説明

被覆導電性粒子、導電性材料、異方性導電接着剤および異方性導電接合構造

金属被覆粒子とこの金属層と強く結合した熱可塑性樹脂層からなり、溶剤による熱可塑性樹脂層の溶出が無く、加熱時にも樹脂層の溶け出しの無い被覆導電性粒子を提供する。被覆導電性粒子5は、基材微粒子1、基材微粒子1に施された金属被覆層2、および金属被覆層2上に設けられた熱可塑性重合体からなる樹脂層3を備えている。熱可塑性重合体が、金属被覆層2に導入された有機化合物と化学的に結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、被覆導電性粒子、導電性材料および異方性導電膜に関するものである。
【背景技術】
特開昭62−115679号公報、特開昭62−188184号公報には、異方性導電接続構造において架橋重合体樹脂粒子に金属被覆を施した導電性粒子が開示されている。
特開平9−115335号公報には架橋ポリスチレン粒子にニッケル/金メッキを施した導電性粒子をエポキシ樹脂に分散した異方性導電接着フィルムが開示されている。
特開昭62−176139号公報には導電性粒子上をコアセルベーション法により熱可塑性樹脂で被覆した導電性粒子が開示されている
特開平7−105716号公報には導電性粒子上にハイブリダイゼーションにより絶縁性樹脂層を形成した被覆導電性粒子が開示されている。
特開昭63−18096号公報には樹脂粒子に電気メッキによって金属被覆を行う手法が開示されている。
特開2001−252553号公報には分散媒に可溶な樹脂を導電性粒子に被覆した導電性粒子が開示されている。
特開平1−242782号公報には無電解メッキ法により樹脂粒子に金属被覆を行う手法が開示されている。
【発明の開示】
特開昭62−176139号公報に記載される異方導電接続材料に用いられる粒子は、絶縁被覆層が熱可塑性樹脂であるため、高温多湿下において樹脂が流動し接続端子間に入り込み接続不良を起こしたり、異方導電接続材料の成型時に接着樹脂への溶出が起こり、接着不良を起こす可能性や、粒子から絶縁樹脂が剥離し、導電性粒子同士の接触が発生する。
特開平7−105716号公報に開示される粒子においても絶縁被覆樹脂層が多い場合には上記と同様の問題を含み、根本的に絶縁樹脂が導電性粒子から剥離する問題を含んでいる。
特開2001−252553号公報に記載された発明は、導電性粒子を樹脂で被覆することにより、導電性粒子同士の重なりを防ぐため、絶縁性樹脂を溶媒に溶解させ導電性粒子に被覆を行っていた。しかしながら導電接続部材において接着樹脂に混練する際に、このように非架橋な樹脂は接着性樹脂に溶解、混入し、接着樹脂の硬化を阻害し、導電接続の信頼性を落としていた。
ヒートサイクルによる接続信頼性試験において、接続端子間の間隙の変化による導電接続不良を防ぐため一般に復元性をもった樹脂粒子に金属被覆を施した導電性粒子を使用し、接着樹脂においては硬化収縮性の接着剤を使用している。しかし、このような組み合わせにおいても樹脂粒子には圧縮履歴が存在するため復元量には限界があり、長期的な信頼性試験においては間隙の変化に導電性粒子が追従しきれず接続不良となるケースがあった。
本発明の被覆導電性粒子は、金属被覆粒子とこの金属層と強く結合した熱可塑性樹脂層からなり、溶剤による熱可塑性樹脂層の溶出が無く、加熱時にも樹脂層の溶け出しの無い被覆導電性粒子を提供するものである。
本発明は、基材微粒子、基材微粒子に施された金属被覆層、および金属被覆層上に設けられた熱可塑性重合体からなる樹脂層を備えている被覆導電性粒子であって、熱可塑性重合体が、金属被覆層に導入された有機化合物と化学的に結合していることを特徴とする。
また、本発明は、前記被覆導電性粒子と、この導電性粒子を結着する結着剤とを備えていることを特徴とする、導電性材料に係るものであり、また、前記導電性材料からなることを特徴とする異方性導電膜に係るものである。
本発明の被覆導電性粒子の熱可塑性樹脂層は、粒子の金属被覆層へと強固に結合しており、溶剤等へと溶出しにくいものである。
この結果、本発明の被覆導電性粒子の熱可塑性樹脂層は、加熱により軟化し、接続端子と良好な付着性を示し、接続端子間の間隙の変化にも追従しやすくなる。
また、導電性フィルムや導電性ペーストの作成において、熱可塑性樹脂層は混練する樹脂との親和性が高く、混練時に粒子が単粒子化しやすく、多重粒子による接続不良を防ぐことができる。
有機化合物は金属被覆層に強固に保持されているため、この有機化合物と結合している熱可塑性樹脂層は接着樹脂への混練時または加熱時にも剥離や溶出がなく、接着樹脂の物性を損なうことが無い。また、接続構造として使用時にも熱可塑性樹脂が端子間に溶け込むことが無いため、接続不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、基材微粒子1および金属被覆層2を示す模式図である。
図2は、金属被覆層2の有機化合物に対して、ビニル基または開始剤基を有する化合物B−Cを結合させた後の状態を示す模式図である。
図3は、金属被覆層表面にモノマーMがグラフト重合した状態を示す模式図である。
図4は、金属被覆層表面に、熱可塑性重合体Pが結合した状態を示す模式図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る被覆導電性粒子5を示す模式図である。
図6は、比較例の異方性導電構造11を模式的に示す断面図である。
図7は、本発明例の異方性導電構造11Aを模式的に示す断面図である。
