説明

裁断器とこれを備えるシュレッダー

【課題】迅速かつ容易に組み立てることができる裁断器およびこれを備えるシュレッダーを提供すること。
【解決手段】紙を裁断する裁断器であって、前記紙が通過するスペースを挟んで平行に配され、互いに回転可能な第1の軸部および第2の軸部と、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに設けられ、前記第1の軸部および前記第2の軸部の回転に応じて、前記紙を裁断して送り出す刃部と、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに設けられ、互いに噛み合わされたギアと、前記第1の軸部および前記第2の軸部が通されて、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに前記ギアを固定する固定部とを備え、前記固定部に、径方向内方に突出して弾性変形可能な係合部が設けられ、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに、前記係合部に係合される被係合部が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断器とこれを備えるシュレッダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書類などの紙を裁断するものとして、シュレッダーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。シュレッダーの中には、図7に示すように、裁断器100が組み込まれているものがある。
裁断器100は、第1の裁断部101と第2の裁断部102とを備えている。
第1の裁断部101は、六角柱状の第1の軸部101cと、この第1の軸部101cに設けられた複数の刃部101aと、これら刃部101aの間に設けられた複数の円筒状のスペーサ部材101dと、第1の裁断部101の先端側に設けられた第1のギア101bとを備えている。
また、第2の裁断部102も、同様に、第2の軸部102cと、複数の刃部102aと、スペーサ部材102dと、第2のギア102bとを備えている。
そして、板状の先端連結板103と後端連結板104により、第1の裁断部101と第2の裁断部102とが連結されている。
このような構成のもと、第1の裁断部101と第2の裁断部102との間に上方から紙を送り込み、第1の軸部101cを回転させると、第1のギア101bと第2のギア102bとを介して、第1の軸部101cと第2の軸部102cとが互いに反対方向に回転することにより、刃部101aと刃部102aとが、紙を巻き込んで裁断しながら、下方に送り出すようになっている。
【0003】
この裁断器100は、以下のようにして組み立てられる。
まず、図8に示すように、第1の軸部101cに、複数のスペーサ部材101dと刃部101aとを複数交互に通す。なお、これらスペーサ部材101dおよび刃部101aの孔は六角形状に形成されている。そのため、スペーサ部材101dおよび刃部101aは、回転不能な状態で第1の軸部101cが通された状態になる。この状態で、図9に示すように、第1の軸部101cの先端側と後端側に形成されたスリット1011cに、それぞれ止め輪101eを嵌め込む。これにより、スペーサ部材101dと刃部101aとが第1の軸部101cに固定される。
同様にして、第2の裁断部102を組み立てる。なお、符号1022cはスリットを示し、符号102eは止め輪を示している。
それから、図10に示すように、第1の軸部101cおよび第2の軸部102cの先端側にそれぞれリング部材101f,102fを嵌める。リング部材101f,102fは、外周面は円状に形成され、内周面は六角形状に形成されている。したがって、リング部材101f,102fは、回転不能な状態で第1の軸部101cおよび第2の軸部102cが通される。
【0004】
それから、円形状の孔が2つ形成された先端連結板103の孔に、リング部材101f,102fをそれぞれ通す。そして、第1の軸部101cおよび第2の軸部102cの先端側に第1のギア101bおよび第2のギア102bを嵌める。さらに、第1の軸部101cおよび第2の軸部102cの後端側に、リング部材101f,102fを介して、後端連結板104を嵌める。
これにより、図7に示す裁断器100になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−119454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような裁断器100では、スペーサ部材101d(102d)と刃部101a(102a)とを第1の軸部101c(102c)に嵌め込んで、軸線方向に押し込んだ状態を維持しながら、軸線方向に直交する方向から止め輪101e(102e)をスリット1011c(1022c)に嵌め込む必要がある。
