説明

装飾用シート

【課題】
非塩化ビニル系樹脂系シートでありながら塩化ビニル樹脂系シートのような柔軟な風合いを有し、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性に優れ、後加工では折り曲げ時や延伸時に白化を生じることが充分に抑制され、3次元曲面への追従性に優れ、深絞り加工にも好適に適用することができる装飾用シートを提供する。
【解決手段】
ポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材フィルム(1)及びフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂とを含有する樹脂組成物からなるフィルム(2)を積層した装飾用シートであって、上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)とを含有するものであり、上記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、上記ポリプロピレン系樹脂(A)と上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との合計量100質量%に対して、25〜50質量%である装飾用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材シートである印刷インキ層を設けた不透明塩化ビニル樹脂フィルムと、保護シートである透明塩化ビニル樹脂フィルムとを熱ラミネートによって貼り合わせて積層すること等の方法によって得られる塩化ビニル系樹脂(PVC)製シートは、塩化ビニル系樹脂が着色性、エンボス加工性、印刷適性等を有し、種々の意匠性を付与することができるため、装飾用シートとして広く使用されている。
【0003】
このような塩化ビニル系樹脂は、ダイオキシンの問題、燃焼時に塩化水素ガスが発生するという問題等を有するものであり、環境保護の観点から好ましいものでないため、使用が避けられる傾向にあり、非塩化ビニル系樹脂材料への代替が求められるようになってきている。
【0004】
このような塩化ビニル系樹脂の代替材料としては、例えば、経済性や安全性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO等)等のポリオレフィン系樹脂が注目されている。
【0005】
しかし、このようなポリオレフィン系樹脂を代替材料として使用した場合、フィルムの柔軟性、透明性、耐候性等の性能の点において、塩化ビニル系樹脂に比べて劣っているという問題がある。
【0006】
また、ポリオレフィン系樹脂を使用して得られたポリオレフィンフィルムでは、3次元曲面への追従性の点において、塩化ビニル系樹脂を使用した場合に比べて、延伸時に白化が生じること、延伸後の回復性が悪いこと、ネッキングが生じ易いこと等の問題が生じてしまう。
【0007】
更に、従来から使用されているポリオレフィンフィルムをアルミ板等の金属板に貼りつけた後に、深絞り加工を行う場合には、屈曲部に白化が生じたり、ネッキングによって下地の外観が透過して見えたり、フィルムが破れたりする場合がある。
【0008】
特許文献1には、フッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂からなる表面保護層、フッ化ビニリデン樹脂を含んでなる接着層、ABS樹脂若しくはポリプロピレン樹脂からなる基材層とからなる自動車加飾用積層シートが開示されている。ここで開示されている積層シートは、耐侯性、耐薬品性等の改良を目的として作成されたものであって、充分満足できる柔軟性を有するものではない。また、後加工方法も平張りに近いものであり、3次元曲面張り、深絞り加工等の特殊な用途に適用することが困難なものである。
【0009】
基材フィルムとしてアクリルフィルムを使用する場合には、非常に硬いこと、フィルム状に加工すると割れやすいこと、伸びが少ないこと、柔軟性に乏しいこと、耐薬品性・耐スクラッチ性がやや悪いこと等、軟質塩化ビニル樹脂のような風合い、強度、加工性等の性能を有するものは得られていない。
【0010】
特許文献2には、アクリル系樹脂及び可塑剤を含有する基材層に、フッ化ビニリデン樹脂及びアクリル系樹脂を含有する表面保護層を積層した装飾用シートが開示されている。この装飾用シートは、柔軟な風合い、耐スクラッチ性、耐候性、耐薬品性を有し、折り曲げ時に白化せず、3次元曲面への追従性に優れたものとして提案されているものである。しかし、アクリル樹脂を使用する場合には、シートが裂け易いという問題が残されているため、特に、深絞り加工時に割れやすいという問題が生じる。また、素材のアクリル樹脂の価格が高いため、塩化ビニル系樹脂を使用する場合に比べて、高コストになってしまうという問題もある。
【0011】
【特許文献1】特開2001−71428号公報
