説明

装置

【課題】よりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる手段を有する、未分化細胞を調製する装置を提供する。
【解決手段】チャンバー6と、コミットした細胞を含む細胞集団を該チャンバーに導入する手段7と、コミットした細胞を未分化細胞に逆分化させることができる逆分化手段を前記チャンバーに導入する手段10,11と、コミットした細胞が未分化細胞に逆分化するように、コミットした前記細胞を前記逆分化手段の存在下でインキュベーションするインキュベーション手段とを有する、コミットした細胞を含む細胞集団中で未分化細胞を形成する及び/又は該未分化細胞の相対数を増加させる装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に関する。より詳しくは、本発明は未分化細胞を調製する装置に関する。限定されるわけではないが特に、本発明は、よりコミットした細胞から未分化細胞を調整する装置に関する。別の側面において、本発明は、未分化細胞を形成する方法にも関する。前記装置は、例えば遠隔で新規試薬を注文するために、及び/又は操作が正しく行われていることや行われていたことを確認するために、生産業者、流通業者、製造会社、コールセンター、サービスセンターなどとの遠隔地間での情報伝達を可能にする。よって本発明は、例えば生産業者,流通業者,製造業社,コールセンター,サービスセンターなどと遠隔で情報伝達し、生産業者,流通業者,製造業社,コールセンター,サービスセンターなどが、かかる情報伝達に対して応答するなどの(例えば、注文を受領して該注文に応じることや、操作及び/又は操作の適正さに関するデータを受領し,及び/又は前記データや情報を処理し,及び/又は前記データや情報に対して応答する)、前記装置が関わるビジネスを行う方法及び前記装置の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
分化は、未成熟造血前駆体からT細胞やB細胞が形成されるなど細胞の構造や機能が徐々にコミットすることで、より特化した細胞が生じる過程である。したがって、細胞がコミットするにつれて、該細胞はより特異的となる。多くの哺乳類細胞タイプにおいて、細胞分化は、最終段階において最終分化した細胞(terminally differentiated cell)になるという一方向のプロセスである。生存中に分裂することも代替されることもなく存続しつづける細胞型もあるが、細胞型の多くは、生物体の生存中に分裂や再生を行い続ける。前記プロセスは、単純分裂(例えば肝細胞)によるものであってよいし、娘細胞の1つが、造血細胞や上皮細胞などの場合のように比較的未分化な幹細胞が分裂した後、その後不可逆的分化となるプログラムにコミットすることによるものであってもよい。しかし、かかるプロセスは全て、共通の特徴を有する。すなわち細胞は、分化状態を維持する又はさらに分化するかのいずれかに限られている。細胞が未分化となったり、分化程度が低くなる(lessdifferentiated)ことはない。
【0003】
逆分化とは、細胞の構造及び機能が漸進的に変化して、より特定化されていない細胞を生じさせるプロセスである。細胞によっては、組織損傷に応答してインビトロで限定的な逆性分化(逆分化)が自然に行われるものもある。例えば、肝細胞が肝臓再生プロセス時に胎児の酵素パターンに似た酵素発現パターンを示すことが、これまでに観察されている(Curtin and Snell,1983,Br.J.Cancer,Vol.48;495−505)。
【0004】
WO96/23870では、分化細胞を細胞が幹細胞などの未分化細胞になるように処理することが可能であったことが示されている。かかる未分化細胞は、増殖して同系譜又は他系譜の再分化した子孫を生み出すことができた。逆分化した造血細胞の場合、かかる幹細胞は分化多能で、複数の細胞系譜を生じさせることができる。WO96/23870の独創性に富んだ発見は、完全に予想を超えたものであった。
【0005】
前記発見が臨床にもたらす意義は、非常に大きい。まず、幹細胞をヒト患者から得ることが大変難しい。さらに幹細胞は、胎盤組織や骨髄や血液から通常得られるが、幹細胞は前記組織中にごく少量しか存在しない。そこで本発明は、よりコミットしている細胞から、特に逆分化のプロセスにより幹細胞を作製する装置を提供する。
【0006】
米国特許第6,087,168号は、適切な培地を用いて上皮細胞を脱分化又は逆分化させて、上皮細胞を神経細胞に分化転換させる方法を開示している。同様に、Lake JA et al.(Journal of Cell Science 113,556−566,2000)やRathjen J et al.(Journal of Cell Science 112,601−612,1999)は、2つの分離可能な因子に応答する場合に、胚幹細胞(ES細胞)が原始外胚葉様細胞(EPL細胞)に逆分化することを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Cell Science 113,556−566,2000
【非特許文献2】Journal of Cell Science 112,601−612,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の要約
広い観点では、本発明は、装置がよりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる手段を有することを特徴とする、未分化細胞を調製する装置を提供する。
【0009】
先行技術(例えば、米国特許第6,087,187号,Lake et al.,Rathijen et al.)において、未分化細胞の調製に適した装置を開示している文献はこれまでにない。未分化細胞の調製は、当該技術分野において通常の知識を有する者が本発明の装置を用いずに行うことができるが、最終製品は手順を行うたびに一貫しない傾向にあり、結果は手順を行った者の技術と経験に依存する。加えて、未分化細胞を人手で調製するのに必要な実施時間は膨大であるため、かかる方法は実験室用として費用効率的でない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施例の一つでは、本発明は、装置がチャンバーと、コミットした細胞を含む細胞集団を該チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞を未分化細胞に逆分化させることができる逆分化手段を前記チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞が未分化細胞に逆分化するように、コミットした前記細胞を前記逆分化手段の存在下でインキュベーションするインキュベーション手段とを有することを特徴とする、コミットした細胞を含む細胞集団中で未分化細胞を形成する及び/又は該未分化細胞の相対数を増加させる装置を提供する。
【0011】
他の実施例では、本発明は、装置がチャンバーと、コミットした細胞を含む細胞集団を該チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる試薬を前記チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞が未分化細胞に逆分化するように、該試薬及びコミットした細胞をインキュベーションするインキュベーション手段とを有することを特徴とする、コミットした細胞を含む細胞集団中で未分化細胞を形成する及び/又は該未分化細胞の相対数を増加させる装置を提供する。
【0012】
前記試薬は、コミットした細胞の表面上で抗原の捕捉、認識又は提示に介在する受容体に関するものが好ましい。さらに好ましくは、該受容体が、ヒト白血球会合(HLA)−A受容体,HLA−B受容体,HLA−C受容体,HLA−E受容体,HLA−F受容体又はHLA−G受容体の群から選ばれるMHCクラスI抗原、又はHLA−DM受容体,HLA−DP受容体,HLA−DQ受容体又はHLA−DR受容体の群から選ばれるMHCクラスII抗原であることが好ましい。
【0013】
同様に、前記受容体は、相同領域を有するβ鎖を有していてもよい。前記受容体は、少なくともHLA−DRのβ鎖の相同領域を有していることが好ましい。
【0014】
コミットした細胞は、分化細胞であることが通常である。コミットした該細胞は、コミットした造血細胞、さらに好ましくはT細胞コロニー形成細胞(CFC−T細胞)、B細胞コロニー形成細胞(CFC−B細胞)、好酸球コロニー形成細胞(CFC−Eosin細胞)、好塩基球コロニー形成細胞(CFC−Bas細胞)、顆粒球/単球コロニー形成細胞(CFC−GM細胞)、巨核球コロニー形成細胞(CFC−MEG細胞)、赤血球バースト形成細胞(BFC−E細胞)、赤血球コロニー形成細胞(CFC−E細胞)、T細胞及びB細胞から選ばれる細胞であることが望ましい。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、よりコミットした細胞が癌細胞でないことが望ましい。本発明の別の実施形態において、試薬が発癌性でなく、また試薬が癌成長を促進しないものであることが好ましい。
【0016】
好ましい実施例において、試薬が、受容体に対するモノクロナール抗体などの受容体に対する抗体であることが好ましい。具体例には、CR3/43及びモノクロナール抗体TAL.1B5が含まれる。
【0017】
好ましい実施例において、試薬はMHC遺伝子発現を調節する。同様に、該試薬はMHCクラスIの発現及び/又はMHCクラスIIの発現を調節してもよい。
【0018】
前記試薬は、例えばシクロホスホアミドである又はシクロホスホアミドを含有するアルキル化剤などの生物反応修飾物質と共に用いられることが好ましい。
【0019】
未分化細胞は、幹細胞抗原を含有していることが好ましい。好ましい実施形態では、未分化細胞が胚幹細胞,分化多能幹細胞,リンパ系幹細胞,造血幹細胞,神経幹細胞,上皮幹細胞,間葉幹細胞,内胚葉幹細胞及び骨髄性幹細胞から選ばれる。未分化細胞は、CD34,HLA−DR,CD38,CD117,AC133,CD90及び/又はCD45lowのうち、1又は2以上の細胞表面マーカーにより特徴づけられることが好ましい。さらに、未分化細胞がCD34やCD38であることが好ましく、またさらにCD34、CD38、HLA−DRやCD45lowであることが好ましい。
【0020】
よって好ましい実施形態において、本発明は、コミットした細胞を含む細胞集団における細胞表面マーカーである、CD34及び/又はCD38及び/又はHLA−DR及び/又はCD45low及び/又はCD90及び/又はCD117及び/又はAC133を有する細胞の相対数を増加させる装置も提供する。該装置は以下のものを有する。
(i)チャンバー,
(ii)コミットした細胞を含む細胞集団を該チャンバーに導入する手段,
(iii)コミットした該細胞を操作的に関与させる試薬を前記チャンバーに導入する手段,
(iv)前記関与の結果として、CD34及び/又はCD38及び/又はHLA−DR及び/又はCD45low及び/又はCD90及び/又はCD117及び/又はAC133細胞の相対数が増加するように、前記チャンバーにおいて前記試薬が関与するコミットした前記細胞をインキュベーションすることができるインキュベーション手段。
【0021】
本発明による装置は、前記未分化細胞を濃縮し、前記試薬を除去し、及び/又は変化した細胞集団から前記未分化細胞を回収するための精製手段又は単離手段をさらに随意的に有していてもよい。精製手段は、未分化細胞表面上にある細胞表面マーカーや、コミットした細胞表面上にあるが、未分化細胞の細胞表面上に実質的にない細胞表面マーカーを同定する手段を有することが好ましい。同様に、精製手段は、例えば細胞表面マーカーに対する抗体を用いてもよい。適したマーカーの具体例には、CD34、CD45及びHLA−DRが含まれる。一例をあげると、適切な精製手段はCliniMACs/IsolexCD34精製システムである。精製又は単離手段などの本発明の他の実施例は、別の手段として任意に提供することができる。
【0022】
本発明による装置は、上流のネガティブセレクション及び/又は細胞濃縮手段をさらに任意に有していてもよい。他の方法として、該細胞集団は、任意にネガティブセレクション及び/又は前記装置に挿入する前に増殖された細胞であってもよい。
【0023】
好ましい他の実施例において、本発明の未分化細胞は、CD34、CD45で造血系マーカーに対してネガティブである。
【0024】
よりコミットした細胞は、もともとコミットしていた細胞と同一の系統でも異なる系統であってもよい。
【0025】
よって、未分化細胞を作製するのと同様に、本発明の装置はある系譜の細胞を他系譜の細胞に転換するのに用いることができる。
したがって、他の側面として、本発明は、ある造血系譜の、コミットした造血系細胞を含む細胞集団において、他の造血系譜の細胞となるように誘導する装置を提供する。該装置は以下のものを有する。
(i)チャンバー,
(ii)コミットした細胞を含む細胞集団を該チャンバーに導入する手段,
(iii)コミットした造血細胞の表面上で抗体の捕捉、認識又は提示を介在する受容体を操作的に関与させる試薬を前記チャンバーに導入する手段,及び
(iv)前記関与の結果として前記造血細胞が他の造血系譜の細胞になるように、前記チャンバー中で前記試薬が関与する、コミットした前記造血細胞をインキュベーションすることができるインキュベーション手段。
【0026】
コミットした前記造血細胞がB細胞系譜であり、該細胞がT細胞系譜及び骨髄系譜から選択される、他の造血系譜の細胞となることが好ましい。
【0027】
本発明の装置によって作製される未分化細胞は、免疫疾患又は免疫疾病の治療薬の製造に用いることができる。同様に、本発明の方法に従って作製された、再コミットした細胞は、免疫疾患又は免疫疾病の治療薬を製造するのに用いることができる。
【0028】
本発明は、よりコミットした細胞から未分化細胞を容易に調製することができることから、かかる未分化細胞をインビトロ、インビボ又は両者の組合せでも疾患治療用の治療薬として用いたり、調製することができる点で、大変有利である。
【0029】
また本発明は、すでによりコミットしていた細胞を訂正又は除去するという点や、該細胞の産出物を訂正又は除去するという点で、新規分化細胞などのような逆分化により調製された未分化細胞を再コミットした細胞にコミットさせる装置を用いることができる点で有利である。例えば、未分化細胞は、肺胞を並べる細胞などの再コミットした細胞を作製するのに用いることができ、これにより損傷した又は疾病にかかった肺組織を交換又は修復することができるメカニズムを作製する(Le Page,New Scientist 19 December 2000,p.20を参照)。
【0030】
「再コミットした細胞」という語とは、未分化細胞由来の細胞、すなわち新規によりコミットした細胞を意味する。「よりコミットした」とは、より分化していることを意味し、公知である細胞分化経路及び細胞分化段階を参照することにより容易に決定することができる。
【0031】
最も未分化な細胞及び分化した細胞には、主要組織適合性遺伝子複合体(HMC)クラスI抗原及び/又はクラスII抗原が含まれる。かかる抗原が前記細胞と結合する場合、該抗体はクラスI及び/又はクラスIIと呼ばれる。よりコミットした細胞がMHCクラスI及び/又はMHCクラスII未分化細胞に逆分化できることが好ましい。
【0032】
よりコミットした細胞が、幹細胞抗原を含む未分化細胞に逆分化できることが好ましい。
【0033】
よりコミットした細胞が、CD34未分化細胞に逆分化できることが好ましい。
【0034】
よりコミットした細胞が、リンパ球造血(lymphohaematopoietic)前駆細胞に逆分化できることが好ましい。
【0035】
よりコミットした細胞が、多機能幹細胞に逆分化できることが好ましい。
【0036】
前記増加が24時間以内に生じることが好ましく、該増加が(いかなる変化も細胞増殖によってのみ説明することができないような)4〜8時間以内に生じるのがさらに好ましい。
【0037】
典型的に、未分化細胞数の変化の測定は、未分化細胞に特徴的な細胞表面マーカーを有する細胞数の変化を観察することにより行われる。適した細胞表面マーカーの例には、CD34,HLA−DR,CD38,AC133,CD90及び/又はCD45lowが含まれる。他の方法として又は追加として、分化細胞に典型的であるが、未分化細胞に典型的でない細胞表面マーカーを有する細胞数の減少を測定することもできる。
【0038】
同様に、本発明の装置は、未分化細胞に特徴的な細胞表面マーカーを有する細胞数の変化を観察する追跡手段をさらに随意的に有していてよい。
【0039】
前記測定において用いられるコミットした細胞は、CFC−T細胞,CFC−B細胞,CFC−Eosin細胞、CFC−Bas細胞,CFC−GM細胞,CFC−MEG細胞,BFC−E細胞,CFC−E細胞,T細胞及びB細胞の群から選ばれる細胞、より好ましくはB細胞などのコミットした造血細胞であることが好ましい。
【0040】
さらに本発明の装置は、以下の特徴の1又は2以上、好ましくは2又は3以上、さらに好ましくは3又は4以上、そしてさらに好ましくは4又は5以上を含んでいることが好ましい。
(i)細胞集団の容量を測定する測定手段,
(ii)細胞数を計算して細胞集団の細胞濃度を測定する(例えばコールターカウンター(Coulter Counter)、必要な場合は小型化されたもの又は他の適切なサイトメーター(cytometer)など)計算手段,
(iii)搬送手段が任意的に例えばポンプなど有することを特徴とする、貯蔵容器からチャンバーに(所定の量などの)ある量の細胞集団を搬送する搬送手段,
(iv)細胞集団の容量と細胞濃度との両方に依存する、チャンバーに加えられる試薬量を計算する計算手段,
(v)搬送手段がさらに例えばステッパーモータなどのモータによって駆動されるシリンジを任意的に有することを特徴とする、(例えば計算された量など)ある量の試薬をチャンバーに搬送するさらなる搬送手段,
(vi)チャンバー内の二酸化炭素濃度を調節する(例えばインキュベーション手段の一部としての)手段を調節する二酸化炭素調節手段,
(vii)チャンバー内の温度を調節する(例えばインキュベーション手段の一部としての)温度調節手段,
(viii)チャンバー内部で細胞集団と試薬とを混合するための(例えばインキュベーション手段の一部としての)混合手段,
(iv)インキュベーション時間を計測し、残り時間を使用者に示すディスプレイ手段及び/又はインキュベーション時間の終了を使用者に知らせるアラーム手段とを随意的に有する(例えばインキュベーション手段の一部としての)時間計測手段,
(x)チャンバーから細胞を回収する、特にチャンバーから未分化細胞を回収する回収手段,
(xi)該除去手段が例えばポンプを有していてよい、チャンバーから貯蔵容器に未分化細胞を含む細胞集団を除去する除去手段,及び
(xii)未分化細胞を含む細胞集団を含む貯蔵容器をシールするシール手段。
【0041】
同様に、本発明の装置において、搬送手段(iii)は、患者から前記チャンバーに直接(すなわち貯蔵容器を必要とせずに)細胞集団の(所定の量などの)量を搬送してもよく、及び/又は除去手段(xi)は、チャンバーから直接患者に(すなわち貯蔵容器を必要とせずに)、未分化細胞を含む細胞集団を除去してもよい。
【0042】
同様に、搬送手段(iii)は、例えば配管などの連結手段を介して貯蔵容器からチャンバーに細胞集団を搬送するぜん動ポンプを有していてもよい。連結手段は、((ii)で述べたように)コールターカウンターや他の適切なサイトメーターを通過してもよい。このようにして、貯蔵容器からチャンバーまでの細胞集団の搬送の間に該細胞集団の細胞濃度を計算することができる。
【0043】
(iii)及び(xi)で上述の貯蔵容器は、好ましくは使い捨てである貯蔵バッグであることが好ましい。さらに、(iii)の貯蔵容器は、(xi)の貯蔵容器と異なり、前者が入力貯蔵容器であり、後者が出力貯蔵容器であることが好ましい。
【0044】
さらに搬送手段(v)は、いかなる時も充分な試薬を供給できるようにするため、試薬貯蔵器を有することが好ましい。搬送手段がシリンジである場合、該試薬貯蔵器はさらにシリンジを有していてもよく、1つのシリンジが空になった時に他方のシリンジが試薬の供給を開始する。
【0045】
チャンバー内の二酸化炭素濃度を調節するための二酸化炭素調節手段は、ガスシリンダーから所定量の二酸化炭素を導入することができるバルブを有していることが好ましい。チャンバー、配管及び出力貯蔵容器中の、すでにわかっている空気量から二酸化炭素の所定量が計算され、入力貯蔵容器から細胞集団の測定量が計算される。同様に、二酸化炭素は試薬が添加されるのと同一のポート(port)を介してチャンバー中に導入され、二酸化炭素がかかる方法によりポート及び周辺器具中の全ての残存試薬を吹き飛ばすのに用いられる。上記に加えて、二酸化炭素調節手段は、システム中にさらに二酸化炭素を導入することから生じる余分な空気量を調和させるために、可膨張性の気胞を有していてもよい。該方法のかわりに、一度空になった入力所蔵容器が、気胞として機能してもよい。二酸化炭素は、チャンバー中の最終濃度が5%となるように導入されるのが好ましい。
【0046】
同様に、温度調節手段(vii)は、例えば加熱手段がチャンバー下部に位置する加熱プレートにより供される加熱手段を有していてもよい。該方法のかわりに、加熱手段がチャンバー又はその一部に隣接して位置する温水ジャケット(heated water jacket)によるものでもよい。さらに、チャンバー内の温度が約25℃から約37℃の間に調節されていることが好ましい。
【0047】
混合手段(viii)は、チャンバー内で細胞集団と試薬とを混合するためにゆっくり回転する、パドルアーム(paddle arm)を少なくとも一つ有することが好ましい。該方法のかわりに、電磁撹拌機を用いてもよい。
さらに前記方法のかわりに、例えば緩やかな撹拌で機械的に前記チャンバーを撹拌してもよい。パドルアームを少なくとも一つ有する混合手段を用いることの利点は、該アームが細胞を回収する間にスクレーパとして働くように、すなわち該アームがゆっくり回転する時にチャンバー表面に付着した細胞を緩やかに取り除くように設計することもできる点である。混合手段が旋回動作することができる点で、有利である。
【0048】
除去手段(xi)は、ぜん動ポンプを有することが好ましい。該除去手段が例えばチャンバー底部にある出力ポートを通じて、配管などの連結手段を介して及び出力貯蔵容器中に、未分化細胞を含む細胞集団を吸引する点で、有利である。
【0049】
前記方法のかわりに又は前記除去手段に加えて、例えばEDTAなどの抗凝固剤などの遊離イオン封鎖(free ion sequestering)剤及び/又はキレート剤を、細胞集団を除去する前にチャンバーに添加してもよい。チャンバーにかかるイオン封鎖及び/又はキレート剤を添加すると、幹細胞コロニーが脱凝集して単細胞懸濁液となり、これにより洗浄手段により前記チャンバーからの細胞除去が容易になる。
【0050】
シール手段(xii)は、容器の2箇所又は完全にシールするまでの容器手前にある連結手段の2箇所を共に加圧することにより出力貯蔵容器を密封するヒートシール装置を有することが好ましい。例えば、該ヒートシール装置は、幅が約2cmであるシールとなってよく、続いて該ヒートシール装置が中央部分に沿ってシールを切断する。
【0051】
本発明の装置の各部分は、中央のコンピューターシステムによって独立して制御されていていることが好ましい。該コンピューターシステムは、該装置の部分から入力情報を受信し、かかる入力信号に基づいて計算を行い、該装置の同一又は他の部分に出力情報を発信することができる点で、有利である。
【0052】
本発明の装置には、特に該装置が、手順が実行されるごとに安定した結果が得られること、及び貴重な試薬の無駄が生じないようにするなど、数々の長所がある。加えて、該装置は逆分化が終了した時を使用者に知らせるように、及び/又は終了前の残り時間を表示するようにプログラムされていてよい。かかるプログラミングがされている場合、該装置は新たに試薬を購入するように使用者に知らせることができる。言い換えると、該装置は試薬の使用状況及び貯蔵量をモニターすることができ、貯蔵試薬量が臨界値以下に下がっている場合に利用者に知らせることができる。
【0053】
本発明の装置は、例えば筋肉,毛髪,神経細胞などの異なる細胞系譜にコミットした未分化細胞を各々作製する複数のチャンバーをさらに有していてもよい。よって、異なる細胞系譜にコミットした未分化細胞を同時に作製することができる。複数のチャンバーが用いられる時には、各チャンバーが個別の排出ポート及び個別の出力貯蔵容器を有していることが好ましい。
【0054】
細胞系譜は、チャンバーに対して異なる処理をしたプラスチックを用いることによって、又は各チャンバーに異なる化学試薬を添加することによって本発明の装置中で調節してもよい。
【0055】
装置の1又は2以上の部分が使い捨てであることが好ましい。例えば、チャンバー,入力貯蔵容器,出力貯蔵容器,貯蔵容器をチャンバーと連結させている連結手段及び他の搬送手段(v)などの1又は2以上の部分が使い捨てであってよい。同様に使い捨て可能な部分は、前記装置に挿入されるカートリッジ式で供給されてもよい。一例を挙げると、カートリッジは、チャンバーが配管(連結手段)によって第1血液袋(入力貯蔵容器)及び第2(出力)血液袋にそれぞれ連結していることを特徴とする、第1血液袋、チャンバー及び第2血液袋を有していてよい。同様に、前記装置は、部分的に道具であって、部分的に使い捨てであるシステムとして考えることができる。
【0056】
細胞集団と接触する、チャンバー及び/又は装置の他の部分は、米国特許分類クラスVI(USP Class VI)の材料、ポリカーボネートプラーク又は細胞の形質転換体の他の形式を生じさせることができない他のプラスチックから形成されていてもよい。
【0057】
コミットした細胞を有する細胞集団は、血液であることが好ましい。試薬は、抗体であることが好ましい。
【0058】
他の側面において、本発明は、よりコミットした細胞の逆分化が軟層血液サンプル(buffy coat blood sample)中又は軟層血液サンプルから得たよりコミットした細胞に対して生じることを特徴とする、よりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる過程を含む、未分化細胞の調整方法を提供する。
【0059】
さらに別の側面において、本発明は、軟層血液サンプル中又は軟層血液サンプルからのよりコミットした細胞と、よりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる試薬とを接触させる過程を含む、未分化細胞の調整方法を提供する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態の一つでは、よりコミットした細胞は癌細胞でない。本発明の好ましい他の実施形態では、試薬は発癌性でも癌の増殖を促進することができるものでもない。
【0061】
コミットした細胞は、分化していることが好ましい。コミットした細胞は、CFC−T細胞,CFC−B細胞,CFC−Eosin細胞,CFC−Bas細胞,CFC−GM細胞,CFC−MEG細胞,BFC−E細胞,CFC−E細胞,T細胞,及びB細胞、より好ましくはB細胞などのコミットした造血細胞であることが好ましい。
【0062】
未分化細胞は、分化多能幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、間充織幹細胞及び胚幹細胞から選ばれる未分化細胞であることが好ましい。さらに該未分化細胞が、CD34,HLA−DR,CD38,CD117,AC133,CD90及び/又はCD45lowの細胞表面マーカーのうち1又は2以上により特徴づけられることが好ましい。さらに好ましくは、前記未分化細胞が、CD34及びCD38、さらに好ましくは、CD34,CD38,HLA−DR及びCD45lowであることが好ましい。
【0063】
同様に、未分化細胞は、MHCクラスI及び/又はMHCクラスII細胞であることが好ましい。
【0064】
試薬は、コミットした細胞表面における抗原の捕捉、認識又は提示を介在する受容体に関与することが好ましい。さらに該受容体が、ヒト白血球会合(Human−Leukocyte−Associated)(HLA)−A受容体,HLA−B受容体,HLA−C受容体,HLA−E受容体,HLA−F受容体又はHLA−G受容体から選ばれるクラスI抗原や、HLA−DM受容体,HLA−DP受容体,HLA−DQ受容体又はHLA−DR受容体から選ばれるクラスII抗原であることを特徴とする、MHCクラスI抗原又はMHCクラスII抗原であることが好ましい。
【0065】
同様に、該受容体は相同領域を有するβ鎖を有していてよい。実施形態の一つにおいて、該受容体がHLA−DRのβ鎖の相同領域を少なくとも有していてよい。
【0066】
好ましい実施例において、試薬は、受容体に対するモノクロナール抗体などの、受容体に対する抗体である。具体例には、CR3/34やモノクロナール抗体TAL.1B5などが含まれる。
【0067】
同様に、試薬は、例えばMHCクラスI発現及び/又はMHCクラスII発現などのMHC発現遺伝子発現を調節してもよい。
【0068】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、バフィーコート血液サンプル中の細胞表面マーカーであるCD34及び/又はHLA−DR及び/又はCD38及び/又はCD117及び/又はAC133及び/又はCD90及び/又はCD45lowを有する細胞の相対数を増加させる方法、すなわちバフィーコート血液サンプル中のよりコミットした細胞を前期コミットした細胞に操作的に関与する試薬とを接触させ、CD34細胞及び/又はHLA−DR細胞及び/又はCD38細胞及び/又はCD117細胞及び/又はAC133細胞及び/又はCD90細胞及び/又はCD45low細胞の相対数が該関与の結果として増加する方法を提供する。
【0069】
さらに別の側面において、本発明は未分化細胞を調製する方法、すなわち該方法が1又は2以上の該分化細胞が未分化細胞に逆分化することを特徴とする、細胞集団中の1又は2以上の分化細胞と、前記集団中における正常な分化細胞の割合を置き換えるための、効果的な逆分化手段とを接触させる過程を含む方法を提供する。
【0070】
別の側面において、本発明は1又は2以上の前記分化細胞を未分化細胞に逆分化させるため、細胞集団中の正常な分化細胞の割合を置き換えるために逆分化手段を用いることを提供する。
【0071】
さらに別の側面では、本発明は、未分化細胞を調製する方法、すなわち1又は2以上の分化細胞を含有する前記細胞集団を含む環境を、第1環境から、1又は2以上の前記分化細胞を未分化細胞に逆分化させるために、第1環境と比較して遊離イオン濃度を効果的に修飾した第2環境へと変化させることを特徴とする、細胞集団中の分化細胞を未分化細胞に逆分化する未分化細胞の調製方法を提供する。
【0072】
さらに他の側面において、本発明は、未分化細胞の調製方法、すなわち細胞集団中の1又は2以上の分化細胞と、正常な分化細胞の割合を置換するのに効果的な逆分化手段とを接触される過程と、イオンなし又はイオン封鎖された第1環境中の細胞集団を培養する過程と、第1環境と比較して、第2環境に存在するイオン濃度を効果的に修飾した第2環境へと第1環境を変化させ、1又は2以上の分化細胞が未分化細胞に逆分化する過程とを含むことを特徴とする未分化細胞の調製方法を提供する。
【0073】
逆分化手段は、以下ネガティブセレクションと呼ばれる、細胞集団中の正常な分化細胞の割合を細胞集団内で混乱させて、細胞集団中の正常な分化細胞の割合の混乱を引き起こす方法であることが好ましい。
【0074】
例えば逆分化手段は、抗体(純粋又は共役(すなわち、例えば磁性、ガラス又はポリスチレンのビーズなどの固定された又は未固定のリガンドに結合している))、Histopaque、LymphoPrep(Sigma社製)又は細胞密度に従って細胞を分離させるために用いられる他のいかなる密度勾配培地、又は(例えば赤血球を沈降させる)デキストランのうちの1又は2以上のものであってよい。細胞転置(cell displacement)を生じさせる、同様の他の手段は、Vettese−Dadey(The Scientist,Sep 13 1999,13(18):21)に示されている。
