説明

装飾用部品及び装飾用部品の製造方法

【課題】製造における歩留まりを向上させ、長期に亘り腐食が発生しにくく、金属鏡面状を呈する装飾用部品を提案する。
【解決手段】本発明の装飾用部品10は、裏面が平滑面となるように形成された透明部材11と、透明部材11の裏面に設けられる透明合成樹脂層13とを有し、透明合成樹脂層13内の少なくとも透明部材11側に複数の箔状金属片が透明部材11の裏面と各々略平行する姿勢で埋没しているという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鏡面状を呈する装飾用部品及び装飾用部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、透明部材の裏面側に金属層を設けることで、表面から見た場合に金属鏡面状を呈する装飾用部品が知られている。
ここで、特許文献1には、透明部材の裏面に透明のベースコート層を形成し、ベースコート層上に金属層を形成し、金属層上に透明のトップコート層を形成し、トップコート層上に不透明層を形成する装飾用部品の製造方法が開示されている。
透明部材の表面及び裏面は共に平滑面となるように成形されており、金属層は金属蒸着等により透明部材の裏面及びベースコート層に沿って形成されるため、金属層のベースコート層と接触している面は鏡面状となる。したがって、装飾用部品は、透明部材の表面から見た場合に金属鏡面状を呈する。
【0003】
また、透明部材の裏面に金属片を含有した合成樹脂塗料(いわゆるメタリック塗料)を塗布し、透明部材の表面から見た場合に金属調を呈する装飾用部品も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−212324号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されている方法によって製造される装飾用部品は、金属層を保護するためのベースコート層及びトップコート層を有しているため、装飾用部品の製造工程が増え、各工程において一定の不良品が発生して製造全体の歩留まりが低下するという問題があった。
また、ベースコート層又はトップコート層が経年変化等により劣化した場合は、水等が金属層に進入し金属層が腐食するという問題があった。
【0006】
一方、透明部材の裏面に金属片を含有した合成樹脂塗料を塗布して装飾用部品を製造した場合は、塗料の乾燥後、金属片は規則性無く塗料の合成樹脂層に埋没している。そのため、透明部材の表面から光が入射すると光の多くは塗料の合成樹脂層で拡散反射し、透明部材の表面から見た場合に金属調は呈するものの金属鏡面状とはならないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、製造における歩留まりを向上させ、長期に亘り腐食が発生しにくく、金属鏡面状を呈する装飾用部品を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の装飾用部品は、裏面が平滑面となるように形成された透明部材と、透明部材の裏面に設けられる透明合成樹脂層とを有し、透明合成樹脂層内の少なくとも透明部材側に複数の箔状金属片が透明部材の裏面と各々略平行する姿勢で埋没しているという構成を採用する。
【0009】
このような構成を採用する本発明の装飾用部品を製造するために、まず、透明部材をその裏面が平滑面となるように成形する。次に、透明部材の裏面に複数の箔状金属片を含有する透明合成樹脂塗料を塗布する。さらに、透明合成樹脂塗料を乾燥させつつ少なくとも透明部材側に位置する箔状金属片を透明部材の裏面と各々略平行する姿勢に配向させる。
【0010】
結果として、本発明の装飾用部品では、従来のベースコート層、金属層及びトップコート層を形成する工程を透明合成樹脂塗料を塗布する1つの工程に代替できる。また、本発明の装飾用部品では、塗料乾燥後の箔状金属片は透明合成樹脂に被覆されている。さらに、本発明の装飾用部品では、透明部材の表面から光が入射した場合、光の多くは透明合成樹脂内の箔状金属片において鏡面反射し、その反射方向は略一定の方向となる。
【0011】
また、本発明の装飾用部品における箔状金属片の箔厚は、500Å以下であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明の装飾用部品では、箔状金属片が500Å以下という非常に薄い箔厚で形成されているため、塗料の乾燥時に塗料内の溶剤が蒸発し塗膜が次第に薄くなることで、箔状金属片には透明部材の裏面と各々略平行する姿勢に配向させる力が作用する。結果として、塗料の乾燥後には、箔状金属片は透明部材の裏面と各々略平行する姿勢に配向して固定する。
【0012】
また、本発明の装飾用部品における箔状金属片の全長は、20μm以下であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明の装飾用部品では、箔状金属片が20μmという非常に微少な全長で形成されているため、透明合成樹脂塗料の非乾燥時には箔状金属片の姿勢は塗料内で自由に変化することができる。
【0013】
