説明

被検体情報取得装置、被検体情報取得システム、表示制御方法、表示方法、及びプログラム

【課題】 従来は、ユーザにより指定された特性情報の指定領域に対して受信器の走査が必要な範囲を把握することができなかった。
【解決手段】 本発明の被検体情報取得装置は、音響波を受信し電気信号に変換するための受信器と、前記受信器を少なくとも一方向に走査するための走査制御部と、表示制御部と、を有し、前記表示制御部は、ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域の情報を受け、表示部に、前記指定領域の第一の方向の長さが前記受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域を、表示させるための情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用診断や非破壊検査等に用いられる被検体情報取得装置、被検体情報取得システム、表示制御方法、表示方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いた光イメージング技術の一つとして、Photo Acoustic Imaging(PAI:光音響イメージング)がある。光音響イメージングでは、光を被検体である生体に照射し、光のエネルギー吸収により腫瘍等の被検部位で発生した音響波を受信器で受信する。そして受信器から出力される受信信号を解析処理することにより、生体内の光学的な特性情報を画像データとして取得する。
【0003】
特許文献1では、保持部材で両側から乳房を保持し、保持部材上を受信器が二次元的に走査しながら音響波を受信する装置について開示されている。受信器を二次元的に走査することで、被検体内の複数位置の特性情報を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−022812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、受信器が二次元的に主走査方向と副走査方向とを走査する装置の場合、走査可能な全領域を走査するのではなく、操作者であるユーザが被検体内の特性情報を取得したい領域を指定することが考えられる。具体的には、保持部材で保持された状態の被検体をカメラで撮影し、その撮影画像を表示しながら操作者であるユーザが表示画面上で所望の領域を指定する方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、指定された領域における特性情報の取得のための音響波の受信時間(全走査位置での音響波の受信に要する時間)は、指定された領域の大きさに比例するわけではない。特に、受信器の走査速度が遅い場合、受信時間は、指定された領域の特性情報を取得するために必要な主走査及び副走査の回数により大きく変わる。典型的には、指定された領域の大きさの増減に対し、段階的に走査回数及び受信時間が増減する場合が多い。しかしながら、従来は指定された領域に対して受信器の走査が必要な範囲をユーザが把握することができなかった。
【0007】
そのため、指定された領域のわずかな違いにより、不要な受信器の主走査数や副走査数が増加し、特性情報の取得のための音響波受信時間、ひいては被検者の拘束時間に冗長な時間を生じさせる可能性があった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑み、ユーザにより指定された領域に対して必要な受信器の走査領域をユーザが把握することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の被検体情報取得装置は、被検体からの音響波を受信し、被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、前記音響波を受信し電気信号に変換するための受信器と、前記受信器を少なくとも一方向に走査するための走査制御部と、表示制御部と、
を有し、前記表示制御部は、ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域の情報を受け、表示部に、前記指定領域の第一の方向の長さが前記受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域を、表示させるための情報を出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の表示制御方法は、被検体の特性情報を取得する領域を表示させる表示制御方法であって、ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域の情報を受けるステップと、前記指定領域の少なくとも第一の方向の長さが、前記被検体からの音響波を受信する受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域を、表示部に表示させるための情報を出力するステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の表示方法は、被検体の特性情報を取得する領域を表示する表示方法であって、被検体の撮影画像を表示するステップと、ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域と、前記指定領域の、少なくとも第一の方向の長さが、前記被検体からの音響波を受信する受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域と、を、表示するステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、受信器を走査して音響波を受信する場合において、ユーザにより指定された特性情報の取得指定領域に対して必要な受信器の走査領域を、ユーザ自身が容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による被検体情報取得装置のブロック図である。
【図2】本発明の指定領域の指定方法と指定領域に対応する三次元領域の一例を示す概念図である。
【図3】本発明の表示制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】第一の実施形態における、走査座標系における指定領域を示す概念図である。
【図5】第一の実施形態における、指定領域と調整後の領域を示す概念図である。
【図6】第一の実施形態の変形例2における、走査座標系における指定領域を示す概念図である。
【図7】第二の実施形態における、走査座標系における指定領域を示す概念図である。
【図8】第二の実施形態における、指定領域と調整後の領域を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者は、ユーザにより指定された領域に対して必要な受信器の走査領域が、受信器の走査幅によって決まることに着目した。詳細は各実施形態において説明するが、本発明は、特性情報を取得するための領域(指定領域)がユーザにより指定された場合に、表示部に、指定領域の少なくとも一方向の長さが受信器の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された領域(調整領域)を表示させることを特徴とする。
【0015】