【特許文献2】特開2003−236998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記現状に鑑み、非塩化ビニル系樹脂系シートでありながら塩化ビニル樹脂系シートのような柔軟な風合いを有し、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性に優れ、後加工では折り曲げ時や延伸時に白化を生じることが充分に抑制され、3次元曲面への追従性に優れ、深絞り加工にも好適に適用することができる装飾用シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材フィルム(1)及びフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂とを含有する樹脂組成物からなるフィルム(2)を積層した装飾用シートであって、上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)とを含有するものであり、上記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、上記ポリプロピレン系樹脂(A)と上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との合計量100質量%に対して、25〜50質量%である
ことを特徴とする装飾用シートである。
【0014】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は、エチレン−プロピレン共重合体成分及び/又はポリブチレン成分と、ポリプロピレン成分とを有する共重合体であることが好ましい。
【0015】
装飾用シートを20%延伸したまま5分間保持した時点のモジュラスと、装飾用シートを20%延伸した時点から延伸したまま5分間保持した時点までの間のモジュラスの最大値との比が、0.45以下であることが好ましい。
【0016】
基材フィルム(1)とフィルム(2)との間に、着色層、印刷層、接着剤層又は粘着剤層を有するものであることが好ましい。
以下、本発明の詳細に説明する。
【0017】
本発明の装飾用シートは、従来から広く使用されている塩化ビニル系樹脂製のシートの代替材料として好適に用いることができる装飾用の積層樹脂シートであり、ステッカーやマーキング等の被着体の表面を装飾するためフィルム、シート等、種々の用途に好適に使用することができるものである。
【0018】
上記装飾用シートは、特定量のポリプロピレン系樹脂(A)〔以下、単に(A)ともいう〕及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)〔以下、単に(B)ともいう〕とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材フィルム(1)、及び、フッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂とを含有する樹脂組成物からなるフィルム(2)を積層したものである。
【0019】
本発明において、上記装飾用シートにおける基材フィルム(1)は、特定量のポリプロピレン系樹脂(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなるものであるため、後加工では折り曲げや延伸時に白化を生じることが充分に抑制され、3次元曲面への追従性に優れ、深絞り加工にも好適に適用することができる。
【0020】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物において、ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量を多くしすぎると、延伸(3次曲面加工や深絞り加工)時にネッキングや白化現象が顕著となってしまうが、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)を含有させることによりこのような現象を低減させることができる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量を多くしすぎると、本発明の装飾用シートに要求される応力緩和特性が悪化し、シートがゴムっぽくなる等の問題が生じてしまう。このため、本発明においては、要求される応力緩和特性を確保するために、上記ポリオレフィン系樹脂組成物中に含まれる(A)及び(B)の量を調整する必要がある。
【0021】
上記装飾用シートは、耐擦傷性、耐薬品性に優れ、また、耐候性、耐衝撃性にも優れるものである。また、上記基材フィルム(1)は、着色性、印刷性に優れているものであるため、上記装飾用シートに、種々の意匠性を付与することができる。また、上記基材フィルム(1)は、接着性に優れているものであるため、ドライラミネート等の簡便な方法によって、フィルム(2)と接着し、装飾用シートを得ることができる。
【0022】
上記装飾用シートは、ポリプロピレン系樹脂(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材フィルム(1)を有するものである。
【0023】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物中にポリプロピレン系樹脂(A)を含有させることにより、フィルムに適度なコシを与え、貼り加工性が向上する。また、着色時の発色が向上する。
【0024】
上記ポリプロピレン系樹脂(A)としては特に限定されず、例えば、単独重合ポリプロピレン(h−PP)、ランダム共重合ポリプロピレン(r−PP)、ブロック共重合ポリプロピレン(b−PP)等を挙げることができる。なかでも単独重合ポリプロピレンは、融点が高すぎてカレンダー加工では溶融不足となるおそれがあり、ブロック共重合ポリプロピレンを用いたフィルムは、折り曲げたときに白化するおそれがあるため、ランダム共重合ポリプロピレンが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0025】
