説明

被覆コルゲートメタルガスケット

【課題】19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する被覆コルゲートメタルガスケットを提供すること。
【解決手段】両面に波形加工が施されたコルゲート状の金属板の両面に被覆材を貼り合わせてなり、該金属板の一方の面は2山以上の波形が、他方の面は1山以上の波形がそれぞれ加工された被覆コルゲートメタルガスケットであって、(1)該金属板の厚み(t)が0.4〜1.2mm、(2)該波形の高さ(t)と該金属板の厚み(t)との差(t−t)が0.2mm以上、(3)被覆材の厚み(t)が0.15〜1.2mm、及び(4)被覆材の密度が0.7〜1.35g/cm、の要件を満たすこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が波形加工された金属板の両面に被覆材を貼り合わせたシール性に優れる被覆コルゲートメタルガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被覆コルゲートメタルガスケットは、石油精製・石油化学プラント、発電所、製鐵所などにおいて、熱交換器等の機器や配管の接続箇所で流体をシールするために用いられる。
【0003】
従来は、上記用途として石綿とゴム等を用いて製作されたシートガスケットが多用されてきたが、石綿の使用が禁止されることになり、配管や機器で従来と同じ設計条件で使用できるガスケットとして被覆コルゲートメタルガスケットが注目されるようになってきた。
【0004】
特開2008−45608号公報には、同心又はほぼ同心状の波形形状に形成された金属板製のコア層と、その表裏の両面に積層される膨張黒鉛製の表面層とからなる三層構造のシール部を有し、前記シール部の外周端においては、前記コア層が前記表裏の各表面層よりも外径側に突出され、前記シール部の内周端においては、前記表裏の各表面層が前記コア層よりも内径側に突出されて前記コア層を覆う状態に構成されている非石綿ガスケット(被覆コルゲートメタルガスケット)が開示されている。このような被覆コルゲートメタルガスケットは、表面の被覆材がフランジ面のひずみや粗さを吸収し、また締め付けた時に波の部分に高い面圧が発生するともに金属の反発弾性も加味されることで、低い締め付け圧力でも高温流体がシールできる。
【0005】
さらに、通常のリング状以外にも楕円形状や額縁形状あるいはガスケットにボルト穴を開けた形状の製品も製造できるために、シートガスケットと同様に汎用性の高いガスケットとして知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−45608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、この被覆コルゲートメタルガスケットの用途が広がり、様々な条件、特に石綿ジョイントシートの締め付け面圧34.3N/mmより低い締め付け面圧で使用されるようになると、被覆コルゲートメタルガスケットの形状によっては、流体の漏れが発生するといった問題が生じるようになってきた。
【0008】
従って、本発明の目的は、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する被覆コルゲートメタルガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる実情において、鋭意検討を行った結果、被覆コルゲートメタルガスケットの形状において、中芯部材である金属板の厚さ、波形の高さ(金属板波型加工後の見かけ厚さ)、被覆材の厚さおよび被覆材の密度がそれぞれ特定範囲にあれば、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、シール性が良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、両面に波形加工が施されたコルゲート状の金属板の両面に被覆材を貼り合わせてなり、該金属板の一方の面は2山以上の波形が、他方の面は1山以上の波形がそれぞれ加工されたものであって、下記(1)〜(4);
(1)該金属板の厚み(t)が0.4〜1.2mm、
(2)該波形の高さ(t)と該金属板の厚み(t)との差(t−t)が0.2mm以上、