本発明において、音響波とは、音波、超音波、光音響波、光超音波と呼ばれる弾性波を含み、受信器は、被検体内を伝播した音響波を受信する。つまり、本発明の被検体情報取得装置とは、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、被検体内の特性情報を取得する光音響効果を利用した装置を含む。光音響効果を利用した装置の場合、取得される被検体内の特性情報とは、光照射によって生じた音響波の初期音圧や、あるいは、初期音圧から導かれる光エネルギー吸収密度や、吸収係数、組織を構成する物質の濃度等を反映した被検体情報を示す。物質の濃度とは、例えば、酸素飽和度やオキシ・デオキシヘモグロビン濃度などである。また、特性情報としては、数値データとしてではなく、被検体内の各位置の分布情報として取得しても良い。つまり、吸収係数分布や酸素飽和度分布等の分布情報を画像データとして取得しても良い。
【0016】
また、本発明の被検体情報取得装置は、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波を受信して、被検体内の特性情報を取得する超音波エコー技術を利用した装置であってもよい。この超音波エコー技術を利用した装置の場合、取得される特性情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の符号を付して、説明を省略する。
【0018】
<実施形態1>
本実施形態では、受信器を主走査方向と副走査方向とに走査する光音響効果を利用した装置を例に挙げて、ユーザにより指定された領域(指定領域)の副走査方向の長さが調整された領域(調整領域)を表示する形態について説明する。以下では、まず装置の基本的な構成と各構成の機能について説明し、その後、指定領域の指定方法と本発明の特徴である表示制御方法について説明する。
【0019】
(装置の基本的な構成)
図1は、第1の実施の形態における被検体情報取得装置100と外部装置である操作装置120とからなる被検体情報取得システムの構成を示す概略図である。
【0020】
本実施形態の被検体情報取得装置100は、被検体である生体101を保持する保持部材102、光を照射する照射ユニット103、音響波を受信し受信信号に変換するための受信器104、受信信号を増幅してデジタル信号に変換する計測部105を備える。さらに、デジタル化された受信信号の積算処理等を行う信号処理部106、信号処理部からの出力信号を用いて画像データを生成する画像構成部121、表示制御部130、受信器104の走査制御部107、撮像手段としてのカメラ108を備える。
【0021】
操作装置120は、撮影画像を表示する表示部124と、ユーザが指定領域を指定するための領域指定部123と、画像構成部121で生成された画像を表示する表示部122と、を有する。
【0022】
以下、各構成の詳細を述べる。
【0023】
(保持部材)
保持部材102は、乳房等の生体101を両側から保持する、第一保持部材102Aと第二保持部材102Bとの2枚1対で構成される。両保持部材は、保持間隙と保持圧力を変更するために、図示しない保持機構によって相対位置が制御される。以降の説明において、保持部材102Aと102Bとを区別する必要がない場合は、まとめて保持部材102と表記する。
【0024】
保持部材102で生体101を挟むことで生体101を固定し、生体101が動くことによる計測誤差を低減することができる。また、光の浸達深度に合わせて、生体101を所望の厚さに調整することができる。なお、保持部材102は、光の光路上に位置するため、ポリメチルペンテン等、使用する光に対して高い透過率を有する材料が好ましい。また、受信器104側の保持部材102Aは、受信器104との音響整合性が高い部材であることが好ましい。
【0025】
(照射ユニット)
生体101に対して光を照射する照射ユニット103は、光を発生する光源と、光源からの光を被検体へ導き照射する照射部と、から構成される。光源としては、530〜1300nmの近赤外領域に中心波長を有するパルス光(パルス幅100nsec以下)を発生可能な固体レーザが好ましい。例えば、Yttrium−Aluminium−GarnetレーザやTitan−Sapphireレーザが使用される。なお、光の波長は、検査対象とする生体内の光吸収物質(例えばヘモグロビンやグルコース、コレステロールなど)に応じて530nmから1300nmの間で選択される。照射部としては、例えば、光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズ、光を分散・屈折・反射するプリズム、光を伝搬させる光ファイバ、拡散板等が挙げられる。照射部は、光源から発せられた光が被検体の所望の領域に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。なお、照射部からの光の出射端(つまり照射領域)の位置は走査制御部107により制御される。
【0026】
(受信器)
受信器104は、被検体からの音響波を受信して電気信号(受信信号)に変換するための複数の素子を備える。受信器104の素子としては、圧電効果を用いた変換素子、光の共振を用いた変換素子、静電容量の変化を用いた変換素子などが考えられる。音響波を受信して電気信号に変換できるものであればどのような素子を用いてもよい。なお、発生する音響波の音圧は光の光強度に比例するため、受信信号のSNR(signal−to−noise ratio)を向上させるには受信器の前面の領域を照射することが好ましい。そのため、照射ユニット103の光の出射端と受信器104とは被検体を挟んで対向する位置に配置することが好ましい。そして走査制御部107により、光の出射端と受信器104とは両者の位置関係を保つように同期して走査されることが好ましい。また、照射部が受信器104側にも光を導くことで、生体101に対して受信器104と同じ側からも光を照射することができる。
【0027】
(計測部)
計測部105は、受信器104から入力されるアナログ信号(アナログの受信信号)を増幅する信号増幅部と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部から構成される。信号増幅部では、生体内の深度によらずに均一なコントラストをもつ画像データを得るために、光の照射から音響波が受信器の素子に到達するまでの時間に応じて増幅利得を増減する制御などを行う。
【0028】
(信号処理部)
信号処理部106は、計測部105から出力されたデジタルの受信信号に対して素子の感度ばらつき補正や、物理的または電気的に欠損した素子の補完処理、図示しない記録媒体への記録動作、ノイズ低減のための積算処理などを行う。積算処理は、生体101に対して同じ走査位置で音響波の受信を繰り返し行い、受信信号の加算平均処理を行うことでシステムノイズを低減して、受信信号のSNRを向上するために行う。
【0029】
(画像構成部)
画像構成部121は、信号処理部106から出力された信号を用いて、生体101内の各位置の光学的な特性情報を示す分布(吸収係数分布や酸素飽和度分布等の特性分布)を画像データとして取得する特性情報取得部である。また、生成した画像データに対して、必要に応じて輝度の調整や歪補正、注目領域の切り出しなどの各種補正処理を適用して、より診断に好ましい画像データを取得してもよい。また、ノイズ低減のために同じ位置の特性情報同士の積算処理を行っても良い。表示部122は、画像構成部121より画像データが入力され、特性分布の画像を表示することができる。
【0030】
(走査制御部)
走査制御部107は、上述したように、光の出射端と受信器104の走査位置を制御するための手段である。生体101に対して二次元走査して各走査位置で音響波の受信を行うことで、小型の受信器でも広い範囲の特性情報を得ることができる。ただし、本発明では、受信器を二次元走査する場合だけでなく、受信器を少なくとも一方向に走査できればよい。なお、走査制御部107は、後述の表示制御部130の制御結果に従って、走査領域を変更することができる。
