裕度PTC加熱エレメントを有する電気暖房装置
【課題】 本発明は、暖房能力が一様であるPTC加熱エレメントを備えた電気暖房装置を製造する労力を容易にするものである。
【解決手段】 乖離の異なるPTC加熱エレメントを選択し保管することを避けるため、本発明により、標準PTC加熱エレメントに比べ定格暖房能力が一様により低く、半分あるいは三分の一であることが好ましい追加の裕度PTC暖房装置素子を調製しておく。第2の標準化加熱エレメント、すなわち裕度PTC加熱エレメントを使用することにより、乖離の異なる多数のPTC加熱エレメントの保管が省かれ、製造をより廉価にできる。
【解決手段】 乖離の異なるPTC加熱エレメントを選択し保管することを避けるため、本発明により、標準PTC加熱エレメントに比べ定格暖房能力が一様により低く、半分あるいは三分の一であることが好ましい追加の裕度PTC暖房装置素子を調製しておく。第2の標準化加熱エレメント、すなわち裕度PTC加熱エレメントを使用することにより、乖離の異なる多数のPTC加熱エレメントの保管が省かれ、製造をより廉価にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気暖房装置に係り、具体的にはPTC加熱エレメントを含んだ自動車用追加暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内、特にエンジン消費が最適化され熱エネルギの発生が少量である自動車内での使用においては、乗客室とエンジンを暖めるため追加電気暖房装置が用いられる。図1に、自動車空調システム内でのこのような追加電気暖房装置の使用を概略的に示す。空調システムは、送風機3を介して外気2を吸入する。吸入空気は、蒸発器6と熱交換器7と電気暖房装置1を通って流れる。その後、被加熱空気4は対応する流出手段を介して車両の乗客室内へ導き入れられる。
【0003】
自動車内の電気追加暖房装置には、吸入空気へ熱を放散させる放熱エレメントと熱的に伝導連通するPTC加熱エレメントを用いるのが好ましい。PTC加熱エレメントと放熱エレメントの階層構造の配列全体は、通常、暖房装置の効率を増大させるために暖房装置内スクイズクランプ内に保持される。クランプにより、PTC加熱エレメントの電気的熱的な高い接触が達成される。
【0004】
PTC加熱エレメントは、電流供給時に加熱される一方、加熱エレメントの抵抗が増大する温度依存半導体抵抗器である。PTC加熱エレメントの自動調節特性によって、確実に過熱を防止することができる。
【0005】
電気暖房装置に使用するPTC加熱エレメントはセラミックで出来ており、平坦で概ね矩形の構造形状を有する。互いに対向する広い外面を介し、セラミック製ディスクへ電流が供給される。同時に、これらの表面を介して熱が放散される。このように、PTC加熱エレメントの広い表面は、隣接表面に対し熱的にだけでなく電気的にも良好な接続性を有する必要がある。
【0006】
電気暖房装置の定格暖房能力とは、しかるべき標準状態(例えば、0℃で300kg/hの空気流量)下で暖房装置が供給する暖房能力である。暖房装置が実際に供給する暖房能力は暖房装置内に挿入したPTC加熱エレメントの暖房能力の総和により、同様に暖房能力の総和は各PTC加熱エレメントの固有特性によって決まる。
【0007】
PTC加熱エレメントは通常、25℃での電気抵抗(R25値)と抵抗が急増する温度(転移温度)とによって特徴付けられる。PTC加熱エレメントの暖房能力は、固定電圧におけるPTC加熱エレメントの温度−抵抗特性の趨勢と密接に関係しており、暖房能力はPTCエレメントの(温度依存)電気抵抗にのみ依存するこのように、上記の標準的な条件下では、PTC加熱エレメントに関する個別「定格暖房能力」はR25値及び転移温度に関する定格値により特徴付けられるといえる。
【0008】
経済的な理由から、特性(R25値と転移温度)が同一のPTC加熱エレメント、すなわち同一の「定格暖房能力」のものが専ら使用されるが、これは単一の暖房装置あるいは所定種の暖房装置に対してではなく、一製造業者の全ての電気暖房装置に対してであることが好ましい。
【0009】
通常、暖房装置のPTC加熱エレメントは複数の個別選択可能な暖房ステージへ分配される。各暖房ステージは所定の定格暖房能力を達成するよう設計されており、そのため対応数のPTC加熱エレメントを有する。
【0010】
製法の違いに起因し、PTC加熱エレメントの固有特性ひいては実際に供給される暖房能力は、対応定格値からしばしば著しく乖離する。通常R25値の乖離は、35%から50%の範囲にある。乖離の平均値は種々の分量によって異なり、すなわちドーピング粉末量と焼結量とにより異なる。
【0011】
製法の違いに起因するPTC加熱エレメントのその定格暖房能力からの乖離に配慮し、暖房装置/暖房ステージの実際の暖房能力は所与の裕度範囲内で異なっていてもよい。暖房装置/暖房ステージで、それらの定格暖房能力からの乖離量が同一であるPTCエレメントのみを用いるのは最悪の場合である。この場合、暖房装置/暖房ステージの許容裕度限界を超過したり達成されたりしないよう、個別の乖離を集約する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、裕度限界を上回るあるいは下回る乖離を避けるために、乖離を補正するPTC加熱エレメントが一つの暖房装置/暖房ステージで組み合わされていた。このように異なる乖離を組み合わせることにより、暖房装置/暖房ステージの裕度に比べて比較的大きな乖離のPTC加熱エレメントを使用することができる。しかしながら、この手法の欠点は必要とされる選択と保管労力にある。つまり、まずPTC加熱エレメントの個々の乖離を確定しなければならない。その後、乖離が異なるPTC加熱エレメントを、一連の製造工程用に十分な部材数保管しておかねばならない。
【0013】
従って、本発明の一つの目的は、改善された構造の電気暖房装置とそれに対応する製造方法を提供することである。これにより連続した製造方法、例えば連鎖式製法において、それらの乖離ごとに分類された大量の部材数のPTC加熱エレメントを費用をかけて丹念に保管することを解消する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、独立請求項の特徴をもって達成される。
【0015】
本発明の具体的手法としては、電気暖房装置の製造において、ある固定標準暖房能力を有するPTC加熱エレメントに加え、ある単一の第2の所定の定格暖房能力を有するさらなるPTC加熱エレメントを採用する。使用するPTC加熱エレメントの標準的定格暖房能力が2種類のみであるため、電気暖房装置の大規模な製造を明らかに単純化することができる。所定の乖離のPTC加熱エレメントを十分な部材数、予め分類し保管することが解消される。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は自動車用の追加電気暖房装置に関する。暖房装置は、それぞれ少なくとも1個のPTC加熱エレメントを有する複数の暖房ステージを備え、前記PTC加熱エレメントは一様に第1の定格暖房能力を有する。さらに暖房装置は複数の放熱エレメントを備え、前記放熱エレメントを流れる媒体へ生成熱を放散させる。少なくとも一つの暖房ステージが、第1の定格暖房能力からの少なくとも1個のPTC加熱エレメントの暖房能力の乖離を補正する第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメントを含み、その乖離は製法の違いに起因するものである。この場合、第2の定格暖房能力は第1の定格暖房能力よりも低い。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は自動車用の追加電気暖房装置用の製造プロセスに関する。製造プロセスにおいて、電気暖房装置は複数階層のPTC加熱エレメントと放熱エレメントを流れる媒体へ熱を放散する放熱エレメントの階層構造を形成するよう組み立てられる。PTC加熱エレメントを含む各階層は、PTC加熱エレメントを少なくとも1個有する。全てのPTC加熱エレメントが、一様な定格暖房能力を有する。PTC加熱エレメントの第1の定格暖房能力に基づいて定められる一つの階層のPTC加熱エレメントの数は、第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメントを挿入するか、又は第1の定格暖房能力を有する一つのPTC加熱エレメントを第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメントでもって置き換えることで修正される。こうして、製法の違いに起因する少なくとも1個のPTC加熱エレメントの第1の定格暖房能力からの暖房能力乖離が、一つの階層にて補正される。この場合、第2の定格暖房能力は第1の定格暖房能力よりも低い。
【0018】
裕度PTC加熱エレメントの定格暖房能力は、標準PTC加熱エレメントの定格暖房能力とは明らかに異なる。裕度PTC加熱エレメントの定格暖房能力は標準PTC加熱エレメントの第1の定格暖房能力の何割かであるのが好都合であり、第1の定格暖房能力の半分か三分の一か四分の一であるのが好ましい。
【0019】
