説明

被覆過炭酸ナトリウム粒子、その製造方法、その使用及びそれを含有する洗剤組成物

少なくとも1種の無機被覆材を含む少なくとも1つの被覆層で取り囲まれた過炭酸ナトリウムコアを含有する被覆過炭酸ナトリウム粒子であって、この被覆粒子が、少なくとも3質量%の利用可能酸素含量を有し、かつ20℃で50mlの水に溶かした2gの前記被覆粒子が2分後に0.4mlより多くのガスを発生させる程度に発泡性である、被覆過炭酸ナトリウム粒子。熱処理を含む該被覆過炭酸ナトリウム粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は発泡特性(起沸特性とも呼ばれる)を有する過炭酸ナトリウム粒子に関する。 英国特許GB 1494543に開示されているように、75〜135℃の温度で、温度によって決まる時間、すなわち75℃で2〜6時間及び135℃で5〜30分間加熱することによって、非被覆過炭酸ナトリウム粒子を処理することは知られている。そのようにして得られる製品は、例えば衣服用漂白剤として使用できように改良された溶解速度を示し、かつ起沸性になる。しかし、洗剤組成物中に組み入れると、過炭酸ナトリウムの分解を促進する物質と接触し、その安定性があまりにも乏しくなる。
【0002】
本発明は、水性媒体中の漂白剤として用いたとき、発泡特性ひいては改良された溶解速度を示し、かつゼオライトのようなその安定性に有害な物質を含有する洗剤組成物中に組み入れるために十分に安定な新製品を提供することによってこの欠点を克服することを目的とする。
従って、本発明は、少なくとも1種の無機被覆材を含む少なくとも1つの被覆層で取り囲まれた過炭酸ナトリウムコアを含有する被覆過炭酸ナトリウム粒子に関し、この被覆粒子は、少なくとも3質量%の利用可能酸素含量を有し、かつ20℃で50mlの脱塩水に溶かした2gの該被覆粒子は2分後に0.4mlより多くのガスを発生させる程度に発泡性である。
“発泡特性”は、水に溶かしたとき、例えば目に見える泡の形態でガスを発生させる能力を示すことを意図し、ガスは水から逃げる。このガスは主に酸素でありうる。
本発明の本質的特徴の1つは、コア材内部の過炭酸ナトリウムが、保護被覆層に取り囲まれているにもかかわらず、発泡特性を示すことにある。実に驚くべきことに、外部雰囲気及び他の周囲洗浄剤成分から過炭酸ナトリウムコアを保護する機能を有する保護安定化被覆層の存在は、コア内部の過炭酸ナトリウムの発泡特性に影響しないことが分かった。
【0003】
本発明の発泡性の測定に使用する方法は、2g、又は製品が非常に発泡性の場合は1gの過炭酸ナトリウム粒子を20℃で2分間撹拌せずに50mlの脱塩水に溶かすことにある。この2分間で発生したガスの量は、連結した目盛付き管内で水と置換して測定する。
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、一般的に、2g、又は製品が非常に発泡性の場合は1gを溶かしたとき、上記方法で少なくとも0.5ml、特に少なくとも0.6ml、通常の値は0.7mlのガスを発生する程度に発泡性を示す。上記方法で少なくとも0.8mlのガス量を発生させる過炭酸ナトリウム粒子が良い結果を与え、少なくとも0.9mlの量を発生させる過炭酸ナトリウム粒子は特に良好であり、少なくとも1.0mlのガスを発生させる過炭酸ナトリウム粒子が特に好ましい。ガス量は、通常10mlを超えず、特に8mlを超えず、多くの場合5mlを超えない。
【0004】
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、通常少なくとも5質量%、特に少なくとも7.5質量%の利用可能酸素含量を示し、少なくとも10質量%の含量は良好であり、できれば少なくとも11質量%である。利用可能酸素の含量は、一般的に多くとも14質量%、特に多くとも13質量%である。利用可能酸素の含量は、硫酸に溶解後過マンガン酸カリウムで滴定して測定する(ISO規格1917-1982参照)。
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子の被覆層中に存在する無機被覆材は、鉱酸又は他の無機酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(特にナトリウム又はマグネシウム)塩、特に硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及び/又はポリリン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩及び対応するホウ酸から選択される1種以上の材料を含有しうる。被覆材の特定の組合せとして、炭酸塩/硫酸塩、ホウ酸又はホウ酸塩と硫酸及びa)硫酸塩、炭酸塩、炭酸塩/硫酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸/硫酸塩、又はホウ酸塩/硫酸塩とb)ケイ酸塩の組合せが挙げられる。好ましくは、無機被覆材は、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム又はそれら混合物の1種を含有する。
【0005】
本発明の過炭酸ナトリウム粒子中に存在する被覆層は、一般に被覆過炭酸ナトリウム粒子の0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%を示し、1〜5質量%の値が良い結果を与える。