また、本発明の装飾用部品における箔状金属片の総質量は、透明合成樹脂層を形成する透明合成樹脂の総質量の5%から50%であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明の装飾用部品では、透明合成樹脂の量は箔状金属片を被覆するに十分な量となっている。したがって、塗料の乾燥後、箔状金属片は透明合成樹脂に各々被覆される。
【0014】
また、本発明の装飾用部品における透明部材は、合成樹脂からなるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、装飾用部品は例えばガラス等に比べ衝撃に対する高い耐久性を備えることができる。
【0015】
また、本発明は、透明部材をその裏面が平滑面となるように成形する成形工程と、透明部材の裏面に複数の箔状金属片を含有する透明合成樹脂塗料を塗布する塗布工程と、透明合成樹脂塗料が乾燥しつつ箔状金属片を透明部材の裏面と各々略平行する姿勢に配向させる乾燥工程と、を備えるという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、従来のベースコート層、金属層及びトップコート層を形成する工程を透明合成樹脂塗料を塗布する1つの工程に代替できる。また、本発明では、塗料乾燥後の箔状金属片は透明合成樹脂に被覆されている。さらに、本発明では、透明部材の表面から光が入射した場合、光の多くは透明合成樹脂内の箔状金属片において鏡面反射し、その反射方向は略一定の方向となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、従来の3つの製造工程を1つの工程に代替することができるため、各工程において発生していた不良品数を減少させることができる。したがって、本発明によれば、製造における歩留まりを向上させることができるという効果がある。
また、本発明によれば、箔状金属片は透明合成樹脂に被覆されているため、長期に亘り腐食が発生しにくいという効果がある。
さらに、本発明によれば、箔状金属片を含んだ透明合成樹脂塗料を塗布することで、表面から見た場合に金属鏡面状を呈する装飾用部品を製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1及び第2の実施形態におけるラジエータグリル1の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における装飾用部品10の正面図である。
【図3】図2のA−A線視断面図である。
【図4】図3の領域Kにおける拡大図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における装飾用部品10の製造方法を示す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における第2装飾用部品20の正面図である。
【図7】図6のA−A線視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
本実施形態における装飾用部品10の構成を、図面に基づいて説明する。
まず、装飾用部品10が取り付けられているラジエータグリル1の構成を、図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態におけるラジエータグリル1の正面図である。
ラジエータグリル1は、車両の前面に設けられる車両構成体であり、複数の水平方向に延びる部材及び複数の垂直方向に延びる部材が一体となって構成されている。また、ラジエータグリル1は、その前面中央部に装飾用部品10を備えている。
【0019】
次に、装飾用部品10の構成を、図2ないし図4に基づいて説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態における装飾用部品10の正面図、図3は、図2のA−A線視断面図、図4は、図3の領域Kにおける拡大図である。なお、図3及び図4では、説明のために各構成要素の縮尺を適宜変更して記載している。
【0020】
図2に示すように、装飾用部品10は、表面から見た場合に金属鏡面状を呈する金属部10Aと、黒色を呈する黒色部10Bとを有している。
図3に示すように、装飾用部品10は、表面側から裏面側に向かって、透明部材11、第1有色塗装層12、金属塗装層(透明合成樹脂層)13、第2有色塗装層14、接着層15及びベース部材16が順次配置され一体的に設けられた構成となっている。
【0021】
透明部材11は、表面側から見て略矩形を呈する板状部材であり、その裏面の金属部10Aに対応する部分が表面側に窪んだ形状となっている。また、透明部材11は、例えばポリカーボネート又はアクリル等の透明合成樹脂で形成されている。
透明部材11の表面及び裏面は、共に平滑面となるように成形されており、表面には擦過等に対する耐久性を向上させ傷等の発生を防止するいわゆるハードコート処理がなされている。
【0022】
第1有色塗装層12は、透明部材11の裏面の黒色部10Bに対応する部分に、黒色の合成樹脂塗料を塗布して形成されている。この塗布作業には、スクリーン印刷等が用いられる。なお、第1有色塗装層12に用いられる塗料の色は黒色以外の色であってもよい。
【0023】
金属塗装層13は、透明部材11の裏面の金属部10Aに対応する部分及び第1有色塗装層12の裏面に厚み1.0μm以下で形成されており、透明合成樹脂13S内に複数の箔状金属片Mが埋没した構成となっている。なお、金属塗装層13は、複数の箔状金属片Mを含んだ透明合成樹脂塗料13L(図5(c)参照)の塗膜を乾燥させることで形成される。