裕度PTC加熱エレメントの寸法は、標準PTC加熱エレメントの寸法に一致していることが好ましい。このことにより、裕度PTC加熱エレメントを暖房装置の既存の構造ならびに製造プロセスに組み込むことが特に容易になる。とりわけ、標準PTC加熱エレメント用に対して既に調製されている同一の位置決め手段を用いることができる。ここでは、裕度PTC加熱エレメントは、標準PTC加熱エレメントと同一の厚みと、特に同一の長さ及び/又は幅もまた有していると好都合である。
【0020】
標準PTC加熱エレメントの定格暖房能力は、50Wから100Wの間、特に70Wであるのが好ましい。
【0021】
電気暖房装置は、PTC加熱エレメントと放熱エレメントの階層構造からなるのが好ましい。
【0022】
一つの階層のPTC加熱エレメントは位置決めフレーム内に保持されるのが好ましい。ここで、本発明の特定の態様によれば、各位置決めフレームはPTC加熱エレメントを実際に挿入するための開口のみ有する。この目的を達成するため、PTC加熱エレメント用の開口の数が様々である位置決めフレームを調製しておき、製造過程でそれぞれ適当な位置決めフレームを選択することが好ましい。
【0023】
他の好適な実施形態によれば、一つの階層内の階層構造内にPTC加熱エレメント用の空間が定数備えられている。製造過程において、PTC加熱エレメントが不要な空間にはダミーエレメントが補充される。この種の構造を用いることで、各階層ごとのPTC加熱エレメントの数は簡単に変更でき、特に本発明によれば裕度PTC加熱エレメントを追加することができる。
【0024】
追加電気暖房装置は低電圧動作用、すなわち約120ボルト未満のオンボード電源用に設計されるのが好ましい。
【0025】
本発明の他の好都合な実施形態は、下位請求項の要旨である。
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。図面に詳細を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、裕度PTC加熱エレメントの使用により、一連の電気暖房装置生産のための製造プロセスを容易にするものである。裕度PTC加熱エレメントは暖房装置/暖房ステージの実際の暖房能力の乖離を補正することにより、実際の暖房能力が定格暖房能力から乖離するPTC加熱エレメントの従前の保管を解消する。
【0028】
本発明による裕度PTC加熱エレメントの使用は、暖房装置の構造形状とは無関係である。図2から図16に関連し、例として様々な暖房装置を説明する。これらの暖房装置に共通するのは、PTC加熱エレメントと放熱エレメントの階層構造を有する暖房通風調節装置である。しかしながら、本発明の適用は一例として挙げた実施形態に制限されるものではない。
【0029】
自動車での使用に特に適する電気暖房装置の第1の実施形態を、図2と図3に示す。図2に第1の実施形態の電気暖房装置の側面図を示し、図3に平面図を示す。暖房装置10は、加熱エレメントと放熱エレメント12を階層構造に配置した複数階層11の暖房通風調節装置を有する。放熱エレメント12を通って流れる媒体へ生成熱を放散する放熱エレメント12に隣接させて、加熱エレメントをそれぞれ配置する。
【0030】
図2と図3に示した暖房通風調節装置は、両側に配置した長手方向梁13とそれらに垂直に配置した側方梁14,15とからなるフレーム内に保持される。フレームの梁は、金属あるいはプラスチックから作られるのが好ましい。
【0031】
図2と図3に示した実施形態では、側方梁15は一側が開口するボックスとして形成されている。ボックス式の側方梁の開口は、暖房通風調節装置に対向する側にある。このボックス内には、PTC加熱エレメント(暖房ステージ)の個々の階層の熱放散を調整する制御装置を挿入することができる。制御装置を挿入した後、載置あるいは留めることのできる蓋を用いて、側方梁15の開口側が閉じられる。
【0032】
制御装置により個々の暖房ステージへ配給される出力は、接続ボルト16により暖房装置へ供給される。加えて、側方梁15は外部起動用のプラグベースを備える。外部制御信号は車載バスを介して供給されることが好ましい。
【0033】
個々の階層11内の、PTC加熱エレメントは、位置決め手段により保持される。この目的のため位置決めフレーム17を図4に示す。位置決めフレーム17は、対応する暖房装置階層11に設けた多数のPTCエレメント19に一致する数の開口18を有する。製造工程では、そのために、開口18の数が様々である位置決めフレーム17が調製される。
【0034】
暖房装置階層/暖房ステージの実際の暖房能力の補正は、本発明に従い、裕度PTC加熱エレメント19aを使用することによって行なうことができる。暖房装置/暖房ステージの実際の暖房能力が定格暖房能力よりも明らかに低い場合、追加挿入裕度PTC加熱エレメント19aによりその差分を補正し、総暖房能力を再度所定の裕度範囲内とすることができる。そのため、裕度PTC加熱エレメント19a用の追加開口18を有する位置決めフレーム17が使用される。定格暖房能力に比べ実際の暖房能力が極端に高い場合、本発明によればPTC加熱エレメント19の一つを裕度PTC加熱エレメント19aでもって置き換える。裕度PTC加熱エレメント19aの寸法がPTC加熱エレメント19とほぼ同じ場合には、位置決めフレーム17を換える必要はない。
【0035】
PTC加熱エレメント19とほぼ同じ寸法を有する裕度PTC加熱エレメント19aの実施形態は、従来の位置決めフレーム17をなお使用できることが特に有利な点である。裕度PTC加熱エレメント用の開口という特定の設計の追加位置決めフレームは、そこでは不要とされる。しかし、代案として、PTC加熱エレメント19とは別の構造形状を有する裕度PTC加熱エレメント19aもまた用いてもよい。しかしながら、この場合、位置決めフレーム17を対応するように調整し、裕度PTC加熱エレメント使用のための位置決めフレームをさらに保管する必要がある。
【0036】
位置決めフレームなしで済ますことのできる暖房装置の代替実施形態を、図5に示す。つまり本例の一つの階層11では、同一寸法を有する5個の部品がそれぞれ用いられる。所望の定格暖房能力に応じ、本例の場合、2個の標準PTC暖房能力エレメント19を中心位置と周縁位置に挿入し、2個のダミーエレメント19bを中心位置に隣接して挿入する。さらに、裕度PTC加熱エレメント19aを他の周縁位置に使用する。裕度PTC加熱エレメントが一切不要である場合、暖房ステージの設計に応じ、別のダミーエレメント又は標準PTC加熱エレメントを代わりに挿入する。同一寸法を有する部品を用いることにより、本発明による裕度PTC加熱エレメントの採用に関しての機器の調整は一切必要でなく、標準PTC加熱エレメントあるいはダミーエレメントの一つのいずれかを単に裕度PTC加熱エレメントで置き換えるものである。
【0037】
本発明は2種類のPTC加熱エレメント、すなわち普遍の所定の標準定格暖房能力を有する標準PTC加熱エレメント19と、予め規定されてはいるがそこから乖離した定格暖房能力を有する追加の裕度PTC加熱エレメント19aとのみを用いる。標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力は、50Wから100Wの範囲にあるのが好ましく、約70W台であるのが好ましい。
【0038】
裕度PTC加熱エレメント19aの定格暖房能力は、標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力の何割かであるのが好ましい。具体的には、裕度PTC加熱エレメント19aの定格暖房能力は標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力の半分又は三分の一にほぼ対応する、約25Wであるのが好ましい。標準PTC加熱エレメント19の実際の暖房能力の乖離と遵守対象である暖房装置/暖房ステージの裕度の平均量に応じ、裕度PTC加熱エレメント19aにより高いか又はより低い定格暖房能力も定めてもよい。製造工程において、挿入する裕度PTC加熱エレメントの定格暖房能力が、標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力とは異なる単一のものであることが最も重要である。このことにより、追加のコストと時間と労力を特に低くすることができる。
【0039】
同じ印加電圧で裕度PTC加熱エレメントの暖房能力を明確により低くするため、裕度PTC加熱エレメントの転移温度及びR25値は、標準PTC加熱エレメントと異なる。これは、製造業者が、焼結開始材料のドーピングを標準PTC加熱エレメントとは変えることにより達成される。裕度加熱エレメントとPTC加熱エレメントが同一の幾何学的寸法を有する場合であれば、特に異なるドーピングが必要である。
【0040】
各暖房ステージごとに、標準PTC加熱エレメント19の数と関係なく、裕度PTC加熱エレメント19aを最大一つのみ挿入する。図3の、PTC加熱エレメントを有する各階層11は、個々の暖房ステージを表していてもよい。しかしながら、幾つかの階層11を組み合わせて、一つの暖房ステージを形成してもよい。この場合、暖房ステージごとに最大でたった1個の裕度PTC加熱エレメントを、PTC加熱エレメントを有する複数階層11、すなわち暖房ステージの階層11に対し等しく挿入する。
【0041】
