説明

装飾シート用粘着剤及び装飾シート

【課題】屋外耐候性が高く、オレフィン系素材に対する粘着性が良好で、凹凸面に貼られた場合にも、浮きや剥がれが発生せず、使用後は、糊残りしないで、剥離できる装飾用粘着シートに用いる粘着剤を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度−70〜−10℃かつ重量平均分子量80万〜200万の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(A)と、ガラス転移温度が−10℃以上40℃未満で、かつ重量平均分子量1〜10万以下の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含む粘着剤であって、前記アクリル系ポリマー(B)が、少なくとも炭素数2〜6のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルを反応させてなる共重合体であり、さらに前記アクリル系ポリマー(A)と、前記アクリル系ポリマー(B)とを重量比50/50〜95/5で用いることを特徴とする装飾シート用粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看板等の物品、建築物および車輌等の宣伝広告や装飾を目的として用いられる装飾粘着シート用の粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、看板用途として着色した塩ビ基材に粘着剤層が形成された装飾シートが用いられている。この装飾シートは、別名マーキングシートとも称される。さらに塩ビ基材上に印刷することで意匠性を付与して用いられることも有る。
最近は、広告方式の多様化に伴って、看板用途以外にも、自動車、トラック、バス、電車等の車輌に、装飾シートが使用される場合が増加している。
そのため装飾シートに用いる粘着剤は、屋外耐候性が高く、未塗装PPバンパー等にも密着し、凹凸面に貼られた場合でも、浮きや剥がれが発生しない十分粘着力が必要とされる。一方、使用後は、糊残りせずに剥離出来る再剥離性が求められている。
【0003】
そこで特許文献1には、再剥離用粘着剤として、経時剥離力の上昇を抑制する目的でメタクリル酸アルキルエステルを使用し、実施例2にiso-ブチルメタクリレートを43重量部使用した粘着剤が提案されている。しかし、この粘着剤は、ガラス転移温度が高く、タックや粘着力が低いために、本発明の使用用途には適さない。
【0004】
また特許文献2には、アクリル酸アルコキシアルキルエステルを主成分とし、これにカルボキシル基含有モノマーを共重合させて得られる重量平均分子量60万以上の粘着性ポリマー100重量部と、メタアクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これにアミノ基含有モノマーを共重合させて得られる、ガラス転移温度が60℃以上で重量平均分子量5万以下の低分子量ポリマーと、架橋剤を含有することを特徴とする粘着剤組成物が提案されている。しかし、この粘着剤はFDPやタッチパネル用途を想定している為に、PP等のオレフィンに対する粘着力が不足し、さらに冬季に屋外で使用される本用途には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−363521号公報
【特許文献2】特開2002−327160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、屋外耐候性が高く、バンパー等に使用されるPPなどのオレフィン系素材に対する粘着性が良好で、凹凸面に貼られた場合にも、浮きや剥がれが発生せず、使用後は、糊残りしないで、剥離できる装飾シートに用いる粘着剤の提供を目的とする
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラス転移温度−70〜−10℃かつ重量平均分子量80万〜200万の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(A)と、ガラス転移温度が−10℃以上40℃未満で、かつ重量平均分子量1〜10万以下の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含む粘着剤であって、
前記アクリル系ポリマー(B)が、少なくとも炭素数2〜6のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルを反応させてなる共重合体であり、
さらに前記アクリル系ポリマー(A)と、前記アクリル系ポリマー(B)を重量比50/50〜95/5で用いることを特徴とする装飾シート用粘着剤に関する。
【0008】
また本発明は、アクリル系ポリマー(B)が、さらにカルボキシル基及び/又はアミノ基を含有することを特徴とする上記発明の装飾シート用粘着剤に関する。
【0009】
また本発明は、シート状基材に上記発明の装飾シート用粘着剤からなる粘着剤層が形成されてなる装飾シートに関する。
【0010】
また本発明は、上記発明の装飾シートを用いてなる車輌に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、屋外耐候性が高く、バンパー等に使用されるPP等のオレフィン素材にも粘着性が良好であり、凹凸面に貼られた場合にも、剥がれが発生しない十分な粘着力があり、使用後は、糊残りしないで、剥離し得る装飾シート用粘着剤の提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の装飾シート用粘着剤は、ガラス転移温度−70〜−10℃かつ重量平均分子量80万〜200万の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(A)と、ガラス転移温度が−10℃以上40℃未満で、かつ重量平均分子量1〜10万以下の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含む粘着剤であって、
前記アクリル系ポリマー(B)が、少なくとも炭素数2〜6のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルを反応させてなる共重合体であり、
さらに前記アクリル系ポリマー(A)と、前記アクリル系ポリマー(B)を重量比50/50〜95/5で用いることが重要である。
【0013】
本発明においてアクリル系ポリマー(A)は、高分子量のポリマーであり高い凝集力有するため粘着シートの粘着剤層に凝集力を付与し、屋外に貼られた場合にも、浮き・ハガレを生じさせない機能を有する。
一方、本発明においてアクリル系ポリマー(B)は、比較的低分子量のポリマーであり、粘着剤層のオレフィン系被着体に対する密着性や、凹凸面に対する追従性を高める機能を有する。そのため重量平均分子量1〜10万以下であることが重要である。さらにアクリル系ポリマー(B)はガラス転移温度が−10℃以上40℃未満であることが重要であるが、前記機能を達成するために、用いるモノマーが少なくとも炭素数2〜6のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルであることが重要である。
