説明

被覆部材付電線束及び被覆部材付電線束の製造方法

【課題】電線束を、ホットプレスされた不織布で覆う場合に、耐摩耗性の均一化を図ることを目的とする。
【解決手段】電線束12と、電線束12を覆う不織材料によって形成された被覆部材20とを備える。被覆部材20の内周面はホットプレス加工された内周側加工面22に形成されると共に、電線束12の外周りに接している。好ましくは、被覆部材20の外周面がホットプレス加工された外周側加工面に形成されている。さらに、好ましくは、被覆部材20の外周面が非円形状に形成され、被覆部材20の内周面がその外周形状に応じた非円形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネス等の電線束を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フラット回路体の外周囲にプロテクタを形成する技術が開示されている。プロテクタは、フラット回路体を、熱可塑性フェルト又は発泡剤を含有する不織布の熱可塑性材料からなる2枚の被覆体で挟み、これをプレス成形して、2枚の被覆体をフラット回路体に密着させると共に2枚の被覆体が接する箇所を溶着することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−197038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不織布は、フラット回路体だけではなく、様々な形状に束ねられた電線束を覆うことができる。不織布が電線束を覆う場合、不織布は電線束の外周形状に応じた形状に圧縮変形する。この状態で、不織布を加熱及びプレス成形すると、成形後の不織布の厚みが不均一となってしまう。これにより、耐摩耗性も不均一となってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、電線束を不織布で覆ってホットプレスする場合に、耐摩耗性の均一化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る被覆部材付電線束は、電線束と、前記電線束を覆う不織材料によって形成され、内周面がホットプレス加工された内周側加工面に形成されると共に、前記内周側加工面が前記電線束の外周りに接している被覆部材とを備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係る被覆部材付電線束であって、前記被覆部材の外周面がホットプレス加工された外周側加工面に形成されている。
【0008】
第3の態様は、第2の態様に係る被覆部材付電線束であって、前記被覆部材の外周形状が非円形状を呈するように、前記被覆部材の外周面がホットプレス加工されている。
【0009】
第4の態様は、第3の態様に係る被覆部材付電線束であって、前記被覆部材の内周形状が、前記被覆部材の外周形状が呈する非円形状に応じた形状に形成されている。
【0010】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る被覆部材付電線束であって、前記被覆部材は、少なくとも一端側部分の一方面がホットプレス加工により硬化加工面に形成されたシート状の不織材料が、前記硬化加工面を内周側にして前記電線束に巻付けられることによって形成されている。
【0011】
上記課題を解決するため、第6の態様に係る被覆部材付電線束の製造方法は、(a)シート状に形成された不織材料のうち、少なくとも一端側部分の一方面をホットプレス加工により硬化加工面に形成する工程と、(b)前記硬化加工面を内周側にして前記電線束の外周りに接触させるようにしつつ、前記不織材料を前記電線束に巻付けて被覆部材を形成する工程とを備える。
【0012】
第7の態様は、第6の態様に係る被覆部材付電線束の製造方法であって、(c)前記被覆部材の外周面をホットプレス加工する工程をさらに備える。
【0013】
第8の態様は、第7の態様に係る被覆部材付電線束の製造方法であって、前記工程(c)において、前記被覆部材の外周形状が非円形状を呈するように、前記被覆部材の外周面をホットプレス加工する。
【0014】
第9の態様は、第8の態様に係る被覆部材付電線束の製造方法であって、前記工程(a)において、前記被覆部材の一端側部分の内周形状が非円形状を呈するように、前記不織材料の一端側部分を非円形筒状に加工し、前記工程(c)において、前記被覆部材の外周形状が前記被覆部材の一端側部分の非円形筒状に応じた形状を呈するように、前記被覆部材の外周面をホットプレス加工する。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、被覆部材の内周面がホットプレス加工された内周側加工面に形成されると共に、前記内周側加工面が前記電線束の外周りに接しているため、被覆部材の厚みをなるべく均一にすることができ、耐摩耗性の均一化を図ることができる。
【0016】
第2の態様によると、前記被覆部材の外周面がホットプレス加工された外周側加工面に形成されているため、被覆部材が電線束を覆った所定形状を維持でき、かつ、電線束を十分に保護できる。
【0017】
第3の態様によると、被覆部材の外周形状が非円形状を呈することで、被覆部材付電線束を配設対象箇所に応じた形状に形成して、スペース効率よく配設することができる。
【0018】
第4の態様によると、前記被覆部材の内周形状が、前記被覆部材の外周形状が呈する非円形状に応じた形状に形成されているため、被覆部材の厚みをより均一化できる。