【0075】
第2環境の遊離イオン濃度は、第1環境の遊離イオン濃度と比較して増加していることが好ましい。
【0076】
さらに、第1環境及び第2環境の相対的遊離イオン濃度が増加する、すなわち第2環境における遊離イオン濃度が増加することが好ましい。相対的遊離イオン濃度は、1又は2以上の分化細胞を未分化細胞に逆分化させるために充分に増加していることが好ましい。一例として、5mMのEDTA(遊離イオン封鎖剤及び/又はキレート剤)を含有する培地から、低濃度のEDTA又はEDTAを含まない他の培地に細胞を搬送すると、逆分化を引き起こすのに充分な遊離イオン濃度(例えばカルシウムイオン濃度など)の増加が生じる。
【0077】
遊離イオンは、アニオンであることが好ましい。
【0078】
遊離イオンは、第I類又は第II類の金属であることが好ましい。
【0079】
アニオンは、カルシウムイオン及び/又はマグネシウムイオンであることが好ましい。
【0080】
同様に、環境の遊離イオン濃度は、該環境の遊離イオン濃度を相対的に変化させることができる試薬で該環境を処理することにより修飾されていてよい。
【0081】
よって好ましい実施形態において、本発明は、未分化細胞を調製する方法、すなわち環境の遊離イオン濃度が、該環境の遊離イオン濃度を相対的に変更することができる試薬を用いて前記第1環境を処理して、第2環境を生じさせることにより修飾されることを特徴とする細胞集団中の分化細胞を未分化細胞に逆分化させる過程を含む方法を提供する。
【0082】
例えば、第1環境は、試薬が続いて除去又は減少され、相対的に増加した遊離イオン濃度を有する第2環境に作用し、これにより細胞集団中の1又は2以上の分化細胞の逆分化を引き起こす、1又は2以上の遊離イオン封鎖剤でもって処理されてよい。すなわち例えば、封鎖剤が、第1環境から封鎖剤の全部又は一部を物理的/化学的に除去することによって、あるいはかかる遊離イオン封鎖剤を用いず又は第1環境中よりも低い濃度で遊離イオン封鎖剤を用いることにより細胞集団を第2環境に搬送することによって、除去又は減少されていてよい。
【0083】
いずれにせよ、第2環境は、第1環境と比較して遊離イオン濃度が増加しており、これにより細胞集団における1又は2以上の分化細胞の逆分化を生じさせる。
【0084】
他の方法として、該細胞集団は、遊離イオンが低い濃度又は濃度ゼロである第1環境において培養されてもよい。その後、細胞集団を第1環境に搬送することにより又は第1環境を調節することにより、第1環境がイオンを有する又は第1環境よりも高濃度のイオンを有する第2環境になり、細胞集団中の1又は2以上の分化細胞の逆分化を生じる。ここで用いられる「低い」という文言には、第2環境の最終濃度との関係で相対的に低い遊離イオン出発濃度を有する環境が含まれる。
【0085】
よって好ましい実施形態において、本発明は、未分化細胞の調製方法、すなわち1又は2以上の分化細胞を含む前記細胞集団を含む環境を、低濃度又は濃度ゼロの遊離カルシウムイオン又は遊離マグネシウムイオンを含む第1環境から、遊離カルシウムイオン若しくは遊離マグネシウムイオンを有する、又は第1環境よりも高濃度の遊離カルシウムイオン若しくは遊離マグネシウムイオンを有する第2環境に変化させることにより、細胞集団中の1又は2以上の分化細胞を逆分化させることを特徴とする未分化細胞の調製方法を提供する。
【0086】
理論に縛られることを望まなければ、イオン濃度の変化、特にイオン濃度の増加は、細胞集団中の細胞をコロニーに凝集させ(例えば、ホモタイプの凝集を引き起こすなど)、かかる細胞間の物理的接触が該細胞の逆分化を誘導しうると考えられる。
【0087】
封鎖剤は、イオンキレート剤であることが好ましい。
【0088】
封鎖剤は、アミン基とカルボキシル基の両方を含むことが好ましい。
【0089】
封鎖剤は、n=1又はn=2である、複数のN(CHCOH)基を有することが好ましい。
【0090】
同様に、封鎖剤は、EDTA,ヘパリン,EGTA,DTPA,3ナトリウム及び他の類似のキレート試薬及び/又は抗凝固剤の群から1又は2以上選ばれていてよい。
【0091】
同様に、封鎖剤は、該剤の存在を除去することにより逆分化が生じるように、充分に高濃度で添加されているべきである。典型的には、該剤の存在が除去される場合、逆分化を生じさせるのに充分な封鎖剤の濃度は、約2mM以上又はそれと同一である。
【0092】
本発明の好ましい実施形態において、よりコミットした細胞が癌細胞でないことが望ましい。本発明の他の実施形態において、試薬が発癌性でなく、かつ癌成長を促進できないことが好ましい。
【0093】
コミットした細胞は、分化していることが好ましい。分化した細胞は、CFC−T細胞,CFC−B細胞,CFC−Eosin細胞,CFC−Bas細胞,CFC−GM細胞,CFC−MEG細胞,BFC−E細胞,CFC−E細胞,T細胞及びB細胞より、好ましくはB細胞などのコミットした造血細胞であることが好ましい。
【0094】
未分化細胞は、分化多能幹細胞,造血幹細胞,神経幹細胞,上皮幹細胞,間葉幹細胞及び骨髄性幹細胞から選ばれる未分化細胞であることが好ましい。未分化細胞は、CD34、HLA−DR、CD38、CD117、AC133、CD90及び/又はCD45lowのうち、1又は2以上の細胞表面マーカーにより特徴づけられるものが好ましい。さらに、未分化細胞がCD34及びCD38であることが好ましく、またさらにCD34、CD38、HLA−DR及びCD45lowであることが好ましい。
【0095】
よって他の好ましい実施形態において、本発明は、未分化細胞の調製方法、すなわち1又は2以上の分化造血系細胞を含有する前記細胞集団を含む環境を、第1環境から、前記分化造血系細胞が未分化細胞に逆分化するように、遊離イオン濃度を第1環境と比較して効果的に修飾した第2環境へと変化させることを特徴とする未分化細胞の調製方法を提供する。
【0096】
同様に、未分化細胞は、MHCクラスI細胞及び/又はMHCクラスII細胞であることが好ましい。
【0097】
実施形態の一つにおいて、コミットした細胞を含む細胞集団はバフィーコート血液サンプル又はバフィーコート血液サンプル由来のものであることが好ましい。
【0098】
本発明の方法は、例えば赤血球が血液供給の不足を補充するのに用いられるように、赤血球の産生用に赤血球前駆体を効果的に培養するために用いることができる点で、有利である。同様に、本発明の方法は、血小板産生に用いられる巨核球を産出するためにも用いることができる。
【0099】
本発明が明確に理解され、実施が容易になるように、例示を目的として添付図面の説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、前面パネルが開いている本発明による装置の透視図であり、挿入図は周囲から外された装置部分を示す図である。
【図2】図2は、前面パネルが閉じている、図1の装置透視図を示す図である。
【図3】図3は、血液細胞の写真を示す図である。
【図4】図4は、T細胞及びB細胞を形成するLSCの分化のチャートを示す図である。
【図5】図5は、好酸球、好塩基球、好中球、巨核球、単球、赤血球、顆粒球、肥満細胞、ナチュラルキラー細胞及びリンパ球を形成するMSCの分化のチャートを示す図である。
【図6】図6は、リンパ球造血(lymphohaematopietic)前駆細胞を示す図である。
【図7】図7は、CR3/43抗体を用いて処理した後のCD45細胞CD14細胞の出現を示す図である。
【図8】図8は、分化したB細胞の顕微鏡写真を示す図である。
【図9】図9は、B細胞を逆分化させることにより形成された未分化細胞の顕微鏡写真を示す図である。
【図10】図10は、図9と同一の未分化細胞の顕微鏡写真を低倍率で示す図である。
【図11】図11は、分化したB細胞の顕微鏡写真を示す図である。
【図12】図12は、B細胞を逆分化させることにより形成された未分化細胞の顕微鏡写真を示す図である。
【図13】図13は、図12と同一の未分化細胞から分化した顆粒球細胞を形成する顕微鏡写真を示す図である。
【図14】図14は、B−CLL患者から得た未処理血液サンプルの顕微鏡写真を、2つの異なる倍率で示す図である。
【図15】図15は、処理された血液サンプルの顕微鏡写真を示す図である。
【図16】図16は、血液サンプル処理中の経時的な顕微鏡写真を示す図である。
【図17A】図17は、血液サンプル処理中の経時的な顕微鏡写真を示す図である。
【図17B】図17は、血液サンプル処理中の経時的な顕微鏡写真を示す図である。
【図17C】図17は、血液サンプル処理中の経時的な顕微鏡写真を示す図である。
【図17D】図17は、血液サンプル処理中の経時的な顕微鏡写真を示す図である。
【図17E】図17は、血液サンプル処理中の経時的な顕微鏡写真を示す図である。
【図18】図18は、サザンブロット法による結果を示す図である。
【図19】図19は、B−CLL患者から得た末梢血細胞を用いて、さらにサザンブロット法を行って得た結果を示す図である。
【図20】図20は、細胞集団におけるCD34細胞の相対数を増加させる3種類の試薬を用いた結果を示す図である。
【図21】図21は、倒立型明視野照明顕微鏡を用いた幹細胞のコロニーアッセイの結果を示す図である。
【図22】図22は、倒立型明視野照明顕微鏡を用いて観察した場合の接着細胞層を示す図である。
【図23】図23は、CR3/43mabでB細胞を処理する間の経時的ビデオからの2つの電子スチールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
発明の詳細な説明
I.装置
装置は番号1で通常記載されており、該装置1の内部にアクセスするために空けることができる前方パネル3を有する収容箱(housing)2を有する。注入貯蔵容器、すなわち血液バッグ4は、支持フック5から掛けられている。該支持フック5は、電気秤(図示なし)の一部を形成しており、入力血液バッグ4の重量を測定するために働く。
【0102】
前記装置は、配管7を介して入力血液バッグ4に連結するチャンバー6をさらに有している。該配管7は、コールターカウンターフローセル(Coulter Counter flow cell)9内部に位置する、透明な窓8を有する。ぜん動ポンプ(図示なし)は、入力血液バッグ4からコールターカウンターフローセル9を通ってチャンバー6中に血液を吸引することができる。
【0103】
シリンジ10及び11は抗原を含んでおり、各シリンジはステッパーモータ(stepper−motor)(図示なし)によって駆動される。シリンジ10及び11は、施錠可能で断熱されたPeltier「冷蔵庫」(a lockable insulated Peltier“refrigerator”)内で常に4℃に保たれる。2つのシリンジ10及び11は、前記装置が充分な抗体を常に供給することを確保するために設けられている。シリンジ10及び11の無菌性は、抗生物質と(番号13として通常指示される)使い捨て可能な0.2μmのフィルタとの両方により維持されている。
【0104】
前記装置は、ガスボンベ(図示なし)から配管15を介してチャンバー6中に二酸化炭素を移す二酸化炭素注入ポート14をさらに有する。シリンジ10及び11は、配管15を介してチャンバー6と連通もしている。バルブ16は、配管15を介して二酸化炭素及び抗原の流れを調節する。加熱手段(図示なし)がチャンバー6の下部に設けられている。チャンバー6内部には、回転可能なパドル17があり、チャンバー6内部の抗体及び血液を混合させる働きをする。時間測定装置(図示なし)は、抗体及び血液がチャンバー6内部に残っている時のインキュベーション時間をモニターする。インキュベーションの残り時間は、コントロールパネルディスプレイ18上に表示されてよい。
【0105】
排出貯蔵容器、すなわち排出血液バッグ19も、装置1内部に掛けられており、配管20を介してチャンバー6と連結している。配管20は、配管20をシールして排出血液バッグ19とする働きをする、ヒートシール装置21を通っている。他のぜん動ポンプ(図示なし)は、チャンバー6の内容物を排出血液バッグ19中に吸引するために設けられている。
【0106】
配管7及び20及び出力血液バッグ19と共に、チャンバー6は各手順後に廃棄されてよい、使い捨て品目である。
【0107】
操作時には、使用者は出力血液バッグ19、チャンバー6及び配管7及び20を装置1に挿入する。配管20がヒートシール装置21及びぜん動ポンプを通るようにする。配管7が他のぜん動ポンプ及びコールターカウンターフローセル9を通るようにする。使用者は、患者から得た血液を含む血液バッグ4を挿入して、配管7に該血液バッグを取り付ける。上記に加えて、使用者はチャンバー6の配管15を無菌フィルター13に取り付ける。次に使用者は、収容箱2の前面パネル3を閉めて、装置のキーパッド22を用いて該装置1を作動させる。
【0108】
装置1は、入力血液バッグ4の重量を自動的に測定する。入力血液バッグ4の重量は、装置1内部に設けられている中央計算システム(図示なし)に自動的に送られる。入力血液バッグ4の重量から、計算システムがバッグ4中の血液の容量を決定することができる。次にぜん動ポンプは、配管7を介して入力血液バッグ4から血液を吸引する。血液は、配管7の透明窓8を通して流れ、コールターカウンター9が配管7を通過する細胞濃度を決定する。コールターカウンターは、中央計算システムに信号を送信する。中央計算システムは血液の計算した容量及び細胞濃度から1又は2以上のシリンジ10及び11によってチャンバー6中に注入するのに必要である、適切な抗体量を決定する。ぜん動ポンプは、ポンプを停止させる中央計算システムから信号が受信されるまで、バッグ4から血液を吸引し続ける。中央計算システムからの信号は、他の細胞が窓8を通過しないことをコールターカウンター9が感知する時に送信される、コールターカウンター9から中央計算システムへの信号に応答して送信される。
【0109】
次に中央計算システムは、配管15を介してチャンバー6中に所定量の抗体を注入するために1又は2以上のシリンジ10、11を圧縮する、シリンジ10,11に付いているステッパーモータ(図示なし)に信号を送信する。
【0110】
次に装置は、バルブ16を開くことにより(バルブ16を開閉する機構は、中央計算システムによって制御されうる)二酸化炭素注入ポート14を通じて二酸化炭素を随意的に導入する。加えられる二酸化炭素の量はチャンバー6、チューブ7、20及び出力血液バッグ19中のすでにわかっている空気量と、入力血液バッグから計算される血液量とに基づいて、中央計算システムにより計算される。チャンバー6中の二酸化炭素の最終濃度は、約5%となる。二酸化炭素は、配管15を介してチャンバー6中に導入される。二酸化炭素は、配管15中に残存している抗体を吹き飛ばし、放出された全ての抗体がチャンバー6に加えられるようにしている。一度空になった入力血液バッグ4は、空気胞として機能し、二酸化炭素の導入に続いて付加的なガスの量を調整する。
【0111】
装置は、中央計算システムの制御下にあり、チャンバー6の下部に設けられ、25℃から37℃の間にチャンバー6中の温度を制御する加熱装置(図示なし)をさらに有していてよい。加熱装置に連結している自動温度調節器が過剰加熱や加熱不足を防止する。
【0112】
次に血液及び抗体試薬は、一定時間、チャンバー6でインキュベーションされる。適切なインキュベーション時間は24時間を超えず、該時間は4時間8時間の間であることが好ましい。選択された時間は、逆分化反応が生じるのに充分である必要がある。
【0113】
インキュベーションの間、パドルアーム17は抗体と血液とを混合させるためにゆっくり回転する。
【0114】
インキュベーション時間の完了時に、パドルアーム17は、回転を続けてチャンバー6の表面に付着した細胞を取り去るスクレーパとして効果的に働き、これにより細胞の回収が容易となる。ぜん動ポンプは、チャンバー6底部からチャンバー6の内容物(すなわち、幹細胞である未分化細胞を含む血液)を出力血液バッグ19中に吸引する。該ポンプは、(目盛付きのぜん動ポンプを用いて測定されるように)測定量の血液が出力血液バッグ19に入るまで吸引を続ける。
【0115】
最後に、ヒートシール装置21が、配管20を固定して配管20を長さ約2cmにシールし、次に該シール装置21が該シールの概ね中央部分で配管20を切断する。
【0116】
装置1は、過程が終了することを使用者に知らせてもよい。
【0117】
次に使用者は、出力血液バッグ19を取り除くことができる。配管7,20及び入力血液バッグ4と共に、チャンバー6は廃棄されてよい。
【0118】
必要であれば、出力血液バッグ19は、形態的変化も指標として用いることができるが、例えば未分化細胞の特徴である細胞表面マーカーを有する細胞を同定するシステムなどの精製システムに移動することもできる。該精製システムは、抗体試薬を除去するために、及び/又は未分化(幹)細胞を随意的に増殖させるために用られてもよい。好ましい精製システムは、CliniMACs/Isolex精製システムである。
【0119】
II.未分化細胞及び分化細胞
インビボで見つかっている未分化細胞及び分化細胞はたくさんあり、一般的技術分野はかかる細胞についての各種一般的技術に満ちている。
【0120】
例えば、造血細胞系譜に関して、なかでもLevitt and Mertelsman1995(Marcel Dekker Inc社により出版されたHaematopoietic Stem Cells、特に第4559頁)及びRoitt et al.(Immunology、第4版、Roitt,Brostoff and Male(編)1996、Publ.Mosby、特に第10章)を挙げることができる。
【0121】
未分化細胞は、成熟した分化特性を示さないが、かかる特性を示す前駆体を産生することができる未成熟細胞である。公地の未分化細胞の例としては、幹細胞がある。
【0122】
幹細胞は、自己再生(限りない細胞分裂)及び分化(特異化)することができる未分化未成熟細胞である。かかる幼若細胞は、発達段階にある胚において豊富である。しかし該細胞の数は、成長が進むにしたがって減少する。対照的に成体は、特定の体の部分に限って、限られた数の幹細胞を有する。
【0123】
幹細胞は、単能性(monopotent)、両能性(bipotent)又は分化多能性のいずれかであると一般的に考えられている。単能性幹細胞及び両能性幹細胞は、発達過程においてより制限されていることから、1又は2タイプの特異化細胞をそれぞれ生じさせるにとどまる。対照的に、分化多能幹細胞(PSC)は、多くの異なるタイプの細胞に分化することができることから、(生体を構成する)組織、又は分化全能幹細胞の場合には完全な生体を生じさせる。
【0124】
分化多能幹細胞は、単能性細胞や両能性細胞と異なり、複数の系譜に分化することができ、異なるタイプ又異なる系譜の細胞の集合からなる組織を生じさせる。
【0125】
造血幹細胞は、骨髄細胞中で見つかった分化多能幹細胞の一例であり、(白血球や赤血球を含む)全ての各種血液細胞を生じさせる。
【0126】
血液は、液体組織であり、リンパ球(Ly),単球(Mo),好中球(Ne),好塩基球(Ba),好酸球(Eso),血小板(Pl)及び赤血球細胞(Rbc)からなる。図3を参照されたい。かかる特異化組織は、造血幹細胞(Hsc)の分化により産生される。一般的に、(より大きな枠内で)白血細胞は感染物と戦うが、(より小さな枠内で)赤血細胞は体内で栄養素、酸素及び廃棄物を搬送している。
【0127】
これまで、造血幹細胞は、(i)骨髄、(ii)成長因子動員末梢血(growthfactor mobilised peripheral blood)又は(iii)臍帯血(胎盤)から単離することにより抽出されていた。近年、造血幹細胞は、インビトロでの授精技術を用いて得た胚から抽出される胚幹(ES)細胞から調製されるようになった。かかる未分化細胞は、複数の系譜への分化と、全ての体組織の再構成とを行うことができる。すなわち該未分化細胞は分化全能である。
【0128】
上記抽出方法は、手間がかるうえに時々危険であり、特に胚幹細胞抽出方法の例のように、場合によっては非倫理的であると批判される可能性がある。
【0129】
造血系譜の未分化幹細胞には多くの種類がある。かかる細胞には、分化多能幹細胞(PSC),リンパ系幹細胞(LSC)及び骨髄性幹細胞(MSC)などの総称的にリンパ球造血(lymphohaematopoietic)前駆細胞(LPC)として知られているものが含まれる。
【0130】
LSC及びMSCは、PSCの分化によってそれぞれ形成される。よって、LSC及びMSCは、PSCよりもさらにコミットしている。
【0131】
造血系譜の分化細胞の例には、T細胞,B細胞,好酸球,好塩基球,好中球,巨核球,単球,赤血球,顆粒球,肥満細胞,リンパ球が含まれる。
【0132】
T細胞及びB細胞は、LSCの分化によって形成される。よって、T細胞及びB細胞は、LSCよりもさらにコミットしている。より詳しくは、分化の連鎖が、LSC→proB細胞又は前胸腺細胞であり、proB細胞→preB細胞→成熟B細胞→形質細胞となり、前胸腺細胞→通常の胸腺細胞→成熟胸腺細胞(ヘルパー/インデューサ系譜又は細胞毒/サプレッサ系譜)となる。図4を参照されたい。
【0133】
好酸球,好塩基球,好中球,巨核球,単球,赤血球,顆粒球,肥満細胞,ナチュラルキラー細胞及びリンパ球は、MCSの分化によって形成される。よって、前記各細胞は、MSCよりもさらにコミットしている。より詳しくは、分化の連鎖が、MSC→未成熟巨核球(→巨核芽球→巨核球→血小板)又は前赤芽球(→赤芽球→網状赤血球→赤血球)又は骨髄単球幹細胞、骨髄芽球(→前骨髄球→骨髄球→顆粒球)又は単芽球(→前単球→単球→マクロファージ)のいずれかに分化する両能性(biotent)幹細胞となる。図5を参照されたい。
【0134】
造血系の分化経路は、幅広く特徴づけられており、各種細胞ステージは、形態及び系譜特異的な細胞表面マーカーによって容易に同定することができる(下記参照)。
【0135】
他の幹細胞には、神経幹細胞、すなわち神経,星状細胞及びオリゴデンドロサイトを生成することができる分化多能細胞が含まれる(Nakafuku and Nakamura,1995,J.Neurosci Res.,vol 41(2):153−68;Anderson,1994,FASEB J.,vol 8(10):707−13;Morshead et al.,1994,Neuron,Vol13(5):1071−82)。骨格筋衛星細胞は、別のタイプの幹細胞であり、より詳しくは成体において静止幹細 胞として維持される筋形成細胞という別のクラスであり、必要な場合に新規の筋肉細胞を生じさせる(Bischoff,1986,Dev Biol.,Vol 115(1):129−39)。他のタイプの幹細胞としては、上皮幹細胞,基底細胞の一部,内胚葉幹細胞及び間充織幹細胞がある。
【0136】
大変重要な幹細胞は、胚幹(ES)細胞である。かかる細胞は、幅広く研究され、特徴づけられてきた。実際、ES細胞は、トランスジェニック動物の作製において通常用いられる。ES細胞は、リンパ系前駆体(Potocnik et al.,1994,EMBO J.,vol.13(22):5274−83)及び神経細胞を含む多くの細胞タイプにインビトロで分化することが示されてきている。米国特許第5,843,780号及び米国特許第6,200,806は、霊長類のES細胞の単離方法を開示している。ES細胞は、ステージ特異的な胚マーカー3及び4(SSEA−3及びSSEA−4)や、高分子量グリコプロテインであるTRA−1−60及びTRA−1−81や、アルカリホスファターゼなどの多くのステージ特異的マーカーによって特徴づけられる(Andrew et al.,1984,Hybridoma,vol.3:347−361;.Kannagi et al.,1983,EMBO J.,vol.2:2355−2361;Fox et al.,1984,Dev.Biol.,vol.103:263−266;Ozawa et al.,1985,Cell.Differ.,vol.16:169−173)。
【0137】
各種抗原は、未分化細胞及び分化細胞と会合する。「会合(associated)」という文言は、各種抗原を発現する若しくは発現することができる、又は各種抗原を提示する若しくは提示することができる、又は各抗原を含む細胞を意味する。
【0138】
最も未分化である細胞及び最も分化した細胞は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI抗原及び/又はクラスII抗原を有する。かかる抗原が前記細胞と会合する場合、該細胞はクラスI細胞及び/又はクラスII細胞と呼ばれる。
【0139】
未分化細胞又は分化細胞と会合する各特異的抗原は、マーカーとして機能する。よって、異なるタイプの細胞は、前記会合特異的抗原に基づいて又は会合抗原の特異的結合性に基づいて、それぞれ区別されうる。
【0140】
かかるマーカー抗原の例には、CD34、CD19及びCD3の抗原が含まれる。前記抗原が現れた場合、前記特定細胞はそれぞれCD34細胞、CD19細胞及びCD3細胞と呼ばれる。前記抗原が現れなかった場合、前記細胞はそれぞれCD34細胞、CD19細胞及びCD3細胞と呼ばれる。
【0141】
さらに詳しくは、PSCは、CD34,DR,TdT細胞(他の有用なマーカーがCD38及びCD36)である。LSCは、DR,CD34及びTdT細胞(さらにCD38細胞も)である。MSCは、CD34,DR,CD13,CD33,CD7,TdT細胞である。B細胞は、CD19,CD21,CD22及びDR細胞である。T細胞は、CD2,CD3及びCD4又はCD8細胞である。未成熟リンパ球は、CD4又はCD8細胞である。活化されたT細胞は、DR細胞である。ナチュラルキラー細胞(NK)は、CD56及びCD16細胞である。Tリンパ球は、CD7細胞である。白血球は、CD45細胞である。顆粒球は、CD13及びCD33細胞である。単核マクロファージ細胞は、CD14及びDR細胞である。さらなる詳細は、図4及び図5に記載されている。
【0142】
胚幹細胞は、SSEA−3及びSSEA−4と、高分子グリコプロテインであるTRA−1−60及びTRA−1−81と、アルカリホスファターゼを発現する。 また該細胞は、分化の指標となるSSEA−1を発現しなかった。他のマーカーは、神経上皮幹細胞に対するネスチン(nestein)などの、他のタイプの幹細胞について公知である(J.Neurosci.1985,vol.5:3310)。間充織幹細胞は、例えばSH2、SH3、 CD29,CD44,CD71,CD90,CD106,CD120a及びCD124に対してポジティブであり、CD34,CD45及びCD14に対してネガティブである。
【0143】
他の方法として又は前記方法に加えて、細胞の多くは、形態学的特徴によって同定することもできる。随意的に染色技術を使用してもよい、顕微鏡を用いての細胞の同定は、組織学という名の大変発達した科学分野であり、関連技術は、当該技術分野において広く共有されている。細胞を明確に染色することは、染料が一般的に細胞を殺してしまうことから、同定を確かめるために細胞の割合に基づいてのみ行われる。
【0144】
よって、上記の抗原マーカーの存在を調べることにより、特定の細胞タイプ(例えば、細胞が未分化細胞又は分化細胞のいずれであるかなど)及び細胞タイプの特異性(例えば、細胞がT細胞又はB細胞のいずれであるかなど)を同定することができる。
【0145】
未分化細胞は、抗原提示、抗原捕捉又は抗原認識に関与する部分を有していてよい。未分化細胞は、MHCクラスI細胞及び/又はMHCクラスII細胞であることが好ましい。
【0146】
よりコミットした細胞は、抗原提示、抗原捕捉又は抗原認識に関与する部分を有していてよい。よりコミットしている細胞は、MHCクラスI細胞及び/又はMHCクラスII細胞であることが好ましい。
【0147】
よりコミットした細胞は、未分化細胞から得られる、又は未分化細胞から得ることが可能な細胞である。よって、好ましい実施形態において、よりコミットした細胞も未分化細胞である。したがって、一例として、よりコミットした未分化細胞はリンパ系幹細胞又は骨髄幹細胞であってよく、未分化細胞は分化多能幹細胞であってよい。
【0148】
好ましい他の実施形態では、よりコミットした細胞は、CFC−T細胞,CFC−B細胞,CFC−Eosin細胞,CFC−Bas細胞,CFC−Bas細胞,CFC−GM細胞,CFC−MEG細胞,BFC−E細胞,CFC−E細胞,T細胞,B細胞,好酸球,好塩基球,好中球,単球,巨核球や赤血球などの分化細胞であり、未分化細胞は骨髄幹細胞、リンパ系幹細胞又は分化多能幹細胞である。
【0149】
よりコミットした細胞が分化細胞である場合、該分化細胞が(活化されている又は活化されていない)Bリンパ球,(活化されている又は活化されていない)Tリンパ球,マクロファージ単球系譜由来の細胞,クラスI又はクラスII抗原を発現することができる核形成細胞,クラスI又はクラスII抗原の発現を誘導することができる細胞,及び核形成細胞(すなわち、赤血球細胞など、核を有さない細胞)であることが好ましい。
【0150】
好ましい他の実施形態において、分化細胞は、CD56及び/又はCD16細胞表面受容体をそれぞれ発現する、大型顆粒リンパ球,ヌルリンパ球及びナチュラルキラー細胞からなる細胞の群からいずれか1つ選択される。
【0151】
分化細胞は、核形成細胞の核形成によって形成されてもよい。
【0152】
III.試薬
試薬は、よりコミットした細胞に作用して該細胞を未分化細胞に逆分化させる。この点について、よりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化するための試薬は、該細胞に直接関与する形又は間接的に関与する形で作用してもよい。
【0153】
試薬は、よりコミットした細胞の細胞内部で作用してよい。しかし、該試薬は、よりコミットした細胞の外部で作用することが好ましい。
【0154】
直接的関与の例は、よりコミットした細胞が、試薬が細胞表面受容体に直接関与し、B細胞で見つけることができるような相同領域(同一又は類似の配列を有することが一般的にわかっている領域)を有するβ鎖などの、細胞表面上に少なくとも1つの細胞表面受容体を有する場合である。他の例は、よりコミットした細胞が、試薬が細胞表面受容体に直接関与し、T細胞で見つけることができるような相同領域を有するα鎖などの、細胞表面上に少なくとも1つの細胞表面受容体を有する場合である。
【0155】
間接的関与の例は、よりコミットした細胞が細胞表面上に細胞表面受容体を少なくとも2つ有しており、該受容体の一つと試薬とを関与させることで、よりコミットした細胞の逆分化を誘導する他の受容体に作用する場合である。
【0156】
よりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化する試薬は、化学化合物又は化学組成物であってよい。しかし、試薬はよりコミットした細胞表面上で細胞表面受容体を関与させることができることが好ましい。よって、好ましい実施形態において、試薬は、よりコミットした細胞によって発現される受容体などの、よりコミットした細胞によって発現することができる受容体であって、よりコミットした細胞の表面上に存在する受容体に関与することができる。
【0157】
例えば、好ましい試薬には、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP),CD4分子,CD8分子,T細胞受容体の一部又は全部,(固定された又は遊離な)リガンド,ペプチド,T細胞受容体(TCR),抗体,交差反応抗体,モノクロナール抗体又はポリクロナール抗体のうちの1又は2以上が含まれる。例えばエリトロポエチンや顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF)などの造血成長因子などの成長因子も用いられうる。
【0158】
試薬が抗体,交差反応抗体,モノクロナール抗体又はポリクロナール抗体である場合、該試薬が、MHCクラスII抗原のβ鎖,MHC HLA−DR抗原のβ鎖,MHCクラスI抗原又はMHCクラスII抗原のα鎖,HLA−DR抗原のα鎖、MHCクラスII抗原の又はMHCクラスI抗原のα鎖及びβ鎖のうち1又は2以上に対する、抗体、交差反応抗体、モノクロナール抗体又はポリクロナール抗体のうちの1又は2以上であることが好ましい。好ましい抗体の一例は、(Dako社が供給する)CR3/43である。
