説明

装飾用粒状体付き洗い出しクロスおよびその製法ならびにそれを用いた洗い出し方法

【課題】コンクリートの硬化工程において洗い出し仕上げを開始することができるようになり、かつ、その洗い出し仕上げのデザインを多様化することが容易にでき、かつ、特殊技能者でなくても洗い出し仕上げを均一な仕上がりにすることができる装飾用粒状体付き洗い出しクロスおよびその製法ならびにそれを用いた洗い出し方法を提供する。
【解決手段】糸材1aが織られてなりコンクリート硬化遅延剤が含浸された網状の基材1の片面に、水溶性接着剤2を介して複数の装飾用粒状体3が接着された装飾用粒状体付き洗い出しクロスの装飾用粒状体3側を、打設したコンクリート表面に圧接し装飾用粒状体3を埋め込んだ後、基材1を剥離してからコンクリート表面の半硬化部分を洗い流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面を洗い出し仕上げする際に用いる装飾用粒状体付き洗い出しクロスおよびその製法ならびにそれを用いた洗い出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物において、土間,スロープ,階段等のコンクリート打設面を玉石等で装飾する場合、洗い出し仕上げが行われる(例えば、特許文献1参照)。すなわち、まず、ベースとなるコンクリートを打設した後、硬化させる。ついで、その硬化したコンクリート表面に、装飾する玉石等を敷き並べその周囲を枠で囲った後、その上からモルタルを流し込む。そして、そのモルタルの表面に硬化遅延剤を塗布する。つぎに、上記モルタルの表面部分が完全に硬化する前に、その完全に硬化していない部分を水で洗い流して除去し、上記玉石等の一部(例えば上部)を露出させる。このようにして、洗い出し仕上げが行われる。
【特許文献1】特開平8−85107号公報(段落〔0002〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の洗い出し仕上げでは、ベースとなるコンクリートが硬化してから、装飾する玉石等を敷き並べる必要があるため、これらコンクリートの硬化と洗い出し仕上げとが別工程となり、時間を要する。また、モルタルを流し込んだ部分が洗い出し仕上げ部分となるため、そのモルタルを流し込んだ部分は、全体が一様な仕上がりとなる。特に、模様を変えようとすれば、その都度、新たに枠を設けて施工する必要があるため、デザインに変化をつけることが容易ではない。しかも、塗布する硬化遅延剤の量等により、洗い出しの程度が異なるため、仕上がりに作業者の技量差がでる作業となり、通常、特殊技能者(熟練左官工)が施工する作業となっている。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、コンクリートの硬化工程において洗い出し仕上げを開始することができるようになり、かつ、その洗い出し仕上げのデザインを多様化することが容易にでき、かつ、特殊技能者でなくても洗い出し仕上げを均一な仕上がりにすることができる装飾用粒状体付き洗い出しクロスおよびその製法ならびにそれを用いた洗い出し方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、コンクリート硬化遅延剤を含浸させた糸材を織成または編成するか、コンクリート硬化遅延剤を含浸させていない糸材を織成または編成したのち上記コンクリート硬化遅延剤を含浸させてなる網状の基材と、この基材の片面のコンクリート接触面の所定箇所に水溶性接着剤を介して接着された複数の装飾用粒状体とからなる装飾用粒状体付き洗い出しクロスを第1の要旨とする。
【0006】
