説明

被記録媒体カセット、被記録媒体給送装置、記録装置

【課題】光ディスクをセットしたトレイやボード紙等のプレート状体をガイドするガイド手段を、より省スペースで、且つより低コストに構成する。
【解決手段】用紙カセット100は、下段側トレイ50と、この下段側トレイ50の上部において給送可能位置と退避位置との間をスライド変位可能な上段側トレイ60と、を備えた複数段式の用紙カセットである。用紙カセット100には、媒体搬送経路に向けてプレート状の被搬送媒体を案内するガイド手段としてのガイド部材56が設けられている。これによりガイド部材56を配設する為の専用スペースの確保がプリンター本体内部に不要となり、省スペースでガイド部材56を設けることができる。また、用紙をスタックする排紙スタッカをガイド手段として兼用する構成に比して装置構成の複雑化の程度を小さくすることができ、コストアップの程度を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対し着脱可能な被記録媒体カセットに関する。また本発明は、前記被記録媒体カセットを備えた被記録媒体給送装置、およびこれを備えた、ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一例としてのインクジェットプリンターには、光ディスクのラベル面に直接インク滴を吐出することによって記録可能に構成されたものがある。この様なインクジェットプリンターにおいては、一般的に光ディスク等の被記録媒体はプレート形状を成すトレイにセットされ、当該トレイにセットされた状態でインクジェットプリンター内の搬送経路を搬送され、そして記録が実行される。
【0003】
トレイは、インクジェットプリンターの装置前方に設けられたガイド手段(アダプタ)を介して装置内部に給送されるが、このガイド手段には、従来特許文献1、2に示すようなものがあった。
【0004】
例えば、特許文献1に示すものは、記録の行われた用紙がスタックされるスタッカを、ガイド手段として兼用する様に構成されている。また特許文献2に示すものは、ガイド手段が、プリンター本体に回動可能に構成され、回動することにより、使用状態と収納状態とをとり得るようになっている。尚、上記のガイド手段は、光ディスクをセットしたトレイのみならず、ボード紙等の剛性が高く且つ厚みのあるプレート状体へ記録を実行する場合にも用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−130774号公報
【特許文献2】特開2005−144932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示されるように、トレイをガイドするガイド手段として専用のものを用いる構成の場合には、記録装置本体の内部にガイド手段を配設する為の専用スペースの確保が必要となり、装置の大型化を招き易い。また特許文献1に示されるように、記録済みの用紙をスタックするスタッカをトレイのガイド手段として利用する構成の場合には、スタッカは比較的大型の構成要素であることから、用紙をスタックする姿勢とトレイをガイドする姿勢とを切り換える為の構成が大掛かりになり易く、コストアップの程度が比較的大きくなり易い。
【0007】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、光ディスクをセットしたトレイやボード紙等のプレート状体をガイドするガイド手段を、より省スペースに、且つより低コストに構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る被記録媒体カセットは、被記録媒体を搬送する搬送経路に向けてプレート状の被搬送媒体を案内するガイド手段を備えた、被記録媒体に記録を行う記録装置において着脱可能に設けられる、被記録媒体を収容する被記録媒体カセットである。
【0009】
本態様によれば、被記録媒体に記録を行う記録装置において着脱可能に設けられる、被記録媒体を収容する被記録媒体カセットに、被記録媒体を搬送する搬送経路に向けてプレート状の被搬送媒体を案内するガイド手段が設けられていることから、ガイド手段を配設する為の専用スペースの確保が記録装置本体の内部に不要となり、より省スペースでガイド手段を設けることができるとともに、排紙スタッカをガイド手段として利用する構成に比して装置構成の複雑化の程度を小さくすることができ、コストアップの程度を小さくすることができる。
【0010】