【0031】
(撮影手段)
撮影手段であるカメラ108は、生体101を保持する保持部材102に対して直交する視線方向に設置されており、保持部材を介して生体101を撮影する。撮影された画像は撮影画像処理部133を介して表示部124に送信される。カメラ108の視野は、受信器104の全走査可能範囲が撮影できる視野角で設置されていることが好ましい。撮影画像は表示部124に表示され、ユーザは、表示された撮影画像を参照して、特性情報を取得したい領域(指定領域)を指定する。本実施形態では、表示部124は、特性情報の画像を表示する表示部122とは別に設けたが、1つの表示部に指定領域と特性情報の画像との両方を表示する兼用型であってもよい。
【0032】
(領域指定部)
領域指定部123は、ユーザが指定領域を指定するための入力手段である。ユーザは、表示部124に表示された生体101の撮影画像を参照しながら、指定領域を入力する。領域指定部123としては、マウスやキーボードといったポインティングデバイスでもよく、ペンタブレットタイプのものや表示部124表面に取り付けたタッチパッドでもよい。
【0033】
(表示制御部)
表示制御部130は、ユーザにより指定された指定領域の情報を受け、指定領域の少なくとも第一の方向の長さが受信器の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域を表示部に表示させるための情報を出力する。本実施形態では、指定領域を表示座標系から走査座標系へ変換する領域算出部109と、受信器の少なくとも第一の方向の走査幅に基づいて指定領域の少なくとも第一の方向の長さを補正する領域補正部110と、を有する。また、カメラにより撮影された撮影画像データを表示部124に出力する撮影画像処理部133を有する。
【0034】
本実施形態の領域補正部110は、指定領域の副走査方向の長さを、指定領域の特性情報を取得するのに必要な受信器の走査領域(第一の走査領域)における副走査方向の長さか、第一の走査領域より副走査が一回分少ない第二の走査領域における副走査方向の長さか、にあわせる補正を行う。具体的には、指定領域の副走査方向の長さを、受信器の副走査幅の整数倍の長さに対応するように補正する。本実施形態では第一の方向を副走査方向とし、第二の方向を主走査方向として説明する。表示制御部130の詳細は、図2〜図5を用いて後述する。なお、本実施形態において、主走査方向とは、受信器が各受信位置で音響波を受信しながら走査する方向であり、副走査方向とは、主走査方向に交差する方向である。
【0035】
ただし、本発明においては、指定領域の主走査方向の長さを補正してもよく(実施形態2参照)、主走査方向と副走査方向の長さの両方とも補正してもよい(実施形態3参照)。
【0036】
また、本発明においては、指定領域の長さが補正された補正後の領域を調整領域とする場合だけでなく、指定領域の長さの情報を用いて新たに生成された領域(長さが走査幅の整数倍に調整された領域)を調整領域としてもよい。つまり、表示制御部131が補正処理をすることに限定されない。表示制御部131は、結果的に表示部に調整領域を表示させるための情報を生成できればよい。もちろん、ユーザにより指定された指定領域が、受信器の走査幅の整数倍と同じ場合は、指定領域の情報を調整領域の情報としてそのまま出力してもよい。また、「調整」とは、長さを完全に一致させる場合だけに限定されない。受信器の素子サイズの2〜3倍の誤差を含んでいてもよく、表示された領域が実際の走査領域と対応づけて把握できる程度の誤差が含まれていてもよい。
【0037】
また、本発明の表示制御部130は、図1に示されるように、受信器の走査幅の情報を生成する走査幅情報生成部131と、受信信号同士の積算処理や特性情報同士(画像データ同士)の合成処理の条件等を設定する条件設定部132と、を備えることが好ましい。
【0038】
走査幅情報生成部131は、ユーザからの指示により走査幅に関する情報を生成する。副走査幅及び主走査幅が固定値である場合は本手段は必ずしも必要ないが、副走査幅及び主走査幅は、SNRを向上するための受信信号同士を積算する積算回数や特性情報同士を合成する回数によって変わる。よって、走査幅情報生成部131は、このようなSNRを向上するための設定を受け、走査幅を決定し、走査幅に関する情報を領域補正部110に送信する。詳細は、本実施形態の変形例2において説明する。
【0039】
条件設定部132は、表示制御部130における調整の条件を設定する。本実施形態においては、指定領域の副走査方向の長さを、指定領域の特性情報を取得するのに必要な走査領域(第一の走査領域)における副走査方向の長さと、第一の走査領域より副走査が一回分少ない第二の走査領域における副走査方向の長さ、のうちどちらに調整するかを設定する。この条件設定についても図3〜5を用いて詳細に説明する。
【0040】
以上の各部材により本実施形態の被検体情報取得システムは構成される。なお、図1では、操作装置120を外部装置とし、被検体情報取得装置100と操作装置120とを別々のハードウェア構成としているが、それぞれが有する機能を集約して一体化する構成でも構わない。
【0041】
(指定領域の指定方法)
次に、本実施形態における指定領域の指定方法について説明する。本発明の場合、生体内部で発生した音響波の信号も取得可能であるので、特性分布は、二次元(断層像)の画像だけではなく、三次元の画像としても取得可能である。図2(a)は、三次元画像を取得する際において、表示画面上での指定領域の指定方法を示す概念図である。また、図2(b)は、指定領域に対応する生体内の三次元の領域を示す概念図である。
【0042】
図2(a)に示すように、ユーザが、撮影画像が表示された表示画面上で特性情報を取得したい領域として二次元の矩形を設定することで、指定領域201が指定される。本実施形態では領域指定部123としてマウスを用い、カーソル204を操作して矩形を入力することで、任意サイズの領域を指定する。ユーザは、生体101の撮影画像を見ながら表示画面上で指定領域201を指定することができるため、意図した指定領域201を入力することができる。
【0043】
図2(b)の走査領域303は、表示座標系の指定領域201に対応した、受信器104の走査座標系における走査領域を示す。101は生体を示す。図2(b)の右図は、図2(b)の左図の矢印305で示す向きから見た際の概念図である。三次元領域306は、走査領域303を受信器が走査することにより特性情報が取得可能な三次元の領域である。三次元領域306は、保持部材102間の距離から定まる。測定時は、保持部材102の距離は固定されている。このように、表示画面上の表示座標系で指定領域201を指定することにより、実際の生体内における三次元の指定領域として三次元領域306が決定する。つまり、表示座標系で指定領域201を指定していることは、三次元座標系で三次元の指定領域を指定していることを意味する。
【0044】
(表示制御方法のフロー)
以下で図3を参照しながら本実施形態の表示制御の処理の流れを説明する。図3は本実施形態の表示制御のフローチャートである。
【0045】
図3に示すフローは、装置起動後、生体101に対する特定方向からの撮影画像が表示されているときに、ユーザが表示画面上において指定領域を入力する状況から開始される。つまり、本実施形態の表示方法としては、まず被検体の撮影画像が表示されるステップを有している。本実施形態においては、領域指定部123としてマウスを用いる。
【0046】
S301では、ユーザが表示画面上においてマウスをダウンしたポイントが指定領域の始点として入力される。S302では、ユーザがマウスをドラッグし、指定領域の大きさを変更すると、指定領域の大きさが領域算出部109に送信される。