【0019】
第5の態様によると、内周面がホットプレス加工された被覆部材を容易に形成できる。
【0020】
第6の態様に係る被覆部材付電線束の製造方法によると、シート状に形成された不織材料のうち、少なくとも一端側部分の一方面をホットプレス加工により硬化加工面に形成し、前記硬化加工面を内周側にして前記電線束の外周りに接触させるようにしつつ、前記不織材料を前記電線束に巻付けて被覆部材を形成しているため、被覆部材の厚みを均一にすることができ、耐摩耗性の均一化を図ることができる。
【0021】
第7の態様によると、前記被覆部材の外周面もホットプレス加工されているため、被覆部材が電線束を覆った状態を維持でき、かつ、電線束を十分に保護できる。
【0022】
第8の態様によると、被覆部材の外周形状が非円形状を呈することで、被覆部材付電線束を配設対象箇所に応じた形状に形成して、スペース効率よく配設することができる。また、この場合に、被覆部材の厚みを均一にして、耐摩耗性の均一化を図ることができる。
【0023】
第9の態様によると、前記被覆部材の外周形状を、前記被覆部材の一端側部分の非円形筒状に応じた形状に形成するため、被覆部材の厚みをより均一化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る被覆部材付電線束を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】比較例を示す図である。
【図4】被覆部材付電線束の配設例を示す図である。
【図5】変形例に係る被覆部材付電線束を示す断面図である。
【図6】変形例に対する比較例を示す図である。
【図7】他の変形例に係る被覆部材付電線束を示す断面図である。
【図8】被覆部材付電線束の製造工程を示す図である。
【図9】被覆部材付電線束の製造工程を示す図である。
【図10】被覆部材付電線束の製造工程を示す図である。
【図11】被覆部材付電線束の製造工程を示す図である。
【図12】被覆部材付電線束の製造工程を示す図である。
【図13】被覆部材付電線束の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係る被覆部材付電線束及び被覆部材付電線束の製造方法について説明する。
【0026】
<被覆部材付電線束>
まず、被覆部材付電線束について説明する。図1は被覆部材付電線束10を示す斜視図であり、図2は図1のII−II線断面図である。
【0027】
被覆部材付電線束10は、電線束12と、被覆部材20とを備えている。
【0028】
電線束12は、複数の電線14が束ねられた構成とされている。電線14は、車両等において各種電気機器間を電気的に相互接続する配線材である。かかる複数の電線14が車両等における布線経路、接続位置等に応じた態様で結束されることで、ワイヤーハーネスが製造される。電線束12としては、このようなワイヤーハーネスが想定される。なお、電線束12のうち被覆部材20で覆われる部分は、電線束12が被覆部材20の内周面形状に沿った形状に変形できるように、各電線14が強い力で拘束されていないことが好ましい。
【0029】
被覆部材20は、電線束12を覆う不織材料によって形成されている。不織材料としては、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能な不織材料を用いることができる。ここで、ホットプレス加工とは、不織材料に対して加熱処理及び不織材料を型に押付けて所定形状に形成する処理を施すことをいう。加熱処理と所定形状への形成処理とは、同時に行われてもよいし、或は、連続的に別々に行われてもよい。かかる不織材料及びホットプレス加工の一例については後にさらに詳述する。
【0030】
被覆部材20の内周面はホットプレス加工された内周側加工面22に形成されると共に、その内周側加工面22が電線束12の外周りに接している。つまり、被覆部材20の内周側加工面22は、ホットプレス加工により一定形状を維持できる硬い面に形成されている。従って、内周側加工面22が電線束12の外周りに押付けられた状態で、平坦な形状が維持されている。ここで、内周側加工面22が電線束12の外周りに接しているとは、当該加工面22が電線束12の外周り全体から(例えば、少なくとも3方から)接している状態をいう。例えば、内周側加工面22が多角柱の外周側面形状を呈している場合には、その各側面が電線束12に接していればよい。また、内周側加工面22が円柱の外周側面形状を呈している場合には、その円形断面が電線束12を包含することができる最小円であればよい。
【0031】
また、被覆部材20の外周面は、ホットプレス加工された外周側加工面26に形成されている。これにより、被覆部材20が電線束12を覆った状態が維持されると共に、被覆部材20の外周面形状が一定形状に維持されている。
【0032】
ここでは、被覆部材20の外周形状は、三角柱の外周側面形状を呈するように形成されている。また、被覆部材20の内周形状は、被覆部材20の外周形状が呈する三角柱の外周側面形状に応じた形状に形成されている。より具体的には、被覆部材20の内周形状は、被覆部材20の外周形状が呈する三角柱よりも一回り分(被覆部材20の被覆厚み分)小さい三角柱の外周側面形状に形成されている。これにより、被覆部材20が電線束12の外周りで、より確実に一定の厚み寸法となるように仕上げられている。
【0033】