上記基材フィルム(1)がカレンダー成型により得られるものである場合、上記ポリプロピレン系樹脂(A)は、また、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kgf)が下限0.3g/10分、上限15g/10分であるものが好ましい。0.3g/10分未満であると、フィルムの表面平滑性を損なうおそれがある。15g/10分を超えると、粘度が低くフィルムへの成型が困難になるおそれがある。上記下限は、0.5g/10分であることがより好ましく、上記上限は、13g/10分であることがより好ましい。
【0026】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物において、上記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、上記ポリプロピレン系樹脂(A)と上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との合計量100質量%に対して、下限25質量%、上限50質量%である(樹脂固形分)。25質量%未満であると、フィルムのコシが不足したり、応力緩和特性を損なうおそれがある。50質量%を超えると、延伸(3次曲面加工や深絞り加工)時にネッキングや白化現象が発生するおそれがある。上記下限は、22質量%であることが好ましい。上記上限は、48質量%であることが好ましく、45質量%であることがより好ましい。
【0027】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物中にオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)を含有させることにより、従来から使用されている塩化ビニル樹脂製粘着テープと同様に、優れた柔軟性と伸縮性を得ることができる。
【0028】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)(以下、TPOともいう)としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができるが、エチレン−プロピレン共重合体成分及び/又はポリブチレン成分と、ポリプロピレン成分とを有する共重合体であることが好ましい。このような共重合体は、ハードセグメントとなる結晶性のポリプロピレン樹脂とソフトセグメントとなるエチレン−プロピレンゴム成分やブチルゴム成分とからなるものであり、ハードセグメントとソフトセグメントとの割合を調節することによって、種々の物性のものを得ることができる。上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0029】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)の製造方法としては、上記ハードセグメントとソフトセグメントに必要に応じて架橋剤や可塑化オイル等を混合し、押出機を用いて溶融混練し、架橋させるような従来から用いられている方法の他、近年、上記ハードセグメントとソフトセグメントとを重合反応によって直接に製造する方法も知られており、特に、後者の方法によるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、反応器中で製造するオレフィン系熱可塑性エラストマーという趣旨から、リアクターTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー )と呼ばれている。
【0030】
上記基材フィルム(1)がカレンダー成型により得られるものである場合、上記リアクターTPOは、JIS K 7210で規定されるメルトフローレート(リアクターTPOのメルトフローレートの測定は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfの条件下で行うものとする。以下、同じ。)が下限0.3g/10分、上限3.0g/10分の範囲内にあるものが好ましい。0.3g/10分未満であると、得られるフィルムの表面の平滑性が劣るおそれがある。3.0g/10分を超えると、粘度が低すぎて、カレンダー加工する際に、ロールへのべたつきを生じて、フィルム加工が困難となるおそれがある。上記下限は、0.4g/10分であることがより好ましく、上記上限は、2.7g/10分であることがより好ましい。
【0031】
上記リアクターTPOとしては、市販品を好適に用いることができる。このようなリアクターTPOの市販品の具体例として、例えば、トクヤマ社製のP.E.R R210E、P.E.R T310J、P.E.R R110E(いずれもメルトフローレートは1.5g/10分)や、Montell−JPO社製のキャタロイ KS−353P(メルトフローレート0.45g/10分)等を挙げることができる。
【0032】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物中にポリエチレン系樹脂(C)を含有させることもできる。上記ポリエチレン系樹脂(C)を含有させることにより、フィルムの表面平滑性を向上させることができる。
【0033】