【0047】
S303では、領域算出部109において、受信した指定領域を表示座標系から受信器の走査座標系に変換する。S304では、領域補正部110において、走査座標系に変換された指定領域の副走査方向の長さを、受信器の副走査幅の整数倍の長さにあわせる補正を行う。本発明において、整数とは正の整数のみを考えるものとする。そして、S305で補正された指定領域を走査座標系から表示座標系に変換して、表示部124に送信する。以下で、S303からS305までの処理の概念を具体的に説明する。
【0048】
図4は、走査座標系における指定領域を示す概念図である。図4では、副走査方向における受信器104の走査幅が、受信器104の副走査方向の大きさと同じ場合を例にあげて説明する。ただし、受信器104の大きさは、複数の素子が設けられている有効素子領域(画像データ生成に用いるための受信信号を出力する素子が設けられた領域)の大きさと同じとして説明する。例えば、受信器104の副走査方向の大きさが5cmの場合、1ストライプ分の主走査を行うと副走査方向に5cmのストライプ幅の特性情報を取得でき、受信器の副走査(404A、404B)の幅も、受信器104の副走査方向の大きさと同じ5cmである。ここで、主走査方向に走査して音響波を受信する直線状の領域を、ストライプと定義する。副走査幅は、あらかじめ決められていてもよいし、走査幅情報生成部131より走査幅の情報がその都度入力されてもよい。
【0049】
本実施形態において、走査座標系に変換された指定領域401の副走査方向の長さが13cmの場合、この大きさの領域の特性情報を取得するには受信器104は3ストライプ分の主走査(つまり、2回の副走査)を行う必要がある。ここで、必要な主走査(403A、403B、403C)方向の長さは、走査座標系での指定領域401の長さと同じであるとして説明する。
【0050】
指定領域の情報を受けた領域補正部110は、走査座標系での指定領域の副走査方向の長さを、15cmに補正するか、もしくは10cmに補正する。つまり、3ストライプ分の主走査(2回の副走査)で取得できる第一の走査領域の長さに補正するか、もしくは2ストライプ分の主走査(1回の副走査)で取得できる第二の走査領域の長さに補正する。
【0051】
どちらに補正するかは予め決められていてもよいし、メニュー画面上でのユーザからの指示を受けて条件設定部132が設定した条件がその都度入力されてもよい。具体的には、走査座標系の変換された指定領域の副走査方向の長さZが10cm以上12.5cmより小さい場合は10cmに補正するとし、Zが12.5より大きく15cm以下の場合は15cmに補正するというように、走査幅の半分の大きさを基準にした条件にしてもよい。また、Zが10cmより大きく15cmより小さい場合は全て10cmに補正する条件にしてもよい。もちろん、Zが10cmより大きく15cmより小さい場合は全て15cmに補正する条件設定にしてもよい。
【0052】
つまり、指定領域の長さを、第一の走査領域(指定領域の特性情報を取得するのに必要な走査領域)における長さに補正するか、第二の走査領域(第一の走査領域より副走査が一回分少ない走査領域)における長さに補正するか、を設定するステップを有するとよい。本実施形態においては、副走査方向における受信器104の走査幅が、受信器104の大きさと同じである。よって、受信器の副走査幅をLとし、指定領域の副走査方向の長さZが、nL<Z<(n+1)Lの場合、指定領域の副走査方向の長さを、nL又は(n+1)Lのどちらにあわせるかの補正条件を設定している。ここでnは正の整数である。
【0053】
以下、走査座標系での指定領域の副走査方向の長さを、15cm、つまり、3回の主走査(2回の副走査)で取得できる領域の長さに補正した例を説明する。
【0054】
S305では、領域補正部110は、走査座標系から表示座標系に変換された補正後の領域の情報を表示部124に送信する。つまり、表示部124に調整領域を表示させるための情報を出力する。
【0055】
S306では、調整領域として補正後の領域を表示部124に表示させる。図5は表示部124に表示された際の模式図を示す。補正後の領域502は、3回の主走査(2回の副走査)で取得できる領域を表している。
【0056】
ライン503A、503B、503C、503D(区別する必要がない場合は503と表記する)は、走査座標系における副走査幅を示すラインを表示座標系に変換した情報である。領域504は領域補正部110での補正によって追加された、指定領域201からの追加分を示す領域である。つまり、指定領域201と、調整領域である補正後の領域502と、の差分を示す。この差分の領域は、説明の便宜上、図5に示しているが、実際の表示画面にも、他の領域と区別してユーザが認識できるように表示してもよいし、表示しなくてもよい。
【0057】
副走査の幅を示すライン503は、領域指定部123によって指定領域201を指定しているときに表示させることも可能である。つまり、表示制御部130は、ユーザが指定領域を指定可能な状態(モード)において、走査幅を示すライン等のガイドを表示させることもできる。つまり、表示制御部130は、走査幅を示すガイドを表示するための表示情報を出力することも可能である。これによって、ユーザは指定領域201の指定時に、走査回数に関係する受信器の副走査幅を把握しながら指定領域201を指定することが可能となる。走査幅を示すライン等の情報以外にも、直接走査回数を示すガイドを表示してもよい。
【0058】
また、指定領域201の指定中、つまり、ユーザが指定領域を指定可能な状態(モード)においては、補正後の領域を示す矩形だけでなく、指定領域201自体の大きさを示す矩形を表示することも可能である。つまり、表示制御部130は、指定領域を表示するための表示情報を出力することも可能である。指定領域201自体の大きさを表示することで、指定している領域と補正後の領域502との関係を把握しながら入力することができる。
【0059】
また、S302からS306の処理を連続して行うことで、領域指定部123で指定領域を指定中に、随時、補正後の領域が表示されるので、受信器の走査領域がリアルタイムに把握可能となる。
【0060】
S307でマウスアップにより指定領域の終点指定がされる。矩形の入力としては始点を指定領域の左上、終点を右下としたが、始点を指定領域の右上、終点を左下としてもよい。この終点指定により、表示されている補正後の領域が、実際に受信器の走査によって特性情報を取得する取得領域として設定される。
【0061】
図5の例では、ユーザがマウスをドラッグすると、指定領域201を示す矩形の画像が生体101の撮影画像と共に重畳されて表示される。この指定領域201が副走査幅の3倍に満たない場合は、補正後の領域502が矩形の画像として生体101の撮影画像に重畳されて例えば一次的に表示される。この補正後の領域502の大きさはマウスアップされない限り随時変更されうる。そして、ユーザがマウスアップすると補正後の領域502を示す矩形の画像の大きさが固定されて表示される。
【0062】
補正後の領域は、第一又は第二の走査領域の副走査方向の長さ(具体的には副走査幅5cmの整数倍である10cm又は15cm)にあわせたため、補正後の領域の副走査方向の長さと、受信器の実際の走査領域の副走査方向の長さは同じとなる。よって、補正後の領域の情報を表示制御部130から走査制御部107に送信することで、走査制御部107は補正後の領域の情報に基づいて受信器を走査する。そして、被検体情報取得装置100は、補正後の領域に対応する被検体内の三次元の領域の特性情報を取得することができる。
【0063】
