被検出物質の検出方法
【課題】界面活性剤を用いた洗浄操作を行わずに蛍光バックグラウンドを低減させることができ、被検出物質を正確に検出することができる方法を提供すること。
【解決手段】シグナル発生物質と試料中の被検出物質との複合体が固定化された固相担体を調製する工程と、この固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程と、固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、被検出物質を検出する工程とを含む被検出物質の検出方法を提供する。
【解決手段】シグナル発生物質と試料中の被検出物質との複合体が固定化された固相担体を調製する工程と、この固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程と、固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、被検出物質を検出する工程とを含む被検出物質の検出方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる被検出物質を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中の被検出物質を検出する方法としては、特許文献1記載の方法が知られている。特許文献1には、試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)によってリン酸化された基質(被検出物質)を定量することによりCDKの活性を算出することが開示されている。特許文献1の方法例3によると、具体的には、先ずCDK及びアデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(ATPγS)によってCDKの基質にチオリン酸基を導入する。次に、チオリン酸基が導入された基質に蛍光物質を結合させ、これを固相担体に固定化する。この固相担体に励起光を照射して基質に結合した蛍光物質から生じる蛍光を検出し、この検出結果に基づいてリン酸化された基質が定量される。
【0003】
蛍光の検出を行う際には、非特異的に固相担体に吸着した蛍光物質から発せられる蛍光がバックグラウンドとして検出される。そのため、上記方法では、蛍光標識後に界面活性剤を含む緩衝液で固相担体を洗浄することにより、非特異的に吸着した蛍光物質を除去し、蛍光バックグラウンドを低減させている。これによって、固相担体に固定化された基質を正確に定量することができ、さらにこの定量結果に基づいてCDKの活性を正確に測定することができる。
【0004】
しかしながら、界面活性剤を用いて洗浄を行うと、非特異的に吸着した蛍光物質だけでなく、固相担体に固定化した基質までも固相担体から分離する可能性がある。従って、固相担体から基質が分離しないようにするため、界面活性剤濃度や洗浄時間などの洗浄条件を厳格に設定する必要があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−335997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、界面活性剤を用いた洗浄操作を行わずに蛍光バックグラウンドを低減させることができ、被検出物質を正確に検出することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シグナル発生物質と試料中の被検出物質との複合体が固定化された固相担体を調製する工程と、この固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程と、固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、被検出物質を検出する工程とを含む被検出物質の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、界面活性剤を用いた洗浄操作を行わずに蛍光バックグラウンドを低減させることができ、被検出物質を正確に検出することができる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態である、試料中の被検出物質の検出方法は、被検出物質とシグナル発生物質との複合体(以下、単に複合体ともいう)が固定化された固相担体を調製する工程、この固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程と、この固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、前記被検出物質を検出する工程とを含む。なお、本明細書において、「被検出物質を検出する」とは、試料中の被検出物質の存否を判定するだけでなく、定量することをも含む。
【0010】
複合体が固定化された固相担体を作製する方法としては特に限定されないが、好ましくは、被検出物質を含む試料にシグナル物質を添加し、シグナル発生物質と被検出物質とを結合させることによって複合体を生成し、この複合体を固相担体に固定化する。また、被検出物質及びシグナル発生物質の何れか一方を固相担体に先に固定化しておき、他方をさらに固定化することによって、固相担体上でシグナル発生物質と被検出物質との結合反応を行ってもよい。即ち、シグナル発生物質と被検出物質との結合反応は、試料中で行われてもよいし、固相担体上で行われてもよい。
【0011】
被検出物質としては特に限定されず、タンパク質、核酸、ホルモン、毒物などが例示されるが、タンパク質であることが好ましい。タンパク質の固相担体への固定化の方法としては、公知のブロッティング方法を用いることができ、固相担体としては市販のブロッティング用メンブレンを用いることができる。メンブレンの材質としては、例えばポリビニリデンフロライド(PVDF)、ニトロセルロース、ナイロン(例えば、カルボキシル基やアルキル基を置換基として有してもよいアミノ基が導入された修飾ナイロン)、セルロースアセテートなどが挙げられる。
【0012】
シグナル発生物質としては、特に限定されないが特定の波長を有する光(励起光)を照射することにより蛍光を発する物質(以下、蛍光物質とする)を有することが好ましい。
【0013】
被検出物質は、シグナル発生物質に特異的に結合可能な官能基を有していることが好ましい。例えば、被検出物質がチオール基を有するタンパク質の場合は、このチオール基に結合可能なシグナル発生物質を用いることができる。このようなシグナル発生物質としては、具体的には、5−ヨードアセトアミドフルオレセイン(5IAF)、オレゴングリーンヨードアセトアミド(OGI)、ヨードアセチル−フルオレセインイソチオシアネート、5−(ブロモメチル)フルオレセイン、フルオレセイン−5−マレイミド、6−ヨードアセトアミドフルオレセイン、4−ブロモメチル−7−メトキシクマリン、エオシン−5−ヨードアセトアミド、エオシン−5−マレイミド、エオシン−5−ヨードアセトアミド、N−(1,10−フェナントロリン−5−イル)ブロモアセトアミド、1−ピレンブチリルクロリド、N−(1−ピレンエチル)ヨードアセトアミド、N−(1−ピレンメチル)ヨードアセトアミド、(1−ピレンメチル)ヨードアセテート、ローダミンレッドC2マレイミドなどが例示される。
【0014】
被検出物質がこのような官能基を有さない場合は、被検出物質に官能基を導入することにより、シグナル発生物質と被検出物質との結合が可能となる。例えば、被検出物質がチオール基を有さないタンパク質である場合、このタンパク質を基質とするキナーゼとアデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(以下、ATPγSとする)とを用いてこのタンパク質にチオリン酸基を導入し、ここに上述のようなシグナル発生物質を結合させることができる。
【0015】
複合体が固定化された固相担体には、さらにブロッキング処理が行われる。ブロッキング処理とは、固相担体にブロッキング剤を固定化する処理のことである。このブロッキング処理の前に、被検出物質とシグナル発生物質との結合反応を停止させることが好ましい。結合反応の停止には、チオール基を有する還元剤を用いることができる。被検出物質とシグナル発生物質との結合反応時にチオール基を有する還元剤を反応停止剤として共存させることにより、この結合反応は停止される。チオール基を有する還元剤としては、2−メルカプトエタノール、D型システイン、L型システイン、アセチルシステイン、2−メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、2−アミノエタンチオール、ジチオスレイトール、グルタチオン、ドデカンチオールなどが例示され、これらを単独又は混合して用いることができる。
【0016】
ブロッキング処理に用いられるブロッキング剤としては、アルブミン、カゼイン、グロブリン、ゼラチンなどが例示され、これらを単独又は混合して用いることができる。アルブミンを用いる場合、その由来とする動物は特に限定されず、例えばウシ、ヤギ、ウサギ、ヒトなどを由来とするアルブミンを用いることができる。アルブミンとしては、BSAを用いることが好ましい。ブロッキング処理は1回でもよいし、複数回に分けて行ってもよい。
【0017】
ブロッキング剤を固相担体に固定化する際は、ブロッキング剤を溶解したブロッキング溶液を用いることが好ましい。ブロッキング溶液は、ブロッキング剤の他に緩衝剤を含有させてもよい。緩衝剤としては、例えばトリス−塩酸緩衝剤、イミダゾール−酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、グッド緩衝剤などを用いることができる。
【0018】
固相担体にブロッキング剤を固定化した後、シグナルが検出される。シグナルの検出方法は、シグナル発生物質の種類によって決定される。例えば、シグナル発生物質が蛍光物質を有する場合、固相担体に励起光を照射して蛍光を励起させ、蛍光画像解析装置などで検出することができる。被検出物質を定量する場合、検出されたシグナルの強度に基づいて被検出物質の量を算出することができる。被検出物質の定量に際しては、検量線を用いることが好ましい。検量線は、シグナル発生物質を結合させた既知量のタンパク質を上記と同様に固相担体に固定化し、さらにこの固相担体にブロッキング処理を施した後、このシグナル強度を測定することによって作成される。検量線に用いられるタンパク質は、例えば、グロブリン、アクチンなどを用いることができる。
【0019】
ブロッキング剤を固定化せずにシグナルを検出する方法、固相担体に複合体を固定化する前にブロッキング剤を固定化してシグナルを検出する方法などに比べて、本実施形態のように複合体が固定化された固相担体にさらにブロッキング剤を固定化することにより、シグナル検出の際のバックグラウンドを低減することができる。この方法によると、固相担体に非特異的に吸着したシグナル発生物質からのシグナルの発生を効果的に抑制し、複合体からのシグナルは実質的に抑制されないため、複合体が発するシグナルと、固相担体に非特異的に吸着したシグナル発生物質に基づくバックグラウンドとの比(S/N比)を向上させることができる。従って、正確に試料中の被検出物質を検出することができる。