本発明の装飾シート用粘着剤は、これら2種類のポリマー(A)および(B)を重量比50/50〜95/5で用い、さらに架橋剤(C)を用いることで、装飾シートとして用いたときに、オレフィン系被着体や凹凸面への追従性が良好で浮きや剥がれが生じず、さらに熱湿経時後にも糊残りが発生せず剥離できる優れた特徴を有する。
【0014】
本発明において、アクリル系ポリマー(A)は、後述する架橋剤(C)との反応に関与する官能基として、カルボキシル基又は水酸基の少なくとも一方を有していることが好ましい。アクリル系ポリマー(A)が、カルボキシル基又は水酸基の少なくとも一方を有するためには、カルボキシル基又は水酸基の少なくとも一方を有する共重合性のモノマーを用いる。
【0015】
カルボキシル基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
また、水酸基含有モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルヘキシル)−メチルアクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0016】
本発明においてアクリル系ポリマー(A)の合成に用いるその他の共重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を保有する化合物が広く挙げられ、アクリル系モノマーが、耐候性や粘着物性の面から好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの(メタ)アクリル酸環状エステル類;
(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1-メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1-ブテニル、(メタ)アクリル酸2-ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、(メタ)アクリル酸ビニル等の不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−トリブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などの(メタ)アクリル酸誘導体類;
(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロブチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルなどの(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル類;
トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、トリアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパン トリアクリル酸等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸トリパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;
等のアクリル系モノマーが挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0017】
また、アクリル系モノマーと共重合可能なビニル系モノマー等のその他のモノマーも用いることができる。
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1−ブチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩などの芳香族ビニル系モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのトリアルキルオキシシリル基含有ビニル系モノマー類;
γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー類;
アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;
パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有モノマー類;などが挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0018】
カルボキシル基含有モノマーは、粘着力や凝集力の観点から、全モノマー100重量%のうち1〜10重量%用いることが好ましい。より好ましくは4〜8重量%である。カルボキシル基含有モノマーが、1重量%未満では十分な粘着力が得られにくく、粘着剤層の凝集力が低下し易い傾向にあり、剥離時に凝集破壊することで、糊残りし易い。一方、カルボキシル基を有するモノマーを10重量%よりも多く使用すると、タックや基材への密着性が低下する傾向にある。
【0019】
水酸基含有モノマーは、全モノマー100重量%のうち0.1〜5重量%用いることが好ましい。より好ましくは0.1〜2重量%である。0.1重量%未満では十分な粘着力が得られにくく、粘着剤層の凝集力が低下し易く、剥離時に糊残りし易くなる。一方、水酸基を有するモノマーを5重量%よりも多く使用すると、タックや基材への密着性が低下する傾向にある。
【0020】
アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は−70〜−10℃であることが好ましく、−55〜−30℃がより好ましい。Tgが−70℃未満の場合、粘着剤層の凝集力が低下し、剥離時に糊残りしない凝集力を得る為に、必要な架橋剤量が増やすことになり、そのため粘着力が低下して、車輌の凹凸面貼られた場合に、浮きや、剥がれが発生する恐れがある。一方、Tgが−10℃を超える場合、十分な粘着力やタックを得ることができず、基材に対する密着性が低下する恐れがある。
【0021】
アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は80〜200万が重要であり、80〜150万がより好ましい。重量平均分子量が80万未満では、凝集力が不足するため架橋剤の使用量が増えることで、粘着力が低下する。そのため車輌の凹凸面貼られた場合に、浮きや、剥がれが発生する恐れがある。一方また、重量平均分子量が200万を超えると、粘着剤の粘度が高くなり、塗工適性が低下する恐れがある。
【0022】
アクリル系ポリマー(A)の重合方法は、溶液重合、塊状重合、乳化重合等の方法が可能であるが、本発明では物性コントロールの面から溶液重合であることが必要である。重合する際に用いられる有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が用いられる。またこれら重合溶媒は2種類以上混合して用いても良い。
