説明

被加工物搬送台

中央軸に沿って配置されており、および、円板(7)の周縁部全体にわたって均等に分布しておりかつ外向きに斜めに傾斜しておりかつ被加工物のために備えられているホルダ(8)を有する複数の円板(7)が、各々の場合に、円板(7)を取り囲むリング(5)の上に支持されている。連続するリング(5)は、円板(7)の望ましくない塗装を防止する概ね円筒形の金属被覆板を形成する。この金属被覆板は、円板(7)のホルダ(8)のための開口部のグループを有し、これらの開口部は同一の高さにおいて周縁部全体にわたって均等に分布しており、かつ、これらの開口部の各々は、円板(7)を保持するリング(5)内の上部凹み(14)と、後続のリングの隣接する下部凹み(15)とによって形成されている。連続するリング(5)の間の境界線(17)が、各々の場合に、互いに隣接する開口部を隔てるウェブの最も狭い箇所の幾分か下方で始まり、したがって、下部凹み(15)は、各々の場合に、リング(5)の端縁に向かって狭まることがなく、および、上部凹み(14)は、被加工物搬送台が困難なしに底部から頂部にアセンブリされることが可能であるように多くともわずかに狭まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項第1項の予特徴付け条項による塗装システムのための被加工物搬送台に関する。このタイプの被加工物搬送台は、一般的に、可能な限り均等である塗装を確実なものにするために数回にわたって塗装供給源を通過させられる比較的多数の工作物を、対応するホルダ内において搬送する
【背景技術】
【0002】
特許文献1が、汎用タイプの被加工物搬送台を開示している。特に、この被加工物搬送台は、軸から外向きに離れるように傾斜する形で傾いているホルダを有し、このことが、被加工物の非常に近接した配置を可能にし、および、さらには、被加工物の端面に向かう塗装の厚さの一般的に求められる増大を生じさせ、かつ、特に端面上における被覆の均等性を改善する。
【0003】
しかし、欠点は、ホルダを保持する円板と他の部品も必然的に塗装されるということである。このために定期的なクリーニングが必要であり、この定期的なクリーニングは、取り扱いに慎重を要する構成要素に対する損傷を回避するために非常に注意深く行われなければならず、かつ、これに対応したコストと、使用時間の減少と、摩耗の増大とを伴う。
【0004】
同様の被加工物搬送台が特許文献2に開示されている。この特許文献では、ホルダが、円板を駆動する回転中心軸に対して平行に位置合わせされている。ホルダ自体の回転を各々の場合に生じさせる円板と回転中心軸とさらに別の部品とのどれもが、塗装から保護されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許発明第10 2004 027 989 A1号明細書
【特許文献2】欧州特許第1 256 637 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホルダを保持する円板が不要な塗装から保護される汎用タイプの被加工物搬送台を提供することが、本発明の目的である。この目的は、請求項第1項の特徴付け条項の特徴によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による被加工物搬送台では、軸と、円板と、ホルダの下部部品とが、非常に単純な設計を有し、かつ、取り付けおよび取り外しが容易であり、かつ、損傷の危険性なしに容易にクリーニングが可能である、被覆金属板によって覆われている。この金属被覆板は、さらに、直接的に連続している円板の間隔保持の確保のようなさらに別の目的を実現することも可能である。
【0008】
以下では、本発明を、単に具体例を示すにすぎない図面に参照しながら、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態における本発明による被加工物搬送台の軸方向縦断面図を概略的に示す。
【図2】図2は、図1の本発明による被加工物搬送台の部分側面図を示す。
【図3】図3は、第2の実施形態における本発明による被加工物搬送台の部分分解組立図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の単純化のために、図1および図2による被加工物搬送台は、幾分か概略的に示されており、および、一般的に備えられる被加工物用ホルダよりも少ない数の被加工物用ホルダを備えている。
【0011】
