説明

被膜複合化材の製造方法と製造装置

【課題】低溶解度の高分子材料も利用でき、膜厚の厚い被膜を容易に形成でき、粒子凝集がなく、高いエネルギーを必要とすることがなく、流体が循環再利用可能な、均一な膜組成を持つ被膜複合化材を製造する方法を提供する。
【解決手段】被膜形成用材料を溶解槽内に収容し、母材を被膜形成槽内に収容し、溶解槽よりも被膜形成槽の圧力が低くなるように設定した状態で、溶解槽に超臨界流体を供給して被膜形成用材料を溶解させ、被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を、溶解槽と被膜形成槽との圧力差により溶解槽側から被膜形成槽側へ供給し、その圧力差を調整して超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、被膜形成用材料を母材の表面に析出させ、被膜形成槽から溶解槽へ流体を返送し、少なくとも溶解槽と被膜形成槽間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、溶解槽と被膜形成槽とを含む循環流路内で流体を連続的に循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子等の母材の表面に、高分子材料等の被膜形成用材料を被膜化させ
て被膜複合化材を製造する被膜複合化材の製造方法と製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子等の母材の表面に、高分子材料等の被膜形成用材料を被膜化させて被膜複合化粒子等の複合化材を製造する技術が、種々の技術分野において広く適用されている。たとえば、機能性ナノ粒子状の粉末原料と合成樹脂等の高分子材料とを用い、その粉末原料の表面に被膜を形成して粉末の表面性能を改質するコーティングが実施されている。このようなコーティング技術として、従来では、有機溶剤を用いて高分子材料を溶解し、その溶液をスプレー等で噴霧するプロセスによって粒子表面にコーティングする技術があるが、このような技術では揮発性の有機溶剤が放出されることによって環境への負荷が増加するという欠点がある。また有機溶剤を用いることなく高分子材料を溶解させる乾式溶融法では、高分子材料を高温で処理することが必要となるので、エネルギーを大量に消耗するという欠点がある。
【0003】
そこで、有機溶剤を使用せず、高温処理を必要としない、超臨界流体を用いた微粒子コーティング技術が開発されている。このような超臨界流体を用いた微粒子コーティング技術として、急速膨張法、低速膨張法、噴流型流動層法等が開発されている。
【0004】
急速膨張法は、下記特許文献1に記載されているように、溶解した高分子材料と母材粒子とを共存させた状態で超臨界状態から大気圧まで急速に減圧し、一気に噴射させることによって、母材粒子表面に有機高分子材料をコーティングするものである。
【0005】
しかしながら、急速膨張法では、ノズルを介して激しい噴射が行われるため、コーティング用の高分子材料としての溶質の溶解度の変化を制御することが容易でなく、膜の形成状態を精密に調整することが困難である。そのため、母材粒子に対するコーティング膜の厚さが不均一になる恐れがある。また、減圧時に超臨界流体に対して溶質が過飽和の状態となり、溶質自身が微粒子化し易く、母材粒子の表面に対して溶質を高濃度にコーティングすることができない。
【0006】
一方では、高分子材料は超臨界二酸化炭素に対する溶解度が低い。すなわち、超臨界二酸化炭素に十分な溶解度を持つ高分子材料は、数種のシリコーン系又はフッ素系の高分子材料しか存在せず、その他の高分子材料は超臨界流体に対する溶解度が低く、微粒子へのコーティングが困難となっているのが現状である。特に、一定の厚さ以上の被膜を形成することは非常に困難である。また被膜化される高分子材料の量は、処理槽内において溶解した高分子材料の量に依存するので、母材粒子の表面に一定の厚さの被膜を形成するためには、処理を行う槽の容積を大きくしなければならないという課題もある。
【0007】
低速膨張法は、特許文献2乃至7に記載されているように、急激な噴射を避け、超臨界流体の圧力を徐々に臨界点以下に減圧することによって、粒子のコーティングを行う技術である。高分子材料の溶解度の変化速度を緩慢に制御することができるので、高分子材料自身の微粒子化を抑制することができる。そのため、低速膨張法は母材粒子に対して厚膜を形成する上で急速膨張法よりも有利であるが、処理槽の容積が大きくなる等の上記急速膨張法の問題点は解決されることがない。
【0008】
噴流型流動層法は、特許文献8及び特許文献9に記載されているように、超臨界流体に溶解した高分子材料を、母材粒子を流動化させた流動層内部に急速膨張の原理で流入することによって母材粒子をコーティングする方法である。高分子材料を溶解させた超臨界流体を、連続的に母材粒子に接触させる方法であるため、溶解度の低い高分子材料に対しても連続コーティングが可能となり、厚い膜を形成することが可能となる。
【0009】