【0024】
箔状金属片Mはアルミニウム(Al)で形成され、その箔厚は凡そ300Å(=0.03μm)、その全長は10μm以下である。また、箔状金属片Mは、金属蒸着等の工程を用いて形成され、その表面は鏡面状を呈している。なお、箔状金属片Mの総質量は透明合成樹脂13Sの総質量の5%〜50%である。
図4に示すように、金属塗装層13内の透明部材11側における箔状金属片Mは、各々が透明部材11の裏面と略平行する姿勢で透明合成樹脂13S内に埋没している。一方、金属塗装層13内の透明部材11と逆側においては、少なくとも一部の箔状金属片Mは規則性無く透明合成樹脂13S内に埋没している。
【0025】
第2有色塗装層14は、金属部10Aにおける色調の調整及び金属塗装層13の保護のために用いられ、金属塗装層13の裏面に灰黒色の合成樹脂塗料を塗布して形成されている。なお、第2有色塗装層14に用いられる塗料の色は、灰黒色以外の色であってもよい。
【0026】
接着層15は、第2有色塗装層14の裏面に形成され、第2有色塗装層14とベース部材16との接続を強固なものとするためのものである。接着層15には、加熱することにより低粘度化するホットメルト系接着剤が用いられている。
【0027】
ベース部材16は、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)等の合成樹脂からなり、金型装置内に第1有色塗装層12から接着層15までが形成された透明部材11をインサートし射出圧縮成形等を用いて接着層15の裏面に形成される。また、ベース部材16は、装飾用部品10をラジエータグリル1に取り付けるための取付片16Aを有しており、取付片16Aは装飾用部品10の裏面側から上下方向に突出した形状となっている。
【0028】
続いて、本実施形態の装飾用部品10の製造方法を、図5に基づいて説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態における装飾用部品10の製造方法を示す概略図である。
本実施形態における装飾用部品10の製造方法は、透明部材11を成形する第1成形工程(成形工程)と、第1有色塗装層12を形成する第1塗布工程と、箔状金属片Mを含有する透明合成樹脂塗料13Lを塗布する第2塗布工程(塗布工程)と、透明合成樹脂塗料13Lを乾燥させ金属塗装層13を形成する乾燥工程と、第2有色塗装層14を形成する第3塗布工程と、接着層15を形成する第4塗布工程と、ベース部材16を成形する第2成形工程と備える。
以下、各工程について説明する。
【0029】
まず、図5(a)に示すように、透明部材11を成形する。
透明部材11は、射出成形又は射出圧縮成形等を用いて成形され、その表面及び裏面は共に平滑面となるように成形されている。成形後、透明部材11の表面にはハードコート処理がなされる。
【0030】
次に、図5(b)に示すように、第1有色塗装層12を形成する。
スクリーン印刷等により、透明部材11の裏面の黒色部10Bに対応する部分に黒色の合成樹脂塗料が塗布される。上記黒色の合成樹脂塗料を乾燥させることで、第1有色塗装層12が形成される。
【0031】
次に、図5(c)に示すように、箔状金属片Mを含有する透明合成樹脂塗料13Lを塗布する。
スプレー塗装等により、透明部材11の裏面側全面に箔状金属片Mを含有する透明合成樹脂塗料13Lが塗布される。塗料13Lの配合は、質量比で溶剤が全体の98%、溶剤内の含有物が2%であり、箔状金属片Mは上記含有物の5%〜50%、その以外が透明合成樹脂13Sとなっている。塗料13Lの塗布時の塗膜は、凡そ20μmである。
なお、本実施形態における塗料13Lは質量比で98%を溶剤が占めており塗料13Lの粘度が低いこと、及び、箔状金属片Mが微細に形成されていることから、箔状金属片Mは塗料13L内でその姿勢を自由に変えることができる。
【0032】
次に、図5(d)に示すように、透明合成樹脂塗料13Lを乾燥させる。
塗料13Lを乾燥環境(例えば70℃の環境で10分等)内で乾燥させる。ここで、箔状金属片Mが300Åという非常に薄い箔厚で形成されているため、乾燥により塗料13L内の溶剤が蒸発し塗膜が次第に薄くなること及び透明部材11の裏面が平滑面となっていることから、箔状金属片Mには透明部材11の裏面と各々略平行する姿勢に配向させる力が作用する。結果として、塗料13Lの乾燥後には、箔状金属片Mは透明部材11の裏面と各々略平行する姿勢に配向して固定する。
なお、透明部材11の存在により、上記配向させる力は透明部材11側がその逆側より強く働き、透明部材11側に位置する箔状金属片Mはその逆側に位置するものと比べて、より透明部材11と平行する姿勢に配向する。
【0033】
塗料13Lを乾燥させることで、金属塗装層13が形成される。金属塗装層13内の箔状金属片Mは、透明合成樹脂13Sに各々被覆されている。
なお、透明合成樹脂塗料13Lを塗布する第2塗布工程及び上記乾燥工程を複数回実施してもよい。
【0034】
次に、図5(e)に示すように、第2有色塗装層14を形成する。
スプレー塗装等により、金属塗装層13の裏面側全面に灰黒色の合成樹脂塗料が塗布される。上記灰黒色の合成樹脂塗料を乾燥させることで、第2有色塗装層14が形成される。
