説明

被覆切断具

【課題】堅い材質の曲がった芯材や両端が開放されていない芯材の表面を被覆する被覆材を容易に切断可能とする。
【解決手段】被覆切断具20は、芯材10の側面方向から芯材10に背面部32及び誘導部40を当接し、刃位置調節棒50によって刃62の先端を芯材10の表面に当接する。この状態で、進行方向に被覆切断具20が移動すると、芯材10の表面に沿って刃62が移動することになるため、芯材10の両端が壁や床、天井等に固定されて開放状態でない場合であっても、芯材10を予め取り外すことなく、芯材10の表面に被覆された被覆材12を簡単に切断することができる。このとき、芯材10は、円盤状の誘導部40の円周面及び移動可能な刃62の先端部で両側から保持されることになるため、芯材10が容易に変形することができない曲面を有する場合であっても、芯材10を切断位置に位置決めすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆切断具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面を被覆しているポリエチレン等の外皮を切断するための被覆切断具が知られている。例えば、特許文献1には、側面視C型で縦長な基盤の上端に切刃保持部を設け、この切刃保持部の下端に切刃を固定し、C型基盤下端部に嵌合係止した調整板に押え板を枢着させ、この押え板を調整板に設けた付製バネ機構で上方に付製するようになしたカッターが記載されている(図13参照)。このカッターは、C型基盤と押え板とでケーブルを挟着しながら、このカッターの一端を木槌等で叩打しつつカッターをケーブル方向にスライドさせることで、外皮を切開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−142915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした被覆切断具では、木槌等で叩たなければカッターをスライドさせられないほど強い力で芯材を平面(押え板)で固定しているため、芯材が一直線状(棒状)でない場合には、ケーブルを挟着した状態でカーターをスライドさせることができないという課題がある。言い換えると、こうした被覆切断具では、芯材が一直線状に変形させられない場合(例えば、銅製のU字管等の場合)には、芯材に被覆された被覆材を切断することができないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、芯材が一直線状に変形させられない場合であっても、芯材を被覆する被覆材を容易に切断することができる被覆材切断具を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の被覆切断具は、
長柄状の芯材の少なくとも一部を被覆する被覆材を切断する被覆切断具であって、
前記被覆材を切断する刃と、
前記芯材又は前記被覆材を支持する凸形状又は曲面形状の支持部を有する当接部材と、
前記芯材又は前記被覆材が前記当接部材に支持された状態で、前記刃が前記芯材に当接する当接位置から前記芯材が前記支持部から離脱可能な開放位置に前記刃を移動させる刃位置調節部材と、
前記当接部材及び前記刃位置調節部材を位置決めする基部材と、
を備えたものである。
【0008】
この被覆切断具は、凸形状又は曲面形状の支持部で芯材の位置を位置決めするため、凸形状又は曲面形状により芯材と支持部との接触面が小さくなり、一直線状でない芯材であっても、芯材の形状に即して芯材の位置を位置決めすることが可能となる。このとき、刃の位置を芯材又は被覆材が当接部材に支持された際に刃が芯材に当接する当接位置と前記芯材が前記支持部から離脱可能な開放位置とに位置決めすることができるため、芯材の上端及び下端が天井や床等に固定されたままの状態であっても、被覆切断具を芯材に適用し、芯材を被覆する被覆材を切断することが可能となる。言い換えると、予め芯材の上端又は可鍛を切断して開放状態にすることなく、被覆材を切断することができるため、より容易に被覆材を切断することが可能となる。
【0009】
本発明の被覆切断具において、前記当接部材は、前記芯材の移動方向に回転してもよい。こうすれば、被覆材切断の際に被覆切断具と芯材との相対位置を長柄方向に変化させると、芯材の位置変化に伴って当接部材が回転することになり、芯材と当接部材との間の摩擦力が低減する。こうすることにより、被覆材切断時の労力を低減させることができる。言い換えると、より容易に芯材に被覆された被覆材を切断することが可能となる。
【0010】