しかし、噴流型流動層法は、基本的には急速膨張法の原理を利用しているので、粒径が不均一な複数の母材粒子がある場合には流動層内部の均一な流動性を確保することが容易ではなく、粒子の凝集や付着などが生じるおそれがあり、均一な膜の形成が容易ではない等の急速膨張法と同様の問題点がある。
【0010】
さらに、上記3種類の方法に共通する問題点として、超臨界流体の循環再利用が難しいという問題点がある。たとえば超臨界二酸化炭素を使う場合、高圧下の超臨界二酸化炭素を、一旦、大気圧まで減圧すると、排出した二酸化炭素を再び回収して超臨界状態に戻すために多くのエネルギーを必要とする。従ってコーティングの実用化には不便である。
【0011】
【特許文献1】特開2002−309124号公報
【特許文献2】特開2002−206028号公報
【特許文献3】特開2002−210356号公報
【特許文献4】特開2004−10639号公報
【特許文献5】特開2004−82089号公報
【特許文献6】特開2004−130296号公報
【特許文献7】特開2005−292228号公報
【特許文献8】特開2001−129382号公報
【特許文献9】特開2003−200032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、従来、高分子材料の溶解に用いられていた有機溶剤を不要とし、低溶解度の高分子材料も利用することができ、膜厚の厚い被膜を容易に形成することができ、粒子凝集がなく、高いエネルギーを必要とすることがなく、流体が循環再利用可能であり、均一な膜組成を持つ被覆粒子等の被膜複合化材を製造することができる被膜複合化材の製造方法と製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような課題を解決するために、被膜複合化材の製造方法と製造装置としてなされたもので、被膜複合化材の製造方法としての特徴は、母材の表面に被膜を形成するための被膜形成用材料を溶解槽内に収容し、且つ該溶解槽の下流側に設けられた被膜形成槽内に母材を収容し、溶解槽よりも被膜形成槽の圧力が低くなるように設定した状態で、前記溶解槽に超臨界流体を供給して被膜形成用材料を溶解させ、該被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を、溶解槽と被膜形成槽との圧力差により前記溶解槽側から被膜形成槽側へ供給するとともに、該溶解槽と被膜形成槽との圧力差を調整して、超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、過飽和状態となった被膜形成用材料を、前記被膜形成槽内で母材の表面に析出させ、前記被膜形成槽から溶解槽へ流体を返送し、少なくとも溶解槽と被膜形成槽間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、該溶解槽と被膜形成槽とを含む循環流路内で流体を連続的に循環させ、母材の表面に被膜を形成して被膜複合化材を製造することである。
【0014】
また、被膜複合化材の製造装置としての特徴は、被膜形成用材料を収容し、超臨界流体を供給して前記被膜形成用材料を溶解させる溶解槽と、母材を収容し、前記被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を供給して前記母材の表面に被膜を形成するための被膜形成槽とを具備し、前記被膜形成槽は、前記溶解槽よりも圧力が低くなるように設定されて、該溶解槽と被膜形成槽との圧力差により前記被膜形成用材料を溶解した超臨界流体が前記溶解槽側から被膜形成槽側へ供給されるとともに、該溶解槽と被膜形成槽との圧力差を調整して、超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、過飽和状態となった被膜形成用材料が前記被膜形成槽内で母材の表面に析出させるように構成され、しかも前記被膜形成槽から溶解槽へ流体を返送することができ、少なくとも溶解槽と被膜形成槽間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、該溶解槽と被膜形成槽とに流体を連続的に循環させることができる循環流路が形成されていることである。
【0015】
被膜形成槽内には、母材とともにナノ粒子を収容することが可能であり、その場合、被膜形成用材料が溶解されて溶解槽側から被膜形成槽側へ供給される超臨界流体中にナノ粒子が分散され、母材の表面に形成される被膜内にナノ微粒子を具備させることが可能となる。この場合、複数種の微粒子を被膜内に具備させることも可能である。
【0016】
また、溶解槽から被膜形成槽へ供給される流体の流量、該流体の圧力、又は該流体の温度の少なくともいずれかを調整することにより、被膜形成用材料の過飽和度と、母材に析出する被膜形成用材料の晶析速度とを制御することも可能である。
【0017】
さらに、循環流路を循環する流体の循環時間を調整することにより、母材に析出する被膜形成用材料の膜厚を制御することも可能である。
【0018】