(3)被覆材の厚み(t)が0.15〜1.2mm、
(4)被覆材の密度が0.7〜1.35g/cm、を満たすことを特徴とする被覆コルゲートメタルガスケットを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わる被覆コルゲートメタルガスケットは、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における被覆コルゲートメタルガスケットの平面図である。
【図2】図1のX-X線に沿って見た端面図である。
【図3】図2の被覆コルゲートメタルガスケットの金属板の拡大図である。
【図4】他の実施の形態における被覆コルゲートメタルガスケットの平面図である。
【図5】他の実施の形態における被覆コルゲートメタルガスケットの平面図である。
【図6】他の実施の形態における被覆コルゲートメタルガスケットの平面図である。
【図7】他の実施の形態における被覆コルゲートメタルガスケットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本例の被覆コルゲートメタルガスケット10は、両面111、112に波形加工が施されたコルゲート状で且つ円形状の金属板(中芯部材)1の両面に被覆材2を貼り合わせてなるものである。本例の被覆コルゲートメタルガスケット10で使用する金属板1は、被覆材2で完全に覆われており、内径側21、外径側22共に金属板1のはみ出しはない。すなわち、内径側21は被覆材2が金属板1よりガスケット10の中心側に突出し、外径側22は被覆材2が金属板1より外側に突出している。このため、フランジにガスケットを装着する際やハンドリング時に金属板のエッジで手を切ることがなく安全性に優れている。このような被覆コルゲートメタルガスケット10は、金属板1を被覆材2で挟んだ3層構造部と、その両側が2枚の被覆材2が重なった2層構造部とからなる。
【0014】
被覆コルゲートメタルガスケット10で使用する金属板1の両面111、112には同心円状の波加工が施されている(図3参照)。すなわち、金属板1は、金属板1の径方向に沿って切断した切断面(図3の切断面)に波形が表れる形状をもつものである。本例では、一方の側111には、3つの山13a〜13cが形成され、他方の側112には、2つの山13d及び13eが形成されている。本発明の被覆コルゲートメタルガスケット10は、波形状が上記(1)及び(2)を満たしていればよく、例えば波形のピッチは等ピッチでなくともよいが、本例ではそれぞれの山は、高さ、振幅及びピッチは同じである。ガスケットのリング幅Yが大きくなれば、波の数もそれに応じて増えていく。
【0015】
被覆コルゲートメタルガスケット10において、金属板1の厚み(t)は、波加工された金属板1自体の厚みであり、図3における符号tに相当する部分の寸法を言う。金属板1の厚みは、波加工された金属板1のどの箇所を取ってもほぼ同じである。本発明において、金属板1の厚み(t)は、0.4〜1.2mmである。金属板1の厚み(t)が0.4mm未満では、所定締付面圧まで締め付けた際、金属が塑性変形して反発弾性力がなくなってしまい、逆に金属板1の厚み(t)が1.2mmを越えると、所定締め付け面圧で締め付けた際、必要な変形量が確保できなくなる。
【0016】
被覆コルゲートメタルガスケット10において、波形の高さは、波加工された金属板1の一方の側111における山の頂点13aと他方の側112における山の頂点13d間の厚み方向における距離、すなわち、金属板1自体の厚みではなく、波形を含めた金属板の見掛け厚さを言い、図3における符号tに相当する部分の寸法を言う。波形の高さ(t)は、図3におけるいずれの山といずれの谷をとっても同じである。谷とは図3中、他方の側112に山となる13d、13eを言う。
【0017】
本発明において、波形の高さ(t)と金属板の厚み(t)との差(t−t)は、0.2mm以上である。(t−t)が0.2mm未満では、金属板1の波の山部と谷部のR(アール)が大きくなり、シールに必要な荷重をかけることができなくなる。(t−t)の上限値は、概ね1.6mmである。(t−t)値が余り大き過ぎると波部の金属厚さが過度の変形により薄くなってしまい、締め付け面圧に耐えられなくなる点で好ましくない。
【0018】
