.7万、分子量分布は2.31であった。
【0050】
(参考例4)[低分子量熱可塑性樹脂成分(B);(Mw)=10万のPMMA]
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.5重量部を添加した。次いで、MMA100重量部、NDM0.5重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を30分かけて滴下した。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−4)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は10万、分子量分布は2.7であった。
【0051】
(参考例5)[低分子量熱可塑性樹脂成分(B);(Mw)=14万のPMMA]
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部、85℃まで昇温し、ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)を0. 5重量部添加した。
次いで、温度を76〜78℃に保ちながらメタクリル酸メチル(MMA)100重量部、N−ドデシルメルカプタン(NDM)0.2重量部、乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を、30分かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−5)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は13.9万、分子量分布は4.1であった。
【0052】
(参考例6)[(Mw)=14万のPMMA、分子量分布係数(Mw)/(Mn)>>5]
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.5重量部を添加した。次いで、MMA100重量部、NDM1重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を、30分かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−6)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は14万、分子量分布は10.7であった。
なお、参考例1〜6で調製したPMMA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、いずれも約110℃(示差走査熱量計:Differential Scanning Calorimeter)であった。
【0053】
[本発明による被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物及び被スタンパー部材の調製]
参考例1〜6で得られたE−1〜6を、それぞれ、スプレードライで乾燥して粒子状の樹脂S−1〜6を得た。さらに、S−1〜6をメチルエチルケトンに溶解して、それぞれ樹脂分10重量%の樹脂溶液SS−1〜6を得た。なお、樹脂S−1及びS−3の可視光線透過率は、何れも90%であった。
樹脂溶液SS−1〜6をミカサ工業製スピンコーター1H−DX2を用いて樹脂シートすなわち「被スタンパー部材」を作製した。シート膜厚は樹脂溶解溶液粘度とコーターの回転数にて調整した(例えば、溶液の粘度が30P、回転数1200rpmの条件では、厚さ10μmの樹脂シートを得た)。
【0054】
[スタンパー材の作製]
シリカ基盤へのレジスト塗布、EB照射、現像、エッチングを行いモールドを作製した。作製したモールドは、円形ドッド型で直径、10、5、2、1ミクロンのパターンがそれぞれ規則配列されたパターン、及び、ライン幅が0.15〜1.5μmで深さ300nmの凹凸型のパターンを使用した。
条件:レジスト:NEB−22(住友化学製)
モールド:Si基盤上に約300ナノのSiO処理 2inch 直径約5cm
EB: ELIONIX ELS7500M使用
エッチング:CHFガス(50SCCM,2.0Pas,100W,15min)
エッチング(残レジストの除去):Oガス(5Pas,100W)
モールド表面処理:ダイキン工業 オプツールDSX1%溶液(Perfluorohexane Solv.)
【0055】
[熱圧着転写プロセスの検討1;転写性の評価]
前記の樹脂S−1を被スタンパー部材に用いて、上記で作製した微細構造を有するスタンパー材を、熱転写装置である明昌機工(株)製NM0401および東芝機械(株)製ST50を使用して転写した。転写条件と転写結果を[表1]に示す。[表1]の結果から、好適な転写条件として、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒を選択することとした。
【0056】
【表1】

【0057】
[熱圧着転写プロセスの検討2;インプリント性、転写性の評価]
前記の装置で、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒の条件で、樹脂の種類及び厚みを変えて、転写テストを行った。熱インプリント後のスタンパー材からの剥離性、被スタンパー材の転写偏在や転写欠陥を、SEM写真像及びAFM写真像から評価した。結果を表2に示す。[表2]から明らかなように、S−1〜6の樹脂は、剥離性不良又は樹脂変形を起こして、良好なインプリント性及び転写性を有していない。
【0058】
【表2】

【0059】
(実施例1〜3及び比較例1〜7)
[本発明による被スタンパー部材のインプリント性及び転写性の評価]
S−1(高分子量熱可塑性樹脂成分(A))とS−3(低分子量熱可塑性樹脂成分(B))の配合比を変えた樹脂組成物E−1〜E−3及びH1〜H7を調製し、いずれも厚み10μmのシート状の被スタンパー部材を作成し、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒の条件で熱インプリントを行った。転写は、前記の明昌機工(株)製NM0401および東芝機械(株)製ST50を使用した。「インプリント性」及び「転写性」は、SEM写真像及びAFM写真像で評価した。結果を[表3]に示す。
また、使用した被スタンパー部材の熱インプリント時の転写精度について、添付図[図6]に図示するAFM写真像から評価した結果を[表4]に示す。表3及び表4から、熱インプリント時に、本発明の被スタンパー部材用樹脂組成物は、優れた「インプリント性」と「転写性」を有することが明確である。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を使用して被スタンパー部材を作成し、平行ライン状のスタンパー材及びドットパターンのスタンパー材で熱インプリントを行った後の被スタンパー部材のSEM写真像及びAFM写真蔵を図2〜図6に示す。 [図2](a)、[図3](a)、[図4](a)、(b)[図5](a)、[図6](c)は、いずれも実施例2(E2)の写真であり、[図2](b)、[図3](b)、[図4](c)、[図5](b)、[図6](d)は、何れも比較例2(H2)の写真である。