【0020】
検量線を作成する際は、複合体を固定化した担体にさらにブロッキング剤を固定化することによって、従来の方法に比べて検量線の傾きを大きくすることができ、被検出物質の検出の際の測定値の分解能が向上する。即ち、本実施形態の方法を用いて作成された検量線を用いると、より正確に被検出物質の定量を行うことができる。
【0021】
被検出物質が酵素反応によって生成された物質である場合は、上記の方法によって被検出物質を検出することにより、酵素の活性を測定することが可能である。以下、被検出物質の検出に基づく酵素活性測定方法について説明する。活性測定の対象となる酵素は特に限定されず、キナーゼ、ペプチダーゼ、ポリメラーゼなどが挙げられる。例えば、キナーゼの活性を測定する場合、先ず、アデノシントリホスフェート(ATP)、アデノシンジホスフェート(ADP)、アデノシンモノホスフェート(AMP)、又はこれらの類縁体(例えば、ATPγSなど)と、キナーゼと、基質とを反応させて基質にリン酸基を導入し、リン酸化された基質(以下、リン酸化基質とする)に結合可能なシグナル発生物質を結合させて複合体を形成させる。この複合体を固相担体に固定化し、上述の方法によってシグナルを検出する。検出されるシグナルの強度によってリン酸化基質を定量することができ、この定量結果に基づいてキナーゼの活性が測定される。この場合、リン酸化基質が上述の被検出物質に相当する。
【0022】
活性測定の対象となり得るキナーゼとしては、具体的には、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(例えば、ミオシンL鎖キナーゼ、eEF2−キナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼなど)、サイクリックヌクレオチドレギュレイテッドキナーゼ、CDK(例えば、CDK1,CDK2,CDK3,CDK4,CDK5,CDK6,CDK7、CDK8など)等が例示される。
【0023】
酵素活性を測定する場合、被検出物質を含む試料は、酵素を含む試料(以下、酵素試料とする)とこの酵素に対応する基質とを混合し、酵素反応を行うことにより調製される。酵素によっては、酵素反応に他の物質が必要となることがあり、その物質も適宜添加することができる。例えば、キナーゼの活性を測定する場合は、ATP、ADP、AMP、これらの類縁体等を添加する必要がある。
【0024】
酵素試料としては、活性測定の対象となる酵素を含む試料であれば特に限定されない。例えば、細胞塊、血液、尿、精液などの生体試料を用いることができる。測定対象の酵素が細胞の内部に含まれている場合、細胞膜を破壊し、試料中に遊離状態で存在させることが好ましい。また、核の内部に含まれる酵素を測定対象とする場合は、核膜をも破壊することが好ましい。そのため、試料中の酵素と基質との反応を行う前に、生体試料に対して可溶化処理を行うことが好ましい。可溶化処理とは、試料に含まれる細胞の細胞膜や核膜などを物理的及び/又は化学的に破壊することにより、膜内部に存在する分子を溶液中に遊離させることをいう。
【0025】
可溶化処理は、生体試料に可溶化処理用の緩衝液(以下、溶解緩衝液とする)を添加して行うことが好ましい。溶解緩衝液には、酵素の変性を阻害する物質、細胞膜又は核膜を破壊する物質などを含有させることができる。
【0026】
例えば、緩衝材を含む溶解緩衝液を試料に添加し、ワーリングブレンダー又はシリンジによる吸引排出や超音波処理を行うことにより、生体試料に対して可溶化処理を施すことができる。溶解緩衝液には、界面活性剤やプロテアーゼインヒビターなどを含有させてもよい。また、活性測定の対象がキナーゼである場合は、脱リン酸化酵素阻害剤を溶解緩衝液に含有させてもよい。
【0027】
界面活性剤は、細胞膜や核膜を破壊する作用を有する。このような作用を持つものであれば界面活性剤の種類は特に限定されないが、測定対象の酵素を失活させない程度の界面活性作用を有するものが用いられる。例えば、ノニデットP−40(NP−40)、トリトンX−100(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.の登録商標)、デオキシコール酸、CHAPSなどが挙げられる。溶解緩衝液にはこれらの界面活性剤を単独又は混合して用いることができる。溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は1w/v%以下が好ましい。
【0028】
プロテアーゼインヒビターは、細胞に含まれるプロテアーゼが測定対象の酵素を分解することを防ぐ目的で用いられる。プロテアーゼインヒビターとしては、例えば、EDTA,EGTAなどのようなメタロプロテアーゼインヒビター、PMSF、トリプシンインヒビター、キモトリプシンなどのようなセリンプロテアーゼインヒビター、ヨードアセトアミド、E−64などのようなシステインプロテアーゼインヒビターなどが挙げられる。また、プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ社)のような市販のものを例示することもできる。溶解緩衝液にはこれらのプロテアーゼインヒビターを単独又は混合して用いることができる。
【0029】
脱リン酸化酵素阻害剤は、細胞に含まれる脱リン酸化酵素が測定対象の酵素の活性を低下させることを防ぐ目的で用いられる。脱リン酸化酵素阻害剤としては、セリン/スレオニン脱リン酸化酵素阻害剤(フッ化ナトリウムなど)、チロシン脱リン酸化酵素阻害剤(オルトバナジン酸ナトリウムなど)などを例示することができる。溶解緩衝液にはこれらの脱リン酸化酵素阻害剤を単独又は混合して用いることができる。
【0030】
活性測定の対象となる酵素がCDK1又はCDK2である場合、基質としては、ヒストンH1又は網膜芽細胞腫タンパク質(Retinoblastoma Protein:以下、Rbとする)を用いることが好ましい。また、酵素がCDK4又はCDK6である場合は、基質としてRbを用いることが好ましい。この基質は、硫黄原子を含まないアミノ酸(システイン及びメチオニン以外のアミノ酸)から構成されるタンパク質が好ましい。Rbのようなシステイン残基を含むタンパク質は、システイン残基をアラニンなどの硫黄原子を含まないアミノ酸に置換して用いることが好ましい。基質中のシステインやメチオニンを、硫黄原子を含まないアミノ酸に置換する方法としては、PCR法や部分点突然変異法などの公知の方法を用いて行うことができる。
【0031】
測定対象酵素がキナーゼである場合、上述したように酵素と基質との反応にはATP、ADP、AMP又はこれらの類縁体が必要である。本実施形態では、ATPに硫黄原子が結合したアデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(以下、ATPγSとする)を用いることが好ましい。この場合、上述のようにキナーゼの作用により、基質にATPγSのチオリン酸基が導入され、このチオリン酸基にシグナル発生物質が結合する。
【0032】
測定対象酵素が分解酵素である場合は、例えば、酵素反応前の基質には結合せず、酵素反応後の分解産物に特異的に結合する抗体と上述の蛍光物質とを有するシグナル発生物質を用いることができる。
【0033】
なお、本実施形態の被検出物質の検出方法及び酵素活性測定方法の各工程は、手動で実行されてもよいし、装置等を用いて自動的に実行されてもよい。
【0034】
(実施例1)
1mlの溶解緩衝液(0.1w/v% ノニデットP40(NP40、カルビオケム)、50mM トリス塩酸(pH7.4)、5mM EDTA、50mM フッ化ナトリウム、1mM オルトバナジン酸ナトリウム及び2μl/ml プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ)を含む)に2×107細胞のK562(白血病由来の培養細胞)を添加して細胞懸濁液を調製した。
【0035】
電動ホモジナイザを用いて、この細胞懸濁液中の細胞をホモジナイズし、得られたホモジネートを4℃、15000rpm、5分間遠心分離して上清を測定用試料とした。
【0036】
1.5mlエッペンドルフチューブに免疫沈降用緩衝液(0.1w/v% NP40及び50mM トリス塩酸(pH7.4)を含む)を500μl収容し、ここに抗CDK2抗体(サンタクルズ社)2μgとプロテインAとをコートしたセファロースビーズ(バイオラッド社)20μlを加えた。
次に、チューブ内の全タンパク質の濃度がそれぞれ25,50,75及び100μg/500μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加した。また、測定用試料を添加せず、全タンパク質量が0μgであるチューブも作製した。
これらのチューブを4℃で一時間震蕩してCDK2と抗CDK2抗体とを反応させた。
反応後、チューブ内のビーズをビーズ洗浄液A(1w/v% NP−40及び50mM トリス塩酸(pH7.0)を含む)で二回洗浄し、ビーズ洗浄液B(300mM NaCl及び50mM トリス塩酸(pH7.4)を含む)で一回洗浄し、ビーズ洗浄液C(50mM トリス塩酸(pH7.4)を含む)で一回洗浄した。
次に、CDKの基質溶液(10μg ヒストンH1(アップステイトバイオテクノロジー社)、2mM ATP−γS(シグマ社)、40mM トリス塩酸(pH7.4)、20mM MgCl2及び0.1% TritonX−100を含む)を添加した。基質溶液は、チューブに収容した混合液の総量が50μlとなるように調節して添加された。これを37℃で30分間震蕩してキナーゼ反応を行ない、ヒストンH1にチオリン酸基を導入した。
キナーゼ反応後、2000rpmで20秒間遠心分離してビーズを沈殿させ、上清18μlを採取した。
この上清に、結合緩衝液(150mM トリス塩酸(pH7.4)及び5mMのEDTAを含む)15μlと、5IAF溶液(2.58mM 5IAF、150mM トリス塩酸(pH7.5)及び5mM EDTAを含む)とを添加して20分間、室温、暗所で静置することにより、チオリン酸基を導入された基質(チオリン酸化基質)の硫黄原子に5IAFを結合させた。
5IAFとチオリン酸基との反応の停止は、反応停止剤である2−メルカプトエタノールの添加により行なった。
5IAFが結合したチオリン酸化基質0.35μgを含む試料を、スロットブロッターを用いてPVDFメンブレン上にブロットした。
このPVDFメンブレンを200μlのメンブレン洗浄液(25mMのトリス塩酸(pH7.4)及び150mMのNaClを含む)で六回洗浄した。
洗浄後、PVDFメンブレンにバックグラウンド低減用のブロッキング溶液(4w/v%のBSA、25mMのトリス塩酸(pH7.4)及び150mMのNaClを含む)をさらにブロッティングした。