本発明の被覆材切断具は、頂面に前記刃を有し、該頂面が前記被覆材の一部と当接可能な刀身部材と、を備えていてもよい。こうすれば、当接部材と刃部と刀身部材の頂面の3カ所で被覆材又は芯材を支持することができるため、当接部材と刃部との2カ所で被覆材又は芯材を支持する場合と比較して、芯材の位置をより確実に位置決めすることが可能となる。言い換えると、より容易に芯材に被覆された被覆材を切断することが可能となる。なお、ここで「頂面」とは、刀身部材が刃部を有している面であって、刃部で被覆材を切断する際に被覆材からの距離が最も短くなる面のことを言う。
【0011】
本発明の被覆材切断具は、前記当接部材の位置を変更する当接位置調節部材と、を備えていてもよい。こうすれば、芯材を被覆切断具に導入する際には当接部材を導入予定位置から遠ざける位置に位置決めすることにより、当接部材の位置が固定されている場合と比較して、容易に芯材を被覆切断具に導入することが可能となる。また、刃で被覆材を切断する場合には、当接部材を刃と芯材とが当接する当接位置に調節することで、当接部材の位置を調節することができない場合と比較して、より容易に被覆材を切断することが可能となる。この態様を採用した被覆切断具は、前記当接節位置調節部材の前記芯材への接近を所定の位置で規制する規制部材と、を備えていてもよい。こうすれば、当接位置調節部材と芯材との距離が所定の距離以下に近づくことを未然に防ぐことができるため、規制部材を有しない場合と比較して、芯材に刃が強く衝突し破損する可能性を未然に低減することが可能となる。
【0012】
このとき、前記当接位置調節部材は、前記当接位置調節部材は、一端側に設けられた第一回動軸を中心に回動することによって前記当接部材の位置を調節し、前記刃位置調節部材は、一端側に設けられた第二回動軸を中心に回動することによって前記刃の位置を調節してもよい。こうすれば、当接位置調節部材又は刃位置調節部材を回動させるという簡単な操作で、当接部材又は刃の位置を調節することが可能となる。この態様を採用した本発明の被覆材切断具において、前記第二回動軸は、前記当接位置調節部材に設けられてもよい。こうすれば、当接位置調節部材を回動させる際に刃位置調節部材も同様に回動することになるため、当接位置調節部材及び刃位置調節部材を別々に回動する場合と比較して、より操作性を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の被覆切断具は、前記刃と前記芯材を挟んで略一直線上の位置に位置する第二刃と、を備えていてもよい。こうすれば、芯材を挟んで互いに向かい合う刃によって芯材の両側方向から被覆材を二つの切断片に切断することができるため、切断片が一つの場合と比較して、より容易に被覆材を芯材から離脱させることが可能となる。
【0014】
本発明の被覆切断具において、前記当接部材は、前記芯材の長柄方向に複数個並列して備えられていてもよい。こうすれば、複数の当接部材で芯材を支持することができるため、当接部材が一つの場合と比較して、より安定させた状態で芯材の位置を位置決めすることができる。
【0015】
本発明の被覆切断具は、前記刃によって切断された前記被覆材の切断面に当接し、前記基部材の移動方向に対して前記刃よりも後方向に位置する爪部材と、を備えていても良い。こうすれば、基部材を芯材に沿って移動させるだけで、刃部によって切断された被覆材のそれぞれの切断面が爪部材によって離間する方向に移動させられるため、爪部材が無い場合と比較して、より容易に被覆材を芯材から離脱させることが可能となる。
【0016】
本発明の被覆切断具において、前記当接部材は、該当接部材で前記芯材又は前記被覆材を支持した際に、前記芯材に対して四方方向であって、略同一の距離の位置に4つ備えられていてもよい。こうすれば、四方向から均等に芯材を支持することができるため、当接部材が一つの場合と比較して、芯材の位置をより確実に位置決めすることが可能となる。言い換えると、より容易に芯材に被覆された被覆材を切断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における被覆切断具20の構成の概略を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態における被覆切断具20の構成の概略を示す断面図である。
【図3】第1の実施の形態における被覆切断具20の使用様態を説明するための説明図である。
【図4】第2の実施の形態における被覆切断具120の構成の概略を示す側面図である。
【図5】第2の実施の形態における被覆切断具120の誘導部の動きを説明するための説明図である。
【図6】第2の実施の形態における被覆切断具120の刃の動きの説明をするための説明図である。