【0023】
重合する際に用いられる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ系重合開始剤等のラジカル重合開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。重合開始剤の使用量は、重合に供するモノマーの組成や反応条件等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0024】
さらに、アクリル系ポリマー(A)を重合する際には、連鎖移動剤を使用することもできる。
前記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸ノニル、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル等のチオグリコール酸エステル類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセン等が挙げられる。特に、チオグリコール酸エステル類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンを使用した場合には、得られる共重合体が低臭気となり好ましい。なお、連鎖移動剤を使用する場合には、重合させるモノマーの合計100重量部に対して、0.001〜3重量部程度の範囲で使用される。また、重合反応は、通常40〜100℃の温度条件下で、2〜8時間かけて行われる。
【0025】
本発明において用いられるアクリル系ポリマー(B)は、少なくとも炭素数2〜6のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルを反応させてなる共重合体であることが重要である。直鎖のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルを使用することが、低温環境下でも被着体への密着性低下が少ないため好ましい。一方、直鎖のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルであっても、メタアクリル酸メチル等のホモポリマーの高Tgが高いモノマーや、メタクリル酸シクロヘキシル等の環状構造を有するモノマーや、スチレン等の芳香族系モノマーは、得られる樹脂溶液の粘度が高かったり、重合転化率が低くなる傾向にあり好ましくない。
【0026】
例えば、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−アミル、メタアクリル酸イソアミル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸イソヘキシル等が挙げられる。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0027】
上記した種々のモノマーは、アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)が−10℃以上40℃未満になるように共重合することが重要であり、好ましくは−5℃以上、40℃未満である。Tgが40℃以上の場合、形成される粘着剤層の濡れ性が低下して、PP等のオレフィンに対する粘着力が低下する。
【0028】
さらに、本発明においてアクリル系ポリマー(B)は、カルボキシル基及び/又はアミノ基を有することが好ましい。そのためにはカルボキシル基含有モノマーやアミノ基含有モノマー用いることができる。カルボキシル基含有モノマーやアミノ基含有モノマーは、その合計が0.1〜10重量%で使用することが好ましく、0.3〜5重量%がより好ましい。また、アミド基含有モノマーを用いることも好ましい。
【0029】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。その中でもN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましい。
アミド基含有モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0030】
本発明においてアクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は、1〜10万が重要であり、1〜8万がより好ましい。重量平均分子量が10万を超える場合では、粘着剤層の濡れ性が低下して、PP等のオレフィンに対する粘着力が低下する。また凹凸面貼られた場合応力緩和性も低下して、浮きや、剥がれが発生する恐れがある。
【0031】
アクリル系ポリマー(B)を製造する方法としては、前述したアクリル系ポリマー(A)と同様の方法で製造できる。
【0032】
本発明において、アクリル系ポリマー(A)と、前記アクリル系ポリマー(B)が重量比で50/50〜95/5含有することが重要であり、60/40〜90/10が好ましい。アクリル系ポリマー(B)の割合が50より多いと、不足する凝集力を補うため架橋剤を多量に用いるため粘着力が低下する。そのため凹凸面貼られた場合に、浮きや、剥がれが発生してしまう。一方、5重量%より少ないと、PP等のオレフィンに対する粘着力が低下するばかりではなく、凹凸面貼られた場合の応力緩和性も低下して、浮きや、剥がれが発生してしまう。
【0033】
本発明において、アクリル系ポリマー(A)と、アクリル系ポリマー(B)は、種々の方法で得ることができる。たとえば、アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)をそれぞれ別個に製造して、両者を混合することよって得ることもできるし、アクリル系ポリマー(A)を製造した後、得られた共重合体の存在下でモノマーを重合してアクリル系ポリマー(B)を得ることもできる。
【0034】
その場合の共重合体は、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを有し、GPCの排出曲線において、排出曲線上の最小値(谷部)を境に2つのピークを示し、両者を谷部で分割し求めた高分子量成分(A)の重量平均分子量をアクリル系ポリマー(A)して、低分子量成分(B)の重量平均分子量をアクリル系ポリマー(B)する。また、谷部で分割した高分子量成分(A)/低分子量成分(B)の面積比をアクリル系ポリマー(A)と、アクリル系ポリマー(B)を重量比とする。
更に、アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)は、アクリル系ポリマー(A)を製造した後に、ガスクロマトグラフィーで残存するモノマー量を測定して、アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)が−10℃以上40℃未満になるように共重合することが重要である。
【0035】