その後、蛍光イメージアナライザMolecular Imager FX(バイオラッド社)を用いてPVDFメンブレンの蛍光分析を行ない、蛍光強度を測定した。蛍光強度は蛍光カウント値(単位=CNT)として表される。
【0037】
(比較例1〜3)
比較例1では、抗CDK2抗体がコートされたセファロースビーズではなく、抗CDK2抗体がコートされていないセファロースビーズを用いること以外は実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例2では、ブロッキング溶液を用いないこと以外は実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例3では、ブロッキング溶液を用いないこと以外は比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0038】
(結果)
実施例1及び比較例1〜3のPVDFメンブレンの写真を図1に示す。また、実施例1及び比較例1〜3において測定された蛍光強度のグラフを図2に示す。なお、蛍光強度は、蛍光カウント値(CNT)として表した。
【0039】
図1より、チオリン酸化基質(被検出物質)と5IAF(シグナル発生物質)との複合体を固定化した後にブロッキング処理を行うと(実施例1及び比較例1)、ブロッキング処理を行わなかった場合(比較例2及び比較例3)に比べてバックグラウンドを低減することができた。また、図2より、ブロッキング処理を行うと、ブロッキング処理を行わなかった場合に比べてシグナル(実施例1からバックグラウンド値を差し引いた値)とバックグラウンド値との比(S/N比)が向上した。また、実施例1のグラフのみタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。以上より、実施例1の方法により正確にチオリン酸化されたヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0040】
CDK2の活性を算出するための検量線は以下のようにして作成することができる。先ず、5IAF標識した既知濃度のタンパク質(例えば、グロブリンなど)を含む溶液をPVDFメンブレンにブロットする。さらにここにブロッキング剤をブロッティングする。そして、このPVDFメンブレンにブロッティングされたタンパク質の蛍光強度を蛍光イメージアナライザで測定し、検量線を作成する。この検量線に実施例1で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって試料に含まれるCDK2の活性を算出することができる。
【0041】
(実施例2)
実施例2では、シグナル発生物質として5IAFではなくOGIを用いること、及び反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0042】
(比較例4〜6)
比較例4では、シグナル発生物質として、5IAFではなくOGIを用いること、及び反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例5では、シグナル発生物質として、5IAFではなくOGIを用いること以外は、比較例2と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例6では、シグナル発生物質として、5IAFではなくOGIを用いること以外は、比較例3と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0043】
(結果)
実施例2及び比較例4〜6のPVDFメンブレンの写真を図3に示す。また、実施例2及び比較例4〜6において測定された蛍光強度のグラフを図4に示す。
【0044】
図3より、チオリン酸化基質(被検出物質)とOGI(シグナル発生物質)との複合体を固定化した後にブロッキング処理を行うと(実施例2及び比較例4)、ブロッキング処理を行わなかった場合(比較例5及び比較例6)に比べてバックグラウンドを低減することができた。また、図4より、ブロッキング処理を行うと、ブロッキング処理を行わなかった場合に比べてシグナル(実施例1からバックグラウンド値を差し引いた値)とバックグラウンド値との比(S/N比)が向上した。また、実施例2のグラフのみタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。以上より、実施例2の方法により正確にチオリン酸化されたヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0045】
酵素の活性は、5IAF標識したタンパク質ではなくOGI標識したタンパク質を用いること以外は、上述と同様にして検量線を作成し、この検量線に実施例2で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって算出することができる。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0047】
(比較例7〜9)
比較例7では、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例8では、シグナル発生物質として、5IAFではなく、ストレプトアビジン−FITC(ベクター社)を用いること、複合体をブロッティングした後にブロッキング剤をブロッティングするのではなく、ヒストンH1にヨードアセチルビオチンを結合させ、これをブロッティングした後、ブロッキング剤をブロッティングすること、ブロッキング剤のブロッティングの後にストレプトアビジン−FITCをブロッティングして基質の蛍光標識を行うこと以外は、実施例1と同様にしてFITC標識ヒストンH1の蛍光強度を測定した。
比較例9では、抗CDK2抗体を用いないこと以外は比較例8と同様にして蛍光強度を測定した。
【0048】
(結果)
実施例3で測定した蛍光カウント値から比較例7で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(A)と、比較例8で測定した蛍光カウント値から比較例9で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(B)とを図5に示す。グラフ(A)の及び値グラフ(B)の縦軸は、実施例3及び比較例8のシグナルの値を示しており、NetCNTで表した。
【0049】
図5より、グラフ(A)及びグラフ(B)は、タンパク質濃度依存的に良好な直線性を示しているが、グラフ(B)よりもグラフ(A)の方が、傾きが大きい。従って、酵素活性を測定する際の検量線を実施例3と同様の方法を用いて作成することにより、従来よりも大きな傾きを有する検量線を作成することができる。このような大きな傾きを有する検量線を用いると、測定値の分解能が向上する。即ち、本実施例の方法により作成された検量線に基づいて酵素活性を測定すると従来よりも正確に活性を算出することができる。
【0050】
(実施例4)
1.5mlエッペンドルフチューブに免疫沈降用緩衝液を500μl収容するのではなく、150μl収容すること、チューブ内のタンパク質濃度が25、50,75及び100μg/500μlではなく、10μg/150μl及び25μg/150μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加すること及び抗CDK2抗体2μgをコートしたセファロースビーズではなく、抗CDK1抗体(サンタクルズ社)4μgをコートしたセファロースビーズを用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度を測定した。
【0051】
(比較例10〜12)
比較例10では、抗CDK1抗体を用いないこと以外は実施例4と同様にして蛍光強度を測定した。
比較例11では、シグナル発生物質として、5IAFではなく、ストレプトアビジン−FITC(ベクター社)を用いること、標識ヒストンH1をブロッティングした後にブロッキング剤をブロッティングするのではなく、ヒストンH1にヨードアセチルビオチンを結合させ、これをブロッティングした後、ブロッキング剤をブロッティングすること、ブロッキング剤のブロッティングの後にストレプトアビジン−FITCをブロッティングして基質の蛍光標識を行うこと以外は、実施例4と同様にしてFITC標識ヒストンH1の蛍光強度を測定した。
比較例12では、抗CDK1抗体を用いないこと以外は比較例11と同様にして蛍光強度を測定した。
【0052】
(結果)
実施例4で測定した蛍光カウント値から比較例10で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(C)と、比較例11で測定した蛍光カウント値から比較例12で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(D)とを図6に示す。グラフ(C)及びグラフ(D)の縦軸は、実施例4及び比較例11のシグナルの値であり、NetCNTで表した。
【0053】
図6より、グラフ(C)及びグラフ(D)は、タンパク質濃度依存的に良好な直線性を示しているが、グラフ(D)よりもグラフ(C)の方が、傾きが大きい。従って酵素活性を測定する際の検量線を実施例3と同様の方法を用いて作成することにより、従来よりも大きな傾きを有する検量線を作成することができる。このような大きな傾きを有する検量線を用いると、測定値の分解能が向上する。即ち、本実施例の方法により作成された検量線に基づいて酵素活性を測定すると従来よりも正確に活性を算出することができる。
【0054】
(実施例5)
1.5mlエッペンドルフチューブに免疫沈降用緩衝液を500μl収容するのではなく、1000μl収容すること、チューブ内の全タンパク質の濃度が25,50,75及び100μg/500μlではなく、25,50,及び75μg/1000μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加すること、及び4w/v%のBSAではなく、1w/v%のカゼインを含むブロッキング溶液を用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度を測定した。
【0055】
(比較例13)
比較例13では、抗CDK2抗体がコートされていないセファロースビーズを用いること以外は実施例5と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0056】
(結果)
実施例5及び比較例13において測定された蛍光強度のグラフを図7に示す。
【0057】
図7より、実施例5のグラフはタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。従って、ブロッキング剤としてBSAだけでなく、カゼインを用いることができることが確認された。
【0058】
(実施例6)