以下、本発明を暖房装置の他の実施形態と関連して説明する。図6から図9には、2個のプラスチックシェル21a,21bを組み立てた暖房装置20の製造が図示される。この構造には、製造過程中に第1のハウジングシェルを簡単に装備でき、続いて第2のシェルを配置することで暖房装置20を完成できるという特別な利点がある。
【0042】
製造工程の第1のステップを、図6に斜視図で示す。接触シート25と放熱エレメント23とそれらに隣接するPTC加熱エレメント22とが、シェル21a内に挿入される。組み立てを容易にするため、ガイドレールまたは位置決め手段が全ての構成要素に対しそれぞれ配設される。具体的には、接触プレート25の位置は挿入中に接触ピン25aとガイド25bを介して定められる(図7の接触プレート26にも同様のことが当てはまる)。放熱エレメント23は、波形の要素の形で設計されるのが好ましい。波形要素は片側に接触プレートを備える。波形要素23の接触プレートの端部の横方向に、ハウジングシェル内部にガイド23aが配設される。これらのガイドは組み立ての容易化にのみ役立つため、代替実施形態ではそれを省いてもよい。
【0043】
PTC加熱エレメント22の挿入を容易にし、かつ取り付けられた加熱エレメント22を互いに絶縁するため、位置決め手段24をシェル内に配設する。これらの位置決め手段は、異なる設計の暖房装置に主に対応するよう図5に関連して説明した位置決めフレームであってもよい。あるいは、位置決め手段は突起の形でもってハウジングの側方前部の長手方向支柱29へ固着させ、ハウジング内へ突出させていてもよい。
【0044】
図6に示した構造に対応して、図7に示すように、PTC加熱エレメント22の上方には、1個の放熱エレメント23と、プラグ接点26aを有する1個の接触プレート26とが順に配設される。
【0045】
第2のハウジングシェル21bは、こうして装備した第1のハウジングシェル21a上に配置することができる。ハウジングシェル21a,21bはどちらも、それらの分離線が、流れる空気の流路と共に2個の矩形ハウジング前面間のほぼ中間を延びるよう設計されることが好ましい。
【0046】
2個のハウジングシェルの組み立ては、対抗するシェルそれぞれの内に捕捉ピン38と対応孔39とを有するように双方のシェルを準備することで、特に容易にすることができる。シェルを合わせると両方のシェルは相互にロックされ、これにより第2のシェルが第1のシェル21a上に機械的に固定される。
【0047】
図6に、PTC加熱エレメント22用の複数の空間を示す。位置決めフレームを用いる場合、開口の数は実際の要求に可変的に適応できる。しかしながら、PTC加熱エレメント用の対応位置は長手方向リブ29に配設した突起により予め規定しておくことが好ましい。
【0048】
与えられた空間数よりも、実際に挿入するPTC加熱エレメント22の数が少ない場合、塞がっていない空間にはダミーエレメントを補充する。こうして、PTC加熱エレメントの実際の必要数に作業を適合させることができる。相応して、必要があれば、ダミーエレメントに代えて追加の裕度PTC加熱エレメントを挿入する。
【0049】
2個のハウジングシェルから組み立てた暖房装置を、図8に示す。各ハウジングの半体21a,21bは、矩形のハウジング前面に通って流れる空気用の開口を備える。好適な実施形態によれば、中心支柱29にハウジング内へ突出する位置決め手段を取り付ける。
【0050】
PTC加熱エレメントによる熱発生の効率をよくするため、ハウジング内のスクイズクランプ内に階層構造を保持する。このクランプは、追加ばね要素31により生じる。2個のハウジングシェル21a,21bを組み立てた後、ばね要素をハウジングの側方開口30内に挿入する。ハウジング内部と階層構造との間に、ハウジングの少なくとも頂部又は底部で、ばね要素31を挿入することが好ましい。しかしながら、この種のばね要素は階層構造内の他の任意の箇所に挿入してもよい。スクイズクランプを増やすために、複数のばね要素31を一つの暖房装置内へ挿入してもよい。
【0051】
ハウジングを変形させることなくハウジングがクランプ力を吸収できるようにするために、矩形ハウジング前面を機械的に補強する。交差支柱28と長手方向支柱29によるハウジング前面の機械的強化により、ハウジングは屈曲あるいは変形を伴うことなく十分に高いクランプ力を吸収することができる。
【0052】
交差支柱28と1つ以上の長手方向支柱29は、格子構造の形状であるのが好ましい。この種の格子構造を用いることにより、空気流量の障害を回避するように支柱自体の厚みを特に薄くすることができる。
【0053】
クランプ力を吸収するため、さらにハウジングシェル21a,21bの上面と底面を機械的に強化する。この目的のため、各シェルの上面と底面は突起36と凹み37を備える。この突起と凹みは、2個のハウジングシェルに対向して配置される。ハウジングシェルを組み立てると、それらは係合し、かくして上面と底面の機械的安定性を強化する。
【0054】
ハウジングが変形を伴うことなく高い締結力を吸収できるのは組み立てた後のみであるため、ばね要素31は組み立て後にのみ対応する開口30内に挿入される。この開口はハウジングの短辺に配設されるのが好ましい。開口30は、それらの組み立て時にハウジングシェル内の対応する凹部により形成する。
【0055】
ばね要素31は、クランプ圧力を生成する複数の個別ばねセグメント32を有する。
【0056】
図10から図13に、図6から図9に関連して説明した電気暖房装置の構造変形例を示す。これらの暖房装置は図6から図9に示した実施形態に比べ幅が狭いが、通気率をより高めるために断面積が大きい。この目的のため、図示の暖房装置はPTC加熱エレメントを複数階層11に備える。図6による実施形態とは対照的に、矩形PTC加熱エレメントはそれらの長手方向側面を矩形ハウジング前面と平行に配向する。特にこの暖房装置は、長手方向がより長いことによって、より多くの交差支柱28を有する。さらに、2個のばね要素31の使用が図示されており、ばね要素はハウジングの短辺側の上端と下端にそれぞれに挿入される。
【0057】
自動車内に装置を機械的に固定し、電気的接触をもたらすため、暖房通風調節装置には電気接点スタッド41a,42aが突出する側面にプラグアタッチメント45が配設してある。図11と図13に示したプラグアタッチメント45は、取り付け孔と、接点スタッド41a,22aを囲繞するプラグシュー45aとを備える機械的ストッパにより構成される。
【0058】
PTC加熱エレメント22を有する階層11を長手方向支柱29でシリコンシールにより封止し、湿気と土壌粒子の侵入を防ぐのが好ましい。製造中のシール取り付けを容易にするため、シリコンシールは支柱の格子構造に対応する形状であることが好ましい。このことによりシールを各ケースごとにまとめて挿入できるため、製造を特に容易にする。
【0059】
挿入される標準PTC加熱エレメントの実際の暖房能力に応じて標準及び裕度PTC加熱エレメントを備える、図13に示した電気暖房装置の機器の変形例を、図14から図16に示す。機器の変形例の選択を決定する上では、R25値、すなわち挿入する標準PTCエレメントの25℃における電気抵抗を考慮する。R25値がより低いということは、たとえ高温においても抵抗がより低く、従ってより高い暖房能力を得ることを意味する。逆もまた同様であり、R25値が高い場合にはより低い暖房能力を想定しうる。
【0060】
図14から図16に示す暖房装置は、3個の個別選択可能な暖房回路(HK1〜HK3)を備え、それぞれについて個別暖房能力裕度を遵守しなければならない。さらに、暖房回路を組み合わせた暖房能力(HK1+2+3)もまた所定の裕度範囲内になければならない。
【0061】
図14から図16に示した表は、裕度限界と各暖房回路用に挿入する標準及び裕度PTC加熱エレメントの数と、それらを用いて達成される実際の暖房能力の範囲をも示す。上部の図解はさらに、暖房装置内の標準及び裕度PTC加熱エレメントの空間的配置を示す。PTC加熱エレメントの最上層はここでは暖房回路1に対応しており、2個の中心層は暖房回路2に対応し、最下層は暖房回路3に対応している。
【0062】
図14は、R25値が2.10〜2.60オームで転移温度が約160℃である標準PTC加熱エレメントを備える暖房装置の変形例を示す。第1の暖房回路では、標準PTC加熱エレメントを4個用い、例えば標準PTC加熱エレメントごとに約75W、それらが合わさって300〜330Wを供給する。この暖房能力は、245〜350Wの所定の裕度範囲内にある。
【0063】
第2の暖房回路については、暖房能力裕度範囲は300〜420Wであり、従ってここでは4個の標準PTC加熱エレメントに加えて2個の裕度PTC加熱エレメントが用いられる。裕度PTC加熱エレメントは、転移温度が明確により低い130〜150℃であるだけでなく、R25値が明確により高い約8オームであることにより、すなわち定格暖房能力がそれぞれ、より低いほぼ約25Wであることにより、標準PTCエレメントとは異なる。総暖房能力に対する貢献が小さいので、裕度PTC加熱エレメントを用いることで製法の違いに起因する裕度を無視することができる。この組み合わせにより得られる実際の暖房能力は、350〜380Wの範囲である。
【0064】
第3の暖房回路については、暖房能力裕度範囲は270〜382Wである。従ってここでは、第1の暖房回路と同じく4個の標準PTC加熱エレメントを使用し、それらが合わさって必要な300〜330Wの暖房能力を供給する。
【0065】