そのため、組み立て作業に手間がかかってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、迅速かつ容易に組み立てることができる裁断器およびこれを備えるシュレッダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、紙を裁断する裁断器であって、前記紙が通過するスペースを挟んで平行に配され、互いに回転可能な第1の軸部および第2の軸部と、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに設けられ、前記第1の軸部および前記第2の軸部の回転に応じて、前記紙を裁断して送り出す刃部と、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに設けられ、互いに噛み合わされたギアと、前記第1の軸部および前記第2の軸部が通されて、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに前記ギアを固定する固定部とを備え、前記固定部に、径方向内方に突出して弾性変形可能な係合部が設けられ、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに、前記係合部に係合される被係合部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、軸線方向に各部品を通すという簡易な動作だけで、迅速かつ容易に組み立てることができる。
【0010】
また、本発明は、前記係合部および前記被係合部が、前記第1の軸部および前記第2の軸部の先端側に設けられ、前記先端側には、前記固定部によって前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに保持されて、前記第1の軸部と前記第2の軸部とを連結する第1の連結部材が設けられ、前記第1の軸部および前記第2の軸部の後端側には、前記第1の軸部と前記第2の軸部とを連結する第2の連結部材と、前記第2の連結部材を前記第1の軸部および前記第2の軸部に保持させる後端固定部とが設けられ、前記後端固定部に、径方向内方に突出して弾性変形可能な後端係合部が設けられ、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに、前記後端係合部に係合される後端被係合部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、全体を容易にユニット化することができる
【0012】
また、本発明は、前記係合部および前記後端係合部が、爪状に形成された爪部を備え、前記被係合部および前記後端被係合部が、前記第1の軸部および第2の軸部のそれぞれに形成された溝であることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、爪と溝を係合させるだけで、迅速かつ容易に組み立てることができる。
【0014】
また、本発明は、前記ギアが、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれの軸線方向に延ばされた先端円筒部と一体に形成され、前記第1の連結部材に形成された円孔部に前記先端円筒部が通されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、部品点数を減少させることができるとともに、ガタの発生箇所を従来より減少させることができる。
【0016】
また、本発明は、前記ギアと前記固定部とが一体に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、部品点数を減少させることができ、構成を簡易にすることができる。
【0018】
また、本発明は、前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか一方にハンドルが設けられるようになっており、前記ギアと前記ハンドルとの間に、前記ギアに対する減速機構が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、操作者がハンドルを回す力を小さくしつつも、その力より刃部を回す力を大きくすることができ、操作感を向上させることができる。
【0020】
また、本発明は、前記減速機構が、前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか一方のギアに一体に設けられ、かつ当該ギアよりも歯数が多く設定された多歯数ギアと、前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか他方に設けられるとともに、前記多歯数ギアに噛み合わされ、かつ前記多歯数ギアおよび前記ギアよりも歯数が少なく設定された少歯数ギアとを備えていることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、操作者がハンドルを回す力を小さくしつつも、その力より刃部を回す力を確実に大きくすることができる。
【0022】