10μgのヒストンH1を含む基質溶液ではなく、10μgのRbを用いること、チューブ内の全タンパク質の濃度が25,50,75及び100μg/500μlではなく、37.5及び75μg/500μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加すること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0059】
(比較例14)
比較例14では、抗CDK2抗体がコートされていないセファロースビーズを用いること以外は実施例6と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0060】
(結果)
実施例6及び比較例14において測定された蛍光強度のグラフを図8に示す。
【0061】
図8より、実施例6のグラフはタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。従って、基質としてヒストンH1だけでなく、Rbを用いることができることが確認された。
【0062】
(実施例7)
反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0063】
(比較例15〜17)
比較例15〜17では、反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は、それぞれ比較例1〜3と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0064】
(結果)
実施例7及び比較例15〜17のPVDFメンブレンの写真を図9に示す。また、実施例7及び比較例15〜17において測定された蛍光強度のグラフを図10に示す。なお、蛍光強度は、蛍光カウント値(CNT)として表した。
【0065】
図9及び図10より、実施例7では反応停止剤としてL型システインを用いているが、実施例1と同様に正確にヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0066】
酵素の活性は、上述と同様にして検量線を作成し、この検量線に実施例7で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって算出することができる。
【0067】
(実施例8)
実施例8では、反応停止剤としてL型システインではなく、2−アミノエタンチオールを用いること以外は、実施例2と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0068】
(比較例18〜20)
比較例18〜20では、反応停止剤としてL型システインではなく、2−アミノエタンチオールを用いること以外は、それぞれ比較例4〜6と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0069】
(結果)
実施例8及び比較例18〜20のPVDFメンブレンの写真を図11に示す。また、実施例8及び比較例18〜20において測定された蛍光強度のグラフを図12に示す。
【0070】
図9及び図10より、実施例8では反応停止剤として2−アミノエタンチオールを用いているが、実施例2と同様に正確にヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0071】
酵素の活性は、上述と同様にして検量線を作成し、この検量線に実施例2で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって算出することができる。
【0072】
(実施例9及び10)
実施例9では、反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、アセチルシステインを用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
実施例10では、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0073】
(比較例21及び22)
比較例21では、反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、アセチルシステインを用いること以外は、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例22では、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0074】
(結果)
実施例9、10、比較例21及び比較例22において測定された蛍光強度のグラフを図13に示す。
図13より、反応停止剤としてアセチルシステインを用いた実施例9のグラフは、実施例10と同様にタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。従って、反応停止剤として、アセチルシステインを用いることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1及び比較例1〜3のPVDFメンブレンの写真である。
【図2】実施例1及び比較例1〜3において測定された蛍光強度のグラフである。
【図3】実施例2及び比較例4〜6のPVDFメンブレンの写真である。
【図4】実施例2及び比較例4〜6において測定された蛍光強度のグラフである。
【図5】実施例3で測定した蛍光カウント値から比較例7で測定した蛍光カウント値を差し引いた値と、比較例8で測定した蛍光カウント値から比較例9で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフである。
【図6】実施例4で測定した蛍光カウント値から比較例10で測定した蛍光カウント値を差し引いた値と、比較例11で測定した蛍光カウント値から比較例12で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフである。
【図7】実施例5及び比較例13において測定された蛍光強度のグラフである。
【図8】実施例6及び比較例14において測定された蛍光強度のグラフである。
【図9】実施例7及び比較例15〜17のPVDFメンブレンの写真である。
【図10】実施例7及び比較例15〜17において測定された蛍光強度のグラフである。
【図11】実施例8及び比較例18〜20のPVDFメンブレンの写真である。
【図12】実施例8及び比較例18〜20において測定された蛍光強度のグラフである。
【図13】実施例9,10、比較例21及び22において測定された蛍光強度のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる被検出物質を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中の被検出物質を検出する方法としては、特許文献1記載の方法が知られている。特許文献1には、試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)によってリン酸化された基質(被検出物質)を定量することによりCDKの活性を算出することが開示されている。特許文献1の方法例3によると、具体的には、先ずCDK及びアデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(ATPγS)によってCDKの基質にチオリン酸基を導入する。次に、チオリン酸基が導入された基質に蛍光物質を結合させ、これを固相担体に固定化する。この固相担体に励起光を照射して基質に結合した蛍光物質から生じる蛍光を検出し、この検出結果に基づいてリン酸化された基質が定量される。
【0003】
蛍光の検出を行う際には、非特異的に固相担体に吸着した蛍光物質から発せられる蛍光がバックグラウンドとして検出される。そのため、上記方法では、蛍光標識後に界面活性剤を含む緩衝液で固相担体を洗浄することにより、非特異的に吸着した蛍光物質を除去し、蛍光バックグラウンドを低減させている。これによって、固相担体に固定化された基質を正確に定量することができ、さらにこの定量結果に基づいてCDKの活性を正確に測定することができる。
【0004】
しかしながら、界面活性剤を用いて洗浄を行うと、非特異的に吸着した蛍光物質だけでなく、固相担体に固定化した基質までも固相担体から分離する可能性がある。従って、固相担体から基質が分離しないようにするため、界面活性剤濃度や洗浄時間などの洗浄条件を厳格に設定する必要があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−335997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、界面活性剤を用いた洗浄操作を行わずに蛍光バックグラウンドを低減させることができ、被検出物質を正確に検出することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シグナル発生物質と試料中の被検出物質との複合体が固定化された固相担体を調製する工程と、この固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程と、固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、被検出物質を検出する工程とを含む被検出物質の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、界面活性剤を用いた洗浄操作を行わずに蛍光バックグラウンドを低減させることができ、被検出物質を正確に検出することができる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態である、試料中の被検出物質の検出方法は、被検出物質とシグナル発生物質との複合体(以下、単に複合体ともいう)が固定化された固相担体を調製する工程、この固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程と、この固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、前記被検出物質を検出する工程とを含む。なお、本明細書において、「被検出物質を検出する」とは、試料中の被検出物質の存否を判定するだけでなく、定量することをも含む。
【0010】
複合体が固定化された固相担体を作製する方法としては特に限定されないが、好ましくは、被検出物質を含む試料にシグナル物質を添加し、シグナル発生物質と被検出物質とを結合させることによって複合体を生成し、この複合体を固相担体に固定化する。また、被検出物質及びシグナル発生物質の何れか一方を固相担体に先に固定化しておき、他方をさらに固定化することによって、固相担体上でシグナル発生物質と被検出物質との結合反応を行ってもよい。即ち、シグナル発生物質と被検出物質との結合反応は、試料中で行われてもよいし、固相担体上で行われてもよい。
【0011】