超臨界流体としては、たとえば超臨界二酸化炭素が用いられる。また被膜形成用材料としては、たとえば合成樹脂等の有機高分子材料のようなものが用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上述のように、母材の表面に被膜を形成するための被膜形成用材料を溶解槽内に収容し、且つ該溶解槽の下流側に設けられた被膜形成槽内に母材を収容し、溶解槽よりも被膜形成槽の圧力が低くなるように設定した状態で、前記溶解槽に超臨界流体を供給して被膜形成用材料を溶解させ、該被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を、溶解槽と被膜形成槽との圧力差により前記溶解槽側から被膜形成槽側へ供給するとともに、該溶解槽と被膜形成槽との圧力差を調整して、超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、過飽和状態となった被膜形成用材料を、前記被膜形成槽内で母材の表面に析出させ、前記被膜形成槽から溶解槽へ流体を返送し、少なくとも溶解槽と被膜形成槽間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、該溶解槽と被膜形成槽とを含む循環流路内で流体を連続的に循環させ、母材の表面に被膜を形成して被膜複合化材を製造するため、形成される被膜の膜組成を均一に形成することができ、また膜厚の厚い被膜を形成することができるという効果がある。
【0020】
また、少なくとも溶解槽と被膜形成槽間の流路において超臨界状態に維持する流体は、その溶解槽と被膜形成槽とを含む循環流路内で連続的に循環させることができるので、その流体を循環再利用することが可能となり、利用するエネルギーも大幅に省力化することが可能となる。
また、このような連続的なコーティング処理が可能となるので、溶解槽や被膜形成槽の槽容積を大きくする必要がなく、従来の急速膨張法等と比べて処理槽の容積を小さくすることができるという利点がある。
【0021】
さらに、被膜形成用材料として高分子材料を用い、流体として二酸化炭素を用いる場合、被膜形成槽内の圧力を二酸化炭素の臨界圧力以上とし、溶解槽内の圧力をさらにそれ以上とすることで、一般に超臨界二酸化炭素に対して溶解度が低い有機高分子材料であっても、容易に溶解させることができ、被膜形成用材料として好適に使用することができる。
【0022】
さらに、超臨界流体を利用する方法であるので、高分子材料等を溶解させるために従来用いられていた有機溶剤を使用する必要がないので、環境問題、溶剤残留等の問題も生じさせることがないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
本発明の被膜複合化材の製造方法は、上述のように、母材の表面に被膜を形成するための被膜形成用材料を溶解槽内に収容し、且つ該溶解槽の下流側に設けられた被膜形成槽内に母材を収容し、溶解槽よりも被膜形成槽の圧力が低くなるように設定した状態で、前記溶解槽に超臨界流体を供給して被膜形成用材料を溶解させ、該被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を、溶解槽と被膜形成槽との圧力差により前記溶解槽側から被膜形成槽側へ供給するとともに、該溶解槽と被膜形成槽との圧力差を調整して、超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、過飽和状態となった被膜形成用材料を、前記被膜形成槽内で母材の表面に析出させ、前記被膜形成槽から溶解槽へ流体を返送し、少なくとも溶解槽と被膜形成槽間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、該溶解槽と被膜形成槽とを含む循環流路内で流体を連続的に循環させ、母材の表面に被膜を形成して被膜複合化材を製造する方法である。
【0025】
また、本発明の被膜複合化材の製造装置は、被膜形成用材料を収容し、超臨界流体を供給して前記被膜形成用材料を溶解させる溶解槽と、母材を収容し、前記被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を供給して前記母材の表面に被膜を形成するための被膜形成槽とを具備し、前記被膜形成槽は、前記溶解槽よりも圧力が低くなるように設定されて、該溶解槽と被膜形成槽との圧力差により前記被膜形成用材料を溶解した超臨界流体が前記溶解槽側から被膜形成槽側へ供給されるとともに、該溶解槽と被膜形成槽との圧力差を調整して、超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、過飽和状態となった被膜形成用材料が前記被膜形成槽内で母材の表面に析出させるように構成され、しかも前記被膜形成槽から溶解槽へ流体を返送することができ、少なくとも溶解槽と被膜形成槽間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、該溶解槽と被膜形成槽とに流体を連続的に循環させることができる循環流路が形成されているものである。
【0026】
被膜形成槽内には、母材とともに、いわゆる機能性ナノ粒子などと称されている