被覆コルゲートメタルガスケット10において、中芯部材となる金属板1の材質は、流体の種類や温度などにより適宜選択されるが、例えばSUS316L、SUS316、SUS304等ステンレス鋼板を使用することが好ましい。
【0019】
被覆コルゲートメタルガスケット10で使用される被覆材の材質としては、膨張黒鉛、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、マイカ、セラミック、エラストマー、金属箔等が挙げられる。このうち、膨張黒鉛が本発明の効果を顕著に発現できる点で好ましい。
【0020】
被覆材2の厚み(t)は、0.15〜1.2mmである。被覆材2の厚み(t)は、金属板1を被覆する部分(図2中、符号Y部分)における被覆材2の厚み(t)を言う。被覆材2の厚みは、金属板1を被覆する部分における波形状の被覆材2のどの箇所を取ってもほぼ同じである。被覆材2の厚み(t)が1.2mmを越えると、金属板1の波の山部による面圧集中の影響を緩和してしまい、シール性が低下してしまう。また、金属板1の反発弾性をも殺いでしまう。被覆材2の厚み(t)が0.15mm未満であると、フランジ面の歪や粗さを吸収することができなくなる。
【0021】
被覆材2の密度は0.7〜1.35g/cmである。被覆材2の密度が0.7g/cm未満であると、被覆材2部分から漏れが発生し易くなり、シール性が低下してしまう。また、被覆材2の密度が1.35g/cmを越えると、被覆材が硬くなりすぎてしまい、クッション性が発現しにくいという点で好ましくない。
【0022】
本発明の被覆コルゲートメタルガスケットにおいて、金属板の一方の面は2山以上の波形が、他方の面は1山以上の波形がそれぞれ形成されたものである。すなわち、図2及び図3で示される本例の場合は、金属板の一方の面111は3つの山の波形が、他方の面112は2つの山の波形(3つの谷の波形)がそれぞれ形成されたものであるが、これに限定されず、金属板の一方の面111は4つの山の波形が、他方の面112は3つの山の波形がそれぞれ加工されたもの、金属板の一方の面111は5つの山の波形が、他方の面112は4つの山の波形がそれぞれ加工されたもの、金属板の一方の面111は6つの山の波形が、他方の面112は5つの山の波形がそれぞれ加工されたもの、金属板の一方の面111は7つの山の波形が、他方の面112は6つの山の波形がそれぞれ加工されたもの等が使用できる。これらは被覆コルゲートメタルガスケットの大きさ等によって適宜決定される。金属板の一方の面が1山の波形が形成され、他方の面が山なしの場合、波の山部による面圧集中の効果がなくなり、19.6N/mmのような低い締め付け面圧において、良好なシール性を発揮できない。
【0023】
また、被覆コルゲートメタルガスケットが大きい場合は、接触面を少なくして部分的に面圧を高くするために、波の間隔を広くしてもかまわない。この場合、一方の面111の山の波形とこれに隣接する他方の面112の山(一方の面111から見て谷)の波形とはサインカーブのように滑らかに連続するものでなく、その山と谷の間に平坦部が存在することになる。
【0024】
本発明の被覆コルゲートメタルガスケットの金属板1は、複数の分割体からなるものであってもよいため、金属材料の歩留まりを上げることができるとともに、大口径の被覆コルゲートメタルガスケットも作製することが可能となる。金属板1の分割体同士は溶接により接合されて一体物として使用される。金属板1の複数の分割体としては、切断線が径方向となるものが一般的であるが、これに限定されない。また、同様に被覆材についても複数の分割体で製作してもよい。被覆材の複数の分割体としては、金属板1と同様に、切断線が径方向となるものが一般的であるが、これに限定されない。分割個数としては、2つ以上で適宜決定すればよい。
【0025】
被覆コルゲートメタルガスケット10は、円形状のガスケットであるが、これに限定されず、例えば半円形状(図4)、額縁形状(図5)、トラック形状(図6)、円弧の曲率が変わるもの(図7)等も使用できる。半円形状の場合、例えばA−A線で示される境界部分41において、波形方向が直角方向に変わるが、波は途切れなく連続している。額縁形状の場合、例えばB−B線で示される境界部分51において、波形方向が直角方向に変わるが、波は途切れなく連続している。また、被覆コルゲートメタルガスケットに、ボルト穴を空けて、全面形ガスケットとしてもよい。
