説明

被処理物の処理装置

【課題】処理効率をより向上できる被処理物の処理装置とする。
【解決手段】軸回りに回転する筒体10とこの筒体10内を通る管体11とを備え、筒体10に装入された被処理物Hを管体11によって加熱又は冷却する。筒体10外に流体受入口73Aが備わる流体管73を複数本備え、これらを筒体10と一体的に回転し、この回転方向に流体受入口73Aが並ぶ構成とする。流体受入口73Aの回転軌跡面を覆うが回転をせず、流体受入口73Aのいずれかと重なる開放部81Aが形成された流体分配部材81を備える。開放部81A、この開放部81Aと重なる流体受入口73A及び流体管73を通して流体が筒体10内に送られる構成とする。筒体10から突出し、筒体10と一体的に回転する配管筒74を筒体10と同軸的に備え、配管筒74の先端面に複数の流体受入口73Aを開口し、流体分配部材91を円板状とし、配管筒74の先端面に介在部材92を介して間接的に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体内に装入された樹脂、食品、無機物などの粉粒体や石炭等の被処理物を、加熱、冷却等する被処理物の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の被処理物の処理装置、特に被処理物を加熱して乾燥する被処理物の乾燥装置としては、例えば、スチームチューブドライヤ(STD)に代表される横型回転式乾燥装置が存在する。
【0003】
スチームチューブドライヤは、図1に示すように、横軸回りに回転する筒体110と、この筒体110内を通る加熱管111とが備えられ、筒体110及び加熱管111を一体的に回転させながら、筒体110の一端側(紙面左側)から装入された被処理物を、他端側(紙面右型)から排出させる過程で加熱管111によって加熱して乾燥する。
【0004】
より具体的には、筒体110は、横軸方向に、例えば10mから30mの長さを有しており、この筒体110内において、湿潤粉体、粒状粉体等の被処理物を、加熱蒸気等の熱媒が流れる加熱管111によって加熱して乾燥する。なお、この加熱管111に換えて冷却管が備えられる場合は、この冷却管内を冷媒が流れることになり、当該冷却管によって被処理物が冷却処理される。また、加熱管111及び冷却管を含めて「管体」という。
【0005】
加熱管111内を通る熱媒は、回転継手160に取り付けられた熱媒入口管161を通して供給され、各加熱管111内を流れた後、熱媒排出管162を通して、例えばドレンなどとして排出される。
【0006】
筒体110の他端側には、被処理物排出口112に連通するキャリアガスGの吹込み口113が設けられている。キャリアガスGは、筒体110内において被処理物の加熱に伴って発生する水蒸気を同伴して、筒体110の一端側に設けられたガス排出口122から排出される。
【0007】
以上のようなスチームチューブドライヤに代表される横型回転式乾燥装置としては、筒体110の軸方向所定部に、キャリアガスGが流入又は流出する流量調節部が設けられた装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
この装置においては、被処理物の乾燥特性に応じてキャリアガスの流量が調節されるため、乾燥効率が向上するが、現在では、更なる乾燥効率の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−353927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする主たる課題は、例えば乾燥効率をより向上することができる被処理物の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、「乾燥効率をより向上することができる横型回転式乾燥装置」を開発するために、さまざまな試験・検討を行い、当初、次の発明を完成するに至った。
〔当初発明〕
横軸回りに回転する筒体と、この筒体内を通る加熱管と、が備えられ、
前記筒体及び前記加熱管を一体的に回転させながら、前記筒体の一端側から装入された被処理物を、他端側から排出させる過程で前記加熱管によって加熱して乾燥する横型回転式乾燥装置であって、
前記筒体の内周面に沿って軸方向に延びるガス管が複数本備えられ、
この複数本のガス管は、前記筒体と一体的に回転し、この回転方向に平行的に並ぶ構成とされ、
この複数本のガス管を通してキャリアガスが前記筒体内に噴射される構成とされている、
ことを特徴とする横型回転式乾燥装置。
【0011】
(当初発明の作用効果)