つまり、暖房装置は全部で12個の標準PTC加熱エレメントと2個の裕度PTC加熱エレメントを含み、それらが合わさって960〜1030Wの暖房能力を供給し、かくして900〜1050Wの裕度限界が遵守される。
【0066】
図15に、R25値が2.61〜2.90オームの間である標準PTC加熱エレメント用に選択すべき機器の変形例を示す。図14に比べR25値が高いため、これら標準PTC加熱エレメントそれぞれの実際の暖房能力はより低い約70Wであるので、総暖房能力に対する裕度要求を満たすために別の装備を選択しなければならない。図15の表から見て取れるように、このようにして4個の標準、及び1個の裕度PTC加熱エレメントを暖房回路1、3各々に使用する。暖房回路2は5個の標準PTC加熱エレメントを含み、従って総暖房能力は950〜1000Wの範囲である。
【0067】
最後に図16は、R25値が2.38〜2.60オームの、裕度範囲がより厳しい標準PTC加熱エレメントのための装置変形例を示す。図14に比べ、R25裕度範囲の下限がより高いため、個々のPTC加熱エレメントの実際の暖房能力は平均してより低いものとなる。図14に示した装置とは異なるので、暖房能力が合わせて約50Wである2個の裕度PTC加熱エレメントを、裕度要求に応えることができるよう暖房能力が約70Wである標準PTC暖房能力エレメントにより置き換える。
【0068】
すなわち本発明によって、暖房能力が一様であるPTC加熱エレメントを備えた電気暖房装置を製造する労力を、著しく容易にすることができる。製法の差異に起因する定格暖房能力の誤差を補正できるようにするため、従来は逆の乖離を有する多数のPTC加熱エレメントを保管していた。乖離を適切に組み合わせても、暖房装置/暖房ステージの実際の総暖房能力の厳しい裕度を遵守できる。異なる乖離を選択し保管することを避けるため、本発明により、標準PTC加熱エレメントに比べ定格暖房能力が一様により低く、半分あるいは三分の一であることが好ましい追加の裕度PTC暖房装置素子を調製しておく。。第2の標準化加熱エレメント、すなわち裕度PTC加熱エレメントを使用することにより、乖離の異なる多数のPTC加熱エレメントの保管が省かれ、製造をより廉価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】電気暖房装置を備えた自動車用空調システムを示す概略図である。
【図2】電気暖房装置の第1の構造形状を示す側面図である。
【図3】第1の構造形状による電気暖房装置の平面図である。
【図4】第1の構造形状による電気暖房装置内にPTC加熱エレメントを位置決めする位置決めフレームを示す図である。
【図5】標準PTC加熱エレメントとダミーエレメントと裕度PTC加熱エレメントと一体となった放熱エレメントを示す斜視図である。
【図6】第2の構造形状による電気暖房装置の一部装備されたハウジングシェルを示す斜視図である。
【図7】第2の構造形状による暖房装置のハウジングの一部装備されたハウジングシェルを示すさらなる斜視図である。
【図8】2個のハウジングシェルから組み立てた第2の構造形状による電気暖房装置を示す斜視図である。
【図9】部分挿入ばね要素を有する第2の構造形状による電気暖房装置を示す斜視図である。
【図10】異なる構造を有する第2の構造形状の暖房装置を示す斜視図である。
【図11】図10の暖房装置の構造を示すさらなる斜視図である。
【図12】図10の暖房装置を示す部分斜視図である。
【図13】第2の構造形状の電気暖房装置のさらに異なる構造を示す斜視図である。
【図14】標準PTC加熱エレメントと裕度PTCエレメントとを有する図13の電気暖房装置の機器の変形例を示す図である。
【図15】標準PTC加熱エレメントと裕度PTCエレメントとを有する図13の電気暖房装置の機器の別の変形例を示す図である。
【図16】標準PTC加熱エレメントを有する図13の電気暖房装置の機器の別の変形例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は電気暖房装置に係り、具体的にはPTC加熱エレメントを含んだ自動車用追加暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内、特にエンジン消費が最適化され熱エネルギの発生が少量である自動車内での使用においては、乗客室とエンジンを暖めるため追加電気暖房装置が用いられる。図1に、自動車空調システム内でのこのような追加電気暖房装置の使用を概略的に示す。空調システムは、送風機3を介して外気2を吸入する。吸入空気は、蒸発器6と熱交換器7と電気暖房装置1を通って流れる。その後、被加熱空気4は対応する流出手段を介して車両の乗客室内へ導き入れられる。
【0003】
自動車内の電気追加暖房装置には、吸入空気へ熱を放散させる放熱エレメントと熱的に伝導連通するPTC加熱エレメントを用いるのが好ましい。PTC加熱エレメントと放熱エレメントの階層構造の配列全体は、通常、暖房装置の効率を増大させるために暖房装置内スクイズクランプ内に保持される。クランプにより、PTC加熱エレメントの電気的熱的な高い接触が達成される。
【0004】
PTC加熱エレメントは、電流供給時に加熱される一方、加熱エレメントの抵抗が増大する温度依存半導体抵抗器である。PTC加熱エレメントの自動調節特性によって、確実に過熱を防止することができる。
【0005】
電気暖房装置に使用するPTC加熱エレメントはセラミックで出来ており、平坦で概ね矩形の構造形状を有する。互いに対向する広い外面を介し、セラミック製ディスクへ電流が供給される。同時に、これらの表面を介して熱が放散される。このように、PTC加熱エレメントの広い表面は、隣接表面に対し熱的にだけでなく電気的にも良好な接続性を有する必要がある。
【0006】
電気暖房装置の定格暖房能力とは、しかるべき標準状態(例えば、0℃で300kg/hの空気流量)下で暖房装置が供給する暖房能力である。暖房装置が実際に供給する暖房能力は暖房装置内に挿入したPTC加熱エレメントの暖房能力の総和により、同様に暖房能力の総和は各PTC加熱エレメントの固有特性によって決まる。
【0007】
PTC加熱エレメントは通常、25℃での電気抵抗(R25値)と抵抗が急増する温度(転移温度)とによって特徴付けられる。PTC加熱エレメントの暖房能力は、固定電圧におけるPTC加熱エレメントの温度−抵抗特性の趨勢と密接に関係しており、暖房能力はPTCエレメントの(温度依存)電気抵抗にのみ依存するこのように、上記の標準的な条件下では、PTC加熱エレメントに関する個別「定格暖房能力」はR25値及び転移温度に関する定格値により特徴付けられるといえる。
【0008】
経済的な理由から、特性(R25値と転移温度)が同一のPTC加熱エレメント、すなわち同一の「定格暖房能力」のものが専ら使用されるが、これは単一の暖房装置あるいは所定種の暖房装置に対してではなく、一製造業者の全ての電気暖房装置に対してであることが好ましい。
【0009】
通常、暖房装置のPTC加熱エレメントは複数の個別選択可能な暖房ステージへ分配される。各暖房ステージは所定の定格暖房能力を達成するよう設計されており、そのため対応数のPTC加熱エレメントを有する。
【0010】
製法の違いに起因し、PTC加熱エレメントの固有特性ひいては実際に供給される暖房能力は、対応定格値からしばしば著しく乖離する。通常R25値の乖離は、35%から50%の範囲にある。乖離の平均値は種々の分量によって異なり、すなわちドーピング粉末量と焼結量とにより異なる。
【0011】
製法の違いに起因するPTC加熱エレメントのその定格暖房能力からの乖離に配慮し、暖房装置/暖房ステージの実際の暖房能力は所与の裕度範囲内で異なっていてもよい。暖房装置/暖房ステージで、それらの定格暖房能力からの乖離量が同一であるPTCエレメントのみを用いるのは最悪の場合である。この場合、暖房装置/暖房ステージの許容裕度限界を超過したり達成されたりしないよう、個別の乖離を集約する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、裕度限界を上回るあるいは下回る乖離を避けるために、乖離を補正するPTC加熱エレメントが一つの暖房装置/暖房ステージで組み合わされていた。このように異なる乖離を組み合わせることにより、暖房装置/暖房ステージの裕度に比べて比較的大きな乖離のPTC加熱エレメントを使用することができる。しかしながら、この手法の欠点は必要とされる選択と保管労力にある。つまり、まずPTC加熱エレメントの個々の乖離を確定しなければならない。その後、乖離が異なるPTC加熱エレメントを、一連の製造工程用に十分な部材数保管しておかねばならない。
【0013】
従って、本発明の一つの目的は、改善された構造の電気暖房装置とそれに対応する製造方法を提供することである。これにより連続した製造方法、例えば連鎖式製法において、それらの乖離ごとに分類された大量の部材数のPTC加熱エレメントを費用をかけて丹念に保管することを解消する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、独立請求項の特徴をもって達成される。
【0015】