図2〜6から、本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、剥離性に優れすため樹脂の変形が無く、樹脂の流動性に優れるため転写偏在や転写欠陥が無いことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の被スタンパー部材用樹脂組成物は、熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスで、優れた「インプリント性」と「転写性」を有しており、熱インプリントにより得られる表面に微細構造を有する樹脂成形体は、回折格子光フィルター、波長光変換素子、偏光フィルム、光導波路型波長フィルター、携帯パソコン用光配線としての光導波路、透過型ブレーズド回折格子、光ピックアップ部の回折格子、波長分離フィルター、フレネルレンズ(太陽光集光レンズ、OHPの拡大投影用レンズ)、マイクロレンズアレイ、各種非球面レンズ、射出成型非球面レンズ(フィールドレンズ、リレーレンズ)等の光学部品、非線形光電子部品、CD、DVD等光記録媒体、LED拡散フィルム、LED集光板、燃料電池用セパレータ、外部診断用チップ、細胞培養チップ、臓器代用部材等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物のGPCにより得られる分子量分布図を示す。
【図2】本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を使用して被スタンパー部材を作成し、平行ライン状のスタンパー材で熱インプリントを行った後の被スタンパー部材のSEM写真像を示す。特に、インプリントの端部を示している。
【図3】本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を使用して被スタンパー部材を作成し、ドットパターンのスタンパー材で熱インプリントを行った後の被スタンパー部材のSEM写真像を示す。
【図4】本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を使用して被スタンパー部材を作成し、平行ライン状のスタンパー材で熱インプリントを行った後の被スタンパー部材のSEM写真像を示す。
【図5】本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を使用して被スタンパー部材を作成し、平行ライン状のスタンパー材で熱インプリントを行った後の被スタンパー部材のAFM写真像を示す。
【図6】本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を使用して被スタンパー部材を作成し、平行ライン状のスタンパー材で熱インプリントを行った後の被スタンパー部材の断面のAFM写真像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPC法による重量平均分子量(Mw)が60〜180万の範囲にあり且つ分子量分布係数(Mw/Mn)=1.5〜5の範囲にある高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と、GPC法による重量平均分子量(Mw)が1〜20万の範囲にあり且つ分子量分布係数(Mw/Mn)=1.1〜5の範囲にある低分子量熱可塑性樹脂成分(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂組成物のGPC法による重量基準の分子量分布図が、[高分子量熱可塑性樹脂(A)の分子量分布ピーク]:[低分子量熱可塑性樹脂(B)の分子量分布ピーク]=7〜9:3〜1であることを特徴とする被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
高分子量熱可塑性樹脂成分(A)及び低分子量熱可塑性樹脂成分(B)が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸(PLA)、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサルホン(PES)の群から選ばれる何れか単独又は何れか2種類以上の組合せであることを特徴とする請求項1に記載の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
高分子量熱可塑性樹脂(A)及び低分子量熱可塑性樹脂(B)が、可視光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1に記載の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を用いて熱インプリント時に形成される厚さ50nm〜500μmの範囲にある被スタンパー部材樹脂に、スタンパー材の微細構造が転写されていることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項5】
請求項3に記載する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を用いて熱インプリント時に形成される厚さ50nm〜500μmの範囲にある被スタンパー部材樹脂に、スタンパー材の微細構造が転写されていることを特徴とする透明樹脂成形体。
【請求項6】
スタンパー材の微細構造が、直径50〜1500nmの凸型又は凹型のドット、ピッチが60nm〜2μmの凸型又は凹型のライン及びスペースであるパターン群から選ばれる何れか単独パターン又は何れか2種以上の組合せパターンであり、パターンの深さ又は高さが20nm〜3μm範囲にあることを特徴とする請求項4に記載する樹脂成形体。
【請求項7】
スタンパー材の微細構造が、直径50〜1500nmの凸型又は凹型のドット、ピッチが60nm〜2μmの凸型又は凹型のライン及びスペースであるパターン群から選ばれる何れか単独パターン又は何れか2種以上の組合せパターンであり、パターンの深さ又は高さが20nm〜3μm範囲にあることを特徴とする請求項5に記載する透明樹脂成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−38136(P2008−38136A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156070(P2007−156070)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】