ナノ粒子を収容することが可能であり、その場合、被膜形成用材料が溶解されて溶解槽側から被膜形成槽側へ供給される超臨界流体中にナノ粒子が分散され、母材の表面に積層される被膜形成用材料内にナノ粒子を具備させることが可能となる。この場合、複数種のナノ粒子を被膜形成用材料内に具備させる可能である。
【0027】
また、溶解槽から被膜形成槽へ供給される流体の流量、該流体の圧力、又は該流体の温度の少なくともいずれかを調整することにより、被膜形成用材料の過飽和度と、母材に析出する被膜形成用材料の晶析速度とを制御することも可能である。さらに、循環流路を循環する流体の循環時間を調整することにより、母材に析出する被膜形成用材料の膜厚を制御することも可能である。
【0028】
超臨界流体としては、たとえば二酸化炭素(臨界温度:31.1℃、臨界圧力:7.38MPa)、亜酸化窒素(臨界温度:36.4℃、臨界圧力:7.24MPa)、トリフルオロメタン(臨界温度:25.9℃、臨界圧力:4.84MPa)、窒素(臨界温度:―147℃、臨界圧力:3.39MPa)等を使用することができる。特に、作業上の安全性および工業化の可能性の観点から、二酸化炭素を用いるのが特に好ましい。
【0029】
また被膜形成用材料としては、たとえば合成樹脂のような高分子材料が用いられる。合成樹脂としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、
エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系樹脂等を用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。いずれにしても、合成樹脂の種類は問うものではない。
【0030】
高分子材料としては、主として合成樹脂が用いられるが、合成ゴムや天然樹脂のような高分子材料に本発明を適用することも可能である。さらには、高分子材料のみではなく、低分子化合物を用いることも可能である。たとえば薬剤として用いるような低分子化合物が例示される。さらには有機系の被膜形成用材料のみならず、たとえば金属材料やセラミック等の無機系の被膜形成用材料を用いることも可能であり、被膜形成用材料の素材の種類は問うものではない。
【0031】
さらに、母材としては、本発明においては主として粒子状のものが用いられる。たとえば酸化チタンのようなものを用いることができる。酸化チタンを用いる場合には、本発明の被膜複合化材を、たとえばドラッグデリバリーシステム等に用いられる薬剤微粒子に適用することができ、また化粧料用の顔料等に適用することもできる。また、酸化チタンの他、たとえばシリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物や、金属酸化物以外にチタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等を用いることもできる。また、金、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ガドリニウム、鉛、鉄、ニッケルの金属を用いることも可能である。その他、被膜複合化材を適用する用途に応じて種々の素材のものを母材として使用することができる。
【0032】
さらに、母材としては、上述のように主として粒子状のものが用いられるが、これに限らず、たとえば基盤のような板状等の形状のものを母材とすることもできる。
すなわち、本発明における被膜複合化材とは、母材粒子に被膜化された複合化粒子のようなものの他、母材である板材を被膜化したようなものも含む意味である。
【0033】
より具体的な実施形態について、図1に従って説明する。本実施形態の被膜複合化材の製造装置は、図1に示すように、ガスボンベ1、冷却機2、ポンプ3、加熱器4、溶解槽5、及び被膜形成槽6を具備して構成されている。
【0034】
ガスボンベ1は、二酸化炭素ガスを充填したボンベであり、このガスボンベ1から流体としての二酸化炭素が系内に供給される。冷却機2は、ガスボンベ1から供給される二酸化炭素を冷却して二酸化炭素を凝縮させるためのものである。ポンプ3は、前記冷却機2で冷却された流体を下流側へ供給するためのものである。加熱器4は、前記冷却機2で冷却された流体を加熱して流体の温度を上昇させるためのものであり、この加熱器4によって、二酸化炭素が臨界温度以上に昇温されることとなる。
【0035】
溶解槽5は、被膜形成用材料である合成樹脂を溶解させるための槽であり、溶解させる際に合成樹脂を攪拌させるための攪拌器7が前記溶解槽5内に設けられている。被膜形成槽6は、前記被膜形成用材料で被覆する母材粒子と、被膜形成用材料とともに母材粒子の表面に具備され、その被膜形成用材料内に埋設される機能性ナノ粒子とを収容するための槽であり、前記溶解槽5で被膜形成用材料を溶解させた流体が被膜形成槽6へ供給されたときに、機能性ナノ粒子が流体によって分散状態となり、母材粒子の表面に被膜が形成されるとともに、その被膜内に機能性ナノ粒子が埋設された状態となるのである。この被膜形成槽6内には、被膜形成用材料とともに機能性ナノ粒子や母材粒子を攪拌するための攪拌器8が設けられている。
【0036】