【0159】
「抗体」という文言には、(タンパク質の分割又は組換え技術のいずれから派生しているかにより)抗Fab抗体や,抗F(ab’)抗体や,抗scFv抗体や,該抗体の擬似物(mimetics)やバイオソスターズ(bioisosteres)などの、結合活性を保持する各種フラグメント、及び誘導体が含まれる。他に抗体に含まれるものとしては、アミノ酸配列の幾つかが例えば結合を促進させるためにアミノ酸残基の置換により改変された、遺伝子工学的に作製された変種や、有害な免疫反応の可能性を減少させるために、本発明の方法に従って処理されることを要する細胞を有する生物体と異なる種において抗体が作製される、遺伝子工学的に作製された変種がある(例えば、「ヒト化」マウスモノクロナール抗体がその一例である)。
【0160】
よりコミットした細胞を未分化細胞に転換するのに用いられる試薬は、よりコミットした細胞の細胞外で作用することが好ましい。特に、よりコミットした細胞が該試薬によって随意的に関与することができる受容体を有し、試薬が該受容体に随意的に関与することが好ましい。
【0161】
例えば受容体は、細胞表面受容体であってよい。細胞表面受容体の具体例には、MHCクラスI受容体及びMHCクラスII受容体が含まれる。該受容体は、MHCクラスI受容体又はMHCクラスII受容体の場合と同様に、α−部分(α−component)及び/又は、β−部分(β−component)を有していることが好ましい。
【0162】
さらに、前記受容体は、例えば少なくともHLA−DRのB鎖との相同領域などの相同領域を有するβ鎖を有することが好ましい。
【0163】
あるいは、又はさらに、前記受容体は、例えば少なくともHLA−DRのα鎖との相同領域などの相同領域を有するα鎖を有する。
【0164】
前記受容体は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のクラスI抗原又はクラスII抗原であることが好ましい。好ましい実施形態において、細胞表面受容体は、HLA−DR受容体,DM受容体,DP受容体,DQ受容体,HLA−A受容体,HLA−B受容体,HLA−C受容体,HLA−E受容体,HLA−F受容体又はHLA−G受容体のうちから選ばれる受容体である。さらに好ましい実施形態において、該細胞受容体はHLA−DR受容体である。
【0165】
前記試薬は前記受容体に対する抗体であることが好ましく、さらに前記試薬は前記受容体に対するモノクロナール抗体であることが好ましい。
【0166】
試薬の好ましい他の実施例では、MHCクラスI発現及び/又はMHCクラス発現などのMHC遺伝子発現を調節する試薬である。
【0167】
好ましい実施形態において、該試薬は、生物反応修飾物と共に用いられる。生物反応修飾物の例には、アルキル化剤,免疫調整剤,成長因子、サイトカイン、細胞表面受容体、ホルモン、核酸、ヌクレオチド配列、抗原又はペプチドが含まれる。アルキル化剤は、シクロホスホアミドであるか、該物質を含むものであることが好ましい。
【0168】
他の好ましい生物反応修飾物には、MHCクラスI抗原発現及び/又はMHCクラスII抗原発現をアップレギュレートすることができる化合物が含まれる。好ましい実施形態には、より効果的に作用するために試薬がMHC受容体に結合できるために、そのようになっている。
【0169】
MHCクラスI抗原及び/又はMHCクラスII抗原を発現させるためにいかなるタイプの細胞を用いることができるので、幅広い各種細胞タイプがクラスI抗原及び/又はクラスIIMHC抗原を構造的に発現するか否かにより、該各種細胞に逆分化の方法が提供されるであろう。
【0170】
IV.逆分化細胞の方法
本発明の方法において、コミットした細胞を含む細胞の集団は、該集団中で1又は2以上のコミットした細胞に関与しうる試薬と接触させられる。次に細胞集団は、試薬に作用された前記細胞が逆分化過程を経て最終的に未分化となるように、インキュベーションされる。
【0171】
接触段階は、前記試薬が、クラスI抗原のα鎖の相同領域、クラスII抗原のα鎖の相同領域,CD4細胞表面受容体,CD8細胞表面受容体,リンパ球の存在下におけるクラスII抗原のβ鎖の相同領域,リンパ球の存在下におけるクラスI抗原のα鎖の相同領域,又はリンパ球の存在下におけるクラスII抗原のα鎖の相同領域のうち1又は2以上と関与する試薬を含むことが好ましい。前記接触段階は、生物反応修飾物(上記を参照)の存在下で行われることが好ましい。
【0172】
典型的に細胞集団は、血液組織や骨髄を含む関連組織や,中枢神経系又は末梢神経系由来の神経組織や,筋肉組織や,(例えば口腔から擦り取ることで得た)皮膚由来の表皮組織及び/又は真皮組織などの生体サンプルに由来している。生体材料は、生後由来のものであることが好ましい。被験者からの採取が最小限の医療監督で行うことができることから、血漿やバフィーコートなどの全血又はその産生物を用いることが好ましい。血液サンプルは、ヘパリンやクエン酸などの抗凝固剤でもって典型的に処理される。生体サンプル中の細胞は、特定の細胞を増殖させ、特定の細胞を除去し又は組織全体から細胞を分離させるために処理されてよい。細胞を精製する又は分離するのに有用な方法には、(例えば密度勾配遠心分離などの)遠心分離、フローサイトメトリーや(細胞表面マーカーに対するモノクロナール抗体を含む磁気ビーズの使用やパンニング(panning)などの)アフィニティークロマトグラフィーが含まれる。(Vettese−Dadey The Scientist(Sep.13 1999)13(18):21)を参照のこと)。例えば、Ficoll−Hypaque分離は、リンパ球や単球などの単核細胞を残すために赤血球や顆粒球を除去するのに用いられる。
【0173】
前記細胞は、本質的に1次培養物であるので、細胞集団の生存を維持させるために適切な栄養素を用いて補助する必要がある。適切な培養条件は、当該技術分野における通常の知識を有する者によって知られている。しかし、細胞集団の処理は、典型的には12時間以内に、好ましくは2〜4時間以内に、患者から得た生体サンプルの除去を行った後できるだけ早く開始することが好ましい。細胞の生存性は、トリパンブルー排除(trypan blue exclusion)試験などの公知の技術を用いることで確認される。
【0174】
細胞集団は、少なくとも2時間、典型的には2〜24時間、好ましくは2〜12時間、試薬を用いて通常インキュベーションされる。インキュベーションは、例えば33℃を含む室温約22℃〜約37℃までの間で典型的に行われる。逆分化過程の進行状況は、サンプルを少量取り出して、顕微鏡及び/又はサイトメトリーを用いて細胞を調べることにより、経時的に確認することができる。他の方法としては、装置が逆分化過程の進行状況をオンラインでモニターする追跡手段を備えていてもよい。
【0175】
所望の細胞タイプの相対量が、例えば低くて0.1%程度、高くて5%程度という適切レベルにまで増加したら、残存の改変された細胞集団を各種方法で用いてもよい。形成された未分化細胞の数に関しては、幹細胞の増殖能力を調べることが重要である。形成された幹細胞又は他の未分化細胞の数は状況により低いようであるが、わずか50個の分化多能造血幹細胞がドナーマウス中の造血システム全体を再構成することができることが研究で明らかにされている。よって、医療用途として大量の細胞を形成する必要はない。
【0176】
よりコミットした細胞の未分化細胞への転換は、患者に前記試薬を投与し、医療用保持体又は希釈剤で混合させることにより、インビボで行うこともできる。しかし多くの場合、逆分化はインビトロ/エクスビボで行われることが好ましい。
【0177】
インビトロで得た処理済みの細胞集団は、最小手順でもって徐々に用いることができる。例えば、細胞集団は医療用に容認された保持体又は希釈剤と簡単に結合し、幹細胞を必要とする患者に投与することができる。
【0178】
しかし、未分化細胞の細胞集団を増殖させたり、該細胞集団から得られた細胞を精製する方が好ましいようである。かかる過程は、多くの方法(Vattese−Dadey−The Scientist 13(18):21 Sep 1999を参照)を用いて通常行うことができる。本発明の装置は、かかる未分化細胞を増殖させるために、又は改変された細胞集団からかかる未分化細胞を回収するために、精製又は単離手段を随意的に含むことができる。例えば、細胞は、クロマトグラフィー及び/又はフローサイトメトリーを用いて細胞表面マーカーに基づき精製されてもよい。しかし、細胞集団中に存在する他の細胞(例えば間質細胞)が幹細胞の生存及び機能を維持することもあるため、細胞集団から未分化細胞を大幅に精製することは必要でなく又好ましくないこともしばしばある。
【0179】
フローサイトメトリーは、細胞を分別するのと同様、混合集団内で細胞を特徴づける、確立され、信頼性が高く、かつ強力な技術である。よって、精製又は単離手段は、フローサイトメーターを有していてよい。フローサイトメトリーは、光線を用いて調べた時に区別することができる懸濁液中の粒子の物理的特徴に基づき行われる。かかる粒子は、もちろん細胞でもありうる。物理的特徴には、細胞のサイズ及び構造、又は近年大変広まってきた、蛍光分子と共役するモノクロナール抗体によって結合される細胞表面マーカーが含まれる。
【0180】
Kresseg et al.,1994,J.Hematother 3(4):263−89は、「抗CD34モノクロナール抗体が利用可能になったことから、マルチパラメータフローサイトメトリー(multiparameter flow cytometery)は、造血幹細胞細及び造血前駆細胞を測定するために道具として選べるようになってきた。」と述べており、続けてフローサイトメトリーによるCD34発現細胞の定量化及び特徴づけに対する一般的技術について記載している。さらに、Korbling et al.,1994,Bone Marrow Transplant.13:649−54は、免疫吸収によるCD34細胞の精製方法とそれに続くHLA−DRに基づくフローサイトメトリーを教示している。上記のように、CD34は、幹細胞/前駆細胞と関連する有用なマーカーである。
【0181】
他の物理的特徴づけに基づいて幹細胞を分別するためのフローサイトメトリー技術も用いることができる。例えば、Visser et al.,1980,Blood Cells 6: 391−407は、幹細胞がサイズ及び構造化された程度に基づいて単離することができることを教示している。Grogan et al.,1980,Blood Cells,6:625−44も、「生存可能な幹細胞は、高度で検証可能な精度で単純な造血組織から分別されうる。」ことを教示している。
【0182】
細胞表面マーカー又は他の物理的特性(ポジティブセレクション)の存在に基づいて細胞を選択する方法と同様に、細胞集団は、ネガティブな判定基準を用いて増殖及び精製されうる。例えば、CD4,CD8,CD42,CD3などの系譜特異的マーカーを有する細胞は、フローサイトメトリー又はアフィニティークロマトグラフィーによって細胞集団から除去されうる。
【0183】
細胞を精製するのに大変有用な技術には、磁気ビーズと結合した抗体又は他のアフィニティーリガンドを用いることが含まれる。該ビーズは細胞集団とインキュベーションされ、アフィニティーリガンドが結合する、例えばCD34などの細胞表面マーカーを有する細胞が捕らえられる。細胞を含むサンプルチューブは、ビーズがチューブ側面に引き付けられる磁気サンプル濃縮器(magnetic sample concentrator)中に設置される。1又は2以上の洗浄過程を経た後、所望の細胞は、部分的に又は実質的に完全に他の細胞から精製される。ネガティブセレクション形式で用いられた場合、液体相を廃棄することによりビーズに結合した細胞を洗浄するかわりに液体相は維持され、その結果、ビーズに結合した細胞が細胞集団から効果的に除去される。
【0184】
これらアフィニティーリガンドに基づく精製方法は、適切なマーカーが特徴づけられている又は特徴づけられうる、いかなる細胞タイプでも用いることができる。
【0185】
Urbankova et al.,1996.(J.Chromatogr B Biomed Appl.687:449−52)は、重力によるフィールドフロー分割(gravitational filed−flow fractionation)によってマウス骨髄懸濁液から造血幹細胞をミクロ精製すること教示している。さらにUrbankova et al.1996は、該細胞が骨髄中の他の細胞よりも大きく、混合物から該細胞を分別することが可能であることから、該方法がマウス骨髄からの幹細胞を特徴づけるのに用いられていたと述べている。よって、細胞表面マーカー以外の他の物理的パラメータは、幹細胞の精製/増殖に用いられうる。
【0186】
本発明の方法により作製された未分化細胞及び精製された未分化細胞を含む細胞集団は、公知の方法を用いてインビトロで維持することができる。典型的には、前記細胞にとって適切な生育環境を提供するために、FBSなどの哺乳類血清と随意的に自家血漿とを添加した、Hanks,RPMI 1640,Dulbecco’s Minimal Essential Media(DMEM)又は、Iscove’s Modified Dulbecco Mediumなどの最小成長培地が用いられる。好ましい実施形態では、幹細胞は、間質細胞層などの支持細胞層上で培養される(Deryugina et al.,1993,Crit Rev.Immunology,vol.13:115−150を参照)。間質細胞は、前駆細胞を未分化状態に維持する因子を分泌すると考えられている。幹細胞の長期培養システムは、Dexter et al.,1997(J.Cell Physiol,vol.91:335)及びDexter et al.,1979(Acta.Haematol.,vol.62:299)に記載されている。
【0187】
例えば、Lebkowski et al.,1992(Transplantation 53(5):1011−9)は、ヒトCD34造血細胞がポリスチレン表面上に共有的に固定されたモノクロナール抗体の使用に基づく技術を用いて精製されうること、及び該方法により精製されたCD34細胞が85%よりも高い生存率で維持されることを教示している。Lebkowski et al.,1993(J.Hematother,2(3):339−42)は、ヒトCD34細胞をどのように単離して培養するかも開示している。各種方法の概説については、Haylock et al.,1994(Immunomethods,vol.5(3):217−25)も参照されたい。
【0188】
幹細胞同定の確認は、CFCアッセイ(実施例も参照)など様々なインビトロアッセイでもって行うことができる。非常に原始的な造血幹細胞は、長時間培養開始細胞(LTC−IC)アッセイ(Eaves et al.1991.J.Tiss.Cult.Meth.Vol13:55−62)を用いてしばしば測定されている。LTC−ICは、造血系を5−12週間維持する。
【0189】
未分化細胞、及び未分化細胞を含む精製調製物を含む細胞集団は、将来利用するために凍結されてもよい。細胞を凍結させてその後解凍する適切な技術は、当該技術分野においてすでに公知である。本発明の装置は、未分化細胞、及び/又は未分化細胞を含む精製調製物を含む細胞集団を凍結させる凍結手段をさらに随意的に有していてもよい。
【0190】
一側面において、逆分化は、バフィーコート血液サンプルから得た細胞又はバフィーコート血液サンプル中の細胞に対して生じていることが好ましい。「バフィーコート(buffy coat)」という文言は、未凝固の血液が遠心分離され又は放置された時、赤色細胞層と血漿との間に形成される白色細胞層を意味する。
【0191】
V.細胞集団中における正常分化細胞の割合の変位(displacement)
正常な組織では、所定の時間における分化細胞及び未分化細胞を含む各種タイプの細胞の相対数は、通常一定である。例えば、健康な21歳の人の白血球の数は、典型的に1mlにつき約8×10個で、そのうち27%がリンパ球、6%が単球及び67%が顆粒球である。(相対数及び絶対細胞数の両方を含めて)かかる細胞レベルは、B細胞慢性リンパ性白血病(BCLL)の患者の白血病の血液の例のように、疾患中に混乱する。
【0192】
分化細胞の相対数(すなわち割合)は、ヒストペーク(histopaque)上に全血又はバフィーコートを敷くことにより、顆粒球を除去し、つまり、分化細胞を未分化細胞に逆分化させ、それが置換した細胞を補給するためにかかる未分化細胞が自己再生(増殖)して各種細胞タイプに逆分化するなどにより、例えば単核細胞画分中で混乱させ、妨害し又は転換させる(perturb,disturb or displace)ことができる。
【0193】
分化細胞の相対数(すなわち割合)は、(密度勾配培地上で遠心分離することにより又は抗体でコートされた磁気ビーズを用いるネガティブセレクションにより)赤血球、血小板、顆粒球、単球及びTリンパ球を除去した後に、例えば(健康な血液ドナーから得た)バフィーコート中で混乱させ、妨害し又は転換させることができる。かかる処理は、特定のタイプの分化細胞のネガティブセレクション又は増殖と呼ぶことができ、転換された組織の例である。かかる細胞を培養した後、例えばIscove’s Modified Dulbeccos Medium(ISDM)などのカルシウム含有培地において培養され、分化細胞は未分化細胞に逆分化して、該未分化細胞は転換された細胞を補給するために自己再生(増殖)し、各種細胞タイプに再分化する。
【0194】
かかる過程の間、細胞は、逆分化を行うためにまずコロニーを形成する(ホモサイト凝集(homocytic aggregation)を行う)ことが観察されている。よりコミットした細胞が未分化細胞に転換したら、該細胞は転換された細胞の相対数を補給しようとして、各種の再分化細胞タイプに増殖及び発達する能力を獲得する。
【0195】
細胞集団中の正常な分化細胞の割合を転換することができる逆分化手段には、例えば(純粋及び共役の、すなわち磁気,ガラスやポリスチレンビーズなどの固定リガンド又は遊離リガンドに結合した)抗体,Histopaque,LymphoPrep又は細胞密度に従って細胞を分別するのに用いられるいかなる密度勾配培地,又は(例えば、赤血球の沈降を引き起こすことができる)Dextranを含む。他の適切な逆分化手段は、Vettese−Dadeyによる論文中に記載されている(The Scientist(Sep.131999)13(18):21を参照)。
【0196】
転換された細胞をEDTA、EGTA及びヘパリンを含む適切なキレート試薬(キレート試薬は、ここでは生物反応修飾物とみなされる)に露出することにより、さらによりコミットした細胞が未分化細胞に逆分化することができる。例えば、コルチゾンを含有するカルシウム含有培地中で細胞を培養後に、転換された細胞をEDTAに所定の時間露出すると、よりコミットした細胞が未分化細胞に逆分化する。次にかかる細胞は、自己再生して新規の分化経路を辿り、バースト形成単位−赤芽球(BFU−erythroid)などの赤芽球前駆体を生じさせる。該赤芽球前駆体は培養され、長時間増殖させ、赤血球疾患及び赤血球欠乏の治療に用いられうる。
【0197】
VI.細胞集団を含む培地の遊離イオン濃度の変更
一定時間、例えばEGTAなどのイオンキレート剤中に分化細胞を露出した後に、例えばIMDMなど、ヒドロコルチゾンを含有するカルシウム含有培地中でかかる細胞を培養すると、よりコミットした細胞が未分化細胞に逆分化する。次にかかる細胞は、順に自己再生して、最終的に血小板を生じさせる巨核球コロニー形成単位(CFU Meg)などの巨核球前駆体を生じさせる新規の分化経路を辿る。
【0198】
VII.未分化細胞を再コミットさせる方法
本発明の未分化細胞の重要な応用の一つは、例えば神経細胞や造血細胞などの組織の再構成である。該再構成には、本発明の方法により作製された未分化細胞を分化する過程が含まれる。該再構成は、典型的に骨髄や、脊髄や肺など特定部位において、患者に未分化細胞を単に投与して、患者体内の自然な生理的条件でもって分化を生じさせることにより行うことができる。かかる再構成の具体例としては、例えばCD4リンパ球の数が減少したエイズ患者における、造血システムの再構成又は補強がある。
【0199】
他の方法として、分化(ここでは「再コミット」とも呼ぶ)は、インビトロで行われ、細胞を増殖させ、その後例えば治療として投与されてよい。該分化は、成長因子を投与することにより一般的に行われる。例えば、レチノイン酸がES細胞を神経細胞に分化させるためにこれまで用いられてきた。骨髄間質細胞株及びIL 7との共培養を後に行うが、メチルセルロースが、ES細胞をリンパ球前駆体に分化するために用いられてきた(Nisitani et al.,1994,Int.Immuno.,vol.6(6):909−916)。Le Page(New Scientist 16 December 2000)は、ES細胞が肺上皮細胞に分化できることを教示している。Bischoff,1986(Dev.Biol.,vol115(1):129−39)は、筋衛星細胞が成熟筋繊維にどのように分化するかを教示している。神経前駆細胞は、塩基性繊維細胞増殖因子及び上皮増殖因子を用いて増殖させることができる(Nakafuku and Nakamura,1995,J.Neurosci.Res.,vol.41(2):153−168)。造血幹細胞は、GM−CSF,エリスロポエチン,幹細胞因子やインターロイキン(IL 1,IL 3,IL 6)などの増殖因子を数多く用いて増殖させることができる。かかる各種因子の概説は、Metcalf,1989(Nature,vol.339:27−30)を参照のこと。
【0200】
Potocnik et al.,1994(EMBO J.,vol.13(22):5274−83)は、低酸素(5%)条件を用いて、ES細胞が造血細胞に分化することをさらに示した。
【0201】
よって、本発明の好ましい実施形態において、未分化細胞は、分化細胞などの再コミットした細胞にコミットする。再コミットした細胞は、未分化細胞が得られたよりコミットした細胞と同一の系譜であってよい。あるいは、再コミットした細胞は、未分化細胞が得られたよりコミットした細胞と異なる系譜であってよい。例えば、Bリンパ球は、CD34CD38 HLA DR幹細胞に逆分化してもよい。該幹細胞は、B細胞系譜(同一の系譜)又はリンパ系譜(異なる系譜)に従って、続けて再コミットしてもよい。
【0202】
分化細胞などの再コミットした細胞に未分化細胞をコミットさせることは、当業者にとってすでに公知の各種方法でもって行うことができる。重要なことは、特定の方法及び特定の培地で未分化細胞を培養することにより、選択された細胞への分化を行うことができる点である。
【0203】
ほんの一例として、未分化細胞は、以下の培養形態に従って心筋細胞に分化することができる。
【0204】
第1日目:汚染された繊維芽細胞からの培養物を得るために、ゼラチン化したプレート上に通常の密度で未分化細胞を置く。
【0205】
コロニーが除去されるまで通常の手順で細胞をトリプシン化する。緩やかに結合している細胞の固まりを維持するために、静かに扱う。次に、白血病阻害因子(LIF)を含まないES細胞培養培地の細菌勾配(bacterial grade)ペトリ皿中に1:3の割合で細胞をプレート上に直接置く(以下参照)。
【0206】
第3日目:注意深く培地を吸引する。凝集体をたくさん吸引しないようにする。その後、新規の培地を添加する。
【0207】
第5日目:第3日目と同様に吸引を行い、培地を交換する。
【0208】
第7日目:24ホイール組織培養勾配プレート(24 wheel tissue culture grade plate)中に細胞を置く。
【0209】
第9日目:培地の半分を交換して、撹拌を続ける。
【0210】
第11日目:培地の半分を交換して、撹拌を続ける。
【0211】
さらに一例として、未分化細胞は、以下の手順に従うことによりグリア細胞及び神経細胞に分化することができる。
【0212】
第1日目:おせんされた繊維芽細胞からの培養物を得るために、ゼラチン化したプレート上に通常の密度で未分化細胞を置く。
【0213】
コロニーが除去されるまで通常の手順で細胞をトリプシン化する。緩やかに結合している細胞の固まりを維持するために、静かに扱う。次に、1μMのオールトランス型レチノイン酸(Sigma社から入手可能)を含有する、白血病阻害因子(LIF)を含まない培養培地の細菌勾配(bacterial grade)ペトリ皿中に1:3の割合で細胞をプレート上に直接置く。
【0214】
第3日目:細胞凝集体を回収し、LIF又はRAを含有しないES細胞培養培地における組織培養皿中に(6cmの組織培養皿につき約25個の細胞凝集体の割合で)再度置く。該培地を注意深く吸引する。
【0215】
第8日目:培地の半分を交換する。この日から、細胞の少なくとも10%が神経細胞表現形を示す。該神経表現形は、クレシルバイオレットを用いて特異的に染色され、NCAM抗原に対して強く陽性反応を示す。
【0216】
当業者は、未分化細胞を選択されたいかなる分化細胞にコミットさせる適切な手順は容易にわかることができる。
【0217】
本発明の未分化幹細胞は、通常のいかなる胚幹(ES)細胞培養技術を用いて培養を行ってもよい。ほんの一例として、未分化細胞又はES細胞を培養するのに適切な培地を以下に示す。
【0218】
100mlの培地を調製するために、
DMEM(GIBCO社製,カタログ番号11965062) 80ml
15%のFCS 15ml
Pen/Strep 1ml
L グルタミン 1ml
MEM 非必須アミノ酸(GIBCO社製,カタログ番号11140−0
50) 1ml
Lif(10U/ml) 1ml
BME(0.1M) 0.2ml
Lifは、10U/mlのLIF ESGRO AMRADとして1mlのアンプルで入手でき、該Lifは、100mlのDMEM及び10%のFCSで希釈し、5mlに分注して、−20℃で貯蔵することができる。
【0219】
BMEに関して、0.1mlのBME(14.4M)は、14.3mlのPBSに添加し、0.2ミクロンのアクロディスク(acrodisc)を通じて、−20℃で最高1ヶ月まで貯蔵することができる。
【0220】
さらに適切な培地は、例えばPMEF培地であってよく、100mlの該培地は以下のように調製される。
【0221】
DMEM(GIBCO社製,カタログ番号11965 062) 88ml
10%のFCS 10ml
Pen/Strep 1ml
L グルタミン 1ml
BME(0.1M) 0.2ml
ES細胞を培養するための他の適切な培地は、当業者にとって明らかであろう。
【0222】
VIII.逆分化試薬を同定するアッセイ
上記試薬に加えて、さらに適切な試薬は、WO96/23870の測定方法又は本発明の測定方法を用いて同定されてよい。後者については、本発明は、コミットした/分化した細胞を未分化細胞に逆分化させることができる物質を同定する方法、すなわちコミットした細胞を含む細胞集団と候補物質とを接触させる過程と、該細胞集団中の未分化細胞の相対数が、増加しているかを測定する過程とを含む前記接触がバフィーコートの存在下で生じることを特徴とする同定方法をも提供している。
【0223】
適切な候補物質には、細胞表面受容体に結合する抗体などの(例えば、モノクロナール抗体,ポリクロナール抗体,単鎖抗体,キメラ抗体及びCDR移植抗体などの)抗体産生物などの細胞表面受容体に結合するリガンドが含まれる。特に関心の高い細胞表面受容体は上述されており、該細胞表面受容体には、例えばCD4やCD8などのCD指示物を有する、MHC受容体及び表面タンパク質が含まれる。細胞表面受容体に結合する他のリガンドには、成長因子が含まれる。
【0224】
さらに、組換えライブラリー,ペプチド及び擬似ペプチド(peptide mimetics),定義された化学物質,オリゴヌクレオチド及び天然産生物ライブラリーが、逆分化試薬としての活性でスクリーニングされてよい。候補物質は、第1スクリーニングにおいて、例えば反応につき10種類の物質のバッチで用いられてもよく、阻害性を示したバッチの物質を個別に調べてよい。
【0225】
典型的なアッセイは、マルチウェルプレートなどの適切な容器中にコミットした細胞を含む細胞を分注する過程を含む。候補物質はウェルに追加され、前記細胞はウェル中でインキュベーションされる。インキュベーションは、室温程度、例えば約22℃から約37℃までの、33℃を含む範囲内で典型的に行われる。
【0226】
逆分化は、少量の細胞分注液を除去し,顕微鏡で細胞を測定するために顕微鏡及び/又はフローサイトメトリーで未分化細胞の数が変化したかを検査して測定されてよい。典型的には、未分化細胞の数における変化の測定は、形態的変化も指標とすることができるが、未分化細胞に特徴的な細胞表面マーカーを有する細胞の数の変化を観察することによって行われる。適切な細胞表面マーカーの例には、CD34が含まれる。あるいは、又はさらに、分化細胞は典型的だが、未分化細胞には典型的でない細胞表面マーカーを有する細胞の数の減少、例えばCD3,CD4及びCD8などの系譜特異的マーカーを有する細胞の相対数における減少が、観察されてよい。
【0227】
未分化細胞に典型的な特徴を有する細胞の数のいかなる増加は、24時間以内に生じることが好ましく、いかなる変化も細胞増殖によってでしか説明することができないように、該増加が4〜8時間以内に生じるのがさらに好ましい。
【0228】
例えば、MHCクラスI受容体やMHCクラスII受容体などの細胞表面受容体に結合する試薬を前スクリーニングすることが好ましい。標的細胞表面受容体に結合すると同定されたいかなる試薬も、逆分化に対する効果を測定するために、上記アッセイで用いることができる。特定の例として、抗体結合ドメインを発現するファージディスプレイライブラリーは、MHCクラスII受容体のβ鎖の相同領域などの、標的細胞表面マーカーに結合する抗体フラグメント(典型的にはscFvs)を同定するために用いてよい。ファージディスプレイライブラリーの作製及びスクリーニングと同様に、適切な結合アッセイは、当該技術分野において公知である。アッセイは、例えば逆分化をすでに起こすことがわかっている抗体の誘導体の組換えライブラリーをスクリーニングするために、至適な抗体又は抗体フラグメントを同定するためにも用いることができる。
【0229】
IX.使用
本発明は、コミットした細胞を未分化細胞に逆分化する方法及び装置を提供する。特に本発明は、より分化した細胞から幹細胞を調製する方法及び装置を提供する。幹細胞は各種医療的応用に幅広く用いられているが、現在まで該細胞を得ることは難しく、面倒で、時に倫理的に問題となっていたため、本発明の医療的意味合いは大きい。
【0230】
本発明により作製された幹細胞は、CD4T−リンパ球などの造血細胞集団又は該細胞の下位集団などの、患者体内の特定の細胞集団を再集団化させるために用いられてよい。幹細胞を作製するために用いられるよりコミットした細胞は、同一の患者又は適合したドナーから得てよい。よって、本発明に従って作製された幹細胞は、特定化した細胞組織及び器官を治癒し、再構成させるために用いられてよい。例えば、未分化細胞は、肺胞の内層細胞などの再コミットした細胞を作製するのに用いることができ、これにより損傷した又は疾病にかかった肺組織を交換する又は修復するメカニズムが作られる(Le Page,New Scientist 19 December 2000,p20を参照)。
【0231】
よって、本発明に従って作製された幹細胞は、患者体内で細胞を再集団化させるために、患者体内に導入されてもよい。したがって幹細胞は、最初に移植されてから再集団化する。
【0232】
したがって、幹細胞は、リポソーム搬送体を用いてインビボで導入されてもよい。
【0233】
よって、本発明は、前記過程のいずれか又は適切な希釈剤、保持体又は賦形剤を用いて混合する装置により調製される未分化細胞を含む医薬品も含む。
【0234】
