説明

補強された可撓性ホース

内部孔(101)を画定するためにホースの側壁の一部を形成している溝付きライナー(102)を備えている可撓性ホース(100)。螺旋状に形成される溝(108)は、実質的に滑らかな輪郭づけされていない面を備える最内側(104)を有するライナー(102)の外面側に形成される。ホース(100)が撓曲するときの捩れによる内部孔(101)の圧潰に対して抵抗するホース(100)を提供するため、コイル状に巻かれたワイヤーリテーナ(107)は、各々の溝(108)内に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性ホースに係り、特に、排他的でないが、ホース壁の内部部分を形成する滑らかな内面を備えるとともに外面に螺旋状溝が形成されたライナーと、屈曲時に該ホースのライナーが内側に潰れるのを防ぐように構成され、前記ライナーの前記溝内に配置された長尺のリテーナと、を備える管状の可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の適用について、適度の物理的・機械的強度を備えつつ、良好な程度の可撓性を呈するホースを使用することは有利である。そのため、ホース壁内の補強材として螺旋状に巻いたスチールワイヤーを含むことは一般的である。
【0003】
螺旋状のワイヤーはホース構造に対する半径方向のサポートを提供し、ホースを歪めるか損傷を与えるかもしれない機械的な力に対して、ホースを補強するように作用する。特に、螺旋状のワイヤーは、ホースの撓曲時の捩れによってホースが押し潰されて陥没するのに対する抵抗を与える。
【0004】
螺旋状スチールワイヤー補強は、従来、多くの異なる実施形態において実施されている。例えば、保持ワイヤー(リテイニングワイヤ)は、ホースの長手に沿って延びるゴム・ライナーに埋設され得る。あるいは、該ワイヤーは、内側又は中間のライナーの外側に、ワイヤーの外面と接触させて巻きつけることができる。また、ホースの長手軸に交差して配置された一連の螺旋状の回旋部を備えるコルゲートホースライナーを使用することも公知であり、これらの回旋部は、ライナーの内側(中空)に向く面およびライナーの外側に向く面に形成されている。次に、螺旋状のワイヤーが、該ライナーの外側に面する溝に巻かれる。各々の公知の実施形態において、補強の機構は同じであり、すなわち、ワイヤーがホース壁を構成するライナーに与える半径方向のサポートである。
【0005】
巻回している螺旋状のワイヤーは、ホースライナーが円管形状を維持するように効果的に強制することで、曲がりや圧潰によって生じる力に対抗し、そうしないとライナーを歪めて潰すであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許出願公開第747732号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第426594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のホース構造に関する1つの課題は、螺旋状のワイヤー補強にもかかわらず、ホースライナーまたはホース全体構造に、ホースがかなり曲げられた時に潰れるか捩れることによって、ホース孔を塞ぎ、流体の流れを阻害する傾向が残るということである。
【0008】
使用時に付与される機械的な力に対する従来レベルの柔軟性と抵抗力を提供しつつ、撓曲するときの内部の潰れや捩れに対しては向上した抵抗力を有する螺旋状ワイヤーで半径方向に補強された可撓性ホースが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ホースの長さ領域に沿って延びるライナーであって、該ライナーが前記ホースの内部孔に向けられた第一面と前記ホースの外面に向けられた第二面とを備え、該第二面が、前記ライナーの領域にわたって延びるとともに前記ホースの長手軸線と交差して配列された螺旋状の溝を備える、前記ライナーと、前記溝内に配置され螺旋状に巻かれた長尺のリテーナであって、前記ライナーが曲げられるときに曲がり領域の内側で、前記溝の側壁が前記リテーナを押圧することにより、前記ライナーの機械的歪曲に対する抵抗を増やす軸方向サポートを生じさせる、前記リテーナと、を有し、前記ライナーの前記第一面は前記第二面と比較して輪郭付けされていない、可撓性ホースが提供される。
【0010】
本発明者は、外面に溝を有するが重要なことに内面に溝を有しないライニングに長尺のリテーナを組み込むことにより、同じ螺旋状のワイヤーをホース構造に設けるが外面の溝には配置しない場合と比較すると、曲げた時の捩れによりホースが押し潰されて内部が潰れるのに対する抵抗がかなり増加することを見出した。
【0011】
特に、各々の外面の溝内に収容される細長いリテーナが、ライナーに対してその長さに沿った目立たない領域の屈曲部の内側で軸方向サポートを与えることによって、屈曲度合が増したときにライナー領域での圧縮歪や捩れを制限するように作用すると思われる。この軸方向サポートは、屈曲部の内側で前記溝の両壁が閉じて前記リテーナを押圧するときに、発揮される。プラスチックの相対的な硬度のために溝壁は変形せず、その結果として生じる背圧はウェブ領域の軸方向歪曲を防止するように作用する。効果的に、屈曲部内側まわりの領域でのライナーの全長は、曲げ動作によって生じる圧縮力の下での減少/圧潰が防止される。