図8は、図7の構造11Aの要部拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
(基材微粒子)
基材微粒子の材質は特に限定されないが、有機系重合体、有機・無機ハイブリット材料が好ましい。有機系重合体としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド等の線状重合体;ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド、両末端アクリル変性ポリブタジエンオリゴマー等を単独又は他の重合性モノマーと重合させて得られる網状重合体;フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
有機系重合体の重合法は限定されず、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法、乳化重合法であってよい。
有機・無機ハイブリット材料としては、側鎖にシリル基を有する(メタ)アクリレートとスチレン、メチルメタクリレート等のビニルモノマーとの共重合体を作製した後、上記シリル基を縮合反応させたもの;有機重合体共存下でテトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン等をゾル−ゲル反応させたもの;テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン等をゾル−ゲル反応させた後、低温で焼成を行うことにより有機成分を残留させたものが挙げられる。
基材微粒子の形状は限定されず、真球形状、回転楕円体、多面体、針状、ファイバー状、ウイスカー、柱状、筒状、不定形であってよいが、真球状とすることが望ましい。
基材微粒子の平均粒子径は、1〜1000μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。なお、基材微粒子の平均粒子径は、基材微粒子が球状の場合は直径であり、回転楕円体状である場合は長径である。また、前記平均粒子径は、任意の基材微粒子300個を電子顕微鏡で観察・測定することにより得られる値である。
基材微粒子の粒子径分布の変動係数(CV値)は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることが一層好ましい。CV値が10%を超えると、基材微粒子の粒子径が不揃いとなるため、この基材微粒子を用いて製造した導電性粒子によって電気接続を図る際に、接続に関与しない導電性微粒子が存在し、接続抵抗が上がるなどの接続不良となる場合がある。
上記CV値とは、下記の式(1);
CV値(%)=(σ/Dn)×100・・・・(1)
(式中、σは、粒子径の標準偏差を表し、Dnは、数平均粒子径を表す)で表される値である。上記標準偏差及び上記数平均粒子径は、任意の基材微粒子300個を電子顕微鏡で観察・測定することにより得られる値である。
基材微粒子には、「相互侵入高分子網目構造を形成し得る化合物」を含浸させることが可能である。これは、粒子内部において加熱によって相互侵入高分子網目構造を生成することができるような化合物であれば、限定されない。好適な実施形態においては、本化合物は、相互に架橋反応し得る官能基を複数有する。このように、本化合物が複数の官能基を有し、各官能基において架橋反応が進行することによって、相互侵入高分子網目構造が生成する。このような官能基としては、以下を例示できる。これらの官能基は、1つの化合物に一種類または二種類以上包含されている。
エポキシ基、加水分解性シリル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イミノ基
エポキシ基を有する前記化合物としては、以下を例示できる。
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、3−グリシジドキシプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
加水分解性シリル基を有する化合物としては、以下を例示できる。
テトラエトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルトリメトキシシラン、6−トリメトキシシリルヘキサメチレントリメトキシシラン、p−ジメトキシシリルエチルベンゼン、テレフタル酸ジ−3−トリメトキシシリルプロピル、アジピン酸ジ−3−トリメトキシシリルプロピル、イソシアヌル酸トリ−3−メチルジメトキシシリルプロピル
また、相互侵入高分子網目構造を形成する結合としては、エーテル結合、シロキサン結合、エーテル結合とシロキサン結合との組み合わせを例示できる。
(金属被覆層)
金属被覆層の形成手段は特に限定されない。しかし、金属結晶が粒状で成長するような方法が好ましく、無電解メッキ法、電気メッキ法が特に好ましい。
金属被覆層の厚さは、導電性粒子の抵抗値を低くするという観点からは、0.025μm以上が好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。また、製造コストの面からは、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
金属被覆層は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