本発明の粘着剤を構成する架橋剤(C)は、アクリル系ポリマー(A)が有するカルボキシル基又は水酸基の少なくとも一方と反応し得る官能基を有するものである。このような架橋剤(C)として、例えばイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物、アミン系化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物などがあげられる。該架橋剤を用いることにより、粘着剤層の凝集力をより一層向上させることができる。これら架橋剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0036】
ここで、イソシアネート系化合物の例としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4"−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソ
シアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω'−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0037】
また上記ポリイソシアネートを変性してトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体の3量体等の多量体として用いることできる。
またポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。ポリオールとジイソシアネートの反応物もポリイソシアネートとして使用することができる。
これらポリイソシアネート化合物としては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)等の無黄変型または難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性の点から、特に好ましい。
【0038】
エポキシ系化合物の例としては、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどを挙げられる。
【0039】
金属キレート系化合物の例としては、アルミニウム、銅、鉄、スズ、亜鉛、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの二価以上の金属のアセチルアセトンやアセトン酸エステルからなるキレート化合物が挙げられる。
【0040】
アジリジン系化合物の例としては、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)などが挙げられる。
【0041】
アミン系化合物としては、1級アミノ基を2個以上有するポリアミンであれば特に制限なく使用することができる。硬化速度が優れる点から、芳香環には直接結合していない1級アミノ基を2個以上有するポリアミン、即ち、1級アミノ基が脂肪族官能基や脂環族官能基に直接結合している脂肪族系ポリアミンが好ましい。脂肪族系ポリアミンは、1級アミノ基に芳香環が直接結合していなければ、その骨格内に芳香環を含んでも良い。
【0042】
脂肪族系ポリアミンとしては、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、分子両末端のプロピレン分岐炭素にアミノ基が結合したポリプロピレングリコール〔プロピレン骨格のジアミン、例えば、サンテクノケミカル社製「ジェファーミンD230」、「ジェファーミンD400」等、プロピレン骨格のトリアミン、例えば、「ジェファーミンT403」等。〕、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、H2N(CH2CH2O)2(CH22NH2〔サンテクノケミカル社製「ジェファーミンEDR148」(エチレングリコール骨格のジアミン)〕等のアミン窒素にメチレン基が結合したポリエーテル骨格のジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(デュポン・ジャパン社製「MPMD」)、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ポリアミドアミン(三和化学社製「X2000」)、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製「1,3BAC」)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン(三井化学社製「NBDA」)等を挙げることができる。
これらの中でも、特に硬化速度が高いことから、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン、H2N(CH2CH2O)2(CH22NH2(エチレングリコール骨格のジアミン)、プロピレン骨格のジアミン、プロピレン骨格のトリアミン、ポリアミドアミン(商品名:X2000)が挙げられる。
またこれらのポリアミンとケトンとの反応物であるケチミンもアミン系化合物に含まれ、安定性、反応性の調整および重ね塗り性の観点から、アセトフェノンまたはプロピオフェノンと1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとノルボルナン骨格のジメチレンアミン(NBDA)とから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとメタキシリレンジアミンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンと、エチレングリコール骨格またはプロピレン骨格のジアミンであるジェファーミンEDR148、ジェファーミンD230、ジェファーミンD400等またはプロピレン骨格のトリアミンであるジェファーミンT403等とから得られるもの等が挙げられる。
【0043】
カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。
このような化合物としては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応したものが挙げられる。ジイソシアネートとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジ’フェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの一種又はこれらの混合物を使用することができる。カルボジイミド化触媒としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドを利用することができる。
【0044】
オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を2個以上有する化合物が好ましく用いられ、具体的には、2’−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−プロピレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−フェニレンビス−2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)等を挙げることができる。または、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンや、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンなどのビニル系化合物と、これらと共重合しうる他のモノマーとの共重合体でもよい。
【0045】
メラミン化合物としては、トリアジン環を分子内に有する化合物であり、メラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、メチルグアナミン、ビニルグアナミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。また、これらの低縮合化物やアルキルエーテル化ホルムアルデヒド樹脂やアミノプラスト樹脂を使用しても良い。
【0046】
架橋剤(C)の使用量は、粘着物性等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、架橋剤量を調節することによって、粘着シートにおける粘着剤層の架橋密度を最適化することが必要である。架橋剤(C)の使用量としては、アクリル系ポリマー(A)とアクリルポリマー(B)の合計100重量部に対して、0.0001〜10重量部が好ましく、より好ましくは、0.001〜1重量部である。架橋剤(C)の使用量が0.0001重量部未満では、凝集力が低く剥離時に糊残りの恐れがある。一方、架橋剤(C)の使用量が10重量部を超えると、粘着剤層の弾性が高くなり、タックの低下や、粘着力が低下して、車輌の凹凸面貼られた場合に、浮きや、剥がれの恐れがある。が発生してしまう。なお、粘着剤を構成する架橋剤(C)を添加する添加方法は、特に限定されるものではない。
【0047】
また、本発明の粘着剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、公知の粘着付与樹脂、シランカップリング剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、可塑剤、軟化材、染料、顔料、無機フィラー等の各種添加成分を含有させることができる。
【0048】
粘着付与剤としては、例えばテルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジンおよびそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)など既存全てのものが使用可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル類、リン酸エステル類など公知のものが使用できる。
【0049】
次に、本発明の装飾シートについて説明する。
本発明の装飾シートは、シート状基材の少なくとも一方の面に、上記本発明の粘着剤から形成されてなる粘着剤層が形成されてなるものである。
従って、本発明の粘着シートには以下のような態様がある。
シート状基材/粘着剤層/剥離シートが順次積層されてなる、いわゆる片面粘着シート。
剥離シート/粘着剤層/シート状基材/粘着剤層/剥離シートが順次積層されてなる、いわゆる両面粘着シート。
【0050】
本発明の装飾シートを構成するシート状基材としては、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂、セロハンなどのプラスチックからなるプラスチックフィルム;クラフト紙、和紙等の紙;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等を発泡させてなる発泡体シート;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体などが挙げられる。また、これらはその片面又は両面にコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
さらに、シート状基材としては、前述した各種シート中に顔料や染料等の着色剤を含む着色シート基材や、スクリーン方式やインクジェット方式等の印刷により、基材表面に着色層を形成した着色シート基材を使用することが好ましい。さらにシート状基材は装飾用途としての機能は発揮できればよく、単層であっても多層構成であっても良い。
また、シート基材に印刷により、着色層を形成する場合は、後述する粘着加工前に、シート基材に印刷してもよいし、粘着加工後に得られる粘着シートに印刷してもよい。
【0051】
剥離シートは、セパレーターとも言われ、このような剥離シートとしては、例えば、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙やポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体等の樹脂を塗布した紙等や、ポリエステルやポリプロピレン等の合成樹脂フィルムに、剥離剤であるフッソ樹脂やシリコーン樹脂等を塗布してなるものが挙げられる。特に限定されるものではない。
また、剥離シートの表面に凹凸加工されているものを使用することもできる。
【0052】
本発明の装飾シートは、種々の方法で得ることができる。例えば、シート状基材の一方の面に粘着剤を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面に剥離シートを重ねたり、あるいは剥離シートの一方の面に粘着剤を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面にシート状基材を重ねたりすることによって得ることができる。
【0053】
粘着剤を種々のシート状基材に塗布する際に用いる塗布装置は、通常使用されている塗布装置であり特に限定されるものではないが、例えば、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーターなどが挙げられる。
また、乾燥条件は、乾燥時に装飾シート用粘着剤の溶剤が乾燥し除去され、かつ、架橋反応する条件であることが好ましい。例えば、60〜120℃、1〜5分程度が好ましいが、これに限定されるものではない。乾燥後、シート状基材で粘着剤層を挟んだ状態で熟成し、さらに架橋反応を進行させることもできる。
本発明の粘着シートにおいて、乾燥後の粘着剤層の厚みは、1〜200μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0054】