また、本発明は、上記装飾用粒状体付き洗い出しクロスの製法であって、複数の装飾用粒状体を基台の表面の所定位置に配置する工程と、その配置された複数の装飾用粒状体を水溶性接着剤からなる接着剤シートで覆う工程と、その接着剤シートの表面に水をかけて装飾用粒状体間に存在する接着剤シートの部分を溶かし装飾用粒状体の少なくとも上部には接着剤シートの部分を残す工程と、コンクリート硬化遅延剤を含む網状の基材を上記装飾用粒状体が接着された上記接着剤シートの表面に圧接する工程と、上記装飾用粒状体の上部に残った接着剤シートの部分の接着力を利用して上記網状の基材に装飾用粒状体を接着させる工程とを備えている装飾用粒状体付き洗い出しクロスの製法を第2の要旨とする。
【0007】
さらに、本発明は、上記装飾用粒状体付き洗い出しクロスを用いた洗い出し方法であって、コンクリートを打設する工程と、そのコンクリートの表面部分が硬化するのに先立って、上記装飾用粒状体付き洗い出しクロスにおける装飾用粒状体が接着されている面をコンクリートの表面に対向させた状態で、装飾用粒状体付き洗い出しクロスをコンクリートの表面に圧接し、複数の装飾用粒状体をコンクリートの表面部分に埋め込む工程と、その装飾用粒状体付き洗い出しクロスの網状基材を圧接したコンクリートの表面部分が半硬化状態となるとともに、装飾用粒状体が埋め込まれたコンクリートの部分が硬化状態となった段階で、上記網状基材をコンクリートの表面部分から剥離する工程と、上記網状基材の含浸コンクリート硬化遅延剤の作用で半硬化状態となっているコンクリートの部分を洗い出して除去する工程とを備えている装飾用粒状体付き洗い出しクロスを用いた洗い出し方法を第3の要旨とする。
【0008】
〔洗い出し手順〕
すなわち、本発明の装飾用粒状体付き洗い出しクロスを用いて洗い出しするには、まず、コンクリートを打設した後、その表面部分が硬化する前に、装飾用粒状体接着面をコンクリートの表面に対向させた状態で、装飾用粒状体付き洗い出しクロスをコンクリートの表面に圧接する。そして、複数の装飾用粒状体をコンクリートの表面部分に埋め込む。このとき、装飾用粒状体が接着している基材が網状であるため、コンクリート表面と装飾用粒状体付き洗い出しクロスとの間の空気や水等は、その基材の網目から追い出される。これにより、網状の基材とコンクリート表面とが確実に接触するようになり、網状の基材を構成する糸材に含浸されているコンクリート硬化遅延剤がコンクリートに確実に作用するようになる。また、上記圧接の際には、コンクリート内の余剰水が、コンクリート表面に染み出し、網状の基材と装飾用粒状体とを接着している水溶性接着剤を溶かし、装飾用粒状体から網状の基材を離れ易くする。この状態で所定時間経過させる等することにより、上記装飾用粒状体付き洗い出しクロスの基材を圧接したコンクリートの表面部分は、その基材に含浸されているコンクリート硬化遅延剤の作用により半硬化状態となり、装飾用粒状体が埋め込まれた部分は、その装飾用粒状体により上記基材のコンクリート表面への接触が妨げられることから硬化状態となる。このようにして上記複数の装飾用粒状体をコンクリートの表面部分に埋め込んだ状態で、上記装飾用粒状体付き洗い出しクロスの網状の基材をコンクリート表面から剥離する。ついで、圧水の散布により、コンクリートの表面の半硬化部分(上記基材と接触していた表面部分)を洗い流す。このとき、同時に装飾用粒状体の上部に残存していた接着剤シートの部分が完全に洗い流される。これにより、装飾用粒状体の一部(例えば上部)を綺麗な状態で露出させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の装飾用粒状体付き洗い出しクロスは、コンクリート硬化遅延剤が含浸されている網状基材に、水溶性接着剤を介して、複数の装飾用粒状体が接着されているため、コンクリートを打設した後すぐに、そのコンクリート表面に圧接させることができる。このため、コンクリートが硬化するまで待つ必要がなく、作業時間を短くすることができる。また、コンクリート表面における装飾用粒状体付き洗い出しクロスの配置を部分的にすることができ、その配置を様々に変えることにより、洗い出し仕上げのデザインを多様にすることができる。さらに、基材に接着する装飾用粒状体の色,大きさ,配置等を様々に変えることによっても、洗い出し仕上げのデザインを多様にすることができる。