○ 本発明によると、筒体の底部に堆積した被処理物は、当該筒体の内周面に沿って軸方向に延び、当該筒体と一体的に回転する複数本のガス管によって撹拌される。したがって、被処理物の乾燥効率が向上する。
【0012】
○ 本発明によると、被処理物相互間に存在する空間に、筒体の底部を通過しているガス管から乾燥した気体であるキャリアガスが噴射され、このキャリアガスが、前記空間に存在する被処理物から発生した水蒸気を含む気体に置き換わって存在するようになる。したがって、被処理物内の蒸気圧と前記空間の蒸気圧との差が高まり、筒体の底部に堆積した被処理物の乾燥効率が向上する。また、被処理物は、ガス管から噴射されたキャリアガスによって撹拌されるため、この点でも乾燥効率が向上する。
【0013】
〔改良の経緯〕
もっとも、その後の試験・検討により、筒体の底部を通過しているガス管から噴射されるキャリアガスは、被処理物の乾燥効率向上に大きく寄与するものの、筒体のその他の部位を通過しているガス管から噴射されるキャリアガスは、被処理物の乾燥効率向上にそれほど大きく寄与しないことが知見された。
【0014】
そこで、キャリアガスの供給効率を向上し、もって被処理物の乾燥効率をよりいっそう向上するという観点から、筒体の底部を通過しているガス管からのみキャリアガスが噴射され、筒体のその他の部位を通過しているガス管からはキャリアガスが噴射されない横型回転式乾燥装置の開発が求められ、さまざまな試験・検討の末に、かかる横型回転式乾燥装置を開発するに至った。
【0015】
そして、この横型回転式乾燥装置に用いた技術的思想は、筒体の底部を通過しているガス管からのみキャリアガスを噴射したい場合の適用に限定されるものではなく、複数本のガス管のいずれからキャリアガスを噴射するかを制御したい場合一般に適用可能である。また、噴射の対象もキャリアガスに限定されず、ガス(気体)一般はもちろん、液体等の流体も対象となり、そもそも流体の噴射ではなく流体を筒体内に送る場合一般に適用可能である。さらに、被処理物を加熱して乾燥する被処理物の乾燥装置に対する適用に限定されず、例えば被処理物の冷却装置等の処理装置にも適用可能である。具体的には、例えば、筒体の天部に、触媒や湿度調節水等の流体を送る場合に適用可能である。なお、本明細書では、このような流体を送る管を流体管といい、例えば、当該流体がキャリアガス等のガス(気体)である場合は、特にガス管ともいう。
【0016】
以上のような経緯から創作されたのが、次に示す本発明である。
〔請求項1記載の発明〕
軸回りに回転する筒体と、この筒体内を通る管体と、が備えられ、
前記筒体内に装入された被処理物を前記管体によって加熱又は冷却する被処理物の処理装置であって、
前記筒体外に流体の受入口が備わる流体管が複数本備えられ、
この複数本の流体管は、前記筒体と一体的に回転し、この回転方向に複数の前記流体受入口が並ぶ構成とされ、
加えて、この複数の流体受入口の回転軌跡面を覆い、当該複数の流体受入口の回転に伴う回転をせず、当該複数の流体受入口のいずれか1又は2以上と重なる開放部が形成された流体分配部材が備えられ、
前記開放部、この開放部と重なる流体受入口及び流体管を通して前記流体が前記筒体内に送られる構成とされ、
前記筒体から突出し、当該筒体と一体的に回転する配管筒が、当該筒体と同軸的に備えられ、
前記配管筒の先端面には前記複数の流体受入口が開口し、
前記流体分配部材は、円板状とされ、前記配管筒の先端面に、介在部材を介して間接的に当接する、
ことを特徴とする被処理物の処理装置。
【0017】
〔請求項2記載の発明〕
前記介在部材は、前記流体分配部材とともに断面略コ字状の固定部材中に収められている、
請求項1記載の被処理物の処理装置。
【0018】
【0019】
〔請求項3記載の発明〕
前記介在部材は、
前記配管筒と一体的に回転しない構成とされ、かつ前記流体分配部材の開放部と重なる開口が形成され、又は、前記配管筒と一体的に回転する構成とされ、かつ前記流体受入口と重なる開口が形成されている、
請求項1又は請求項2記載の被処理物の処理装置。
【0020】
〔請求項4記載の発明〕
前記介在部材は、
前記配管筒と一体的に回転しない構成とされ、かつ2以上の前記流体受入口と重なる開口が形成されている、
請求項1又は請求項2記載の被処理物の処理装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、例えば乾燥効率をより向上することができる被処理物の処理装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のスチームチューブドライヤの斜視図である。
【図2】本形態のスチームチューブドライヤの縦断面図である。