尚、本明細書において「被搬送媒体」とは、記録装置における媒体搬送経路を搬送される媒体を意味し、実際に記録が行われるか否かを問わない。また、「被記録媒体」とは記録対象としての媒体を意味する。従って例えば、被記録媒体をセットしたトレイが媒体搬送経路上を搬送される状況において、当該トレイは被搬送媒体ではあるが被記録媒体ではない。また、被搬送媒体としてのトレイにセットされた光ディスクは、被搬送媒体であるし被記録媒体でもある。また、ボード紙等の厚紙も、被搬送媒体であるし被記録媒体でもある。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ガイド手段が、前記被記録媒体カセットから出没可能に設けられたガイド部材により構成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記ガイド手段が、前記被記録媒体カセットから出没可能に設けられたガイド部材により構成されているので、没状態において被記録媒体カセットの上部空間が開放される。これにより例えば、被記録媒体カセットの上部に被記録媒体をスタックするスタッカが設けられる場合や、或いは被記録媒体カセットの上面をスタッカとして利用する構成においてガイド部材が邪魔にならず、有利となる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、被記録媒体を収容する下段側トレイと、当該下段側トレイの上部に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成され、前記ガイド手段が、前記上段側トレイに設けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段式の被記録媒体カセットにおいて、上記第1のまたは第2の態様の作用効果を得ることができる。尚、被記録媒体に記録を行う記録装置において被記録媒体を収容する収容部の呼称としては「カセット」、「トレイ」など種々のものがあるが、本明細書では装置本体に対して着脱可能な一つのユニット体全体を「カセット」と言い、このカセット内に設けられた複数の被記録媒体収容部を「トレイ」と言うこととする。
【0015】
本発明の第4態様は、被記録媒体を給送する被記録媒体給送装置であって、第1から第3の態様のいずれかに係る被記録媒体カセットを備えていることを特徴とする。本態様によれば、被記録媒体給送装置において上述した第1から第3の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、第2の態様に係る被記録媒体カセットと、前記ガイド部材を出没動作させる駆動機構と、前記駆動機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記プレート状の被搬送媒体、又は前記プレート状の被搬送媒体にセットされた被記録媒体への記録を実行するモードが選択された際、没状態にある前記ガイド部材を進出させることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、ガイド手段を構成する、出没可能なガイド部材は、駆動機構によって出没可能に設けられており、当該ガイド部材を利用して搬送する被記録媒体への記録を実行するモードが選択された際に、進出状態となる様構成されているので、ユーザーが自らガイド部材の出没操作を行う必要がなく、ユーザビリティの向上を図ることができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記被記録媒体カセットは、被記録媒体を収容する下段側トレイと、当該下段側トレイの上部に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成され、前記上段側トレイは、トレイ駆動手段によって当該上段側トレイから被記録媒体を給送可能な給送可能位置と、前記下段側トレイから被記録媒体を給送する際の退避位置と、の間を変位可能に設けられ、前記ガイド部材は、前記上段側トレイが前記退避位置にあるときに出没可能に設けられており、前記制御部は、前記プレート状の被搬送媒体、又は前記プレート状の被搬送媒体にセットされた被記録媒体への記録を実行するモードが選択された際、前記上段側トレイが前記給送可能位置にある場合には当該上段側トレイを前記退避位置に変位させることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、下段側トレイと、当該下段側トレイに対して給送可能位置と退避位置との間を変位可能な上段側トレイと、を備えて構成された被記録媒体カセットにおいて、前記制御部は、前記プレート状の被搬送媒体、又は前記プレート状の被搬送媒体にセットされた被記録媒体への記録を実行するモードが選択された際、ガイド部材が出没可能な状態となるよう、前記上段側トレイを給送可能位置から退避位置に変位させるので、ユーザーが自ら上段側トレイを操作する必要がなく、ユーザビリティの向上を図ることができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第5のまたは第6の態様において、前記制御部は、前記被記録媒体カセットから被記録媒体を給送して記録を行う記録モードにおいては、前記ガイド部材を没状態に維持することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、ガイド部材の出没動作を制