また、本発明は、請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の裁断器と、前記裁断器を収容するケーシングと、前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか一方に取り付けられたハンドルとを備えることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の裁断器と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、軸線方向に各部品を通すという簡易な動作だけで、迅速かつ容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態におけるシュレッダーを示す平面図である。
【図2】図1の蓋部を外した様子を示す平面図である。
【図3】図2の裁断器を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3の裁断器の一部を分解した様子を示す説明図である。
【図5】図2の裁断器を平面に示す図であって、一部の断面を示す説明図である。
【図6】図5のAの領域を拡大して示す断面図である。
【図7】従来の裁断器を示す斜視図である。
【図8】図7の裁断器を組み立てる様子を示す説明図である。
【図9】図8から止め輪により固定する様子を示す説明図である。
【図10】図7の裁断器を分解して示す分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態におけるシュレッダーについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態としてのシュレッダー1を示したものである。
シュレッダー1は、紙を裁断する裁断器2と、この裁断器2を収容するケーシング3と、裁断器2を駆動するハンドル4とを備えている。
ケーシング3は、収容本体部3aと蓋部3bとを備えている。蓋部3bには、裁断される紙が挿入される開口部31bが形成されている。また、収容本体部3aにも、開口部31bに対向する位置に不図示の開口部が形成されている。
ハンドル4は、ケーシング3の外方に配され、ケーシング3の不図示の連結孔を介して裁断器2に連結されている。そして、操作者がハンドル4を回転させると、裁断器2が駆動されるようになっている。
【0027】
裁断器2は、図2から図6に示すように、対をなす第1の裁断部21と第2の裁断部22とを備えている。
第1の裁断部21および第2の裁断部22は、互いに平行に延びる第1の軸部21cと第2の軸部22cとをそれぞれ備えている。符号L1,L2は、それら第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの軸線方向を示すものである。第1の軸部21cおよび第2の軸部22cは、六角柱状に形成されており、それらの先端部には円柱状に形成された円柱部212c,222cがそれぞれ形成されている。また、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cのうち、円柱部212c,222cの後端側と第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの後端部には、周方向全周にわたるスリット(溝、被係合部、後端被係合部)211c,221cがそれぞれ形成されている。さらに、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの長さ寸法は、第1の軸部21cの方が短くなっている。そして、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの基端部が揃えられており、第2の軸部22cの先端部が第1の軸部21cの先端部よりも突出している。この第2の軸部22cの先端部に、ハンドル4が取り付けられるようになっている。
【0028】
第1の軸部21cは、円環状に形成されて対をなす刃部21aと、円筒状のスペーサ21dとを備えている。これら刃部21aおよびスペーサ21dの孔は、横断面が六角形状になっている。そして、これら刃部21aおよびスペーサ21dが交互に配されて第1の軸部21cが通されることにより、これら刃部21aおよびスペーサ21dが周方向に固定されるようになっている。
同様にして、第2の軸部22cにも刃部22aおよびスペーサ22dが設けられている。これら刃部21aと刃部22aとが交互に配されることにより、それらの間に送られてくる紙を裁断するようになっている。
【0029】
第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの先端側には、先端連結板(第1の連結部材)23が設けられている。先端連結板23は、平板状に形成されており、幅方向に隣り合わされた円形の開口部(円孔部)23a,23bが形成されている。これら開口部23a,23bに第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの先端が通されることにより、第1の軸部21cと第2の軸部22cとが連結されている。また、先端連結板23の内面の幅方向の中央には、その高さ方向の全長にわたって延びるスリット23cが形成されている。このスリット23cは、刃部21a,22aによる紙の裁断時に、紙を上下方向に案内するためのものである。