【図3】本形態のスチームチューブドライヤの横断面図である。
【図4】接続機構の構造を説明するための模式縦断面図である。
【図5】接続機構の構造を説明するための分解斜視図である。
【図6】接続機構の構造を説明するための模式横断面図である。
【図7】ガス分配部材の形態例を示す図である。
【図8】接続機構の変形例を説明するための図である。
【図9】他の形態の接続機構の構造を説明するための模式縦断面図及びその分解図である。
【図10】他の形態の接続機構の構成要素を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、軸回りに回転する筒体と、この筒体内を通る熱媒や冷媒が流れる管体と、が備えられ、前記筒体内に装入された被処理物を前記管体によって加熱又は冷却する被処理物の処理装置に関するものである。ただし、以下では、その一例として、前記管体が、加熱蒸気等の熱媒が流れる加熱管であり、この加熱管によって被処理物を加熱して乾燥する被処理物の乾燥装置、特に横型回転式乾燥装置であるスチームチューブドライヤを例に説明する。
【0024】
図2及び図3に、本形態のスチームチューブドライヤ1を示した。本形態のスチームチューブドライヤ1は、図1に示した従来のスチームチューブドライヤを改良したものであり、以下、特に説明を加えない限り、図1に示した従来のスチームチューブドライヤや公知の形態と同様とすることができる。
【0025】
本形態のスチームチューブドライヤ1は、横軸(軸心)C回りに回転する筒体10と、この筒体10内を通る加熱管11と、が備えられている。この加熱管11には、例えば、加熱蒸気等の気体や、温水、加熱油等の液体などの熱媒が流される。加熱管11は、筒体10両端部の端板部12間に、横軸Cと平行的に多数通される。
【0026】
筒体10の一端側には、例えば、図1に示す被処理物装入口121と同様の形態の図示しない被処理物装入口が備えられている。この被処理物装入口から装入された、例えば、樹脂、食品、無機物などの粉粒体や石炭等の被処理物Hは、筒体10が、一端側から他端側へ、例えば、1/100〜10/100程度の下り勾配(傾斜)をもって設置され、かつこの傾斜軸(C)回りに回転させられることにより、一端側から他端側へ連続的に移送される。この移送の過程で、被処理物Hは、加熱管11との接触等による加熱によって乾燥されて、乾燥品となる。この乾燥品(被処理物)は、被処理物排出口31Aから連続的に排出される。
【0027】
筒体10には、図示しない投入シュートが当該筒体10に対して相対的に回転自在に接続される。この投入シュートは、筒体10の一端側(被処理物装入口側)端板部の中央に形成された開口部を通して筒体10内に一端部が挿入されており、被処理物装入口より投入された被乾燥物Hは、当該投入シュート内を重力により滑り落ちて、筒体10内に装入される。つまり、被処理物Hは、被処理物装入口から当該投入シュートを介して筒体10内に装入される。
【0028】
筒体10の回転機構は、従来のスチームチューブドライヤにおけるのと同様とすることや、他の公知の形態と同様とすることなどができる。
【0029】
筒体10の他端側(被処理物排出口31A側)の端板部12には、被処理物Hを掻き上げるための掻上羽根13が、放射状に複数枚、図示例では6枚等間隔に設けられている。また、当該端板部12の中央部には、先端部(紙面右側端部)が開口21とされた円筒状の出口部20が一体的に設けられ、この出口部20内の送出し通路L1を通して被処理物Hが排出される。
【0030】
出口部20内には、図示はしないが、例えば、出口部20を内周側と外周側とに仕切る円筒状の隔壁(円筒隔壁)を設けることもできる。この円筒隔壁を設けた場合、当該円筒隔壁の外周側を、被処理物Hを送り出すための送出し通路L1とし、円筒隔壁の内周側を、円筒10内にキャリアガスGを送り込むためのガス通路とすることができる。
【0031】
出口部20の隣接部には、下端に被処理物Hを排出する被処理物排出口31Aが形成されたケーシング31が設けられている。このケーシング31と出口部20とは、ケーシング31と出口部20の外面との間に介在された図示しないシール部によりシールされた状態で、相対的に回転可能とされている。
【0032】
この点、出口部20内に前記円筒隔壁を設ける場合は、筒体10内へキャリアガスGを吹き込むためのガス吹込み口31Bをケーシング31の上端に形成する。そして、被処理物Hの送出し通路L1及び被処理物排出口31A、並びに、円筒隔壁内周側のガス通路及びガス吹込み口31B、がそれぞれ連通する構造とする。
【0033】
