説明

裏面反射ミラー

【課題】膜総数が少なくて生産性が高く、しかも、可視光に対する裏面反射効率が高い裏面反射ミラーを提供する。
【解決手段】光透過性を有する基板2と、前記基板の光入射面である表面とは反対側の裏面に順次積層された第1誘電体層4、第2誘電体層6、第3誘電体層8、第4誘電体層10、及び反射層12と、を有し、前記第1誘電体層及び前記第3誘電体層はTiO層或いはTaであり、前記第2誘電体層はSiO層であり、前記第4誘電体層はAl層或いはY層であり、前記反射層はAg層或いはAg合金層である裏面反射ミラーを形成する。これにより、膜総数が少なくて生産性を高くすることができ、しかも、可視光に対する裏面反射効率を高めるこができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜の特性を生かした裏面反射ミラーに係り、特に、膜総数が少なくて生産性が高く、光入射面側に発光光源を置いて裏面反射を利用する光学系に好適な裏面反射ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、反射ミラーに関して膜面からの反射を行う高反射膜については例えば特許文献1等において、種々の高反射率反射ミラーが開示されている。しかし、透明基板の光入射面とは反対側面に反射膜を積層し、光入射面とは反対側の面で反射させるようにした裏面反射ミラーに関しては、上記高反射率ミラー程には多くなく、例えば特許文献2等において自動車用バックミラー、カーブミラー、装飾ミラー等に用いる裏面反射ミラーが開示されている。この特許文献2における裏面反射ミラーは、基板の片面に誘電体多層膜を設け、更にこの上に金属乃至半導体膜を設けて、上記誘電体多層膜を高屈折率物質膜と低屈折率物質膜とで構成するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平2−64601号公報
【特許文献2】特開平2−109003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような従来の裏面反射ミラーにあっては、可視光に対する裏面反射効率はそれ程高くはなく、90%を下回ってしまう、という問題があった。
特に、最近においては、液晶を利用した空間光変調素子を備え、この空間光変調素子に対して光源装置により照明し、空間光変調素子を経た変調光を結像させて画像表示を行う投射型プロジェクターのような画像表示装置が提案されているが、このような画像表示装置において使用されているインテグレータ光学系には生産性が高くて、且つ可視光域では裏面反射効率の高い裏面反射ミラーが求められており、上記した従来の裏面反射ミラーではこれに十分に対応することができない、といった問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、膜総数が少なくて生産性が高く、しかも、可視光に対する裏面反射効率が高い裏面反射ミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、光透過性を有する基板と、前記基板の光入射面である表面とは反対側の裏面に順次積層された第1誘電体層、第2誘電体層、第3誘電体層、第4誘電体層、及び反射層と、を有し、前記第1誘電体層及び前記第3誘電体層はTiO層或いはTaであり、前記第2誘電体層はSiO層であり、前記第4誘電体層はAl層或いはY層であり、前記反射層はAg層或いはAg合金層であることを特徴とする裏面反射ミラーある。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る裏面反射ミラーによれば、膜総数が少なくて生産性が高く、しかも、可視光に対する裏面反射効率を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明に係る裏面反射ミラーの好適一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る裏面反射ミラーを示す部分拡大断面図、図2はシミュレーションで求めた可視光に対する裏面反射効率を示すグラフである。
【0009】
図示するように、この裏面反射ミラーMは、可視光に対して透明な光透過性を有する基板2を有しており、この光入射面2a側から可視光Lが入射する。そして、この光入射面2aの反対側の面に、少なくとも、第1層(第1誘電体層)4と、第2層(第2誘電体層)6と、第3層(第3誘電体層)8と、第4層(第4誘電体層)10と、反射層12とを、この順序で積層する。ここでは、基板2の表面と第1層4との間に両者の密着性を向上させる密着層14を介在させて設けると共に、反射層12の上面には、この下層を保護するための保護層16を設けている。尚、上記基板2と第1層4との間の密着性が十分な場合には、上記密着層14は設けなくてもよいし、また、この裏面反射ミラーMの設置環境が良好な場合には、上記保護層16を設けなくてもよい。
【0010】
具体的には、まず上記基板2としてはガラス板等を用いることができる。また、上記第1層4としてはTiO 層或いはTa 層を用い、第2層6としてはSiO 層を用い、第3層8としてはTiO 層或いはTa 層を用い、第4層10としてはAl 層或いはY 層を用い、反射層12としてはAg層或いはAg合金層を用いる。
また上記密着層14としてはAl 層或いはY 層を用い、上記保護層16としてはSiO 層を用いることができる。
【0011】
上記各層の厚さに関しては、例えば第1層4が1nm〜60nmの範囲、第2層6が60nm〜100nmの範囲、第3層8が30nm〜60nmの範囲、第4層10が30nm〜60nmの範囲、反射層12が150nm〜300nmの範囲である。また密着層14が1nm〜60nmの範囲、保護層16が1nm〜5nmの範囲である。
【0012】
上記各層4〜16は、それぞれスパッタリング、真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)等を用いることによって成膜することができる。この場合、密着性を向上させるためには、成膜時にはできるだけ基板を加熱しながら形成することが望ましい。
【0013】
以上のようにして形成した裏面反射ミラーMは、可視光に対して略97%以上(基板2の特性を含まず)もの高い裏面反射効率を得ることができ、従来の裏面反射ミラーの裏面反射効率(例えば90%程度)と比較して本発明の裏面反射ミラーによれば、裏面反射効率を大幅に向上させることができる。
また基板2上に積層される層数は、5〜7層程度なので、膜総数もそれ程多くなく、従って、生産性を向上させることができる。
【0014】
ここで上記裏面反射ミラーMについて、シミュレーションにより可視光に対する裏面反射効率を求めたので、その結果について図2を参照して説明する。
図2に示すように、ここでは波長が400〜800nmの可視光に対して裏面反射効率を求めており、この結果、上記可視光の波長帯域の全ての領域において、裏面反射効率を97%以上にできることを確認することができた。
【0015】
ちなみに、図1に示す裏面反射ミラーMの構造の密着層14を設けないで、これを除去した構造の裏面反射ミラーについて裏面反射効率を求めたところ、密着性は僅かに低下したが、上記密着層14を設けた裏面反射ミラーと略同じ特性の裏面反射効率が得られることを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る裏面反射ミラーを示す部分拡大断面図である。
【図2】シミュレーションで求めた可視光に対する裏面反射効率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0017】
2…基板、4…第1層(第1誘電体層)、6…第2層(第2誘電体層)、8…第3層(第3誘電体層)、10…第4層(第4誘電体層)、12…反射層、14…密着層、16…保護層、L…可視光、M…裏面反射ミラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基板と、
前記基板の光入射面である表面とは反対側の裏面に順次積層された第1誘電体層、第2誘電体層、第3誘電体層、第4誘電体層、及び反射層と、
を有し、
前記第1誘電体層及び前記第3誘電体層はTiO層或いはTaであり、前記第2誘電体層はSiO層であり、前記第4誘電体層はAl層或いはY層であり、前記反射層はAg層或いはAg合金層であることを特徴とする裏面反射ミラー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−191273(P2008−191273A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23559(P2007−23559)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】