さらに、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの後端側には、後端連結板(第2の連結部材)24が設けられている。後端連結板24は、先端連結板23と同形状に形成されている。そして、後端連結板24の開口部24a,24bに第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの後端が通されることにより、第1の軸部21cと第2の軸部22cとが連結されている。また、後端連結板24の内面の幅方向の中央にも、その高さ方向の全長にわたって延びるスリット24cが形成されている。すなわち、スリット23c,24cは、刃部21a,22aによる紙の裁断時に、紙の幅方向の両端を上下方向に案内するためのものである。
【0030】
また、第1の軸部21cの先端部には、第1のギア21bと減速ギア21fとが設けられている。
第1のギア21bには六角形状の貫通孔が形成されており、この貫通孔に第1の軸部21cが通されている。これにより、第1のギア21bは第1の軸部21cに周方向に固定されている。また、第1のギア21bは円筒状に形成された小径の先端円筒部212bと、大径のギア本体部(ギア)211bとを備えている。これら先端円筒部212bおよびギア本体部211bは、同心上に配されて一体に形成されている。また、ギア本体部211bの歯数は、例えば「14」に設定されている。
さらに、ギア本体部211bの孔内には、先端円筒部212bの天面から軸線方向L1に沿って板状に延びる複数の基壁部(固定部)2112bが形成されている。基壁部2112bは、先端円筒部212bと一体に形成されており、周方向に均等間隔を空けて設けられている。さらに、基壁部2112bは、径方向に拡大する(拡径する)方向に弾性変形するようになっている。
また、基壁部2112bの内面の先端には、径方向内方に突出する複数の爪部(係合部)2111bが一体に形成されている。
減速ギア21fには、円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔に第1の軸部21cの円柱部212cが通されている。これにより、減速ギア21fは第1の軸部21cに対して周方向にフリーな状態になっている。また、減速ギア21fは、歯数の少ない少ギア(少歯数ギア)211fと、歯数の多い多ギア212fとを備えている。なお、少ギア211fの歯数は「12」に設定されており、多ギア212fの歯数は「16」に設定されている。
【0031】
また、第2の軸部22cの先端部には、第2のギア22bと減速ギア22fとが設けられている。
第2のギア22bは円筒状に形成された小径の先端円筒部222bと、大径のギア本体部(ギア)221bとを備えている。これら先端円筒部222bおよびギア本体部221bは、同心上に配されて一体に形成されている。また、ギア本体部221bの歯数は、例えば「14」に設定されている。
【0032】
減速ギア22fは、歯数の多い多ギア(多歯数ギア)221fと、歯数の少ない少ギア222fとを備えている。さらに、減速ギア22fは、角筒状の先端筒部224fと、少ギア222fと先端筒部224fとの間に配された円板状のフランジ部223fとを備えている。なお、多ギア221fの歯数は「16」に設定されており、少ギア222fの歯数は「12」に設定されている。
また、先端円筒部222bとギア本体部221bと多ギア221fとは、一体に形成されている。これらには、六角形状の貫通孔が形成されており、この貫通孔に第2の軸部22cが通されることにより、その周方向に固定されている。
さらに、少ギア222fと先端筒部224fとフランジ部223fとは、一体に形成されている。これらには、円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔に第2の軸部22cの円柱部222cが通されることにより、その周方向にフリーな状態になっている。
【0033】
なお、ギア本体部211bとギア本体部221bとが噛み合わされており、少ギア211fと多ギア221fとが噛み合わされ、多ギア212fと少ギア222fとが噛み合わされている。
また、ギア本体部211b、少ギア211f、多ギア212f、ギア本体部221b、多ギア221fおよび少ギア222fは、モジュールmが例えば「1」に設定されている。
さらに、多ギア221fの孔内には、ギア本体部221bの天面から軸線方向L2に沿って板状に延びる複数の基壁部(固定部)2222bが形成されている。基壁部2222bは、ギア本体部221bと一体に形成されており、周方向に均等間隔を空けて設けられている。さらに、基壁部2222bは、径方向に拡大する(拡径する)方向に弾性変形するようになっている。
また、基壁部2222bの内面の先端には、径方向内方に突出する複数の爪部(係合部)2221bが一体に形成されている。
【0034】
また、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの後端には、後端固定部21e,22eがそれぞれ設けられている。
後端固定部21eは、円筒状の後端円筒部212eと、円板状のフランジ部213eと、軸線方向L1,L2に沿って延びる複数の基壁部214eと、これら基壁部214eに設けられた爪部(後端係合部)211eとを備えている。