この被加工物搬送台は、基部2に連結されている非回転対称な(好ましくは正方形の)横断面の中央垂直軸1を有する。この中央垂直軸1は、基部2に対して相対的に回転不可能であるように、または、軸1の中心に一致する軸線を中心として回転可能でありかつ駆動可能であるように、軸1の中心に一致する軸線上に取り付けられることが可能である。上記の軸線を中心として回転可能であるように取り付けられている歯車リング3が、駆動可能ピニオン4に係合し、および、歯車リング3が軸1に対して相対的な回転移動を行うように歯車リング3の回転速度が軸1の回転速度とは異なるように、駆動可能ピニオン4によって駆動される。各々の場合に実質的に円筒形の形状でありかつ一体となって円筒形の金属被覆板を形成する、例えばシート金属のような薄い硬質材料のリング5が、歯車リング3上に軸方向において回転不可能な形で連続的に存在している。リング5の下部末端では、軸1を取り囲む環状円板7が同様に回転不可能な形で上に支持されている環状支持リング6が、各々の場合に内側に締め付け固定されている。
【0012】
各々の円板7は等しい個数(この例では6つであるが、普通はより多数であることが好ましい)の、軸1から外向きに離れるように傾斜する形で傾いている互いに同一のホルダを保持する。ホルダ8の各々は、円板7内の傾斜穴10の中に固定されているボルト9と、ボルト9上に回転可能な形で取り付けられておりかつ被加工物13(図2では省略されている)を受け入れるための穴12を有するスリーブ11とを備える。
【0013】
ホルダ8は、各々の場合に、互いに隣接するホルダが各々の場合に同一の角度ピッチ(この例では60°)だけ互いに対して相対的にずれているように、円板7の周縁部全体にわたって均等に分布している。リング5は、図示されていない最上のリングを例外として、その周縁部全体にわたって均等に分布している幾つかの上部凹み14を各々に上部端縁に有し、この上部凹みの個数はホルダ8の個数に一致しており、および、リング5は、最下のリングを例外として、同様に、下部端縁において、しかし、上部凹み14の1つが各々の場合に2つの下部凹み15の間の中央に位置しているように、および、これとは逆に、各々の場合に上部凹み14に対して角度ピッチの半分だけ角度をなしている均等に分布している下部凹み15を有する。
【0014】
上部リング5の下部凹み15が各々の場合に下部リング5の上部凹み14に隣接しているように、特に、上部凹み14の端縁が下部凹み15の端縁の滑らかな延長部分を形成するように、連続したリング5が方向配置されている。下部凹み15と、これに隣接した上部凹み14は、各々の場合に、ホルダ8の1つが中を通って突き出る金属被覆板内の開口部を一体になって形成し、および、さらには、各々の場合に凹み16が上部リング5の支持リング6の外側端縁に備えられることも必要である。2つのリングの間にこのような形に形成されたグループに属する開口部は互いに同一の高さにあり、かつ、金属被覆板の周縁部全体にわたって均等に分布している。あらゆる点で同一であることが好ましいこれらの開口部は、細長い長円形の形状またはこれに類似した形状を各々が有するだろうし、例えば、長方形の中央部品によって連結されている同一のまたは異なる長さの半長円形の形状であってもよい。リング5は、互いに隣接する開口部を各々の場合に連結するように円周方向に引かれている境界線17に沿って互いに隣接し、すなわち、それらを分離するウェブを横切り、および、上記開口部の間の最も狭い箇所の付近で、好ましくは上記箇所の幾分か下方で、それらが開始するように横切り、および、上部凹み14の幅が、下部末端においてさえ、ホルダ8の直径、すなわち、ホルダ8のスリーブ11の直径に比べて少なくともわずかに大きいだけであるように、上部凹み14が狭まることを確実にすることが必要である。
【0015】
互いに隣接するリング5が、角度ピッチの倍数にわたる回転を別として、それらの互いの角度位置に関して所要の位置に固定されているように、境界線17が形成されている。これに加えて、上部リングが角度ピッチの半分よりも小さく回転させられるように上部リングが取り付けられる場合に、上記角度位置が自動的に所要の固定位置をとるように、境界線17が選択される。これは、この具体例においては、境界線17が、それが連結する互いに隣接する開口部の間の中間に最下点を有する好ましくは対称的なV字形の線にしたがうことによって実現される。この結果として、互いに隣接する下部凹み15を分離するウェブ部分が、ウェブ部分が凹み8のスリーブ11上に乗る時にそのリングが自動的に所要の位置に向かって回転させられるように、各々の場合に上記スリーブ上をスライドする。これに対して横断方向に、連続したリング5の相対的位置が、例えば境界線17のわずかに上方でリングの内側上において突き出しかつそこで後続のリングの内側と協働する止め具によって調整されることが可能である。この止め具(図3を参照されたい)は、例えば、支持リング6の部品によって形成されることが可能である。しかし、周縁部全体にわたる境界線17の効果的な形成がリング5が各方向において所要の位置をとるように強制するので、この止め具は無くてもよい。
【0016】