そして、基材が網状であるため、打設されたコンクリート表面に装飾用粒状体付き洗い出しクロスを圧接させた際に、コンクリート表面と装飾用粒状体付き洗い出しクロスとの間の空気や水等を、その基材の網目から追い出すことができる。これにより、網状基材とコンクリート表面とが確実に接触するようになり、網状基材に含浸されているコンクリート硬化遅延剤をコンクリートに確実に作用させることができる。また、そのコンクリート硬化遅延剤は、網状基材に含浸されているため、未熟な技能者が作業しても、同量のコンクリート硬化遅延剤をコンクリートに作用させることができ、洗い出し仕上げを均一な仕上がりにすることができる。
【0010】
特に、上記糸材の太さが5〜50デシテックスの範囲内に設定され、かつ、上記基材における隣り合う糸材間の間隔が1〜5mmの範囲内に設定されている場合には、糸材の太さがより適正になり、含浸させるコンクリート硬化遅延剤の量を好適にすることができ、かつ、上記糸材間の間隔がより適正になり、各網目の中心部までコンクリート硬化遅延剤を好適に到達させることができる。
【0011】
また、本発明の装飾用粒状体付き洗い出しクロスの製法は、複数の装飾用粒状体を基台の表面の所定位置に配置し、それらを水溶性接着剤からなる接着剤シートで覆い、その接着剤シートの表面に水をかけた後、コンクリート硬化遅延剤を含浸させた網状の基材を上記接着剤シートの表面に圧接し、その後、上記装飾用粒状体の上部に残った接着剤シートの部分の接着力を利用して上記網状の基材に装飾用粒状体を接着させるため、本発明の装飾用粒状体付き洗い出しクロスを簡単に製造することができる。
【0012】
そして、本発明の装飾用粒状体付き洗い出しクロスを用いた洗い出し方法は、コンクリートを打設した後、その表面部分が硬化するのに先立って、装飾用粒状体が接着されている面をコンクリートの表面に対向させた状態で、装飾用粒状体付き洗い出しクロスをコンクリートの表面に圧接し、その装飾用粒状体をコンクリートの表面部分に埋め込むため、コンクリートが硬化するまで待つ必要がなく、作業時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の装飾用粒状体付き洗い出しクロスの一実施の形態を示している。この装飾用粒状体付き洗い出しクロス(以下、単に「洗い出しクロス」という)は、網状の基材1の片面(コンクリート接触面)に、水溶性接着剤2を介して、複数の装飾用粒状体3が接着されたものとなっている。そして、上記網状の基材1は、糸材1aが織られるかまたは編まれるかして形成され、フレキシブルなものとなっており、また、その糸材1aには、コンクリート硬化遅延剤が含浸されている。
【0015】
より詳しく説明すると、上記糸材1aとしては、コンクリート硬化遅延剤を含浸させることができれば、特に限定されないが、通常、綿糸が用いられる。また、その糸材1aの太さは、コンクリート硬化遅延剤の含浸量を好適にする観点から、5〜50デシテックスの範囲内に設定されることが好ましい。
【0016】
上記網状の基材1の形成は、糸材1aを織成または編成により網状に形成してからコンクリート硬化遅延剤を含浸させてもよいし、糸材1aにコンクリート硬化遅延剤を含浸させてからその糸材1aを織成または編成により網状に形成してもよい。そして、上記網状の基材1において、隣り合う糸材1a間の間隔は、特に限定されないが、各網目の中心部までコンクリート硬化遅延剤を好適に到達させる観点から、1〜5mmの範囲内に設定されることが好ましい。隣り合う糸材1a間の間隔が1mmを下回ると、各網目が小さくなり、洗い出しクロスをコンクリートの表面に圧接した際に、コンクリート表面と洗い出しクロスとの間の空気や水等を各網目から追い出すのに時間を要するようなる。しかも、装飾用粒状体3との接着力が高くなりすぎる傾向にあり、網状の基材1をコンクリート表面から剥離する際に、装飾用粒状体3も基材1と共に剥離するおそれがある。隣り合う糸材1a間の間隔が5mmを上回ると、装飾用粒状体3との接着力が低くなりすぎる傾向にあり、装飾用粒状体3が自重で基材1から脱落するおそれがある。しかも、コンクリート硬化遅延剤が各網目の中心部まで到達し難くなり、洗い出し形状が網目状になるおそれがある。しかし、意図的にそのようなデザインにする場合は、上記糸材1a間の間隔を広くしてもよい。また、上記基材1を網状に織る場合、その織り方としては、特に限定されないが、製造し易い観点から、平織であることが好ましい。