【図7】第1の実施の形態における被覆切断具20の他の実施例の構成の概略を示す断面図である。
【図8】第1の実施の形態における被覆切断具20の他の実施例の構成の概略を示す断面図である。
【図9】第1の実施の形態における被覆切断具20の他の実施例の構成の概略を示す断面図である。
【図10】第1の実施の形態における被覆切断具20の他の実施例の構成の概略を示す斜視図である。
【図11】第1の実施の形態における被覆切断具20の他の実施例の構成の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、上記簡単に説明した図面に基づいて、本発明を実施するための形態を説明するにあたり、本実施の形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施の形態の被覆切断具20が本発明の被覆切断具に相当し、芯材10が芯材に相当し、被覆材12が被覆材に相当し、背面部32及び側面部36が壁面に相当し、基部材30が基部材に相当し、刃位置調節棒50が刃位置調節部材に相当し、刃62が刃に相当し、刃ユニット60が刀身部材に相当し、誘導部40の円周表面が支持部に相当し、誘導部40が当接部材に相当し、第一側面部80及び第二側面部90が当接位置調節部材に相当し、規制部材84が規制部材に相当し、側面連接軸100が第一回動軸に相当し、連接軸34が第二回動軸に相当し、第二刃162が第二刃に相当し、爪部材70が爪部材に相当する。なお、被覆切断具20の使用方法を説明することにより本発明の被覆切断具の使用方法の一例も明らかにしている。
【0019】
次に、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施の形態である被覆切断具20の構成を詳しく説明する。ここで、図1は、本発明の被覆切断具の一例である被覆切断具20の構成の概略を示す斜視図であり、図2は、被覆切断具20の構成の概略を示す断面図であり、図1において、芯材12に直交する面であって、被覆材12と誘導部40とが当接する点を含む面の断面図である。
【0020】
第1の実施の形態における被覆切断具20は、被覆材12で被覆された芯材10に沿って移動する基部材30と、基部材30に一端側が回動可能に固定された刃位置調節棒50と、刃位置調節棒50に固定された刃ユニット60と、を備えている。
【0021】
基部材30は、図1に示すように、金属製の部材であり、背面部32と側面部36とが略直角に組み合わされた略L字形状の部材である。背面部32には、後述する刃位置調節棒50が連接軸34によって回動可能に取り付けられている。また、側面部36は貫通孔38を有し、この貫通孔38の側面には、回転軸39によって略円板形状の誘導部40が回転可能に取り付けられている(図2参照)。
【0022】
刃位置調整棒50は、図1に示すように、金属製の部材であり、一端側が連接軸34によって背面部32に回転可能に取り付けられている。連接軸34よりも刃位置調節棒50の中心側に近い位置には、ビス52により、刃ユニット60が固定されている。このため、連接軸34によって背面部32に取り付けられている側と反対側を操作することにより、刃ユニット60の位置を動かすことができる。
【0023】
刃ユニット60は、図1に示すように、略直方体形状の金属製の部材であり、一端側がビス52により刃位置調節棒50に固定され、他端側には刃62が刃先の方向が誘導部40の方向を向くように固定されている。この刃62は、進行方向に刃面を有する両刃の刃である。なお、ここで進行方向とは芯材10の表面に被覆された被覆材12を切断する際に被覆切断具20を移動させる方向を意味し、図1では、紙面上側の方向を意味する。
【0024】
この被覆切断具20を使用する際には、図2に示すように、被覆材12の表面が背面部32、誘導部40及び刃62の刃先とそれぞれ当接する位置に芯材10を配置する。このとき、図2に示すように、誘導部40と被覆材12との接点と刃62の刃先とは、略一直線上に位置することになる。このため、芯材10の形状が一直線状(棒状)でない場合であっても、芯材10を支持することができる。なお、刃62の刃面は進行方向側を向いているため、進行方向側に被覆切断具20を移動させた際には被覆材12を切断するが、進行方向と逆方向に被覆切断具20を移動させた際には、被覆材12は切断されない。
【0025】
また、この被覆切断具20は、背面部32の対面側が開放されているため、芯材10の上端及び下端が天井や床等に固定されている場合であっても、芯材10が固定されたままの状態で、芯材10の側面側から芯材10に当接することができるため、被覆材12を切断するに当たり、前もって芯材10を天井や床等から取り外す必要がない。