各々のホルダ8自体の回転を生じさせるために、伝動部品18が円板7の各々と調和して働かされ、この伝動部品18は、金属シートから打ち出されて曲げられておりかつ例えば上記軸1が中を通って突き出す正方形の凹みを有することによって移動可能であるが回転不可能である形で軸1に係合する部品であることが好ましく、および、この部品は、上記円板に対して相対的に回転可能であるが移動不可能であるか、または、軸1に対して軸方向に平行な制限された移動可能性をせいぜい有するだけであるように、それぞれの円板7に対して連結されている。この伝動部品18は、半径方向に外向きに突き出しかつホルダ8上の回転止め具に係合する突起19を有し、この回転止め具の各々はスリーブ11内のノッチ20の形状である。
【0017】
被加工物搬送台は、最初に、最下のリング5を歯車リング3の上に取り付け、その次に、最下の円板7を、対応する伝動部品18とホルダ8と共に、その支持リング6の上に取り付け、その後に、その次のリング5を取り付ける等によってアセンブリされることが可能である。境界線17の位置と属性とのせいで、これは、上部凹み14がその下部末端においてさえホルダ8のスリーブ11を受け入れるのに十分なだけ幅広であり、かつ、下部凹み15が各々に端縁に向かって広がるので、まったく問題を生じさせない。軸1の方向における円板7の位置が、対応するリング5の位置によって各々の場合に完全に固定されている。一方、各々のリング5の位置は、その次の下部リング上または歯車リング3上のその支持によって結果的に生じる。リング5の適切な方向配置が、その次の下部円板のホルダ8との接触によって、および、最終的には、境界線17のV字形によって自動的に生じさせられるので、リング5の回転位置は各々の場合に概ねアセンブリ中にだけ検査されればよい。
【0018】
図3は、18個のホルダ8を有する円板7と、円板7と調和的に働かされかつ支持リング6上の対応する個数の上部凹み14と下部凹み15と凹み16とを有するリング5との実際的な構成を示す。円板7が支持リング6上に置かれる時にその円板7がリング5に対して相対的に回転することを防止する回転防止装置21も、同じ側に見えている。図から明らかであるように、互いに隣接する開口部の間のウェブは非常に幅が狭く、および、一方、上部凹み14は、角度ピッチの半分だけ下部凹み14に対して相対的にずれている。このことが、被加工物搬送台上のホルダ8の全体的に非常に緻密な配置を可能にする。互いに隣接する開口部の間の境界線17は、この場合も同様に、中間に最下点を有するV字形である。
【0019】
最上のリングにおける最下の凹みと上部凹みとの場合の下部凹みの不在と、これら2つのリングのさらに別のあらゆる特性は別として、すべてのリングと円板は、すべての開口部も同一であるように各々の場合に同一の形に形成されている。これらのリングは、各々の場合に、角度ピッチの概ね倍数の回転において変化しない。これらのリングの各々は円板の1つと共に調和して働かされ、および、上記円板と後続の円板との間の距離を決定する。
【0020】
しかし、この点に関して、および、さらには別の点に関して、説明されている実施形態からの大きな変更が、本発明に範囲からの逸脱なしに可能である。したがって、被覆金属板とリングとが、実質的に円筒形である形状とは別の形状を有することも可能である。さらに、円板のホルダの個数に対応するこれらのグループの開口部の個数が変化することが可能である。軸は、互いに回転不可能な形で連結されておりかつ各々の場合に1つの伝動手段が堅固に連結されることが可能な複数のセクションから成ってもよい。この被加工物搬送台は、さらに、上述の設計よりも複雑な設計を有してもよく、例えば、上述の設計を有しかつ軸線を中心として回転可能な基部上に存在する複数のユニットを有してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 軸
2 基部
3 歯車リング
4 ピニオン
5 リング
6 支持リング
7 円板
8 ホルダ
9 ボルト
10 穴
11 スリーブ
12 穴
13 被加工物
14 上部凹み
15 下部凹み
16 凹み
17 境界線
18 伝動部品
19 突起
20 ノッチ
21 回転防止装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(2)と、その中に固定または取り付けられている軸(1)と、前記軸(1)に沿って互いに連続しかつ前記基部(2)に対して相対的に回転可能である複数の円板(7)とを備え、および、前記円板(7)は、各々の場合に、前記軸(1)から外向きに斜めに離れるように傾斜しておりかつ被加工物(13)のために備えられている、前記円板(7)の周縁部全体にわたって分布している複数のホルダ(8)を備えている塗装システムのための被加工物搬送台において、前記被加工物搬送台は、前記軸(1)と前記円板(7)とを取り囲む被覆金属板であって、前記周縁部全体にわたって分布しておりかつウェブによって各々の場合に隔てられている自由なグループの開口部を残す被覆金属板を有し、および、各々の場合に前記円板(7)の1つに属する前記ホルダ(8)は前記開口部を通って突き出し、および、前記被覆金属板は、前記軸(1)に沿って互いに連続しかつ互いに対して直接的に隣接している複数のリング(5)によって構成されており、および、前記複数のリング(5)は、1つのグループの互いに隣接する開口部の間に存在している前記ウェブの1つを各々の場合に区分する境界線(17)において突き当たることを特徴とする被加工物搬送台。