また、上述したように本発明においては、指定領域の長さが補正された補正後の領域を調整領域とする場合だけでなく、指定領域の長さの情報を用いて新たに生成された領域(長さが走査幅の整数倍に調整された領域)を調整領域としてもよい。つまり、表示制御部131が補正処理をすることに限定されない。表示制御部131は、結果的に表示部に調整領域を表示させることができる情報を生成できればよい。もちろん、ユーザにより指定された指定領域が、受信器の走査幅の整数倍と同じ場合は、指定領域の情報を調整領域の情報としてそのまま出力してもよい。
【0064】
(変形例1)
さらに、本発明の表示制御のフローは上述のフローに限定されるものではない。上述の例では、S303において、領域算出部109が指定領域201を表示座標系から走査座標系に変換した後、領域補正部110が、変換された指定領域を補正し補正後の領域を出力した。しかしながら、領域算出部109は、指定領域を表示座標系に変換した後、その指定領域の特性情報を取得するために必要な第一の走査領域を算出し、第一の走査領域を領域補正部110に送信してもよい。そして領域補正部110は、その走査領域の情報を受けて、決められた条件をもとに走査領域を調整し、表示座標系に変換する。
【0065】
以下で、この場合の具体例(変形例1)を説明する。具体例では、上述のフローでの説明と同様に、副走査方向における受信器104の走査幅が、受信器104の副走査方向の大きさと同じ5cmの場合を例にあげて説明する。主走査の長さは、走査座標系での指定領域の長さと同じであるとする。
【0066】
走査座標系に変換した指定領域の副走査方向の長さが10cmより大きく15cm以下であるとすると、この大きさの領域の特性情報を取得するには受信器104は3ストライプ分の主走査(つまり、2回の副走査)を行う必要がある。よって、領域算出部109は、第一の走査領域として、指定領域の副走査方向の長さを15cmに補正された領域(主走査3ストライプ分、つまり副走査2回分の領域)を算出する。
【0067】
ここで、領域補正部110における補正の条件が、走査幅の半分の大きさである2.5cmを基準として設定されているとする。この場合、領域補正部110は、走査座標系における指定領域の副走査方向の長さが12.5cmを超えていた時には、領域算出部109で算出した第一の走査領域をそのまま走査座標系から表示座標系に変換して調整領域とし、表示部124に調整領域の表示情報を送信する。逆に、走査座標系における指定領域の副走査方向の長さが12.0cm以上12.5cm未満であった時には、領域補正部110は、走査領域を主走査2ストライプ分の第二の走査領域(副走査1回分)に補正する。そして、走査座標系から表示座標系に変換し、その補正後の領域の情報を調整領域の表示情報として表示部124に送信する。
【0068】
このように、本変形例では、指定領域をもとに第一の走査領域を算出した後、補正の条件によって、第一の走査領域をそのまま調整領域として、又は、第一の走査領域を第二の領域に補正し調整領域として出力する。補正の条件の基準は、走査幅の半分の大きさに限定されない。前述した制御フローで説明した場合と同様に、補正の条件は予め決められていてもよいし、メニュー画面上でのユーザからの指示を受けて条件設定部132が設定した条件がその都度入力されてもよい。
【0069】
また、上記2つの表示制御フローでは、指定領域を表示座標系から走査座標系に変換して補正し、補正後の領域を走査座標系から表示座標系に変換し直していた。しかしながら、指定領域を表示座標系のまま補正してもよい。この場合は、走査幅を走査座標系から表示座標系に変換しておく必要がある。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の構成により、ユーザにより指定された指定領域に対して必要な受信器の走査領域をユーザが直観的に把握することができる。よって、指定された領域のわずかな違いにより増加する不要な受信器の走査数によって、特性情報の取得のための音響波の受信時間、ひいては被検者の拘束時間に冗長な時間が生じる可能性が低減される。
【0071】
(変形例2)
次に、実施形態1の変形例2を説明する。本変形例では、副走査方向における受信器の走査幅が受信器の副走査方向の長さより短く、受信器の主走査方向の走査軌道が副走査方向に重畳する場合について説明する。本変形例の被検体情報取得システムの構成は図1と同様であるため、説明を省略する。また、表示制御のフローも基本的には図3と同じであるため、以下では、S304以降の補正部分について説明する。
【0072】
図6は、走査座標系における指定領域を示す概念図である。図6では、副走査方向における受信器104の走査幅が2.5cm、受信器104の副走査方向の長さが5cmである場合を例にあげて説明する。この際、受信器104の大きさを、複数の素子が設けられている有効素子領域の大きさと同じとする。
【0073】
走査座標系に変換された指定領域601の副走査方向の長さが13cmとすると、この大きさの領域の特性情報を取得するには受信器104は5ストライプ分の主走査(つまり、4回の副走査)を行う必要がある。ここで、必要な主走査方向の長さは、走査座標系での指定領域401の長さと同じであるとする。
【0074】
そこで、領域補正部110は、走査座標系での指定領域の副走査方向の長さを、15cmに補正するか、もしくは12.5cmに補正する。つまり、5ストライプ分の主走査(4回の副走査)で取得できる第一の走査領域の長さに補正するか、もしくは4ストライプ分の主走査(3回の副走査)で取得できる第二の走査領域の長さに補正する。どちらに補正するかは予め決められていてもよいし、ユーザからの指示を受けて条件設定部132が設定した条件がその都度入力されてもよい。
【0075】
このように、本変形例は、受信器の副走査幅が受信器の副走査方向の長さより短い。これは、SNRを向上するために、信号処理部が、複数の受信信号同士の積算を行うためである。具体的には、受信器が有する複数の素子のうちの夫々異なる2つ以上の素子が、夫々異なる時刻(時点)において、被検体に対して同じ走査位置で音響波を受信した際に、前記夫々異なる2つ以上の素子から夫々出力される電気信号同士を積算する。この複数の受信信号の積算数(積算回数)によって、受信器の走査幅が決定する。走査幅が小さければ小さいほど、走査領域は重畳するので積算回数が増え、SNRは向上することになる。
【0076】
ただし、本発明においては、SNRを向上するために、受信信号同士ではなく、特性情報同士(画像データ同士)の合成を行っても良い。具体的には、画像構成部は、複数の素子から出力される複数の電気信号を用いて、副走査を1回行う毎に1ストライプ分ずつの特性情報を取得する。そして、複数のストライプ分の特性情報を合成して被検体内の特性分布を取得する。つまり、画像構成部は、被検体内の同じ位置に対応する特性情報同士を合成(加算や乗算等)する。この合成する回数によって、受信器の走査幅が決定する。
また、受信信号同士の積算処理と特性情報同士の合成処理の両方を行っても良い。
【0077】
よって、走査幅情報生成部131は、ユーザからの積算回数や合成回数に関する指示を受け、主走査の走査幅や副走査の走査幅に関する情報を生成する。そして、走査幅に関する情報を領域補正部110に送信する。
【0078】
また、図6を用いて説明した走査軌道では、1ストライプは一度の往路走査だけであったが、1ストライプを往復走査したり複数回走査してもよい。さらに、一番上と一番下のストライプでは積算回数がそれ以外のストライプでの積算回数に比べて少なくなるため、一番上と一番下のストライプのみ多く走査してもよい。
【0079】