【0026】
次に、こうして構成された本実施の形態の被覆切断具20を用いて被覆材12を切断する方法について、図3を用いて詳しく説明する。ここで図3は、被覆切断具20の使用様態を説明するための説明図である。
【0027】
まず、連接軸34を中心として側面部36から遠ざかる方向に刃位置調節棒50を回動させ、開放位置に刃62を移動させる(図3(A)参照)。次に、被覆材12で被覆された芯材10の側面方向より被覆切断具20を芯材10に接近させ、背面部32及び誘導部40の両方に当接する位置に位置決めする。なお、図3(A)中において、芯材10の表面全体が被覆材12で被覆されているものを一例として説明しているが、一部のみが被覆されていても、全部が被覆されていても、いずれの場合であっても同様に操作することで、被覆材12を切断することができる。
【0028】
続いて、連接軸34を中心として側面部36に近づく方向に刃位置調節棒50を回動させ、切断位置に刃62を移動させる(図3(B)参照)。このとき、図3(B)に示すように、刃62の先端は芯材10の表面に当接し、被覆材12の表面には刃ユニット60の頂面が当接することになる。こうすることにより、被覆材12は、刃ユニット60の頂面、背面部32及び誘導部40の3点で位置決めされ、被覆材12を切断する際に、適した位置に安定性高く位置決めすることができる。
【0029】
この状態で基部材30を進行方向に移動させると、刃62の先端が芯材10の表面に沿って移動することになり、刃62によって被覆材12が切断される。このとき、本体部30を進行方向に移動させると、本体部30の移動に伴って刃62は芯材10から遠ざかる方向に力がかかることになる。刃62は、刃位置調節棒50によって芯材10に近づく方向に押圧されているため、押圧力を調節することにより、本体部30を進行方向に移動させた際も、刃62の先端位置を容易に芯材10の表面に沿った位置に位置決めすることができる。言い換えると、容易に被覆材12を切断することができる。
【0030】
このようにして所望の位置まで基部材30を移動させ、被覆材12を切断する被覆材12を切断した後には、連接軸34を中心として基部材30から遠ざかる方向に刃位置調節棒50を回転させ、切断位置(図3(B)参照)から開放位置(図3(A)参照)に刃位置調節棒50を移動させ、基部材30を芯材10の側面方向に遠ざけることで、被覆切断具20を芯材10から離脱させることができる。
【0031】
以上詳述した第一の形態の被覆切断具20によれば、被覆切断具20は、芯材10の側面方向から芯材10に背面部32及び誘導部40を当接し、刃位置調節棒50によって刃62の先端を芯材10の表面に当接する。この状態で、進行方向に基部材30を移動させると、芯材10の表面に沿って刃62が移動することになるため、芯材10の両端が壁や床、天井等に固定されて開放状態でない場合であっても、芯材10を予め取り外すことなく、芯材10の表面に被覆された被覆材12を簡単に切断することができる。
【0032】
このとき、芯材10は、円板状の誘導部40の円周面及び刃62の先端部で両側から保持されることになるため、芯材10が一直線状でない場合であっても、芯材10を切断位置に位置決めすることができる。更に、刃62の位置は、刃位置調節棒50によって回動可能に位置決めされているため、芯材10の曲面に沿って刃先の位置が変化し、例えば、芯材10が銅製のU字管等の曲がった状態である場合でも、被覆材12を容易に切断することができる。
【0033】
また、誘導部40は略円柱状の部材であり、回転軸39によって移動方向に回転可能に取り付けられているため、基部材30を進行方向に移動させると、芯材10の移動に伴って誘導部40が回転することができる。したがって、誘導部40が回転しない場合と比較して、誘導部40と被覆材12との摩擦力を低減することができるため、芯材10を移動させる際の労力を低減させることができる。
【0034】
更に、刃ユニット60は、頂面に刃62を有し、この頂面が被覆材12の一部と当接しているため、被覆材12は、刃ユニット60の頂面、背面部32及び誘導部40の3点で支持されることになる。したがって、背面部32及び誘導部40の2点で支持される場合と比較して、被覆切断具20を移動させる際の安定性が向上し、より容易に被覆材12を切断することができる。
【0035】