実施形態の一つでは、未分化細胞を含む医薬品は、正しくないゲノム構造を有するよりコミットした細胞により生じた又は該細胞が関与している症状又は条件を緩和するために、正しいゲノム構造を有するなど、有益なよりコミットした細胞を作製するのに用いられてよい。よって本発明は、該発明が本発明の方法により未分化細胞を形成する過程を含むことを特徴とする、よりコミットした細胞から得られた変異型を除去する過程と、細胞のゲノム及び/又は核の配置又は再配置により変異体が除去されることを特徴とする、再コミットした細胞に未分化細胞をコミットさせる過程とを含む方法も提供する。
【0235】
遺伝子は、ゲノムの免疫グロブリン部位又はTCR部位に挿入されることが好ましい。
【0236】
本発明は、欠陥細胞又は好ましくない細胞から生じる病気又は疾患を患う患者を治療する方法、すなわち該方法がよりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる試薬と、よりコミットした細胞とを接触させることにより、未分化細胞を調製する過程と、未分化細胞又は再コミットした細胞が欠陥細胞又は好ましくない細胞に作用して病気や疾患の症状を緩和する、又は該病気や該疾患の患者を治療することを特徴とする、未分化細胞を再コミットした細胞に随意的にコミットさせる過程とを含む方法を提供する。
【0237】
あるいは、未分化細胞は、正しくないゲノム構造を有するよりコミットした細胞によって引き起こされた又は該細胞が関与している症状又は条件を治療する物質を産出するよりコミットした細胞を作製するために用いることもできる。
【0238】
例えば、本発明は、抗体や、未分化細胞に逆分化するよりコミットした細胞によって発現される抗体に対するT細胞受容体を作製するのに用いてよい。この点、抗原は、胎児特異的抗原又は交差反応胎児特異的抗原であってよい。
【0239】
本発明には、未分化細胞及びよりコミットした細胞のレベルを調節する方法及び装置が含まれる。例えば、本発明には、本発明の方法により未分化細胞を形成する過程と、細胞死を生じさせるなど、未分化細胞に作用するためにアポトーシス遺伝子を活化させる過程とを含む方法が含まれる。
【0240】
好ましい実施例において、本発明は、よりコミットした細胞中に遺伝子を導入する過程を含むことを特徴とする、未分化細胞のゲノムに遺伝子を導入する過程と、遺伝子が未分化細胞中に存在することによる、本発明の方法によって未分化細胞を調製する過程とを含む方法に関する。
【0241】
好ましい実施形態において、本発明は、よりコミットした細胞のゲノム中に遺伝子を導入する過程を含むことを特徴とする、未分化細胞のゲノム中に遺伝子を導入する過程と、遺伝子が未分化細胞中に存在することによる、本発明の方法によって未分化細胞を調製する過程とを含む方法に関する。
【0242】
遺伝子は、未分化細胞及び該細胞から得たよりコミットした細胞に、ウイルス感染などの病理学的感染に対する抵抗力を持たせる遺伝子であればよい。例示として特に、エイズ患者から得たBリンパ球は、HIV感染に対して抵抗力を有するように設計された幹細胞を作製するのに用いられてよい。増殖され、患者体内に導入された場合、結果として得られたヘルパーTリンパ球も、HIV感染に対して抵抗力を有するであろう。
【0243】
他の実施形態において、本発明は、よりコミットした細胞のゲノム中に遺伝子を挿入する過程を含むことを特徴とする、未分化細胞に遺伝子を導入する過程と、遺伝子が未分化細胞のゲノム中で存在することを特徴とする、本発明の方法により未分化細胞を調製する過程とを含む方法に関する。
【0244】
加えて、本発明は、再コミットした細胞に未分化細胞をコミットさせる過程と、該再コミットした細胞を骨髄腫に融合させる過程とを含むことを特徴とする、未分化細胞を調製する本発明の方法も含む。該方法により、例えば抗体や抗原やホルモンなどの所望の産出物をインビトロで大量に発現させることができる。
【0245】
本発明は、本発明の前記方法のいずれかにより調製された未分化細胞を含む。
【0246】
他の実施形態において、本発明の装置及び/又は方法は、例えば血液供給の不足を補うために用いられてよい赤血球を産出するために赤芽球前駆体を効果的に培養するために用いられてよい。同様に、本発明の方法は、血小板の産生に用いられる巨核球を産生するために用いられてよい。
【0247】
他の実施形態において、本発明の装置及び/又は方法は、例えば処理細胞の塊など、未分化細胞の塊の調製に用いられてよい。
【0248】
本発明の他の側面には、以下の事項が含まれる。
【0249】
よりコミットした細胞から未分化細胞を調製するための、本発明のいずれかの試薬の使用方法。
【0250】
Bリンパ球又はTリンパ球由来のモノクロナール抗体又はポリクロナール抗体又は特定の抗体のいずれか一つ;マクロファージ単球系譜の細胞;クラスI抗原又はクラスII抗原を発現することができる核形成された細胞;クラスI抗原又はクラスII抗原の発現を誘導することができる細胞;核形成細胞;フラグメント細胞;又はアポトーシス細胞のいずれか1つを産生する、本発明の方法に従って産生された未分化細胞の使用。
【0251】
Bリンパ球からエフェクターTリンパ球を産生する及び/又はその逆を産生する、本発明の方法に従って作製された未分化細胞の使用方法。
【0252】
Bリンパ球,Tリンパ球,マクロファージ単球系譜由来の細胞,クラスI抗原又はクラスII抗原を発現することができる核形成された細胞,クラスI抗原又はクラスII抗原の発現を誘導することができる細胞,又は核形成細胞の群の中から1又は2以上を作製するための、本発明の方法に従って作製された未分化細胞の使用方法。
【0253】
本発明は、前記使用方法を用いる過程及びかかる過程から調製された産生物又は組成物も含む。
【0254】
本発明は、本発明の未分化細胞を含む医薬品又は適切な希釈剤,保持体又は賦形剤と混合して得られた産生物も含む。
【0255】
好ましい実施例の一つにおいて、医薬品には、適切な希釈剤,保持体又は賦形剤と混合した本発明の未分化細胞から得た抗体又は抗原が含まれる。
【0256】
医薬品は、癌,自己免疫病,血液疾患,細胞再生,組織再生、臓器再生,臓器移植治療,組織移植治療又は先天性代謝疾患のいずれかの治療に用いられることが好ましい。
【0257】
本発明の方法や、例えば未分化細胞など、かかる方法により得られた産生物は、例えば逆分化や分化の研究など研究用に用いられてもよく、該方法や該産生物は、新規に発生する抗原やクラスター分化抗原の同定や研究に用いられてもよい。
【0258】
X.投与
細胞を逆分化させる試薬と同様に、本発明の幹細胞及びよりコミットした細胞は、治療方法において用いられてよい。本発明の細胞及び試薬は、各種要素と結合して、本発明の組成物を産出することが好ましい。さらに該組成物が、医療的に使用可能な保持体又は希釈剤と結合して、(ヒト又は動物に対して用いられてよい)医療用組成物を産生いることが好ましい。適切な保持体及び希釈剤には、例えばリン酸緩衝生理食塩水などの等張性生理食塩水が含まれる。本発明の組成物は、直接注入することにより投与されてもよい。前記組成物は、非経口投与,筋肉内投与,静脈内投与,皮下投与,眼内投与,経口投与又は経皮投与用に形成されてよい。
【0259】
細胞を含む組成物は、典型的に注射又は移植により搬送される。細胞は、懸濁液中に搬送されたり、天然及び/又は合成による生物分解可能なマトリックスなどのサポートマトリックス中に埋め込まれてもよい。天然のマトリックスには、コラーゲンマトリックスが含まれる。合成による生物分解可能なマトリックスには、ポリ無水物やポリ乳酸が含まれる。かかるマトリックスは、インビボで脆弱な細胞に対するサポートを提供し、非造血細胞にとって好ましい。
【0260】
搬送は、例えば数分から数時間又は数日などの一定時間に、調節された搬送であってもよい。搬送は、(例えば静脈注射による場合のように)全身的なものでも、所望の特定部位に関するものであってもよい。
【0261】
細胞は、1kgにつき1×10〜1×10個の細胞を投与量として典型的に投与される。例えば、体重が70kgの患者には、造血組織を再構成させるために14×10個のCD34細胞が投与されてよい。
【0262】
当該技術分野の専門家がいかなる特定患者や特定条件に対して至適の投与手順及び投与量を容易に決定することができることから、上記の投与手順及び投与量は、単に目安であることが意図されている。
【0263】
以下に詳細に示す方法はすべて、本発明の装置を使用するのに適している。
【0264】
A.材料及び方法
患者
B細胞慢性リンパ性白血病の患者,(IgA欠損症やX連鎖性小児伴性低γグロブリン血症を含む)抗体欠損症の患者,HIV感染及びエイズ症候群の患者,CMV感染患者,ホジキンリンパ腫を有する患者,急性T細胞白血病の患者,blastcytosisを有する生後6日目の小児、各種感染症及び慢性状態の各種患者,脊髄由来,骨髄由来で健常な血液ドナーの増殖されたBリンパ球調製物由来の血液サンプルを、EDTAを含有するラベンダートップチューブ(lavender top tube)中で得た。加えて、バフィーコート血液サンプルを健常なドナーから得た。
【0265】
臨床的条件及び実験的条件
血液サンプルに用いる各種処理方法を含む、患者の臨床的処理条件及び実験的処理条件は、表1に記載されている。コールターカウンターを用いることにより、異なる白血球(WBC)が得られた。結果を同表中に示す。
【0266】
血液処理
得られた血液サンプルは、HLA DR抗原のβ鎖の相同領域に対する純粋なモノクロナール抗体(Dako社製)と共にチャンバー中に導入され、最大で24時間室温で混合させた。いくつかのサンプルが22℃でチャンバー内でインキュベーションされた後、該サンプルは最初の15分間混合された。血液サンプルに添加されたモノクロナール抗体の濃度は、血液に対して10〜50μl/mlであった。
【0267】
加えて、他の処理が同一濃度で行われ、該処理には、HLA−DR抗原のα鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体の添加,クラスI抗原の相同領域に対するモノクロナール抗体の添加,CD4に対するモノクロナール抗体の添加,CD8に対するモノクロナール抗体の添加,HLA DR抗原のβ鎖の相同領域に対するPE共役モノクロナール抗体の添加が含まれる。
【0268】
他の処理には、HLA−DR抗原のα鎖及びβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を血液サンプルに同時に添加することが含まれる。
【0269】
さらに、シクロホスホアミドなどのアルキル化剤が、HLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対する純粋なモノクロナール抗体と組み合わせて、血液サンプル中に添加された。
【0270】
前記処理に続いて、血液サンプルは、製造者マニュアルに従って標識されたモノクロナール抗体のパネルで染色され、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0271】
モノクロナール抗体を用いたインキュベーション時間については、2時間の間隔,4時間の間隔,6時間の間隔,12時間の間隔から24時間の間隔と幅がある。
【0272】
標識抗体
以下のモノクロナール抗体が、フローサイトメトリーにより細胞上の以下のマーカーを検出するために用いられる。CD19及びCD3,CD4及びCD8,DR及びCD3,CD56&16及びCD3,CD45及びCD14,CD8及びCD3,CD8及びCD28,シミュレストコントロール(simulest control)(IgG1 FITC+IgG2aPE),CD34及びCD2,CD17及びCD13&33,CD10及びCD25,CD5及びCD10,CD5及びCD21,CD7及びCD5,CD13及びCD20,CD23及びCD57,CD25及びCD45RA(Becton & Dickenson社製及びDAKO社製)。追加のマーカーには、CD71(赤血球細胞マーカー),CD61(巨核球マーカー),グリコホリンA(赤血球細胞マーカー),AC133(幹細胞マーカー),CD38(原始幹細胞マーカー),CD90(幹細胞マーカー)及びCD117(分化多能幹細胞マーカー)が含まれる。
【0273】
バフィーコートサンプルを含む、処理済み及び未処理の各患者の細胞サンプルは、異なるタイプの処理を伴う免疫表現形的変化を説明するために、本発明の装置中で複数の上記パネルを用いて分析された。該分析は、同一の血液サンプルを別々に分注して行われた。未処理サンプル及び他のコントロール処理物を染色して、同時に調べた。
【0274】
フローサイトメトリー
白血球サンプルは、製造者マニュアルに従って染色され、溶解された。フローサイトメトリー分析は、ネガティブコントロール後方処理(negative controls back tracking)を含むsimultest又はPAINT AGATEソフトウェア(BDIS社製)のいずれかを用いてFACScan@上で行われた。10,000〜20,000の事象が得られ、リストモードファイルに貯蔵された。
【0275】
形態
形態は、顕微鏡及びWright染料を用いて調べた。
【0276】
増殖した若しくは精製されたB細胞(若しくは正常の)リンパ球からの又はバフィーコート血液サンプルからの幹細胞の調製無菌技術が、以下の過程を通じて用いられる。
【0277】
(A)単核細胞の分離
(i)ヒストペーク(Histopaque),リンフォプレップ(Lymphoprep)又はリンパ球分離培地(sp.grav 1.077)を、400gで30分間遠心分離することにより、末梢血液/バフィーコートアンプルから単球細胞を得る。
(ii)50mlの円錐管中の単球細胞を回収し、2%の加熱によって活性化したウシ胎仔血清(FCS)及び2mMのEDTA又は0.6%のクエン酸塩(citrate)を含有する、30mlのHank’s平衡塩類溶液(Ca2+なし及びMgなし、Sigma社製)を用いて洗浄し、400gで10分間遠心分離する。
(iii)洗浄後、trypan blue及びhaemocytometerを用いて細胞を数えて、視覚化した。
(iv)B細胞の数が70%(白血球細胞に対して20×10/L)以上と高い場合、A(vi)に直接進む。
(v)B細胞の数が(白血球細胞に対して20×10/L)以下と低い場合、後述のセクションCに記載されるように、Macsミクロビーズ(microbeads)又はFacsバンテージ(Vantage)精製技術を用いてネガティブセレクションを行う。
(vi)10%の(熱不活化)FCS及び10%の(熱不活化)HSを含むIMDM培地(100μg/mlのストレプトマイシン)中で、3×10/mlの濃度で細胞ペレットを再懸濁し、血液バッグ中に入れる。注意事項:FCS及びHSが入手可能でない場合、20%〜50%の自己プラズマ(autologous plasma)を使用する。
【0278】
B細胞慢性リンパ性白血病(B CLL)の末梢血液サンプルから得た単核画分中の幹(未分化)細胞の調製
白血球が、該白血球細胞の50%がB細胞である、1mlにつき20×10個をこえる細胞である場合、ネガティブセレクションを行わないことを除いて、前記単球細胞分離(A)の手順に従う。
以下の手順は、本発明の装置中で行われてよい。
【0279】
(B)純粋なCR3/43(Dako社製)を用いる細胞の処理:
単核細胞分離がA(vi)でなされた後、以下の手順に進む。
(i)支持フック上に(上記A(vi)からの)血液バッグを置く。
(ii)6ウェルを有するチャンバーを用いて、該マルチウェル培養皿又はチャンバーの各ウェル中に、(上記A(vi)からの)入力血液バッグから2mlの細胞懸濁液を加えるように装置にプログラムする。
(iii)CR3/43mabを含むシリンジから、CR3/43(純粋なモノクロナール抗体,Dako社製)の99μl/ml(又はバフィーコートサンプルに関して49.5μl/ml)をそれぞれ有する適当数のウェルを処理する装置にプログラミングして、他のウェルを未処理(ネガティブコントロール)のままにする。
(iv)多湿の環境において、37℃で5%のCO中でチャンバーをインキュベーションする。
【0280】
(C)細胞の精製:
細胞の分離及び精製する各種方法が公知である(Vettese−Dadey Scientist 13(18):21 Sep 13 1999を参照)。
【0281】
適切な方法の一つは、MACSミクロビーズ(Miltenyi Biotec社製。ここでは製造者マニュアルに従うのが最もよい)を用いるB細胞のネガティブセレクションである。
(i)上記セクションAにおける単核細胞を得る。
(ii)(2%のFCS及び2mMのEDTA又は0.6%のクエン酸塩(citrate)からなる)HBSS中で、10個の全細胞につき最終量が300μlの細胞をペレットし、再懸濁する。
(iii)10個の全細胞につき、CD2に対する純粋なモノクロナール抗体(IgG1、Dako社製)を100μl添加する。
(iv)10個の全細胞につき、CD33に対する純粋なモノクロナール抗体(IgG1、Dako社製)50μlを同一の懸濁液に添加する。
(v)インキュベーションするために、室温で10分間該混合物を放置する。
(vi)(2%のFCS及び2mMのEDTAを含む)HBSSを用いて細胞を洗浄し、10個の全細胞につき400μlの最終濃度で同一の緩衝液と共に再懸濁する。400gで10分間遠心分離する。(上記通り)HBSS中のペレットを再懸濁する。
(vii)10個の全細胞につき100μlのウサギ抗マウスIgG1抗体で標識されたミクロビーズを加える(又は製造者マニュアルに従う)。
(viii)細胞を完全に混合させ、15分間6℃〜12℃(冷蔵庫)でインキュベーションする。
(ix)(2%のFCS及び2mMのDETAを含む)HBSSを用いて再び洗浄し、400g×10分間遠心分離し、10個の全細胞につき500μlの最終濃度で同一の緩衝液と共に再懸濁する。
(x)MACS分離器(separator)の磁界(magnetic field)の中でMS/RSを集める。単核細胞数が大きい場合、MS/RSカラムを二つ用いる。
(xi)(2%のFCS及び2mMのEDTAを含む)3mlのHBSSを用いてカラムを洗浄する。
(xii)カラムに細胞を通し、(2%のFCS及び2mMのEDTAを含む)HBSSを用いて、4×500μlで洗浄する。
(xiii)円錐管中に細胞を抽出(elute)して回収し、次にIMDM中でペレットして再懸濁し、セクションA(vi)にあるような血液バッグ中に入れる。
【0282】
D)蛍光標示式細胞分取器(FACS)バンテージ(Vantage)精製B細胞:
(i)上記セクションA記載のように、B CLL患者の末梢血液サンプルから単核細胞を得る。
(ii)B細胞を同定するために、CD19 PE共役モノクロナール抗体及びCD20 FITC共役モノクロナール抗体の組合せを用いて前記細胞を染色する。
(iii)CD19/CD20の蛍光に基づき、Beckton Dickenson社製FACSバンテージ(Vantage)及び488nmで放射するアルゴンレーザーを用いて、約10個の細胞を区別する。
(iv)50%のFCSを含有するHanks平衡塩類溶液を用いて精製された細胞を洗浄し、次に5%のCOで高湿度にしたインキュベーター中で、37℃一晩かけて回復させる。
(v)細胞をペレットして再懸濁し、上記セクションA(vi)記載のように血液バッグに入れ、上記セクションB記載のようにCR3/43を用いて処理する。
【0283】
白血球中の幹細胞の調製
白血球中の純粋なCR3/43(Dako社製)モノクロナール抗体を用いての細胞の処理は、本発明の装置中で行われてよい。
(i)(Bリンパ球が73〜95%の範囲にある)30〜200×10/LのWBC細胞数の患者を選択する。
(ii) クエン酸、EDTA−又は防腐剤無添加のヘパリン含有チューブ中に静脈穿刺(venipuncture)により細胞を回収し、血液バッグ中に血液を入れる。回収された細胞は直ちに用いられる。さらに回収から約6時間以内に用いられることが好ましい。しかし、窒素下で貯蔵/凍結された血液は、解凍後に用いることができる。
(iii)本発明の装置中の全血を含有する(ii)から血液バッグを置く。
(iv)自動化された分化白血球細胞測定は、コールターカウンターを用いて行われる。(60 95%がB細胞である)1mlにつき30 200×10個の白血球を有する患者を選択することが好ましい。
(v)血液の生存は、自動的に測定されてもよく、好ましい方法には、ピロピジウムヨウ化物(propidium iodide)とフローサイトメトリー、又はトリパンブルー(Trypan blue)と塩化アンモニウム溶液を使用した赤血球の溶解に続く血球計算器(a haemocytometer following lysis of red blood cells using ammonium chloride solution)のいずれかを用いる方法が含まれる。
(vi)CR3/43抗体が、(例えば白血球の数が、50×10/Lの場合、50μlのCR3/43モノクロナール抗体、159μg/mlのマウスIgG濃度が血液1mlにつき添加されるべきである。)1〜3μl/10細胞の最終濃度で、前記装置のチャンバー中で全血のサンプルに添加される。
(vii)前記装置のチャンバー中のパドルを用いて血液と抗体とを混合させ、インキュベーションしたチャンバー中で、室温、好ましくは18℃〜37℃の間で、2時間以下でない所定の時間放置する。
(viii)前記装置の追跡手段を用いて、mAbを添加してから0時間後,2時間後,6時間後及び24時間後に、フローサイトメトリー,クローンアッセイ,長時間培養及び/又はPCT分析を用いて血液細胞を分析する。
【0284】
注意事項:mAb CR3/43により誘導される、テストチューブ底部において、B細胞がホモタイプ凝集(homotypic aggregation)し、接着細胞が形成されることから、分析前に広口ピペットチップ(wide−bore pipette tips)を用いて細胞を完全に混合してサンプルとする。
【0285】
前記分析において均一した細胞集団を得るために、CR3/43による処理を行う前に複数のチャンバー中で個別に分注液中に血液サンプルを分ける。
【0286】
CR3/43モノクロナール抗体を用いて培養されたB細胞を処理して得られた幹細胞を分析するための調製
本発明の方法を用いて産生された幹細胞は、例えば2時間ごと,7時間ごと,24時間ごと,毎日,7日ごと又はさらに長時間(長時間培養培地を毎週細胞に与えることにより、毎月)など、各種時間点で測定することができる。後の時点で分析する処理物及びコントロールウェルを残しておいて、1又は2以上の処理物及びコントロールウェルを、各時間点で分析することができる。
【0287】
前記測定方法は、本発明の装置に設けられた追跡手段によって自動的に行われてもよい。
【0288】
(i)広口ピペット(wide bore pipette)を用いて非接着層を静かに除去し、単一細胞懸濁液を得るために広口ピペットでの吸引を繰り返すことにより、細胞の塊をdisruptする。
(ii)細胞スクレーパを用いて、接着層をはがして、単一細胞懸濁液を得るためにwide bore pipetteでの吸引を繰り返すことにより、細胞の塊を静かにくずす。
(iii)他の方法として、最初にHBSSで洗浄して接着層をトリプシン化し、続けて1ウェルにつき0.25%のトリプシンを2ml添加し、37℃で10分間インキュベーションする。
(iv)広口ピペットで繰り返しピペットすることにより、細胞の塊を静かに乱す。
(v)10分後、トリプシンを不活化するために20%のFCSを用いてインキュベーションして最終濃度にする。
(vi)上記(ii)又は(v)で得られた培養細胞は、各時点でタイプ(例えば、処理細胞及び未処理細胞)ごとにプールされ、400gで10分間遠心分離されてよい。
(vii)PCR分析(Cを参照)を行うために、(vi)で得られた細胞ペレット(処理細胞及び未処理細胞)は、直接使用される。
(viii)クローンアッセイを行うために、上記過程(ii)及び(v)で得られた細胞ペレット(処理細胞及び未処理細胞)は、2%の加熱活性化FCSを含むIMDM中で再懸濁される。少量の細胞分注液が、細胞数を数えるために取り出され、トリパンブルー及び血球計算器(haemocytometer)を用いて細胞の生死を判別した。
(ix)FAC分析を行うために、2%の加熱活性化FCS及び5mMのEDTAを含有するHanks平衡塩類溶液(カルシウムフリー及びマグネシウムフリー)中で、上記過程(ii)及び過程(v)で得られた細胞ペレット(処理細胞及び未処理細胞)を再懸濁した。
【0289】
幹細胞の分析:
以下の方法を、幹細胞の測定に用いることができる。本発明の装置には、以下に詳細が記載されている方法の全部又は一部を行う追跡方法が含まれる。
【0290】
(A)免疫表現型(immunpophenotypes):
全血サンプルを(フローサイトメトリーを用いて)免疫表現型分析を行うため、(i)(製造者マニュアルに従って)免疫染色し、赤血球を溶解させ、インキュベーション時間後に細胞を洗浄し、モノクローナル抗体(mAb)で処理する。Becton Dickinson社製の溶解液及び洗浄溶液が、典型的に用いられる。
(ii)(全血,単核細胞画分,MACSミクロビーズ,ネガティブに選択されたB細胞又は貯蔵されたB−CLL中の)白血球は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)又はフィコエリトリン(PE)に直接共役するmAbで標識されるべきである。
(iii)免疫表現型分析で用いられるパネルマーカーは、以下のものであってよい。
・CD38PE+CD45FITC+CD34PE−Cy5
・CD19PE+CD10FITC+CD34PE−Cy5
・CD117PE+CD3FITC+CD34PE−Cy5
・CD33PE+CD61FITC+CD34PE−Cy5
・グリコホリンA PE+CD71FITC+CD34PE−Cy5
・AC133PE+CD90FITC+CD34PE−Cy5
・CD19PE+CD5FITC
・IgG1PE+IgG1FITC+IgG1PE−Cy5(アイソタイプネガティブコントロール)
(iv)以下のモノクロナール抗体のペアからなる、IMK+kit(Becton Dickinson社製)を用いた二重標識を行ってもよい。
・CD45−FITC及びCD14−PE;
・CD19−PE及びCD3−FITC;
・CD8−PE及びCD4−FITC;
・HLA−DR−PE及びCD3 FITC;及び
・CD56,CD16−PE及びCD3−FITC。
【0291】
また、IgG−FITC及びIgG2a−PEに対するアイソタイプ適合ネガティブコントロール(isotype match negative control)が含まれる。
【0292】
(v)Dako社及びBecton Dickinson社によって作製された以下の付加的な抗体も用いることができる。
PE−共役:抗CD8抗体,抗CD33抗体,抗13抗体,抗CD34抗体,抗CD19抗体,抗CD22抗体,抗CD14抗体,抗CD33抗体,抗CD5抗体;
FITC−共役:抗CD3抗体,抗CD7抗体,抗IgM抗体,抗CD22抗体,抗CD20抗体,抗CD10抗体,抗CD7抗体,抗CD16抗体,抗TCRαβ抗体。
【0293】
(vi)以下のものを用いることもできる。
・CD34に特異的なアフィニティー精製IgGモノクローナル抗体(Dako社製)も用いることができ、かかる抗体は、第2抗体としてFITC−又はPE−標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンF(ab)’抗体フラグメント(Dako社製)を用いて検出される。
・Quantum Red(PE−Cy5)−共役抗CD34抗体(Dako社製)も用いられた。
【0294】
(vii)FACScan又はFACS Vantage(Becton Dickinson社製)又は他のフローサイトメーターを用いて細胞を分析する。100,000個の細胞と同数の事象が観察され、時間が記録されるべきある。
(viii)Proprietary Paint−a−Gate,Lysis II,Consort 30及びCellQuestのソフトウェアを用いてデータを分析する。
【0295】
(フローサイトメトリーを用いた)バフィーコートサンプルの免疫表現型分析には、例えば、
(i)(製造者マニュアルに従って)免疫染色し、赤血球を溶解し、インキュベーション時間後に細胞を洗浄し、モノクローナル抗体で処理する。Becton Dickinson社の溶解液及び溶液が典型的に用いられる。
(ii)白血球は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、又はRPE−Cy5に直接共役されるモノクローナル抗体を用いて二重に又は単独で標識されるべきである。
【0296】
以下の標識済マーカーが適切に用いられてよい。
CD34(幹細胞マーカー);CD19(Bリンパ球マーカー);CD45(白血球マーカー);CD3(Tリンパ球マーカー);CD33(骨髄マーカー(myelocyte marker));CD71(赤血球マーカー);CD61(巨核球マーカー);グリコホリンA(赤血球マーカー);AC133(幹細胞マーカー);CD38(原始幹細胞マーカー),CD90(幹細胞マーカー);CD10(リンパ系幹細胞マーカー);CD117(分化多能幹細胞マーカー);IgG1(ネガティブコントロール)。
【0297】
(B)形態学:
形態学的分析としては:
光学顕微鏡
(i)広口ピペットチップを用いて、2%の加熱活性化FCSを含有するIMDM中で完全に細胞を再懸濁する。
(ii)適切な染色溶液を用いてLeitz顕微鏡下で調べる。例えば、May and Greenwald染色溶液(BDH Chemical Ltd社製)を、骨髄性細胞及びリンパ系細胞の分析に用いてもよい。当該技術分野において通常の技術を有する者は、例えばWright染料又はギムザ(Giemsa)染色など、他のコロニーを同定するのに適切な他の染料について容易に気づくであろう。
(iii)B−CLLリンパ球の形態的分析は、血液フィルム中で又は細胞遠心分離を行った調製物(cytocentrifuged preparations)でそれぞれ行うことができる。
【0298】
共焦点顕微鏡
(i)上記のように、B細胞を得る(健康な血液ドナーのバフィーコートから得られるB−CLL又は正常なB細胞)。
(ii)上記のように、CR3/43モノクローナル抗体でB細胞を処理する。
(iii)器官培養皿に2mlの細胞懸濁液を加える(該皿の底は、カバーガラスを有するように設計されている)。
(iv)CD19FITC−共役物に15μlのモノクローナル抗体を加え、CD34PE/Cy5−共役物(Quantum Red)に15μlのモノクローナル抗体を加える。
(v)生存可能性を査定するためにヨウ化プロピジウム(Propidium Iodide)を用い、核を染色するためにヘキスト(Hoechst)を用いる。
【0299】
(C)VDJ/JHF遺伝子再配列のPCR分析
IgH遺伝子のVDJ及び/又はJHF領域は、抗体処理の前と後(2時間後、6時間後及び24時間後)にB−CLL末梢血及びバフィーコートから得たテンプレートDNAを用いてPCR法(Perkin Elmer thermal cycler)により分析された。かかる実験手順は、Stolc et al(American Journal of Hematology 38:1−8:1991)から採用されている。JHFプライマーは、生殖系列配置中の免疫グロブリン重鎖遺伝子の正の検出のために用いられる。JH6プライマーは、免疫グロブリン重鎖遺伝子に対する正の内部制御として用いられる。B細胞では、正常のリンパ球と同様に白血病のリンパ球においてもJHF領域が常に削除されているのため、該細胞は増殖できないが、内部制御するJH6遺伝子はそのまま残っている。β−アクチン遺伝子は、コントロールとして用いられた。
【0300】
(i)Qiagen QiAmp Maxi blood kitを用いて全血からDNAを単離する。最大限産出が行われる手順を用いる。(処理済み又は未処理の)各サンプルから全DNAを抽出する。
(ii)濃度と質を測定するため、1.5%のアガロースゲル上で未希釈のDNA及び1:5の割合で希釈したDNAを流した。
(iii)PCR分析−96℃で5分間、2〜3μLの未希釈のゲノムDNAテンプレートを熱した。
【0301】
I)JH6a/JH6g JHFa/JHFg
以下に記載の表に従って、4人の患者に充分な「マスターミックス(mastermix)」(処理済みと未処理とで8つの反応)を調製する。該マスターミックスは、適切に上下に調節される。
【0302】
【表1】