被検出物質としては特に限定されず、タンパク質、核酸、ホルモン、毒物などが例示されるが、タンパク質であることが好ましい。タンパク質の固相担体への固定化の方法としては、公知のブロッティング方法を用いることができ、固相担体としては市販のブロッティング用メンブレンを用いることができる。メンブレンの材質としては、例えばポリビニリデンフロライド(PVDF)、ニトロセルロース、ナイロン(例えば、カルボキシル基やアルキル基を置換基として有してもよいアミノ基が導入された修飾ナイロン)、セルロースアセテートなどが挙げられる。
【0012】
シグナル発生物質としては、特に限定されないが特定の波長を有する光(励起光)を照射することにより蛍光を発する物質(以下、蛍光物質とする)を有することが好ましい。
【0013】
被検出物質は、シグナル発生物質に特異的に結合可能な官能基を有していることが好ましい。例えば、被検出物質がチオール基を有するタンパク質の場合は、このチオール基に結合可能なシグナル発生物質を用いることができる。このようなシグナル発生物質としては、具体的には、5−ヨードアセトアミドフルオレセイン(5IAF)、オレゴングリーンヨードアセトアミド(OGI)、ヨードアセチル−フルオレセインイソチオシアネート、5−(ブロモメチル)フルオレセイン、フルオレセイン−5−マレイミド、6−ヨードアセトアミドフルオレセイン、4−ブロモメチル−7−メトキシクマリン、エオシン−5−ヨードアセトアミド、エオシン−5−マレイミド、エオシン−5−ヨードアセトアミド、N−(1,10−フェナントロリン−5−イル)ブロモアセトアミド、1−ピレンブチリルクロリド、N−(1−ピレンエチル)ヨードアセトアミド、N−(1−ピレンメチル)ヨードアセトアミド、(1−ピレンメチル)ヨードアセテート、ローダミンレッドC2マレイミドなどが例示される。
【0014】
被検出物質がこのような官能基を有さない場合は、被検出物質に官能基を導入することにより、シグナル発生物質と被検出物質との結合が可能となる。例えば、被検出物質がチオール基を有さないタンパク質である場合、このタンパク質を基質とするキナーゼとアデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(以下、ATPγSとする)とを用いてこのタンパク質にチオリン酸基を導入し、ここに上述のようなシグナル発生物質を結合させることができる。
【0015】
複合体が固定化された固相担体には、さらにブロッキング処理が行われる。ブロッキング処理とは、固相担体にブロッキング剤を固定化する処理のことである。このブロッキング処理の前に、被検出物質とシグナル発生物質との結合反応を停止させることが好ましい。結合反応の停止には、チオール基を有する還元剤を用いることができる。被検出物質とシグナル発生物質との結合反応時にチオール基を有する還元剤を反応停止剤として共存させることにより、この結合反応は停止される。チオール基を有する還元剤としては、2−メルカプトエタノール、D型システイン、L型システイン、アセチルシステイン、2−メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、2−アミノエタンチオール、ジチオスレイトール、グルタチオン、ドデカンチオールなどが例示され、これらを単独又は混合して用いることができる。
【0016】
ブロッキング処理に用いられるブロッキング剤としては、アルブミン、カゼイン、グロブリン、ゼラチンなどが例示され、これらを単独又は混合して用いることができる。アルブミンを用いる場合、その由来とする動物は特に限定されず、例えばウシ、ヤギ、ウサギ、ヒトなどを由来とするアルブミンを用いることができる。アルブミンとしては、BSAを用いることが好ましい。ブロッキング処理は1回でもよいし、複数回に分けて行ってもよい。
【0017】
ブロッキング剤を固相担体に固定化する際は、ブロッキング剤を溶解したブロッキング溶液を用いることが好ましい。ブロッキング溶液は、ブロッキング剤の他に緩衝剤を含有させてもよい。緩衝剤としては、例えばトリス−塩酸緩衝剤、イミダゾール−酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、グッド緩衝剤などを用いることができる。
【0018】
固相担体にブロッキング剤を固定化した後、シグナルが検出される。シグナルの検出方法は、シグナル発生物質の種類によって決定される。例えば、シグナル発生物質が蛍光物質を有する場合、固相担体に励起光を照射して蛍光を励起させ、蛍光画像解析装置などで検出することができる。被検出物質を定量する場合、検出されたシグナルの強度に基づいて被検出物質の量を算出することができる。被検出物質の定量に際しては、検量線を用いることが好ましい。検量線は、シグナル発生物質を結合させた既知量のタンパク質を上記と同様に固相担体に固定化し、さらにこの固相担体にブロッキング処理を施した後、このシグナル強度を測定することによって作成される。検量線に用いられるタンパク質は、例えば、グロブリン、アクチンなどを用いることができる。
【0019】
ブロッキング剤を固定化せずにシグナルを検出する方法、固相担体に複合体を固定化する前にブロッキング剤を固定化してシグナルを検出する方法などに比べて、本実施形態のように複合体が固定化された固相担体にさらにブロッキング剤を固定化することにより、シグナル検出の際のバックグラウンドを低減することができる。この方法によると、固相担体に非特異的に吸着したシグナル発生物質からのシグナルの発生を効果的に抑制し、複合体からのシグナルは実質的に抑制されないため、複合体が発するシグナルと、固相担体に非特異的に吸着したシグナル発生物質に基づくバックグラウンドとの比(S/N比)を向上させることができる。従って、正確に試料中の被検出物質を検出することができる。
【0020】
検量線を作成する際は、複合体を固定化した担体にさらにブロッキング剤を固定化することによって、従来の方法に比べて検量線の傾きを大きくすることができ、被検出物質の検出の際の測定値の分解能が向上する。即ち、本実施形態の方法を用いて作成された検量線を用いると、より正確に被検出物質の定量を行うことができる。
【0021】
被検出物質が酵素反応によって生成された物質である場合は、上記の方法によって被検出物質を検出することにより、酵素の活性を測定することが可能である。以下、被検出物質の検出に基づく酵素活性測定方法について説明する。活性測定の対象となる酵素は特に限定されず、キナーゼ、ペプチダーゼ、ポリメラーゼなどが挙げられる。例えば、キナーゼの活性を測定する場合、先ず、アデノシントリホスフェート(ATP)、アデノシンジホスフェート(ADP)、アデノシンモノホスフェート(AMP)、又はこれらの類縁体(例えば、ATPγSなど)と、キナーゼと、基質とを反応させて基質にリン酸基を導入し、リン酸化された基質(以下、リン酸化基質とする)に結合可能なシグナル発生物質を結合させて複合体を形成させる。この複合体を固相担体に固定化し、上述の方法によってシグナルを検出する。検出されるシグナルの強度によってリン酸化基質を定量することができ、この定量結果に基づいてキナーゼの活性が測定される。この場合、リン酸化基質が上述の被検出物質に相当する。
【0022】
活性測定の対象となり得るキナーゼとしては、具体的には、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(例えば、ミオシンL鎖キナーゼ、eEF2−キナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼなど)、サイクリックヌクレオチドレギュレイテッドキナーゼ、CDK(例えば、CDK1,CDK2,CDK3,CDK4,CDK5,CDK6,CDK7、CDK8など)等が例示される。
【0023】
酵素活性を測定する場合、被検出物質を含む試料は、酵素を含む試料(以下、酵素試料とする)とこの酵素に対応する基質とを混合し、酵素反応を行うことにより調製される。酵素によっては、酵素反応に他の物質が必要となることがあり、その物質も適宜添加することができる。例えば、キナーゼの活性を測定する場合は、ATP、ADP、AMP、これらの類縁体等を添加する必要がある。
【0024】
酵素試料としては、活性測定の対象となる酵素を含む試料であれば特に限定されない。例えば、細胞塊、血液、尿、精液などの生体試料を用いることができる。測定対象の酵素が細胞の内部に含まれている場合、細胞膜を破壊し、試料中に遊離状態で存在させることが好ましい。また、核の内部に含まれる酵素を測定対象とする場合は、核膜をも破壊することが好ましい。そのため、試料中の酵素と基質との反応を行う前に、生体試料に対して可溶化処理を行うことが好ましい。可溶化処理とは、試料に含まれる細胞の細胞膜や核膜などを物理的及び/又は化学的に破壊することにより、膜内部に存在する分子を溶液中に遊離させることをいう。
【0025】
可溶化処理は、生体試料に可溶化処理用の緩衝液(以下、溶解緩衝液とする)を添加して行うことが好ましい。溶解緩衝液には、酵素の変性を阻害する物質、細胞膜又は核膜を破壊する物質などを含有させることができる。
【0026】
例えば、緩衝材を含む溶解緩衝液を試料に添加し、ワーリングブレンダー又はシリンジによる吸引排出や超音波処理を行うことにより、生体試料に対して可溶化処理を施すことができる。溶解緩衝液には、界面活性剤やプロテアーゼインヒビターなどを含有させてもよい。また、活性測定の対象がキナーゼである場合は、脱リン酸化酵素阻害剤を溶解緩衝液に含有させてもよい。
【0027】
界面活性剤は、細胞膜や核膜を破壊する作用を有する。このような作用を持つものであれば界面活性剤の種類は特に限定されないが、測定対象の酵素を失活させない程度の界面活性作用を有するものが用いられる。例えば、ノニデットP−40(NP−40)、トリトンX−100(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.の登録商標)、デオキシコール酸、CHAPSなどが挙げられる。溶解緩衝液にはこれらの界面活性剤を単独又は混合して用いることができる。溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は1w/v%以下が好ましい。
【0028】
プロテアーゼインヒビターは、細胞に含まれるプロテアーゼが測定対象の酵素を分解することを防ぐ目的で用いられる。プロテアーゼインヒビターとしては、例えば、EDTA,EGTAなどのようなメタロプロテアーゼインヒビター、PMSF、トリプシンインヒビター、キモトリプシンなどのようなセリンプロテアーゼインヒビター、ヨードアセトアミド、E−64などのようなシステインプロテアーゼインヒビターなどが挙げられる。また、プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ社)のような市販のものを例示することもできる。溶解緩衝液にはこれらのプロテアーゼインヒビターを単独又は混合して用いることができる。
【0029】
脱リン酸化酵素阻害剤は、細胞に含まれる脱リン酸化酵素が測定対象の酵素の活性を低下させることを防ぐ目的で用いられる。脱リン酸化酵素阻害剤としては、セリン/スレオニン脱リン酸化酵素阻害剤(フッ化ナトリウムなど)、チロシン脱リン酸化酵素阻害剤(オルトバナジン酸ナトリウムなど)などを例示することができる。溶解緩衝液にはこれらの脱リン酸化酵素阻害剤を単独又は混合して用いることができる。