上記のような被覆部材20は、シート状の不織材料のうち少なくとも一端側部分の一方面をホットプレス加工によって硬化加工面に仕上げておき、当該硬化加工面を内周側にして前記不織材料を電線束12に巻付けることによって形成した構成とすることができる。これにより、硬化された内周側加工面22を有する被覆部材20を容易に製造することができる。この製造方法の具体例については、後で詳述する。
【0034】
なお、上記被覆部材20は、電線束12が他の部分と接触することを抑制して当該電線束12を保護する役割も有している。また、被覆部材20のうちホットプレス加工された部分が一定形状を維持することで、電線束12の経路を規制する役割も有している。
【0035】
このように構成された被覆部材付電線束10によると、被覆部材20の内周面がホットプレス加工された内周側加工面22に形成され、前記内周側加工面22が電線束12の外周りに接しているため、被覆部材20の厚み寸法をなるべく均一にすることができ、また、密度もなるべく均一化される。これにより、耐摩耗性の均一化を図ることができる。
【0036】
これを図3の比較例を参照して説明する。すなわち、この比較例では、被覆部材120の内周面をホットプレス加工していない。このため、被覆部材120が電線束112を覆った状態で、被覆部材120の内周面形状は、当該電線束112の外周りの凹凸形状に応じた凹凸形状を呈している。このため、被覆部材120の厚み寸法が大きい部分(例えば、寸法H1の部分参照)と、厚み寸法が小さい部分(例えば、寸法H2の部分参照)とが存在する。しかも、厚み寸法が小さい部分では、不織材料が電線束112を覆う際に、電線束112の外周りの凸部分から側方に押退けられていると考えられるため、厚み寸法が小さい分を補える程の高密度になっているわけではないと考えられる。このため、被覆部材120の厚み寸法の不均一性に応じてその耐摩耗性も不均一となってしまう。
【0037】
これに対して、本被覆部材付電線束10によると、電線束12の外周りの凹凸形状に拘らず、被覆部材20の内周形状は一定形状を維持している。このため、被覆部材20の厚み寸法をなるべく均一にすることができ、もって、その耐摩耗性も均一化することができる。
【0038】
また、被覆部材20の外周面がホットプレス加工された外周側加工面26に形成されているため、被覆部材20が電線束12を覆った状態を維持でき、かつ、電線束12を十分に保護できる。
【0039】
しかも、被覆部材20の外周形状が三角柱の外周側面形状を呈しているため、被覆部材付電線束10を配設対象箇所に応じた形状に形成して、スペース効率よく配設することができる。
【0040】
すなわち、図4に示すように、車体において底板50と側壁51とで囲まれるスペースが存在し、そのスペースのコーナー部分に角柱状の部分52(例えば、補強用の部分)が設けられていたとする。この場合、角柱状の部分52と底板50との間、或は、角柱状の部分52と側壁51との間には、略直交する面で囲まれるスペースが存在する。このスペースに断面円形状の被覆部材付電線束60を配設したとすると、被覆部材付電線束60周りにデッドスペースが発生してしまう。この上に、フロアカーペット54を敷くと、被覆部材付電線束60分突出した状態となってしまう(図4において角柱状の部分52の上側参照)。これに対して、略直交する面で囲まれるスペースに対して断面三角形状の被覆部材付電線束10を配設した場合、上記の場合よりも被覆部材付電線束10の周りにデッドスペースが発生し難い。このため、この上のフロアカーペット54を敷いた場合に、被覆部材付電線束10による突出分を小さく、目立たなくすることができる。なお、図4では、略直交する面で囲まれるスペースに被覆部材付電線束10をスペース効率よく配設するため、被覆部材付電線束10の断面形状が直角三角形である例を示している。もっとも、被覆部材付電線束10の断面形状が三角形状であれば、断面円形状の被覆部材付電線束60と比べて、スペース効率よく配設することができる。
【0041】
また、被覆部材20の内周形状が、被覆部材20の外周形状が呈する三角柱の外周側面形状に応じた形状に形成されているため、被覆部材20の厚みをより均一化できる。
【0042】
なお、図5に示す被覆部材付電線束10Bのように、被覆部材20Bの内周形状及び外周形状が、ホットプレス加工によって扁平な四角柱状の外周側面形状に形成されていてもよい。
【0043】
この場合でも、図6に示す比較例と比較して、被覆部材20Bの厚み寸法をより均一化して、耐摩耗性の均一化を図ることができる。すなわち、図6に示す比較例では、図3に示す比較例と同様に、電線束112Bの外周の凹凸形状に応じて、被覆部材120Bの厚み寸法が変化し、耐摩耗性が不均一となる。これに対して、図5に示す例では、上記実施形態と同様の理由により、被覆部材20Bの耐摩耗性の均一化を図ることができる。図5に示す例は、配設箇所のスペースが扁平な方形状の断面を有する形状である場合に、スペース効率よく配設できる形態である。
【0044】
このように、被覆部材付電線束10、10Bの被覆部材20、20Bの外周形状を、配設箇所のスペースの形状に応じた形状にすることで、当該被覆部材付電線束10、10Bをスペース効率よく配設することができる。
【0045】