【0012】
したがって、ライナーは、第1に、溝内に配置された長尺のリテーナによって付与される従来の半径方向の拘束力により捩れに対して補強され、第2に、リテーナ、ライナーの溝を形成された外面、およびライナーの溝を形成されていない内面の相乗作用の影響によりライナーに生じる追加的な軸方向サポートによって、捩れに対して補強される。
【0013】
前記溝は、ライナーの本体の外面に、頂部と谷部(トラフ)によって形成されると看做され得る。好ましくは、前記リテーナは谷部に対して着座する。すなわち、リテーナ本体は各々の溝の中に完全に収納されて、各々の頂部の高さに及ばない。
【0014】
前記第一面は、内部孔に面して配置され、前記第二面に存在する溝と同じタイプの溝を実質的に欠いている。すなわち、前記第一面は、前記第二面と対比すると実質的に滑らかと看做され得るが、表面欠陥や僅かな輪郭の変形のような、少し不完全なものを包含し得る。
【0015】
好ましくは、前記ライナーは、ライナー本体内側の半径方向のほぼ4分の1の範囲内で、実質的に溝を欠いている。
【0016】
本発明による25mm口径PTFEライナーがまっすぐな状態から要求される小さい曲げ半径まで曲げられる時に生じる該ライナーの前記溝の幅の減少は、オリジナルの溝幅の35%である。オリジナルの溝幅の50%〜100%の幅を有するリテーナは、したがって、ホースライナーの屈曲部内側に、実質的な軸方向サポートを生じさせるように作用する。
【0017】
好ましくは、ホースライナーが軸方向にまっすぐな状態にあるときに、前記リテーナの幅(直径)は、ホースライナーの各々の溝幅の50%と100%の間にある。好ましくは、前記リテーナおよび前記溝は、実質的にホースライナーの全長を延びる。
【0018】
前記リテーナは、好ましくは螺旋状に巻回された金属ワイヤー、特にステンレス鋼ワイヤーを含むことができる。
【0019】
好ましくは、前記ホースは、第二面に対して配置される金属または織物の組みひもを更に含む。
【0020】
前記組みひもは、第二面と直接接触して配置することができるし、追加のライナー材によって分離することができる。
【0021】
好ましくは、前記ホースは、金属または織物の組みひもの上に配置されるゴム又はプラスチックの外層を更に備える。
【0022】
好ましくは、溝を形成されたライナー本体は、プラスチック材料、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の特定の実施形態による、ライナーと、ライナー本体に形成された螺旋状の溝内に配置された螺旋状に巻かれたワイヤーリテーナを備える多層ホース本体を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図2は、図1のホースの曲がった領域を示す側断面図を例示する。
【図3】図3は、図2の曲がったホース壁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
可撓性ホース100は、内側にリブのあるライナー102と、金属または織物の中間層105と、外側のゴムの外被106と、を備えている。
【0025】
内側にリブのあるライナー102は、ホース100の長さに沿って延びて貫通する孔101の内壁を画定している滑らかな内面104を備える。ライナー102の外面103は、ホース100の長手方向軸線と交差して配列された螺旋状のリブ109を備えている。溝108は、リブのある輪郭を画定するためにライナー102の外面103からライナー102本体の厚みの略4分の3の深さへ延びて、リブ109間の螺旋状の回旋部として形成される。
【0026】
(螺旋状の)回旋状に巻かれた金属ワイヤーによって形成される細長いリテーナ107は、各々の溝108内に収容されて、実質的にホース100の長さに沿って延びる。
【0027】
図2および図3を参照すると、ライナー本体102に形成された各々の溝108は、外面103から、内部の孔101を画定する内面104の方へ延びる。この特定の実施形態によれば、各々の溝108の深さは、ライナー本体102の厚みのほぼ4分の3である。各々の溝108の窪みは、実質的に半径方向に形成される両側壁302、303によって画定される。即ち、各々の溝108の窪みは、ホースの軸線に対して90°で、最も外側の外面103の頂部306から、外面103および内面104の間に位置する谷部307の方へ延びている。螺旋状のワイヤーリテーナ107は、外面103に各々の頂部306から離れて溝108の窪み内に完全に収納されるために、各々の谷部307に対して着座している。
【0028】
ホースライナー102は、ホースに沿った螺旋状の溝108と、各々の溝108から内径の内面104の方へ半径方向内側に延びている螺旋状の“ウェブ”領域300との間の中間に配置された螺旋状の“リブ”領域304を構成するとみなされ得る。
【0029】
螺旋状のリテーナ107は、ライナーを管状構成(実質的に円形の断面形状)に制限することによって、ホースの、特にライナー102の半径方向の補強を提供し、それによって、図2および図3に図示するように撓曲したときに、ねじれによるホース孔101の圧潰や凹みに対する抵抗を与える。