【0030】
活性測定の対象となる酵素がCDK1又はCDK2である場合、基質としては、ヒストンH1又は網膜芽細胞腫タンパク質(Retinoblastoma Protein:以下、Rbとする)を用いることが好ましい。また、酵素がCDK4又はCDK6である場合は、基質としてRbを用いることが好ましい。この基質は、硫黄原子を含まないアミノ酸(システイン及びメチオニン以外のアミノ酸)から構成されるタンパク質が好ましい。Rbのようなシステイン残基を含むタンパク質は、システイン残基をアラニンなどの硫黄原子を含まないアミノ酸に置換して用いることが好ましい。基質中のシステインやメチオニンを、硫黄原子を含まないアミノ酸に置換する方法としては、PCR法や部分点突然変異法などの公知の方法を用いて行うことができる。
【0031】
測定対象酵素がキナーゼである場合、上述したように酵素と基質との反応にはATP、ADP、AMP又はこれらの類縁体が必要である。本実施形態では、ATPに硫黄原子が結合したアデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(以下、ATPγSとする)を用いることが好ましい。この場合、上述のようにキナーゼの作用により、基質にATPγSのチオリン酸基が導入され、このチオリン酸基にシグナル発生物質が結合する。
【0032】
測定対象酵素が分解酵素である場合は、例えば、酵素反応前の基質には結合せず、酵素反応後の分解産物に特異的に結合する抗体と上述の蛍光物質とを有するシグナル発生物質を用いることができる。
【0033】
なお、本実施形態の被検出物質の検出方法及び酵素活性測定方法の各工程は、手動で実行されてもよいし、装置等を用いて自動的に実行されてもよい。
【0034】
(実施例1)
1mlの溶解緩衝液(0.1w/v% ノニデットP40(NP40、カルビオケム)、50mM トリス塩酸(pH7.4)、5mM EDTA、50mM フッ化ナトリウム、1mM オルトバナジン酸ナトリウム及び2μl/ml プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ)を含む)に2×107細胞のK562(白血病由来の培養細胞)を添加して細胞懸濁液を調製した。
【0035】
電動ホモジナイザを用いて、この細胞懸濁液中の細胞をホモジナイズし、得られたホモジネートを4℃、15000rpm、5分間遠心分離して上清を測定用試料とした。
【0036】
1.5mlエッペンドルフチューブに免疫沈降用緩衝液(0.1w/v% NP40及び50mM トリス塩酸(pH7.4)を含む)を500μl収容し、ここに抗CDK2抗体(サンタクルズ社)2μgとプロテインAとをコートしたセファロースビーズ(バイオラッド社)20μlを加えた。
次に、チューブ内の全タンパク質の濃度がそれぞれ25,50,75及び100μg/500μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加した。また、測定用試料を添加せず、全タンパク質量が0μgであるチューブも作製した。
これらのチューブを4℃で一時間震蕩してCDK2と抗CDK2抗体とを反応させた。
反応後、チューブ内のビーズをビーズ洗浄液A(1w/v% NP−40及び50mM トリス塩酸(pH7.0)を含む)で二回洗浄し、ビーズ洗浄液B(300mM NaCl及び50mM トリス塩酸(pH7.4)を含む)で一回洗浄し、ビーズ洗浄液C(50mM トリス塩酸(pH7.4)を含む)で一回洗浄した。
次に、CDKの基質溶液(10μg ヒストンH1(アップステイトバイオテクノロジー社)、2mM ATP−γS(シグマ社)、40mM トリス塩酸(pH7.4)、20mM MgCl2及び0.1% TritonX−100を含む)を添加した。基質溶液は、チューブに収容した混合液の総量が50μlとなるように調節して添加された。これを37℃で30分間震蕩してキナーゼ反応を行ない、ヒストンH1にチオリン酸基を導入した。
キナーゼ反応後、2000rpmで20秒間遠心分離してビーズを沈殿させ、上清18μlを採取した。
この上清に、結合緩衝液(150mM トリス塩酸(pH7.4)及び5mMのEDTAを含む)15μlと、5IAF溶液(2.58mM 5IAF、150mM トリス塩酸(pH7.5)及び5mM EDTAを含む)とを添加して20分間、室温、暗所で静置することにより、チオリン酸基を導入された基質(チオリン酸化基質)の硫黄原子に5IAFを結合させた。
5IAFとチオリン酸基との反応の停止は、反応停止剤である2−メルカプトエタノールの添加により行なった。
5IAFが結合したチオリン酸化基質0.35μgを含む試料を、スロットブロッターを用いてPVDFメンブレン上にブロットした。
このPVDFメンブレンを200μlのメンブレン洗浄液(25mMのトリス塩酸(pH7.4)及び150mMのNaClを含む)で六回洗浄した。
洗浄後、PVDFメンブレンにバックグラウンド低減用のブロッキング溶液(4w/v%のBSA、25mMのトリス塩酸(pH7.4)及び150mMのNaClを含む)をさらにブロッティングした。
その後、蛍光イメージアナライザMolecular Imager FX(バイオラッド社)を用いてPVDFメンブレンの蛍光分析を行ない、蛍光強度を測定した。蛍光強度は蛍光カウント値(単位=CNT)として表される。
【0037】
(比較例1〜3)
比較例1では、抗CDK2抗体がコートされたセファロースビーズではなく、抗CDK2抗体がコートされていないセファロースビーズを用いること以外は実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例2では、ブロッキング溶液を用いないこと以外は実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例3では、ブロッキング溶液を用いないこと以外は比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0038】
(結果)
実施例1及び比較例1〜3のPVDFメンブレンの写真を図1に示す。また、実施例1及び比較例1〜3において測定された蛍光強度のグラフを図2に示す。なお、蛍光強度は、蛍光カウント値(CNT)として表した。
【0039】
図1より、チオリン酸化基質(被検出物質)と5IAF(シグナル発生物質)との複合体を固定化した後にブロッキング処理を行うと(実施例1及び比較例1)、ブロッキング処理を行わなかった場合(比較例2及び比較例3)に比べてバックグラウンドを低減することができた。また、図2より、ブロッキング処理を行うと、ブロッキング処理を行わなかった場合に比べてシグナル(実施例1からバックグラウンド値を差し引いた値)とバックグラウンド値との比(S/N比)が向上した。また、実施例1のグラフのみタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。以上より、実施例1の方法により正確にチオリン酸化されたヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0040】
CDK2の活性を算出するための検量線は以下のようにして作成することができる。先ず、5IAF標識した既知濃度のタンパク質(例えば、グロブリンなど)を含む溶液をPVDFメンブレンにブロットする。さらにここにブロッキング剤をブロッティングする。そして、このPVDFメンブレンにブロッティングされたタンパク質の蛍光強度を蛍光イメージアナライザで測定し、検量線を作成する。この検量線に実施例1で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって試料に含まれるCDK2の活性を算出することができる。
【0041】
(実施例2)
実施例2では、シグナル発生物質として5IAFではなくOGIを用いること、及び反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0042】
(比較例4〜6)
比較例4では、シグナル発生物質として、5IAFではなくOGIを用いること、及び反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例5では、シグナル発生物質として、5IAFではなくOGIを用いること以外は、比較例2と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例6では、シグナル発生物質として、5IAFではなくOGIを用いること以外は、比較例3と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0043】
(結果)
実施例2及び比較例4〜6のPVDFメンブレンの写真を図3に示す。また、実施例2及び比較例4〜6において測定された蛍光強度のグラフを図4に示す。
【0044】
図3より、チオリン酸化基質(被検出物質)とOGI(シグナル発生物質)との複合体を固定化した後にブロッキング処理を行うと(実施例2及び比較例4)、ブロッキング処理を行わなかった場合(比較例5及び比較例6)に比べてバックグラウンドを低減することができた。また、図4より、ブロッキング処理を行うと、ブロッキング処理を行わなかった場合に比べてシグナル(実施例1からバックグラウンド値を差し引いた値)とバックグラウンド値との比(S/N比)が向上した。また、実施例2のグラフのみタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。以上より、実施例2の方法により正確にチオリン酸化されたヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0045】
酵素の活性は、5IAF標識したタンパク質ではなくOGI標識したタンパク質を用いること以外は、上述と同様にして検量線を作成し、この検量線に実施例2で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって算出することができる。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0047】
(比較例7〜9)
比較例7では、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例8では、シグナル発生物質として、5IAFではなく、ストレプトアビジン−FITC(ベクター社)を用いること、複合体をブロッティングした後にブロッキング剤をブロッティングするのではなく、ヒストンH1にヨードアセチルビオチンを結合させ、これをブロッティングした後、ブロッキング剤をブロッティングすること、ブロッキング剤のブロッティングの後にストレプトアビジン−FITCをブロッティングして基質の蛍光標識を行うこと以外は、実施例1と同様にしてFITC標識ヒストンH1の蛍光強度を測定した。