本発明の具体的手法としては、電気暖房装置の製造において、ある固定標準暖房能力を有するPTC加熱エレメントに加え、ある単一の第2の所定の定格暖房能力を有するさらなるPTC加熱エレメントを採用する。使用するPTC加熱エレメントの標準的定格暖房能力が2種類のみであるため、電気暖房装置の大規模な製造を明らかに単純化することができる。所定の乖離のPTC加熱エレメントを十分な部材数、予め分類し保管することが解消される。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は自動車用の追加電気暖房装置に関する。暖房装置は、それぞれ少なくとも1個のPTC加熱エレメントを有する複数の暖房ステージを備え、前記PTC加熱エレメントは一様に第1の定格暖房能力を有する。さらに暖房装置は複数の放熱エレメントを備え、前記放熱エレメントを流れる媒体へ生成熱を放散させる。少なくとも一つの暖房ステージが、第1の定格暖房能力からの少なくとも1個のPTC加熱エレメントの暖房能力の乖離を補正する第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメントを含み、その乖離は製法の違いに起因するものである。この場合、第2の定格暖房能力は第1の定格暖房能力よりも低い。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は自動車用の追加電気暖房装置用の製造プロセスに関する。製造プロセスにおいて、電気暖房装置は複数階層のPTC加熱エレメントと放熱エレメントを流れる媒体へ熱を放散する放熱エレメントの階層構造を形成するよう組み立てられる。PTC加熱エレメントを含む各階層は、PTC加熱エレメントを少なくとも1個有する。全てのPTC加熱エレメントが、一様な定格暖房能力を有する。PTC加熱エレメントの第1の定格暖房能力に基づいて定められる一つの階層のPTC加熱エレメントの数は、第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメントを挿入するか、又は第1の定格暖房能力を有する一つのPTC加熱エレメントを第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメントでもって置き換えることで修正される。こうして、製法の違いに起因する少なくとも1個のPTC加熱エレメントの第1の定格暖房能力からの暖房能力乖離が、一つの階層にて補正される。この場合、第2の定格暖房能力は第1の定格暖房能力よりも低い。
【0018】
裕度PTC加熱エレメントの定格暖房能力は、標準PTC加熱エレメントの定格暖房能力とは明らかに異なる。裕度PTC加熱エレメントの定格暖房能力は標準PTC加熱エレメントの第1の定格暖房能力の何割かであるのが好都合であり、第1の定格暖房能力の半分か三分の一か四分の一であるのが好ましい。
【0019】
裕度PTC加熱エレメントの寸法は、標準PTC加熱エレメントの寸法に一致していることが好ましい。このことにより、裕度PTC加熱エレメントを暖房装置の既存の構造ならびに製造プロセスに組み込むことが特に容易になる。とりわけ、標準PTC加熱エレメント用に対して既に調製されている同一の位置決め手段を用いることができる。ここでは、裕度PTC加熱エレメントは、標準PTC加熱エレメントと同一の厚みと、特に同一の長さ及び/又は幅もまた有していると好都合である。
【0020】
標準PTC加熱エレメントの定格暖房能力は、50Wから100Wの間、特に70Wであるのが好ましい。
【0021】
電気暖房装置は、PTC加熱エレメントと放熱エレメントの階層構造からなるのが好ましい。
【0022】
一つの階層のPTC加熱エレメントは位置決めフレーム内に保持されるのが好ましい。ここで、本発明の特定の態様によれば、各位置決めフレームはPTC加熱エレメントを実際に挿入するための開口のみ有する。この目的を達成するため、PTC加熱エレメント用の開口の数が様々である位置決めフレームを調製しておき、製造過程でそれぞれ適当な位置決めフレームを選択することが好ましい。
【0023】
他の好適な実施形態によれば、一つの階層内の階層構造内にPTC加熱エレメント用の空間が定数備えられている。製造過程において、PTC加熱エレメントが不要な空間にはダミーエレメントが補充される。この種の構造を用いることで、各階層ごとのPTC加熱エレメントの数は簡単に変更でき、特に本発明によれば裕度PTC加熱エレメントを追加することができる。
【0024】
追加電気暖房装置は低電圧動作用、すなわち約120ボルト未満のオンボード電源用に設計されるのが好ましい。
【0025】
本発明の他の好都合な実施形態は、下位請求項の要旨である。
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。図面に詳細を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、裕度PTC加熱エレメントの使用により、一連の電気暖房装置生産のための製造プロセスを容易にするものである。裕度PTC加熱エレメントは暖房装置/暖房ステージの実際の暖房能力の乖離を補正することにより、実際の暖房能力が定格暖房能力から乖離するPTC加熱エレメントの従前の保管を解消する。
【0028】
本発明による裕度PTC加熱エレメントの使用は、暖房装置の構造形状とは無関係である。図2から図16に関連し、例として様々な暖房装置を説明する。これらの暖房装置に共通するのは、PTC加熱エレメントと放熱エレメントの階層構造を有する暖房通風調節装置である。しかしながら、本発明の適用は一例として挙げた実施形態に制限されるものではない。
【0029】
自動車での使用に特に適する電気暖房装置の第1の実施形態を、図2と図3に示す。図2に第1の実施形態の電気暖房装置の側面図を示し、図3に平面図を示す。暖房装置10は、加熱エレメントと放熱エレメント12を階層構造に配置した複数階層11の暖房通風調節装置を有する。放熱エレメント12を通って流れる媒体へ生成熱を放散する放熱エレメント12に隣接させて、加熱エレメントをそれぞれ配置する。
【0030】
図2と図3に示した暖房通風調節装置は、両側に配置した長手方向梁13とそれらに垂直に配置した側方梁14,15とからなるフレーム内に保持される。フレームの梁は、金属あるいはプラスチックから作られるのが好ましい。
【0031】
図2と図3に示した実施形態では、側方梁15は一側が開口するボックスとして形成されている。ボックス式の側方梁の開口は、暖房通風調節装置に対向する側にある。このボックス内には、PTC加熱エレメント(暖房ステージ)の個々の階層の熱放散を調整する制御装置を挿入することができる。制御装置を挿入した後、載置あるいは留めることのできる蓋を用いて、側方梁15の開口側が閉じられる。
【0032】
制御装置により個々の暖房ステージへ配給される出力は、接続ボルト16により暖房装置へ供給される。加えて、側方梁15は外部起動用のプラグベースを備える。外部制御信号は車載バスを介して供給されることが好ましい。
【0033】
個々の階層11内の、PTC加熱エレメントは、位置決め手段により保持される。この目的のため位置決めフレーム17を図4に示す。位置決めフレーム17は、対応する暖房装置階層11に設けた多数のPTCエレメント19に一致する数の開口18を有する。製造工程では、そのために、開口18の数が様々である位置決めフレーム17が調製される。
【0034】
暖房装置階層/暖房ステージの実際の暖房能力の補正は、本発明に従い、裕度PTC加熱エレメント19aを使用することによって行なうことができる。暖房装置/暖房ステージの実際の暖房能力が定格暖房能力よりも明らかに低い場合、追加挿入裕度PTC加熱エレメント19aによりその差分を補正し、総暖房能力を再度所定の裕度範囲内とすることができる。そのため、裕度PTC加熱エレメント19a用の追加開口18を有する位置決めフレーム17が使用される。定格暖房能力に比べ実際の暖房能力が極端に高い場合、本発明によればPTC加熱エレメント19の一つを裕度PTC加熱エレメント19aでもって置き換える。裕度PTC加熱エレメント19aの寸法がPTC加熱エレメント19とほぼ同じ場合には、位置決めフレーム17を換える必要はない。
【0035】
PTC加熱エレメント19とほぼ同じ寸法を有する裕度PTC加熱エレメント19aの実施形態は、従来の位置決めフレーム17をなお使用できることが特に有利な点である。裕度PTC加熱エレメント用の開口という特定の設計の追加位置決めフレームは、そこでは不要とされる。しかし、代案として、PTC加熱エレメント19とは別の構造形状を有する裕度PTC加熱エレメント19aもまた用いてもよい。しかしながら、この場合、位置決めフレーム17を対応するように調整し、裕度PTC加熱エレメント使用のための位置決めフレームをさらに保管する必要がある。
【0036】
位置決めフレームなしで済ますことのできる暖房装置の代替実施形態を、図5に示す。つまり本例の一つの階層11では、同一寸法を有する5個の部品がそれぞれ用いられる。所望の定格暖房能力に応じ、本例の場合、2個の標準PTC暖房能力エレメント19を中心位置と周縁位置に挿入し、2個のダミーエレメント19bを中心位置に隣接して挿入する。さらに、裕度PTC加熱エレメント19aを他の周縁位置に使用する。裕度PTC加熱エレメントが一切不要である場合、暖房ステージの設計に応じ、別のダミーエレメント又は標準PTC加熱エレメントを代わりに挿入する。同一寸法を有する部品を用いることにより、本発明による裕度PTC加熱エレメントの採用に関しての機器の調整は一切必要でなく、標準PTC加熱エレメントあるいはダミーエレメントの一つのいずれかを単に裕度PTC加熱エレメントで置き換えるものである。