ただし、本形態のスチームチューブドライヤ1においては、ガス吹込み口31Bが閉じられており、あるいは当初から設けられておらず、当該ガス吹込み口31BからのキャリアガスGの吹き込みが行われない。これは、本発明者らは、試験・検討によって、ガス吹込み口31BからキャリアガスGを吹き込んだとしてもそれほど乾燥効率が向上せず、キャリアガスGの供給効率という観点からは、後述する流体管たるガス管(噴射部)71からのみキャリアガスGを吹き込んだ方が好ましいことを知見したためである。なお、本形態では、ガス吹込み口31BからのキャリアガスGの吹き込みが行われないことに伴い、出口部20内の円筒隔壁も設けられていない。
【0034】
筒体10の他端側(被処理物排出口31A側)の端板部12の中心部分には、二重管60が一体的に設けられている。この二重管60は、内管が熱媒たる加熱蒸気Sの供給管61とされており、外管がドレンDの排出管62とされている。この二重管60は、筒体10や加熱管11と一体的に回転する。また、この二重管60は、出口部20やケーシング31を貫いた状態で配置されている。
【0035】
熱媒供給管61は、管分岐部40及び熱媒連結管41を介して端板部12における加熱管11の図示しない入口ヘッダ部に接続されており、この入口ヘッダ部を介して加熱管11内に熱媒供給管61を通った加熱蒸気Sが供給される。
【0036】
他方、この熱媒供給管61の外周側に配置されたドレン排出管62は、ドレン連結管42を介して端板部12における加熱管11の出口ヘッダ部に接続されている。加熱管11内において生じたドレンDは、この出口ヘッダ部を介してドレン排出管62を通され、排出される。
【0037】
熱媒供給管61及びドレン排出管62で構成される二重管60は、ロータリジョイント等の回転継手を介して、筒体10や加熱管11と一体的には回転をしない熱媒供給口64及びドレン排出口65に、それぞれ回転可能に接続されている。
【0038】
筒体10内には、当該筒体10の内周面に沿って横軸C方向に延びる流体管たるガス管(噴射部)71が複数本、図示例では6本、備えられている。このガス管(噴射部)71は、筒体10の底部に堆積した被処理物Hを撹拌し、また、被処理物H中にキャリアガスGを噴射するためのものであり、これらを考慮して、例えば、筒体10の内周面に当接させることや、内周面から例えば1〜50cm離れた位置に備えることができる。
【0039】
複数本のガス管(噴射部)71は、それぞれ端板部12の近傍で筒体10の軸心側に向かって、例えば90°の角度で屈曲しており、筒体10や加熱管11の回転と同期して(一体的に)回転する。複数本のガス管(噴射部)71は、当該回転方向に、例えば、図示例のように等間隔に並んだ状態で相互に平行的に配置することができる。
【0040】
各ガス管(噴射部)71には、それぞれ筒体10内にキャリアガスGを噴射するための孔(噴射孔)が、1又は2以上の複数形成されている。したがって、ガス管(噴射部)71内を通るキャリアガスGは、当該噴射孔から筒体10内に噴射される。
【0041】
ガス管(噴射部)71内を通るキャリアガスGは、例えば、キャリアガスGを供給する図示しないガス供給源から、図示しない送気管を介して、供給される。この送気管は、ガス供給源からの途中で分岐させ、筒体10内へキャリアガスGを吹き込むためのガス吹込み口31Bに接続することもできる。ただし、前述したように、本形態では、ガス吹込み口31Bが閉じられており、当該ガス吹込み口31Bに対する送気管の接続は行われていない。
【0042】
ガス供給源としては、気体を供給する供給源であるブロワやコンプレッサ等の送風機、圧縮機などの他に、スチームチューブドライヤ1以外の排ガスを排出する他の設備を利用することもできる。なお、この他の設備を利用する場合とは、当該他の設備から排出される排ガスをキャリアガスGとして利用するものである。
【0043】
このキャリアガスGとしては、空気や不活性ガスなど適宜のガスを用いることができ、また、吹込み圧力は、外気の侵入防止の観点から加圧で吹込むのが望ましい。キャリアガスGは、被処理物Hの装入口側(紙面左側)の、例えば図1に示すガス排出口122と同様の形態のガス排出口から、主に排出される。もちろん、その一部は、被処理物Hと共に、被処理物Hの排出口31Aから排出されるが、この被処理物Hと共に排出されたキャリアガスGも、被処理物Hと分離するなどした後、キャリアガスGとして再利用することができる。
【0044】
筒体10の他端側(紙面右側)端板部12の中央部には、筒体10や加熱管11と一体的に回転する円筒状の配管筒74が設けられている。この配管筒74は、筒体10の他端側端板部12から突出しており、出口部20及び二重管60と同軸的に、かつ出口部20及びケーシング31を貫き、二重管60に貫かれた状態で配置されている。