次に、図4を用いて、本発明の第2の実施の形態である被覆切断具120の構成を詳しく説明する。ここで、図4は、被覆切断具120の構成の概略を示す側面図である。また、第1の実施の形態である被覆切断具20と同様の部材については、同一の符番を付し、説明を省略する。第2の実施の形態における被覆切断具120は、図4の示すように、第一側面部80及び第二側面部90が側面連接軸100によって回動可能に連接され、第一側面部80と第二側面部90との間に芯材10を支持可能な空間を備えている。この被覆切断具120は、芯材10を支持した状態で芯材10の長手方向に移動させることにより、芯材10に被覆された被覆材12を切断する。
【0036】
第一側面部80は、図4に示すように、金属製の部材であり、刃62を有し第一側面部80を貫通する刃ユニット60と、刃ユニット60の位置を調節する刃位置調節棒50と、芯材10又は被覆材12を支持する二対の誘導部40(図5参照)と、を備えている。誘導部40と刃62とは同一方向に設けられているため、誘導部40で芯材10又は被覆材12を支持しつつ、刃62で被覆材12を切断することができる。刃位置調節棒50は一端側に設けられた連接軸34により第一側面部80に回動可能に取り付けられている。また、刃ユニット60は一端側に刃62を備えており、他端側は刃位置調節バネ86と連接されており、刃位置調節バネ86は刃ユニット60を刃位置調節棒50の方向に付勢している。このため、刃位置調節棒50を回動させることにより、刃62の位置を移動させることができる。
【0037】
第二側面部90は、第一側面部80における刃ユニット60を刃ユニット160に変更した以外は、第一側面部80と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
次に、この被覆切断具120を用いて被覆材12を切断する方法について図5及び図6を用いて詳しく説明する。ここで、図5は、第2の実施の形態における被覆切断具120の誘導部40の動きを説明するための説明図であり、図5(A)は、被覆切断具120に芯材10が支持されていない状態(開放位置)を示し、図5(B)は、被覆切断具120に芯材10が支持された状態を示す。また、図6は、第2の実施の形態における被覆切断具120の刃の動きの説明をするための説明図であり、図6(A)は、刃62及び第二刃162が被覆材12と当接していない状態を示し、図6(B)は、刃62及び第二刃162の先端が芯材10と当接している状態(切断位置)を示す。
【0039】
この被覆材切断具120を用いて被覆材12を切断する際には、図5に示すように、第一側面部80と第二側面部90とを側面連接軸100を回動軸として、互いに遠ざかる方向に回動させる。第一側面部80及び第二側面部90を回動させると、第一側面部80及び第二側面部90の回動に伴って、それぞれに設けられた二対の誘導部40及び規制部材84が遠ざかり、刃ユニット60と刃ユニット160も遠ざかる。こうすることにより生じた空間により、芯材10が第一側面部80と第二側面部90との間の空間に導入可能な状態(図5(A)参照)となる。
【0040】
芯材10を第一側面部80と第二側面部90との間の空間に位置決めした後、第一側面部80と第二側面部90とを側面連接軸100を回動軸として互いに近づく方向に回動させる。このとき、第一側面部80及び第二側面部90には、互いが略平行となる位置で互いに当接する規制部材84を有しているため、互いに近づく方向に回動させる際に、略平行状態よりも近づくことを未然に防ぐことができる。言い換えると、第一側面部80及び第二側面部90の過度な回動により過度な力がかかり、芯材10や刃62、第二刃162等が破損することを未然に防止することができる。
【0041】
このとき、第一側面部80及び第二側面部90の回動に伴って、二組の誘導部40が移動し、芯材10の表面を当接して被覆材12を切断するための切断位置に芯材10の位置を位置決めする。こうすることにより、第一側面部80及び第二側面部90を回動させるという簡単な操作で、芯材10を切断位置に容易に位置決めすることができる。こうして芯材10の位置を切断位置に位置決めした後に、刃62及び第二刃162をそれぞれ芯材10の表面に当接させ、被覆材12を切断する。
【0042】
次に、刃62を用いて被覆材12を切断する際の操作について、図6を用いて詳しく説明する。図6(A)に示すように、第一側面部80及び第二側面部90を略平行な位置まで回動させた状態では、刃62と被覆材12とは当接しておらず、刃62によって被覆材12を破損してしまう可能性はない。被覆材12を切断する際には、刃位置調節棒50を連接軸34を回動軸として、芯材10に近づく方向に回動させる。このとき、刃位置調節棒50の回動に伴って、刃位置調節バネ86を介して刃ユニット60を押圧することになるため、刃62は、芯材10の方向に移動することになる。