【0037】
本発明は2種類のPTC加熱エレメント、すなわち普遍の所定の標準定格暖房能力を有する標準PTC加熱エレメント19と、予め規定されてはいるがそこから乖離した定格暖房能力を有する追加の裕度PTC加熱エレメント19aとのみを用いる。標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力は、50Wから100Wの範囲にあるのが好ましく、約70W台であるのが好ましい。
【0038】
裕度PTC加熱エレメント19aの定格暖房能力は、標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力の何割かであるのが好ましい。具体的には、裕度PTC加熱エレメント19aの定格暖房能力は標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力の半分又は三分の一にほぼ対応する、約25Wであるのが好ましい。標準PTC加熱エレメント19の実際の暖房能力の乖離と遵守対象である暖房装置/暖房ステージの裕度の平均量に応じ、裕度PTC加熱エレメント19aにより高いか又はより低い定格暖房能力も定めてもよい。製造工程において、挿入する裕度PTC加熱エレメントの定格暖房能力が、標準PTC加熱エレメント19の定格暖房能力とは異なる単一のものであることが最も重要である。このことにより、追加のコストと時間と労力を特に低くすることができる。
【0039】
同じ印加電圧で裕度PTC加熱エレメントの暖房能力を明確により低くするため、裕度PTC加熱エレメントの転移温度及びR25値は、標準PTC加熱エレメントと異なる。これは、製造業者が、焼結開始材料のドーピングを標準PTC加熱エレメントとは変えることにより達成される。裕度加熱エレメントとPTC加熱エレメントが同一の幾何学的寸法を有する場合であれば、特に異なるドーピングが必要である。
【0040】
各暖房ステージごとに、標準PTC加熱エレメント19の数と関係なく、裕度PTC加熱エレメント19aを最大一つのみ挿入する。図3の、PTC加熱エレメントを有する各階層11は、個々の暖房ステージを表していてもよい。しかしながら、幾つかの階層11を組み合わせて、一つの暖房ステージを形成してもよい。この場合、暖房ステージごとに最大でたった1個の裕度PTC加熱エレメントを、PTC加熱エレメントを有する複数階層11、すなわち暖房ステージの階層11に対し等しく挿入する。
【0041】
以下、本発明を暖房装置の他の実施形態と関連して説明する。図6から図9には、2個のプラスチックシェル21a,21bを組み立てた暖房装置20の製造が図示される。この構造には、製造過程中に第1のハウジングシェルを簡単に装備でき、続いて第2のシェルを配置することで暖房装置20を完成できるという特別な利点がある。
【0042】
製造工程の第1のステップを、図6に斜視図で示す。接触シート25と放熱エレメント23とそれらに隣接するPTC加熱エレメント22とが、シェル21a内に挿入される。組み立てを容易にするため、ガイドレールまたは位置決め手段が全ての構成要素に対しそれぞれ配設される。具体的には、接触プレート25の位置は挿入中に接触ピン25aとガイド25bを介して定められる(図7の接触プレート26にも同様のことが当てはまる)。放熱エレメント23は、波形の要素の形で設計されるのが好ましい。波形要素は片側に接触プレートを備える。波形要素23の接触プレートの端部の横方向に、ハウジングシェル内部にガイド23aが配設される。これらのガイドは組み立ての容易化にのみ役立つため、代替実施形態ではそれを省いてもよい。
【0043】
PTC加熱エレメント22の挿入を容易にし、かつ取り付けられた加熱エレメント22を互いに絶縁するため、位置決め手段24をシェル内に配設する。これらの位置決め手段は、異なる設計の暖房装置に主に対応するよう図5に関連して説明した位置決めフレームであってもよい。あるいは、位置決め手段は突起の形でもってハウジングの側方前部の長手方向支柱29へ固着させ、ハウジング内へ突出させていてもよい。
【0044】
図6に示した構造に対応して、図7に示すように、PTC加熱エレメント22の上方には、1個の放熱エレメント23と、プラグ接点26aを有する1個の接触プレート26とが順に配設される。
【0045】
第2のハウジングシェル21bは、こうして装備した第1のハウジングシェル21a上に配置することができる。ハウジングシェル21a,21bはどちらも、それらの分離線が、流れる空気の流路と共に2個の矩形ハウジング前面間のほぼ中間を延びるよう設計されることが好ましい。
【0046】
2個のハウジングシェルの組み立ては、対抗するシェルそれぞれの内に捕捉ピン38と対応孔39とを有するように双方のシェルを準備することで、特に容易にすることができる。シェルを合わせると両方のシェルは相互にロックされ、これにより第2のシェルが第1のシェル21a上に機械的に固定される。
【0047】
図6に、PTC加熱エレメント22用の複数の空間を示す。位置決めフレームを用いる場合、開口の数は実際の要求に可変的に適応できる。しかしながら、PTC加熱エレメント用の対応位置は長手方向リブ29に配設した突起により予め規定しておくことが好ましい。
【0048】
与えられた空間数よりも、実際に挿入するPTC加熱エレメント22の数が少ない場合、塞がっていない空間にはダミーエレメントを補充する。こうして、PTC加熱エレメントの実際の必要数に作業を適合させることができる。相応して、必要があれば、ダミーエレメントに代えて追加の裕度PTC加熱エレメントを挿入する。
【0049】
2個のハウジングシェルから組み立てた暖房装置を、図8に示す。各ハウジングの半体21a,21bは、矩形のハウジング前面に通って流れる空気用の開口を備える。好適な実施形態によれば、中心支柱29にハウジング内へ突出する位置決め手段を取り付ける。
【0050】
PTC加熱エレメントによる熱発生の効率をよくするため、ハウジング内のスクイズクランプ内に階層構造を保持する。このクランプは、追加ばね要素31により生じる。2個のハウジングシェル21a,21bを組み立てた後、ばね要素をハウジングの側方開口30内に挿入する。ハウジング内部と階層構造との間に、ハウジングの少なくとも頂部又は底部で、ばね要素31を挿入することが好ましい。しかしながら、この種のばね要素は階層構造内の他の任意の箇所に挿入してもよい。スクイズクランプを増やすために、複数のばね要素31を一つの暖房装置内へ挿入してもよい。
【0051】
ハウジングを変形させることなくハウジングがクランプ力を吸収できるようにするために、矩形ハウジング前面を機械的に補強する。交差支柱28と長手方向支柱29によるハウジング前面の機械的強化により、ハウジングは屈曲あるいは変形を伴うことなく十分に高いクランプ力を吸収することができる。
【0052】
交差支柱28と1つ以上の長手方向支柱29は、格子構造の形状であるのが好ましい。この種の格子構造を用いることにより、空気流量の障害を回避するように支柱自体の厚みを特に薄くすることができる。
【0053】
クランプ力を吸収するため、さらにハウジングシェル21a,21bの上面と底面を機械的に強化する。この目的のため、各シェルの上面と底面は突起36と凹み37を備える。この突起と凹みは、2個のハウジングシェルに対向して配置される。ハウジングシェルを組み立てると、それらは係合し、かくして上面と底面の機械的安定性を強化する。
【0054】
ハウジングが変形を伴うことなく高い締結力を吸収できるのは組み立てた後のみであるため、ばね要素31は組み立て後にのみ対応する開口30内に挿入される。この開口はハウジングの短辺に配設されるのが好ましい。開口30は、それらの組み立て時にハウジングシェル内の対応する凹部により形成する。
【0055】
ばね要素31は、クランプ圧力を生成する複数の個別ばねセグメント32を有する。
【0056】
図10から図13に、図6から図9に関連して説明した電気暖房装置の構造変形例を示す。これらの暖房装置は図6から図9に示した実施形態に比べ幅が狭いが、通気率をより高めるために断面積が大きい。この目的のため、図示の暖房装置はPTC加熱エレメントを複数階層11に備える。図6による実施形態とは対照的に、矩形PTC加熱エレメントはそれらの長手方向側面を矩形ハウジング前面と平行に配向する。特にこの暖房装置は、長手方向がより長いことによって、より多くの交差支柱28を有する。さらに、2個のばね要素31の使用が図示されており、ばね要素はハウジングの短辺側の上端と下端にそれぞれに挿入される。
【0057】
自動車内に装置を機械的に固定し、電気的接触をもたらすため、暖房通風調節装置には電気接点スタッド41a,42aが突出する側面にプラグアタッチメント45が配設してある。図11と図13に示したプラグアタッチメント45は、取り付け孔と、接点スタッド41a,22aを囲繞するプラグシュー45aとを備える機械的ストッパにより構成される。
【0058】
PTC加熱エレメント22を有する階層11を長手方向支柱29でシリコンシールにより封止し、湿気と土壌粒子の侵入を防ぐのが好ましい。製造中のシール取り付けを容易にするため、シリコンシールは支柱の格子構造に対応する形状であることが好ましい。このことによりシールを各ケースごとにまとめて挿入できるため、製造を特に容易にする。