後端円筒部212eの筒孔の横断面形状は、六角形状に形成されており、その筒孔に第1の軸部21cの後端部が通されている。また、後端円筒部212eは、後端連結板24の開口部24aに通されている。これにより、後端円筒部212eは、第1の軸部21cが回転すると、開口部24aの縁に支持されながら回転するようになっている。基壁部214eは、周方向に均等間隔を空けて設けられている。爪部211eは、軸線方向L1の径方向内方に突出するようにしてそれぞれの基壁部214eの内壁に設けられている。
なお、後端固定部22eは、後端円筒部222eの長さ寸法が後端円筒部212eの長さ寸法よりも長くなっている点以外は同形状であるので、その説明を省略する。なお、符号221eは爪部(後端係合部)、符号222eは後端円筒部、符号223eはフランジ部、符号224eは基壁部を示している。
【0035】
次いで、裁断器2の組み立て手順について説明する。
まず、図4に示すように、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cのそれぞれを、刃部21a,22aおよびスペーサ21d,22dに交互に通していく。これにより、刃部21a,22aおよびスペーサ21d,22dが、第1の軸部21cまたは第2の軸部22cのそれぞれに周方向に固定される。ただし、このときの刃部21a,22aおよびスペーサ21d,22dは、軸線方向L1,L2にはフリーな状態となっている。
それから、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cのそれぞれを、先端連結板23の開口部23a,23bに通す。このとき、スリット23cが軸線方向L1,L2の後端側に配されるようにする。そして、第1の軸部21cを第1のギア21bに通していく。ギア本体部211bの内周面には、爪部2111bが径方向内方に突出していることから、このとき基壁部2112bは、拡径するように弾性変形した状態になる。そして、第1のギア21bを軸線方向L1の後端側にさらに押し込んでいくと、図6に示すように、基壁部2112bの弾性力により基壁部2112bが縮径し、爪部2111bが、元の位置に復元する。これにより、爪部2111bが、スリット211cに係合し、第1のギア21bが軸線方向L1にロックされる。なお、このとき、先端円筒部212bが開口部23aに通された状態になる。
【0036】
それから、第2の軸部22cを第2のギア22bに通していく。このとき、上記と同様に、基壁部2222bが、拡径するように弾性変形した状態になる。そして、第2のギア22bを軸線方向L2の後端側にさらに押し込んでいくと、上記と同様に、爪部2221bが、スリット221cに係合し、第2のギア22bが軸線方向L2にロックされる。なお、このとき、先端円筒部222bが開口部23bに通された状態になる。また、このとき、ギア本体部211b,221b同士が噛み合わされる。
さらに、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cの後端を、後端連結板24の開口部24a,24bにそれぞれ通す。このとき、スリット24cが軸線方向L1,L2の先端側に配されるようにする。そして、第1の軸部21cの後端を、後端円筒部212eから後端固定部21eに通していく。さらに、このとき、上記と同様に、基壁部214eが、拡径するように弾性変形した状態になる。そして、後端固定部21eを軸線方向L1の先端側にさらに押し込んでいくと、上記と同様に、爪部211eが、スリット211cに係合し、後端固定部21eが軸線方向L1にロックされる。なお、このとき、後端円筒部212eが開口部24aに通された状態になる。
【0037】
それから、第2の軸部22cの後端を、後端円筒部222eから後端固定部22eに通していく。さらに、このとき、上記と同様に、基壁部224eが、拡径するように弾性変形した状態になる。そして、後端固定部22eを軸線方向L2の先端側にさらに押し込んでいくと、上記と同様に、爪部221eが、スリット221cに係合し、後端固定部22eが軸線方向L2にロックされる。なお、このとき、後端円筒部222eが開口部24bに通された状態になる。
これにより、刃部21a,22a、スペーサ21d,22d、先端連結板23、第1のギア21b、第2のギア22b、多ギア221f、後端連結板24および後端固定部21e,22eが第1の軸部21cまたは第2の軸部22cの長さ方向にロックされる。
さらに、第1の軸部21cの先端を、少ギア211fから減速ギア21fに通す。そして、第2の軸部22cの先端を、少ギア222f、フランジ部223fおよび先端筒部224fに通す。このとき、少ギア211fと多ギア221fとが噛み合わされ、多ギア212fと少ギア222fとが噛み合わされる。
これにより、図3に示す裁断器2としてユニット化される。
そして、この裁断器2を収容本体部3aに収容して、蓋部3bで蓋をする。このとき、先端筒部224fがケーシング3の内方から幅方向の外方に突出した状態になる。この先端筒部224fにハンドル4を取り付けることにより、図1に示すシュレッダー1となる。