御する制御部は、前記被記録媒体カセットから被記録媒体を給送して記録を行う記録モードにおいては、前記ガイド部材を没状態に維持するので、被記録媒体の排出経路上にガイド部材が進出することがなく、被記録媒体を適切に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る用紙カセット及び記録装置の一部構成要素の斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る用紙カセット及び記録装置の一部構成要素の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1乃至図4参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。図1及び図2は本発明に係る「記録装置」の一実施形態であるインクジェットプリンター(以下「プリンター」と言う)1の用紙搬送経路を示す側断面図であり、図1は用紙カセット100の前方側を、図2は同後方側を示している。但し、図1は上段側トレイ60が給送可能位置にある状態を、図2は同待避位置にある状態を、それぞれ示しており(詳細は後述)、図1の状態では上段側トレイ60の後端は、図2に示すより装置前方側に位置している。また図2の状態では上段側トレイ60の先端は、図1に示すより装置後方側に位置している。
【0024】
また、図3及び図4は本発明に係る「被記録媒体カセット」の一実施形態である用紙カセット100およびプリンター1の一部構成要素の斜視図である。尚、図1及び図2において右方向は用紙送り出し方向、図面表裏方向が用紙幅方向を示している。
【0025】
以下、図1を参照しつつプリンター1の全体構成について概説する。プリンター1は、装置底部に給送装置2を備え、当該給送装置2から、「被記録媒体」の一例としての用紙(主として単票紙)を1枚ずつ給送し、記録手段4において記録(インクジェット記録)を行い、装置前方側(図1において左側)に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出される基本構成を備えている。
【0026】
以下、用紙搬送経路上の構成要素について更に詳説する。
給送装置2は、用紙カセット100と、ピックアップローラー16と、ガイドローラー20と、分離手段21と、を備えている。
【0027】
複数枚の用紙Pを積層状態でセット可能な用紙カセット100は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能であり、下部に位置して用紙カセット100の基体を構成する下段側トレイ50と、その上部に位置する、給送可能位置と退避領域との間をスライド可能な上段側トレイ60と、の2つの用紙収容部を備えている。
【0028】
尚、図1及び図2においては、下段側トレイ50に収容される用紙を符号P1で、上段側トレイ60に収容される用紙を符号P2で、それぞれ示している(以下特に区別する必要がない場合は「用紙P」と言う)。
【0029】
図示しないモーターによって回転駆動されるピックアップローラー16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられており、上段側トレイ60が最も装置後方側(図1において左方向:用紙カセット100の引き抜き方向側)にスライドした状態、即ち上段側トレイ60が退避領域にあるときは、下段側トレイ50に収容された用紙P1の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P1を下段側トレイ50から送り出す。
【0030】
また上段側トレイ60が最も装置前方側(図1において右方向:用紙カセット100の装着方向側)にスライドした突き当て位置にあるとき、即ち上段側トレイ60の給送可能位置では、上段側トレイ60に収容された用紙P2の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P2を上段側トレイ60から送り出す。
【0031】
この上段側トレイ60が給送可能位置に位置決めされた状態(図1の状態)では、下段側トレイ50の分離斜面54が、上段側トレイ60の前方側内壁よりも上段側トレイ60に収容された用紙先端側に突出するように構成されており、これにより分離斜面54が上段側トレイ60から用紙が送り出される際の分離手段として利用されるようになっている。即ち、下段側トレイ50の分離斜面54が、下段側トレイ50と上段側トレイ60の共通の分離手段として利用される様になっている。
【0032】
次に、分離斜面54の下流側には自由回転可能なガイドローラー20が設けられ、このガイドローラー20の下流側には、分離ローラー22と駆動ローラー23とを備えて構成された分離手段21が設けられている。分離ローラー22は、外周面が弾性材によって形成されるとともに駆動ローラー23と圧接可能に設けられ、且つ、トルクリミッタ機構により、所定の回転抵抗が与えられた状態に設けられている。従って重送されようとする次位以降の用紙Pが、当該分離ローラー22と駆動ローラー23との間で止められ、即ち重送が防止される様になっている。尚、駆動ローラー23は図示しないモーターにより用紙Pを下流側へ送る方向に回転駆動される。