本発明の粘着シートを貼付する被着体素材としては、金属、合成樹脂、石材、木材、ガラス、繊維製品、紙、漆製品、皮などいずれのものであってもよいし、被着体の表面は、平坦であっても、凹凸を有するものであってもよい。例えば、広告塔、看板、車輌の他、船舶、建築物の壁面や天井や窓等が挙げられる。具体的にはトラック荷台部分に使用される凹凸加工されたコルゲート板や、未塗装PPバンパーが使用される商用車や乗用車、さらに鉄道車両等の車輌にも使用できる。なお、本願において車輌とは、自転車、いわゆるバス・トラック等を含む自動車、ブルドーザー等の建設機械、鉄道車輌および航空機等の車輪や無限軌道を有する広義の移動体を意味する。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の実施例を示して更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、部とは重量部、%とは重量%をそれぞれ意味するものとする。
【0056】
(製造例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「
反応容器」と記載する。)にn−ブチルアクリレート70部、メチルアクリレート20部、2−エチルへキシルアクリレート4部、アクリル酸6部、酢酸エチル72部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.13部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を還流温度で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、不揮発分濃度約30%、重量平均分子量Mw91万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0057】
(製造例2〜5)
酢酸エチル量を調整した他は製造例1と同様の方法により、重量平均分子量Mw105万、148万、186万、58万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0058】
(製造例6)
モノマー組成をn−ブチルアクリレート72部、エチルアクリレート20部、アクリル酸8部に変更した以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量Mw92万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0059】
(製造例7)
モノマー組成をn−ブチルアクリレート75部、2−エチルへキシルアクリレート5.9部、エチルアクリレート20部、アクリル酸8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、iso-ブチルメタクリレート15部に変更した以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量Mw94万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0060】
(製造例8)
反応容器にトルエン100部を仕込み、滴下装置にメタアクリル酸n−ヘキシル60部、メタアクリル酸エチル39部、アクリル酸1部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を仕込み、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、1時間で滴下した後に、この反応溶液を還流温度で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、不揮発分濃度約30%、重量平均分子量Mw3万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0061】
(製造例9〜11)
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)量と反応温度を調整した他は製造例8と同様の方法により、重量平均分子量Mw5万、9万、15万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0062】
(製造例12)
モノマー組成をメタアクリル酸n−ヘキシル99部、アクリル酸1部に変更した以外は、製造例8と同様にして、重量平均分子量Mw3万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0063】
(製造例13)
モノマー組成をメタアクリル酸エチル64部、メタアクリル酸n−ヘキシル35部、アクリル酸1部に変更した以外は、製造例8と同様にして、重量平均分子量Mw3万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0064】
(製造例14)
モノマー組成をメタアクリル酸メチル64部、メタアクリル酸n−ヘキシル35部、アクリル酸1部に変更した以外は、製造例8と同様にして、重量平均分子量Mw3万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0065】
(製造例15)
モノマー組成をiso-ブチルメタクリレート40部、メタアクリル酸n−ヘキシル60部に変更した以外は、製造例8と同様にして、重量平均分子量Mw3万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0066】
(製造例16)
モノマー組成をメタアクリル酸n−ブチル95部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート5部に変更した以外は、製造例8と同様にして、重量平均分子量Mw5万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0067】
(製造例17)
反応容器にn−ブチルアクリレート59.2部、メチルアクリレート16部、アクリル酸4.8部、酢酸エチル94部、アセトン16部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、0.012部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、この反応溶液を還流温度で12時間反応させ、重量平均分子量が102万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。なお、上記の重量平均分子量の値は、後述するGPC装置の検出下限までを含む値であり、未反応の単量体を含む値である。得られた混合液をガスクロマトグラフィーを用いて通常の分析方法で分析した結果、単量体としては、n−ブチルアクリレートが8%残存していた。
【0068】
次いで、メタアクリル酸エチル19.0部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、1.0部、酢酸エチル49部、メチルエチルケトン13部、AIBN 0.07部を添加し、さらに6時間反応させ、反応終了後、酢酸エチルで希釈し、不揮発分濃度30%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0069】