【0035】
次に、図5(f)に示すように、接着層15を形成する。
第2有色塗装層14の裏面側全面又は一部に接着剤が塗布され、接着層15が形成される。
【0036】
最後に、図5(g)に示すように、ベース部材16を成形する。
第1有色塗装層12から接着層15までが形成された透明部材11を金型装置内にインサートし、射出成形又は射出圧縮成形等を用いて接着層15の裏面側にベース部材16が形成される。
以上で本実施形態の装飾用部品10の製造が完了する。
【0037】
続いて、装飾用部品10の表面側から金属部10Aの部分に入射した光の反射動作について説明する。
装飾用部品10の表面側から金属部10Aの部分に光が入射した場合、光は透明部材11を透過し、金属塗装層13内の箔状金属片Mが埋没している箇所まで到達する。ここで、箔状金属片Mの表面は鏡面状に形成され、かつ、複数の箔状金属片Mが透明部材11の裏面と各々略平行する向きに配向しているため、上記入射光は箔状金属片Mの表面で鏡面反射し、その反射方向は略一定の方向となる。したがって、金属部10Aの表面側は金属鏡面状を呈する。
【0038】
なお、一部の入射光は箔状金属片Mが埋没している箇所をも透過し第2有色塗装層14まで到達する。しかし、第2有色塗装層14は灰黒色を呈しており、箔状金属片Mが埋没している箇所を透過した入射光の多くは第2有色塗装層14に吸収され、第2有色塗装層14で反射する光は僅かである。また、上記反射光は彩度を有しない(無彩色)ことから、上記反射光が金属部10Aの色調に与える影響はほとんどない。
【0039】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、従来の3つの製造工程を1つの工程に代替することができるため各工程において発生していた不良品数を減少させることができる。したがって、本実施形態によれば、製造における歩留まりを向上させることができるという効果がある。
また、本実施形態によれば、箔状金属片Mは透明合成樹脂13Sに被覆されているため、長期に亘り腐食が発生しにくいという効果がある。
さらに、本実施形態によれば、箔状金属片Mを含んだ透明合成樹脂塗料13Lを塗布することで、表面から見た場合に金属鏡面状を呈する装飾用部品10を製造することができるという効果がある。
【0040】
〔第2実施形態〕
本実施形態における第2装飾用部品20の構成を、図面に基づいて説明する。
まず、第2装飾用部品20が取り付けられているラジエータグリル1の構成を、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、ラジエータグリル1は、第2装飾用部品20を装飾用部品10の左右方向両側にそれぞれ備えている。なお、左右の第2装飾用部品20は互いに線対称の形状を呈している。
【0041】
次に、第2装飾用部品20の構成を、図6及び図7に基づいて説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態における第2装飾用部品20の正面図、図7は、図6のA−A線視断面図である。なお、図7では、説明のために各構成要素の縮尺を適宜変更して記載している。また、図6及び7において、図2及び図3に示す第1の実施形態における装飾用部品10の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、第2装飾用部品20は、表面全体が金属鏡面状を呈し左右方向で延在する長尺部品である。
図7に示すように、第2装飾用部品20は、表面側から裏面側に向かって、透明部材21、金属塗装層(透明合成樹脂層)13、第2有色塗装層14、接着層15及びベース部材16が順次配置され一体的に設けられた構成となっている。
【0043】
透明部材21は、表面側から見て左右方向で延在する長尺の板状部材であり、上辺及び下辺が裏面側に折り曲げられた形状を呈している。また、透明部材21は、例えばポリカーボネート又はアクリル等の透明合成樹脂で形成されている。
透明部材21の表面及び裏面は、共に平滑面となるように成形されており、表面には擦過等に対する耐久性を向上させ傷等の発生を防止するいわゆるハードコート処理がなされている。
【0044】
金属塗装層13は、透明部材21の裏面に厚み1.0μm以下で形成されている。
なお、金属塗装層13のその他の構成及び第2有色塗装層14からベース部材16の構成は第1の実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0045】
次に、本実施形態の第2装飾用部品20の製造方法は、第1の実施形態における装飾用部品10の製造方法から第1有色塗装層12を形成する第1塗布工程を除いたものである。よって、その説明を省略する。
さらに、第2装飾用部品20の表面側から入射した光の反射動作は、装飾用部品10の表面側から金属部10Aの部分に入射した光の反射動作と同様である。よって、その説明を省略する。
【0046】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態によれば、製造における歩留まりを向上させることができ、長期に亘り腐食が発生しにくく、箔状金属片Mを含んだ透明合成樹脂塗料13Lを塗布することで表面から見た場合に金属鏡面状を呈する第2装飾用部品20を製造することができるという効果がある。