【0043】
刃62の先端が芯材10に当接する位置まで移動すると、芯材10は被覆材12と比較して硬い材質でできており、例えば、鉄や銅などの金属製である場合には、刃62の刃先が芯材10によって係止されることになる。この状態で、基部材30を進行方向に移動させると、刃62も芯材10の表面に沿って移動することになり、芯材10の表面を被覆している被覆材12が切断される。こうすることにより、刃位置調節棒50を回動し、本体部30を進行方向に移動させるという簡単な操作により、被覆材12を切断することができる。
【0044】
ここで、第二刃162が被覆材12を切断する際の操作については、刃62を第二刃162に変更した以外は、刃62で被覆材12を切断する際の操作と同様であるため、説明を省略する。このとき、刃62と第二刃162とは刃先が芯材10を挟んで略一直線上の位置に配置されているため(図4及び図6参照)、この被覆切断具120で被覆材12を切断した場合には、被覆材12が二つに両断されることになる。このため、第二刃162を備えない場合と比較して、切断した被覆材12を芯材10から離脱させやすい。
【0045】
次に、被覆材12を切断した後に、芯材10を被覆切断具120から離脱させる際の操作について、説明する。被覆材12を切断した後には、図6(B)に示すように、刃62及び第二刃162がそれぞれ芯材10と当接している。そこで、まず刃位置調節棒50を連接軸34を回動軸として芯材10から遠ざかる方向に回動させ、図6(A)に示すように、芯材10を刃62及び第二刃162から開放させた状態とする。
【0046】
図6(A)の状態では、刃62及び第二刃162から芯材10は開放された状態であるが、図5(B)に示すように、誘導部40によって芯材10は支持されている。そこで、第一側面部80と第二側面部90とを側面連接軸100を回動軸として、互いに遠ざかる方向に回動させる。このとき、第一側面部80及び第二側面部90の回動に伴って、誘導部40も回動することになり、芯材10が誘導部40から離脱し、自由に移動可能な状態となる。こうすることにより、刃位置調節棒50と第一側面部80及び第二側面部90とを回動させるという簡単な操作により、芯材10を離脱させることができる。
【0047】
以上詳述した第二の実施の形態の被覆切断具120によれば、被覆切断具120は、芯材10を被覆切断具120の内部の空間に導入した際、芯材10に向かって四方向から当接する誘導部材40によって芯材10の位置を位置決めし、刃位置調節棒50によって刃62及び第二刃162の刃先の先端が芯材10の表面に当接する。この状態で、基部材30を進行方向に移動させる、芯材10の表面に沿って刃62及び第二刃162が移動することになるため、芯材10の両端が壁や床、天井等に固定されている場合であっても、芯材10を予め取り外すことなく、芯材10の表面に被覆された被覆材12を簡単に切断することができる。
【0048】
このとき、芯材10は、円板状の誘導部40のそれぞれの円周面、刃62及び第二刃162の先端部でそれぞれ支持されることになるため、芯材10が一直線状でない芯材である場合であっても、芯材10を切断位置に位置決めすることができる。更に、刃60及び第二刃162の位置は刃位置調節棒50によって回動可能に位置決めされているため、芯材10の曲面に沿って刃先の位置を変化し、例えば、芯材10が銅製のU字管等の曲がった状態である場合でも、被覆材12を容易に切断することができる。
【0049】
また、被覆切断具120は、第一側面部80及び第二側面部90を側面連接軸100を回動軸として回動させることにより、誘導部40の位置を調節することができるため、誘導部40の位置が固定されている場合と比較して、芯材10を被覆切断具120に導入しやすい。
【0050】
更に、規制部材84を備えていることにより、第一側面部80と第二側面部90とは、略平行位置よりも近接することを防ぐことができるため、芯材10や刃62、第二刃162等が破損する可能性を未然に低減することができる。
【0051】
更にまた、第一側面部80及び第二側面部90は、それぞれ側面連接軸100を回動軸として回動することにより誘導部40の位置を調節し、刃位置調節棒50は、連接軸34を中心として回動することにより刃62及び第二刃162の位置を調節するため、回動操作という簡単な操作によって当接部材40又は刃62及び第二刃162の位置を調節することができる。
【0052】