このように、溶解槽5に被膜形成用材料である合成樹脂を収容し、超臨界流体の導入によって、合成樹脂を溶解槽5内で溶解させ、この溶解槽5とは別の被膜形成槽6内に母材粒子と機能性ナノ粒子を収容することによって、合成樹脂を溶解させる操作と、溶解した合成樹脂を母材粒子に被覆するとともに被膜中に機能性ナノ粒子を埋設させる操作とを、それぞれ別々の処理槽で行うことができるので、母材粒子や機能性ナノ粒子が合成樹脂の溶解前に大量に凝集するようなこともなく、また
団粒や塊が不用意に形成されるようなこともないのである。
【0037】
9、10、11、12、13、14は、流体の流路を示す。加熱器4の下流側且つ溶解槽5の上流側には、図1に示すように、保圧弁15が設けられている。そして、この保圧弁15の上流側且つ冷却機2の下流側に、ポンプ3と加熱器4とが設けられている。この保圧弁15は、溶解槽5へ供給される流体の圧力を、予め設定された所定値を超えないように保持するための弁である。
【0038】
さらに溶解槽5と被膜形成槽6間の流路12における溶解槽5の出口部の近傍には、減圧弁16が設けられている。被膜形成槽6から冷却機2へ流体を返送する流路13における前記被膜形成槽6の出口部の近傍にも、減圧弁17が設けられている。このように、溶解槽5と被膜形成槽6との出口部の近傍にそれぞれ減圧弁16、17が設けられているので、溶解槽5内の圧力と被膜形成槽6内の圧力とをそれぞれ独立して個別に調整することができる。被膜形成槽6と冷却機2間の流路13には、流量計18も設けられており、この流量計18によって、系内を流通する流体の流量が測定されることとなる。また、被膜形成槽6の出口部にはフィルター19が設けられており、このフィルター19によって母材や微粒子が被膜形成槽6の外部に不用意に排出されるのが防止されることとなる。
【0039】
次に、上記のような被膜複合化材の製造装置を用いて、被膜複合化材を製造する方法の実施形態について説明する。先ず溶解槽5内に、被膜形成用材料である合成樹脂を収容し、被膜形成槽6内に母材粒子と機能性ナノ粒子とを収容する。
【0040】
次に、ガスボンベ1から二酸化炭素を溶解槽5側へ供給する。この場合、二酸化炭素は先ず冷却機2へ供給されて冷却され、凝縮される。凝縮されて液化した二酸化炭素は、ポンプ3によって加熱器4へ供給され、その加熱器4で臨界温度以上に昇温される。また二酸化炭素は、ポンプ3によって昇圧されるが、そのポンプ3が
連続運転されているので、上述のようにそのポンプ3の出口部における圧力も連続的に上昇する。その結果、臨界圧力以上に昇圧された流体が溶解槽5側へ供給されることとなるのであるが、流路11を介して溶解槽5側へ供給される圧力が、上記保圧弁15によって予め所定値未満となるように設定されているので、その所定値未満の圧力であって、臨界圧力以上に昇圧された流体のみが流路11を介して溶解槽5側へ供給され、所定値を超える圧力の流体は、流路14を介して冷却機2へ返送される。
たとえば保圧弁15の設定値を20MPaとした場合、装置の運転開始後には、溶解槽5へ供給される流体の圧力は、ボンベ圧の5MPaから上昇し、臨界圧7.4MPaを超えて、20MPaまで上昇する。その後は、溶解槽5の圧力は常に20MPaに安定した状態で維持されることとなる。そして、圧力が20MPa以上に上昇すると、20MPaを超えた圧力の流体は保圧弁15から分岐する流路14によって冷却機2へ返送されることとなる。
このように、ポンプ3の連続運転によって、溶解槽5の圧力は20MPaより下がらないように維持され、また保圧弁15によって20MPaより上がらないように維持されることとなる。この場合、保圧弁15で設定される圧力は、20MPaに限定されるものではないが、臨界圧力以上には設定される必要がある。
【0041】
臨界圧力以上、臨界温度以上に昇圧、昇温された流体、すなわち超臨界流体は、溶解槽5へ供給される。そして、その溶解槽5へ供給された超臨界流体は、該溶解槽5内に予め収容されていた合成樹脂を溶解させる。この場合、流体は超臨界状態となっているので、合成樹脂は流体に十分溶解されているが、攪拌器7で攪拌することによって、さらに合成樹脂を均一に溶解させることができる。
【0042】
次に、合成樹脂を溶解した超臨界流体は、溶解槽5から被膜形成槽6へ供給される。このとき、被膜形成槽6内の圧力は、溶解槽5内の圧力よりも少し低くなるように設定されている。このような圧力の調整は、減圧弁16によってなされる。これによって、超臨界流体は溶解槽5側から被膜形成槽6側へ供給されることとなるのである。このように溶解槽5と被膜形成槽6との間に減圧弁16を設けることによって、溶解槽5と被膜形成槽6とに所望の圧力差を生じさせることができ、それによって、溶質である合成樹脂を含む流体(二酸化炭素)を、一定の流量で溶解槽5から被膜形成槽6へ供給することができる。尚、上記のような減圧弁16に代えて、レギュレーターや流量調整バルブ等によって、溶解槽5と被膜形成槽6とに一定の圧力差を生じさせるようにすることも可能である。
【0043】
このようにして、合成樹脂を溶解した超臨界流体が被膜形成槽6へ供給されると、