比較例9では、抗CDK2抗体を用いないこと以外は比較例8と同様にして蛍光強度を測定した。
【0048】
(結果)
実施例3で測定した蛍光カウント値から比較例7で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(A)と、比較例8で測定した蛍光カウント値から比較例9で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(B)とを図5に示す。グラフ(A)の及び値グラフ(B)の縦軸は、実施例3及び比較例8のシグナルの値を示しており、NetCNTで表した。
【0049】
図5より、グラフ(A)及びグラフ(B)は、タンパク質濃度依存的に良好な直線性を示しているが、グラフ(B)よりもグラフ(A)の方が、傾きが大きい。従って、酵素活性を測定する際の検量線を実施例3と同様の方法を用いて作成することにより、従来よりも大きな傾きを有する検量線を作成することができる。このような大きな傾きを有する検量線を用いると、測定値の分解能が向上する。即ち、本実施例の方法により作成された検量線に基づいて酵素活性を測定すると従来よりも正確に活性を算出することができる。
【0050】
(実施例4)
1.5mlエッペンドルフチューブに免疫沈降用緩衝液を500μl収容するのではなく、150μl収容すること、チューブ内のタンパク質濃度が25、50,75及び100μg/500μlではなく、10μg/150μl及び25μg/150μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加すること及び抗CDK2抗体2μgをコートしたセファロースビーズではなく、抗CDK1抗体(サンタクルズ社)4μgをコートしたセファロースビーズを用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度を測定した。
【0051】
(比較例10〜12)
比較例10では、抗CDK1抗体を用いないこと以外は実施例4と同様にして蛍光強度を測定した。
比較例11では、シグナル発生物質として、5IAFではなく、ストレプトアビジン−FITC(ベクター社)を用いること、標識ヒストンH1をブロッティングした後にブロッキング剤をブロッティングするのではなく、ヒストンH1にヨードアセチルビオチンを結合させ、これをブロッティングした後、ブロッキング剤をブロッティングすること、ブロッキング剤のブロッティングの後にストレプトアビジン−FITCをブロッティングして基質の蛍光標識を行うこと以外は、実施例4と同様にしてFITC標識ヒストンH1の蛍光強度を測定した。
比較例12では、抗CDK1抗体を用いないこと以外は比較例11と同様にして蛍光強度を測定した。
【0052】
(結果)
実施例4で測定した蛍光カウント値から比較例10で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(C)と、比較例11で測定した蛍光カウント値から比較例12で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフ(D)とを図6に示す。グラフ(C)及びグラフ(D)の縦軸は、実施例4及び比較例11のシグナルの値であり、NetCNTで表した。
【0053】
図6より、グラフ(C)及びグラフ(D)は、タンパク質濃度依存的に良好な直線性を示しているが、グラフ(D)よりもグラフ(C)の方が、傾きが大きい。従って酵素活性を測定する際の検量線を実施例3と同様の方法を用いて作成することにより、従来よりも大きな傾きを有する検量線を作成することができる。このような大きな傾きを有する検量線を用いると、測定値の分解能が向上する。即ち、本実施例の方法により作成された検量線に基づいて酵素活性を測定すると従来よりも正確に活性を算出することができる。
【0054】
(実施例5)
1.5mlエッペンドルフチューブに免疫沈降用緩衝液を500μl収容するのではなく、1000μl収容すること、チューブ内の全タンパク質の濃度が25,50,75及び100μg/500μlではなく、25,50,及び75μg/1000μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加すること、及び4w/v%のBSAではなく、1w/v%のカゼインを含むブロッキング溶液を用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度を測定した。
【0055】
(比較例13)
比較例13では、抗CDK2抗体がコートされていないセファロースビーズを用いること以外は実施例5と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0056】
(結果)
実施例5及び比較例13において測定された蛍光強度のグラフを図7に示す。
【0057】
図7より、実施例5のグラフはタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。従って、ブロッキング剤としてBSAだけでなく、カゼインを用いることができることが確認された。
【0058】
(実施例6)
10μgのヒストンH1を含む基質溶液ではなく、10μgのRbを用いること、チューブ内の全タンパク質の濃度が25,50,75及び100μg/500μlではなく、37.5及び75μg/500μlとなるように調節して測定用試料をチューブに添加すること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0059】
(比較例14)
比較例14では、抗CDK2抗体がコートされていないセファロースビーズを用いること以外は実施例6と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0060】
(結果)
実施例6及び比較例14において測定された蛍光強度のグラフを図8に示す。
【0061】
図8より、実施例6のグラフはタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。従って、基質としてヒストンH1だけでなく、Rbを用いることができることが確認された。
【0062】
(実施例7)
反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0063】
(比較例15〜17)
比較例15〜17では、反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、L型システインを用いること以外は、それぞれ比較例1〜3と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0064】
(結果)
実施例7及び比較例15〜17のPVDFメンブレンの写真を図9に示す。また、実施例7及び比較例15〜17において測定された蛍光強度のグラフを図10に示す。なお、蛍光強度は、蛍光カウント値(CNT)として表した。
【0065】
図9及び図10より、実施例7では反応停止剤としてL型システインを用いているが、実施例1と同様に正確にヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0066】
酵素の活性は、上述と同様にして検量線を作成し、この検量線に実施例7で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって算出することができる。
【0067】
(実施例8)
実施例8では、反応停止剤としてL型システインではなく、2−アミノエタンチオールを用いること以外は、実施例2と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0068】
(比較例18〜20)
比較例18〜20では、反応停止剤としてL型システインではなく、2−アミノエタンチオールを用いること以外は、それぞれ比較例4〜6と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0069】
(結果)
実施例8及び比較例18〜20のPVDFメンブレンの写真を図11に示す。また、実施例8及び比較例18〜20において測定された蛍光強度のグラフを図12に示す。
【0070】
図9及び図10より、実施例8では反応停止剤として2−アミノエタンチオールを用いているが、実施例2と同様に正確にヒストンH1を定量できたことが確認された。
【0071】
酵素の活性は、上述と同様にして検量線を作成し、この検量線に実施例2で測定される蛍光カウント値をあてはめることによって算出することができる。
【0072】
(実施例9及び10)
実施例9では、反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、アセチルシステインを用いること以外は、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
実施例10では、実施例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0073】
(比較例21及び22)
比較例21では、反応停止剤として2−メルカプトエタノールではなく、アセチルシステインを用いること以外は、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
比較例22では、比較例1と同様にして蛍光強度の測定を行った。
【0074】
(結果)
実施例9、10、比較例21及び比較例22において測定された蛍光強度のグラフを図13に示す。
図13より、反応停止剤としてアセチルシステインを用いた実施例9のグラフは、実施例10と同様にタンパク質濃度依存的に蛍光カウント値が上昇し、さらに良好な直線性を示した。従って、反応停止剤として、アセチルシステインを用いることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1及び比較例1〜3のPVDFメンブレンの写真である。
【図2】実施例1及び比較例1〜3において測定された蛍光強度のグラフである。
【図3】実施例2及び比較例4〜6のPVDFメンブレンの写真である。
【図4】実施例2及び比較例4〜6において測定された蛍光強度のグラフである。
【図5】実施例3で測定した蛍光カウント値から比較例7で測定した蛍光カウント値を差し引いた値と、比較例8で測定した蛍光カウント値から比較例9で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフである。
【図6】実施例4で測定した蛍光カウント値から比較例10で測定した蛍光カウント値を差し引いた値と、比較例11で測定した蛍光カウント値から比較例12で測定した蛍光カウント値を差し引いた値を示すグラフである。
【図7】実施例5及び比較例13において測定された蛍光強度のグラフである。
【図8】実施例6及び比較例14において測定された蛍光強度のグラフである。
【図9】実施例7及び比較例15〜17のPVDFメンブレンの写真である。