【0047】
なお、前述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、箔状金属片Mの材質はアルミニウム(Al)であるが、本発明はかかる材質に限定されるものではなく、微細な箔状に形成可能な金属であればよい。例えばインジウム(In)又はクロム(Cr)等でもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、灰黒色の合成樹脂塗料を金属塗装層13の裏面に塗布することで第2有色塗装層14を形成しているが、異なる色の塗料を複数回塗布することで第2有色塗装層14を形成してもよい。例えば灰黒色の塗料を塗布した後に黒色の塗料を塗布してもよい。黒色の塗料を塗布することで、金属部10Aの色調をより鮮明にすることができる。
【0050】
また、第2有色塗装層14として灰黒色及び黒色以外の色を使用してもよい。前述の通り、金属部10Aの表面側から入射した光は箔状金属片M及び第2有色塗装層14にて反射するが、第2有色塗装層14の色を変更することで金属部10Aの色調を変化させることができる。例えば、第2有色塗装層14を黄色系の塗料を用いて形成した場合、金属部10Aは金色調の金属鏡面状を呈する。
【0051】
また、上記実施形態では、第1有色塗装層12はスクリーン印刷によって形成されているが、いわゆるホットスタンプを用いて黒色の合成樹脂シートを透明部材11の裏面に貼付することで第1有色塗装層12を形成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、装飾用部品10及び第2装飾用部品20は共に車両の構成体であるラジエータグリル1に取り付けられているが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、車両における他の構成体や部品等に取り付けられるものであってもよい。例えば、電波を用いるレーダを環境暴露から保護するためのレドームとして使用してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、取付対象物として車両が用いられているが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、他の構造物等であってもよい。また、取付対象物としての車両においても、1輪又は複数の車輪数を持つ車両であってもよい。また、キャタピラー等で移動する車両、軌道上を移動する車両であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、透明部材11は合成樹脂で形成されていたが、本発明はかかる材質に限定されるものではなくガラス等であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、接着層15が形成されているが、第2有色塗装層14とベース部材16との接続を例えば適切な材料を選択することで強固なものとできる場合は形成せずともよい。
【符号の説明】
【0056】
10…装飾用部品、11…透明部材、13…金属塗装層(透明合成樹脂層)、20…第2装飾用部品、21…透明部材、M…箔状金属片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面が平滑面となるように形成された透明部材と、
前記透明部材の裏面に設けられる透明合成樹脂層と、を有し、
前記透明合成樹脂層内の少なくとも前記透明部材側に複数の箔状金属片が前記透明部材の裏面と各々略平行する姿勢で埋没していることを特徴とする装飾用部品。
【請求項2】
前記箔状金属片の箔厚は、500Å以下であることを特徴とする請求項1に記載の装飾用部品。
【請求項3】
前記箔状金属片の全長は、20μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の装飾用部品。
【請求項4】
前記箔状金属片の総質量は、前記透明合成樹脂層を形成する透明合成樹脂の総質量の5%から50%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装飾用部品。
【請求項5】
前記透明部材は、合成樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装飾用部品。
【請求項6】
透明部材をその裏面が平滑面となるように成形する成形工程と、前記透明部材の裏面に複数の箔状金属片を含有する透明合成樹脂塗料を塗布する塗布工程と、前記透明合成樹脂塗料が乾燥しつつ少なくとも前記透明部材側に位置する前記箔状金属片を前記透明部材の裏面と各々略平行する姿勢に配向させる乾燥工程と、を備えることを特徴とする装飾用部品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−79161(P2011−79161A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231420(P2009−231420)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【Fターム(参考)】