その被膜形成槽6内では、母材粒子や機能性ナノ粒子が分散状態となる。この場合、溶解槽5と被膜形成槽6との圧力差を調整することによって、流体に対する合成樹脂の溶解度を調整することが可能となり、流体に溶解している合成樹脂を過飽和状態とさせることができる。このようにして過飽和状態となった合成樹脂は、被膜形成槽6内で母材粒子の表面に析出する。それとともに、分散状態となっていた機能性ナノ粒子は、母材粒子の表面に析出した合成樹脂の層に埋設されることとなる。
【0044】
また、この場合において、被膜形成槽6内には、被膜形成用材料とともに機能性ナノ粒子や母材粒子を攪拌するための攪拌器8が設けられているので、この攪拌器8を高速攪拌させることによって、母材粒子と機能性粒子の混合粒子を分散させ、
懸濁状態を維持しながら被膜形成作業が行われることとなる。
さらに、この場合において、フィルター19の後方側には、減圧弁17が設けられているため、被膜形成槽6から排出される流体の圧力は、被膜形成槽6内の圧力よりも減圧されるが、上記減圧弁17での調整によって、臨界圧力以上には保たれる。従って、被膜形成槽6内の圧力を流体(二酸化炭素)の臨界圧力以上に保つことができ、それによって、被膜形成槽6内の二酸化炭素を超臨界状態に保つことができる。
【0045】
そして、被膜形成槽6から流体のみが排出され、流路13を介して冷却機2へ返送されることとなる。この場合、被膜形成槽6の出口部にはフィルター19が設けられているので、母材粒子や機能性ナノ粒子が被膜形成槽6の外部に不用意に排出されることもない。また、過飽和状態となった合成樹脂は、母材の表面に析出する他、被膜形成槽6内で沈殿することとなる。
【0046】
流路13を介して冷却機2へ返送された流体は、その冷却機2で凝縮され、加熱器4で加熱されるとともにポンプ3で昇圧されて再度超臨界状態とされ、溶解槽5へ供給されて合成樹脂を溶解させ、その溶解させた合成樹脂を被膜形成槽6へ供給して、母材の表面に析出させ、それとともに微粒子を分散させて母材の表面に析出される被膜に内包させる。そして流体は、流路13、10、11、12を循環して、上記のような合成樹脂を溶解させる操作と、過飽和状態となった合成樹脂を母材の表面に析出させるとともに、微粒子を分散させて母材の表面に析出された被膜に内包させる操作とを繰り返し、このような母材表面への被膜形成が連続的に行われることとなる。
【0047】
そして、上記のような流路13、10、11、12によって形成される循環流路を流体が循環することによって、母材の表面に被膜が徐々に積層されることとなり、厚膜が形成されることとなる。
【0048】
このように、本実施形態においては、被膜形成槽6から排出された流体を冷却させて再び増圧し、溶解槽5に返送することによって、流体の循環再利用を行うことが可能となる。また上記のような流路13、10、11、12によって形成される循環流路により、流体の圧力を大気圧まで減圧することなく、高圧状態のままで循環再利用することができ、省エネルギープロセスを実現することができる。
【0049】
また、上述のように流体を循環再利用することで、母材に対して被膜形成用材料
である高分子材料を連続的にコーティングすることが可能となり、溶解度の低い高分子材料に対しても、上記循環流路を循環して流体を流通させる時間を長くすることにより、厚い被膜を形成することが可能となる。
【0050】
この場合、溶解槽5へ供給される側の流路における流体の流量は、たとえばコリオリ流量計で測定することができ、また被膜形成槽6から排出される側の流路における流体の流量は、高圧ガス流量計で測定することができ、これらを測定して積算流量から被膜に積層された膜厚等のコーティング効果を把握することができる。
【0051】
流量の調整は、ポンプ3の送液速度や、減圧弁16、17の設計構造等を適宜変更することによって行うことができる。減圧弁16、17に代えて、流量調整バルブやレギュレーター等を用いる場合には、これらの流量調整機能等を利用することによっても、流量を調整することができる。
【0052】
流体流量の調整で、被膜形成槽6へ供給する溶質(被膜形成用材料)の量を制御し、母材の表面に析出される被膜形成用材料の晶析速度を調整することで、製膜速度を制御することが可能となる。
【0053】
尚、上記実施形態では、溶解槽5と被膜形成槽6との圧力差を調整することによって、流体に対する被膜形成用材料の溶解度を調整したが、これに限らず、溶解槽5と被膜形成槽6との温度差によって流体に対する被膜形成用材料の溶解度を調整することも可能である。いずれの場合であっても、溶解槽5と被膜形成槽6の圧力又は温度を独立して調整し、圧力差又は温度差に基づいて溶質の溶解度の変化をさせ、これによって溶質である被膜形成用材料の溶解度の変化の程度を制御することができ、それによって、過飽和度を一定にして、溶解槽5で溶解した溶質を被膜形成槽6内で晶析させ、母材の表面に積層される被膜の形態と性能を調整することが可能となる。ただし、本発明においては、溶解槽5側から被膜形成槽6側へ流体を供給する必要があるため、被膜形成槽6の圧力が、溶解槽5の圧力よりも低くなるように設定する必要がある。
【0054】