また、図4や図6では、受信器104の大きさを複数の素子が設けられている有効素子領域の大きさと同じとして説明したが、受信器104の大きさより有効素子領域が小さい場合(受信信号を用いないダミーの素子等が周囲に設けられている場合等)もある。この場合は、有効素子領域の大きさをもとに走査幅を算出し、指定領域の補正を行うとよい。この際、有効素子領域の大きさをもとに算出された走査幅をもとに指定領域の補正を行った領域を調整領域として表示するとよい。
【0080】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、表示部に、指定領域の主走査方向の長さが主走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域を表示する形態について説明する。つまり、本実施形態では、第一の方向を主走査方向とし、第二の方向を副走査方向として説明する。
【0081】
本実施形態の被検体情報取得システムの構成は実施形態1と同様であるが、表示制御部130の機能が異なる。よって、実施形態1と同様の構成については説明を省略し、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。また、表示制御のフローも基本的には図3を用いて説明した実施形態1のフローと同じであるため、以下では、S303以降の補正部分について説明する。
【0082】
まず、領域算出部109では、領域指定部123において撮影画像上で指定された指定領域701(図8参照)に基づき、表示座標系から走査座標系に変換する(S303)。図7は走査座標系における指定領域を示す概念図である。走査座標系における指定領域から、受信器の主走査回数が決定する。
【0083】
図7では、主走査方向における受信器104の走査幅が、受信器104の主走査方向の大きさと同じ場合を例にあげて説明する。受信器104は、各走査位置で音響波の受信を行う。この際、受信器104の大きさを、有効素子領域の大きさと同じとする。例えば、受信器104の主走査方向の大きさが5cmの場合、受信器の主走査方向の走査幅(602A、602B、602C)も5cmであるとする。走査幅は、あらかじめ決められていてもよいし、走査幅情報生成部131により走査幅の情報がその都度入力されてもよい。
【0084】
走査座標系に変換された指定領域603の主走査方向の長さが18cmとすると、この大きさの領域の特性情報を取得するには、受信器を主走査方向に走査位置をずらしながら音響波を受信する。具体的には、受信器の主走査回数は3回、つまり4つの走査位置で音響波を受信することになる。この場合、副走査を行う必要はない。
【0085】
次に、領域補正部110で、走査座標系に変換された指定領域の主走査方向の長さを、受信器の主走査幅の整数倍の長さに対応するように補正する(S304)。具体的には、走査座標系での指定領域の主走査方向の長さを、20cmに補正するか、もしくは15cmに補正する。つまり、4つの走査位置(3回分の主走査)で取得できる第一の走査領域の長さに補正するか、もしくは、3つの走査位置(2回分の主走査)で取得できる第二の走査領域の長さに補正する。
【0086】
どちらに補正するかは予め決められていてもよいし、ユーザからの指示を受け条件設定部132で設定された条件がその都度入力されてもよい。具体的には、指定領域の主走査方向の長さZが、15cm以上17.5cmより小さい場合は15cmに補正するとし、Zが17.5cmより大きく20cm以下の場合は20cmに補正するというように、走査幅の半分の大きさを基準にした条件にしてもよい。また、Zが15cmより大きく20cmより小さい場合は全て15cmに補正するか、もしくは20cmに補正する条件設定にしてもよい。
【0087】
つまり、実施形態1と同様に、指定領域の長さを、第一の走査領域における長さに補正するか、第二の走査領域における長さに補正するかを設定するステップを有するとよい。本実施形態では、走査座標系での指定領域の主走査方向の長さを、20cm、つまり、4つの走査位置(3回の主走査)で取得できる領域の長さに補正した例を説明する。
【0088】
S305では、領域補正部110は、走査座標系から表示座標系に変換された補正後の領域を調整領域として表示するための表示情報を表示部124に送信する。
【0089】
S306では、補正後の領域を表示部124に表示させる。図8は指定領域701と補正後の領域702とが表示された際の模式図を示す。図8の補正後の領域702は、3回の主走査(2回の副走査)で取得できる領域を表している。
【0090】
ライン703A、703B、703C、703D、703E(区別する必要がない場合は703と表記する)は、走査座標系における受信器の主走査幅を示すラインを表示座標系に変換した情報である。領域704は領域補正部110での補正によって追加された、指定領域701からの追加分を示す領域である。つまり、指定領域701と調整領域である補正後の領域702との差分を示す。この差分の領域は、説明の便宜上、図8に示しているが、実際の表示画面にも、他の領域と区別してユーザが認識できるように表示してもよいし、表示しなくてもよい。
【0091】
主走査の幅を示すライン703は、領域指定部123によって指定領域701を指定しているときに表示することも可能である。これによって、指定領域701の指定時に、受信器の主走査の幅を把握しながら指定領域701を指定することが可能となる。走査幅を示すライン等の情報以外にも、走査回数を示す情報を表示してもよい。また、指定領域701の指定中には、指定領域701自体の大きさを示す矩形を表示することも可能である。指定領域201自体の大きさを示す矩形を表示することにより、指定している領域と補正後の領域との関係を把握しながら入力することができる。
【0092】
また、S302からS306の処理を連続して行うことで、領域指定部123で指定領域を指定中に、随時、補正後の領域が表示されるので、受信器の走査領域がリアルタイムに把握可能となる。
【0093】
S307で、マウスアップにより指定領域の終点指定がされる。この終点指定により、表示されている補正後の領域が実際に受信器の走査によって特性情報を取得する取得領域として設定される。補正後の領域の情報は表示制御部130から走査制御部107に送信され、この補正後の領域に基づいて走査制御部107は受信器を走査する。受信器の走査は、ステップアンドリピート式に各走査位置で止まって音響波を受信し次の走査位置まで移動する走査形態としてもよいが、主走査方向においては等速移動で連続的に走査する形態としてもよい。受信器を連続的に走査する場合、光が照射された時点における受信器の位置が走査位置となり、主走査の回数は、1ストライプにおいて各走査位置に移動する回数を示す。
【0094】
このようにして、被検体情報取得装置100は、補正後の領域に対応する被検体内の三次元の特性情報を取得することができる。
【0095】
以上説明したように、ユーザが指定した指定領域の主走査方向の長さを補正することにより、指定領域に対して必要な受信器の走査領域をユーザが直感的に把握することができる。ただし、実施形態1と同様に、本発明においては、指定領域の長さが補正された補正後の領域を調整領域とする場合だけでなく、指定領域の長さの情報を用いて新たに生成された領域(長さが走査幅の整数倍に調整された領域)を調整領域としてもよい。つまり、表示制御部131が補正処理をすることに限定されない。表示制御部131は、結果的に表示部に調整領域を表示させることができる情報を生成できればよい。もちろん、ユーザにより指定された指定領域が、受信器の走査幅の整数倍と同じ場合は、指定領域の情報を調整領域の情報としてそのまま出力してもよい。
【0096】