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、通常少なくとも0.5分、特に少なくとも0.9分の90%溶解時間を有する。一般に、90%溶解は多くとも3分、特に多くも2.5分である。90%溶解時間とは、15℃かつ2g/l濃度で水に被覆過炭酸ナトリウム粒子を添加後、伝導度の最終値の90%を達成するのにかかる時間である。使用する方法は、工業用過ホウ酸塩のISO 3123-1976から適合させ、相違はスターラー高さがビーカー底から1mmで、2リットルのビーカー(内径120mm)であることだけである。
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、一般に少なくとも400μm、特に好ましくは500μmの平均径を有する。平均径は、通常多くとも1200μm、特に多くとも900μmである。
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、通常少なくとも0.8g/cm3、特に0.9g/cm3のかさ密度を有する。かさ密度は、一般に多くとも1.2g/cm3、特に多くとも1.1g/cm3である。かさ密度は、レシーバー直上50mmに置いたロート(上部内径108mm、下部内径40mm、高さ130mm)から試料を流した後、内部高さと直径が86、1mmのステンレススチールシリンダー内の試料の質量を記録することによって測定する。
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、通常、多くとも10%、特に多くとも8%、特に多くとも4%のISO規格法5937-1980に準拠して測定される摩擦を有する、摩擦は、多くの場合少なくとも0.05%である。
【0006】
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、通常、40℃での微小熱量測定法を用いて測定される多くとも12μW/g、特に多くとも4μW/gの熱安定性を有する。多くとも3μW/gの値が良い結果を与える。熱安定性は、多くの場合0.1μW/gである。熱安定性の測定は、LKB 2277 Bio Activity Monitorを用いて熱流又は熱漏れの原則を利用することから成る。被覆過炭酸ナトリウム粒子を含有するアンプルと温度調節した水浴との間の熱の流れを測定し、既知反応熱の基準材料と比較する。
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、一般に相対湿度80%かつ32℃で行った試験で24時間後に測定した場合、1〜50g/1000gの試料で変化する吸湿量を示す。吸湿量は、特に5〜30g/1000gの試料、好ましくは10〜15g/1000gの試料である。吸湿量は、SOLVAY INTEROXの国際出願WO 97/35951の7ページ25行目〜8ページ6行目に記載の試験によって測定され、この出願内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0007】
本発明の被覆過炭酸ナトリウム粒子は、過炭酸ナトリウムコア粒子を調製する第1工程、このコア粒子を被覆材で被覆する少なくとも1つの次工程、及び第1工程と次工程の間、又は次工程中、又は次工程の後の熱処理であって、粒子を最終温度Tまで加熱し、この最終温度Tで時間tの間粒子を維持することによって行い、T(℃で表す)とt(分で表す)が下記式
T≧0.000567t2−0.24t+114.490(Tが110℃までの場合)、及び
T≧-2t+150(Tが110℃を超える場合)
に対応する熱処理を含む方法で得ることができる。
従って、本発明は、上記被覆過炭酸ナトリウム粒子の製造方法であって、過炭酸ナトリウムコア粒子を調製する第1工程、このコア粒子を被覆材で被覆する少なくとも1つの次工程、及び第1工程と次工程の間、又は次工程中、又は次工程の後の熱処理であって、粒子を最終温度Tまで加熱し、この最終温度Tで時間tの間粒子を維持することによって行い、T(℃で表す)とt(分で表す)が下記式
T≧0.000567t2−0.24t+114.490(Tが110℃までの場合)、及び
T≧-2t+150(Tが110℃を超える場合)
に対応する熱処理を含む方法にも関する。
【0008】
本発明の方法の第1工程は、過炭酸ナトリウムコア粒子のいずれの既知方法でもよい。例えばSOLVAY INTEROXの国際出願WO 97/35951に記載されてい一法のような液体結晶化法でよく、場合によって通常の乾燥工程が続く。流動床造粒法でもよい。第1工程は、過酸化水素溶液を炭酸ナトリウム溶液と反応させることによって行うことができる。代わりに、過酸化水素と固体炭酸ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムとの反応による直接法でもよい。
乾燥工程が続く液体結晶化法の場合、又は流動床造粒法の場合、本発明の方法の第1工程で得られる過炭酸ナトリウムコア粒子は、一般的に1.5質量%未満、特に1質量%未満の水を含有し、最も好ましくは多くとも0.8質量%の含水量の乾燥粒子である。乾燥工程のない液体結晶化法の場合、本発明の方法の第1工程で得られる過炭酸ナトリウムコア粒子は、普通1質量%を超える水を含有する湿潤粒子であり、含水量は一般的に15質量%までである。
【0009】
本発明の方法の次の被覆工程は、被覆材の溶液又は被覆材のスラリー又は粉末状態の被覆材に過炭酸ナトリウムコア粒子を接触させるようないずれの既知の被覆法によっても行うことができる。この目的のため、いずれのタイプの混合法又は流動床反応器も使用することができる。
本発明の方法の熱処理は、過炭酸ナトリウム粒子に発泡特性を与えると考えられる工程である。この工程は、被覆工程の前(すなわち第1工程と次工程の間)、被覆工程中又は被覆工程後に行うことができる。被覆工程後に行うことが好ましい。熱処理を別個のプロセス工程で行う場合、流動床反応器、乾燥器又は循環空気乾燥器のようないずれの反応器内でも行うことができる。過炭酸ナトリウム粒子が熱空気の上昇流によって流動化される流動床反応器が好ましい。