【図10】実施例7及び比較例15〜17において測定された蛍光強度のグラフである。
【図11】実施例8及び比較例18〜20のPVDFメンブレンの写真である。
【図12】実施例8及び比較例18〜20において測定された蛍光強度のグラフである。
【図13】実施例9,10、比較例21及び22において測定された蛍光強度のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シグナル発生物質を用いて試料中の被検出物質を検出する方法であって、
前記シグナル発生物質と前記被検出物質との複合体が固定化された固相担体を調製する工程、
前記固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程、及び
前記固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、前記被検出物質を検出する工程、
を含む被検出物質の検出方法。
【請求項2】
前記ブロッキング剤を固定化する前に、前記シグナル発生物質と前記被検出物質とを結合させることにより前記複合体を形成させ、この複合体を固相担体に固定化する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被検出物質がタンパク質である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記シグナル発生物質が、蛍光物質を有する請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記蛍光物質が、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセイン、オレゴングリーン、クマリン、エオシン、フェナントロリン、ピレン及びローダミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ブロッキング剤が、アルブミン、カゼイン、グロブリン及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一つを含む請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記固相担体が、ポリビニリデンフロライド、ニトロセルロース、セルロースアセテート及びナイロンからなる群より選択される少なくとも1つの材質により構成されている請求項1〜6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記複合体を固相担体に固定化する前に、前記被検出物質と前記シグナル発生物質との結合反応を停止させる、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記停止工程において、チオール基を有する還元剤を用いて前記結合反応を停止させる請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記チオール基を有する還元剤が、2−メルカプトエタノール、D型システイン、L型システイン、アセチルシステイン、2−メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、2−アミノエタンチオール、ジチオスレイトール、グルタチオン及びドデカンチオールからなる群より選択される少なくとも1つの反応停止剤を用いて前記結合反応を停止させる請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記検出工程において、前記シグナルを定量することにより、前記被検出物質を定量する請求項1〜10記載の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記被検出物質が、所定の酵素と前記酵素に対応する基質との酵素反応によって生成した産物である請求項1〜11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって検出された前記被検出物質の検出結果に基づいて、前記酵素の活性を測定する酵素活性の測定方法。
【請求項14】
前記酵素が、キナーゼである請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記基質がヒストンH1及び網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質である請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記Rbのシステイン残基が硫黄原子を有さないアミノ酸に置換されている請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記酵素反応が、アデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)を用いて前記基質にチオリン酸基を導入する反応である請求項13〜16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
前記シグナル発生物質が、前記基質に導入されたチオリン酸基に結合する請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記酵素の活性値が、予め作成された検量線を用いて算出される請求項13〜18の何れかに記載の方法。
【請求項1】
シグナル発生物質を用いて試料中の被検出物質を検出する方法であって、
前記シグナル発生物質と前記被検出物質との複合体が固定化された固相担体を調製する工程、
前記固相担体にさらにブロッキング剤を固定化する工程、及び
前記固相担体に固定化した複合体のシグナル発生物質から発するシグナルを検出することにより、前記被検出物質を検出する工程、
を含む被検出物質の検出方法。
【請求項2】
前記ブロッキング剤を固定化する前に、前記シグナル発生物質と前記被検出物質とを結合させることにより前記複合体を形成させ、この複合体を固相担体に固定化する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被検出物質がタンパク質である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記シグナル発生物質が、蛍光物質を有する請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記蛍光物質が、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセイン、オレゴングリーン、クマリン、エオシン、フェナントロリン、ピレン及びローダミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ブロッキング剤が、アルブミン、カゼイン、グロブリン及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一つを含む請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記固相担体が、ポリビニリデンフロライド、ニトロセルロース、セルロースアセテート及びナイロンからなる群より選択される少なくとも1つの材質により構成されている請求項1〜6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記複合体を固相担体に固定化する前に、前記被検出物質と前記シグナル発生物質との結合反応を停止させる、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記停止工程において、チオール基を有する還元剤を用いて前記結合反応を停止させる請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記チオール基を有する還元剤が、2−メルカプトエタノール、D型システイン、L型システイン、アセチルシステイン、2−メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、2−アミノエタンチオール、ジチオスレイトール、グルタチオン及びドデカンチオールからなる群より選択される少なくとも1つの反応停止剤を用いて前記結合反応を停止させる請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記検出工程において、前記シグナルを定量することにより、前記被検出物質を定量する請求項1〜10記載の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記被検出物質が、所定の酵素と前記酵素に対応する基質との酵素反応によって生成した産物である請求項1〜11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって検出された前記被検出物質の検出結果に基づいて、前記酵素の活性を測定する酵素活性の測定方法。
【請求項14】
前記酵素が、キナーゼである請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記基質がヒストンH1及び網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質である請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記Rbのシステイン残基が硫黄原子を有さないアミノ酸に置換されている請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記酵素反応が、アデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)を用いて前記基質にチオリン酸基を導入する反応である請求項13〜16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
前記シグナル発生物質が、前記基質に導入されたチオリン酸基に結合する請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記酵素の活性値が、予め作成された検量線を用いて算出される請求項13〜18の何れかに記載の方法。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図9】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2007−121261(P2007−121261A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51909(P2006−51909)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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