金属被覆層を構成する金属としては、周期律表におけるIB族、VIII族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族等に属する金属が挙げられる。IB族としては、銅、銀、金およびこれらの合金が好ましい。VIII族としては、ニッケル、パラジウム、白金およびこれらの合金が好ましい。IIB族としては、亜鉛および亜鉛合金が好ましい。IIIB族としては、ガリウム、アルミニウム、インジウムおよびこれらの合金が好ましい。IVB族としては、錫、鉛およびこれらの合金が好ましい。VB族としては、ビスマスおよびビスマス合金が好ましい。
以下に、金属被覆層の一例であるニッケル−金メッキについて説明する。ニッケル−金メッキでは、芯材粒子の表面に、無電解ニッケルメッキを行った後、その表面部分に無電解金メッキにより金メッキ層を形成する。上記無電解ニッケルメッキは触媒付与工程とニッケル還元メッキ工程とからなる。
上記触媒付与工程においては、芯材粒子の表面に、メッキの核となる触媒を析出又は吸着させるが、この際、白金族の金属化合物を用いることが好ましい。具体的には塩化第一錫の塩酸溶液に芯材粒子を浸漬した後、更に、塩化パラジウムの塩酸溶液に浸漬加熱し、水洗する。このようにして得た粒子では、パラジウムが粒径50nm以下の微粒子として析出している。
また、塩化錫と塩化パラジウムとの混合溶液に芯材粒子を浸漬し、その後、塩酸又は硫酸水溶液を用いて錫を溶出、除去してもよい。この場合も上記と同様、粒子表面にパラジウム微粒子が析出している。
更に、塩化パラジウムと、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン等の水溶性モノマーと、アスコルビン酸との混合水溶液にグラフト重合層を有する基材微粒子を浸漬してもよい(特開昭61−166977号公報参照)。この場合も上記と同様、粒子表面にパラジウム微粒子が析出している。
次に、上記の方法により触媒の付与された芯材粒子を用いて、ニッケル還元メッキを行う。上記ニッケル還元メッキを行う方法としては、公知の方法(「最新無電解めっき技術」発行;総合技術センター、1986年、43頁等)を用いることができ、酸性メッキ、アルカリ性メッキのいずれをも用いることができる。上記ニッケル還元メッキとして、酸性メッキを用いる場合には、塩化ニッケル又は硫酸ニッケル溶液に触媒処理された粒子を浸漬し、pH4〜6の条件下で次亜リン酸ナトリウム溶液を滴下しながらニッケルの還元を行うことにより、粒子表面にニッケルメッキ層を形成することができる。
また、アルカリ性メッキを用いる場合には、pH8〜10の条件下でホウ酸又はホウ砂溶液を滴下しながらニッケルの還元を行うことにより、粒子表面にニッケルメッキ層を形成することができる。これらのニッケル還元メッキにおけるニッケル還元反応は、芯材粒子表面に存在するパラジウムの超微粒子上で進行し、これによりニッケルメッキ層が形成される。
次に、ニッケルメッキ層の形成された粒子に、無電解メッキにより金メッキ層を形成する。上記金メッキするには、クエン酸カリウムを錯化剤として用い、加温されたメッキ液にニッケルメッキ層が形成された粒子を投入し、金メッキ層を形成することにより行う。
(金属被覆層への有機化合物の固定)
例えば図1に示すように、基材微粒子1の表面1aに金属被覆層2を設け、金属被覆層2内に、官能基Aを有する有機化合物を固定する。
この有機化合物の固定方法は特に限定されない。
官能基Aをもつ有機化合物は、金属メッキ時に添加剤として用いることにより、金属被覆層に取り込まれる。このような添加剤は限定されないが、錯化剤として用いることが特に好ましく、これによって有機化合物が金属被覆層に一層強く取り込まれ、固定化される。
金属被覆層の形成手段としては、添加剤を適用可能な無電解メッキ法の適用が望ましい。
前記錯化剤としては、ロッシェル塩、グリセロール、メソエイトリトール、アドニトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、トリエタノールアミン、クエン酸カリウムなどの水酸基を含むもの、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの水酸基とアミノ基を含むもの、グリシン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基を含むものが挙げられる。
官能基Aとしては活性水素能をもつ官能基(シラノール基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基、酸アミド基、イミノ基、メルカプト基等)が好ましく、より好ましくはアルコール性水酸基が挙げられる。
樹脂層を構成する熱可塑性重合体と、金属被覆層内に固定された有機化合物との化学結合の種類は、特に限定されない。しかし、共有結合が好ましく、また、ラジカル反応における水素引き抜きによる共有結合、カルボン酸とアミノ基、イミノ基との反応によるアミド結合、カルボン酸とアルコール性水酸基との反応によるエステル結合,イソシアネートと水酸基との反応によるウレタン結合、イソシアネートとアミノ基、イミノ基との反応による尿素結合、シランカップリング剤等によるシロキサン結合等が挙げられる。
表面樹脂層を形成するのに際して、熱可塑性重合体と、金属被覆層内の有機化合物との化学結合を生成させる方法は特に限定されないが、例えば以下の方法A、B、Cを挙げることができる。
(方法A:ビニル基を起点とするグラフト重合法)