【0038】
次に、このように構成された本実施形態におけるシュレッダー1の動作について説明する。
操作者が、開口部31bから紙を挿入して、ハンドル4を回転させる。これにより、減速ギア22f,21fを介して、第1のギア21bおよび第2のギア22bが、互いに逆方向に回転する。そして、第1の軸部21cおよび第2の軸部22cが回転することにより、刃部21a,22aが紙を巻き込むようにして回転し、その紙を裁断しながら収容本体部3aの開口部(不図示)を介してケーシング3の外方に送り出していく。
これにより、紙が裁断される。
なお、このとき、紙の幅方向の両端がスリット23c,24c内に入れられることから、これらスリット23c,24cによって紙が幅方向の両端から上下に案内されながらケーシング3の外方に送り出される。
【0039】
ここで、ハンドル4を回転させると、以下のようにして第1のギア21bおよび第2のギア22bが回転する。
まず、ハンドル4を正回転させると、ハンドル4が取り付けられている少ギア222fが正回転する。そのため、少ギア222fと噛み合わされている多ギア212fが逆回転する。このとき、少ギア222fの歯数が「12」、多ギア212fの歯数が「16」であることから、少ギア222fの回転数は多くなりトルクは小さくなる一方、多ギア212fの回転数は少なくなりトルクは大きくなる。
【0040】
さらに、少ギア211fは多ギア212fと一体に形成されていることから、多ギア212fと同じ回転数で少ギア211fも逆回転する。そして、少ギア211fと噛み合わされている多ギア221fが正回転する。このとき、少ギア211fの歯数が「12」、多ギア221fの歯数が「16」であることから、多ギア221fの回転数は少なくなりトルクが大きくなる。
さらに、ギア本体部221bは多ギア221fと一体に形成されていることから、ギア本体部221bは、多ギア221fと同じ回転数で正回転する。そのため、ギア本体部221bと噛み合わされているギア本体部211bが、ギア本体部221bと同じ回転数で逆回転する。
すなわち、ギア本体部211b,221bは、ハンドル4の回転数よりも少なくなりトルクが大きくなって、互いに逆方向に回転する。なお、多ギア212f,221fおよび少ギア211f,222fは、ギア本体部211b,221bに対する減速機構として機能する。
これにより、ハンドル4のトルクが小さくなるとともに、ギア本体部211b,221bのトルクが大きくなる。
【0041】
以上より、本実施形態における裁断器2によれば、組み立て時において、軸線方向L1,L2に直交する方向から止め輪などの部材を設けることなく、各部品を通していくだけで容易に組み立てることができる。すなわち、軸線方向L1,L2に各部品を通すという簡易な動作によりユニット化することができ、シュレッダー1を容易に組み立てることができる。
また、基壁部2112b,2222bがギア本体部211bまたは多ギア221fと一体に形成されていることから、部品点数を減少させることができ、構成を簡易にすることができる。
また、先端連結板23、後端連結板24、後端固定部21e,22eが設けられていることから、第1の裁断部21と第2の裁断部22を確実に連結することができ、容易にユニット化することができる。
【0042】
また、爪部2111b,2221b,211e,221eが、スリット211c,221cに係合することから、迅速かつ容易に裁断器2を組み立てることができる。
また、ギア本体部211b,221bが、先端円筒部212b,222bと一体に形成されていることから、部品点数を減少させることができるとともに、ガタの発生箇所を従来より減少させることができ、高精度にギアを回転させることができる。
また、多ギア212f,221fおよび少ギア211f,222fにより、ハンドル4のトルクを小さくさせるとともに、それよりもギア本体部211b,221bのトルクを大きくすることができることから、操作者がハンドル4を回す力を小さくしつつ、その力よりも刃部21a,22aを回す力を大きくすることができ、操作感を向上させることができる。
また、本実施形態におけるシュレッダー1によれば、裁断器2と同様の効果を奏することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、爪部2111bを減速ギア21fに設けることもでき、爪部2221bを少ギア222fまたは先端筒部224fに設けることもできる。この場合、スリット211c,221cを円柱部212c,222cに設ければよい。これにより、すべての部品を軸線方向L1,L2に固定することができ、組み立てをさらに容易にすることができる。
また、多ギア212fおよび少ギア222fを設けるとしたが、これに限ることはなく、それら部品を省略することもできる。その場合、歯数の少ない少ギア211fを駆動ギアにすればよい。また、減速機構を設けなくてもよい。
さらに、減速機構の各種ギアを増やすこともできる。すなわち、減速ギア21fと同一構成のギアを、第1の軸部21cと第2の軸部22cとで交互に増やしていき、少ギア222f、フランジ部223fおよび先端筒部224fと同一構成のギアを最後に反対側の軸部において噛み合わせて、少ギア222fを駆動ギアとすればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 シュレッダー