そしてまた、連接軸34は、第一側面部80及び第二側面部90と連接して設けられているため、第一側面部80及び第二側面部90の回動に伴って刃位置調節棒50も回動することになる。こうすることにより、第一側面部80及び第二側面部90で芯材10を位置決めした後に、刃位置調節棒50を操作することにより刃62を芯材10の表面位置に移動させることができるため、より容易に刃62の位置を調節することができる。また、第一側面部80及び第二側面部90の回動に伴って刃位置調節棒50も回動するため、別々に回動する場合と比較して、より労力を低減することができる。
【0053】
そして更に、芯材10を支持する際に、芯材10の四方方向であって、略同一の距離に誘導部40が設けられているため、四方向から均等に芯材10を支持することができる。こうすることにより、芯材10の位置をより確実に切断位置に位置決めすることができるため、より容易に芯材10に被覆された被覆材12を切断することができる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0055】
例えば、上述した第1の実施の形態では、被覆材12の表面を背面部32、誘導部40及び刃ユニット60の頂面の3点で支持するものとしたが、図7に示すように、側面部36の形状を略「く」の字形状とし、誘導部40を二つ設けても良い。この場合には、被覆材12の表面は、二つの誘導部40及び刃ユニット60の頂面の3点で支持される。こうすることにより、背面部32で支持する場合と比較して、より芯材10を支持する際の安定性が向上するため、被覆切断具20の移動をより容易にすることができる。言い換えると、より労力を低減して被覆材12を切断することができる。
【0056】
上述した第1の実施の形態では、刃ユニット60は一つであるものとしたが、図8に示すように、刃ユニット60と同様の刃ユニットである第二刃ユニット160を有していても良い。こうすれば、刃62と第二第二刃162によって被覆材12は二つの切断片に切断されるため、刃が一つの場合と比較して、芯材10の表面から被覆材12を離脱させる労力を低減させることができる。
【0057】
上述した第1の実施の形態では、被覆材12の表面を背面部32、誘導部40及び刃ユニット60の頂面の3点で支持するものとしたが、図9に示すように、二つの誘導部40、刃ユニット60の頂面及び第二刃ユニット160の頂面の4点で支持するものとしてもよい。こうすれば、3点で支持する場合と比較して、より確実に芯材10の位置を位置決めすることができる。更に、刃62及び第二第二刃162によって二つの切断片に切断されるため、刃が一つの場合と比較して、芯材10の表面から被覆材12を離脱させる労力を低減することができる
【0058】
このとき、図10に示すように、刃ユニット60における刃先の位置と刃ユニット160における刃先の位置とは、芯材10の直径を含む略一直線上の位置に位置しても良い。こうすれば、芯材10が円柱形状の場合には被覆材12が2分されるため、より容易に被覆材12を芯材10から離脱させることができる。
【0059】
上述した第1の実施の形態では、側面部36に一つの誘導部40を設けるものとしたが、図11に示すように、誘導部40は複数(例えば、二つ)設けられるものとしてもよい。こうすれば、複数箇所で被覆材12を支持することができるため、より適切な位置に芯材10を位置決めすることができる。
【0060】
上述した第1の実施の形態では、刃位置調節棒50に刃ユニット60を固定するものとしたが、図12に示すように、刃ユニット60に加えて、被覆切断具20の移動方向に対して刃ユニット60よりも後方位置であって、刃62で切断された被覆材12の切断面に当接可能な位置に爪部材70を備えていてもよい。こうすれば、被覆材12が刃62で切断された後、被覆切断具20の移動に伴って被覆材12の切断面が爪部材70に当接し、爪部材70によって被覆材12の切断面が互いに遠ざけられることになる。こうすることにより、爪部材70が無い場合と比較して、より容易に被覆材12を心材10から離脱させることが可能となる。
【0061】
上述した実施の形態では、刃位置調節棒50が切断位置に位置決めされる際、刃62の先端は芯材10の表面付近に位置し、被覆材12の表面には刃ユニット60の頂面が当接するものとしたが、被覆材12と刃ユニット60の頂面とは、当接しなくても良い。この場合には、刃62の先端が芯材10の表面に当接することになるため、被覆材12の厚さに併せて刃先と刃ユニット60の頂面との距離を調節することなく、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0062】