上記ポリエチレン系樹脂(C)としては特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等を挙げることができる。上記ポリエチレン系樹脂(C)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0034】
上記基材フィルム(1)がカレンダー成型により得られるものである場合、上記ポリエチレン系樹脂(C)は、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kgf)が0.03〜3g/10分であるものが好ましい。0.03g/10分未満であると、フィルムの表面平滑性を損なうおそれがある。3g/10分を超えると、粘度が低くフィルムへの成型が困難になるおそれがある。上記下限は、0.05g/10分であることがより好ましく、上記上限は、2.8g/10分であることがより好ましい。
【0035】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物において、上記ポリエチレン系樹脂(C)の含有量は、上記ポリプロピレン系樹脂(A)と上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との合計量100質量部に対して、下限5質量部、上限40質量部であることが好ましい(樹脂固形分)。5質量部未満であると、フィルムの表面平滑性が充分ではなくなり、外観を損ねる可能性が高くなる。40質量部を超えると、延伸(3次曲面加工や深絞り加工)時にネッキングや白化現象が発生するおそれがある。上記下限は、10質量部であることがより好ましく、上記上限は、30質量部であることがより好ましい。
【0036】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物においては、滑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、改質剤、難燃剤、帯電防止剤、補強剤、粘着付与剤、充填剤、防カビ剤等、一般に樹脂に添加される公知の添加剤を適量添加してもよい。
【0037】
上記基材フィルム(1)は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、押し出し成型、カレンダー成型等により製造することができる。
上記基材フィルム(1)がカレンダー成型により得られるものである場合、上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、メルトフローレイト(230℃、37.3N)が15g/10分以下であることが好ましい。これにより、150〜200℃の範囲内における溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物の粘度を、混練効率が良くかつバンクの回転を良好なものにすることができる。従って、ポリ塩化ビニル樹脂用のカレンダー加工設備を用いて、上記ポリオレフィン系樹脂組成物をカレンダー加工することにより、均質な薄いフィルムを得ることができる。
【0038】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、メルトフローレイト(230℃、37.3N)が1〜15g/10分の範囲内であることがより好ましい。メルトフローレイトを1g/10分以上とすることにより、ポリ塩化ビニル樹脂用のカレンダー加工設備を用いてカレンダー加工をする際に、ポリオレフィン系樹脂組成物の粘度が高すぎることによるカレンダー加工性の低下を防止することができる。上記カレンダー加工に用いられるカレンダー形式は、特に限定されないが、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等を挙げることができる。
【0039】
上記基材フィルム(1)は、厚さが下限0.05mm、上限0.15mmであることが好ましい。0.05mm未満であると、フィルムの成型時に穴があき易くなるおそれがある。0.15mmを超えると、フィルムの成型時にフィルム表面にカスレ等の欠点がでやすくなるおそれがある。上記下限は、0.055mmであることがより好ましく、上記上限は、0.13mmであることがより好ましい。
【0040】
上記装飾用シートは、フッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂とを含有する樹脂組成物からなるフィルム(2)を有するものである。ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム(1)は、耐擦傷性、耐薬品性に劣るものであるが、上記基材フィルム(1)と上記フィルム(2)とを積層することによって、これらの特性を向上させることができ、更に、耐候性についても大きく向上させることができる。
【0041】
上記フッ化ビニリデン樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体又はフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体との共重合体である。上記フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、フッ化ビニル等を挙げることができる。
【0042】