【0045】
配管筒74内には、当該配管筒74の内周面に沿って横軸C方向に延びる流体管たるガス管(接続部)73が複数本、図示例では6本備えられている。この複数本のガス管(接続部)73は、配管筒74の内周面に固定されており、配管筒74と一体的に回転する。また、ガス管(接続部)73は、回転方向に、例えば、図示例のように等間隔に並び、相互に平行的に配置されている。
【0046】
複数本のガス管(接続部)73は、それぞれ筒体10側端部の近傍で配管筒74の外周面において開口しており、この開口部分において、前述ガス管(噴射部)71と連通している。なお、以下では、配管筒74内に位置するガス管を単にガス管接続部73といい、配管筒74外に位置するガス管を単にガス管噴射部71という。
【0047】
筒体10外に位置する複数のガス管接続部73には、図4に示すように、それぞれキャリアガスGの受入口73Aが備えられている。この複数のガス受入口73Aは、配管筒74及びガス管接続部73の回転方向に並び、それぞれ配管筒74の外周面において開口している。したがって、配管筒74及びガス管接続部73の回転に伴って、当該ガス受入口73Aも回転する。
【0048】
一方、このガス受入口73AにキャリアガスGを供給するガス供給源や送気管は、配管筒74等の回転に伴う回転をせず、そこで、本形態では、ガス受入口73Aと送気管等との接続部分に、接続機構80を介在させ、もってキャリアガスGの流通を可能としている。また、前述したように本形態のスチームチューブドライヤ1は、キャリアガスGの供給効率を向上し、もって被処理物Hの乾燥効率をよりいっそう向上するという観点から、筒体10の底部を通過しているガス管噴射部71からのみキャリアガスGが噴射され、筒体10のその他の部位を通過しているガス管噴射部71からはキャリアガスGが噴射されない構造とされている。そして、本形態においては、このキャリアガスGが噴射されるガス管噴射部71の制御をも、当該接続機構80によって行われる。以下では、この接続機構80について、図4の模式縦断面図、図5の分解斜視図、図6の模式横断面図を参照しながら、詳細に説明する。
【0049】
本形態の接続機構80においては、配管筒74の外周側にガス分配部材81が備えられている。このガス分配部材81は、複数のガス受入口73Aの回転軌跡面74aを覆うが、当該複数のガス受入口73Aの回転に伴う回転をせず、当該複数のガス受入口73Aのいずれか1又は2以上と重なる開放部81Aが形成されている。
【0050】
この開放部81Aは、例えば、切欠きや開口等からなり、この開放部81Aにおいて、流体たるキャリアガスGの出入り(流通)が自由とされる。この開放部81Aは、形状、大きさ等が特に限定されず、複数のガス受入口73Aのいずれか1又は2以上と重なる形態であればよい。具体的には、例えば、図7の(a)に示すように、開放部81Aを回転方向に長い開口(長穴)とし、1又は2以上(図示例では2つ)のガス受入口73Aと重なる形態、図7の(b)に示すように、開放部81Aをガス受入口73Aと同一の形状、大きさとし、回転方向に1又は2以上(図示例では2つ)設ける形態、図7の(c)に示すように、開放部81Aをガス分配部材81が幅狭となるような切欠きで構成し、この切欠きが1又は2以上(図示例では1つ)のガス受入口73Aと重なる形態などを例示することができる。
【0051】
一方、ガス分配部材81は、好ましくは円筒状とされ、配管筒74の外周面に、直接又は他の部材を介して間接的に外接するように配置されている。特に、本形態では、当該他の部材として、介在部材82が備えられている。この介在部材82は、配管筒74に直接外接し、かつガス分配部材81に直接内接し、このガス分配部材81よりも横軸C方向に長く、配管筒74と一体的に回転する構成とされている。
【0052】
加えて、本形態の接続機構80においては、介在部材82に直接外接し、ガス分配部材81を横軸C方向に関して挟む一対のガス封止材85が備えられている。このガス封止材85は、回転接触部分であるガス分配部材81と介在部材82との当接部分からキャリアガスGが漏れるのを防止するためのものである。したがって、この効果を発揮し得る範囲でガス封止材85の形状、大きさ等を適宜変更することができ、図示例では、コイル状にしている。ガス封止材85をコイル状にすると、留め具87によってガス分配部材81に向かって押し付けることのみで、キャリアガスGの漏れが防止される。キャリアガスGの漏れ防止は、例えば、シール材を吹き付けるなどによっても実現することができるが、後述するように介在部材82の交換によるメンテナンスを予定する本形態においては、簡単な組付けで容易にキャリアガスGの漏れを防止することができる本形態の方が極めて有利である。