【0026】
次に、被覆コルゲートメタルガスケット10の使用方法を説明する。被覆コルゲートメタルガスケット10は、石油精製、石油化学プラント、発電所、製鉄所などにおいて、配管の接続場所、すなわち、対向するシール面間に装着されて流体をシールするために使用される。被覆コルゲートメタルガスケット10はフランジ間に装着後、流路12に流れる流体が、非流体側に漏れることを防止する。
【0027】
本発明の被覆コルゲートメタルガスケット10は、シール面と受圧面11間の締め付け面圧19.6N/mmで使用した際、2MPaの内圧に対して、漏洩量はほぼゼロという極めて優れたシール性を発揮する。
【0028】
次に、本発明の被覆コルゲートメタルガスケットの製造方法について説明する。被覆コルゲートメタルガスケットは、金属板の切断工程、金属板の波加工工程、接着剤の塗布工程、被覆材の切断工程、被覆材の接着工程といった工程を行なうことで製作される。なお、接着剤の塗布工程を省略して、波加工された金属板に被覆材を粘着テープで接着する工程を実施してもよい。すなわち、上記製造方法においては、金属板と被覆材の間に接着層を形成する工程を有していればよい。
【0029】
金属板の切断工程においては、厚み0.4〜1.2mmの金属板を使用し、これを切断する。金属板の切断方法としては、レーザー加工、プレスによる打ち抜き加工、サークルシャー、バイブロカッター、ワイヤー放電等による切断加工などが挙げられる。
【0030】
金属板の波加工工程において、波加工は、所定の波形状の金型を使用してプレス加工を行なえばよい。プレス加工に用いるプレスとしては、油圧式、機械式、バイブロ式、ハンマー式等あらゆるプレス方法が適用できる。また、プレス方法以外でもロールフォーミング装置により波加工を行なって製造することができる。ロールフォーミング装置は、特に、大口径の被覆コルゲートメタルガスケットを製作する際に利用されることが多い。
【0031】
波加工で使用する金型は、波形状の金型、180度以下の円弧形状の金型、直線形状の金型を単独又は組み合わせて用いることができる。180度以下の円弧形状の金型と直線形状の金型は、2回以上プレスを行なって加工する。直線形状の金型は、額縁形状のガスケットの直線部分を波付けする際に使用する。180度以下の円弧形状の金型の場合、先ず1回のプレスでひとつの山(波形状)を形成する。次いで、先に加工された波形状の終端部と新たにつける波形状の始端部が0.5〜3.0mmのラップ箇所を有するように2回目のプレス加工を行なう。これにより、継目が綺麗に仕上る。
【0032】
接着剤の塗布工程において、接着剤の塗布方法としては、スプレー方式、刷毛、ブラシ、ハンドローラー、ディスペンサー等の塗布方法が挙げられる。接着剤は金属板に塗布してもよく、被覆材に塗布してもよく、又は両者共に塗布してもよい。
【0033】
被覆材の切断工程において、被覆材は厚みが0.15〜1.2mmのもの、密度が0.7〜1.35g/cmを使用し、これを切断する。すなわち、被覆材の厚み及び密度は、被覆材の切断工程及び被覆材の接着工程を経ても、その数値はほとんど変化しない。切断手段としては、トムソン刃、ガスケットカッター、サークルシャーなどの切断方法を用いることができる。
【0034】
被覆材の接着工程において、波加工された金属板に対して、両面から所定形状に切断された被覆材を接着する。これにより、被覆材は3層構造部分において、波加工された金属板形状と同様の形状となる。また、内径側21及び外径側22の突出した部分は被覆材同士を接着する。なお、接着剤の塗布工程に代えて、粘着テープを用いて金属板に被覆材を接着する方法をとってもよい。
【0035】
実施例
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0036】
厚み0.8mmのSUS316Lの平板状金属板を、レーザー加工により切断加工して、内径63mm、外径102mmの穴あきの円板を作製した(金属板の切断工程)。次いで、切断加工された円板状の金属板に対して、一方の側面に山が6つ、他方の側面に山が5つとなるような同心円状の波形状をプレス加工により施した(金属板の波加工工程)。波加工された金属板は、(t−t)が0.2mm、波形のピッチが3.2mmであった。また、加工後の金属板の厚み(t)は加工前の厚みと同じであった。