本発明の方法の熱処理は、最終温度Tまで過炭酸ナトリウム粒子を加熱し、かつこの最終温度Tで時間tの間粒子を維持することにある。Tとtは、上記式に対応する。Tは、通常80〜140℃、特に90〜130℃であり、100〜120℃の範囲の温度が特に良好である。時間tは、普通5分〜4時間、特に5分〜1.5時間であり、5分〜60分の範囲の時間が有利である。
熱処理はいずれの圧力で行ってもよい。大気圧に等しいかその近傍の圧力が好ましい。
本発明の方法の熱処理は、有利にはその後に冷却工程が続く。これは、流動床内で冷却空気によって、冷却プレートに接触させて、薄層内の空気で冷却することによって、或いは冷却したスクリューコンベヤー内で行うことができる。好ましくは70℃未満、特に30℃未満の温度に過炭酸ナトリウム粒子を冷却する。
【0010】
本発明の過炭酸ナトリウム粒子は、洗剤組成物中の活性漂白成分として有利に使用することができる。
従って、本発明は、上記過炭酸ナトリウム粒子の、洗剤組成物中の活性漂白成分としての使用にも関する。
本発明は、活性漂白成分として上記過炭酸ナトリウム粒子を含有する洗剤組成物にも関する。洗剤組成物は、ビルダー、ゼオライト又は非ゼオライトを含んでもよい。洗剤組成物は、界面活性剤、抗-再析及び汚れ懸濁剤、漂白活性剤、蛍光増白剤、汚れ放出剤、泡調節剤、酵素、布柔軟剤、香料、着色剤及び加工助剤のような他の成分を含んでもよい。 洗剤組成物は、粉末、錠剤、液体などのようないずれの形態をも取りうる。
【0011】
実施例
一定空気を供給する流動床内、種々の温度で、利用可能酸素の初期含量が13.96質量%のSOLVAYの市販被覆過炭酸ナトリウム粒子を熱処理した。下表に熱処理の時間と温度を示す。1試験で500gの被覆過炭酸ナトリウム粒子を使用した。このようにして処理した粒子を周囲温度に冷ました。そのようにして得た粒子を上記方法に従って利用可能酸素の最終含量とその発泡を測定するため1g溶かして分析した。結果を下表に示す。
【0012】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の無機被覆材を含む少なくとも1つの被覆層で取り囲まれた過炭酸ナトリウムコアを含有する被覆過炭酸ナトリウム粒子であって、この被覆粒子が、少なくとも3質量%の利用可能酸素含量を有し、かつ20℃で50mlの水に溶かした2gの前記被覆粒子が2分後に0.4mlより多くのガスを発生させる程度に発泡性である、被覆過炭酸ナトリウム粒子。
【請求項2】
20℃で50mlの水に溶かした2gの前記被覆粒子が2分後に少なくとも1mlのガスを発生させる程度に発泡性である、請求項1に記載の被覆過炭酸ナトリウム粒子。
【請求項3】
20℃で50mlの水に溶かした1gの前記被覆粒子が2分後に少なくとも0.4mlのガスを発生させる程度に発泡性である、請求項1又は2に記載の被覆過炭酸ナトリウム粒子。
【請求項4】
少なくとも10質量%の利用可能酸素含量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆過炭酸ナトリウム粒子。
【請求項5】
前記無機被覆材が、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及びそれらの混合物から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆過炭酸ナトリウム粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆過炭酸ナトリウム粒子の製造方法であって、前記過炭酸ナトリウムコア粒子を調製する第1工程、このコア粒子を被覆材で被覆する少なくとも1つの次工程、及び前記第1工程と前記次工程の間、又は前記次工程中、又は前記次工程の後に行う熱処理を含み、この熱処理が、前記粒子を最終温度Tまで加熱し、この最終温度Tで時間tの間、前記粒子を維持することによって行い、T(℃で表す)とt(分で表す)は下記式
T≧0.000567t2−0.24t+114.490(Tが110℃までの場合)、及び
T≧-2t+150(Tが110℃を超える場合)
に対応する方法。
【請求項7】
前記熱処理の前記最終温度Tが80〜140℃の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理の前記時間tが5分〜4時間の範囲である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱処理を流動床反応器内で行い、前記粒子を熱空気の上昇流によって流動化する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆過炭酸ナトリウム粒子の、洗剤組成物中の活性漂白成分としての使用。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆過炭酸ナトリウム粒子を活性漂白成分として含有する洗剤組成物。

【公表番号】特表2006−512269(P2006−512269A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563193(P2004−563193)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014815
【国際公開番号】WO2004/058640
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ (252)
【Fターム(参考)】