【0303】
変性したゲノムDNAを含む各チューブ中に、95μLの「マスターミックス」を分注する。1分30秒間を95℃;2分間を55℃;1分30秒間を72℃(35サイクル);5分間を72℃(1サイクル)にthermocyclerを設定する。
【0304】
II)β−アクチン
上記I)記載のように8つの反応に対して充分な「マスターミックス」を調製する。該マスターミックスは、適切に上下に調節される。
【0305】
【表2】

【0306】
変性したゲノムDNAを含む各チューブ中に、95μLの「マスターミックス」を分注する。1分30秒間を95℃;2分間を55℃;1分30秒間を72℃(25サイクル);5分間を72℃(1サイクル)にサーモサイクラー(thermocycler)を設定する。
【0307】
PCR法に用いるプライマー
IgH JHF遺伝子の240bpフラグメントを増幅するために設計された、第1群のプライマーは、以下の通りである。
JHFa AAA GGT GCT GGG GGT CCC CTG
JHFb CCC AGT GCT GGA AGT ATT CAG C
領域6に参加する、IgH JHF遺伝子の242bpフラグメントを増幅するために設計された、第2群のプライマーは、以下の通りである。
JH6a CAT TGT GAT TAC TAC TAC TAC TACJH6b GAT CCT CAA GGC ACC CCA GTG C
β−アクチン遺伝子の249bpフラグメントを増幅するために設計された、第3群のプライマーは、以下の通りである。
ベータACT−1 AAG GCC AAC CGC GAG AAG AT
ベータACT−2 TCG GTG AGG ATC TTC ATG AG
(D)VDJの遺伝子再配列のサザン分析
(i)BamHI/HindIIを用いて、(B−CLL患者から得た)処理済み及び未処理の末梢血サンプル又は精製されたB細胞から得たゲノムDNAを消化する。典型的には、分析を行うのに充分な量のDNAを得るためには、多数のウェルから得た細胞が必要となる。
(ii)消化物は、0.8%のアガロースゲル上で分解され、製造者指示(Southern,1975)に従ってGeneScreen(登録商標)ナイロン膜(Dupont社製)に移される。
(iii)IgH遺伝子の再配列は、胎盤ゲノムDNA(Calbiochem,Oncogene Science)から単離された32P−標識ヒトJDNAプローブを用いて、IgH座のJ領域を分析することにより特徴づけられる。
(iv)オートラジオグラフは、発達前の数日間−70℃に保たれる。
【0308】
(E)長期培養
上記方法により調製された細胞培養物は、長期培養培地(Iscove’s Modified Dulbeccos Medium(IMDM Gibco BRL Life Technologies Ltd.社製),10%の熱活化されたFCS,10%の熱活化されたウマ血清(HS),1%のヒドロコルチゾン,1%のペニシリン/ストレプトマイシン 5×10−7M貯蔵溶液)を用いて毎週育成することにより、より長期時間維持(長期培養)されうる。
(i)まず、CR3/43処理開始から一定時間、例えば24時間後に、2mlの長期培養物を添加することで各ウェル中の細胞を希釈する。
(ii)ウェルを毎週育成し、成長培地の半分を除去する。
(iii)位相差顕微鏡を用いてウェルを観察する。
【0309】
(F)クローンアッセイ
(i)処理開始後の各一定時間後に、300μlの培養培地中に非接着細胞が上記方法で得られる。
(ii)上記培養培地中の細胞懸濁液中に、3mlのメトカルトGFH4434(StemCell Technologies社製、IMDM,FCS,BSA,L−グルタミン,rh幹細胞因子,rhGM CSF,rhIL−3及びrhエリトロポエチンからなる)を添加する。
(iii)1.1mlの細胞混合物を取り出し、三つのプレートに置く。
(iv)14日間、5%のCOと5%のOを含む多湿のペトリ皿中で、37℃でプレートをインキュベーションする。
(v)位相差顕微鏡を用いてCR3/43モノクロナール抗体を用いて処理する前後のウェルを観察する。
(vi)14日後、前記細胞(コロニー)は、フローサイトメトリー,共焦点顕微鏡及び/又はPCRにより分析される。
(vii)コロニーアッセイを行う場合、アルコールエーロゾルは、細胞に衝撃を与える又は破壊して、(処理済み及び未処理の)両タイプの細胞の生存を妨害することから、避けるべきである。
【0310】
B.結果
CD19及びCD3パネル
HLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いる、本発明の装置中で血液サンプルを処理すると、CD19細胞の相対数が常に減少した。かかるマーカーは、全B細胞抗原である(表を参照)。前記抗原は、成熟過程の全段階において全てのヒトBリンパ球上に現れているが、前記抗原は、終局的に分化した血漿細胞上では消失している。よって、かかる事実は、B細胞が未分化細胞に逆分化したことを示すものである。
【0311】
同一の処理により、CD3細胞の相対数が、CD3−CD19細胞の相対数の増加を常に伴って、B−CLL患者の血液中で特に顕著に増加する。CD3は、全ての成熟Tリンパ球上及び65%〜85%のチモサイト(thymocytes)に現れる。かかるマーカーは、α /β 又はガンマ/デルタT細胞受容体(TCR)と会合して常に観察され、かかる複合体は、細胞内部にシグナルを伝達する上で重要である。よって、かかる事実は、B細胞が未分化細胞に逆分化し、該B細胞が新規の分化細胞、すなわちT細胞にコミットしたことを示すものである。
【0312】
新規の細胞クローンが、CD19マーカー及びCD3マーカー、すなわちCD19細胞及びCD3細胞を共発現する、B−CLL患者の処理済みの血液中に現れる(チャート1中の、処理開始から2時間後,6時間後及び24時間後の患者2,3及び4を参照)が、かかる処理は本発明の装置中で行ってよい。異なる条件を有する他の患者は、かかる細胞クローンの相対数の増加を示した。前記細胞は、例外的に巨大で、非常に顆粒球化しており、高レベルのCD19が細胞膜上に発現していた。前記CD3マーカーは、通常の成熟リンパ球上で発現するCD3マーカーと同様レベルで前記細胞上に発現するようである。
【0313】
表2では、患者番号2、3及び4は、実際に同一患者を示す番号であり、かかる説明は時間の経過による血液の処理効果を単に示すためのものである(前記患者の実験的及び臨床的条件については、表1を参照のこと)。
【0314】
処理サンプル中のCD19クローン及びCD3クローンは、時間の経過により減少するようであり、未処理サンプル中で測定されたレベルである本来のレベルに2時間,6時間及び24時間で到達する。
【0315】
同一のサイズ及び顆粒性を有する他の細胞タイプは、処理サンプル中において検出され、かかる細胞は、該表面上で高レベルのCD19を発現させたが、該細胞は、CD3マーカーに対してネガティブで、また該細胞は、FC受容体を豊富に有していた。しかし、かかる細胞の相対数は、時間の経過により減少するようである。興味深いことに、血液サンプル(2、3及び4)を24時間処理する場合、血液サンプルを2時間及び6時間処理した後、最初に増加を示した細胞群中において、CD19CD3細胞の相対数が減少した。しかし、HLA−DR抗原のβ鎖と相同性を示す領域に対するモノクロナール抗体を有する血液を処理すると、WBC集団をコールターカウンターで数えた結果が減少した。かかる発見は、前記タイプの処理がコールターにより検出されない異型細胞を生じさせるが(表1)、表面マーカー、サイズ及び顆粒性に基づいて細胞を数えるフローサイトメトリーでもって測定すると説明可能であることを示している。さらに、前記異型細胞は、Wright染料を用いて顕微鏡下で形態を分析することにより説明される。かかる現象のフローサイトメトリーの図は、チャート(1、2、3及び4)に示されており、血液サンプルを処理することにより得られた免疫表現形の変化は、CD19及びCD3リンパ球が相互に関連した細胞群であるものの、幹細胞と比較してCD19及びCD3の相対的発現に基づいて該細胞が区別可能であることを示すようである。
【0316】
表2では、患者番号5及び6が同一の患者を表しているが、処理済み及び未処理の血液サンプルの分析が、経時的かつ同一時間に観察された(表1を参照)。
【0317】
B細胞に悪性がない患者の血液は、B−CLL患者の血液と比較された時、免疫表現形の変化に同様の傾向を示したが、該変化の程度は同じでなかった。しかし、かかる患者の血液中のBリンパ球及びMHCクラスIIポジティブ細胞の相対数及び絶対数は、B−CLL患者の血液中で観察されたBリンパ球及びMHCクラスIIポジティブ細胞の相対数及び絶対数と比較して、極度に低かった。
【0318】
B細胞が欠乏している、X連鎖性小児伴性低γグロブリン血症の兄弟2人では、血液処理によりCD3細胞の相対数において、異なった免疫表現形の変化が観察された。未発病である生後2ヶ月の弟では、血液を処理するとCD3CD19細胞の相対数が減少に伴い、CD3細胞の相対数が若干増加した。一方、すでに発病して、DR抗原を発現する活性化されたT細胞の数が比較的高い2才の兄では、血液を処理するとCD3細胞の数が減少した。前記患者から得られた血液サンプルはごく少量であったことから、他のマーカーを用いて、他に生じたかもしれない免疫表現形の変化を調べることはしなかった(表2、ID43/BD及び04/BD)。
【0319】
表2の患者91では、CD3CD19細胞の相対数の増加を伴う血液処理に従って、CD3細胞の相対数が減少した。しかし、CD4やCD8などの他の表面マーカーの分析(表3を参照)において、患者の血液中のCD4CD8細胞の相対数が高いことが観察され、かかる結果はDR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体で血液サンプルを処理する前に観察され、かかる二重ポジティブ細胞が血液処理に従って大幅に減少する。さらに、他のマーカーが分析された時、CD3細胞の相対数は増加したようであった(表4を参照)。
【0320】
本発明の装置中でDR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて処理した場合、正常な血液ドナーから得たBリンパ球を増殖させる調製を行うと、CD19細胞の相対数の減少と、CD19CD3細胞の相対数の増加を常に伴う、CD3細胞の相対数の顕著な増加が見られた。例えばCD4やCD8などのマーカーを用いてさらに分析を行うと、かかるマーカーの相対数に付随的な増加が見られた。しかし、同じモノクロナール抗体を用いて処理する場合、同一の血液ドナーのTリンパ球を増殖させる処理を行うと、同じ変化は見られなかった。
【0321】
CD4及びCD8パネル
CD4抗原は、ヒト免疫不全ウイルスに対する受容体である。CD4分子は、クラスI抗原上のCD8結合部位に類似する領域である、B2ドメイン中でMHCクラスII抗原と結合する。クラスII抗原に対してCD4を結合すると、抗原に対するT細胞の応答性が促進され、クラスI抗原に対するCD8の結合も促進される。CD8抗原は、ナチュラルキラー(NK)リンパ球のサブセットや多くの正常なチモサイトと同様に、ヒトサプレッサー/細胞毒性Tリンパ球のサブセット上に存在する。CD4及びCD8抗原は、チモサイト上で共発現し、かかる細胞は、Tリンパ球に成熟するにつれていずれかのマーカーを失う。
【0322】
表2に記載の血液サンプルの大部分から得たCD4及びCD8マーカーの分析(以下参照)では、Bリンパ球が未分化細胞に逆分化する過程及びその後Tリンパ球に分化する過程の存在を支持する染色パターンが現れた。
【0323】
二重ポジティブ細胞であるCD4CD8細胞は、β鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて血液サンプルを処理した後で常に現れ、かかるタイプの細胞は、B−CLL患者の血液処理サンプル中で大幅に増加するが、未処理サンプル中では全く存在しない(表3及びチャート1,2,3及び4を参照)。また同じ例では、例えばCD8細胞やCD4細胞などの単一ポジティブ細胞の相対数が同時に増加することが観察された。さらに、少なくともB−CLLの例でB細胞に対応するCD4CD8細胞の相対数は、経時的に測定された場合に同じレベルのままである未処理の例と比較した場合、処理サンプル中で大幅に減少することが観察された。しかし、処理サンプル中で経時的にCD4CD8細胞の相対数が測定された場合、二重ポジティブ細胞の相対数の減少と共に、単一ポジティブ細胞の相対数の増加が付随して生じた。かかる免疫表現形の変化は、胸腺におけるTリンパ球系譜の前駆細胞の胸腺発達の特徴である(患者番号2、3及び4)。CD4抗原は、ヘルパー/誘導Tリンパ球のサブセット(CD4CD3)上及び正常なチモサイト上の大部分に存在する。しかし、かかる抗原は、単球の細胞表面上及び単球やマクロファージの細胞質中において低密度で存在する(CD3CD4)。
【0324】
CD4が低い細胞の相対数は、本発明の装置中で処理した、異なる血液サンプル中で個別に作用される。かかる細胞タイプの相対数は、未処理サンプルと比較した場合、B−CLL患者の処理済み血液サンプル中で影響を受けなかったようである。かかる低レベルのCD4発現は、単球上及び最初期のチモサイト上で観察された。
【0325】
処理済みのHIV患者25では、CD4とCD8とを同時に発現する二重ポジティブ細胞の数が増加した。一方、処理済みの患者91では、前記細胞のサブタイプが減少し、かかる現象は経時依存的であった。CD8細胞の相対数は、経時的に測定された場合、B−CLL患者の未処理血液サンプル中で増加することが観察されたが、CD4及びCD4が低い細胞の相対数は、同じ時間で減少することが観察された(表3の患者2、3及び4)。
【0326】
DR及びCD3パネル
DRマーカーは、単球,樹上細胞,B細胞及び活性化されたTリンパ球上に存在する。
【0327】
このパネルで分析された処理済み及び未処理サンプルは、CD19マーカー及びCD3マーカー(表2を参照)を用いて分析した場合に得られたサンプルに対して同様の免疫表現形の変化を示した。上述の抗原は、それぞれ全B細胞マーカー及びT細胞マーカーである。
【0328】
本発明の装置中でモノクロナール抗体を用いて血液を処理すると、DRBリンパ球の相対数に影響するようであり、DR細胞が減少した。これに対し、CD3(T細胞)細胞の相対数は、大幅に増加した。(表4及びチャートを参照)。さらに、B−CLL患者の処理済み血液サンプルの多くで、活性化されたT細胞の相対数が大幅に増加し、かかる細胞タイプは他の条件の患者の処理済みサンプル中で様々に影響を受けた。
【0329】
さらに、DRに対して高いポジティブ細胞の相対数は、B−CLL患者及び血液中でDRCD34芽球が増加した生後6日目の小児の処理サンプル中において大幅数で出現した。しかし、患者血液中に存在した芽球は、処理前後でT細胞マーカー及びB細胞マーカーに対してネガティブであったが、処理後骨髄系譜抗原に対してよりポジティブになった。CD3DR細胞の相対数は、処理血液サンプルの大部分で増加し、CD3細胞(T細胞)の相対数の増加に比例しており、DR細胞(B細胞)の相対数の減少に反比例する。
【0330】
CD56&16及びCD3パネル
CD56&CD16マーカーは、大型顆粒リンパ球及びナチュラルキラー(NK)リンパ球として通常知られているリンパ球のサブセットである、異質性のグループの細胞上で見られる。CD16抗原は、事実上全ての静止NKリンパ球上で発現し、また該抗原は、特定の個体から得たCD3Tリンパ球のいくつかで弱く発現した。前記抗原は顆粒球上でさらに低量見つかり、さらに該抗原は大きなアズール親和性の顆粒を含有するリンパ球と会合する。CD16抗原は、IgG FC受容体IIIである。
【0331】
CD16リンパ球の可変数は、CD57抗原又は低密度のCD8抗原のいずれか、あるいは両方を共発現する。個体のほとんどでは、CD5、CD4又はCD3抗原などの他のTリンパ球抗原との重なり合いは、事実上ない。CD56抗原は、事実上全ての静止CD16NKリンパ球上及び活性化されたCD16NKリンパ球上に存在し、かかる細胞のサブセットは、非主要組織適合遺伝子複合体限定の細胞傷害性を有している。
【0332】
B−CLL及び他の条件の患者の処理済み及び未処理血液サンプルの免疫表現形では、大幅に顆粒球化した中型サイズのCD56&CD16抗原を共発現する細胞の相対数が増加した(表5及びチャート1、2、3及び4)。かかる観察は、(CD56マーカー及びCD16マーカーを発現しない)CD3抗原のみを発現する細胞の相対数及びCD56&CD16マーカー及びCD3マーカーを一緒に共発現する細胞の相対数の大幅な増加を伴っていた。
【0333】
表5では、患者番号2、3及び4が、同じ血液サンプルを表すが、(処理前後の)それぞれ2時間、6時間及び24時間で分析がなされている。前記サンプルは、DR抗原のβ鎖の相同領域に対してモノクロナール抗体と共に血液を処理すると、CD56及びCD16細胞、CD3細胞及びCD56及びCD16CD3細胞が同時に産生され、かかる観察がB細胞マーカー(CD19、DR、CD56、CD16CD3)の消失を常に伴うことを示す。
【0334】
処理前後のかかる血液サンプルのさらなる分析では、CD56+細胞及びCD16細胞のレベルが経時的に低下し、CD3細胞のレベルが経時的に増加することが示された。
【0335】
B−CLLの患者7の血液サンプルは、処理済み及び未処理サンプル中で観察された免疫表現形の変化と比較した場合、CD56抗原、CD16抗原及びCD3抗原を発現する細胞数において、いかなる変化も示さなかったが、これは添加されたモノクロナール抗体の量が、Bリンパ球の数に対して大幅に少なかったことによる。しかし、適切量のモノクロナール抗体を用いて別機会に患者の血液サンプルを処理すると、CD3細胞,CD56&CD16細胞及びCD56細胞及びCD16CD3細胞の相対量が大幅に増加することが示された。
【0336】
他の条件の他の患者の血液サンプルは、該細胞のレベルが可変的変化を示したが、この結果は処理前の血液中に存在したBリンパ球数や、処理時間や恐らく患者の臨床的状態に依存するようである。
【0337】
CD45及びCD14パネル
CD45抗原は、末梢血、胸腺、脾臓、扁桃腺中のリンパ球、単球、多形核細胞、好酸球、及び好塩基球や、骨髄中の白血球前駆体など、全てのヒト白血球に存在する。
【0338】
CD14は、正常な末梢血単球の70%〜93%、胸部流動食細胞又は腹部流動食細胞の77%〜90%に存在する。前記抗原は、顆粒球上に弱く発現するが、前記抗原は刺激されていないリンパ球,マイトジェン活性化Tリンパ球、赤血球又は血小板上に存在しない。
【0339】
CD45抗体は、プロテインチロシンホスファターゼのファミリーの代表例であり、この分子は、外部刺激(抗原)と相互作用してScr−ファミリーメンバーを介してシグナル伝達を行い、細胞増殖及び分化を調節する。
【0340】
処理済み血液サンプル中のDR抗原、特にB−CLL患者から得たDR抗原のβ鎖が関与することにより、かかる処理がBリンパ球上のCD45抗原のレベルに影響が生じる。DR抗原のβ鎖を刺激することで生じる全体的な免疫表現形の変化は、前方散乱光及び側方散乱光(それぞれサイズ及び顆粒性)によって測定される形態と同様に、CD45及びCD14の発現レベルに基づいて区別することができる、異なる細胞タイプを生じさせるようであり、かかる結果が表6及びチャート(1,2、3及び4)に示されている。CR3/43抗体を用いて処理した後のCD45CD14細胞の出現を示す図7も参照のこと。かかる細胞は、造血系細胞でない。
【0341】
本発明の装置中で処理を行うと、(未処理サンプルと比較した場合、)CD45low細胞の相対数は大幅に増加し、CD45抗原及びCD14抗原を共発現する細胞の相対数も同様に増加する。前記免疫表現形タイプの変化は、(未処理サンプルと比較して)CD45high細胞の相対数の減少と合致している。しかし、後者の細胞集団は、形態及びCD45の発現程度に基づいてさらに分けられる。タイプの一つは非常に大型で、チャート中の残りの細胞と比較した場合、該タイプは非常に高レベルのCD45抗原を有していた(チャート1、2、3及び4を参照)。経時的処理の後、前記パネルの分析を行うと(表6の患者2,3及び4と、チャート1を参照)、CD45細胞の相対数は、開始時に大幅に減少し、経時的にCD45low細胞が生じるようになる。しかし、24時間後に血液を分析すると、状況は逆であった。
【0342】
サンプル5及び7は、他のB−CLL患者から得た他のサンプルを用いて得られた変化と反対の免疫表現形の変化を示すが、これはインキュベーション時間のかなりの初期段階でモノクロナール抗体を用いてサンプルを分析したことによる。実際、処理後の血液サンプルを連続的に分析すると、Bリンパ球により生じた免疫表現形の変化は時間依存的であったが、これは発達段階を示すものであり、X時間に測定された免疫表現形の変化が(一度誘導されたら固定されない)Xプラス時間において同じにならないことによる。しかし、前記タイプの変化は体内でより厳格な方法で生じなければならず、それ以外は免疫病理学の予測通りである。B細胞に異常がない他の患者から得た血液サンプル処理を影響させると、細胞の免疫表現形における可変的な変化が見られたが、これはBリンパ球が低量で存在することによる。しかし、正常な血液ドナーから得たBリンパ球の増殖された画分を処理すると、Bリンパ球数が多いB−CLLから得た免疫表現形の変化に類似する免疫表現の変化が見られた。
【0343】
CD8及びCD3パネル
CD8抗原決定基は、クラスIMHC分子と相互作用して、結果としてCD8+Tリンパ球と標的細胞との間の接着を増強した。前記相互作用のタイプは、静止リンパ球の活性化を増進する。CD8抗原は、プロテインタイロシンキナーゼ(p56ick)と共役し、次にCD8/p56ick複合体がTリンパ球活性化において役割を果たす。
【0344】
本発明の装置中で、B鎖に対するモノクロナール抗体を用いてB−CLL患者から得た血液サンプルを処理すると、CD3CD8ポジティブ細胞及び(CD4CD3である可能性が高い)CD3ポジティブ細胞の相対数が大幅に増加し、開始時に生成された二重ポジティブ細胞が成熟Tリンパ球に発達することがより明確に示される。これは、CD19やDRによって直接に、CD8CD3抗原によって間接的に測定される過程である。経時的に同一患者の処理済み血液サンプルを連続して測定すると、チモサイト発達の過程と一致することがわかる(表7の患者2、3及び4と、チャート1)。
【0345】
CD8細胞の相対数は処理済みサンプル及び未処理サンプルにおいて経時的に増加するが、該相対数は未処理サンプルにおいてより大幅に増加する。一方、CD8CD3細胞の相対数は、未処理サンプルにおいて経時的に減少した。しかし、経時的に測定された場合、処理済血液サンプル中でCD3細胞の相対数は増加し、前記細胞タイプはCD4CD3単一ポジティブ細胞、すなわちチモサイトの成熟型に大幅に対応している。加えて、(表3、4、5及び6で上述したように)前記サンプルが他のパネルとの免疫表現形でもあったことから、全体の変化はTリンパ球前駆体及び先駆物(progenies)の生成においてB細胞を大幅に生じさせる。
【0346】
B−CLL患者(番号2、3及び4、表1、2、3、4、5、6、7)の分注された血液サンプルは、何も用いないものと、DR抗原のβ鎖の相同領域に対するPE共役モノクロナール抗体と、同じモノクロナール抗体の未共役型とでそれぞれ処理された。PE共役型を比較するにあたり処理を行ったところ、同じ血液サンプルを未共役型の抗体を用いて処理した場合に大幅に観察されたCD3ポジティブ細胞、及びCD4などの会合されたマーカーの相対数に明確な変化は見られなかった。しかし、経時的に測定した場合、細胞表面上に発現するDR抗原を有さないCD45ポジティブ細胞の数の増加が見られた(表8を参照)。かかる結果と類似の発見は、経時的に免疫表現された場合の未処理サンプルにおいて見られた(表6)。さらに、CD45lowを発現する細胞の相対数は経時的に低下するが、かかる現象は同一患者の未処理サンプルにおいても(経時的に測定した場合に)見られた(チャート1Aを参照)。
【0347】
ヒトバフィーコートサンプル由来細胞のFAC分析
本発明の装置中で、CR3/43モノクロナール抗体を用いてバフィーコートを処理すると、CD34のより大きな発生(幹細胞マーカー)と、CD19(Bリンパ球マーカー)のより小さな発生が生じた。表21を参照のこと。
【0348】
コロニー形成アッセイにより、未処理サンプル中で優位なコロニーは、赤芽球タイプのものであるが、処理済みサンプル中のコロニータイプの可変性は、主要コロニーが分化多能細胞コロニー,赤芽球コロニー形成単位と一緒の顆粒球/マクロファージ及び巨核球と大変大きい。
【0349】
かかる結果は、処理済み細胞が他の造血系経路に沿ってさらに分化することができ、その結果各種特異的細胞系になることを示している。
【0350】
C.Tリンパ球に対して異なる特異性を有する他のモノクロナール抗体の作用の比較
CD19及びCD3パネル
本発明の装置中で、DR抗原のα鎖の相同領域と、MHCクラスI抗原の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて血液サンプルを処理すると、CD3細胞の数が減少し、CD19細胞の数が増加した。DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて同じ血液を処理すると、CD19細胞の数が減少し、CD3細胞の数が増加した。シクロホスホアミドを用いて後者のモノクロナール抗体を処理すると、同様の影響を示した(2時間処理したB−CLLの患者5/6、表14を参照)。
【0351】
同じサンプル中のCD19細胞及びCD3細胞をさらに分析すると、DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて処理した血液中でのみ、CD3細胞の相対数がさらに増加した(処理後24時間の時点の患者5/6、表14を参照)。しかし、DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を加えて、シクロホスホアミドを用いて処理した血液サンプルをさらに分析すると(24時間後の時点の患者5/6、表14を参照)、全く同一の条件下で2時間インキュベーションした時点で観察された結果と比較した場合、CD19細胞及びCD3細胞の相対数が逆転した。
【0352】
一般的に、DR抗原のα鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体又はクラスI抗原のα鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて、同一患者の血液サンプルを処理すると、未処理サンプルと比較した場合、CD19細胞(全Bマーカー)の相対数の増加が見られた。CD19CD3細胞の相対数は、DR抗原のα鎖に対するモノクロナール抗体を用いて処理した、又はクラスI抗原に対するモノクロナール抗体を用いて処理した血液サンプル中で僅かに減少した(表14及びチャート2、3及び4を参照)。クラスI抗原に対するモノクロナール抗体を用いて患者09の血液サンプルを処理すると、CD3細胞の相対数は増加し、CD19細胞及びCD19CD3細胞の相対数は僅かに減少した。しかし、DR抗原のα鎖又はβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて正常な血液ドナーから得て増殖調製されたBリンパ球を処理すると、B−CLL患者で得られたのと同様の免疫表現形の変化が見られた。
【0353】
DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いてHIV及びIgA欠損患者を処理すると、CD3細胞の相対数が増加し、CD19細胞の相対数が減少した。しかし、クラスI抗原の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて同じ血液サンプルを処理すると、同じ効果を示さなかった。B細胞欠損患者(34/BD及び04/BD)から得た血液サンプルを処理すると、DR抗原のβ鎖、クラスI抗原及びCD4抗原に対するモノクロナール抗体を用いて処理した場合、可変的な免疫表現形の変化が見られた。
【0354】
CD4及びCD8パネル
CD19及びCD3パネル(表14)を用いて分析された血液サンプルは、CD4及びCD8パネル(表15)と免疫表現形でもあった。両パネルは、相互に一致し、確証している。DR抗原に対するβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて、又はシクロホスホアミドを加えた該モノクロナール抗体を用いてB−CLL患者の血液サンプルを2時間インキュベーションすると(表15、患者5/6及び10、チャート2、3及び4)CD8及びCD4細胞と両マーカーを共発現する細胞の相対数が増加した。一方、DR抗原のα鎖の相同領域、クラスI抗原のα鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて同じサンプルを処理しても、同じ効果が生じなかった。
【0355】
シクロホスホアミドを加えた、DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて2時間及び24時間のインキュベーション時間で得た免疫表現形の傾向を比較すると、CD4及びCD8ポジティブ細胞の相対数が逆の変化を示し(表15、2時間及び24時間時のB−CLL患者5/6)、かかる変化は、同じ細胞サンプルがCD19及びCD3パネルを用いて分析された場合に得られる変化と合致していた(表14の同一患者)。後の発見から、未分化細胞はTリンパ球又はBリンパ球に分化するので、以降の分化は可逆的であることがわかった。
【0356】
DR及びCD3パネル
DR及びCD3パネルを用いて得られた免疫表現形の変化(表16)は、2時間時点での分析で、DR抗原のベータ又はアルファ側の相同領域に対するモノクロナール抗体、又はクラスI抗原に対するモノクロナール抗体又はシクロホスホアミドを加えたDR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて同じ血液サンプルを処理したCD19及びCD3パネルとCD4及びCD8パネル(表14及び15、チャート2、3及び4)を用いて得られた結果を確認する。
【0357】