上記アクリル樹脂としては特に限定されず、従来の公知のアクリル樹脂を使用することができるが、なかでも、メタクリル酸メチルの単独重合体、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。
【0043】
上記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、例えば、メタクリル酸ブチル等の炭素数2〜4のメタクリル酸エステル、アクリル酸ブチル等の炭素数1〜8のアクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、他のエチレン性不飽和モノマー等を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、これらの単量体の単独重合体や共重合体の混合物であってもよい。また、アクリル系ゴム等の混合物であってもよい。
【0044】
上記フィルム(2)において、上記フッ化ビニリデン樹脂の含有量は、上記フッ化ビニリデン樹脂及び上記アクリル樹脂の合計量100質量%中に、50質量%以上であることが好ましい。50質量%未満であると、耐溶剤性、耐薬品性が低下するおそれがある。55〜90質量%であることがより好ましい。
【0045】
上記フィルム(2)は、上記フッ化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、各種界面活性剤等の帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤等の安定剤、無機顔料や有機顔料等の各種顔料等の添加剤を含むものであってもよい。
【0046】
上記フィルム(2)は、押出等の従来公知の方法により製造することができる。上記フィルム(2)としては、市販品を用いることもでき、例えば、DX−10S(商品名、電気化学工業社製)等を挙げることができる。
【0047】
上記フィルム(2)は、厚さが下限0.01mm、上限0.05mmであることが好ましい。0.01mm未満であると、耐久性が不足するおそれがある。0.05mmを超えると、深絞り加工時の白化が顕著となるおそれがある。上記下限は、0.015mmであることがより好ましく、上記上限は、0.04mmであることがより好ましい。
【0048】
上記装飾用シートは、上記装飾用シートを20%延伸したまま5分間保持した時点のモジュラスと、装飾用シートを20%延伸した時点から延伸したまま5分間保持した時点までの間のモジュラスの最大値との比(20%延伸したまま5分間保持した時点のモジュラス/20%延伸した時点から延伸したまま5分間保持した時点までの間のモジュラスの最大値)が、0.45以下であることが好ましい。上記装飾用シートがこのような特性を有するものである場合には、後加工では折り曲げ時や延伸時に白化を生じることをより抑制することができ、3次元曲面への追従性に優れ、深絞り加工にも好適に適用することができる。
【0049】
0.45を超えると、3次曲面加工、特に深絞り加工後に、装飾用シートが元の形に戻ろうとする力が強く、フィルム浮き等の不具合が発生するおそれがある。上記比は、0.45以下であれば小さい値ほど好ましく、下限は特に限定されない。
【0050】
なお、本発明において、上記装飾用シートを20%延伸したモジュラスは、JIS C 2318に準ずる試験方法(幅25mm、長さ200mmの試験片、試験温度23±2℃、引張速度200mm/分)において測定される値である。
【0051】
上記装飾用シートは、上記基材フィルム(1)と上記フィルム(2)との間に、着色層、印刷層、接着剤層又は粘着剤層を有するものであってもよい。これにより、装飾用シートに、種々の意匠等を付与することができる。
【0052】
上記着色層、上記印刷層は、上記基材フィルム(1)及び/又は上記フィルム(2)上に、従来公知の方法によって形成することができ、意匠性を付与することができる。例えば、溶剤型、水系、UV硬化型等のインキ種を用い、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、レーザー(電子写真)方式スクリーン印刷等の印刷方法により形成することができる。また、例えば、上記基材フィルム(1)及び/又は上記フィルム(2)上に、木目等の任意の絵柄を印刷したり、アルミニウムペーストを混入して調製したインキを用いることにより金属調の印刷絵柄を形成することができる。更に、アクリル樹脂に代表される透明材料に、染料や顔料を添加した透明着色フィルムを着色層とすることもできる。
【0053】
上記接着剤層、上記粘着剤層は、接着剤、粘着剤を用いることによって形成することができる。
上記接着剤、上記粘着剤としては、貼りあわせる素材と密着させることができるものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系、ゴム系、酢酸ビニル系、合成ゴム系、天然ゴム系、EVA系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系等のものを挙げることができる。
【0054】
上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体からなるものであり、上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、又は、これらの共重合体を挙げることができる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、炭素数4〜12の直鎖又は分岐鎖状アルキルが好ましい。