アクリルポリマー溶液は、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを有し、GPCの排出曲線において、排出曲線上の最小値(谷部)を境に2つのピークを示し、両者を谷部で分割し求めた、高分子量成分(A)の重量平均分子量は112万であり、低分子量成分(B)の重量平均分子量は4万であり、谷部で分割した(A)/(B)の面積比は、81/19であった。なお表1において製造例17の左側の欄は、高分子量成分(A)のモノマー組成を示し、右側の欄は低分子量成分(B)のためのモノマーの組成を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1中の共重合体(a)を構成する共重合性モノマーの種類を下記の略号で示した。
BA:ブチルアクリレート(ホモポリマーのTg=−54℃)
iBMA:iso-ブチルメタクリレート(ホモポリマーのTg=67℃)
nBMA:ブチルメタクリレート(ホモポリマーのTg=20℃)
EA:エチルアクリレート(ホモポリマーのTg=−22℃)
MA:メチルアクリレート(ホモポリマーのTg=8℃)
MMA:メチルメタクリレート(ホモポリマーのTg=105℃)
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(ホモポリマーのTg=−85℃)
VAC:酢酸ビニル(ホモポリマーのTg=29℃)
AA:アクリル酸(ホモポリマーのTg=106℃)
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル(ホモポリマーのTg=−15℃)
ライトエステルDM(共栄社化学(株):N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(ホモポリマーのTg=18℃)
【0072】
〔重量平均分子量〕
GPCの測定でもとめたポリスチレン換算の重量平均分子量であり、測定条件は以下のとおりである。
装置:東ソー社製 HCL8820GPC
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHXL3本を連結して使用。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min
温度:40℃
試料濃度:0.2wt%
試料注入量:100μl
【0073】
〔ガラス転移温度〕
共重合体のTgは、上記ホモポリマーTgを基に下記「FOX」の式により計算値で求めた。
1/Tg =〔(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wn/Tgn)〕
/100 (ここで、温度は絶対温度である。)
Wn:単量体nの重量%
Tgn:単量体nからなる単独重合体のガラス転移温度により求めることができる。
【0074】
(実施例1)
製造例1で得られた共重合体溶液75重量部と製造例9で得られた共重合体溶液25重量部、エポキシ架橋剤としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン0.021部を添加して均一に撹拌し、粘着剤を得た。
得られた粘着剤を市販の剥離性シート上に乾燥塗膜厚さが30μmになるように塗布し、100℃−2分間で乾燥させ、この粘着剤層面と塩化ビニル系樹脂シート(厚み50μm)を貼り合わせて粘着シートを作製した。
【0075】
(実施例2)
製造例2で得られた共重合体溶液65重量部と製造例9で得られた共重合体溶液35重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0076】
(実施例3)
製造例2で得られた共重合体溶液75重量部と製造例9で得られた共重合体溶液25重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
(実施例4)
製造例2で得られた共重合体溶液85重量部と製造例9で得られた共重合体溶液15重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0077】
(実施例5)
製造例1で得られた共重合体溶液に代えて、製造例3で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0078】
(実施例6)
製造例1で得られた共重合体溶液に代えて、製造例4で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0079】
(実施例7)
製造例1で得られた共重合体溶液に代えて、製造例6で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0080】
(実施例8)
製造例7で得られた共重合体溶液75重量部と製造例9で得られた共重合体溶液25重量部、イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートL」、不揮発分濃度75%)0.75部を添加して均一に撹拌し、粘着剤溶液を得た。
得られた粘着剤溶液を、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0081】
(実施例9)
製造例9で得られた共重合体溶液に代えて、製造例8で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
【0082】
(実施例10)
製造例9で得られた共重合体溶液に代えて、製造例10で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
【0083】
(実施例11)
製造例9で得られた共重合体溶液に代えて、製造例12で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
【0084】
(実施例12)
製造例9で得られた共重合体溶液に代えて、製造例13で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
【0085】
(実施例13)
製造例9で得られた共重合体溶液に代えて、製造例15で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
【0086】
(実施例14)
製造例9で得られた共重合体溶液に代えて、製造例16で得られた共重合体溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
(実施例15)
製造例17で得られた共重合体溶液100重量部、エポキシ架橋剤としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン0.021部を添加して均一に撹拌し、粘着剤溶液を得た。
得られた粘着剤溶液を、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0087】