【0059】
挿入される標準PTC加熱エレメントの実際の暖房能力に応じて標準及び裕度PTC加熱エレメントを備える、図13に示した電気暖房装置の機器の変形例を、図14から図16に示す。機器の変形例の選択を決定する上では、R25値、すなわち挿入する標準PTCエレメントの25℃における電気抵抗を考慮する。R25値がより低いということは、たとえ高温においても抵抗がより低く、従ってより高い暖房能力を得ることを意味する。逆もまた同様であり、R25値が高い場合にはより低い暖房能力を想定しうる。
【0060】
図14から図16に示す暖房装置は、3個の個別選択可能な暖房回路(HK1〜HK3)を備え、それぞれについて個別暖房能力裕度を遵守しなければならない。さらに、暖房回路を組み合わせた暖房能力(HK1+2+3)もまた所定の裕度範囲内になければならない。
【0061】
図14から図16に示した表は、裕度限界と各暖房回路用に挿入する標準及び裕度PTC加熱エレメントの数と、それらを用いて達成される実際の暖房能力の範囲をも示す。上部の図解はさらに、暖房装置内の標準及び裕度PTC加熱エレメントの空間的配置を示す。PTC加熱エレメントの最上層はここでは暖房回路1に対応しており、2個の中心層は暖房回路2に対応し、最下層は暖房回路3に対応している。
【0062】
図14は、R25値が2.10〜2.60オームで転移温度が約160℃である標準PTC加熱エレメントを備える暖房装置の変形例を示す。第1の暖房回路では、標準PTC加熱エレメントを4個用い、例えば標準PTC加熱エレメントごとに約75W、それらが合わさって300〜330Wを供給する。この暖房能力は、245〜350Wの所定の裕度範囲内にある。
【0063】
第2の暖房回路については、暖房能力裕度範囲は300〜420Wであり、従ってここでは4個の標準PTC加熱エレメントに加えて2個の裕度PTC加熱エレメントが用いられる。裕度PTC加熱エレメントは、転移温度が明確により低い130〜150℃であるだけでなく、R25値が明確により高い約8オームであることにより、すなわち定格暖房能力がそれぞれ、より低いほぼ約25Wであることにより、標準PTCエレメントとは異なる。総暖房能力に対する貢献が小さいので、裕度PTC加熱エレメントを用いることで製法の違いに起因する裕度を無視することができる。この組み合わせにより得られる実際の暖房能力は、350〜380Wの範囲である。
【0064】
第3の暖房回路については、暖房能力裕度範囲は270〜382Wである。従ってここでは、第1の暖房回路と同じく4個の標準PTC加熱エレメントを使用し、それらが合わさって必要な300〜330Wの暖房能力を供給する。
【0065】
つまり、暖房装置は全部で12個の標準PTC加熱エレメントと2個の裕度PTC加熱エレメントを含み、それらが合わさって960〜1030Wの暖房能力を供給し、かくして900〜1050Wの裕度限界が遵守される。
【0066】
図15に、R25値が2.61〜2.90オームの間である標準PTC加熱エレメント用に選択すべき機器の変形例を示す。図14に比べR25値が高いため、これら標準PTC加熱エレメントそれぞれの実際の暖房能力はより低い約70Wであるので、総暖房能力に対する裕度要求を満たすために別の装備を選択しなければならない。図15の表から見て取れるように、このようにして4個の標準、及び1個の裕度PTC加熱エレメントを暖房回路1、3各々に使用する。暖房回路2は5個の標準PTC加熱エレメントを含み、従って総暖房能力は950〜1000Wの範囲である。
【0067】
最後に図16は、R25値が2.38〜2.60オームの、裕度範囲がより厳しい標準PTC加熱エレメントのための装置変形例を示す。図14に比べ、R25裕度範囲の下限がより高いため、個々のPTC加熱エレメントの実際の暖房能力は平均してより低いものとなる。図14に示した装置とは異なるので、暖房能力が合わせて約50Wである2個の裕度PTC加熱エレメントを、裕度要求に応えることができるよう暖房能力が約70Wである標準PTC暖房能力エレメントにより置き換える。
【0068】
すなわち本発明によって、暖房能力が一様であるPTC加熱エレメントを備えた電気暖房装置を製造する労力を、著しく容易にすることができる。製法の差異に起因する定格暖房能力の誤差を補正できるようにするため、従来は逆の乖離を有する多数のPTC加熱エレメントを保管していた。乖離を適切に組み合わせても、暖房装置/暖房ステージの実際の総暖房能力の厳しい裕度を遵守できる。異なる乖離を選択し保管することを避けるため、本発明により、標準PTC加熱エレメントに比べ定格暖房能力が一様により低く、半分あるいは三分の一であることが好ましい追加の裕度PTC暖房装置素子を調製しておく。。第2の標準化加熱エレメント、すなわち裕度PTC加熱エレメントを使用することにより、乖離の異なる多数のPTC加熱エレメントの保管が省かれ、製造をより廉価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】電気暖房装置を備えた自動車用空調システムを示す概略図である。
【図2】電気暖房装置の第1の構造形状を示す側面図である。
【図3】第1の構造形状による電気暖房装置の平面図である。
【図4】第1の構造形状による電気暖房装置内にPTC加熱エレメントを位置決めする位置決めフレームを示す図である。
【図5】標準PTC加熱エレメントとダミーエレメントと裕度PTC加熱エレメントと一体となった放熱エレメントを示す斜視図である。
【図6】第2の構造形状による電気暖房装置の一部装備されたハウジングシェルを示す斜視図である。
【図7】第2の構造形状による暖房装置のハウジングの一部装備されたハウジングシェルを示すさらなる斜視図である。
【図8】2個のハウジングシェルから組み立てた第2の構造形状による電気暖房装置を示す斜視図である。
【図9】部分挿入ばね要素を有する第2の構造形状による電気暖房装置を示す斜視図である。
【図10】異なる構造を有する第2の構造形状の暖房装置を示す斜視図である。
【図11】図10の暖房装置の構造を示すさらなる斜視図である。
【図12】図10の暖房装置を示す部分斜視図である。
【図13】第2の構造形状の電気暖房装置のさらに異なる構造を示す斜視図である。
【図14】標準PTC加熱エレメントと裕度PTCエレメントとを有する図13の電気暖房装置の機器の変形例を示す図である。
【図15】標準PTC加熱エレメントと裕度PTCエレメントとを有する図13の電気暖房装置の機器の別の変形例を示す図である。
【図16】標準PTC加熱エレメントを有する図13の電気暖房装置の機器の別の変形例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の定格暖房能力を一様に有するPTC加熱エレメント(19)を各々少なくとも1個備える複数の暖房ステージと、
発生した熱を放熱エレメント(11)を通って流れる媒体へ放散する、複数の前記放熱エレメント(11)とを備える自動車用の追加電気暖房装置であって、
前記暖房ステージの少なくとも一つが、製造工程の違いに起因する、少なくとも1個の前記PTC加熱エレメント(19)の暖房能力の前記第1の定格暖房能力からの乖離を補正するために、前記第1の定格暖房能力よりも低い第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメント(19a)を含むことを特徴とする、自動車用の追加電気暖房装置。
【請求項2】
前記第2の定格暖房能力が、前記第1の定格暖房能力の何分の一かである、請求項1に記載の追加電気暖房装置。
【請求項3】
前記第2の定格暖房能力が、前記第1の定格暖房能力の半分か又は三分の一か又は四分の一かである、請求項1又は2に記載の追加電気暖房装置。
【請求項4】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)の寸法が、前記第1の定格暖房能力を有するPTC加熱エレメント(19)の寸法とほぼ一致する、請求項1から3のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項5】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)が、前記第1の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19)と同じ厚みを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項6】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)がさらに、前記第1の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19)と同じ長さを有する、請求項5に記載の追加電気暖房装置。
【請求項7】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)がさらに、前記第1の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19)と同じ幅を有する、請求項5又は6に記載の追加電気暖房装置。
【請求項8】