また、実施形態1の変形例1と同様に、本実施形態においても、領域算出部109は、指定領域を表示座標系に変換した後、その指定領域を取得するために必要な第一の走査領域を算出し、第一の走査領域を領域補正部110に送信してもよい。領域補正部110は、第一の走査領域の情報を受けて、決められた条件をもとに補正後の領域を生成し、表示座標系に変換する。
【0097】
さらに、指定領域を表示座標系のまま補正してもよい。この場合、走査幅を走査座標系から表示座標系に変換する必要がある。
【0098】
また、実施形態1の変形例2で説明したように、本実施形態においても、複数の受信信号同士の積算を行ってSNRを向上するために、受信器の主走査方向の走査位置を重畳させてもよい。つまり、本実施形態は、主走査方向における受信器の走査幅が、受信器の主走査方向の長さより短い場合も適用できる。表示制御フローは、実施形態1の変形例2と同じように、走査幅情報生成部131が、ユーザからの受信信号同士の積算回数や特性情報同士(画像データ同士)の合成回数に関する指示を受け、主走査の走査幅に関する情報を生成し、領域補正部110に送信する。このように、主走査方向においても走査位置を重畳させることで、被検体情報取得装置100は、SNRを向上した画像データを取得することができる。
【0099】
<実施形態3>
本発明は、指定領域の主走査方向の長さ及び副走査方向の長さのどちらも調整された調整領域を表示してもよい。本実施形態は、実施形態1、2のそれぞれの領域算出部109と領域補正部110の機能を組み合わせることにより、指定領域の主走査方向の長さ及び副走査方向の長さのどちらも補正する。
【0100】
領域算出部109では、指定領域の情報をもとに、実施形態1の処理と同様に副走査の回数を算出し、実施形態2の処理と同様に主走査の回数を算出する。
【0101】
領域補正部110では、実施形態1の処理と同様に副走査幅に基づいて指定領域の副走査方向の長さの補正を行った後、実施形態2の処理と同様に主走査に基づいて指定領域の補正を行なう。そして、領域補正部110は、表示部124に補正後の領域を表示させるための情報を出力する。
【0102】
上記の構成によって、ユーザが指定した指定領域の主走査及び副走査方向の長さが調整された調整領域を表示部に表示させることにより、指定領域に対して必要な受信器の走査領域をユーザが直感的に把握することができる。よって、指定された領域のわずかな違いにより増加する不要な受信器の走査によって、特性情報の取得のための音響波の受信時間、ひいては被検者の拘束時間に冗長な時間が生じる可能性が低減される。
【0103】
<実施形態4>
また、上記実施形態1〜3では、光を被検体に照射することにより発生した音響波を受信する光音響効果を利用した被検体情報取得装置及びシステムについて説明したが、本発明は、超音波エコーを利用した被検体情報取得装置及びシステムにも適用できる。この場合、受信器が受信する音響波は、被検体に送信された超音波が被検体内で反射して返ってきた反射波である。超音波エコーを利用した装置の場合、受信器は、超音波を被検体に送信するための送信器を兼ねていてもよい。
【0104】
<実施形態5>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した各実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0105】
100 被検体情報取得装置
101 生体
102 保持部材
103 照射ユニット
104 受信器
105 計測部
106 信号処理部
107 走査制御部
108 カメラ
109 領域算出部
110 領域補正部
120 操作装置
121 画像構成部
122 表示部
123 領域指定部
124 表示部
130 表示制御部
131 走査幅情報生成部
132 条件設定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの音響波を受信し、被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
前記音響波を受信し電気信号に変換するための受信器と、
前記受信器を少なくとも一方向に走査するための走査制御部と、
表示制御部と、
を有し、
前記表示制御部は、
ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域の情報を受け、
表示部に、前記指定領域の第一の方向の長さが前記受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域を、表示させるための情報を出力する
ことを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記第一の方向の走査幅をLとし、前記指定領域の前記第一の方向の長さがnLより大きく(n+1)Lよりも小さい場合(nは正の整数)、
前記表示制御部は、前記指定領域の前記第一の方向の長さがnL又は(n+1)Lに対応するように調整された前記調整領域を前記表示部に表示させるための情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記走査制御部は、前記受信器を二方向に走査し、
前記第一の方向は、前記受信器が各受信位置で音響波を受信しながら走査する主走査方向に交差する副走査方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記受信器は、前記音響波を受信し電気信号に夫々変換する複数の素子を有し、
前記表示制御部は、
前記複数の素子のうち夫々異なる2つ以上の素子が、異なる時点で前記被検体に対して同じ走査位置で音響波を受信した際に前記夫々異なる2つ以上の素子から夫々出力される電気信号同士を積算する積算回数に基づいて、前記受信器の前記第一の方向の走査幅を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
前記受信器は、前記音響波を受信し電気信号に夫々変換する複数の素子を有しており、
前記被検体情報取得装置は、
前記複数の素子から出力される複数の電気信号を用いて、前記副走査を1回行う毎に1ストライプ分ずつ特性情報を取得し、複数のストライプ分の特性情報を合成して被検体内の特性分布を取得する特性情報取得部をさらに有し、
前記表示制御部は、前記ストライプ毎の特性分布における、被検体内の同じ位置に対応する特性情報同士が合成される回数に基づいて、前記受信器の前記第一の方向の走査幅を決定することを特徴とする請求項3に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記指定領域を指定可能な状態においては、前記受信器の第一の方向の走査幅又は走査回数を示す情報を前記表示部にさらに表示させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記指定領域を指定可能な状態においては、前記指定領域を前記表示部にさらに表示させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項8】
前記被検体を撮影する撮影手段をさらに有し、
前記表示制御部は、前記指定領域を指定可能な状態においては、前記被検体の撮影画像を前記表示部にさらに表示させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項9】
前記受信器は、前記音響波を受信し電気信号に夫々変換する複数の素子を有し、
前記複数の素子から出力される複数の電気信号を用いて前記被検体内の特性情報を取得する特性情報取得部をさらに有し、
前記走査制御部は、前記表示制御部から出力される情報に基づいて前記受信器を走査させ、