【0033】
分離手段21の下流側には、図示しないモーターにより回転駆動される駆動ローラー26と、駆動ローラー26との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー27と、を備えて構成された第1中間送り部25が設けられており、この第1中間送り部25により、用紙Pが更に下流側へと送られる。尚、符号29は、用紙Pが湾曲反転経路を通過する際の(特に用紙後端が通過する際の)通紙負荷を軽減する従動ローラーを示している。
【0034】
従動ローラー29の下流側には図示しないモーターにより回転駆動される駆動ローラー32と、駆動ローラー32との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー33と、を備えて構成された第2中間送り部31が設けられており、この第2中間送り部31により、用紙Pが更に下流側へと送られる。
【0035】
第2中間送り部31の下流側には、記録手段4が配置されている。記録手段4は、搬送手段5と、記録ヘッド42と、下部紙案内39と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、モーターによって回転駆動される搬送駆動ローラー35と、該搬送駆動ローラー35に圧接して従動回転するよう上部紙案内37に軸支される搬送従動ローラー36とを備えて構成されている。搬送手段5に到達した用紙Pは、搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36とによってニップされた状態で搬送駆動ローラー35が回転することにより、下流側へと精密送りされる。
【0036】
続いて記録ヘッド42はキャリッジ40の底部に設けられ、当該キャリッジ40は主走査方向(図1の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、図示しない駆動モーターによって主走査方向に往復動する様に駆動される。尚、キャリッジ40はインクカートリッジを搭載しない所謂オフキャリッジタイプであり、インクカートリッジ(図示せず)がキャリッジ40から独立して設けられ、インク供給チューブ(図示せず)を介してインクカートリッジから記録ヘッド42へとインクが供給されるように構成されている。
【0037】
記録ヘッド42と対向する位置には下部紙案内39が設けられ、当該下部紙案内39によって、用紙Pと記録ヘッド42との距離が規定されるようになっている。そして下部紙案内39の下流側には、記録の行われた用紙Pを排出する排出手段6が設けられている。排出手段6は図示しないモーターによって回転駆動される排出駆動ローラー44と、当該排出駆動ローラー44に接して従動回転する排出従動ローラー45とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【0038】
以上がプリンター1の概要であり、以下、用紙カセット100について図2〜図4をも併せて参照しつつ更に詳説する。
下段側トレイ50は、その底面50aに、用紙送り方向(即ち、用紙長さ方向)にスライド可能なエッジガイド51(図1)を備えており、このエッジガイド51により後端エッジの位置が規制されるようになっている。また、用紙送り方向と直交する方向(即ち、用紙幅方向)にスライド可能なエッジガイド52も設けられており、このエッジガイド52により、用紙P1のサイドエッジの位置が規制されるようになっている。
【0039】
次に、下段側トレイ50の底面50aには、ピックアップローラー16と用紙P1との接触位置に対応する場所に高摩擦材(不図示)が配置されており、この高摩擦材により、ピックアップローラー16による用紙送り出し時に用紙束ごと下流側に送られないよう、当該用紙束が保持される様になっている。
【0040】
一方、上段側トレイ60についても下段側トレイ50と同様に、その底面60aに、用紙長さ方向にスライド可能なエッジガイド61と、用紙幅方向にスライド可能なエッジガイド(不図示)と、を備えている。またピックアップローラー16と用紙P2との接触位置に対応する場所に高摩擦材(不図示)が配置されている。
【0041】
上段側トレイ60には、図示を省略するラックが形成されており、下段側トレイ50には、このラックと噛合するピニオン歯車(不図示)が設けられている。用紙カセット100がプリンター本体に装着された際には、上記ピニオン歯車が、プリンター本体に設けられたモーターにより駆動される歯車(不図示)と噛合する様になっており、以上の様なラック&ピニオン機構により構成されたトレイ駆動手段によって、上段側トレイ60は、給送可能位置(図1)と退避位置(図2)との間を変位する様になっている。