本実施形態では、金属被覆層2に含有される官能基Aを有する有機化合物に対し、官能基Aと反応可能な官能基Bをもつビニル化合物(B−C)を反応させることにより(図1参照)、金属被覆層2表面にビニル基Cを導入する(図2参照)次いで、金属被覆層2の表面へと向かってモノマーMを供給し、ビニル基Cを起点としてモノマーMをグラフト重合させ、図3に示すように熱可塑性樹脂を生成させる。これによって、図5に示すように、熱可塑性樹脂層3を有する被覆導電性粒子5を得る。このような手法は特開平5−232480号公報、特開平7−300587号公報を利用することが出来る。
官能基Bとしては、官能基Aと反応可能な官能基を用いることができ、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基等を挙げることができる。
官能基Bを有するビニル化合物(B−C)としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのエポキシ基含有単量体、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アトロパ酸、シトラコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有単量体があげられる。
(方法B:金属被覆層表面に開始剤を導入する方法)
本実施形態では、金属被覆層2に含有される官能基Aを有する有機化合物に対し、官能基Aと反応可能な官能基Bをもつ開始剤(B−C)を反応させることにより(図1参照)、金属被覆層2表面に開始剤(B−C)を導入する(図2参照)。次いで、金属被覆層2の表面へと向かってモノマーMを供給し、開始剤を起点としてモノマーMをグラフト重合させ、図3に示すように熱可塑性樹脂を生成させる。これによって、図5に示すように、熱可塑性樹脂層3を有する被覆導電性粒子5を得る。このような手法は特開平5−232480号公報、特開平7−300587号公報を利用することが出来る。
導入方法は、上記官能基Aと反応可能な上記官能基Bを有する過酸化物、過水酸化物、アゾ化合物等の開始剤を反応せしめることによって導入可能である。
また、樹脂被覆層を形成する手段として、過酸化物系の重合開始剤を用いることにより、金属被覆層に含まれる有機化合物の水素引き抜きを起点として、共有結合による樹脂被覆層の形成が有効であることが判明した。
ラジカル反応における水素引き抜きによる共有結合を形成する場合、重合開始剤として過酸化化合物を用いることが望ましく、このような化合物としてはイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
このような過酸化物系重合開始剤を活性水素性官能基Aを有する金属被覆微粒子に反応させ、ラジカルを発生させることにより、重合性モノマーから樹脂被覆層を形成することができる。
(グラフト重合方法)
粒子表面におけるグラフト重合については、以下の文献記載の方法を例示できる。
「最新粉体の材料設計」(株式会社テクノシステム)第203頁
「グラフト重合とその応用」井出文雄著、高分子刊行会、1984
特開平9−244034号公報
また、以下の方法を例示できる。
金属被覆層に固定された二重結合等の不飽和結合をラジカル重合開始剤を用いて開裂させ、ビニルモノマーをグラフト重合させる。
セリウム塩(IV)、過ヨウ素酸塩等の酸化剤により、アルコール性水酸基等の還元性基を表面に持つ基材微粒子の表面にラジカルを発生させ、これを起点としてビニルモノマーをグラフト重合させる。
パーエステル基、メルカプト基、ジアゾ基等の官能基を起点としてグラフト重合させる。
芯材粒子の表面に存在するアミノ基、水酸基等の反応性基に高分子反応によりグラフトポリマーを結合させる。
特に好適な実施形態においては、グラフト重合体が、単量体のグラフト重合によって生成しており、単量体のグラフト重合が、粒子本体の表面に存在するビニル基または重合開始剤を起点として進行する。本出願人は、粒子表面にビニル基を導入する手法、ラジカル活性点を導入する手法を開発し、ビニル基やラジカル活性点を基点としてグラフト鎖を形成する方法を開示した(特開平5−232480号公報、特開平7−300587号公報、特開平7−301810号公報、特開平7−300586号公報)。これらの文献に記載の方法は本発明において転用可能であり、所望ならばこのグラフト重合鎖から一次、二次、三次等の側鎖を形成して樹脂層の厚みを増大させることができる。
グラフト樹脂を生成する際に用いる単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、グリシジルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アリルフタレート、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の重合性ビニル単量体を例示できる。更に、以下を例示できる。
ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイロキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイロキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の含窒素系カチオン性モノマー;アンモニウム α−スルホナート−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン、ソジウム p−スチレンスルホナート、ソジウム ビニルスルホナート、ソジウム 2−メタクリロイルエチルスルホナート、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系アニオン性ビニル単量体;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等の燐酸系アニオン性ビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ダイマー等のカルボン酸系アニオン性ビニル単量体。
更に、例えば以下のような親水性の官能基を有するビニル単量体を例示できる。2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸基含有単量体;ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート等のポリエーテル含有単量体;グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のエポキシ含有単量体。
上記した単量体の例示は、本発明を限定するものではない。単量体は二種以上混合されても良い。
(方法C:金属被覆層内の有機化合物と熱可塑性重合体との高分子反応)
この方法は、特開平5−188384号公報に記載されている方法である。
図1に示すように、金属被覆層に、官能基Aを有する有機化合物を固定化する。次いで、図4に示すように、官能基Bを有する熱可塑性重合体Pを粒子に接触させ、高分子反応させる。これによって、金属被覆層の表面に、熱可塑性重合体Pからなる樹脂層を形成する。
好適な実施形態においては、熱可塑性重合体の軟化点が80℃以上、200℃以下である。また、熱可塑性重合体が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニルエチレン樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
また、好ましくは、有機化合物が有する官能基Aが、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基及びハロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の官能基である。
熱可塑性樹脂の分子量(Mn)は、500〜100,000程度のものを用いることができるが、本発明の効果を高めるためには、そのTmが80℃以上、200℃以下であり、かつそのTg(ガラス転移温度)が40℃以上であることが好ましい。
基材微粒子と上記の熱可塑性樹脂の反応割合は、金属被覆層に固定された有機化合物の官能基と、熱可塑性樹脂中に含まれる反応性基の量及び種類によって異なるが、基本的には基材微粒子の重量に対し約2〜3倍量の上記の熱可塑性樹脂を用い、ジオキサンやトルエン等の不活性溶媒中、還流条件で24〜48時間加熱して反応させることにより得ることができる。得られた被覆導電性粒子は、該熱可塑性樹脂が可溶な溶媒中に分散させ濾別し洗浄した後、減圧乾燥等の通常の手段によって粉体として単離することができる。
樹脂層3の厚さは、外部部材への接着性の観点からは、0.002μm以上が好ましく、0.01μm以上が更に好ましい。しかし、樹脂層3が厚くなると、導電性接続時に粒子と端子間に樹脂が残りやすくなり、接続不良の原因となりやすいことから、樹脂層3の厚さは、1μm以下が好ましく、0.5μm以下が更に好ましい。
本発明による被覆導電性粒子は、優れた導電性を有していることから、樹脂などの結着材に混入することにより、優れた導電性を有する導電性材料が得られる。このような導電性材料は、フィルム状の帯電防止膜や、電子回路において電気的接合を行う部分に使用可能な異方性導電膜として好適に利用できる。
こうした導電性材料を構成する結着材(接着剤)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、スチレン・アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂を例示できる。
また、本発明の被覆導電性粒子を、絶縁性粒子と混合し、加圧成形することより、導電性材料を製造可能である。こうした絶縁性粒子としては、前述した基材微粒子の項目で列挙した粒子を例示でき、特にプラスチック粒子、更には熱可塑性プラスチック粒子が好ましい。
本発明の被覆導電性粒子を異方性導電膜に対して適用した場合について更に説明する。異方性導電構造を製造する際には、図6に示すように、所定パターンの端子13A、13Bが設けられた一対の基板12A、12Bを準備する。そして、一対の基板の間に異方性導電膜19をはさみ、加熱下に圧力を加えて圧着する。異方性導電膜19は、結着材14と、結着材14中に分散された導電性粒子15とからなる。ここで、導電性粒子15の表面が金属被覆層からなっている場合には、基板12Aと12Bとの間隔が変動すると、粒子15と端子13A、13Bとの間に隙間16が発生し、接続不良が生ずる。
これに対して、図7、図8の膜19Aに示すように、本発明の被覆導電性粒子5、5Aを使用した異方性導電構造11Aの場合には、導電性粒子5、5Aの表面が樹脂層3Aによって被覆されており、導電性粒子5、5Aが端子13A、13Bに対して接着する。これによって、基板12Aと12Bとの間隔が変動したときに、粒子5Aと端子13A、13Bとの間に隙間16が発生しにくい。