結果から、DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体は、DR細胞からのCD3ポジティブ細胞の産生を大幅に誘発することができるようである。
【0358】
さらに、DR抗原のα鎖の関与又はシクロホスホアミドと連携した該分子のβ側の関与を含む処理など(インキュベーション時間の延長)で、CD19細胞又はDR細胞の相対数の増加が促進された。
【0359】
CD56&16及びCD3パネル
本発明の装置中で、血液サンプル、特にBリンパ球の数が高いB−CLL患者の血液サンプルをDR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて処理すると、CD56&16ポジティブ細胞の相対数が増加した。
【0360】
前記患者では、CD3及びCD56及びCD16CD3細胞の相対数は、同じ血液サンプルがCD3及びCD19及びDR及びCD3パネルを用いて分析された場合、β鎖に対するモノクロナール抗体を用いて血液サンプルを処理後に、増加した。
【0361】
CD45及びCD14パネル
本発明の装置中で、DR抗原のβ鎖又はα鎖,シクロホスホアミドを加えたβ鎖又はクラスI抗原に対するモノクロナール抗体を用いて処理された血液サンプルは、CD45及びCD14パネルを用いても分析された(表18)。CD45low,CD45high及びCD45mediumの区別は、恣意的なものである。DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体又はシクロホスホアミドを加えた該モノクロナール抗体を用いて(2時間の時点で)血液サンプル5/6を処理すると、CD45low細胞が生成され、CD45medium細胞の相対数が増加した。しかし、前者の処理は、CD45high細胞の相対数を増加させ、後者の処理はCD45medium細胞の相対数を減少させ、さらにかかる変化は経時依存的であった。
【0362】
クラスI抗原に対するモノクロナール抗体を用いて処理した、患者5/6及び10(B−CLL)の血液サンプルは、CD45medium細胞の相対数において減少を示し、類似の観察結果が、未処理サンプルと比較した場合、同じ処理をした血液サンプル09及びHIV中において見られた。クラスI抗原に対するモノクロナール抗体を用いて、HIV患者及びIgA/D患者の血液サンプルを処理すると、未処理サンプル又はDR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて処理したサンプルと比較した場合、CD45low細胞の相対数が増加した。しかし、前記患者の血液サンプルは、DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて処理したCD45medium細胞の相対数においては、減少を示した。MediumCD45細胞は、クラスI抗原に対するモノクロナール抗体処理後にIgA/D患者の血液サンプル中で増加した。非常に大型で、かなりの程度顆粒化した、CD45抗原を高レベルで発現する細胞が、MHCクラスII抗原のDR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて処理された血液サンプル中で観察された(チャート1、2、3及び4を参照)。
【0363】
CD8及びCD28パネル
CD28抗原は、約60%〜80%の末梢血T(CD3)リンパ球、50%のCD8Tリンパ球及び5%の未成熟CD3チモサイト上に存在する。チモサイトが成熟する間、CD28抗原の発現は、低密度であったほとんどのCD4CD8未成熟チモサイトから事実上全ての成熟CD3、CD4又はCD8チモサイト上で高密度に増加した。細胞活性化は、CD28抗原密度をさらに増加させた。CD28の発現は、CD8リンパ球を2つの機能グループにも分ける。CD8CD28リンパ球は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI限定である、同種抗原特異的なサイトトキシンを介在する。細胞増殖の抑制は、CD8CD28サブセットにより介在される。CD28抗原は、細胞接着分子であり、活性化Bリンパ球上に存在するB7/BB−1抗原に対するリガンドとして機能する。
【0364】
本発明の装置中で、DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いてB−CLL患者(表19、患者5/6及び8)の血液サンプルを処理すると、CD8、CD28及びCD8CD28細胞の相対数が増加し、他のタイプの処理では、かかる増加はなかった。
【0365】
CD34及びCD2パネル
CD34抗原は、未成熟造血前駆細胞上に、及び単一性前駆体(CFU−GM、BFU−E)及び分化多能前駆体(CFU−GEMM、CFU−Mix及びCFU−blast)を含む、全ての骨髄中の造血コロニー形成細胞上に存在する。CD34は、間質細胞前駆体上にも発現する。正常な骨髄中の最終的なデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)Bリンパ球前駆体及びデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)Tリンパ球前駆体は、CD34である。CD34抗原は、CD33抗原を発現する初期骨髄細胞上に存在するが、該抗原は、CD14抗原上やCD15抗原上、CD71抗原を発現し、CD45抗原を僅かに発現する初期赤芽球細胞上には存在しない。前記CD34抗原は、毛細血管内皮細胞上及び約1%のヒトチモサイト上でも見つかる。通常の末梢血リンパ球、単球、顆粒球及び血小板は、CD34抗原を発現しない。CD34抗原密度は、初期造血系前駆体上で最も高く、該細胞が成熟するにつれて減少する。前記抗原は、完全に分化した造血系細胞上に存在しない。
【0366】
コミットしていないCD34前駆細胞は、CD38、DRであり、また該前駆細胞は、例えばCD71、CD33、CD10やCD5などの系譜特異的抗原を有さないが、系譜にコミットしているCD34細胞はCD38抗原を高密度で発現する。
【0367】
CD34細胞のほとんどが、CD45RO抗原又はCD45RA抗原のいずれかを相互に発現する。約65%の急性Bリンパ系白血病及び急性骨髄白血病がCD34抗原を発現する。前記抗原は、慢性的リンパ系白血病(B系譜及びT系譜)又はリンパ腫上で発現しない。CD2抗原は、Tリンパ球及びナチュラルキラーリンパ球(NK)のサブセット上に存在する。
【0368】
結果は、チャート2、3及び4中に示される。
【0369】
DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体又は同じ抗原のα鎖に対するモノクロナール抗体を用いた処理後、B−CLL患者(表20、2時間の時点における患者5/6)の血液サンプルの分析すると、前者の抗体を用いて処理した後、CD34細胞及びCD34CD2細胞の相対数が大幅に増加した。同一の血液サンプルは、他のマーカーに対する上記パネル(表14〜19を参照)と免疫表現形であることから、ここで観察されたCD34及びCD34CD2細胞の相対数の増加は、CD4CD8、CD8CD3及びCD4CD3単一ポジティブ(SP)細胞の相対数の増加と一致するようである。さらに、HLA−DR抗原のβ鎖の関与が排除されるかかる発見は、前期過程がBリンパ球後退を介してT−リンホポイエシス(T−lymphopoiesis)を生じさせる、直接的な裏付けである。
【0370】
24時間後に同一の処理を行ったところ、CD34細胞のレベルが低下して、Tリンパ球の相対数がさらに増加した。Tリンホポイエスを最初に生じさせる逆分化過程を逆転させて、Bリンホポイエシスを生じさせることができた。前者の現象は、シクロホスホアミドと加えたHLA−DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて2時間インキュベーションした時点で観察されたが、後者の過程は、同じサンプル中で同じ処理をして24時間インキュベーションした時点で観察された(チャート2)。
【0371】
HLA−DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いてHIV患者(表20のHIV患者)の血液サンプルを処理すると、CD34及びCD2CD34細胞の相対数が大幅に増加し、HLA−DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体と該抗原のα鎖に対するモノクロナール抗体とを一緒に加えて処理を行った場合も同様に、CD34及びCD2CD34細胞の相対数が大幅に増加した。しかし、HLA−DR抗原のα鎖に対するモノクロナール抗体を用いて前記血液サンプルを処理すると、CD34細胞のレベルに影響はなかった。白血病時に調査され、血液中に多数の異型細胞(胚)を有する生後6日目の小児から得た血液サンプル(BB/ST、表20)を、HLA−DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗原、同一の抗原のα鎖に対するモノクロナール抗体又は両モノクロナール抗体を一緒に加えて処理したところ、免疫表現形の変化が生じた。
【0372】
未処理の血液サンプルを分析すると、CD34及びDR細胞の相対数が大幅に増加し、β鎖に対するモノクロナール抗体を用いて処理すると、CD34細胞の相対数がさらに増加したが、HLA−DR抗原のα鎖に対するモノクロナール抗体を用いての処理、又は一緒に加えられた場合、前記分子のα鎖及びβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて処理すると、前記細胞は減少した。しかし、後者の処理は、CD34CD2細胞の相対数が増加し、HLA−DR抗原のみのβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて同一の血液サンプルが処理された場合、逆の現象が生じた。同一患者の処理血液及び未処理血液のアリコットを24時間後に分析すると、HLA−DR抗原処理のβ鎖に対するモノクロナール抗体がより高いレベルで維持されたことを除いて、上記全ての処理においてCD34の相対数が減少した。後者の処理の場合、24時間後でもCD34CD2細胞の相対数が減少し続けた。
【0373】
かかる結果は、β鎖を介してHLA−DR抗原を関与させると、CD2CD34プールからの又はB−CLL患者のBリンパ球などのより成熟した細胞タイプからのCD34細胞の産生を促進することを示しており、かかる結果はこのタイプの処理が逆分化を促進することを示している。しかし、24時間後の血液サンプルの免疫表現形は、前記細胞タイプが他の系譜に存在しているようであり、この場合細胞は処理済の血液サンプルをCD7及びCD13&33パネルを用いて分析すると観察される、骨髄系譜に存在している又はコミットしているようである。
【0374】
形態は、B−CLLのBリンパ球の免疫表現的特徴を変更し、MHCクラスII抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて処理した正常な個体の画分を(CD19ビーズを用いて)増殖させた。前記過程は、Bリンパ球の形態における変化を伴った。Bリンパ球は、未処理血液中のガラススライドにコロニー化することが観察されており、未処理血液中で物質は、顆粒球,単球,原始細胞に見える多量の細胞及び核形成された赤血球細胞に置き換わる。有糸分形態と顕著な細胞死は、処理済み血液物質又は未処理血液物質中で見られなかった。
【0375】
表20の結果は、本発明の方法に従ってより成熟した未分化細胞を逆分化させることにより未分化細胞を調整することが可能であるという、さらに重要な発見を示している。
【0376】
D.顕微鏡写真
上記方法の抗原テストに加えて、顕微鏡を視覚的に用いる本発明の方法が行われる。本発明の装置は、追跡手段により自動的に変更を追跡するようにプログラムされている。
【0377】
この点について、図8は、本発明の方法前の、分化されているB細胞の顕微鏡写真である。図9は、試薬がHLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体であることを特徴とする、本発明に従ってB細胞を逆分化させることにより形成された未分化細胞の顕微鏡写真である。未分化細胞は、薄暗く染色された細胞の塊である。図10は、同一の未分化細胞の顕微鏡写真であるが、より低い倍率によるものある。
【0378】
図8〜図10は、本発明の方法により、B細胞の未分化幹細胞への逆分化を視覚的に示す。
【0379】
図11は、本発明の方法を行う前の分化B細胞の顕微鏡写真である。図12は、試薬がHLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体であることを特徴とする、本発明に従ってB細胞の逆分化により形成される未分化細胞の顕微鏡写真である。先と同様に、未分化細胞は、薄暗く染色された細胞の塊である。図13は、図12中の同一の未分化細胞から分化した顆粒球を形成する顕微鏡写真である。
【0380】
したがって、図11〜図13は、本発明の方法によりB細胞を未分化幹細胞に逆分化し、新規分化細胞の未分化細胞へのコミットメントは元の分化細胞と異なる系譜のものであることを視覚的に示すものである。
【0381】
かかる顕微鏡実験は、上記のようにCR3/43モノクロナール抗体を用いて処理した、BCLL患者由来の血液を用いて行われた。上述のように、正常時よりもBリンパ球数値が高いため、BCLL細胞からの血液は、逆分化過程を研究する上で有用な補助物である。結果は、図14〜17中で詳細に示されている。
【0382】
図14は、2つの拡大図におけるBCLL患者からの未処理血液サンプルを示す。未処理Bリンパ球(ブルーの細胞)は、典型的な形態、すなわち凝集した染色質構造及びまばらな細胞質を示す。残る細胞は、赤血球(赤色血液細胞)である。
【0383】
CR3/43抗体を用いて血液サンプルを処理すると、Bリンパ球が凝集体にまず集合する(図15)。
【0384】
集合したB細胞は、コボルストーン様細胞領域(cobblestone−like−cellareas)、染色質構造の脱凝縮、突出した核小体、細胞量の増大及び未分化細胞に典型的な細胞質の好塩基球の形成により特徴づけられる、典型的な形態を徐々に喪失する(図16)。緩和した(脱凝縮した)染色質構造は、分化細胞と比較して、未分化細胞の重要な特徴である。前記特徴は、所定の細胞系譜に従いコミットするのに必要な遺伝子発現の変化を決定するために、転写単位に対してより大幅にアクセスする必要性によると思われる。
【0385】
未分化細胞の出現は、分化形態を有する細胞(17A〜17J)の出現に常に伴って現われる。重要な点は、前記細胞が、(i)インキュベーション時間が1又は2以上の完全な細胞分裂が生じるためには短すぎる、(ii)有糸分列形態は見られない、そして(iii)白血球の絶対数は、処理前後で同じままであることから、増殖により生じることはありえないことである。さらに比較的分化していない前駆体は、より分化した前駆体と会合したが(図17Jの骨髄前駆体を参照のこと)、このことは前記特異的細胞が分化により生じたことを示している。
【0386】
図17A〜17Jの顕微鏡写真は、CR3/43モノクロナール抗体を用いてB−CLLリンパ球を処理後に観察された異なるタイプの細胞を示す。血小板(Pl)−図17A、好中球(Ne)−図17B、好酸球(Eso)−図17C、巨核球(Meg)−図17D、好塩基球(Ba)−図17G、リンパ球(Ly)−図17H、単球(Mo)−図17I及び骨髄前駆体(Mp)−図17J。赤芽球及びマクロファージも示されている(データなし)。
【0387】
よって要約すると、かかる顕微鏡の結果は、初めに密集して、前駆細胞から分化細胞という形態に程度差がある各種細胞の出現させる、高レベルの成熟Bリンパ球(好中球、好塩基球、好酸球、巨核球、血小板、リンパ球、リンパ球、マクロファージ、顆粒球、桿状顆粒球、間質様細胞)を有する、BCLL患者から得たサンプル中のB細胞形態の変化を示す。
【0388】
赤芽球前駆体及び骨髄前駆体の存在が観察されることは、非常に重要な他に加えるべき点である(図17J−データなし)。骨髄前駆体は、より大型で異なる核形態を有し、細胞質顆粒を含む細胞と形態的に明らかに区別される。
【0389】
従って、顕微鏡データは、細胞表面マーカーに関してサイトメトリーのデータが示す形態的な結果を支持する。かかるデータから、MHC HLA−DRβ鎖に対する抗体を用いてBリンパ球を処理すると、Bリンパ球数が減少し、未成熟前駆体細胞を含む他の造血系譜の細胞数が増加すると結論できる。
【0390】
本発明の方法により、MHCクラスIIα鎖に対する抗体(TAL.1B5モノクロナール抗体)で処理したT細胞を逆分化して、分化細胞であった時と異なる系譜の新規分化細胞に未分化細胞をコミットさせ、さらに顕微鏡による観察も行われた(データなし)。
【0391】
E.逆分化されたリンパ球における組換え再配列の分析
背景として、前記実験で用いられた分化細胞(Bリンパ球、又はTリンパ球の特定の性質を有する細胞)は、再配列されて成熟Ig又はTCRをそれぞれコードする遺伝子を有する。再配列の過程で、分節をコードする可変(V)領域と前記受容体をコードする不変(C)領域との間にあるDNA、発現されたTCR又はIg遺伝子の一部でない、DNAの中間部分がゲノムからスプライシングされる。前記摘出フラグメントは、染色体外のDNAの形式で細胞中に残存する。前記細胞が真に逆分化するために、摘出されたDNAはゲノムに再挿入され、前記細胞は元々の分化以前と同じ状態にされる。このことから、再配列された遺伝子中の配列に対して相補的であるプローブは、分化状態を特徴づける、再配列されたDNAと比較して、該DNAが未配列又は生殖系状態に戻った場合、より大型のDNA限定フラグメントにハイブリダイズすると考えられる。
【0392】
1.Daudi細胞におけるTCR遺伝子の再配列
図18に示されるサザンブロットの実験において、再配列された(及び他の欠損された)TCR遺伝子を1つ有するB細胞リンパ腫であるDaudiという、公知の細胞株が用いられる。ゲノムDNAは、Daudi細胞から調製され、EcoRIを用いて消化され、ゲル電気泳動にかけられ、標識TCRβ鎖DNAプローブで探索される。該細胞は、コロニーで関連したり、消化されたゲノムDNAをサザンブロットすることで明確に確認することができる同一の遺伝子再配列を有する均一細胞集団を形成したりすることから、ヒト患者から精製されたBリンパ球でなくDaudi細胞が用いられる。通常の血液サンプルにおいて、細胞が異なれば再配列も異なり、サザンブロットはスミア(smear)のようであった。
【0393】
TCR−β鎖をコードする機能的遺伝子は、リンパ球成熟中に生じて、リンパ球成熟過程においてVセグメント(V segment),Dセグメント及びJセグメントを一緒に生じさせる一連の体細胞再配列により、リンパ球に凝集する。かかる再配列過程の非常に明解な説明は、大学の標準的教科書であるGenes VI,Lewin,Oxford University Press,1997(第1994〜1023頁)において成されている。特定の頁は、以下に記載されている。
【0394】
まず、Dセグメントは、D−J連結反応においていくつかのJセグメントの1つに対する組換え過程により連結される。よって、多くの可能なVセグメント(<60>の1つは、DJセグメント(V−D連結)と連結して、完全なTCRβ3鎖遺伝子を形成する。RNAプロセシングの間にスプライシングされて再配列されたVDJ遺伝子セグメントと近接の不変遺伝子エクソンにする介在Jセグメントが存在するかもしれないが、不変領域遺伝子は再配列VDJセグメントの直接の下流である(Lewin p.998)。
【0395】
ヒト細胞において、Cβ1及びCβ2と表示され、2つの異なる座に存在し、各々が6又は7個の連結領域(Jβ)遺伝子セグメント(Jβ1及びJβ2)のクラスター及び1個のDセグメント(Dβ1及びDβ2)による、2つの異なるTCRβ鎖不変遺伝子セグメントが存在する(図1,Toyonaga et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8624−8628及びLewin,p.1017)。
【0396】
Vセグメント、Dセグメント及びJ−Cセグメントを近接にする組換え事象は、V、D、J−C遺伝子配列の組換え末端に存在するノナマー(nonamer)配列及びヘプタマー(heptamer)配列を認識するRAG−1及びRAG−2を含む、多くのタンパク質により触媒される。ノナマー/ヘプタマー配列の起原に依存する形で、組換えは、結果的に不活化又は削除のいずれかとなる。両タイプの事象は、ゲノムDNAの制限酵素フラグメントパターンにおいて変化が生じる。さらに、削除事象は、抽出されたフラグメントを必ずしも完全には消失しない。むしろ、抽出されたフラグメントの末端は、細胞中に残存しているDNAの環状性を産生するために再連結する(Okazaki et al.,1987,Cell 49:447−85,Davis et al.,1991,J.Exp.Med.173:743−6;Livak and Schatz,1996,Mol.Cell Biol.16:609−18;Harriman et al.1993,Annu RevImmunol.11:361−84)。細胞は媒体染色体補体(diploid chromosome complement)を有するもので、もちろん各遺伝子セグメントは、2つの対立遺伝子を有する。
【0397】
通常の生殖系の状態では、Cβ1及びCβ2遺伝子は、Toyonaga et al.,1985の図1に示されるように配列されている。EcoRIを用いてゲノムDNAを制限消化すると、本実験で用いられたプローブにより検出することができる2つの関連するバンド、すなわち(i)Cβ配列を有する12kbのバンドと、(ii)Cβ2配列を有する4kbのバンドが生じる(配列相同性の程度が高いので、前記プローブは、Cβ2にもハイブリダイズするCβ1から得られた標識されたDNAフラグメントである)。前記生殖系配置は、未分化未成熟細胞中で観察される(図18のレーンA)。前期生殖系配置は、(CR3/43抗体を用いて2時間)図18のレーン3により完全に示され、該レーンはレーンAと同一の配置パターンを生じさせた。
【0398】
分化状態では、Cβ1とCβ2の両方の対立遺伝子は再配列され、Cβ1座において12kbのフラグメントやCβ2座において4kbのフラグメントがもはや存在しない。実際、Cβ1座から得たハイブリダイズするフラグメントは、ゲル上に存在しなかった(これは、組換えの結果として両方のCβ1対立遺伝子からハイブリダイズする配列を削除したことによる)。Cβ2座に関して、両染色体上で再配列することから生じる、異なる「対立遺伝子」に対応して、実際には2つの主要なバンドがある。4kb以下で最も大型のバンドは、2つの再配列された対立遺伝子のうちの1つのフラグメントに対応する。最も低いバンドは、他の再配列された対立遺伝子のフラグメントである。中間の小さなバンドは、異なる再配列を用いてDaudi細胞のサブクローンから恐らく得られる。よって前記フラグメントは、対立遺伝子のいずれかに対するサブモル量(submolar amount)中に存在する。しかし、再配列状態は、主要なバンドの両方が明確に視覚化されるレーン1において、非常に明確に示される。
【0399】
MHC−DRのα鎖に結合するネガティブコントロール抗体(TAL.1B5)を用いて2時間経過させると、上方のバンドが消失するが、最も低いバンドはレーン1の未処理細胞と同じ強度を有していた(レーン2を参照)。前記結果に対する可能な説明は、前記細胞が分化し、対立遺伝子の1つのCβ2座においてもさらに組換えが生じ、Cβ2配列が消失したというものである。前記説明は、公知の現象と完全に一致している。
【0400】
ネガティブコントロール抗体を用いて24時間経過させると、未処理細胞において観察される3つのバンドが修復される(レーン4参照)。しかし、該バンドは、レーン2で観察されたバンドよりもより低い位置で実際に移動する。どうしてこのようなことが生じたかは不明である。可能な説明としては、削除された配列の再統合が生じて、ルーピィングアウトエクサイションリインテグレーションモデル(looping−out−excision−reintegration model)(Malissen et al.,1986,Nature 319:28−32)と一致する。しかし、2時間又は24時間の時点でTAL.1B5抗体を用いて結果のいずれも、生殖系パターンに対する再配列を示していない。レーン2及びレーン4は、ネガティブコントロールを示しており、α鎖に対する抗体は、生殖系配列の修復を行わない。
【0401】
対照的に、2時間後にMHC−DRのβ鎖に対するモノクロナール抗体(CR3/43)を用いて得た結果は、生殖系配列に対応するバンド、すなわち12kbバンドと4kbバンド(レーンAとレーン3を比較)のパターンを示す。言換えると、前記結果は、Cβ1座及びCβ2座における生殖系に限定的なパターンが全ての対立遺伝子に対しても修復されることを示す。
【0402】
前記結果から、本発明者は、レーン3で見られたバンドのパターンが、未分化細胞のゲノムDNAの再配列をして生殖系配置に再生することを示すと結論する。
【0403】
前記発見の重要性は、軽く見られるべきものではない。削除を含むゲノム再配列は、分化過程が生じる前に存在していた状態にゲノムを修復するために逆転されうる。最も妥当と思われる説明は、分化の過程でCβ2対立遺伝子が再配列することによって生じた逆位が逆転され、12kbのバンドが消失したCβ1配列の削除逆転されたというものである。喪失したCβ1配列の起原は、元々の削除事象から得られた核中で存在するエピソーム環状DNAであると思われる。前記環状DNAの存在は、先行技術においてカタログ化されてきた(上記文献を参照のこと)。しかし、生殖系ゲノムの修復が生じた正確なメカニズムは重要でない。重要なことは、前記修復が生じたという事実である。
【0404】
本発明の装置中において、MHC−DRのβ鎖に対するモノクロナール抗体(CR3/43)を用いて24時間連続してインキュベーションした結果、より複合的な結合パターンが生じた(レーン5)。しかし、前記バンドは、未処理コントロール中で同一のバンドを示していない。特に、前記プローブにハイブリダイズする約12kbのフラグメントは、依然として存在する(「Cβ対立遺伝子」)。さらに、「Cβ対立遺伝子」とマークされているバンドは、未処理コントロール中で観察された4kbのバンドよりも小さいものに対応していない(レーン1)。レーン5で見られる結果に対する最も妥当な説明は、ハイブリダイゼーションパターンが再配列されたTCR遺伝子によって特徴づけられるT細胞のパターンと似ている(かかる発明は、T細胞に特徴的な細胞マーカーを有する細胞において増加することを示すフローサイトメトリーのデータと一貫している)ことから、第2再配列過程が生じるというものである。しかし、正確な分子説明にも関わらず、CR3/43抗体に対して24時間曝露した時点で観察されたレーン5の結果は、レーン3における2時間の曝露で得られた結果を支持するものである。
【0405】
2.B−CLL細胞におけるIg遺伝子の再配列
表19Bに示されるサザンブロットの結果は、慢性リンパ球白血病(B−CLL)の患者から得た末梢血細胞を用いて得られた。ゲノムDNAは、前記大型のモノクロナール抗体から調製され、BamHI及びHindIIIを用いて消化され、ゲル電気泳動にかけ、標識されたTCR DNAプローブで探索した。前記B−CLL細胞は、上述のCR3/43(HLA−DR、DP及びDQの抗クラスII MHC鎖)を用いて24時間処理された。ブロットは、放射能標識されたIgJ領域プローブを用いて探索された。レーンA中の未処理細胞から得た2つのバンドは、2つの再配列された対立遺伝子(父系及び母系)を表す。前記バンドは、細胞の抗体処理後24時間の時点のパターンを示すレーンB中では現われなかった。前記バンドの代わりに、生殖系Ig遺伝子に特徴的である5.4kbが現われる。
【0406】
図19Aに示される他の実験では、細胞は未処理のまま、又は抗クラスIIMHCβ鎖抗体を用いて所定の時間処理された。前記IgVDJ領域は、分化(コントロール)及び抗体処理したB−CLL細胞(ゲルの半分を残す)中でPCRにより増殖された。これにより、未処理細胞からVDJの増殖産生物が生成された。しかし、抽出されたゲノムDNAを挿入する結果、前記「生殖系」DNA配置がVDJに対する特定のプライマーを用いたPCR増殖を受けやすいので、かかるバンドは前記抗体処理細胞中で観察されなかった。同一の実験(ゲルの右側)により、コントロールであり、ハウスキーピング(housekeeping)する、βアクチンをコードする遺伝子の反応を視覚化する。処理に関わらず、βアクチンPCR増殖産生物に、違いはなかった。よって、前記「コントロール」遺伝子は、同一細胞のIg遺伝子中に大きな変更を同一条件下で生じさせる逆分化による影響は受けないようである。
【0407】
上記の結果は、適切な細胞表面受容体に関与する試薬を用いて細胞を処理すると、分化状態を特徴づける染色体DNAの再配列の再生を観察することにより、分子レベルで証明される(及びモニターされる)前記細胞の逆分化が生じる。よって、分子遺伝的証拠及び形態学的証拠に基づき、クラスIIMHCβ鎖が関与する試薬(mAb)で処理されたBリンパ球系譜の細胞が逆分化すること結論づけられる。一方、クラスIIα鎖が関与する抗体で処理した同一の細胞は、同様に逆分化しない。どちらかと言えば、該細胞はB細胞系譜にそって(前進的に)分化するようである。
【0408】
F.Bリンパ球の逆分化に関するさらなる研究
BCLL患者から得て、FACs Vantagcで精製されたBCLL細胞(95%が純粋なB細胞)は、上記の方法で本発明の装置中でCR3/43抗体を用いて処理され、該細胞はフローサイトメトリーで処理した。表Aに示される結果は、上記の結果をさらに確証する。Bリンパ球系譜の特徴である細胞表面マーカーを細胞数の大幅な減少を伴って、CD34細胞の数における大幅な増加が得られた(CD19、CD20及びCD22)。表Aから気がつく重要な点は、該表がCD34ネガティブ及び系譜ネガティブの両方である細胞に大幅な増加を示すことである。前記未分化細胞は造血系譜にコミットせず、該細胞はCD34幹細胞の分化を進める。さらに、光学顕微鏡によりサンプルを調べると、非造血系細胞の形態的特徴を有する接着細胞タイプの範囲がわかる。
【0409】
【表3】