【0037】
被覆材として厚み0.38mm、密度1.1g/cmの膨張黒鉛シートを、トムソン刃を用いて内径61mm、外径104mmの2枚の穴あき円形シートに切断加工した(被覆材の切断工程)。次いで、金属板の両面に接着剤(「スプレーのり77」(住友3M社製))をスプレー方式により塗布し接着層を形成した(接着剤の塗布工程)。次いで、波加工された金属板の一方の側に、切断加工された被覆材を接着し、更に波加工された金属板の他方の側に、切断加工された被覆材を接着して被覆コルゲートメタルガスケットを作製した(被覆材の接着工程)。なお、被覆材の接着工程後の被覆材の厚み及び密度は、切断及び接着加工前と同じ0.38mm、1.1g/cmであった。得られた被覆コルゲートメタルガスケットは、内径61mm、外径104mm、JPI 150LB 2Bに準拠したものであり、下記のシール試験を実施し、シール性を評価した。
【0038】
(シール試験)
シール試験は、JPI規格フランジ クラス150−RF−2B(材質;SUS304)を用いて、締め付け面圧19.6N/mm、29.4N/mm、39.2N/mmの3点とし、窒素ガスを2.0MPaの内圧で負荷したときの10分間の漏洩量を測定した。なお、実施例1〜4及び比較例1〜4については、締め付け面圧39.2N/mmでのシール試験を省略した。その結果を表1に示す。
【0039】
実施例2〜4及び比較例1〜4
(t−t)0.2mmに代えて、(t−t)を0.30mm(実施例2)、0.40mm(実施例3)、0.50mm(実施例4)、0.00mm(比較例1)、0.05mm(比較例2)、0.10mm(比較例3)又は0.15mm(比較例4)とした以外は、実施例1と同様の方法により被覆コルゲートメタルガスケットを作製し、シール試験を行った。その結果を表1に示した。なお、(t−t)の変更は、波形高さの変更であり、金属板の波加工工程における金型の形状を変更することで行なった。
【0040】
実施例5〜8及び比較例5、6
平板状金属板の厚み0.8mmに代えて、厚み0.4mm(実施例5)、厚み0.6mm(実施例6)、厚み1.0mm(実施例7)、厚み1.2mm(実施例8)、厚み0.1mm(比較例5)、1.5mm(比較例6)とした以外は、実施例3と同様の方法により被覆コルゲートメタルガスケットを作製し、シール試験を行った。なお、実施例5〜8及び比較例5、6の被覆コルゲートメタルガスケットは、(t−t)が0.4mm、被覆材の厚み(t)が0.38mm、被覆材の密度が1.1g/cmであった。その結果を表2に示す。
【0041】
実施例9及び比較例7、8
一方の側面に山が6つ、他方の側面に山が5つの同心円状の波形状に代えて、一方の側面に山が2つ、他方の側面に山が1つの同心円状の波形状としたこと(実施例9)、両面共に山なし(比較例7)、一方の側面に山が1つ、他方の側面に山が1つの同心円状の波形状としたこと(比較例8)としたこと以外は、実施例3と同様の方法により被覆コルゲートメタルガスケットを作製し、シール試験を行った。なお、実施例9及び比較例7、8の被覆コルゲートメタルガスケットは、(t)が0.8mm、(t−t)が0.4mm、波形のピッチが3.2mm、被覆材の厚み(t)が0.38mm、被覆材の密度が1.1g/cmであった。その結果を表3に示す。なお、実施例9及び比較例8は共に波形部分(図3中、符号Z)は幅方向(図3では左右方向の長さ)の中央部に形成した。このため、実施例9及び比較例8では、平坦部113の占める面積が実施例3に比べて大となる。
【0042】
実施例10〜13及び比較例9
被覆材の厚み0.38mmに代えて、厚み0.15mm(実施例10)、厚み0.25mm(実施例11)、厚み0.75mm(実施例12)、厚み1.20mm(実施例13)、厚み1.5mm(比較例9)とした以外は、実施例3と同様の方法により被覆コルゲートメタルガスケットを作製し、シール試験を行った。なお、実施例10〜13及び比較例9の被覆コルゲートメタルガスケットは、(t)が0.8mm、(t−t)が0.4mm、波形のピッチが3.2mm、被覆材の密度が1.1g/cmであった。その結果を表4に示す。
【0043】
実施例14〜16及び比較例10、11