【0017】
上記糸材1aに含浸されているコンクリート硬化遅延剤の原料としては、特に限定されないが、網状の基材1の各網目の中心部まで到達し易くする観点から、ショ糖(グラニュー糖),クエン酸ナトリウムまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0018】
上記網状の基材1と装飾用粒状体3とを接着している水溶性接着剤2の原料しては、特に限定されないが、基材1の変形への追随性および装飾用粒状体3とのなじみ性の観点から、水溶性ウレタンであることが好ましい。
【0019】
上記装飾用粒状体3としては、特に限定されないが、例えば、玉石,砕石,セラミック玉,ガラス玉等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、装飾用粒状体3の大きさも、特に限定されないが、通常、それぞれの最大外径が10〜30mmの範囲内のものが用いられる。さらに、装飾用粒状体3の色や形状も、特に限定されず、様々なものが用いられる。
【0020】
このような洗い出しクロスは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、図2(a)に示すように、パンチングメタル(基台)4を敷き、そのパンチ孔4aに装飾用粒状体3を置く。このとき、装飾用粒状体3の色,大きさ,配置等を適宜にすることにより、洗い出し仕上げのデザインを行う。また、装飾用粒状体3を配置する基台としてパンチングメタル4を用いると、不安定な形状の装飾用粒状体3であっても安定させて置くことができる。ついで、図2(b)に示すように、その配置された複数の装飾用粒状体3を、水溶性接着剤2からなる接着剤シート21で覆った後、その接着剤シート21の表面に水5を噴霧する。これにより、図2(c)に示すように、装飾用粒状体3間に存在する接着剤シート21の部分が溶けて切れるとともに、装飾用粒状体3上に存在する接着剤シート21の部分が軟化して装飾用粒状体3にからむ。つぎに、図2(d)に示すように、接着剤シート21の表面に上記網状の基材1を圧接する。その後、軟化した接着剤シート21の部分を乾燥させる。これにより、接着剤シート21の形成材料である水溶性接着剤2を介して装飾用粒状体3が網状の基材1に接着されたものとなる。そして、それを上記パンチングメタル4から取り外したものが、図2(e)に示すように、上記洗い出しクロスとして得られる。なお、図2(d),(e)では、網状の基材1の網目を略して示している。
【0021】
そして、上記洗い出しクロスを用いた洗い出し仕上げは、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、コンクリートを打設し、その表面を均す。その後、図3(a)に示すように、その表面部分が硬化する前に、上記洗い出しクロスの装飾用粒状体3が接着されている面をコンクリート6の表面に対向させた状態で、その洗い出しクロスをコンクリート6の表面に圧接し、複数の装飾用粒状体3をコンクリート6の表面部分に埋め込む。このとき、コンクリート6の表面と洗い出しクロスとの間の空気や水等は、洗い出しクロスの基材1の網目から追い出される〔なお、図3(a)では、網状の基材1の網目を略して示している〕。これにより、網状の基材1とコンクリート6の表面とが確実に接触するようになり、網状の基材1に含浸されているコンクリート硬化遅延剤がコンクリート6に確実に作用するようになる。