【0042】
続いて、用紙カセット100に設けられた、被搬送媒体ガイドするガイド手段について説明する。図2及び図4において、符号Tは光ディスクDをセット可能なトレイを示しており、光ディスクDはトレイTにセットされた状態でプリンター1の媒体搬送経路に給送されることにより、記録ヘッド42によってラベル面にインクジェット記録が可能となっている。
【0043】
尚、トレイTなどのプレート状体に記録を実行する場合には、図示を省略するレリース手段によって図2に示すように排出従動ローラー45は排出駆動ローラー44から離間し、また記録ヘッド42は図示を省略するギャップ調整手段によって下部紙案内39との間のギャップが大きくなるように構成されている。また、トレイTの先端が搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36との間に入り込むまでは、搬送駆動ローラー35は搬送従動ローラー36から離間した状態となり、その後、当該離間状態が解除され、搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36とによってトレイTがニップされた状態となる様に構成されている。これらの状態変化は、手動で行う様に構成しても良いし、自動で実行される様に構成しても良い。
【0044】
次に、用紙カセット100の後端側(図2において左側)には、上段側トレイ60の後端延長部60bの用紙幅方向両端部に、開口部63が形成されており、この開口部63から、ガイド手段を構成するガイド部材56が白矢印で示す様に上下に出没可能に設けられている。
【0045】
ガイド部材56には、図2に示すようにラック56bが形成されており、このラック56bにピニオン歯車58が噛合している。ピニオン歯車58は、モーター65を駆動源とし、当該モーター65を制御する制御部66によって回転駆動される。即ちガイド部材56は、制御部66によって出没動作が制御される。即ち、ラック56b、ピニオン歯車58、モーター65、のこれらは、ガイド部材56を出没動作させる駆動機構を構成する。
【0046】
ガイド部材56は、用紙カセット100の上部に突出しない様に内部に収容された状態(没状態:図3の状態)から、制御部66の制御のもと、用紙カセット100の上方に進出した状態(図2、図4の状態)になると、上部のガイド面56aが、排出駆動ローラー44の上部ローラー外周面とほぼ同じ高さ位置になる。これにより、図2及び図4に示すように光ディスクDをセットしたトレイTを支持可能となり、当該トレイTを媒体搬送経路に向けて送り込むことが可能となる。
【0047】
尚、ガイド部材56の没状態からの進出動作は、例えば、トレイTにセットされた光ディスクD或いはボード紙等のプレート状体への記録を実行するモードが選択された際に行うことができる。但しこれは一例であり、例えばガイド部材56の進出動作を行う為の制御スイッチを設け、ユーザー操作によってガイド部材56の出没動作を行うように構成しても良い。
【0048】
また、本実施形態ではガイド部材56は上段側トレイ60に形成された開口部63から出没可能となっているので、上段側トレイ60が退避位置にあるときにのみ、ガイド部材56は出没可能となる。従って例えば、トレイTにセットされた光ディスクD或いはボード紙等のプレート状体への記録を実行するモードが選択された際に、上段側トレイ60が退避位置ではなく給送可能位置(図1)にあるときは、上段側トレイ60の位置を制御する制御部66が、上段側トレイ60を給送可能位置から退避位置に移動させ、そしてその後にガイド部材56を進出させる様に構成しても良い。
【0049】
更に、制御部66が、用紙カセット100から用紙を給送して記録を行う記録モードにおいては、ガイド部材56を没状態に維持する様に構成することもできる。この様にすることで、用紙排出経路上にガイド部材56が進出することを防止でき、用紙を適切に排出することができる。
【0050】
以上説明したように、本発明に係る用紙カセット100には、媒体搬送経路に向けてプレート状の被搬送媒体を案内するガイド手段としてのガイド部材56が設けられていることから、ガイド部材56を配設する為の専用スペースの確保がプリンター本体内部に不要となり、省スペースでガイド部材56を設けることができる。また、用紙をスタックする排紙スタッカをガイド手段として兼用する構成に比して装置構成の複雑化の程度を小さくすることができ、コストアップを抑えることができる。
【0051】
また、ガイド部材56は、用紙カセット100内部に収容可能に構成されているので(没状態)、没状態において用紙カセット100の上部空間が開放される。これにより、用紙カセット100の上部にスタッカが設けられる場合や、或いは用紙カセット100の上面をスタッカとして利用する構成においてガイド部材56が邪魔にならず、有利となる。
【0052】