【0410】
同じ細胞上のCD34細胞表面マーカーの出現を伴うCD19細胞表面マーカーの喪失は、共焦点顕微鏡によりリアルタイムでビデオに写し出され、記録された。CR3/43モノクロナール抗体を加える前のBリンパ球は、CD19に対する抗原であるFITC共役モノクロナール抗体で緑色に染色した。CR3/43モノクロナール抗体の添加後、細胞は緑色の蛍光色を失い、CD34に対するPE/Cy5(又は微量の赤)共役モノクロナール抗体を用いて、緑色でなく赤色に染色した(系時的ビデオからの2つの静止画像を示す図23を参照)。この結果は、Bリンパ球逆分化の間、CD19などの系譜特異的マーカーが消失するが、CD34などの幹細胞マーカーは再発現されることを明確に確証するものである。
【0411】
G.Bリンパ球を造血幹細胞に逆分化させる他の試薬
最初の研究では、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、エリトロポイエチン及びモノクロナール抗体CD3/43という、3つの試薬が実際に同定された。増殖され、精製された正常なBリンパ球の調製は、本発明の装置中で、CR3/43及びTAL.1B5について上述されたのと同様の方法で、3種類の前記試薬のうちの1つで処理された。また、上述の通り、サンプルをフローサイトメトリーで調べた。ネガティブコントロールと比較して、GM−CSF、エリトロポエチン又はモノクロナール抗体CR3/43を用いて処理した3種類の全てのサンプルが逆分化と合致する変化を示した。特に、3種類全ての試薬は、細胞集団中のCD34細胞の相対数を増加させた(図20を参照)。しかし、最も大きな効果はCR3/43で観察され、その結果として前記試薬はここで提示されたよりもより詳細な研究において使用する場合にも選択された。
【0412】
H.逆分化過程により作製された造血系幹細胞の特性
コロニー形成アッセイ
フローサイトメトリーで観察されたCD34細胞及び顕微鏡で同定された未分化細胞が、未分化造血系細胞の特性を有することを確認するために、クラスIIMHCβ鎖に対する抗体で処理した血液サンプル(CR3/43,上記を参照)は、原始造血系細胞の増殖能を測定するための、当該技術分野で公知の標準的方法であるコロニー形成アッセイにかけられた。前記コロニー形成アッセイは、追跡手段の一部として、本発明の装置で自動的に行うことができる。
【0413】
造血幹細胞をインビトロでクローンアッセイすると、増殖する能力、及び表現系的に及び機能的に成熟した骨髄細胞及び/又は赤血球細胞中へと分化、発達する能力を有する原始前駆体細胞を定量化することができる。例えば、インビトロでソフトゲルマトリックス中に播いた/固定化した場合、増殖因子の存在下において、幹細胞はクローン成長(増殖)する及び分化することができる。
【0414】
図21は、倒立明視野顕微鏡を用いて、本発明の方法により作製された幹細胞のコロニーアッセイである。本アッセイでは、正常な血液ドナーのバフィーコートから得たB細胞は、CR3/43モノクロナール抗体で処理され、材料及び方法部門中に記載されたコロニーアッセイにかけられた。
【0415】
図21のパネル(a)〜(e)は、以下の事項を示す。
a)肉眼でも容易に観察できる赤芽球コロニー,骨髄コロニー及び(成熟骨髄及び赤芽球からなる)混合コロニーを示す、3倍に拡大した培養皿の明視野顕微鏡。各コロニーは、増殖及びその後の分化により単一の造血幹細胞から生じる。
b)MIX−CFC,単一の分化多能の造血幹細胞から生じるコロニー(骨髄系譜及び赤芽球系譜の細胞を生じさせることができる幹細胞)。
c)M−CFC,マクロファージからなるコロニー。
d)GM−CFC,マクロファージ,顆粒球及び巨核球を含む骨髄系譜からなるコロニー。
e)BFU−E,正赤芽球や非核形成赤色細胞などの赤芽球系譜に属する細胞からなるコロニー。細胞が赤色であることから、該細胞は充分へモグロビン化されていることがわかる。本コロニーのサイズが大きいことは、該コロニーが非常に原始的な幹細胞から生じたことを示している。
【0416】
同じ結果は、B−CLL細胞で得られた(データなし)。未処理B細胞は、造血系コロニーを生じさせない(データなし)。従って、前記結果は、クラスIIMHCβ鎖に対するモノクロナール抗体CR3/43で処理した血液サンプル中に生存可能な造血幹細胞が存在することを示したが、未処理血液サンプルで中に該細胞は存在しないことを示す。
【0417】
長期培養
長期アッセイにより、造血幹細胞の自己再生能力が調べられる。本培養では、骨髄造血部分の大部分が、インビトロで再生される。前記培養の重要な特徴は、添加成長因子がなくても生じる造血が維持されることである。本アッセイにおいて、造血過程は、骨髄由来間質細胞の接着層の確立に絶対的に依存する(例えば、繊維芽細胞,脂肪細胞,間葉性システムに属する全ての細胞タイプを含む、各種非造血系細胞からなる)。適切な環境(増殖因子の分泌及び細胞該マトリックスの合成)を提供することにより、造血過程をサポートして、幹質細胞は、間細胞の生存,自己更新,増殖及び分化を促進する。
【0418】
本アッセイでは、正常な血液ドナーのバフィーコートから得たB細胞をCR3/43モノクロナール抗体で処理すると(同じ結果がB−CLL細胞から得られたが)、該抗体を加える数時間の間に接着細胞層の形成が生じ、さらに該形成は経時的に増加した。
【0419】
(倒立型明視野照明顕微鏡で観察した場合に、繊維芽細胞/間葉性型細胞/光屈折性大型細胞から主としてなるブランケット細胞(blanketcell)、図22を参照)間質細胞からなる接着層は、12週又はそれ以上まで造血系細胞の増殖及び発達を支持する(かかる細胞は、造血系細胞と緊密な接触を示す)。さらに、造血系細胞の産出が延長された発端である(薄暗く発色する細胞のコブルストーン領域/クラスター(cobblestone areas/clusters)としても知られている))原始造血系細胞の群は、接着層においても観察可能である。
【0420】
造血系焦点のクラスターを形成する小円形細胞からなる間質層(明るく現われる細胞のクラスター)の上部である非接着層には、該層は造血系の幹細胞及びよりコミットした前駆体が含まれる。前記非接着層は、(長期培養培地で2次培養した場合)(クローンアッセイを用いて測定されるように)MIX−CFC,GM−CFC,M−CFC,BFU−E及びCFU−F(コロニー形成単位繊維芽細胞)を生じさせることができる。
【0421】
I.HLA−DRのβ鎖に対する抗体で処理した細胞のRT−PCR
遺伝子転写は、CD34に対するCR3/43モノクロナール抗体,c−kit(幹細胞因子のリガンド),ε−ヘモグロビン(ヘモグロビンの胚芽型)及びβアクチン遺伝子を用いて、Romas(Bリンパ腫)細胞及びK562(赤芽球白血病)細胞中で測定された。
【0422】
方法
mRNAは、RNAZOL(CINA BIOTECH社製)を用いてCR3/43モノクロナール抗体による処理の前後に抽出された。mRNAは、4μlの標準的緩衝液,2μlのdNTPs,1μlのRNASIN,1μlの逆プライマー(ランダムヘクサマープライマー)及び1μlのMMLV逆転写酵素を用いて、室温で5分間インキュベーションすることにより、逆転写をプライミングするヘクサマーにかけられた。混合物は、38℃で1時間さらにインキュベーションを行った。混合物は、CD34,c−kit,ε−ヘモグロビン及びβアクチン配列を増幅させるために設計されたプライマーを用いて、標準的条件下でPCRにかけられた。プライマーは、公開済みのデータに従ってRandell Institute Kings Collegeで合成された。
【0423】
結果
得られた結果は、βアクチンmRNAのレベルが変更しなかったのに対して、CD34,c−kit,ε−ヘモグロビンmRNAのレベルは、CR3/43モノクロナール抗体による処理後、大幅に増加した。CD34及びc−kitに対する結果は、造血幹細胞を産生するBリンパ球を逆分化することを示す、上記データに対するさらなる支持を提供する。
【0424】
ε−ヘモグロビンに対して得られた結果は、ヘモグロビンが胚細胞中でしか通常発現しないことからとても興味深い。従って、CR3/43モノクロナール抗体を用いて処理すると、造血系幹細胞を生じさせるだけでなく、胚幹細胞などのさらに原始的な未分化細胞も生じさせることが可能である。
【0425】
J.要約
まとめると、本発明の装置は分化細胞を幹細胞に逆分化させるにあたり用いられてよい。実施例は、数時間で末梢血中のリンパ造血系に作用する、幹細胞の生成に利用可能なTリンパ球及びBリンパ球の個体発生及び発達過程に関する、大変興味深くまた将来性のある発見結果を示すインビトロでの実験について記載している。
【0426】
Bリンパ球数が高いB細胞慢性リンパ球白血球(B−CLL)の患者から得た末梢血血液サンプルを、クラスII抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体で処理すると、単一陽性(SP)Tリンパ球及び胸腺細胞マーカーCD4抗原及びCD8抗原に対して二重陽性であった該Tリンパ球の前駆体の相対数が激増し、該Tリンパ球と該前駆体の両者は同時に発現した。しかし、かかる現象は、Bリンパ球の相対数の大幅な減少を常に伴った。前記観察は、同一の血液サンプルがクラスII抗原のα鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体又はクラスI抗原の相同領域に対するモノクロナール抗体で処理された場合、観察されなかった。
【0427】
本発明の装置において、B細胞慢性リンパ球白血病(CLL)の患者から得た全血液をHLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体を用いて処理すると、Tリンパ球が生じる。前記事象は、CD4マーカーとCD8マーカーを共発現する二重陽性細胞の出現、CD34を発現する細胞の出現、単一陽性CD4CD3及びCD8CD3リンパ球の数が付随して増加する。さらに、係る細胞の生成において生じた免疫表現形の変化は、胸腺細胞発達の変化、特に経時的に測定された場合の変化と同じであった。
【0428】
DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体で全血を2時間インキュベーション生成された二重陽性細胞(DP)の割合は、経時的に減少し、かかる事象は、単一陽性CD4CD3及びCD8CD3リンパ球の同時増加が付随し、一定時間経過後も同様であった。TCRα鎖及びTCRβ鎖は、前記タイプの細胞上でも発現する。
【0429】
Bリンパ球は、CD19,CD21,CD23,IgM及びDRなどのマーカーを絶えず消失し、これはCD34細胞及びCD34CD2細胞の出現,CD7細胞の増加,CD8CD28細胞及びCD28細胞の増加,CD25細胞の増加,CD10細胞及びCD34細胞及びCD34及びCD19細胞の出現,CD5細胞中の増加,CD45抗原を低レベルで発現する細胞と同時に発生する。前記変化は、HLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体でもって血液を処理することによるものであった。
【0430】
処理前のB−CLL患者の血液中の白色血液細胞の大部分は、Bリンパ球であったことから、かかる処理と関連する免疫表現型の変化は、Bリンパ球の逆分化及び以降のコミットメント(すなわち再コミットメント)と合致している。さらに、シクロホスファアミドと、HLA−DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体とで処理されてTリンパ球に誘導された、B−CLL患者のBリンパ球は、該処理をして延長されたインキュベーションをしてBリンパ球に戻すことができた。
【0431】
CD16&56やCD3やCD8やCD3パネルを用いて、HLA−DR抗原のβ鎖に対するモノクロナール抗体を用いて処理されたサンプルを分析すると、前記マーカーを発現する細胞の相対数が、CD19やCD3やDRやCD3などのパネルで測定された相対数に呼応して、少しずつ安定的に増加する。比濁法(nephlometry)及び免疫電気泳動を用いてHIV患者の処理サンプル及び未処理サンプルの上澄みを調べると、B細胞が血漿細胞ステージを通過したにちがいないことを示すIgGのレベルが増加した。上記全ての細胞の相対数の増加には、非常に大量のCD56&16抗原を発現する中型で非常に顆粒化された細胞の出現を伴う。非常に大型で非常に顆粒化された他の細胞が、一時的に観察され、該細胞はCD34に対して陽性で、CD4CD8マーカーに対して二重陽性であった。他の一時的な細胞も観察されたが、該細胞は、大型で顆粒化され、CD3受容体及びCD19受容体に対して陽性であった。多くのBリンパ球に存在するCD25が消失し、CD25は、数の増加が常に観察される新規形成のTリンパ球により発現された。
【0432】
CD28CD8及びCD28細胞は、DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体でB−CLL患者の全血を処理した後に出現した。かかる発見は、HLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体で血液を処理することによる。
【0433】
前記方法で生じたTリンパ球産生は、正常な血液ドナーの末梢血,臍帯血,骨髄,HIV個体やエイズ患者を含む各種感染症患者において、また、正常血液ドナー,IgA欠乏患者及び各種他の条件を有する他の患者の血液サンプルから得たBリンパ球に対する濃縮画分において観察された。さらに、HLA−DR抗原のβ鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体で処理されたB−CLL患者2人のサンプル中の骨髄マーカーを分析すると、CD13やCD33などの骨髄マーカーを発現する細胞の相対数が大幅に増加していた。前記マーカーは、CD56&16抗原又はCD7抗原と共発現した。しかし、Tリンパ球マーカーを有するが、骨髄抗原を有さないCD7細胞の相対数は、別の細胞集団で観察された。かかる特定の観察結果は、未処理サンプル中で、又はクラスI抗原やHLA−DR抗原のα鎖の相同領域に対するモノクロナール抗体で処理したサンプル中で観察されなかった(チャート2&3を参照)。かかる最終結果は、HLA−DR抗原のβ鎖を介して一度誘導されたBリンパ球は、Tリンパ球前駆細胞に退行するだけでなく、骨髄系譜及び赤芽球系譜にも存在することができる。
【0434】
要約すると、本出願中で提示されたデータは、本発明の装置中で、(i)ある系譜の正常な細胞を複数の他の系譜の細胞の細胞表面マーカーや形態的特徴を有する細胞に転換することができることや、(ii)分化したBリンパ球やTリンパ球から、(例えば幹細胞などの)原始前駆細胞の細胞表面マーカーや形態的特徴を有する細胞を得ることができることを示す。
【0435】
数々の実験がBCLL細胞を用いて行われたことに注意されたい。BCLL細胞は、血漿細胞の最終的な分化段階に分化することができない成熟Bリンパ球である。その代わりに該細胞は染色体欠損により高レベルの増殖、そして多量のBCLL患者血液中のBリンパ球を示す。
。先行技術に記載されている多数の腫瘍細胞と比較して、BCLL細胞は、本発明の方法において用いられる以前には、いかなる形でも限定された逆転分化を起こしたことはない。さらに該細胞は、ゲノム構造,細胞マーカー又は細胞形態に関して、未分細胞のいかなる特徴も示さない。該細胞は、あらゆる点で成熟B細胞である。
【0436】
よって、悪性細胞のいくつかは未分化細胞の特徴をある程度有するかもしれないが、このことはBCLL細胞の場合にはあてはまらず、Bリンパ球の研究にとって該細胞は完全に許容可能な実験系である。さらに、BCLL細胞やDaudi細胞は、前記実験に関連するいかなる側面においても通常の細胞と充分に区別されない。事実、BCLLをモデルの系とすることの妥当性は、Martensson et al.,1989,Eur.J.Immunol.19:1625−1629により確証されている(第1625頁の第1段落右欄を参照)。
【0437】
加えて、CR3/43モノクロナール抗体を有する正常ドナーから得たヒトバフィーコート血液サンプルを処理すると、CD34(幹細胞マーカー)がより大量に発生し、CD19(Bリンパ球マーカー)がより少量で発生した。
【0438】
本発明の方法により作製された幹細胞は、いかなる組織のものでもよく、リンパ造血型前駆細胞に必ずしも限定されるものではないことに注意されたい。
【0439】
本発明の他の改良については、当該分野において通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0440】
当該分野において通常の知識を有する者にとって容易に明らかであるように、本発明の装置は本明細中で開示されているようにコミットした細胞及び/又は試薬を含む細胞集団を用いての使用に必ずしも限定されず、試薬を用いた液体の混合及びインキュベーションを必要とするいかなる手順での使用に適している。
【0441】
上記明細書中で述べられた出版物は、すべて本願に引用して援用している。本発明に記載の方法及びシステムの各種改良及び変形例は、本発明の範囲及び精神から離れることなく当該技術分野において通常の知識を有する者にとって明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態との関連で記載されてきたが、請求項記載の発明は、かかる特定の実施形態に不条理に限定されるべきでない。特に、分子生物学又は関連分野において通常の知識を有する者にとって自明である、ここに記載した本発明の実施形態に対する各種改良も、特許請求の範囲に属するものとする。
【0442】
【表4】