上述した実施の形態では、誘導部40が略円板形状であって、移動方向に回転可能であるものとしたが、略球形状であって、自由に回転可能なもの(例えば、ボールキャスター等)であってもよい。こうすれば、芯材10の移動の自由度を向上させつつ、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0063】
上述した実施の形態では、誘導部40が略円板形状であるものとしたが、周囲の円周部は、外縁部から中心方向に向かって中心方向に傾斜を有していても良い。こうすれば、芯材10及び被覆材12の断面が略円形状の場合には、円周部と被覆材12との設置面積が増加するため、より確実に芯材10を位置決めすることができる。
【0064】
上述した実施の形態では、刃62は両刃であるものとしたが、片刃であってもよい。この場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上述した実施の形態で示すように、被覆除去分野、特に銅管や鉄管等の表面を被覆した樹脂類の除去装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…芯材、12…被覆材、20…被覆切断具、30…基部材、32…背面部、34…連接軸、36…側面部、38…貫通孔、39…回転軸、40…誘導部、50…刃位置調節棒、52…ビス、60…刃ユニット、62…刃、70…爪部材、80…第一側面部、84…規制部材、86…刃位置調節バネ、90…第二側面部、100…側面連接軸、120…被覆切断具、160…第二刃ユニット、162…第二刃。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長柄状の芯材の少なくとも一部を被覆する被覆材を切断する被覆切断具であって、
前記被覆材を切断する刃と、
前記芯材又は前記被覆材を支持する凸形状又は曲面形状の支持部を有する当接部材と、
前記芯材又は前記被覆材が前記当接部材に支持された状態で、前記刃が前記芯材に当接する当接位置から前記芯材が前記支持部から離脱可能な開放位置に前記刃を移動させる刃位置調節部材と、
前記当接部材及び前記刃位置調節部材を位置決めする基部材と、
を備えた、
被覆切断具。
【請求項2】
前記当接部材は、前記芯材の移動方向に回転する、
請求項1に記載の被覆切断具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の被覆切断具であって、
頂面に前記刃を有し、該頂面が前記被覆材の一部と当接可能な刀身部材と、
を備えた、
被覆切断具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆切断具であって、
前記当接部材の位置を変更する当接位置調節部材と、
を備えた、
被覆切断具。
【請求項5】
請求項4に記載の被覆切断具であって、
前記当接節位置調節部材の前記芯材への接近を所定の位置で規制する規制部材と、
を備えた、
被覆切断具。
【請求項6】
前記当接位置調節部材は、一端側に設けられた第一回動軸を中心に回動することによって前記当接部材の位置を調節し、
前記刃位置調節部材は、一端側に設けられた第二回動軸を中心に回動することによって前記刃の位置を調節する、
請求項4又は5に記載の被覆切断具。
【請求項7】
前記第二回動軸は、前記当接位置調節部材に設けられている、
請求項6に記載の被覆切断具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆切断具であって、
前記刃と前記芯材を挟んで略一直線上の位置に位置する第二刃と、
を備える、
被覆切断具。
【請求項9】
前記当接部材は、前記芯材の長柄方向に複数個並列して備えられている、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の被覆切断具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の被覆切断具において、
前記刃によって切断された前記被覆材の切断面に当接し、前記基部材の移動方向に対して前記刃よりも後方向に位置する爪部材と、
を備えた、
被覆切断具。
【請求項11】
前記当接部材は、該当接部材で前記芯材又は前記被覆材を支持した際に、前記芯材に対して四方方向であって、略同一の距離の位置に4つ備えられている、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の被覆切断具。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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