尚、本実施形態では、ガイド部材56は用紙カセットに対して出没可能に設けられているが、用紙カセットに対して着脱可能に構成した上で、ユーザー操作によって装着するように構成しても良い。また、本実施形態ではガイド部材56は下段側トレイ50に対して設けられ、上段側トレイ60に形成された開口部63から出没可能に設けられているが、上段側トレイ60それ自体に対して設けても良い。更に、用紙カセットは複数段式の構成ではなく、一段式構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1 インクジェットプリンター、2 給送装置、4 記録手段、5 搬送手段、6 排出手段、16 ピックアップローラー、17 揺動部材、18 揺動軸、20 従動ローラー、21 分離手段、22 分離ローラー、23 駆動ローラー、25 第1中間送り部、26 駆動ローラー、27 アシストローラー、29 従動ローラー、31 第2中間送り部、32 駆動ローラー、33 アシストローラー、35 搬送駆動ローラー、36 搬送従動ローラー、37 上部紙案内、39 下部紙案内、40 キャリッジ、41 キャリッジガイド軸、42 記録ヘッド、44 排出駆動ローラー、45 排出従動ローラー、50 下段側トレイ、50a 底面、51、52 エッジガイド、54 分離斜面、56 ガイド部材、56a ガイド面、56b ラック部、58 ピニオン歯車、60 上段側トレイ、60a 底面、61 エッジガイド、63 開口部、65 モーター、66 制御部、100 用紙カセット、D 光ディスク、T トレイ、P、P1、P2 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送する搬送経路に向けてプレート状の被搬送媒体を案内するガイド手段を備えた、被記録媒体に記録を行う記録装置において着脱可能に設けられる、被記録媒体を収容する被記録媒体カセット。
【請求項2】
請求項1に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記ガイド手段が、前記被記録媒体カセットから出没可能に設けられたガイド部材により構成されている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の被記録媒体カセットにおいて、被記録媒体を収容する下段側トレイと、当該下段側トレイの上部に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成され、
前記ガイド手段が、前記上段側トレイに設けられている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項4】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の被記録媒体カセットと、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
請求項2に記載の被記録媒体カセットと、
前記ガイド部材を出没動作させる駆動機構と、
前記駆動機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記プレート状の被搬送媒体、又は前記プレート状の被搬送媒体にセットされた被記録媒体への記録を実行するモードが選択された際、没状態にある前記ガイド部材を進出させる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の記録装置において、前記被記録媒体カセットは、被記録媒体を収容する下段側トレイと、当該下段側トレイの上部に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成され、
前記上段側トレイは、トレイ駆動手段によって当該上段側トレイから被記録媒体を給送可能な給送可能位置と、前記下段側トレイから被記録媒体を給送する際の退避位置と、の間を変位可能に設けられ、
前記ガイド部材は、前記上段側トレイが前記退避位置にあるときに出没可能に設けられており、
前記制御部は、前記プレート状の被搬送媒体、又は前記プレート状の被搬送媒体にセットされた被記録媒体への記録を実行するモードが選択された際、前記上段側トレイが前記給送可能位置にある場合には当該上段側トレイを前記退避位置に変位させる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の記録装置において、前記制御部は、前記被記録媒体カセットから被記録媒体を給送して記録を行う記録モードにおいては、前記ガイド部材を没状態に維持する、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−131631(P2012−131631A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287066(P2010−287066)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】