前記第1の定格暖房能力が、50Wから100Wの間の値、好ましくは70Wの値を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項9】
前記PTC加熱エレメント(19)が、前記PTC加熱エレメント(19)と前記放熱エレメント(11)の階層構造の階層内に配置される、請求項1から8のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項10】
前記PTC加熱エレメント(19)が、位置決めフレーム(17)内の一つの階層に保持される、請求項9に記載の追加電気暖房装置。
【請求項11】
各位置決めフレーム(17)が、前記第1と第2の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19,19a)が必要となる各場合のみのための開口(18)を備える、請求項10に記載の追加電気暖房装置。
【請求項12】
前記各階層にPTC加熱エレメント用の所定数の空間(23)が配設されており、前記第1と第2の定格暖房能力を有するPTC加熱エレメント用の階層において不要な空間にダミーエレメントが充填される、請求項9に記載の追加電気暖房装置。
【請求項13】
前記追加電気暖房装置が、低電圧動作用、具体的には120V未満の電圧用に設計された、請求項1から12のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項14】
PTC加熱エレメント(19)及び放熱エレメント(11)を流れる媒体へ熱を放散する前記放熱エレメント(11)の複数階層からなる階層構造を形成するように電気暖房装置を組み立てる工程を含み、前記PTC加熱エレメント(19)を含んだ各階層は前記PTC加熱エレメント(19)を少なくとも1個備え、前記PTC加熱エレメント(19)が一様な第1の定格暖房能力を有する、自動車用の追加電気暖房装置の製造プロセスであって、
製造工程の違いに起因する、一つの階層の前記第1の暖房能力からの前記少なくとも1個のPTC加熱エレメント(19)の暖房能力の乖離を補正するために、前記第1の定格暖房能力よりも低い第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメント(19a)を挿入するか、又は前記第1の定格暖房能力を有するPTC加熱エレメント(19)を前記第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメント(19a)により置き換えることにより、前記PTC加熱エレメント(19)の前記第1の定格暖房能力に基づいて定められる前記階層の前記PTC加熱エレメント(19)の数を修正する工程を含むことを特徴とする、自動車用の追加電気暖房装置の製造プロセス。
【請求項15】
前記第1と第2の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19,19a)がほぼ同じ寸法である請求項14に記載の自動車用の追加電気暖房装置の製造プロセス。
【請求項1】
第1の定格暖房能力を一様に有するPTC加熱エレメント(19)を各々少なくとも1個備える複数の暖房ステージと、
発生した熱を放熱エレメント(11)を通って流れる媒体へ放散する、複数の前記放熱エレメント(11)とを備える自動車用の追加電気暖房装置であって、
前記暖房ステージの少なくとも一つが、製造工程の違いに起因する、少なくとも1個の前記PTC加熱エレメント(19)の暖房能力の前記第1の定格暖房能力からの乖離を補正するために、前記第1の定格暖房能力よりも低い第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメント(19a)を含むことを特徴とする、自動車用の追加電気暖房装置。
【請求項2】
前記第2の定格暖房能力が、前記第1の定格暖房能力の何分の一かである、請求項1に記載の追加電気暖房装置。
【請求項3】
前記第2の定格暖房能力が、前記第1の定格暖房能力の半分か又は三分の一か又は四分の一かである、請求項1又は2に記載の追加電気暖房装置。
【請求項4】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)の寸法が、前記第1の定格暖房能力を有するPTC加熱エレメント(19)の寸法とほぼ一致する、請求項1から3のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項5】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)が、前記第1の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19)と同じ厚みを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項6】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)がさらに、前記第1の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19)と同じ長さを有する、請求項5に記載の追加電気暖房装置。
【請求項7】
前記裕度PTC加熱エレメント(19a)がさらに、前記第1の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19)と同じ幅を有する、請求項5又は6に記載の追加電気暖房装置。
【請求項8】
前記第1の定格暖房能力が、50Wから100Wの間の値、好ましくは70Wの値を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項9】
前記PTC加熱エレメント(19)が、前記PTC加熱エレメント(19)と前記放熱エレメント(11)の階層構造の階層内に配置される、請求項1から8のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項10】
前記PTC加熱エレメント(19)が、位置決めフレーム(17)内の一つの階層に保持される、請求項9に記載の追加電気暖房装置。
【請求項11】
各位置決めフレーム(17)が、前記第1と第2の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19,19a)が必要となる各場合のみのための開口(18)を備える、請求項10に記載の追加電気暖房装置。
【請求項12】
前記各階層にPTC加熱エレメント用の所定数の空間(23)が配設されており、前記第1と第2の定格暖房能力を有するPTC加熱エレメント用の階層において不要な空間にダミーエレメントが充填される、請求項9に記載の追加電気暖房装置。
【請求項13】
前記追加電気暖房装置が、低電圧動作用、具体的には120V未満の電圧用に設計された、請求項1から12のいずれか1項に記載の追加電気暖房装置。
【請求項14】
PTC加熱エレメント(19)及び放熱エレメント(11)を流れる媒体へ熱を放散する前記放熱エレメント(11)の複数階層からなる階層構造を形成するように電気暖房装置を組み立てる工程を含み、前記PTC加熱エレメント(19)を含んだ各階層は前記PTC加熱エレメント(19)を少なくとも1個備え、前記PTC加熱エレメント(19)が一様な第1の定格暖房能力を有する、自動車用の追加電気暖房装置の製造プロセスであって、
製造工程の違いに起因する、一つの階層の前記第1の暖房能力からの前記少なくとも1個のPTC加熱エレメント(19)の暖房能力の乖離を補正するために、前記第1の定格暖房能力よりも低い第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメント(19a)を挿入するか、又は前記第1の定格暖房能力を有するPTC加熱エレメント(19)を前記第2の定格暖房能力を有する裕度PTC加熱エレメント(19a)により置き換えることにより、前記PTC加熱エレメント(19)の前記第1の定格暖房能力に基づいて定められる前記階層の前記PTC加熱エレメント(19)の数を修正する工程を含むことを特徴とする、自動車用の追加電気暖房装置の製造プロセス。
【請求項15】
前記第1と第2の定格暖房能力を有する前記PTC加熱エレメント(19,19a)がほぼ同じ寸法である請求項14に記載の自動車用の追加電気暖房装置の製造プロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−145319(P2007−145319A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−312909(P2006−312909)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(501324823)カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312909(P2006−312909)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(501324823)カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】
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