【実施例】
以下、具体的な実験結果を例示するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(金属被覆層に含まれる錯化剤の定量法)
基材微粒子への無電解メッキにおいて、メッキ前後のメッキ液の錯化剤の量を滴定により定量を行い、消費された錯化剤の量を求める。
(基材微粒子の作製)
2Lセパラブルフラスコにポリビニルピロリドン3.5%メタノール溶液400g、スチレン42g、p−トリメトキシシリルスチレン63gを充填し、窒素気流下において緩やかに攪拌しつつ60℃に加温する。アゾビスイソブチロニトリル4gを加え、12時間反応させる。反応終了後室温に冷却した後、水酸化カリウムの5%水溶液200gを追加し、2時間60℃で攪拌して加水分解及び架橋反応せしめた。得られた粒子を洗浄し、粒子を得た。
粒子20gに対して、相互侵入高分子網目形成化合物(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)10gを溶解させたトルエン溶液20gを加えてエポキシを含浸させた。次いで、該エポキシ含浸粒子を200℃で16時間加熱した後、洗浄することにより、架橋重合体粒子(図1の基材微粒子1)を得た。架橋重合体粒子の平均粒子径は5.20μm、変動係数3%であった。
(ロッシェル塩を錯化剤とした銅被覆粒子の作製)
粒子Bに、錯化剤としてロッシェル塩により無電解銅メッキを行い、平均粒径5.30μm、メッキ膜厚0.05μmの金属被覆粒子を得た。滴定の結果、単位面積当たり0.8%の錯化剤の消費が見られた。この金属被覆層2内にロッシェル塩が固定されている。
(クエン酸カリウムを錯化剤とした金被覆粒子の作製)
銅被覆粒子にクエン酸カリウムを錯化剤として使用した無電解金メッキを行い、銅−金被覆粒子を得た。平均粒径は5.40μmであり、金属被覆層の厚みは0.10μmであった。この金属被覆層2内にクエン酸カリウムが固定されている。滴定の結果、単位面積当たり1.0%の錯化剤の消費が見られた。
(表面にビニル基を導入した金属被覆粒子およびの作製)
金属被覆粒子10gに対し、メタクリロイルイソシアナートの30%トルエン溶液3g、メチルエチルケトン20gを一括に仕込み、室温で30分反応させ、表面にビニル基を導入した金属被覆粒子を得た(図2参照)。
同様の操作にて、金属被覆粒子にビニル基を導入した金属被覆粒子を得た(図2参照)。
[実施例:樹脂被覆された被覆導電性粒子の作製]
ビニル基を導入した金属被覆粒子10gに対し、メチルエチルケトン100g、重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド1g、グリシジルメタクリレート25g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10gを一括に仕込み、窒素気流下80℃で2時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄し乾燥を行った。得られた粒子をPGCにより分析を行ったところ、ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレート由来のピークが確認され、グラフトされていることが確認された。
[実施例:樹脂被覆された導電性粒子の作製]
得られた粒子10gに対し、再度メタクリロイルイソシアナート30%トルエン溶液3g、メチルエチルケトン20gを一括に仕込み、室温で30分反応させ、該グラフト重合鎖の一次側鎖ビニル基が導入された粒子を得た。該粒子10gに対し、メチルエチルケトン100g、重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド1g、グリシジルメタクリレート35g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35g、を一括に仕込み、窒素気流下80℃で3時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄、乾燥を行った。得られた粒子をPGCにより分析を行ったところ、ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート由来のピークが確認され、グラフトされていることが確認された。
[実施例 樹脂被覆された導電性粒子の作製]
ビニル基を導入した金属被覆粒子10gに対し、メチルエチルケトン100g、重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド1g、グリシジルメタクリレート35g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35gを一括に仕込み、窒素気流下80℃で2時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄し乾燥を行った。得られた粒子をPGCにより分析を行ったところ、ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート由来のピークが確認され、グラフトされていることが確認された。
[実施例 ロッシェル塩を錯化剤とした銅被覆粒子の作製]
スチレン、ジビニルベンゼンを共重合して得られた平均粒径7.50μmの基材粒子に、前記と同様にロッシェル塩を錯化剤とする銅メッキを行い金属被覆粒子を得た。滴定の結果、単位面積当たり0.8%の錯化剤の消費が見られた。