被覆材の密度1.1g/cmに代えて、0.7g/cm(実施例14)、1.0g/cm(実施例15)、1.35g/cm(実施例16)、0.50g/cm(比較例10)、1.65g/cm(比較例11)とした以外は、実施例3と同様の方法により被覆コルゲートメタルガスケットを作製し、シール試験を行った。なお、実施例14〜16及び比較例10、11の被覆コルゲートメタルガスケットは、(t)が0.8mm、(t−t)が0.4mm、波形のピッチが3.2mm、被覆材の厚み(t)が0.38mmであった。その結果を表5に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
表1から、実施例1〜4は、波加工後の金属板の見かけの厚み(t)と加工前の金属板の厚み(t)との差が0.2mm以上あるため、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する。一方、(t−t)が0.15mm以下の比較例1〜4は、19.6N/mmのような低い締め付け面圧の場合、シール漏れが確認された。
【0050】
表1及び表2から、実施例3及び5〜8は、加工前の金属板の厚み(t)が0.4〜1.2mmであるため、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する。一方、加工前の金属板の厚み(t)が0.1mmあるいは1.5mmの比較例は、29.4N/mm以下の締め付け面圧において、シール漏れが確認された。
【0051】
表1及び表3から、実施例3及び実施例9は、一方の面の山の数が2以上あるため、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する。一方、比較例7及び8は、一方の面の山の数が1以下であるため、19.6N/mmのような低い締め付け面圧の場合、シール漏れが確認された。
【0052】
表1及び表4から、実施例3及び実施例10〜13は、被覆材の厚みが0.15〜1.2mmの範囲にあるため、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する。一方、比較例9は被覆材の厚みが1.5mmであるため、29.4N/mm以下の締め付け面圧において、シール漏れが確認された。
【0053】
表1及び表5から、実施例14〜16は、被覆材の密度が0.7〜1.35g/cmであるため、19.6N/mmのような低い締め付け面圧であっても、良好なシール性を有する。一方、比較例10及び11は被覆材の密度が0.5g/cm、又は1.65g/cmであるため、29.4N/mm以下の締め付け面圧において、シール漏れが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の被覆コルゲートメタルガスケットは、石油精製・石油化学プラント、発電所、製鐵所などの配管の接続箇所で、低締め付け面圧であっても、流体を良好にシールすることができ、保守管理の面で有利である。
【符号の説明】
【0055】
1 金属板
2 被覆材
10 被覆コルゲートメタルガスケット
11 受圧面
12 流路(流体側)
14 非流体側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に波形加工が施されたコルゲート状の金属板の両面に被覆材を貼り合わせてなり、該金属板の一方の面は2山以上の波形が、他方の面は1山以上の波形がそれぞれ加工されたものであって、下記(1)〜(4);
(1)該金属板の厚み(t)が0.4〜1.2mm、
(2)該波形の高さ(t)と該金属板の厚み(t)との差(t−t)が0.2mm以上、
(3)被覆材の厚み(t)が0.15〜1.2mm、
(4)被覆材の密度が0.7〜1.35g/cm
を満たすことを特徴とする被覆コルゲートメタルガスケット。
【請求項2】
該被覆材が、膨張黒鉛シートであることを特徴とする請求項1記載の被覆コルゲートメタルガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−163495(P2011−163495A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28909(P2010−28909)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】