特に、複数の電線を単に束ねると、円形状を呈する電線束になる傾向となることから、当該電線束を覆う被覆部材を非円形状(例えば、多角柱状、或は、扁平形状)に形成しようとすると、その形状の差に起因して、被覆部材の厚みが不均一となりやすい。そこで、上記被覆部材付電線束10、10Bのように、被覆部材20、20Bの外周形状を非円形状に形成した場合に、被覆部材20の内周形状を被覆部材20、20Bの外周形状に応じた当該非円形状(相似形でかつ一回り小さい(保護に必要な厚み分小さい)形状)に形成することで、被覆部材の厚みを効果的に均一化することができる。
【0046】
もっとも、図7に示す被覆部材付電線束10Cのように、被覆部材20Cの内周形状及び外周形状が、ホットプレス加工によって円柱状の外周側面形状に形成されていてもよい。この場合でも、被覆部材20Cの厚み寸法をより均一化して、耐摩耗性の均一化を図ることができるという点では、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
<被覆部材付電線束の製造方法>
被覆部材付電線束10の製造方法について説明する。
【0048】
まず、図8〜図10に示すように、シート状の不織材料200のうち一端側部分200aをホットプレス加工する。
【0049】
すなわち、図8及び図9に示すように、シート状(ここでは、方形シート状)の不織材料200の一端側部分200aを加熱及び型210で加圧して、当該一端側部分200aの両面を硬化させた硬化加工面202aに形成する。
【0050】
ここで、不織材料200として、上記したように、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能な不織材料を用いることができる。このような不織材料として、基本繊維と、これと絡み合う接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。不織材料を基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱すると、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染みこむ。その後、不織材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織材料が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持される。
【0051】
ただし、基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得る繊維であればよく、樹脂繊維の他、ガラス繊維等の各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。また、芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0052】
基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織材料を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、不織材料は硬くなって加熱時の成形形状を維持する。また、この際、不織材料同士が重ね合されていると、前記接着樹脂が不織材料同士を接合する。
【0053】
かかる不織材料200の一端部は、ヒーター等の加熱機構211が組込まれた上下の型210の対向面間で挟まされる。これにより、不織材料200の一端部が加熱圧縮され、当該部分において接着樹脂が溶融する。もっとも、不織材料200の一方面だけが加熱されていてもよい。
【0054】
そして、この加熱後、図10に示すように、接着樹脂が完全に硬化する前の段階で、不織材料200の一端部が、棒状部材220に巻付けられる。棒状部材220は、ここでは、非円形棒状部材(より具体的には、三角棒状部材)であり、金属等で形成されている。不織材料200の一端部が棒状部材220に巻付けられた状態で接着樹脂が冷却硬化することで、不織材料200の一端側部分200aの外周形状が当該棒状部材220の外周形状に応じた形状(ここでは、非円形状、より具体的には、三角形)を呈するように、当該一端側部分200aが筒状に加工される。なお、不織材料200の一端側部分200aが冷却固化した後、棒状部材220は不織材料200から抜かれる。なお、図10〜図12では厚みはほとんど無いものとして不織材料200は簡略化して表されている。
【0055】
次に、図11及び図12に示すように、いずれかの硬化加工面202aを内周側にして電線束12の外周りに接触させるようにしつつ、不織材料200を電線束12に巻付けて被覆部材20を形成する。
【0056】
すなわち、まず、図11に示すように、不織材料200のうち筒状に形成した部分内に電線束12を配設する。この作業は、当該筒状部分内に電線束12を挿入して行ってもよいし、或は、一旦筒状部分を直線状に伸し、電線束12に巻付けるようにしてもよい。
【0057】
この後、図12に示すように、不織材料200のうちの残りの他端側部分200bを電線束12のさらに外周に巻付ける。
【0058】
そして、図13に示すように、被覆部材20の外周面をホットプレス加工する。このホットプレス加工は、例えば、次に説明するホットプレス用成形型230を用い行うことができる。
【0059】
すなわち、ホットプレス用成形型230は、下型232と、上型234とを備える。
【0060】
下型232は、熱伝導性に優れた金属等により形成された部材であり、その一主面(上面)に下型面233が形成されている。下型面233は、概略的には、上方および両端部に開口する断面略矩形溝状に形成されている。
【0061】
上型234は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(下面)に突出部235が形成されている。突出部235の先端部にV字状の溝が形成されており、この溝内面が上型面236として機能する。この上型面236が下型面233内に配置されることにより、上型面236と下型面233との間で、断面三角形状の被覆部材20を形成可能な断面三角形状のスペースが形成される。下型面233及び上型面236の形状は、形成対象となる被覆部材の外周形状に応じた形状に形成される。なお、下型232、上型234には、ヒーター等の加熱機構232a、234aが設けられる。
【0062】
そして、上記のように電線束12に巻付けられた不織材料200(被覆部材20)を上記下型面233内に配設する。この後、上型234の突出部235を下型面233内に挿入する。すると、上型面236と下型面233との間で、不織材料200(被覆部材20)が加熱及び加圧される。これにより、不織材料200(被覆部材20)の外周形状が非円形である三角柱状を呈するようにホットプレス加工される。この後冷却されると、被覆部材20の外周が硬化し、所定形状に維持されると共に、不織材料200が層間で接合されて、所定形状が維持される。
【0063】
この製造方法により、内周面がホットプレス加工された内周側加工面に形成された被覆部材20を容易に形成することができる。
【0064】
{変形例}
なお、上記実施形態では、被覆部材20の外周面をホットプレス加工していたが、これは必須ではない。電線束12に巻付けられた不織材料の外周に粘着テープを巻付ける等して、不織材料が電線束12を覆った状態を維持するようにしてもよい。
【0065】
また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0066】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0067】
10、10B、10C 被覆部材付電線束
12 電線束
14 電線
20、20B、20C 被覆部材
22 内周側加工面
26 外周側加工面
200 不織材料
200a (不織材料の)一端側部分
202a 硬化加工面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線束と、
前記電線束を覆う不織材料によって形成され、内周面がホットプレス加工された内周側加工面に形成されると共に、前記内周側加工面が前記電線束の外周りに接している被覆部材と、
を備える被覆部材付電線束。
【請求項2】
請求項1記載の被覆部材付電線束であって、
前記被覆部材の外周面がホットプレス加工された外周側加工面に形成されている、被覆部材付電線束。
【請求項3】
請求項2記載の被覆部材付電線束であって、
前記被覆部材の外周形状が非円形状を呈するように、前記被覆部材の外周面がホットプレス加工されている、被覆部材付電線束。
【請求項4】
請求項3記載の被覆部材付電線束であって、
前記被覆部材の内周形状が、前記被覆部材の外周形状が呈する非円形状に応じた形状に形成されている、被覆部材付電線束。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の被覆部材付電線束であって、
前記被覆部材は、少なくとも一端側部分の一方面がホットプレス加工により硬化加工面に形成されたシート状の不織材料が、前記硬化加工面を内周側にして前記電線束に巻付けられることによって形成されている、被覆部材付電線束。
【請求項6】
(a)シート状に形成された不織材料のうち、少なくとも一端側部分の一方面をホットプレス加工により硬化加工面に形成する工程と、
(b)前記硬化加工面を内周側にして前記電線束の外周りに接触させるようにしつつ、前記不織材料を前記電線束に巻付けて被覆部材を形成する工程と、
を備える被覆部材付電線束の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の被覆部材付電線束の製造方法であって、
(c)前記被覆部材の外周面をホットプレス加工する工程をさらに備える被覆部材付電線束の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の被覆部材付電線束の製造方法であって、
前記工程(c)において、前記被覆部材の外周形状が非円形状を呈するように、前記被覆部材の外周面をホットプレス加工する、被覆部材付電線束の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の被覆部材付電線束の製造方法であって、
前記工程(a)において、前記被覆部材の一端側部分の内周形状が非円形状を呈するように、前記不織材料の一端側部分を非円形筒状に加工し、
前記工程(c)において、前記被覆部材の外周形状が前記被覆部材の一端側部分の非円形筒状に応じた形状を呈するように、前記被覆部材の外周面をホットプレス加工する、被覆部材付電線束の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−252938(P2012−252938A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126104(P2011−126104)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】