尚、溶解槽5と被膜形成槽6との温度差によって流体に対する被膜形成用材料の溶解度を調整する場合、流体の温度は上記のように加熱器4で昇温される他、溶解槽5と被膜形成槽6においては、それぞれ溶解槽5と被膜形成槽6とを包囲すべく設けられている恒温槽によって温度を調整することができる。
【0055】
温度と圧力は、使用する流体が超臨界流体になる条件、すなわち臨界圧力以上、臨界温度以上の条件であれば良い。本実施形態では流体として二酸化炭素(臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPa)を利用するため、温度は31.1℃以上、
圧力は7.38MPa以上となる。
【0056】
さらに、上記実施形態では、母材粒子の表面に被膜形成用材料を析出させて被膜を形成するとともに、その被膜内に機能性ナノ粒子を埋設させる場合について説明したため、母材粒子と機能性ナノ粒子との双方を被膜形成槽6内に収容したが、機能性ナノ粒子を埋設させず、母材粒子表面に被膜のみを形成する場合には、被膜形成槽6内には、母材粒子のみを収容しておけばよい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0058】
(実施例1)
本実施例では、母材として酸化チタン(TiO2)粒子を用い、被膜形成用材料としてピロキシカム(Piroxicam)を用いた。ピロキシカムは、オキシカム系非ステロイド抗炎症剤として用いられている薬剤であるが、各種の薬剤の中でも、超臨界二酸化炭素中に溶解しにくいモデル薬品と認められている。超臨界二酸化炭素中のピロキシカムの溶解度を示すグラフが図2に示されている。
【0059】
上記実施形態1のような溶解槽と被膜形成槽を具備する装置を用いることにより、ピロキシカムを超臨界二酸化炭素中に好適に溶解させることができ、ピロキシカムを酸化チタン微粒子にコーティングすることによって、薬剤被覆微粒子を製造することができた。このようにピロキシカムを酸化チタン微粒子にコーティングして薬剤被覆微粒子を製造することによって、いわゆるドラッグデリバリーシステムとしての応用が可能となる。
【0060】
母材粒子として、粒子直径0.5〜5μmの酸化チタン2gを準備し、被膜形成用材料として100mgのピロキシカムを準備した。
【0061】
溶解槽の圧力は20MPaに調整し、温度は50℃に調整した。また被膜形成槽の圧力は10±0.5MPaに調整し、温度は50℃に調整した。超臨界二酸化炭素の流量は、質量流量2.75g/min、体積流量約1.4L/min(標準状態CO2換算後)とした。またポンプの送液速度は40cc/minとした。装置の運転時間は100分で行った。
【0062】
本実施例で製造された薬剤被覆微粒子の走査型電子顕微鏡による拡大写真を図3に示す。図3からも明らかなように、製造された薬剤被覆微粒子は、凝集した状態ではなく、分散している状態であることが確認できた。また図4は、上記のようにして製造された薬剤被覆微粒子(ピロキシカム被覆酸化チタン微粒子)の粒度分布を示すグラフである。図4に示すように、本実施例で製造された薬剤被覆微粒子の粒子径は、0.4〜4μmの範囲に分布していた。この図4からも、薬剤被覆微粒子が分散している状態であることが確認できた。さらに図5は、微粒子に被覆された被覆物質のUV定量分析結果を示すチャートである。図5から、酸化チタン微粒子の表面を被覆しているピロキシカムの量は5重量%であった。
【0063】
(実施例2)
本実施例では、母材として銅の粉末を用い、被膜形成用材料としてポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いた。上記実施形態1のような溶解槽と被膜形成槽を具備する装置を用いることにより、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を超臨界流体二酸化炭素中に溶解させて、球形及び板形銅粉末の表面コーティングを行った。母材粒子としては、粒子径約4.7〜6.7μmの球形粒子である銅粉末5g、及び比表面積約0.10〜0.50m2/gの板形銅粉末5gを用いた。被膜形成用材料としては、6gのPDMSを用いた。
【0064】
溶解槽の圧力は12MPaに調整し、温度は40℃に調整した。また被膜形成槽の圧力は8±0.5MPaに調整し、温度は60℃に調整した。超臨界二酸化炭素の流量は、質量流量19.6g/min、体積流量約10.0L/min(標準状態CO2換算後)とした。またポンプの送液速度は60cc/minとした。装置の運転時間は90分で行った。
【0065】
本実施例においては、図6〜9に示すように、種々の形状のシリコーン樹脂被覆銅粉末が得られた。得られたシリコーン樹脂被覆銅粉末は、緻密且つ均一な膜を形成したことがわかった。EDS分析によってPDMS組成のSi成分は、10%程度であること確認できた。またFT−IRによる測定も、PDMSに固有のピーク(2964、1265、1099、1014、910、852、758cm-1