[実施例 樹脂被覆された導電性粒子の作製]
得られた基材粒子を実施例と同様に基材粒子表面にビニル基を導入し、と同様にグラフトを行い、粒子を得た。また、PGCにより被覆樹脂層が確認された。
(表面に開始剤を導入した金属被覆粒子の作製)
金属被覆粒子10gに対し、4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸の酸クロリド10g、トリエチルアミン10gを加え、攪拌し、表面にアゾ基を導入した粒子を作製した(図4参照)。
[実施例 樹脂被覆された導電性粒子の作製]
得られた基材粒子10gに対しメチルエチルケトン100g、グリシジルメタクリレート35g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35g、を一括に仕込み、窒素気流下80℃で4時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄、乾燥した。得られた粒子はPGCにより被覆樹脂層が確認された。
(比較例 官能基Aを含まない導電層を用いた導電性粒子の作製)
粒子に対しEDTAを錯化剤として用い無電解銅めっきを行い、0.10μmの金属被覆層を有する5.40μmの金属被覆粒子を作製した。メッキ液の滴定の結果、錯化剤は消費されていなかった。この金属被覆粒子10gに対し、実施例と同様にメタクリロイルイソシアナートを作用させ、該粒子10gをメチルエチルケトン100g、重合開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1g、グリシジルメタクリレート35g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35gを一括に仕込み、窒素気流下80℃で2時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄し乾燥し、粒子を得た。PGCによる分析において被覆樹脂層は確認されなかった。
(比較例 官能基Bを有するビニル化合物を含まない導電性粒子の作製)
金属被覆粒子C10gに対し、メチルエチルケトン100g、重合開始剤2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1g、グリシジルメタクリレート35g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35gを一括に仕込み、窒素気流下80℃で2時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄し乾燥し粒子を得た。PGCによる分析において被覆樹脂層は確認されなかった。
(比較例 樹脂被覆された導電性粒子の作製)
金属被覆粒子10gに対し、粒子の被覆層と同じ組成のメタクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量1万)0.25gの酢酸ブチル溶液5gを加え、粒子を分散させた後、分散媒の酢酸ブチルを徐々に蒸発させ被覆導電性粒子を得た。
[実施例:樹脂被覆された導電性粒子Rの製造]
懸濁重合により得られた架橋ポリスチレン(平均粒径5.52μm、変動係数15%)を用い、銅被覆粒子Cと同様にメッキ膜厚0.05μmの銅被覆粒子を得た。さらにこの銅被覆粒子を被覆導電性粒子Eの作製手法と同様に粒子表面にビニル基を導入した。ビニル基を導入したこの金属被覆粒子10gに対し、メチルエチルケトン100g、重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド1g、グリシジルメタクリレート25g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10gを一括に仕込み、窒素気流下80℃で2時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄し、乾燥を行った。得られた粒子RをPGCにより分析を行ったところ、ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレート由来のピークが確認され、グラフトされていることが確認された。
[実施例:樹脂被覆された導電性粒子Sの製造]
金属被覆粒子10gに対し、メチルエチルケトン100g、重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド2g、グリシジルメタクリレート35g、ブチルメタクリレート140g、イソボルニルメタクリレート35g、を一括に仕込み、窒素気流下80℃で2時間反応させた後、メチルエチルケトンで洗浄し乾燥し、粒子を得た。PGCにより分析を行ったところ、ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート由来のピークが確認されグラフトされていることが確認された。
(被覆樹脂層の溶出試験)
乾燥した粒子を分散媒としてトルエンに分散させ、超音波を30分印加した後、濾過・乾燥をおこない、粒子の重量変化量から被覆樹脂層の溶出量の測定を行った。この結果から、本発明の粒子は樹脂層の溶出が無く、被覆樹脂層が金属層に強固に結合していることが確認された。粒子は溶剤に可溶な樹脂を粒子に被覆しただけであり、溶剤により容易に溶出されることが確認された。