【0443】
【表5】

【0444】
【表6】

【0445】
【表7】

【0446】
【表8】

【0447】
【表9】

【0448】
【表10】

【0449】
【表11】

【0450】
【表12】

【0451】
【表13】

【0452】
【表14】

【0453】
【表15】

【0454】
【表16】

【0455】
【表17】

【0456】
【表18】

【0457】
【表19】

【0458】
【表20】

【0459】
【表21】

【0460】
【表22】

【0461】
【表23】

【0462】
【表24】

【0463】
【表25】

【0464】
【表26】

【0465】
【表27】

【0466】
【表28】

【0467】
【表29】

【0468】
【表30】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、コミットした細胞を含む細胞集団を該チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞を未分化細胞に逆分化させることができる逆分化手段を前記チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞が未分化細胞に逆分化するように、前記逆分化手段の存在下で前記コミットした細胞をインキュベーションするインキュベーション手段とを有することを特徴とする、コミットした細胞を含む細胞集団中の未分化細胞の相対数を形成する及び/又は増加させる装置。
【請求項2】
チャンバーと、コミットした細胞を含む細胞集団を該チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる試薬を前記チャンバーに導入する手段と、コミットした細胞が未分化細胞に逆分化するように前記試薬及び前記コミットした細胞をインキュベーションするインキュベーション手段とを有することを特徴とする、コミットした細胞を含む細胞集団中の未分化細胞の相対数を形成する及び/又は増加させる装置。
【請求項3】
装置が前記細胞集団の量を測定する測定手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
装置が細胞数を計測して前記細胞集団の細胞濃度を測定する手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の装置。
【請求項5】
細胞数を計測する手段がコールターカウンター、好ましくは小型化されているコールターカウンター又は他の適切なサイトメーターであることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
装置が貯蔵容器からの一定量の前記細胞集団数を前記チャンバーに搬送する搬送手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の装置。
【請求項7】
装置が所定量の細胞集団を貯蔵容器から前記チャンバーに搬送する搬送手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の装置。
【請求項8】
装置がチャンバーに添加される試薬量を計算する計算手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の装置。
【請求項9】
装置がチャンバーに一定量の試薬を搬送する他の搬送手段、好ましくは該搬送手段がモーター駆動のシリンジであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の装置。
【請求項10】
装置が計算された一定量の試薬をチャンバーに搬送する他の搬送装置を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の装置。
【請求項11】
他の搬送手段がモーター駆動によるシリンジであることを特徴とする請求項9又は10記載の装置。
【請求項12】
装置が前記チャンバー中の二酸化炭素濃度を調節する二酸化炭素調節手段を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の装置。
【請求項13】
装置がチャンバー中の温度を調節する温度調節手段を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の装置。
【請求項14】
装置がチャンバー内部で細胞集団と試薬とを混合する混合手段を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の装置。
【請求項15】
装置がインキュベーション時間を時間計測する時間計測手段を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか記載の装置。
【請求項16】
装置がインキュベーション時間の残存時間を使用者に表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の装置。
【請求項17】
装置がインキュベーション時間の終了を使用者に知らせるアラーム手段を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の装置。
【請求項18】
装置がチャンバーから細胞を回収する回収手段を有することを有することを特徴とする請求項1〜17のいずれか記載の装置。
【請求項19】
回収手段がチャンバーから未分化細胞を回収することを特徴とする請求項18記載の装置。
【請求項20】
細胞が、チャンバーから貯蔵容器に未分化細胞を含む細胞サンプルを除去する除去装置を有することを特徴とする請求項1〜19のいずれか記載の装置。
【請求項21】
装置が、未分化細胞を含む細胞集団を含む貯蔵容器をシールするシール手段を有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか記載の装置。
【請求項22】
コミットした細胞が非癌細胞であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか記載の装置。
【請求項23】
コミットした細胞が分化細胞であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか記載の装置。
【請求項24】
コミットした細胞がコミットした造血系細胞であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか記載の装置。
【請求項25】
コミットした細胞がCFC−T細胞,CFC−B細胞,CFC−Eosin細胞,CFC−Bas細胞,CFC−GM細胞,CFC−MEG細胞,CFC−E細胞,T細胞及びB細胞から選ばれることを特徴とする請求項1〜24のいずれか記載の装置。
【請求項26】
未分化細胞が分化多能幹細胞であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか記載の装置。
【請求項27】
未分化細胞が造血系幹細胞,神経幹細胞,上皮幹細胞,間葉幹細胞,内胚葉幹細胞及び胚幹細胞からなる群から選ばれる幹細胞であることを特徴とする請求項1〜26のいずれか記載の装置。
【請求項28】
未分化細胞がCD34,HLA−DR,CD38,CD117,AC133,CD90及び/又はCD45lowからなる群から選ばれる1又は2以上の細胞表面マーカーにより特徴づけられることを特徴とする請求項1〜27のいずれか記載の装置。
【請求項29】
未分化細胞がMHCクラスI細胞及び/又はMHCクラスII細胞であることを特徴とする請求項1〜28のいずれか記載の装置。
【請求項30】
試薬が、コミットした細胞の表面上における抗原の捕捉、認識又は提示に介在する受容体に関与することを特徴とする請求項1〜29のいずれか記載の装置。
【請求項31】
受容体がMHCクラスI抗原又はMHCクラスII抗原であることを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項32】
クラスI抗原がHLA−A受容体,HLA−B受容体,HLA−C受容体,HLA−E受容体,HLA−F受容体又はHLA−G受容体のいずれかであり、クラスII抗原がHLA−DM受容体,HLA−DP受容体,HLA−DQ受容体又はHLA−DR受容体のいずれかであることを特徴とする請求項31記載の装置。
【請求項33】
受容体がHLA−DR受容体であることを特徴とする請求項32記載の装置。
【請求項34】
受容体が相同領域をもつβ鎖を有することを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項35】
受容体がHLA−DRのβ鎖の相同領域を少なくとも有することを特徴とする請求項34記載の装置。
【請求項36】
試薬が受容体に対する抗体であることを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項37】
試薬が受容体に対するモノクロナール抗体であることを特徴とする請求項36記載の装置。
【請求項38】
抗体がモノクロナール抗体CR3/43とモノクロナール抗体TAL1B5からなる群から選ばれることを特徴とする請求項36又は37記載の装置。
【請求項39】
試薬がMHC遺伝子発現を調節することを特徴とする請求項2〜38のいずれか記載の装置。
【請求項40】
試薬がMHCクラスI及び/又はMHCクラスII発現を調節することを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項41】
コミットした細胞を含む細胞集団がバフィーコート血液サンプルである又はバフィーコート血液サンプル由来であることを特徴とする請求項1〜40のいずれか記載の装置。
【請求項42】
チャンバーと、造血系細胞を含む細胞集団を前記チャンバーに導入する手段と、コミットした造血系細胞を未分化細胞に逆分化させることができる逆分化手段を前記チャンバー中に導入する手段と、コミットした造血系細胞が未分化細胞に逆分化するように、前記逆分化手段の存在下で前記コミットした細胞をインキュベーションするインキュベーション手段とを有することを特徴とする、造血幹細胞を含む細胞集団中で未分化細胞の相対数を形成又は増加させる装置。
【請求項43】
チャンバーと、コミットした細胞を含む細胞集団を前記チャンバーに導入する手段と、前記コミットした細胞に対して操作的に関与する試薬を前記チャンバー中に導入する手段と、CD34及び/又はHLA−DR及び/又はCD38及び/又はCD117及び/又はAC133及び/又はCD90及び/又はCD45low細胞の相対数が前記関与の結果として増加するように、前記チャンバー中で前記試薬の関与を受けた前記コミットした細胞を操作的にインキュベーションするインキュベーション手段とを含むことを特徴とする、コミットした細胞を含む細胞集団中にCD34及び/又はHLA−DR及び/又はCD38及び/又はCD117及び/又はAC133及び/又はCD90及び/又はCD45lowの細胞表面マーカーを有する細胞の相対数を形成する及び/又は増加させる装置。
【請求項44】
よりコミットした細胞の逆分化を、バフィーコート血液サンプル中又は血液サンプル由来のよりコミットした細胞に生じさせて、よりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化する過程を含むことを特徴とする未分化細胞の調製方法。
【請求項45】
よりコミットした細胞を未分化細胞に逆分化させる試薬と、バフィーコート血液サンプル中のよりコミットした細胞とを接触させる過程を含むことを特徴とする、未分化細胞の調製方法。
【請求項46】
コミットした細胞が非癌細胞であることを特徴とする請求項44又は45記載の方法。
【請求項47】
コミットした細胞が分化細胞であることを特徴とする請求項44〜46のいずれか記載の方法。
【請求項48】
コミットした細胞がコミットした造血系細胞であることを特徴とする請求項44〜47のいずれか記載の方法。
【請求項49】
コミットした細胞が、CFC−T細胞,CFC−B細胞,CFC−Eosin細胞,CFC−Bas細胞,CFC−GM細胞,CFC−MEG細胞,CFC−E細胞,T細胞及びB細胞から選ばれることを特徴とする請求項44〜48のいずれか記載の方法。
【請求項50】
未分化細胞が分化多能幹細胞であることを特徴とする請求項44〜49のいずれか記載の方法。
【請求項51】
未分化細胞が造血幹細胞,神経幹細胞,上皮幹細胞,間葉幹細胞及び胚幹細胞からなる群から選ばれる幹細胞であることを特徴とする請求項44〜50のいずれか記載の方法。
【請求項52】
未分化細胞がCD34,HLA−DR,CD38,CD117,AC133,CD90及び/又はCD45lowの群から選ばれる1又は2以上の細胞表面マーカーにより特徴づけられることを特徴とする請求項1〜51のいずれか記載の方法。
【請求項53】
未分化細胞がMHCクラスI細胞及び/又はMHCクラスII細胞であることを特徴とする請求項44〜52のいずれか記載の方法。
【請求項54】
試薬が、コミットした細胞の表面上における抗原の捕捉、認識又は提示に介在する受容体に関与することを特徴とする請求項44〜53のいずれか記載の方法。
【請求項55】
受容体がMHCクラスI抗原又はMHCクラスII抗原であることを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項56】
クラスI抗原がHLA−A受容体,HLA−B受容体,HLA−C受容体,HLA−E受容体,HLA−F受容体又はHLA−G受容体のいずれかであり、クラスII抗原がHLA−DM受容体,HLA−DP受容体,HLA−DQ受容体又はHLA−DR受容体のいずれかであることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項57】
受容体がHLA−DR受容体であることを特徴とする請求項56記載の方法。
【請求項58】
受容体が相同領域をもつβ鎖を有することを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項59】
受容体がHLA−DRのβ鎖の相同領域を少なくとも有することを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項60】
試薬が受容体に対する抗体であることを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項61】
試薬が受容体に対するモノクロナール抗体であることを特徴とする請求項60記載の方法。
【請求項62】
抗体がモノクロナール抗体CR3/43とモノクロナール抗体TAL1B5からなる群から選ばれることを特徴とする請求項60又は61記載の方法。
【請求項63】
試薬がMHC遺伝子発現を調節することを特徴とする請求項45〜62のいずれか記載の方法。
【請求項64】
試薬がMHCクラスI及び/又はMHCクラスII発現を調節することを特徴とする請求項63記載の方法。
【請求項65】
コミットした細胞に操作的に関与する試薬と、バフィーコート血液サンプル中のよりコミットした細胞とを接触させ、CD34及び/又はHLA−DR及び/又はCD38及び/又はCD117及び/又はAC133及び/又はCD90及び/又はCD45lowの細胞が前記関与の結果として増加する過程を含むことを特徴とする、CD34及び/又はHLA−DR及び/又はCD38及び/又はCD117及び/又はAC133及び/又はCD90及び/又はCD45lowの細胞表面マーカーを有する細胞の相対数をバフィーコート血液サンプル中で増加させる方法。
【請求項66】
細胞中の正常な分化細胞の割合を置換するのに効果的な逆分化手段と、細胞集団中の1又は2以上の分化細胞とを接触させることにより、1又は2以上の分化細胞が未分化細胞に逆分化することを特徴とする未分化細胞の調製方法。
【請求項67】
1又は2以上の前記分化細胞を未分化細胞に逆分化させる細胞集団における正常な分化細胞の割合を置換することを特徴とする逆分化手段の使用。
【請求項68】
1又は2以上の分化細胞を含有する前記細胞集団を含む環境を、第1環境から、1又は2以上の前記分化細胞を未分化細胞に逆分化させるために、第1環境と比較して遊離イオン濃度を効果的に修飾した第2環境へと変化させることを特徴とする、細胞集団中の分化細胞を未分化細胞に逆分化する未分化細胞の調製方法。
【請求項69】
細胞集団中の1又は2以上の分化細胞と、正常な分化細胞の割合を置換するのに効果的な逆分化手段とを接触される過程と、イオンなし又はイオン封鎖された第1環境中の細胞集団を培養する過程と、第1環境と比較して、第2環境に存在するイオン濃度を効果的に修飾した第2環境へと第1環境を変化させ、1又は2以上の分化細胞が未分化細胞に逆分化する過程とを含むことを特徴とする未分化細胞の調製方法。
【請求項70】
逆分化手段が、細胞集団中でネガティブセレクションを引き起こして、細胞集団中の正常な分化細胞の割合を破壊する手段であることを特徴とする請求項66〜67又は69のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項71】
逆分化手段が、抗体,細胞密度により細胞を分離するのに用いられる密度勾配培地、又は赤血球細胞の沈澱を生じさせる物質からなる群から選ばれる1又は2以上の手段であることを特徴とす、請求項66〜67又は69〜70のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項72】
第2環境の前記遊離イオン濃度が第1環境の遊離イオン濃度と比較して増加していることを特徴とする、請求項68又は69記載の方法。
【請求項73】
第2環境の前記相対的な遊離イオン濃度が第1環境と比較して増加することを特徴とする請求項68〜69又は72のいずれか記載の方法。
【請求項74】
遊離イオンがアニオンであることを特徴とする請求項68〜69又は72〜73のいずれか記載の方法。
【請求項75】
遊離イオンが第1類の金属又は第2類の金属であることを特徴とする請求項68〜69又は72〜74のいずれか記載の方法。
【請求項76】
遊離イオンがカルシウムイオン及び/又はマグネシウムイオンであることを特徴とする請求68〜69又は72〜75のいずれか記載の方法。
【請求項77】
環境の遊離イオン濃度が、該環境の遊離イオン濃度を相対的に変更することができる試薬を用いて前記第1環境を処理して、第2環境を生じさせることにより修飾されることを特徴とする請求68〜69又は72〜76のいずれか記載の方法。
【請求項78】
第1環境が、1又は2以上のイオン封鎖剤で処理され、その後該封鎖剤が除去され又は該封鎖剤濃度が減少され、比較的増加した遊離イオン濃度を有する第2環境とし、細胞集団中の1又は2以上の分化細胞を逆分化することを特徴とする請求項77記載の方法。
【請求項79】
第1環境が、1又は2以上の遊離イオン封鎖剤を用いて処理され、第1環境と比較して遊離イオン濃度が増加している第2環境に、細胞集団を移すことにより、細胞集団中の1又は2以上の分化細胞を逆分化させることを特徴とする請求項68〜69又は72〜78記載のいずれか記載の方法。
【請求項80】
細胞集団が、前記細胞集団が低濃度又は濃度ゼロの遊離イオンを含む第1環境中で培養され、その後該第1環境の細胞を移して又は第1環境を調節して、遊離イオンを含む又は第1環境よりも高濃度で遊離イオンを含む第2環境とし、細胞集団中で1又は2以上の分化細胞を逆分化することを特徴とする請求項68〜69又は72〜78のいずれか記載の方法。
【請求項81】
封鎖剤が遊離イオンキレート剤であることを特徴とする請求項78又は79記載の方法。
【請求項82】
封鎖剤がアミン基及びカルボキシル基の両方を含むことを特徴とする請求項78〜79又は81のいずれか記載の方法。
【請求項83】
封鎖剤が、nが1又は2である−N(CHCOH)基を複数含むことを特徴とする請求項78〜79又は81〜82のいずれか記載の方法。
【請求項84】
封鎖剤がEDTA,ヘパリン,EGTA,DTPA,クエン酸三ナトリウム及び他の同様のキレート剤及び/又は抗凝固剤の群から1又は2以上選ばれることを特徴とする、請求項78〜79又は81〜83のいずれか記載の方法。
【請求項85】
封鎖剤が充分高濃度で添加され、これにより前記封鎖剤の存在の除去が逆分化を生じさせることを特徴とする請求項78〜79又は81〜84のいずれか記載の方法。
【請求項86】
封鎖剤が除去されたときに、逆分化を引き起こす充分な濃度が約2mM又はそれ以上であることを特徴とする請求項85記載の方法。
【請求項87】
より分化した細胞が非癌細胞であることを特徴とする請求項66〜86のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項88】
より分化した細胞がコミットした造血系細胞であることを特徴とする請求項66〜87のいずれか記載の方法または使用。
【請求項89】
より分化した細胞が、CFC−T細胞,CFC−B細胞,CFC−Eosin細胞,CFC−Bas細胞,CFC−GM細胞,CFC−MEG細胞,CFC−E細胞,T細胞及びB細胞から選ばれることを特徴とする請求項66〜88のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項90】
未分化細胞が分化多能幹細胞であることを特徴とする請求項66〜89のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項91】
未分化細胞が造血系細胞,神経幹細胞,上皮幹細胞,間葉幹細胞,内胚葉幹細胞及び胚幹細胞からなる群から選ばれる幹細胞であることを特徴とする請求項66〜90のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項92】
未分化細胞がCD34,HLA−DR,CD38,CD117,AC133,CD90及び/又はCD45lowの群から選ばれる1又は2以上の細胞表面マーカーにより特徴づけられることを特徴とする請求項66〜91のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項93】
未分化細胞がMHCクラスI細胞及び/又はMHCクラスII細胞であることを特徴とする請求項66〜92のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項94】
コミットした細胞を含む細胞集団がバフィーコート血液サンプルである又はバフィーコート血液サンプル由来であることを特徴とする請求項66〜93のいずれか記載の方法又は使用。
【請求項95】
細胞集団中の分化細胞を未分化細胞に逆分化させる方法において、1又は2以上の分化細胞を含む前記細胞集団を含む環境を、低濃度又は濃度ゼロの遊離カルシウムイオン又は遊離マグネシウムイオンを含む第1環境から、遊離カルシウムイオン若しくは遊離マグネシウムイオンを有する、又は第1環境よりも高濃度の遊離カルシウムイオン若しくは遊離マグネシウムイオンを有する第2環境に変化させることにより、細胞集団中の1又は2以上の分化細胞を逆分化させることを特徴とする未分化細胞の調製方法。
【請求項96】
細胞集団中の分化造血系細胞を未分化細胞に逆分化させる方法において、1又は2以上の分化造血系細胞を含有する前記細胞集団を含む環境を、第1環境から、前記分化造血系細胞が未分化細胞に逆分化するように、遊離イオン濃度を第1環境と比較して効果的に修飾した第2環境へと変化させることを特徴とする未分化細胞の調製方法。
【請求項97】
細胞集団中の分化細胞を未分化細胞に逆分化させる方法において、環境の遊離イオン濃度を相対的に修飾して第2環境を作り出すことができる試薬を用いて、第1環境を処理することにより、前記細胞集団を含む環境を修飾することを特徴とする未分化細胞の調製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図20】
image rotate

【図3】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図17C】
image rotate

【図17D】
image rotate

【図17E】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2011−155984(P2011−155984A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−85559(P2011−85559)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2001−582506(P2001−582506)の分割
【原出願日】平成13年5月10日(2001.5.10)
【出願人】(507237819)トライステム・トレイディング・(キプロス)・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】TriStem Trading (Cyprus) Limited
【Fターム(参考)】