説明

被覆組成物、被覆物品及び自動車用外板

【課題】 高度の美粧性、耐擦り傷性及び耐酸性雨性、耐溶剤性等の耐薬品性に優れ、かつ地球温暖化の防止に貢献できる短時間かつ省エネルギーで硬化塗膜を得ることができる被覆組成物、及びその硬化塗膜を有する被覆物品を得る。
【解決手段】 (メタ)アクリロイルオキシ基と、酸無水物基を形成可能な位置に少なくとも2個のカルボン酸基を有し、その2個のカルボン酸基が酸無水物を形成しているか、酸エステルを形成している化合物A、エポキシ基とオキセタン基との少なくとも一方を有するアクリル系共重合体B及びラジカル重合開始剤Cを含有する被覆組成物。また、その被覆組成物の硬化塗膜を有する被覆物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度の美粧性と塗膜性能が要求される、自動車等のクリアコート層用塗料として有用な、熱及び/又は活性エネルギー線により、特に、耐擦り傷性及び耐薬品性に優れる硬化塗膜が得られる被覆組成物、その硬化塗膜を有する被覆物品及び該被覆物品からなる自動車用外板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用外板等の上塗りに用いられる塗料は、従来、水酸基含有アクリル樹脂をメラミン樹脂で加熱硬化させるタイプが主流であった。しかしながら、近年、酸性雨による塗膜のエッチングやシミ状汚れや、洗車機の普及に伴う洗車時の擦り傷が世界中で問題となっている。そこで、十分な耐酸性雨性と耐擦り傷性を同時に解消できる上塗り用塗料が所望されている。
【0003】
一方で、地球温暖化防止という課題が全世界的な規模で取り上げられるようになり、莫大な使用量である自動車用外板塗料の分野においては、溶媒として含まれている有機溶剤の揮散、さらには特に地球温暖化を加速させる二酸化炭素の排出等を削減することが重要課題となっている。ここでいう二酸化炭素とは、自動車用外板塗料を塗装した後の加熱焼き付けに伴う大量に発生する二酸化炭素のことを意味する。現在の自動車用外板に使用されている塗料は、塗装後の硬化方法が全て加熱硬化方法であることから、そのような課題を有する。
【0004】
このような課題を解決する方法として、酸無水物基をハーフエステル化した共重合体、ヒドロキシ化合物及びエポキシ化合物を含有する熱硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0005】
これらの組成物は、得られる硬化塗膜の耐酸性雨性は向上させることができる。しかしながら、その耐擦り傷性はまだ十分ではなく、さらに、その硬化手段は加熱によるため、前記した後者の課題、すなわち二酸化炭素の排出量を抑制することができないという課題を有している。
【特許文献1】特開平2−45577号公報
【特許文献2】特開平3−287650号公報
【特許文献3】特開平4−363374号公報
【特許文献4】特開平8−225770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、地球温暖化の防止に貢献できる、優れた耐酸性雨性、耐溶剤性等の耐薬品性及び耐擦り傷性を兼ね備える硬化塗膜を、短時間かつ省エネルギーで形成が可能な被覆組成物、その硬化塗膜を有する物品及び該物品からなる自動車用外板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、分子内に、(メタ)アクリロイルオキシ基及び、少なくとも2個のカルボン酸基が酸無水物を形成する位置にあり、かつ該2個のカルボン酸基が酸無水物基を形成しているか又は一方がエステルとなっている基を有する化合物A、エポキシ基とオキセタン基との少なくとも一方を有するアクリル系共重合体B並びにラジカル重合開始剤Cを含有する被覆組成物である。
【0009】
なお、化合物Aとして、下記一般式(1)、(3)又は(5)の酸無水物あるいは下記一般式(2)、(4)又は(6)のハーフエステル化合物が好ましい。
【0010】
【化1】

式(1)中、Rは水素又はメチル基であり、R1は置換基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【0011】
【化2】

式(2)中、Rは水素又はメチル基であり、R1は置換基であり、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【0012】
【化3】

式(3)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【0013】
【化4】

式(4)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、R6は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【0014】
【化5】

式(5)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【0015】
【化6】

式(6)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、R6は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【0016】
また、本発明は、上記被覆組成物が表面に塗布され、硬化された硬化塗膜を有する被覆物品である。
【0017】
また、本発明は、基材上に、ベースコート層及び1層以上のクリアコート層が順次積層されてなり、該クリアコート層の最外層が上記被覆組成物を硬化した硬化塗膜からなる被覆物品である。
【0018】
さらに、本発明は、上記被覆物品からなる自動車用外板である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の被覆組成物は、熱及び/又は活性エネルギー線により硬化することから、短時間かつ省エネルギーで硬化塗膜を形成することができる。そこで、硬化塗膜の形成時に二酸化炭素の排出量を抑制することができる。また、耐擦り傷性及び耐薬品性に優れる硬化塗膜を有する被覆物品が得られることから、その被覆物品を特に自動車用外板として用いれば、優れた性能を有する自動車用外板が得ることができる。
【0020】
このように、本発明は、近年所望されている二酸化炭素の排出量の抑制もでき、しかも耐擦り傷性及び耐薬品性に優れる硬化塗膜を有する被覆物品を得ることもできるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明の被覆組成物は、分子内に、(メタ)アクリロイルオキシ基及び、少なくとも2個のカルボン酸基が酸無水物を形成する位置にあり、かつ該2個のカルボン酸基が酸無水物基を形成しているか又は一方がエステルとなっている基を有する化合物A(以下、“化合物A”という)、エポキシ基とオキセタン基との少なくとも一方を有するアクリル系共重合体B(以下、“共重合体B”という)並びにラジカル重合開始剤C(以下、“開始剤C”という)を含有する。
【0023】
本発明に用いる化合物Aは、分子内に、(メタ)アクリロイルオキシ基及び、少なくとも2個のカルボン酸基が酸無水物を形成する位置にあり、かつ該カルボン酸基が酸無水物基を形成しているか又は一方がエステルとなっている基(ハーフエステル基)を有する化合物であり、本発明の被覆組成物に熱硬化性あるいは活性エネルギー線硬化性を付与する成分である。この化合物Aに含まれるこれらの基は、少なくとも1つずつ化合物中に有している。
【0024】
化合物Aとして、上記一般式(1)、(3)又は(5)で表される酸無水物あるいは上記一般式(2)、(4)又は(6)で表されるハーフエステル化合物が好ましいものとしてあげることができる。
【0025】
一般式(1)〜(6)中で、Rとして示した基は、水素原子又はメチル基である。
【0026】
一般式(1)〜(6)中で、R1及びR3〜R5として示した基は、それぞれ独立した置換基であり、特に限定されるものではないが、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルデヒド基、カルボン酸基、アルコキシカルニル基、スルホン酸基、アルコキシスルホニル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子等が挙げられる。一般式(2)中で、R2として示した基は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基である。一般式(4)、(6)中で、R6として示した基は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0027】
一般式(1)〜(6)中で、Yとして示した基は、2価の有機基であり、特に限定されるものではないが、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合等を含んでよく、また、置換基を有してよい炭化水素の2価の基、カルボニル基、置換基を有してよいアリレン基、置換基を有してよいヘテロアリレン基等の2価の有機基である。また、炭化水素の2価の基は直鎖、分岐鎖、環状構造、複素環状構造を有していてもよい。
【0028】
また、一般式(1)〜(6)中のnは、0又は1である。
【0029】
化合物Aのうち酸無水物を有する化合物の具体例としては、無水トリメリット酸等の酸無水物基と活性アシル基を有する化合物(a1)とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(a2)とのエステル化反応により得られる化合物、又は、(メタ)アクリル酸クロライド等の活性アシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)とリンゴ酸等のヒドロキシ多カルボン酸化合物(a4)とのエステル化したものを、次いで酸無水物化することによって得られる化合物を挙げることができる。
【0030】
このように得られた分子内に酸無水物基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物を、通常の方法で、必要に応じて触媒を添加して、例えばアルコールで、ハーフエステル化することにより、酸無水物を形成する位置にある2個のカルボン酸の一方がエステル化した化合物Aが得られる。このハーフエステルになった化合物Aは、酸無水物を有する化合物Aよりも保存安定性が向上する傾向にある。
【0031】
酸無水物基と活性アシル基を有する化合物(a1)としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸クロライド、オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸、オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフラン酸クロライド、無水トリカルバリル酸のような酸無水物基とカルボン酸を有する化合物が挙げられる。また例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、グリセリントリス(アンヒドロトリメリテート)、ブタンテトラカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物のような1個以上の無水物基を有する化合物に対して、さらに活性アシル基が置換された化合物等を挙げることができる。
【0032】
それらの中では、塗膜の硬化時の体積収縮率を低減できることから、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸クロライド等の環状骨格を有するものが好ましい。また、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水ピロメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、グリセリントリス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物等の環状骨格を有し、且つ、1個以上の無水物基を有する化合物に対して、さらに活性アシル基が置換された化合物等が好ましい。
【0033】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(a2)として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートや、これらの水酸基にさらにε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトンやエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド等を付加した化合物等を挙げることができる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0034】
それらの中でも、良好な耐擦り傷性が得られることから、カルボキシル基を有するラクトン変性(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
酸無水物基と活性アシル基を有する化合物(a1)と、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(a2)との付加反応は、通常の方法で行えばよく、例えば、−50℃〜90℃で、必要に応じ触媒として3級アミン等を添加し、混合攪拌することにより行うことができる。
【0036】
活性アシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド、(メタ)アクリル酸ヨーダイド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸アミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げることができる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0037】
それらの中でも、高収率、製造プロセスの簡易さの観点から、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸無水物が好ましい。
【0038】
ヒドロキシ多カルボン酸化合物(a4)としては、例えば、ヒドロキシコハク酸(別名:リンゴ酸)、ヒドロキシメチルコハク酸、ヒドロキシペンタンジカルボン酸、ヒドロキシメチルペンタンジカルボン酸、テトラヒドロ−2−オキソ−2H−ピラン−4−カルボン酸、ヒドロキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ヒドロキシベンゼン−1,2−ジカルボン酸等が挙げることができる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0039】
それらの中でも、無水物化が効率よく進行すること、原料が容易に入手できることなどから、ヒドロキシコハク酸(別名:リンゴ酸)、ヒドロキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ヒドロキシベンゼン−1,2−ジカルボン酸が好ましい。
【0040】
活性アシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)と、ヒドロキシ多カルボン酸化合物(a4)との付加反応は、通常の方法で行えばよく、例えば、0〜150℃で、必要に応じて触媒を使用し、混合攪拌することにより行うことができる。
【0041】
本発明の組成物に配合するエポキシ基とオキセタン基との少なくとも一方を有するアクリル系共重合体B(共重合体B)は、エポキシ基とオキセタン基との少なくとも一方を有するアクリル系単量体とその他の共重合可能な単量体(以下、単に「重合性単量体」とも表す)とを共重合して得られる。
【0042】
共重合体Bを得るために用いるエポキシ基とオキセタン基との少なくとも一方を有するアクリル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、6−グリシジルオキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−グリシジルオキシオクチル(メタ)アクリレート、9−グリシジルオキシノニル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、3−エチル−3−メチル(メタ)アクリロイルオキセタン等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0043】
また、共重合体Bを得るために用いる重合性単量体としては、脂肪族炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル、脂環式炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヘテロ環式置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル、スチレン及びその誘導体、エチレン性不飽和ニトリル、N−アルコキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド、ビニル塩基性単量体、不飽和脂肪族二塩基酸のジアルキルエステル、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、その他の水酸基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有α,β−不飽和ビニル系単量体、長鎖カルボキシル基含有ビニル系単量体、及びジカルボン酸モノエステル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
【0044】
以下それらの単量体の具体例を示す。
【0045】
脂肪族炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルデカニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なお、脂肪族炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル中の脂肪族炭化水素置換基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0046】
脂環式炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、メチルアダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
ヘテロ環式置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例として、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、サイクリックトリメチロールプロパンフォルマール(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0048】
スチレン及びその誘導体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−フェニルスチレン等を挙げることができる。
【0049】
エチレン性不飽和ニトリルとして、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0050】
N−アルコキシアルキル置換(メタ)アクリルアミドの具体例としては、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等がある。
【0051】
ビニル塩基性単量体の具体例として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
不飽和脂肪族二塩基酸のジアルキルエステルの具体例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等を挙げることができる。
【0053】
ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン又はγ−ブチロラクトンの開環付加物(例えば、ダイセル化学(株)製プラクセルF単量体、UCC社製トーンM単量体等(いずれも商品名))、メタクリル酸へのエチレンオキシドの開環付加物、メタクリル酸へのプロピレンオキシドの開環付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体や3量体等が挙げられる。
【0055】
その他の水酸基含有ビニル系単量体の具体例として、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0056】
カルボキシル基含有α,β−不飽和ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等を挙げることができる。
【0057】
長鎖カルボキシル基含有ビニル系単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドマレエート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−アシッドサクシネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン又はγ−ブチロラクトンの開環付加物(例えば、ダイセル化学(株)製プラクセルF単量体及びUCC社製トーンM単量体(いずれも商品名))の末端水酸基を、無水コハク酸や無水フタル酸又は無水ヘキサヒドロフタル酸でエステル化して末端にカルボキシル基を導入したコハク酸モノエステルや、フタル酸モノエステル又は無水ヘキサヒドロフタル酸モノエステル等のカプロラクトン変性水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと酸無水物化合物とのハーフエステル化反応生成物等が挙げられる。
【0058】
ジカルボン酸モノエステル基を有するビニル系単量体の具体例として、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、2,3−ジメチル無水マレイン酸等のα,β−ジカルボン酸無水物基を有するビニル系単量体をアルコールでハーフエステル化した、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノ2−エチルヘキシル、シトラコン酸モノエチル等が挙げられる。
【0059】
それらの中でも、得られる硬化塗膜の平滑性の観点から、重合性単量体として、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びスチレンが好ましい。
【0060】
さらに、それらの中でも、重合性単量体として、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0061】
一方、それらの中で、得られる硬化塗膜の表面硬度の観点から、スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0062】
そして、被覆組成物の硬化性やノンサンドリコート性(被塗物を予め研磨することなく塗工しても平滑な塗膜が得られるという特性)が良好となることから、水酸基を含有する重合性単量体を併用することが好ましい。
【0063】
これら重合性単量体は、必要に応じて、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0064】
本発明に用いる共重合体Bのエポキシ当量又はオキセタン当量は、200〜1000g/eqの範囲であることが好ましい。共重合体Bのエポキシ当量又はオキセタン当量が200g/eq以上であれば、被覆組成物の貯蔵安定性が良好となる傾向にあり、またそのエポキシ当量が1000g/eq以下であれば、充分な硬化性を有する被覆組成物が得られ、しかも得られる硬化塗膜の硬度及び耐溶剤性が良好となる。さらに、そのエポキシ当量又はオキセタン当量が250〜800g/eqであることがより好ましい。
【0065】
共重合体Bを得るために用いるエポキシ基又はオキセタン基を有する単量体は、共重合体Bを得るために用いる全単量体中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であることが、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0066】
該単量体の共重合体Bを得るための全単量体中の割合が10質量%以上である場合には、本発明の被覆組成物が充分な低温硬化性を発現し、また得られる硬化塗膜の耐擦傷性及び耐薬品性が良好となる。一方、該単量体の共重合Bを得るための全単量体中の割合が90質量%以下である場合には、本発明の被覆組成物での貯蔵安定性が良好となる。
【0067】
さらに、本発明に用いる共重合体Bの重量平均分子量は、好ましくは1,500以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下である。
【0068】
共重合体Bの重量平均分子量が、1,500以上であれば、得られる硬化塗膜の耐水性及び耐候性が良好となり、20,000以下であれば、共重合体Bが比較的低粘度で流動性が良好であり、かつ本発明の被覆組成物の貯蔵安定性が良好で、また得られる硬化塗膜は表面光沢が高くなり、美粧性が向上する。
【0069】
共重合体Bの重合方法としては、特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等、公知の方法を取ることができる。
【0070】
例えば、溶液重合法で共重合体Bを製造する場合、一般には、分子量をコントロールするため、70〜200℃で重合することが好ましく、好ましくは80〜180℃、より好ましくは90〜170℃で重合する。
【0071】
その際に使用できる重合開始剤として、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン等、公知の重合開始剤を挙げることができる。
【0072】
また、必要に応じて、2−メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0073】
なお、共重合体Bの重量平均分子量は、試料をテトラヒドロフラン(THF)に0.4質量%になるよう溶解した溶液100μlを用いた、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にて標準ポリスチレンで換算された値である。なお、GPC装置として、TOSOH社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置を用い、カラムとしてGE4000HXL及びG2000HXL(いずれもTOSOH社製)を装着し、溶離液としてTHFを使用して、流量:1ml/分、カラム温度:40℃の条件で測定する。
【0074】
本発明の被覆組成物において、化合物Aと共重合体Bの含有量比は特に限定されないが、未反応の官能基が減少し、得られる硬化塗膜の耐候性や耐薬品性が良好となることから、化合物A中の酸当量(カルボキシル基の当量)と、アクリル系共重合体B中のエポキシ当量またはオキセタン当量との比とが、酸当量/エポキシ当量またはオキセタン当量=1/0.5〜1/2の範囲で配合することが好ましく、1/1.8〜1/0.7の範囲で配合することがより好ましい。
【0075】
本発明の被覆組成物には、重合硬化を促進させる目的で、開始剤Cを含有させる。
【0076】
この開始剤Cは、活性エネルギー線によりラジカルを発生させる重合開始剤及び/又は熱によりラジカルを発生させる重合開始剤等を適宜選択して用いればよい。
【0077】
それらの中でも、反応速度が速いことから、活性エネルギー線によりラジカルを発生させる重合開始剤が好ましい。
【0078】
ラジカルを発生させる重合開始剤として、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、クメンハイドロペルオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等のパーオキシド化合物等が挙げられる。
【0079】
これらの中でも、特に被覆組成物の硬化性及び得られる硬化塗膜の耐候性に優れることから、ベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドから選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
【0080】
本発明において、開始剤Cの含有量は特に限定されないが、化合物Aと共重合体Bの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。開始剤Cの含有量が前記範囲内である場合には、被覆組成物の硬化性が良好であり、かつ得られる硬化塗膜が帯色せず、耐候性も良好となる傾向にある。
【0081】
本発明の被覆組成物には、更に、得られる硬化塗膜の架橋密度や外観を向上させる目的で、必要に応じてエポキシ基、オキセタン基、カルボキシル基、酸無水物基及び水酸基のうちのいずれか1種以上との反応性を有する官能基を含有する化合物、樹脂、又はそれらの混合物である補助硬化剤を添加してもよい。
【0082】
補助硬化剤の具体例としては、メラミン系樹脂やブロックイソシアネート系樹脂、分子中にカルボキシル基を有する酸価50〜200mgKOH/gのポリエステル樹脂等の樹脂;グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物;アジピン酸、フタル酸等の多塩基酸化合物;無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水ピロメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、グリセリントリス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ブタンテトラカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物基を有する化合物等が挙げられる。
【0083】
それらの中でも、熱硬化速度や架橋密度を向上させることができるため、多塩基酸無水物基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0084】
また、これらの補助硬化剤は、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0085】
本発明の被覆組成物には、化合物Aの酸無水物基あるいは遊離カルボン酸基と、共重合体Bのエポキシ基あるいはオキセタン基を反応させて熱硬化促進するために硬化触媒を含有させることができる。硬化触媒としては、酸無水物基あるいはカルボン酸基と、エポキシ基あるいはオキセタン基とのエステル化反応に用いられる公知の触媒が問題なく使用でき、中でも、熱硬化速度に優れることから、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が好ましい。
【0086】
これらの具体例としては、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0087】
さらに、本発明の被覆組成物には、耐擦り傷性を向上させる目的で、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体を添加してもよい。その具体例としては、ジ(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−エトキシプロピルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0089】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
ウレタン(メタ)アクリレートとして、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートとポリテトラメチレングリコール(繰り返し単位n=6〜15)とのウレタン化反応物に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
ポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールエタンとコハク酸、(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンとコハク酸、エチレングリコール、及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0092】
これら分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体は、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0093】
これらの中でも、特に耐擦り傷性を向上させることができることから、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレートが好ましく、これら分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体から選ばれる単量体を、一種単独で、又は二種以上を併用することが特に好ましい。
【0094】
また、本発明の被覆組成物の貯蔵安定性を向上させるには、必要に応じて、スルホン酸系やリン酸系に代表される酸性化合物あるいはそれらのブロック化物を添加すればよい。それらの具体例としては、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びこれらのアミンブロック化物、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、モノアルキル亜リン酸等が挙げられる。
【0095】
さらに、本発明の組成物には、非反応性熱可塑性高分子、有機ベントン、ポリアミド、マイクロゲル、繊維素系樹脂等のようなレオロジー調節剤やシリコーンに代表される表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー、垂れ止め剤等の添加剤を必要に応じて公知の手段を用いて適宜配合することができる。これらの添加剤の中でも、組成物の貯蔵安定性の向上や、硬化塗膜の変色や変質を抑制することができるので、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を使用することが好ましい。また、硬化塗膜の耐擦り傷性を更に向上させるには、予め表面を有機化処理した無機フィラーを添加することが好ましい。
【0096】
本発明の被覆組成物には、必要に応じて有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤を配合すれば、被覆組成物の均一溶解性、分散安定性、粘度調整及び基材に対する塗工作業性や、得られる硬化塗膜の均一性、基材に対する密着性、平滑性等の諸物性を満たす組成物を得ることができる。
【0097】
有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、スワゾール1000(商品名、丸善石油化学社製)等の高沸点芳香族溶剤等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;エチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシプロピル、酢酸エトキシエチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、メトキシブタノール等の多価アルコール誘導体系溶剤等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0098】
本発明において有機溶剤の配合量は、用いる用途や所望する物性により異なるため限定されるものではない。例えば、本発明の被覆組成物を自動車塗装用のクリヤー用塗料として用いる場合には、通常化合物A、共重合体B及び開始剤Cの合計100質量部に対して、0.01〜1000質量部が好ましく、塗装工程の条件に好適であることから、30〜500質量部がより好ましい。
【0099】
本発明の被覆組成物は、鋼板等の無機基材、各種プラスチック基材、それらを組み合わせた複合部材に塗布することができる。
【0100】
プラスチック基材としては、例えば、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等が挙げられる。
【0101】
また、それらの基材は、必要に応じてそれらの基材表面を予め表面処理されていてもよいし、さらにプライマー層や、プライマー層と中塗り層、上塗り層等の層が予め積層されていてもよい。
【0102】
本発明の被覆組成物は、ハケ塗り法、スプレーコート法、シャワーフローコート法、ディップコート法、又はカーテンコート法等、公知の塗布方法で基材に塗布することができる。その際の塗布量は、特に限定されず目的に応じて適宜調整すればよく、得られる硬化塗膜の膜厚が好ましくは5〜80μm、より好ましくは10〜60μm、さらに好ましくは20〜50μmとなるように塗布すればよい。この範囲内であれば、充分な耐擦り傷性と基材への密着性を有する硬化塗膜が得られる。また硬化収縮率が低く、基材との密着性が良好で、硬化塗膜の耐久性も向上する。
【0103】
本発明の被覆組成物を硬化させる手段としては、例えば、活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によってラジカルを発生させ、ラジカル重合により硬化させる方法と、活性エネルギー線照射により発生する重合熱や、他の方法による加熱を利用して、化合物Aのカルボキシル基と共重合体Bのエポキシ基あるいはオキセタン基を反応させる方法が挙げられる。
【0104】
ここでいう活性エネルギー線としては、α線、β線、γ線、紫外線等特に限定されないが、汎用性の観点から紫外線が好ましい。紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から、一般的に用いられている紫外線ランプが挙げられる。
【0105】
紫外線ランプの具体例としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、マグネトロンを利用した無電極UVランプ等が挙げられる。
【0106】
加熱する場合には、特に限定されるものではなく、公知の加熱炉を用いればよい。例えば、密閉型乾燥炉、トンネル型乾燥炉等の炉、IRヒーター、ガス燃焼オーブン、電気式ヒーター等の熱源を用いて加熱する炉、水、油等の熱媒を用いて加熱した炉を用いることができる。
【0107】
それらの中でも、省エネルギーで硬化可能であることから、例えば、α線、β線、γ線、紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化させる方法がより好ましく、短時間・省エネルギーで硬化させられることから、活性エネルギー線の照射と加熱を併用することが特に好ましい。また、工業的に容易に利用できることから、紫外線と加熱炉を併用することが好ましい。
【0108】
本発明の被覆組成物は、活性エネルギー線を照射する時の雰囲気が、空気であっても、窒素、アルゴン等の不活性ガスであっても硬化する。その中でも、実用性、経済性の点から、空気雰囲気下で硬化させることが好ましい。
【0109】
また、活性エネルギー線の照射と加熱とを併用して硬化させる場合には、活性エネルギー線の照射と加熱を同時に行ってもよいし、活性エネルギー線の照射後に加熱する、又は加熱した後に活性エネルギー線の照射を行う等、それらの順序は、用いる基材や用途、所望する物性等に応じて適宜選択すればよい。
【0110】
次に、本発明の被覆物品について以下に説明する。
【0111】
本発明の被覆物品は、本発明の被覆組成物の硬化塗膜を有する物品である。本発明の被覆物品には、充分な耐酸性雨性及び耐擦り傷性を付与できることから、本発明の被覆組成物の硬化塗膜を基材上に、膜厚5〜80μmに積層されていることが好ましく、膜厚20〜50μmに積層されていることがより好ましい。
【0112】
本発明の被覆物品の構造は、基材上に前記した本発明の被覆組成物の硬化塗膜を有していればよく、基材上に直接本発明の被覆組成物の硬化塗膜を形成してなる物品であってもよいし、積層物上に本発明の被覆組成物の硬化塗膜を形成してなる物品であってもよい。後者の場合の具体例としては、例えば、基材上に、予めベースコート層、及び一層又は複数層のクリアコート層が順次積層してなり、該クリアコート層の最外層が本発明の被覆組成物の硬化塗膜である被覆物品が挙げられる。このような構造の被覆物品であれば、基材に、着色、光沢等の外観性向上等の特性や耐薬品性、耐候性等の性能を格段に向上させることができ、多種多様の被覆物品を得ることが可能となり、自動車用外板として特に有用である。
【0113】
本発明の被覆物品の具体的形態として、例えば自動車用外板を得る方法としては、基材に熱硬化型塗料でベースコート層を形成した後に本発明の被覆組成物でクリアコート層を形成する方法、又は基材に熱硬化型塗料でベースコート層を形成し、次いでメラミンタイプもしくは酸−エポキシタイプの熱硬化型クリアコート層を形成した後に、さらに本発明の被覆組成物でクリアコート層を形成する方法等が挙げられる。
【0114】
なお、ここでいうベースコート層とは、クリアコート層の下地となる層で、基材を所望する色に着色する目的で形成される層である。
【0115】
ベースコート層は、本発明の被覆組成物等の公知の硬化性樹脂;有機溶剤及び/又は水からなる希釈剤;アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物等からなる硬化剤;アルミニウムペースト、マイカ、リン片状酸化鉄等の光輝剤;酸化チタン、カーボンブラック、キナクリドン等の無機・有機顔料;ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂等のその他の樹脂;表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤等を、必要に応じて適宜選択し、それらを公知の手段を用いて適宜配合することにより調製されてなるベースコート塗料の硬化塗膜からなる。
【0116】
このベースコート塗料の形態としては、有機溶剤型、ハイソリッド型、非分散型、水溶液型、水分散型等の公知のものが挙げられる。その中でも、塗膜形成時に有機溶剤の排出量を抑制するという観点から、水溶液型、水分散型等の水系塗料であることが好ましく、水系熱硬化型塗料であることがより好ましい。
【0117】
この水系熱硬化型塗料は、熱硬化性樹脂及び水を含有してなり、必要に応じて適宜着色顔料を添加する。熱硬化性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂/アミノ樹脂系、アルキド樹脂/アミノ樹脂系、ポリエステル樹脂/アミノ樹脂系、アクリル樹脂/ポリイソシアネート系、アルキド樹脂/ポリイソシアネート系、ポリエステル樹脂/ポリイソシアネート系、エポキシ系アクリル樹脂/カルボン酸系アクリル樹脂等が挙げられる。
【0118】
これらは、所望する特性となるよう適宜選択して用いればよい。
【0119】
ここで用いる熱硬化性樹脂としては、硬化性の観点から、その水酸基価が10〜200、好ましくは30〜120であるものが、また、安定性の観点から、その酸価が5〜150、好ましくは、15〜100であるものが、さらに、塗装性の観点から、その数平均分子量が2,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜50,000であるものが好ましい。
【0120】
中では、例えば、水酸基等の架橋性官能基及びカルボキシル基等の親水性官能基を有する、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂は、自動車用外板を得る場合において特に好適である。
【0121】
また、着色顔料としては、例えば、ソリッドカラー顔料、メタリック顔料、光干渉性顔料等も含む、公知の塗料用顔料が挙げられる。それらは、必要に応じて、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0122】
ソリッドカラー顔料の具体例としては、酸化チタン、亜鉛華、リトポン、アンチモン白、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ナフトールエローS、ハンザエロー、ピグメントエローL、ベンジジンエロー、パーマネントエロー、クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ、酸化鉄、アンバー、ベンガラ、鉛丹、パーマネントレッド、キナクリドン系赤顔料、コバルト紫、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、インジゴ、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、フタロシアニングリーン等が挙げられる。また、メタリック顔料の具体例としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、オキシ塩化ビスマス、ニッケル、銅等のフレーク又は蒸着片、雲母フレーク、酸化チタン被覆雲母フレーク、酸化鉄被覆雲母フレーク等が挙げられる。これらは所望に応じて適宜選択すればよく、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0123】
ベースコート塗料には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で親水性有機溶剤及び/又は疎水性有機溶剤を含有させてもよい。
【0124】
ここでいう親水性有機溶剤とは、20℃において、水100質量部に対して50質量部以上の量が溶解する有機溶剤を意味する。また疎水性有機溶剤とは、20℃において、水100質量部に対して50質量部未満の量が溶解する有機溶剤を意味する。
【0125】
親水性有機溶剤は、造膜助剤として用いることができ、その具体例としては、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、第3ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、アセトン、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。それらの中でも、得られる硬化塗膜の平滑性が良好となることから、沸点が180〜200℃である有機溶剤が好ましい。
【0126】
この親水性有機溶剤は、親水性有機溶剤と水との混合液100質量部に対して30質量部以下の範囲、好ましくは20質量部以下の範囲であれば本発明の特性を損なわない。
【0127】
さらにベースコート塗料には、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤を含有させてもよい。
【0128】
ベースコート塗料における熱硬化性樹脂と架橋剤との配合割合は特に限定されないが、通常、熱硬化性樹脂は、ベースコート塗料(固形分)100質量%に対し50〜90質量%、好ましくは60〜80質量%が適当である。一方、架橋剤は50〜10質量%、好ましくは40〜20質量%が望ましい。このような範囲内の配合割合であれば、熱硬化型塗料の硬化性と塗装作業性が良好となる。
【0129】
なお、このベースコート塗料には、必要に応じて中和剤を添加してもよい。
【0130】
ベースコート塗料として水系熱硬化型塗料を用いる場合には、中和剤を添加することにより、熱硬化性樹脂中に親水性官能基として含まれるカルボキシル基が中和されて、熱硬化性樹脂を水溶化又は水分散化させることができる。
【0131】
中和剤の具体例としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、ピリジン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0132】
ベースコート塗料における中和剤の添加量は、熱硬化性樹脂中に含まれるカルボキシル基等の親水性官能基に対して、通常、0.1〜2当量の範囲が好ましく、0.3〜1.2当量の範囲がより好ましい。このような範囲内の配合割合であれば、熱硬化性樹脂中に含まれるカルボキシル基等を充分に中和できる。
【0133】
また、前記したベースコート塗料には、必要に応じて、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉等の体質顔料等も配合してもよい。
【0134】
ベースコート塗料は、基材に、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法等の公知の方法で塗布することができる。その塗膜厚は、所望する被覆物品の用途等に応じて適宜選択すればよく特定されるものではない。通常は、下地隠蔽膜厚と同程度又はそれ以上が好ましい。具体的には、例えば自動車用外板ではベースコート層の硬化塗膜は、20μm以下とすることが好ましく、15μm以下がより好ましく、13μm以下が特に好ましい。
【0135】
本発明の被覆物品を製造する方法の一例を以下に説明する。
【0136】
まず、基材上に、必要に応じて適宜ベースコート層を形成する。ベースコート層は、例えば、ベースコート塗料をスプレーにて塗布し、その塗膜が未硬化の状態で、固形分含有率が40質量%以上、好ましくは50〜100質量%の範囲内になるように乾燥させた後、50〜100℃で1〜30分間程度乾燥して得ることができる。次いで、基材もしくは予め基材に形成又は予備乾燥したベースコート層上に、クリアコート塗料を塗布し、必要に応じてそれを加熱した後、活性エネルギー線を照射してクリアコート層を形成することができる。例えば、クリアコート塗料塗装後、100〜140℃の乾燥炉で溶剤乾燥と加熱硬化を行った後、引き続き、メタルハライドランプ等の光源を用いて500〜10000mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射し、光硬化させることができる。
【0137】
なお、必要に応じて、前記ベースコート層と前記クリアコート層との間に、中塗りクリアコート層として、メラミン型もしくは酸−エポキシ型の熱硬化型クリアコート塗料の硬化物層を形成してもよい。またこのクリアコート層は、ベースコート塗料の硬化塗膜を形成した後に形成してもよいし、ベースコート塗膜を乾燥させた後にクリアコート塗料を塗布し、それらの塗膜を同時に硬化させてもよい。
【0138】
本発明の被覆物品として、ベースコート層上に本発明の被覆組成物を用いてクリアコート層を形成してなる自動車用外板等を得る場合、そのクリアコート層は、優れた平滑性や耐候性を付与できることから、クリアコート塗膜中の溶剤あるいは水を乾燥・揮発させる目的で加熱処理をした後に、活性エネルギー線を照射して硬化させて得る方法が好ましい。
【0139】
本発明の被覆物品は、該硬化塗膜が耐酸性雨性及び耐擦り傷性に優れていることから、特に屋外用途、具体的には自動車用外板に極めて好適に用いることができる。
【実施例】
【0140】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0141】
また、実施例中の用語の意味を以下に示す。
・エポキシ当量:1グラム当量のエポキシ基を含有する共重合体のグラム数(g/eq;理論値)。
・オキセタン当量:1グラム当量のオキセタン基を含有する共重合体のグラム数(g/eq;理論値)。
・酸当量:1グラム当量のカルボキシル基を含有する共重合体のグラム数(g/eq;理論値)。
・重量平均分子量:試料ポリマーのテトラヒドロフラン溶液(0.4質量%)を調整し、その溶液100μlを、TOSOH社製カラム(GE4000HXL及びG2000HXL)を装着したTOSOH社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置に注入し、流量:1ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の条件で、分子量を測定し、標準ポリスチレンで換算した値。
【0142】
また、得られた硬化塗膜の評価方法は以下の通りである。なお、被覆試験板の製法は後記する。
・鉛筆硬度:被覆試験板の硬化塗膜について、JIS K5600−5−4に準拠し、三菱鉛筆ユニ(商品名)を用いて45度の角度で引っ掻き、傷のつかない最大硬度。
・耐酸性:40%硫酸溶液約0.3mlを、被覆試験板の硬化塗膜表面に滴下し、恒温槽中で80℃、25分間の加熱した後、水洗し、該硬化塗膜を目視にて評価し、下記基準に基づいた評価。
○:全くエッチングされなかった。
×:エッチングされた。
・耐溶剤性:被覆試験板の硬化塗膜表面上を、メチルエチルケトンを十分に染み込ませたガーゼで、500g荷重で50往復させた後に、その該塗膜表面の外観を目視にて観察し、下記基準に従った評価。
○:全く変化なし。
△:硬化塗膜が傷付く、もしくは曇る。
×:硬化塗膜が膨潤する、もしくは溶解する。
・耐擦り傷性:被覆試験板の硬化塗膜表面上を、クレンザーをしみ込ませたフェルトを500g荷重で20往復させた後、その表面を光沢計(日本電色工業株式会社製、商品名:グロスメーターVG−2000)を用いて光反射率を20°の角度で測定し、初期光沢の値と試験後の傷部光沢の値から硬化塗膜の光沢保持率を算出し、得られた値について下記基準での評価。
○:40%以上。
×:40%未満。
【0143】
(合成例1)<共重合体(B−1)の調製>
フラスコ、攪拌機、温度制御装置及びコンデンサーを備えた反応容器に、有機溶剤としてソルベッソ150(エッソ社製、芳香族炭化水素)95部とn−ブタノール5部を加え、窒素ガスの吹き込みと攪拌を続けながら130℃に加熱した後、その中に、単量体としてスチレン20部、トリデシルメタクリレート15部、グリシジルメタクリレート45部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート20部と重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル6部を含む混合物を4時間かけて連続的に滴下し、そのまま130℃で1時間保持し、次いで、アゾビスイソブチロニトリル1部を1時間かけて連続的に添加し、更に130℃で1時間保持して、アクリル系共重合体(B−1)溶液(樹脂固形分50%)を得た。得られたアクリル系共重合体(B−1)は、エポキシ当量が315g/eqであり、重量平均分子量が5000であった。
【0144】
(合成例2)<共重合体(B−2)の調製>
合成例1において、単量体としてメチルメタクリレート15部、n−ブチルメタクリレート32部、グリシジルメタクリレート43部及びシクロヘキシルメタクリレート10部を用いる以外は、合成例1と同様にしてアクリル系共重合体(B−2)溶液(樹脂固形分50%)を得た。得られたアクリル系共重合体(B−2)は、エポキシ当量が330g/eqであり、重量平均分子量が5000であった。
【0145】
(合成例3)<共重合体(B−3)の調製>
合成例1において、単量体としてメチルメタクリレート15部、n−ブチルメタクリレート32部、グリシジルメタクリレート33部、3−エチル−3−メチル(メタ)アクリロイルオキセタン10部及びシクロヘキシルメタクリレート10部を用いる以外は、合成例1と同様にして重合を行い、アクリル系共重合体(B−3)溶液(樹脂固形分50%)を得た。得られたアクリル系共重合体(B−3)は、エポキシ当量が343g/eqであり、重量平均分子量が4900であった。
【0146】
(合成例4)<共重合体(P−1)の調製>
フラスコ、攪拌機、温度制御装置及びコンデンサーを備えた反応容器に、有機溶剤としてソルベッソ150 50部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10部を加え、窒素ガスの吹き込みと攪拌を続けながら130℃に加熱した後、その中に、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部、単量体として無水マレイン酸20部、メタクリル酸4部、i−ブチルメタクリレート20部、2−エチルヘキシルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート20部及びスチレン20部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5部を含む混合物を、4時間かけて連続的に滴下した。そのまま130℃で1時間保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1部を1時間かけて連続的に添加し、更に130℃で1時間保持した。その後、70℃に下げ、メタノール6.2部及びトリエチルアミン0.5部を加え、70℃で7時間保持して、酸無水物基の部分的なモノエステル化を行い、アクリル系共重合体(P−1)溶液(樹脂固形分50%)を得た。得られたアクリル系共重合体(P−1)は、酸当量が377g/eqであり、重量平均分子量が5000であった。
【0147】
(合成例5)<化合物(A−1)の合成>
500mlの3つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート10g(86.1mmol)及び塩化メチレン400gを入れ、氷浴で冷やしながら、ピリジン6.8g(86.1mmol)をゆっくり添加した。更にトリメリット酸クロライド18.3g(86.1mmol)を氷浴でゆっくり添加した。その後、氷浴中冷却しながら3時間攪拌した。析出した白色固体を濾別し、反応液を蒸留水、飽和食塩水で洗浄し、次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧下で溶媒を留去することにより、2−アクリロイルオキシエチル無水トリメリット酸(A−1)18.5g(収率74%)を得た。
【0148】
(合成例6)<化合物(A−2)の合成>
合成例5で得た2−アクリロイルオキシエチル無水トリメリット酸4.0g(13.8mmol)に、メタノール0.44g(13.8mmol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.004g、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.02g(0.15mmol)を添加し、室温で6時間攪拌し、2−アクリロイルオキシエチル、メチルトリメリット酸エステル(A−2)4.3g(収率97%)を得た。得られた2−アクリロイルオキシエチル、メチルトリメリット酸エステル(A−2)の酸当量は161g/eqであった。
【0149】
(合成例7)<化合物(A−3)の合成>
500ml3つ口フラスコにε―カプロラクトン1モル変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製 商品名:プラクセルFA1DDM)19.8g(86.1mmol)及び塩化メチレン400gを入れ、氷浴で冷やしながら、ピリジン6.8g(86.1mmol)をゆっくり添加した。更にトリメリット酸クロライド18.3g(86.1mmol)を氷浴でゆっくり添加した。その後、氷浴中冷却しながら3時間攪拌した。析出した白色固体を濾別し、反応液を蒸留水、飽和食塩水で洗浄し、次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧下で溶媒を留去することにより、ε―カプロラクトン1モル変性−2−アクリロイルオキシエチル無水トリメリット酸(A−3)27.8g(収率80%)を得た。
【0150】
(合成例8)<化合物(A−4)の合成>
合成例7で得たε―カプロラクトン1モル変性−2−アクリロイルオキシエチル無水トリメリット酸5.6g(13.8mmol)に、メタノール0.44g(13.8mmol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.006g、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.02g(0.15mmol)を添加し、室温で6時間攪拌し、ε―カプロラクトン1モル変性−2−アクリロイルオキシエチル、メチルトリメリット酸(A−4)エステル5.7g(収率97%)を取得した。得られたε―カプロラクトン1モル変性−2−アクリロイルオキシエチル、メチルトリメリット酸エステル(A−4)の酸当量は216g/eqであった。
【0151】
(合成例9)<化合物(A−5)の合成>
500ml3つ口フラスコにε―カプロラクトン2モル変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製 商品名:プラクセルFA2D)29.6g(86.1mmol)及び塩化メチレン400gを入れ、氷浴で冷やしながら、ピリジン6.8g(86.1mmol)をゆっくり添加した。更にトリメリット酸クロライド18.3g(86.1mmol)を氷浴でゆっくり添加した。その後、氷浴中冷却しながら3時間攪拌した。析出した白色固体を濾別し、反応液を蒸留水、飽和食塩水で洗浄し、次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧下で溶媒を留去することにより、ε―カプロラクトン2モル変性−2−アクリロイルオキシエチル無水トリメリット酸(A−5)33.3g(収率87%)を得た。
【0152】
(合成例10)<化合物(A−6)の合成>
合成例9で得たε―カプロラクトン変性2−アクリロイルオキシエチル無水トリメリット酸(A−5)6.1g(13.8mmol)に、メタノール0.44g(13.8mmol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.007g、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.02g(0.15mmol)を添加し、室温で6時間攪拌し、ε―カプロラクトン2モル変性−2−アクリロイルオキシエチル、メチルトリメリット酸エステル(A−6)6.5g(収率98%)を得た。得られたε―カプロラクトン2モル変性−2−アクリロイルオキシエチル、メチルトリメリット酸エステル(A−6)の酸当量は480g/eqであった。
【0153】
(合成例11)<化合物(A−7)の合成>
攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた500ml3つ口フラスコに、DL−リンゴ酸27g(0.2mol)及びメタクリル酸クロライド105g(1.0mol)を仕込み、90℃にて攪拌した。このまま常圧で3時間加熱攪拌して反応させた後、冷却し、この反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体の2―メタクリロイルオキシ無水コハク酸(A−7)24.2g(収率65%)を得た。
【0154】
(合成例12)<化合物(A−8)の合成>
合成例11で得た2―メタクリロイルオキシ無水コハク酸(A−7)2.17g(11.8mmol)に、メタノール0.38g(11.8mmol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.007g及びN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.02g(0.15mmol)を添加し、室温で6時間攪拌し、2―メタクリロイルオキシコハク酸モノメチルエステル(A−8)2.42g(収率95%)を得た。得られた2―メタクリロイルオキシコハク酸モノメチルエステル(A−8)の酸当量は202g/eqであった。
【0155】
(合成例13)<化合物(A−9)の合成>
攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた500ml3つ口フラスコに、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸無水物165g(0.86mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート105g(0.90mol)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン2g(0.015mol)及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.075g(0.6mmol)を仕込み、100℃にて攪拌した。このまま常圧で5時間加熱攪拌して反応させた後、室温に冷却し、無色透明液体のヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸の2−ヒドロキシエチルアクリレート付加体(A−9)240gを得た。得られたヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸の2−ヒドロキシエチルアクリレート付加体(A−9)の酸当量は284g/eqであった。
【0156】
(合成例14)<化合物(A−10)の合成>
攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた500ml3つ口フラスコに、フタル酸無水物74g(0.50mol)、ε―カプロラクトン2モル変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製 商品名:プラクセルFA2D)179g(0.52mol)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン2g(0.015mol)及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.126g(1.0mmol)を仕込み、110℃にて攪拌した。このまま常圧で7時間加熱攪拌して反応させた後、室温に冷却し、無色透明液体のフタル酸のε―カプロラクトン2モル変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート付加体(A−10)230gを得た。得られたフタル酸のε―カプロラクトン2モル変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート付加体(A−10)の酸当量は492g/eqであった。
【0157】
(実施例1)
合成例5で得た2−アクリロイルオキシエチル無水トリメリット酸(A−1)288部、合成例1で得たアクリル系共重合体(B−1:樹脂固形分50%)630部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン18部、エポキシ硬化触媒としてテトラエチルホスホニウムブロマイド6部、光安定剤(三共社製、商品名:サノールLS−765)12部及びアクリル系表面調整剤(モンサント社製、商品名:モダフロー)1.2部を配合し、攪拌混合した後、更にソルベッソ#150/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=80/20からなる混合溶剤で希釈し、20℃における組成物の粘度がフォードカップ#4で28秒となるように調整し、被覆組成物を調製した。
【0158】
(実施例2〜12、比較例1〜4)
表1の組成物欄に示す配合及び組成とする以外は、実施例1と同様にして被覆組成物を調製した。なお、比較例1はラジカル重合開始剤を用いない例であり、比較例2及び3は本発明に用いる化合物Aの代わりに、酸無水物にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを付加して得られるカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた例であり、比較例4は従来の酸エポキシ系組成物を用いた例である。
【0159】
〈被覆試験板の製造〉
リン酸亜鉛処理された鋼板(70×150×0.8(mm))に、自動車用カチオン電着塗料を塗装して180℃で30分焼き付けた後、さらにアミノアルキッド樹脂系の中塗り塗料を塗装して160℃で30分焼き付けた基板を用いる。実施例1〜12、比較例1〜4で調製した被覆組成物を、前記基板に硬化膜厚が35μmとなるように塗布し、常温で15分間放置した後、140℃の熱風乾燥機で5〜30分間焼き付けた。引き続き、フュージョン社製無電極UV照射システム(Dバルブ)を用い、塗膜上の紫外線照度が400mW/cm2(350nmモニター)の条件下において、積算光量3000mJ/cm2(波長320〜380nmの紫外線積算エネルギー量)の紫外線を照射し、被覆試験板(硬化膜厚35μm)を得た。
【0160】
得られた被覆試験板を用いて、上述の評価に従い、鉛筆硬度、耐酸性、耐溶剤性及び耐擦り傷性を評価し、その結果を表1に示した。
【0161】
【表1】