また、上記洗い出しクロスをコンクリート6の表面に圧接した際には、コンクリート6内の余剰水が、コンクリート6の表面に染み出し、網状の基材1と装飾用粒状体3とを接着している水溶性接着剤2を溶かし、装飾用粒状体3から網状の基材1を離れ易くする。この状態で所定時間経過させることにより、上記網状の基材1を圧接したコンクリート6の表面部分は、その基材1に含浸されているコンクリート硬化遅延剤の作用により半硬化状態となり、装飾用粒状体3が埋め込まれた部分は、その装飾用粒状体により上記基材のコンクリート表面への接触が妨げられることから硬化状態となり、上記網状の基材1を圧接したコンクリート6の表面部分(上記半硬化状態の部分)よりも深い部分や上記網状の基材1の周辺部分は、コンクリート硬化遅延剤が作用しないことから硬化状態となる。このような状態では、装飾用粒状体3付着していた水溶性接着剤2のうちコンクリート6に埋め込まれた部分は、コンクリート6内の水分に溶ける。このようになった段階で、図3(b)に示すように、上記複数の装飾用粒状体3をコンクリート6の表面部分に埋め込んだ状態で、上記洗い出しクロスの網状の基材1〔図3(a)参照〕をコンクリート6の表面から剥離する。このとき、装飾用粒状体3付着していた水溶性接着剤2のうちコンクリート6に埋め込まれていない部分の殆どは、基材1とともに装飾用粒状体3から剥離され、一部が装飾用粒状体3に残存する。そして、図3(c)に示すように、コンクリート6の表面の半硬化部分を水で洗い流して除去する。このとき、同時に装飾用粒状体3の上部に残存していた水溶性接着剤2〔図3(b)参照〕が完全に洗い流される。これにより、装飾用粒状体3の一部(例えば上部)を綺麗な状態で露出させ、洗い出し仕上げを完了する。
【0022】
なお、上記実施の形態では、洗い出しクロスを製造する際に、装飾用粒状体3を配置する基台としてパンチングメタル4を用いたが、これに限定されるものではなく、孔が形成されていない板材や平面台等を用いてもよい。
【0023】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【実施例】
【0024】
〔網状の基材の作製〕
太さ10デシテックスの綿糸を2.1mm間隔で平織して網状にし、それを、コンクリート遅延剤を含有した水溶性ウレタン(大原パラヂウム社製、VPS−17)に漬けたのち、絞り、乾燥することにより、上記綿糸にコンクリート硬化遅延剤が含浸された網状の基材を作製した。含浸されたコンクリート硬化遅延剤の質量は、平織1m2 当たり300gだった。
【0025】
〔洗い出しクロスの作製〕
パンチングメタル(パンチ孔の直径10mm、パンチ孔のピッチ50mm)を敷き、そのパンチ孔に、玉石(それぞれの最大外径が10〜30mmの範囲内にあるもの)を置き、その玉石の配置を星形にした。そして、その星形に配置した複数の玉石を、水溶性ウレタン(水溶性接着剤)からなる接着剤シート(大原パラヂウム社製、パラミリオン、厚み70μm)で覆い、その表紙に水を噴霧した。つぎに、その接着剤シートの表面に上記網状の基材を圧接した後、上記水の噴霧で軟化した接着剤シートを乾燥させ、その水溶性ウレタンを介して上記網状の基材に玉石を接着させた。また、上記網状の基材を、玉石の配置形状である星形の輪郭に沿って、星形に切断した。これにより、洗い出しクロスを得た。
【0026】
〔洗い出し仕上げ〕
コンクリートを打設した後すぐに、上記洗い出しクロスの玉石が接着されている面をコンクリートの表面に対向させた状態で、その洗い出しクロスをコンクリートの表面の中心部に圧接し、複数の玉石をその中心部に埋め込んだ。そして、3時間後、その網状の基材を圧接したコンクリートの表面部分が半硬化状態となり、玉石を埋め込んだ部分,網状の基材を圧接したコンクリートの表面部分よりも深い部分および網状の基材の周辺部分が硬化状態となった段階で、上記複数の玉石をコンクリートの表面部分に埋め込んだ状態で、上記洗い出しクロスの網状の基材をコンクリートの表面から剥離し、その網状の基材を剥離した部分に対応するコンクリートの表面中心部の半硬化部分および残存していた水溶性接着剤を洗い流した。