前記特性情報取得部は、前記受信器の走査により得られる複数の電気信号を用いて前記被検体内の3次元の領域の特性情報を取得することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項10】
被検体からの音響波を受信し、被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
前記音響波を受信し電気信号に変換するための受信器と、
前記受信器を少なくとも一方向に走査するための走査制御部と、
表示制御部と、
を有し、
前記表示制御部は、
ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域の情報を受け、
表示部に、前記指定領域の第一の方向の長さが、前記受信器を走査して前記指定領域の特性情報を取得するのに必要な第一の走査領域における前記第一の方向の長さか、前記第一の走査領域より前記第一の方向の走査が一回分少ない第二の走査領域における前記第一の方向の長さか、に対応するように調整された調整領域を、表示させるための情報を出力する
ことを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項11】
光を発生する光源をさらに有し、
前記受信器は、前記被検体に前記光が照射されることにより発生する音響波を受信することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置と、
前記被検体の撮影画像を表示する前記表示部と、
前記指定領域をユーザが指定するための領域指定部と、を有することを特徴とする被検体情報取得システム。
【請求項13】
被検体の特性情報を取得する領域を表示させる表示制御方法であって、
ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域の情報を受けるステップと、
前記指定領域の少なくとも第一の方向の長さが、前記被検体からの音響波を受信する受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域を、表示部に表示させるための情報を出力するステップと、
を有することを特徴とする表示制御方法。
【請求項14】
前記第一の方向の走査幅をLとし、前記指定領域の前記第一の方向の長さがnLより大きく(n+1)Lよりも小さい場合(nは正の整数)、
前記情報を出力するステップでは、前記指定領域の第一の方向の長さがnL又は(n+1)Lに対応するように調整された前記調整領域を前記表示部に表示させるための情報を出力することを特徴とする請求項13に記載の表示制御方法。
【請求項15】
前記第一の方向は、前記受信器が各受信位置で音響波を受信しながら走査する主走査方向と交差する副走査方向であることを特徴とする請求項13又は14に記載の表示制御方法。
【請求項16】
前記受信器が有する、前記音響波を受信し電気信号に夫々変換する複数の素子のうち、夫々異なる2つ以上の素子が、異なる時点で前記被検体に対して同じ走査位置で音響波を受信した際に前記夫々異なる2つ以上の素子から夫々出力される電気信号同士を積算する積算回数に基づいて、前記受信器の前記第一の方向の走査幅を決定するステップを、さらに有することを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【請求項17】
前記受信器が有する、前記音響波を受信し電気信号に夫々変換する複数の素子から出力される複数の電気信号を用いて、前記副走査を1回行う毎に1ストライプ分ずつ特性情報を取得し、複数のストライプ分の特性情報を合成して被検体内の特性分布を取得するステップをさらに有し、
前記ストライプ毎の特性分布における、被検体内の同じ位置に対応する特性情報同士が合成される回数に基づいて、前記受信器の前記第一の方向の走査幅を決定することを特徴とする請求項15に記載の表示制御方法。
【請求項18】
前記指定領域を指定可能な状態においては、前記受信器の第一の方向の走査幅又は走査回数を示す情報を前記表示部にさらに表示させることを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【請求項19】
前記指定領域を指定可能な状態においては、前記指定領域を前記表示部にさらに表示させることを特徴とする請求項13乃至18のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【請求項20】
前記指定領域を指定可能な状態においては、前記被検体の撮影画像を前記表示部にさらに表示させることを特徴とする請求項13乃至19のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【請求項21】
前記情報を出力するステップは、
前記指定領域を前記表示部の表示座標系から前記受信器の走査座標系に変換するステップと、
前記表示座標系に変換された指定領域の前記第一の方向の長さを前記受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに補正するステップと
補正された前記走査座標系の指定領域を前記表示座標系に変換し、出力するステップと、
を含むことを特徴とする請求項13乃至20のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【請求項22】
被検体の特性情報を取得する領域を表示させる表示制御方法であって、
ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域の情報を受けるステップと、
前記指定領域の少なくとも第一の方向の長さが、受信器を走査して前記指定領域の特性情報を取得するのに必要な第一の走査領域における前記第一の方向の長さか、前記第一の走査領域より前記第一の方向の走査が一回分少ない第二の走査領域における前記第一の方向の長さか、に対応するように調整された調整領域を、表示部に表示させるための情報を出力するステップと、
を有することを特徴とする表示制御方法。
【請求項23】
被検体の特性情報を取得する領域を表示する表示方法であって、
被検体の撮影画像を表示するステップと、
ユーザにより指定された、特性情報を取得するための指定領域と、
前記指定領域の、少なくとも第一の方向の長さが、前記被検体からの音響波を受信する受信器の前記第一の方向の走査幅の整数倍の長さに対応するように調整された調整領域と、を、表示するステップと、
を有することを特徴とする表示方法。
【請求項24】
前記第一の方向の走査幅をLとし、前記指定領域の前記第一の方向の長さがnLより大きく(n+1)Lよりも小さい場合(nは正の整数)、
前記指定領域の第一の方向の長さがnL又は(n+1)Lに対応するように調整された前記調整領域を表示することを特徴とする請求項23に記載の表示方法。
【請求項25】
前記第一の方向は、前記受信器が各受信位置で音響波を受信しながら走査する主走査方向と交差する副走査方向であることを特徴とする請求項23又は24に記載の表示方法。
【請求項26】
前記受信器の第一の方向の走査幅又は走査回数を示す情報を表示するステップをさらに有することを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1項に記載の表示方法。
【請求項27】
請求項13乃至26のいずれか1項に記載の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−52225(P2013−52225A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156629(P2012−156629)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】