【請求項2】
例えば、前記互いに隣接するリング(5)の相互回転位置が所要の固定位置に必ず一致するように、少なくとも1つの境界線(17)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の被加工物搬送台。
【請求項3】
前記少なくとも1つの境界線(17)は、少なくとも部分的に概ねV字形であることを特徴とする請求項2に記載の被加工物搬送台。
【請求項4】
グループの前記開口部は各々の場合に同一のサイズであり、同一の高さに位置しており、および、互いに隣接する開口部が各々の場合に互いに対して固定した角度ピッチだけ相対的にずれているように、前記周縁部の全体にわたって均等に分布していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の被加工物搬送台。
【請求項5】
各グループは同一の個数の開口部を有することを特徴とする請求項4に記載の被加工物搬送台。
【請求項6】
前記軸(1)に沿って直接的に互いに連続するグループの前記開口部は、各々の場合に、前記角度ピッチの半分だけ互いに対して相対的にずれていることを特徴とする請求項5に記載の被加工物搬送台。
【請求項7】
前記リング(5)は、各々の場合に、前記角度ピッチにわたる回転に関して不変であるように形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の被加工物搬送台。
【請求項8】
前記リング(5)は、末端位置のリング(5)は別として、互いに同一であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の被加工物搬送台。
【請求項9】
前記金属被覆板は実質的に円筒形の形状を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の被加工物搬送台。
【請求項10】
各々の円板(7)はリング(5)上に支持されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の被加工物搬送台。
【請求項11】
前記円板(7)は各々に環状の形で前記軸(1)を取り囲むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の被加工物搬送台。
【請求項12】
前記リング(5)は、前記円板(7)の1つが各々の場合に上に支持される止め具を各々に内側に備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の被加工物搬送台。
【請求項13】
前記止め具は、オールラウンド(all−round)支持リング(6)の形状であることを特徴とする請求項12に記載の被加工物搬送台。
【請求項14】
前記ホルダ(8)は各々に前記円板(7)上に回転可能な形で取り付けられており、および、前記ホルダ(8)上の回転止め具に作用しかつ各々の場合に前記軸(1)に回転不可能な形で係合する伝動部品(18)が、各々の円板(7)のために備えられていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の被加工物搬送台。
【請求項15】
前記伝動部品(18)は、各々の場合に、前記軸(1)上で軸方向に移動可能であり、かつ、前記円板(7)に対して相対的に軸方向に移動不可能であることを特徴とする請求項14に記載の被加工物搬送台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−523895(P2011−523895A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512874(P2011−512874)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003998
【国際公開番号】WO2009/149864
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(507317351)エルリコン トレーディング アクチェンゲゼルシャフト,トリューブバハ (7)
【Fターム(参考)】