(付着性の確認方法(ITO付ガラス基板に対する固着性能))
得られた粒子をイソプロピルアルコールに分散させ、ITO付ガラス基板上に粒子を散布する。イソプロピルアルコールを室温にて蒸発させた後、この基板を120℃にて60秒静置する。この基板を室温まで冷却後、この基板上の粒子の確認を行い、基板上部6mmの所から窒素ガスを1kg/cmにて10秒間ブローした後、基板上の粒子の残存率を測定した。
(導通信頼性試験)
得られた導電性粒子3gをエポキシ樹脂(三井化学製、ストラクトボンドXN−5A)100gに混ぜ合わせペーストを作成した。該ペースト0.1mgをITO膜が内面に形成された幅10mmの2枚のガラス基盤上を交差するように挟み、プレス機にて15kg/cmの圧力において80℃、30分仮圧着を行なった。この試験片を顕微鏡で観察し粒子濃度の測定を行った後、この試験片に対し、粒子1個あたり1gfの荷重となる様圧力を加え、150℃、45分間熱圧着した。この試験片を顕微鏡で観察し、多重粒子の有無を観察し、更に電気抵抗値を測定した。この試験片を高温側が80℃、2時間、低温側が−20℃、2時間を1サイクルとし、200サイクル行なった後、再度この試験片の電気抵抗値の測定を行った。このときの電気抵抗値の変化は表に示す結果となった。

表の結果から、本発明の導電性粒子N,Rは接着樹脂に対する分散性に優れ、基板に対する固着性があり、接続信頼性にも優れることが確認された。変動係数の小さなG、I、J、L、Nでは、より多くの導電性粒子が接続に関与することにより、電気抵抗をより小さくすることができた。また、比較例の官能基Aを含まない錯化剤を用いた金属被覆粒子Oの場合には、被覆樹脂層の形成は行われず、被覆樹脂相が化学的に結合していないQでは、被覆樹脂層の流失により、信頼性試験後において大幅な電気抵抗値の上昇が見られた。被覆樹脂層がメッキ層に化学的に結合していることは必須であり、官能基Aを含む錯化剤やビニル基を導入することが好ましい。
本発明の被覆導電性粒子は、熱可塑性樹脂層の剥離、溶出が抑制されている。また、接着樹脂に容易に混和することができるため、接着樹脂中に均一に分散し、多重粒子の無い異方導電接続材料の製造が可能となる。従って本発明の粒子を用いた異方導電接続構造は、隣接する端子間でリークの発生が無い。更に、粒子自体が接続端子への付着性を有しているため、接続安定性に優れている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材微粒子、基材微粒子に施された金属被覆層、および前記金属被覆層上に設けられた熱可塑性重合体からなる樹脂層を備えている被覆導電性粒子であって、
前記熱可塑性重合体が、前記金属被覆層に導入された有機化合物と化学的に結合していることを特徴とする、被覆導電性粒子。
【請求項2】
ビニル基または重合開始剤が前記有機化合物を起点として前記金属被覆層表面に導入されており、前記熱可塑性重合体が、前記金属被覆層表面に導入された前記ビニル基または前記重合開始剤を起点として単量体の一種または二種以上をグラフト重合することによって形成されていることを特徴とする、請求項1記載の被覆導電性粒子。
【請求項3】
前記基材微粒子が、有機樹脂、無機樹脂、または有機無機複合樹脂からなる群より選ばれた一種以上の樹脂からなることを特徴とする、請求項1または2記載の被覆導電性粒子。
【請求項4】
前記基材微粒子の粒子径分布の変動係数(CV値)が10%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の被覆導電性粒子。
【請求項5】
前記有機化合物が活性水素を有しており、重合性ビニル基を有する化合物を前記活性水素に対して反応付加せしめることによって前記ビニル基が前記金属被覆層の表面に導入されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つの請求項に記載の被覆導電性粒子。
【請求項6】
前記有機化合物が活性水素を有しており、前記熱可塑性重合体が過酸化物系の重合開始剤を用いて形成されたことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つの請求項に記載の被覆導電性微粒子
【請求項7】
前記有機化合物が錯化剤であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の被覆導電性粒子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の被覆導電性粒子と、この導電性粒子を結着する結着剤とを備えていることを特徴とする、導電性材料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の被覆導電性粒子を用いた異方性導電接着剤。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の被覆導電性粒子を用いた異方性導電接合構造。

【国際公開番号】WO2005/004171
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511417(P2005−511417)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009755
【国際出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】