(比較例1)
製造例2で得られた共重合体溶液30重量部と製造例9で得られた共重合体溶液70重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0088】
(比較例2)
製造例2で得られた共重合体溶液100重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
(比較例3)
製造例5で得られた共重合体溶液75重量部と製造例9で得られた共重合体溶液25重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
(比較例4)
製造例2で得られた共重合体溶液75重量部と製造例11で得られた共重合体溶液25重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
(比較例5)
製造例2で得られた共重合体溶液75重量部と製造例14で得られた共重合体溶液25重量部を用いた、以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0089】
〔粘着シートの物性測定〕
実施例、比較例で得られた粘着シートについて、23℃−50%RHの雰囲気下で7日間経過させ、粘着剤層を熟成した後、以下に示す試験を行った。結果を表1に示す。
【0090】
〔SUS粘着力〕
JIS Z 0237に準拠しておこなった。各粘着シートから幅25mmの試験片を切り出し、セパレーターを剥がし、23℃−50%RH雰囲気下でステンレス板に貼付し、2Kgのロールにて1往復させて圧着して測定試料を得た。
それぞれ同環境下に20分(初期)、24時間以上(永久)おいた後、それぞれ同環境下で、引張試験機によって300mm/分の引張速度で180°の角度で剥離した際の剥離強度(N/inch)を測定した。
【0091】
〔PP粘着力〕
JIS Z 0237に準拠しておこなった。各粘着シートから幅25mmの試験片を切り出し、セパレーターを剥がし、10℃−50%RH雰囲気下と23℃−50%RH雰囲気下でポリプロピレン板に貼付し、2Kgのロールにて1往復させて圧着して測定試料を得た。
それぞれ同環境下に24時間以上(永久)おいた後、それぞれ同環境下で、引張試験機によって300mm/分の引張速度で180°の角度で剥離した際の剥離強度(N/inch)を測定した。
【0092】
〔PP曲面保持力〕
各粘着シートから幅25mmの試験片を切り出し、セパレーターを剥がし、直径100mmポリプロピレンの棒に貼付後に圧着して測定試料を得た。そして60℃−80%RHの環境下で、1週間放置した後、目視で評価した。
評価基準を以下に示す。
◎・・・粘着シートの浮き、剥がれなし。
○・・・僅かな浮きがあるが、実用上問題なし。
×・・・浮き、剥がれあり。
【0093】
〔定荷重剥離試験〕
各粘着シートをそれぞれ幅25mm、長さ200mmの短冊状にカットし、セパレーターを剥がして幅25mm×長さ180mm部分を45mm間隔で10mm高さのカマボコ状の凸部と25mmの平坦部が繰り返し連続する凸部付きメラミン塗装板に貼付後に、圧着して測定試料を得た。
得られた測定試料を23℃−50%RHの雰囲気下で24時間放置し、貼付け面が下側となるようにして、凸部付きメラミン塗装板を水平に保ち、貼付けられていない部分の粘着シートの端部に100gの錘を吊り下げ、24時間放置した後、目視で評価した。
評価基準を以下に示す。
◎・・・粘着シートの剥離なし。
○・・・24時間後、錘が落下していない。
×・・・24時間以内で、錘が落下した。
【0094】
〔再剥離性〕
各粘着シートをそれぞれ幅25mm、長さ100mmの短冊状にカットし、セパレーターを剥がして幅25mm×長さ80mm部分を平坦なメラミン塗装板に貼り合わせ、2Kgのロールにて1往復させて圧着して測定試料を得た。
得られた測定試料を60℃−80%RHの雰囲気下で1000時間放置した後、粘着シートを剥離して、メラミン塗装板表面を目視で評価した。
評価基準を以下に示す。
◎・・・糊残りが無く、再剥離性良好
○・・・点状の糊残りがあったが、再剥離性良好
×・・・糊残りがあり、再剥離性不良
【0095】
以上の評価結果を表2に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表2の結果から、本発明の装飾シート用粘着剤を使用した装飾シートは、SUS粘着力、PP粘着性、定荷重剥離、再剥離性が良好である。
比較例1は、実施例2〜4と同様なアクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)を用いたにも関わらず、アクリルポリマー(B)の重量比率が大きすぎた場合には、SUS粘着力が低下するばかりではなく、PP粘着性、定荷重性、再剥離性も低下する。また、アクリルポリマー(B)を含有しない比較例2は、PP粘着性が低下する。同様にアクリルポリマー(B)の重量平均分子量が大きすぎたり、ガラス転移温度が高すぎた場合もPP粘着性が低下する。比較例3は、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が小さすぎる場合は、定荷重剥離、再剥離性も低下してしまう。
本発明の装飾シート用粘着剤は、装飾シートとして用いたときに、オレフィン系被着体や凹凸面への追従性が良好で浮きや剥がれが生じず、さらに熱湿経時後にも糊残りが発生せず剥離できる優れた特徴を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度−70〜−10℃かつ重量平均分子量80万〜200万の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(A)と、ガラス転移温度が−10℃以上40℃未満で、かつ重量平均分子量1〜10万以下の溶液重合してなるアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含む粘着剤であって、
前記アクリル系ポリマー(B)が、少なくとも炭素数2〜6のアルキル鎖を有するメタアクリル酸アルキルエステルを反応させてなる共重合体であり、
さらに前記アクリル系ポリマー(A)と、前記アクリル系ポリマー(B)とを重量比50/50〜95/5で用いることを特徴とする装飾シート用粘着剤。
【請求項2】
アクリル系ポリマー(B)が、さらにカルボキシル基及び/又はアミノ基を含有することを特徴とする請求項1記載の装飾シート用粘着剤。
【請求項3】
シート状基材に請求項1または2記載の装飾シート用粘着剤からなる粘着剤層が形成されてなる装飾シート。
【請求項4】
請求項3記載の装飾シートを用いてなる車輌。

【公開番号】特開2011−231218(P2011−231218A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102809(P2010−102809)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】