【0053】
本形態の接続機構80においては、ガス分配部材81が備えられることにより、キャリアガスGが、当該ガス分配部材81の開放部81Aと重なるガス受入口73Aからのみガス管接続部73を通して筒体10内のガス管噴射部71に送られる。そして、ガス受入口73Aは回転しているため、開放部81Aと重なるガス受入口73Aは、特定のガス受入口73Aに限定されるものではなく、特定の部位を通過するときのガス受入口73Aということになる。したがって、開放部81Aの位置や大きさを調節することにより、筒体10内においてキャリアガスGを噴射する部位(位置)を設定することができる。
【0054】
この開放部81Aの位置や大きさの調節においては、前述開放部81Aの具体例として示した形態を参考にすることができる。また、例えば、ガス受入口73Aのいずれか1つと重なる大きさの開放部81Aが下側に位置するようにガス分配部材81を形成・配置した場合、ガス受入口73Aは、下側を通り過ぎるときにのみ開放部81Aと連通することになる。結果、筒体10の底部に堆積する被処理物Hに対してキャリアガスGが噴射され、当該被処理物Hが撹拌されるので、被処理物Hの乾燥効率が向上する。また、被処理物Hの相互間に存在する空間に直接キャリアガスGが送り込まれることになるため、被処理物H内の蒸気圧と当該空間の蒸気圧との差が直ちに高まり、この点でも被処理物Hの乾燥効率が向上する。さらに、筒体10の底部以外を通り過ぎるときのガス管噴射部71からはキャリアガスGが噴射されないため、キャリアガスGの供給効率が向上する。
【0055】
本形態では、筒体10の底部を通り過ぎるときのガス管噴射部71からキャリアガスGを噴射するために、ガス分配部材81を、ガス受入口73Aのいずれか1つと重なる大きさの開放部81Aが下側に位置するように形成・配置したが、これに限定する趣旨ではない。開放部81Aを、例えば、長くして(例えば、前述図7の(a)の形態など。)、あるいは複数形成して(例えば、前述図7の(b)の形態など。)、複数のガス受入口73Aと重なるように形成することや、開放部81Aが上側に位置するように配置することなどもできる。なお、特殊な形態ではあるが、例えば、対角線上に存在するガス管噴射部71とガス管接続部73とを連通させることも可能であり、この場合は、開放部81Aが上側に位置するように配置すると、筒体10の底部を通り過ぎるときのガス管噴射部71からキャリアガスGが噴射されることになる。
【0056】
一方、例えばSS400製、SUS製などとされる配管筒74は回転し、PTFE製、金属製などとされるガス分配部材81は回転しないため、両者74,81が直接接触する構成とすると、配管筒74の外周面が当該回転接触によって摩耗してしまい、配管筒74の交換に大きなコスト、労力を割く必要が生じる。しかしながら、本形態では、両者の間に介在部材82が介在されており、この介在部材82が配管筒74と一体的に回転する構成とされているため、摩耗等による配管筒74の交換などは必要にならず、介在部材82と回転接触して摩耗するガス分配部材81を交換するのみで足りる。しかも、ガス分配部材81に、介在部材82より硬度の低い材質を選択すれば、ガス分配部材81が主に摩耗し、介在部材82の摩耗はほとんど生じなくなるため、介在部材82の交換頻度が少なくなり、メンテナンスも容易となる。
【0057】
本形態において、介在部材82は、配管筒74と一体的に回転するため、複数のガス受入口73Aとそれぞれ重なる開口82Aが形成されており、この開口82Aを通して、キャリアガスGが流通可能とされている。しかしながら、例えば、介在部材82を配管筒74と一体的に回転せず、ガス分配部材81と一体的に固定する形態とする場合は、当該開口82Aを、ガス分配部材81の開放部81Aと重なる形状とすることができる。ただし、配管筒74の交換よりもガス分配部材81の交換の方が容易であるため、介在部材82とガス分配部材81との間で摩耗が生じるように、つまり、介在部材82が配管筒74と一体的に回転するように構成する方が好ましい。
【0058】