【0162】
表1中の共重合体Bと他の成分P−1の使用量(部)は、それぞれ固形分量である。
表1中の開始剤Cと他の成分欄における括弧内の数値は、化合物Aと共重合体Bの合計100部に対する使用量(部)を意味する。なお、比較例4については、共重合体BとP−1の合計100部に対する使用量(部)を意味する。
表1中の符号及び略号は、下記の通りである。
A−1〜A−10:それぞれ合成例5〜14で得られた化合物
B−1〜B−3 :それぞれ合成例1〜3で得られたアクリル系共重合体
HCPK :1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
TEPBr :テトラエチルホスホニウムブロマイド
LS765 :三共社製、商品名サノールLS−765(添加剤)
MHPA :メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(新日本理化社製 商品名:リカシッドMH−700)
DPHA :ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製、商品名:カヤラッドDPHA)
P−1 :合成例4で得た共重合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、(メタ)アクリロイルオキシ基及び、少なくとも2個のカルボン酸基が酸無水物を形成する位置にあり、かつ該2個のカルボン酸基が酸無水物基を形成しているか又は一方がエステルとなっている基を有する化合物A、エポキシ基とオキセタン基との少なくとも一方を有するアクリル系共重合体B並びにラジカル重合開始剤Cを含有する被覆組成物。
【請求項2】
化合物Aが、下記一般式(1)で表される酸無水物又は下記一般式(2)で表されるハーフエステル化合物であることを特徴とする請求項1記載の被覆組成物。
【化1】

式(1)中、Rは水素又はメチル基であり、R1は置換基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【化2】

式(2)中、Rは水素又はメチル基であり、R1は置換基であり、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【請求項3】
化合物Aが、下記一般式(3)で表される酸無水物又は下記一般式(4)で表されるハーフエステル化合物であることを特徴とする請求項1記載の被覆組成物。
【化3】

式(3)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【化4】

式(4)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、R6は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【請求項4】
化合物Aが、下記一般式(5)で表される酸無水物又は下記一般式(6)で表されるハーフエステル化合物であることを特徴とする請求項1記載の被覆組成物。
【化5】

式(5)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【化6】

式(6)中、Rは水素又はメチル基であり、R3〜R5は置換基であり、R6は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Yは2価の有機基を示す。また、nは0又は1である。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された被覆組成物が表面に塗布され、硬化された硬化塗膜を有する被覆物品。
【請求項6】
基材上に、ベースコート層及び1層以上のクリアコート層が順次積層されてなり、該クリアコート層の最外層が請求項1〜4のいずれか1項に記載された被覆組成物を硬化した硬化塗膜からなる被覆物品。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の被覆物品からなる自動車用外板。

【公開番号】特開2006−131670(P2006−131670A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319366(P2004−319366)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】