【0030】
可撓性ホース100は、ホースライナー102の外面のみから延びている半径方向に配列された溝108内に収容されるリテーナ107の相乗作用的な組合せにより、内部の孔101の捩れおよび潰れに対して更に補強される。本発明によれば、軸方向のサポートを提供するリテーナによって圧潰に対する抵抗力を増強し、ライナーの屈曲部内側でその部分にわたってライナー102のウェブ領域300の圧縮歪曲を防止することが分かった。この軸方向のサポートは、ホース100が図2および図3に示したように撓曲したときに、ライナー102での機械的な圧縮歪曲及びねじれの量を制限する。この軸方向のサポートは、曲げ動作によって加えられる圧縮力のために観察されるウェブ領域300でのライナー102の圧潰を、効果的に阻害する。この曲げ動作によって屈曲部内側でライナーのリブ領域304に軸方向に与えられる圧縮力は、該リブの非常に厚くて強い壁厚によって無効にされる。屈曲している間、リテーナ107が溝108内に着座して側壁302、303の間に陥るようにライナー102およびリテーナ107を構成することによって、ウェブ領域300は、リテーナ107の外面305周辺で曲げられるときの圧縮歪曲が効果的に防止される。
【0031】
重要なことに、内部孔101の圧潰を防止するのに役立つウェブ領域300の軸方向のサポートが、ウェブ領域300間のライナー102の領域で、ライナー本体の連続ボリュームによってつくられる。すなわち、ライナー102は、半径方向で中央孔101の方へ向けて配置された、ライナー本体の内側の実質的に4分の1の範囲内においては溝が無い。
【0032】
理解されるように、上述したようなライナー102内の軸方向のサポートを許容するために各々の谷部307の底と最内面104との間で予め定められたライナー厚が維持される限り、溝108の窪みは、いかなる深さ値でも外面側103から内側面104の方へ向けて延びることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースの長さ領域に沿って延びるライナーであって、該ライナーが前記ホースの内部孔に向けられた第一面と前記ホースの外面に向けられた第二面とを備え、該第二面が、前記ライナーの領域にわたって延びるとともに前記ホースの長手軸線と交差して配列された螺旋状の溝を備える、前記ライナーと、
前記溝内に配置され螺旋状に巻かれた長尺のリテーナであって、前記ライナーが曲げられるときに曲がり領域の内側で、前記溝の側壁が前記リテーナを押圧することにより、前記ライナーの機械的歪曲に対する抵抗を増やす軸方向サポートを生じさせる、前記リテーナと、を有し、
前記ライナーの前記第一面は前記第二面と比較して輪郭付けされていない、可撓性ホース。
【請求項2】
前記溝が頂部と谷部によって形成される請求項1に記載のホース。
【請求項3】
前記リテーナが前記谷部に対して着座する請求項2に記載のホース。
【請求項4】
前記第一面は、前記第二面に存在する同じタイプの溝を実質的に欠いている請求項1〜3の何れかに記載のホース。
【請求項5】
前記長尺のリテーナは、前記ライナーが軸方向にまっすぐな形態のときに、前記溝の幅の50%と100%との間にある幅を備える、請求項1〜4の何れかに記載のホース。
【請求項6】
前記リテーナおよび前記溝は、実質的にホースの全長を延びる、請求項1〜5の何れかに記載のホース。
【請求項7】
前記リテーナが金属ワイヤーを含む、請求項1〜6の何れかに記載のホース。
【請求項8】
前記リテーナが螺旋状に巻いたステンレス鋼ワイヤーを含む、請求項7に記載のホース。
【請求項9】
前記第二面に対して配置される金属組みひもを更に有する請求項1〜8の何れかに記載のホース。
【請求項10】
前記第二面に対して配置される織物組みひもを更に有する請求項1〜8の何れかに記載のホース。
【請求項11】
前記組みひもの上に配置されるゴム外層を更に備える請求項9または10に記載のホース。
【請求項12】
前記組みひもの上に配置されるプラスチック外層を更に備える請求項9または10に記載のホース。
【請求項13】
前記ライナーがプラスチック材料を含む、請求項1〜12の何れかに記載のホース。
【請求項14】
前記プラスチック材料がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項13に記載のホース。
【請求項15】
前記ライナーは、ライナーの半径方向内側のほぼ4分の1の範囲内で実質的に溝を欠いている、請求項1〜14の何れかに記載のホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−506986(P2012−506986A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533827(P2011−533827)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051123
【国際公開番号】WO2010/049712
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(509086006)エイフレックス ホース リミテッド (2)
【Fターム(参考)】