ところで、以上においては、配管筒74の内周面に複数のガス管接続部73を固定した形態を示したが、図8に示すように、表面に横軸C方向に沿う複数の、図示例では6つの切欠き溝73Xaが形成された中空状のパイプ73Xを、配管筒74内に通すのも好ましい形態である。この形態においては、配管筒74の内周面とパイプ73Xの表面とが同一径とされて当接するようになっており、したがって、配管筒74の内周面と切欠き溝73Xaの表面とによって、ガス管接続部73が構成される。この点、先の配管筒74の内周面にガス管接続部73を固定する形態においては、配管筒74の内径等によっては、ガス管接続部73の備付けに困難を伴う場合がある。しかしながら、パイプ73Xを利用する本形態においては、配管筒74内にパイプ73Xを通すのみなので、配管筒74の内径等に関わらず容易に装置を組み上げることができる。
【0059】
次に、接続機構80の他の形態を、接続機構90として、図9及び図10を参照しながら説明する。なお、本形態においても、ガス管(71,73)は、複数備えられ、例えば、前述同様6本とすることができるが、以下で説明する本形態においては、8本とする場合を例に説明する。
【0060】
本形態の接続機構90は、まず、前提として、特に図10の(a)に示すように、複数のガス受入口73Aが配管筒74の先端面において開口する場合に適用可能な機構である。この先端面において開口する形態は、前述複数のガス受入口73Aが配管筒74の外周面において開口する形態と比べて、配管筒74及びガス管接続部73の構成がシンプルになり、特に配管筒74の径が短い場合に有利である。
【0061】
次に、本形態の接続機構90においては、ガス分配部材91が、円板状とされ、配管筒74の先端面に、直接又は他の部材を介して間接的に当接する構成とされている。もちろん、このガス分配部材91も、複数のガス受入口73Aの回転軌跡面を覆い、当該複数のガス受入口73Aの回転に伴う回転をせず、当該複数のガス受入口73Aのいずれか1又は2以上と重なる切欠き、開口等からなる開放部91Aが形成されたものである。
【0062】
したがって、本形態の接続機構90においても、ガス分配部材91が備えられることにより、キャリアガスGが、当該ガス分配部材91の開放部91Aと重なるガス受入口73Aからのみガス管接続部73を通して筒体10内のガス管噴射部71に送られる。そして、ガス受入口73Aは回転しているため、開放部91Aと重なるガス受入口73Aは、特定のガス受入口73Aに限定されるものではなく、特定の部位を通過するときのガス受入口73Aということになる。したがって、本形態の接続機構90においても、開放部91Aの位置や大きさを調節することにより、筒体10内においてキャリアガスGを噴射する部位(位置)を設定することができる。
【0063】
具体的には、例えば、ガス受入口73Aのいずれか1つと重なる大きさの開放部91Aが下側に位置するようにガス分配部材91を形成・配置した場合、ガス受入口73Aは、下側を通り過ぎるときにのみ開放部91Aと連通することになる。したがって、下側を通り過ぎるときのガス管接続部73にのみキャリアガスGが通され、もって筒体10の底部を通り過ぎるときのガス管噴射部71からのみキャリアガスGが噴射されるようになる。これによる効果は、前述接続機構80の場合と同様である。
【0064】
また、本形態においても、筒体10の底部を通り過ぎるときのガス管噴射部71からキャリアガスGを噴射するために、ガス分配部材91を、ガス受入口73Aのいずれか1つと重なる大きさの開放部91Aが下側に位置するように形成・配置したが、これに限定する趣旨ではない。開放部91Aを、例えば、周方向に長くして、あるいは複数形成して、複数のガス受入口73Aと重なるように形成することや、開放部91Aが上側に位置するように配置することなどもできる。なお、特殊な形態に関する考慮は、前述接続機構80の場合と同様である。
【0065】
また、本形態においても、例えばSS400製、SUS製とされる配管筒74は回転し、例えばPTFE製、金属製とされるガス分配部材91は回転しないため、両者74,91が直接接触する構成とされていると、配管筒74の先端面が当該回転接触によって摩耗してしまい、配管筒74の交換に大きなコスト、労力を割く必要が生じる。しかしながら、本形態では、両者74,91の間に、配管筒74の先端面に直接当接し、ガス分配部材91の一端面に直接当接する介在部材92が介在されている。この介在部材92の機能は、前述接続機構80における場合とほぼ同様である。ただし、本形態では、介在部材92が配管筒74と一体的に回転しない構成としているため、例えば、介在部材92に硬度の低い材質を選択するのが好ましく、この形態によれば、介在部材92が主に摩耗し、配管筒74の摩耗はほとんど生じなくなるため、メンテナンス容易となる。
【0066】