これにより、コンクリートの表面中心部を星形に洗い出し仕上げすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の洗い出しクロスの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の洗い出しクロスの製法を模式的に示す説明図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の洗い出しクロスを用いた洗い出し方法を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 基材
1a 糸材
2 水溶性接着剤
3 装飾用粒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート硬化遅延剤を含浸させた糸材を織成または編成するか、コンクリート硬化遅延剤を含浸させていない糸材を織成または編成したのち上記コンクリート硬化遅延剤を含浸させてなる網状の基材と、この基材の片面のコンクリート接触面の所定箇所に水溶性接着剤を介して接着された複数の装飾用粒状体とからなることを特徴とする装飾用粒状体付き洗い出しクロス。
【請求項2】
上記糸材の太さが5〜50デシテックスの範囲内に設定され、かつ、上記基材における隣り合う糸材間の間隔が1〜5mmの範囲内に設定されている請求項1記載の装飾用粒状体付き洗い出しクロス。
【請求項3】
上記複数の装飾用粒状体が、それぞれ最大外径10〜30mmの範囲内に設定されている請求項1または2記載の装飾用粒状体付き洗い出しクロス。
【請求項4】
請求項1記載の装飾用粒状体付き洗い出しクロスの製法であって、複数の装飾用粒状体を基台の表面の所定位置に配置する工程と、その配置された複数の装飾用粒状体を水溶性接着剤からなる接着剤シートで覆う工程と、その接着剤シートの表面に水をかけて装飾用粒状体間に存在する接着剤シートの部分を溶かし装飾用粒状体の少なくとも上部には接着剤シートの部分を残す工程と、コンクリート硬化遅延剤を含む網状の基材を上記装飾用粒状体が接着された上記接着剤シートの表面に圧接する工程と、上記装飾用粒状体の上部に残った接着剤シートの部分の接着力を利用して上記網状の基材に装飾用粒状体を接着させる工程とを備えていることを特徴とする装飾用粒状体付き洗い出しクロスの製法。
【請求項5】
上記糸材の太さが5〜50デシテックスの範囲内に設定され、かつ、上記基材における隣り合う糸材間の間隔が1〜5mmの範囲内に設定されている請求項4記載の装飾用粒状体付き洗い出しクロスの製法。
【請求項6】
上記複数の装飾用粒状体が、それぞれ最大外径10〜30mmの範囲内に設定されている請求項4または5記載の装飾用粒状体付き洗い出しクロスの製法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の装飾用粒状体付き洗い出しクロスを用いた洗い出し方法であって、コンクリートを打設する工程と、そのコンクリートの表面部分が硬化するのに先立って、上記装飾用粒状体付き洗い出しクロスにおける装飾用粒状体が接着されている面をコンクリートの表面に対向させた状態で、装飾用粒状体付き洗い出しクロスをコンクリートの表面に圧接し、複数の装飾用粒状体をコンクリートの表面部分に埋め込む工程と、その装飾用粒状体付き洗い出しクロスの網状基材を圧接したコンクリートの表面部分が半硬化状態となるとともに、装飾用粒状体が埋め込まれたコンクリートの部分が硬化状態となった段階で、上記網状基材をコンクリートの表面部分から剥離する工程と、上記網状基材の含浸コンクリート硬化遅延剤の作用で半硬化状態となっているコンクリートの部分を洗い出して除去する工程とを備えていることを特徴とする装飾用粒状体付き洗い出しクロスを用いた洗い出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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