)が検出され、一定な厚さを持つPDMS膜が、Cu表面に形成されていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の被膜複合化材は、たとえば、UVカット粒子等の結晶性微粒子の製造、ドラッグデリバリーシステム等に適用しうる薬剤被覆微粒子の製造、光触媒粒子の製造等、広範な用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】一実施形態としての被膜複合化材の製造装置の概略ブロック図
【図2】薬剤被覆微粒子の超臨界二酸化炭素中の溶解度を示すグラフ。
【図3】薬剤被覆微粒子の走査型電子顕微鏡による拡大写真。
【図4】薬剤被覆微粒子の粒度分布を示すグラフ。
【図5】被覆物質のUV測定結果を示すチャート。
【図6】樹脂被覆銅粉末の走査型電子顕微鏡による拡大写真。
【図7】樹脂被覆銅粉末の走査型電子顕微鏡による拡大写真。
【図8】樹脂被覆銅粉末の走査型電子顕微鏡による拡大写真。
【図9】樹脂被覆銅粉末の走査型電子顕微鏡による拡大写真。
【符号の説明】
【0068】
5…溶解槽 6…被膜形成槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材の表面に被膜を形成するための被膜形成用材料を溶解槽(5)内に収容し、且つ該溶解槽(5)の下流側に設けられた被膜形成槽(6)内に母材を収容し、溶解槽(5)よりも被膜形成槽(6)の圧力が低くなるように設定した状態で、前記溶解槽(5)に超臨界流体を供給して被膜形成用材料を溶解させ、該被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を、溶解槽(5)と被膜形成槽(6)との圧力差により前記溶解槽(5)側から被膜形成槽(6)側へ供給するとともに、該溶解槽(5)と被膜形成槽(6)との圧力差を調整して、超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、過飽和状態となった被膜形成用材料を、前記被膜形成槽(6)内で母材の表面に析出させ、前記被膜形成槽(6)から溶解槽(5)へ流体を返送し、少なくとも溶解槽(5)と被膜形成槽(6)間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、該溶解槽(5)と被膜形成槽(6)とを含む循環流路内で流体を連続的に循環させ、母材の表面に被膜を形成して被膜複合化材を製造することを特徴とする被膜複合化材の製造方法。
【請求項2】
被膜形成槽(6)内に母材とともにナノ粒子を収容し、被膜形成用材料を溶解させて溶解槽(5)側から被膜形成槽(6)側へ供給された超臨界流体中にナノ粒子を分散させ、母材の表面に形成される被膜内にナノ粒子を具備させる請求項1記載の被膜複合化材の製造方法。
【請求項3】
複数種のナノ粒子が被膜内に具備される請求項2記載の被膜複合化材の製造方法。
【請求項4】
溶解槽(5)から被膜形成槽(6)へ供給される流体の流量、該流体の圧力、又は該流体の温度の少なくともいずれかを調整することにより、被膜形成用材料の過飽和度と、母材に析出する被膜形成用材料の晶析速度とを制御する請求項1乃至3のいずれかに記載の被膜複合化材の製造方法。
【請求項5】
循環流路を循環する流体の循環時間を調整することにより、母材に析出する被膜形成用材料の膜厚を制御する請求項1乃至4のいずれかに記載の被膜複合化材の製造方法。
【請求項6】
超臨界流体が、超臨界二酸化炭素である請求項1乃至5のいずれかに記載の被膜複合化材の製造方法。
【請求項7】
被膜形成用材料が高分子材料である請求項1乃至6のいずれかに記載の被膜複合化材の製造方法。
【請求項8】
被膜形成用材料を収容し、超臨界流体を供給して前記被膜形成用材料を溶解させる溶解槽(5)と、母材を収容し、前記被膜形成用材料を溶解させた超臨界流体を供給して前記母材の表面に被膜を形成するための被膜形成槽(6)とを具備し、前記被膜形成槽(6)は、前記溶解槽(5)よりも圧力が低くなるように設定されて、該溶解槽(5)と被膜形成槽(6)との圧力差により前記被膜形成用材料を溶解した超臨界流体が前記溶解槽(5)側から被膜形成槽(6)側へ供給されるとともに、該溶解槽(5)と被膜形成槽(6)との圧力差を調整して、超臨界流体に対する被膜形成用材料の溶解度を制御することにより、過飽和状態となった被膜形成用材料が前記被膜形成槽(6)内で母材の表面に析出されるように構成され、しかも前記被膜形成槽(6)から溶解槽(5)へ流体を返送することができ、少なくとも溶解槽(5)と被膜形成槽(6)間の流路においては流体を超臨界状態に維持しつつ、該溶解槽(5)と被膜形成槽(6)とに流体を連続的に循環させることができる循環流路が形成されていることを特徴とする被膜複合化材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−11877(P2009−11877A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172998(P2007−172998)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(599073917)財団法人かがわ産業支援財団 (35)
【Fターム(参考)】