【0055】
上記ゴム系粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレン・ポリブテン系、スチレン・ジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系、ビニルピリジン系、ポリイソブチレン系、ブチル系、イソプレン・イソブチレン系等からなるゴム系粘着剤を挙げることができる。なかでも、ポリイソブチレン、スチレン・ジエン・スチレンブロック共重合体〔例えば、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)等〕等が好ましい。
【0056】
上記装飾用シートは、上述の方法により得られる基材フィルム(1)とフィルム(2)とを従来公知の積層法を用いて作成することができる。なかでも、接着性の観点から、接着剤を用い、上記基材フィルム(1)と、上記フィルム(2)とをドライラミネートにより貼り付ける方法により作成することが好ましい。
【0057】
以下、本発明の装飾用シートを図を用いて説明する。
図1は、基材フィルム(1)1と、フィルム(2)2とが積層されてなる装飾用シートの概略図である。また、図2は、基材フィルム(1)1と、接着剤層又は粘着剤層3と、フィルム(2)2とがこの順に積層されてなる装飾用シートの概略図である。本発明の装飾用シートは、図1、図2の基材フィルム(1)が特定量のポリプロピレン系樹脂(A)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなるものである。このため、柔軟な風合いを有し、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性に優れたものであるだけでなく、後加工では折り曲げ時や延伸時に白化を生じることが充分に抑制され、3次元曲面への追従性に優れ、深絞り加工にも好適に適用することができる。
【0058】
本発明の装飾用シートは、特定量のポリプロピレン系樹脂(A)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材フィルム(1)、並びに、フッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂とを含有する樹脂組成物からなるフィルム(2)を積層したものである。このため、上記装飾用シートは、柔軟な風合いを有し、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性に優れたものである。また、上記装飾用シートは、後加工では折り曲げ時や延伸時に白化を生じることが充分に抑制され、3次元曲面への追従性に優れ、深絞り加工にも好適に適用することができるものである。従って、塩化ビニル系樹脂製の装飾用シートの代替材料として好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の装飾用シートは、上述した構成よりなるので、非塩化ビニル系樹脂系シートでありながら塩化ビニル樹脂系シートのような柔軟な風合いを有し、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性に優れ、後加工では折り曲げ時や延伸時に白化を生じることが充分に抑制され、3次元曲面への追従性に優れ、深絞り加工にも好適に適用することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0061】
実施例1
ポリプロピレン樹脂(商品名:WT2002、日本ポリプロピレン社製)40質量部にオレフィン系熱可塑性エラストマー(商品名:R−110E、出光社製)40質量部、低密度ポリエチレン樹脂(商品名:KF−280、日本ポリプロピレン社製)20質量部と、酸化防止剤(商品名:イルガノックス1076、チバスペシャリティケミカル社製)0.2質量部、滑剤としてステアリン酸カルシウム0.2質量部とを混合し、バンバリーミキサーを用いて150〜180℃の温度で溶融混練し、得られた樹脂組成物を4本逆L字ロール型24インチカレンダーに供給し、ロール温度160〜190℃で0.08mmの厚みに圧延して、基材フィルムを得た。
【0062】
得られた基材フィルムに、フッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂のブレンドからなるフィルム(商品名:DX−10S、電気化学工業社製、厚み0.02mm)のラミネート面にホットメルト接着剤を塗布したものをドライラミネートし、装飾用シートを作成した。
【0063】
実施例2〜3、比較例1〜3
基材フィルムにおけるポリプロピレン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、低密度ポリエチレン樹脂の配合比率と、基材フィルムの厚みとを表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして装飾用シートを作成した。
【0064】
比較例4
実施例1と同様にして得られた基材フィルムを装飾用シートとした(実施例1の基材フィルム単層であり、フッ化ビニリデン系フィルムとの積層を行っていない)。
【0065】
比較例5
メタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル共重合体(商品名:パラペットHR−A、クラレ社製)50質量部、メタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル・スチレン共重合体(商品名:メタブレンW341、三菱レイヨン社製)50質量部、酸化防止剤(商品名:イルガノックス1076、チバスペシャリティケミカル社製)1質量部、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.2質量部、ステアリン酸亜鉛0.2質量部、滑剤としてLS−5(旭電化工業社製)1質量部をバンバリーミキサーを用いて150〜180℃の温度で溶融混練し、得られた樹脂組成物を4本逆L字ロール型24インチカレンダーに供給し、ロール温度170〜200℃で0.08mmの厚みに圧延して基材フィルムを得た。
【0066】
得られた基材フィルムに、フッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂のブレンドからなるフィルム(商品名:DX−10S、電気化学工業社製、厚み0.02mm)のラミネート面にホットメルト接着剤を塗布したものをドライラミネートし、装飾用シートを作成した。
【0067】
実施例、比較例で得られた装飾用シートの評価を以下の方法、基準によって行った。
〔評価方法〕
(1)応力緩和特性
JIS C 2318に準ずる試験方法(幅25mm、長さ200mmの試験片、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/分)において、25mm幅の装飾用シートを流れ方向に20%延伸したまま5分間延伸を保持した時点のモジュラスと、25mm幅の装飾用シートを20%延伸した時点から延伸したまま5分間保持した時点までの間のモジュラスの最大値を測定し、その比(5分後値/最大値)を算出した。
〇:比が0.45以下である。
×:比が0.45を超える。
【0068】
(2)深絞り加工性
1mm厚みのアルミ板に、各装飾用シートを貼り付けた後、室温で5日間放置し、外径32mm×深さ3mmの条件で、丸型(丸い帽子の形)に絞り加工を施した。加工後の外観を以下の基準で評価した。
○:フィルム浮きや割れ、裂け、白化、部分伸び(ネッキング)等の外観異常が発生しない。
×:このような外観異常が発生する。
【0069】
(3)耐擦傷性
1mm厚みのアルミ板に、各装飾用シートを貼り付けた後、室温で5日間放置し、テーバー磨耗試験機にて、フィルム表面の擦り傷を目視確認した。なお、磨耗輪CS17×荷重1kg×3000回転の条件で評価した。
○:擦り傷が目立たない。
×:擦り傷が目立つ。
【0070】
【表1】

【0071】
表1から、実施例で得られた装飾用シートは、深絞り加工性、耐擦り傷性に優れるものであった。また、モジュラスの比(5分後値/最大値)も0.45以下で、応力緩和特性にも優れるものであり、優れた3次元曲面への追従性を有するものであった。一方、比較例で得られた装飾用シートは、これらの特性をすべて満たすものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の装飾用シートは、従来から広く使用されている塩化ビニル系樹脂製装飾用シートの代替材料として好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の装飾用シートの一例を示した概略図である。
【図2】本発明の装飾用シートの一例を示した概略図である。
【符号の説明】
【0074】
1 基材フィルム(1)
2 フィルム(2)
3 接着剤層又は粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材フィルム(1)及びフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂とを含有する樹脂組成物からなるフィルム(2)を積層した装飾用シートであって、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)とを含有するものであり、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との合計量100質量%に対して、25〜50質量%である
ことを特徴とする装飾用シート。
【請求項2】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は、エチレン−プロピレン共重合体成分及び/又はポリブチレン成分と、ポリプロピレン成分とを有する共重合体である請求項1記載の装飾用シート。
【請求項3】
装飾用シートを20%延伸したまま5分間保持した時点のモジュラスと、装飾用シートを20%延伸した時点から延伸したまま5分間保持した時点までの間のモジュラスの最大値との比が、0.45以下である請求項1又は2記載の装飾用シート。
【請求項4】
基材フィルム(1)とフィルム(2)との間に、着色層、印刷層、接着剤層又は粘着剤層を有する請求項1、2又は3記載の装飾用シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−21490(P2006−21490A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203471(P2004−203471)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】