以上のように、本形態においては、介在部材92が配管筒74と一体的に回転をせず、ガス分配部材91と一体的に固定されているが、介在部材92が配管筒74と一体的に回転する形態とすることもできる。この一体的に回転する形態の場合は、介在部材92やガス分配部材91の硬度・素材等を、前述接続機構80の場合と同様とすることができる。
【0067】
本形態において、介在部材92は、配管筒74と一体的に回転をせず、ガス分配部材91とともに断面略コ字状の固定部材96中に収められて、当該ガス分配部材91と伴に一体的に固定されている。したがって、介在部材92には、ガス分配部材91の開放部91Aと重なる開口92Aが形成されており、この開口92Aを通して、キャリアガスGが流通可能とされている。ただし、前述接続機構80の場合と同様、介在部材92を配管筒74と一体的に回転するように構成することもでき、この場合は、介在部材92の開口92Aを、ガス受入口73Aと重なる構成とすることができる。なお、本形態では、固定部材96の周壁部に孔96Aが形成されており、ガス分配部材91の開放部91Aに前記孔96Aと重なる分岐孔を連通させることによって、キャリアガスGが流通するように構成している。
【0068】
本形態の接続機構90においては、円板状のガス分配部材91に孔を開けることによって開放部91Aが形成されるため、この点では、前述接続機構80に比して、製造容易であるとの利点がある。ただし、本形態の接続機構90においては、回転接触面(配管筒74の先端面と介在部材92の一端面との当接面)が平面であるため、回転接触面(配管筒74の外周面と介在部材82の内周面との当接面、あるいは介在部材82の外周面とガス分配部材81の内周面との当接面)が平面ではない前述接続機構80の方が、キャリアガスGの漏れ防止という点では有利である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、筒体内に装入された樹脂、食品、無機物などの粉粒体や石炭等の被処理物を、加熱、冷却等する被処理物の処理装置として適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1…スチームチューブドライヤ、10…筒体、11…加熱管、71,73…ガス管、73A…ガス受入口、81,91…ガス分配部材、82,92…介在部材、G…キャリアガス、H…被処理物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回りに回転する筒体と、この筒体内を通る管体と、が備えられ、
前記筒体内に装入された被処理物を前記管体によって加熱又は冷却する被処理物の処理装置であって、
前記筒体外に流体の受入口が備わる流体管が複数本備えられ、
この複数本の流体管は、前記筒体と一体的に回転し、この回転方向に複数の前記流体受入口が並ぶ構成とされ、
加えて、この複数の流体受入口の回転軌跡面を覆い、当該複数の流体受入口の回転に伴う回転をせず、当該複数の流体受入口のいずれか1又は2以上と重なる開放部が形成された流体分配部材が備えられ、
前記開放部、この開放部と重なる流体受入口及び流体管を通して前記流体が前記筒体内に送られる構成とされ、
前記筒体から突出し、当該筒体と一体的に回転する配管筒が、当該筒体と同軸的に備えられ、
前記配管筒の先端面には前記複数の流体受入口が開口し、
前記流体分配部材は、円板状とされ、前記配管筒の先端面に、介在部材を介して間接的に当接する、
ことを特徴とする被処理物の処理装置。
【請求項2】
前記介在部材は、前記流体分配部材とともに断面略コ字状の固定部材中に収められている、
請求項1記載の被処理物の処理装置。
【請求項3】
前記介在部材は、
前記配管筒と一体的に回転しない構成とされ、かつ前記流体分配部材の開放部と重なる開口が形成され、又は、前記配管筒と一体的に回転する構成とされ、かつ前記流体受入口と重なる開口が形成されている、
請求項1又は請求項2記載の被処理物の処理装置。
【請求項4】
前記介在部材は、
前記配管筒と一体的に回転しない構成とされ、かつ2以上の前記流体受入口と重なる開口が形成されている、
請求項1又は請求項2記載の被処理物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−100990(P2013−100990A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−43833(P2013−43833)
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2009−27795(P2009−27795)の分割
【原出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】