2 裁断器
3 ケーシング
4 ハンドル
21a,22a 刃部
21c 第1の軸部
21e,22e 後端固定部
22c 第2の軸部
23 先端連結板(第1の連結部材)
23a,23b 開口部(円孔部)
24 後端連結板(第2の連結部材)
211b,221b ギア本体部(ギア)
211e,221e 爪部(後端係合部)
211c,221c スリット(溝、被係合部、後端被係合部)
212b,222b 先端円筒部
211f 少ギア(減速機構、少歯数ギア)
212f 多ギア(減速機構)
221f 多ギア(減速機構、多歯数ギア)
222f 少ギア(減速機構)
2112b,2222b 基壁部(固定部)
2111b,2221b 爪部(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を裁断する裁断器であって、
前記紙が通過するスペースを挟んで平行に配され、互いに回転可能な第1の軸部および第2の軸部と、
前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに設けられ、前記第1の軸部および前記第2の軸部の回転に応じて、前記紙を裁断して送り出す刃部と、
前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに設けられ、互いに噛み合わされたギアと、
前記第1の軸部および前記第2の軸部が通されて、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに前記ギアを固定する固定部とを備え、
前記固定部に、径方向内方に突出して弾性変形可能な係合部が設けられ、
前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに、前記係合部に係合される被係合部が設けられていることを特徴とする裁断器。
【請求項2】
前記係合部および前記被係合部が、前記第1の軸部および前記第2の軸部の先端側に設けられ、
前記先端側には、前記固定部によって前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに保持されて、前記第1の軸部と前記第2の軸部とを連結する第1の連結部材が設けられ、
前記第1の軸部および前記第2の軸部の後端側には、前記第1の軸部と前記第2の軸部とを連結する第2の連結部材と、前記第2の連結部材を前記第1の軸部および前記第2の軸部に保持させる後端固定部とが設けられ、
前記後端固定部に、径方向内方に突出して弾性変形可能な後端係合部が設けられ、
前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれに、前記後端係合部に係合される後端被係合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の裁断器。
【請求項3】
前記係合部および前記後端係合部が、爪状に形成された爪部を備え、
前記被係合部および前記後端被係合部が、前記第1の軸部および第2の軸部のそれぞれに形成された溝であることを特徴とする請求項2に記載の裁断器。
【請求項4】
前記ギアが、前記第1の軸部および前記第2の軸部のそれぞれの軸線方向に延ばされた先端円筒部と一体に形成され、
前記第1の連結部材に形成された円孔部に前記先端円筒部が通されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の裁断器。
【請求項5】
前記ギアと前記固定部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の裁断器。
【請求項6】
前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか一方にハンドルが設けられるようになっており、
前記ギアと前記ハンドルとの間に、前記ギアに対する減速機構が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の裁断器。
【請求項7】
前記減速機構は、
前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか一方のギアに一体に設けられ、かつ当該ギアよりも歯数が多く設定された多歯数ギアと、
前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか他方に設けられるとともに、前記多歯数ギアに噛み合わされ、かつ前記多歯数ギアおよび前記ギアよりも歯数が少なく設定された少歯数ギアとを備えていることを特徴とする請求項6に記載の裁断器。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の裁断器と、
前記裁断器を収容するケーシングと、
前記第1の軸部または前記第2の軸部のいずれか一方に取り付けられたハンドルとを備えることを特徴とするシュレッダー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate