説明

補強ハニカムコア及びサンドイッチパネルの製造方法

【課題】縁部の形状が崩れることがなく、コアクラッシュを防止することのできる、ハニカムコア及びサンドイッチパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】上面及び下面を有するハニカムコアを準備する工程と、前記上面又は前記下面の加工後に縁部となる領域において、前記ハニカムコアの内部の表層部に、前記ハニカムコアを補強するための補強用樹脂を配置する工程と、前記補強用樹脂を硬化させ前記ハニカムコアを所要の形状に保持し、補強ハニカムコアを得る工程と、前記補強ハニカムコアを得る工程の後に、前記補強用樹脂が配置された領域が縁部になるように、前記補強ハニカムコアを加工する工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチパネル及びその製造方法に関し、特に、ハニカムコアを有するサンドイッチパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機や自動車などの材料として、軽くて強度のある材料が求められている。そのような材料として、ハニカムコアの両面を表皮で被覆した構造を有するサンドイッチパネルが挙げられる。
【0003】
図1は、サンドイッチパネルの製造方法を示す概略図である。図1(a)に示されるように、成形型4上に、第1表皮1(プリプレグ)を載せる。次に、第1表皮1上に、ハニカムコア3を載せる。次に、未硬化の第2表皮2(プリプレグ)により、ハニカムコア3を被覆する。これにより、第1表皮1、ハニカムコア3、及び第2表皮2を有するサンドイッチ構造体が得られる。次に、図1(b)に示されるように、サンドイッチ構造体をバッグ材9で覆い、加熱により第2表皮2を硬化させてハニカムコア3に接着させる。この際、第2表皮2を緻密化させるために、加圧も行なわれる。
【0004】
サンドイッチ構造体を加圧したときに、第2表皮2を介してハニカムコア3に圧力が加わり、ハニカムコア3が破損してしまうことがある。また、ハニカムコア3が変形し、第1表皮1や第2表皮2にシワが発生してしまうことがある。
【0005】
ハニカムコアの破損(以下、コアクラッシュ)や表皮のシワを防止する技術が、特許文献1乃至5に記載されている。
【0006】
特許文献1(特表2000−502968号公報)には、コアセルを有するハニカムコアと、コアに接着される繊維で補強されたマトリクス樹脂のプライを有する少なくとも一つの複合積層板と、積層板とコアとの間のフィルムバリヤ層と、バリヤ層とコアとの間の、支持スクリムを備えるフィルム状接着剤とを含む複合ハニカムサンドイッチ構造が記載されている。
【0007】
特許文献2(特開2003−200510号公報)には、昇温工程の後に、昇圧速度が980〜49000Pa/分である昇圧工程を行うハニカムサンドイッチパネルの製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献3(特開平6−901号公報)には、ハニカムコアの外周囲に補強材を貼り付けることが記載されている。
【0009】
特許文献4(特開2001−150575号公報)には、外側表皮と内側表皮が重なり合った余肉部の上に平板状の弾性部材を配置し、更にその上に平板上の押え部材を重ね、加圧・加熱により接着成形することを特徴とするハニカムサンドイッチパネルの製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献5(特許第3822182号公報)には、2枚のプリプレグ積層面板の間に、端部にテーパ部を有するハニカムコアを挟むように被覆・接着する複合材料ハニカムサンドイッチ構造の製造方法が記載されている。この方法は、未硬化のプリプレグに、そのプリプレグよりも面積の小さい別の未硬化のプリプレグを段付きとなるように積層して第1プリプレグ積層面板を構成する積層工程と、ハニカムコアの一面に、第1プリプレグ積層面板の段付き部を有する面を、段付き部がハニカムコアのテーパ部の範囲またはその近傍に位置するように合わせ、第1プリプレグ積層面板と第2プリプレグ積層面板との間にハニカムコアを挟むように被覆して未硬化ハニカムサンドイッチ構造を構成する被覆工程と、その未硬化ハニカムサンドイッチ構造を加圧すると共に加熱して、第1及び第2プリプレグ積層面板の硬化と、該第1及び第2プリプレグ積層面のハニカムコアへの接着とを同時に行う硬化接着工程とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2000−502968号公報
【特許文献2】特開2003−200510号公報
【特許文献3】特開平6−901号公報
【特許文献4】特開2001−150575号公報
【特許文献5】特許第3822182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図2は、コアクラッシュのメカニズムを示す説明図である。図2(a)に示されるように、第1表皮1と第2表皮2とでハニカムコア3を被覆し、昇圧を開始したとする。昇圧開始直後では、第1表皮1と第2表皮2は未硬化であり、ハニカムコア3に対して圧力が加わる。そのため、図2(b)に示されるように、ハニカムコア3が変形することがある。これによって、第2表皮2にリンクル(シワ)5が発生してしまう。更に昇圧状態が維持されると、図2(c)に示されるように、第1表皮1にもリンクル5が発生してしまうことがある。
【0013】
ハニカムコア3は、図3(a)に示されるように、上下面からの力よりも側面からの力に対して、変形し易い。そこで、図3(b)に示されるように、ハニカムコア3の側面を傾斜させることが考えられる。ハニカムコア3の下面と側面とが成す角度(チャンファ角θ)を小さくすれば、側面からハニカムコア3に対して加わる圧力の影響を抑えることができ、コアクラッシュを抑制できる。しかしながら、チャンファ角θを小さくすればデッドスペースが大きくなってしまう。従って、チャンファ角θを無制限に小さくすることは困難であり、結果として、コアクラッシュを防止することは困難になる。
【0014】
コアクラッシュを防止するために、ハニカムコア3の厚みを薄くすることが考えられる。図4は、ハニカムコア3の厚みとコアクラッシュとの関係を説明する為の説明図である。第1表皮1とハニカムコア3とが接着していると考える。このとき、図4に示されるように、側圧によるハニカムコア3の変形量(δ1〜δ3)は、第1表皮1からの高さ(t1〜t3)が高い部分ほど、大きくなる。従って、ハニカムコア3を薄くすれば、ハニカムコア3の変形量を小さくすることができ、リンクル5の発生を抑えることができる。しかし、強度や設計上の理由などにより、ハニカムコア3の厚みを自由に変更することは困難である。
【0015】
また、ハニカムコア3の作成時には、まず、ハニカムコア3の母材が準備される。そして、この母材が所定の形状に加工され、ハニカムコア3が得られる。ここで、加工時には、ハニカムコア3のセルが変形し、特に下面側の縁部において形状が崩れてしまうことがある。
【0016】
従って、本発明の目的は、縁部の形状が崩れることがなく、コアクラッシュを防止することのできる、ハニカムコア及びサンドイッチパネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下に、発明を実施するための形態で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0018】
本発明に係る補強ハニカムコアの製造方法は、上面及び下面を有するハニカムコア(12)を準備する工程と、前記上面又は前記下面の加工後に縁部となる領域において、ハニカムコア(12)の内部の表層部に、ハニカムコア(12)を補強するための補強用樹脂(13)を配置する工程(ステップS21)と、補強用樹脂(13)を硬化させハニカムコア(12)を所要の形状に保持し、補強ハニカムコア(3)を得る工程(ステップS22)と、補強ハニカムコアを得る工程の後に、補強用樹脂が配置された領域が縁部になるように、前記補強ハニカムコアを加工する工程(ステップS23)とを具備する。
【0019】
この発明によれば、加工後に縁部となる領域が補強用樹脂(13)によって補強されるため、加工前に縁部の形状が崩れることが防止される。また、補強用樹脂(13)による補強により、コアクラッシュが防止される。
【0020】
本発明に係るサンドイッチパネルの製造方法は、上面及び下面を有するハニカムコア(12)を準備する工程と、前記上面又は前記下面の加工後に縁部となる領域において、ハニカムコア(12)の内部の表層部に、ハニカムコア(12)を補強するための補強用樹脂(13)を配置する工程(ステップS21)と、補強用樹脂(13)を硬化させハニカムコア(12)を所要の形状に保持し、補強ハニカムコア(3)を得る工程(ステップS22)と、補強ハニカムコア(3)を得る工程の後に、補強ハニカムコア(3)を、補強用樹脂(13)が配置された領域が縁部になるように、加工する工程(ステップS23)と、加工する工程の後に、第1表皮(1)と第2表皮(2)とによって補強ハニカムコア(3)を挟み、サンドイッチ構造体を形成する工程(ステップS30)と,サンドイッチ構造体を加熱・加圧し、第2表皮(2)を補強ハニカムコア(3)に接着させる工程(ステップS40)とを具備する。
【0021】
補強用樹脂(13)は、発泡性樹脂であることが好ましい。
【0022】
補強用樹脂(13)は、シート状樹脂であることが好ましい。
【0023】
サンドイッチ構造体を形成する工程(ステップS30)は、補強ハニカムコア(3)の上面が第2表皮(2)と対向し、補強ハニカムコア(3)の下面が第1表皮(1)と対向するように、補強ハニカムコア(3)を挟む工程を含んでいることが好ましい。
【0024】
加工する工程(ステップS23)は、補強ハニカムコア(3)が上面から下面へ向かって広がる形状となるように、補強ハニカムコア(3)の端部を加工する工程を備えていることが好ましい。
【0025】
上述のサンドイッチパネルの製造方法は、更に、補強用樹脂(13)を配置する工程の前に、ハニカムコア(12)を変形させる工程(ステップS10)を具備することができる。ここで、補強ハニカムコアを得る工程(ステップS23)は、補強用樹脂(13)を硬化させることにより、補強ハニカムコア(3)の形状を前記変形させる工程で変形した形状に維持させる工程を含んでいることが好ましい。
【0026】
一観点から、前記サンドイッチ構造体を形成する工程(ステップS30)は、第1表皮(1)として、未硬化の樹脂を含むプリプレグを準備する工程と、第1表皮(1)を硬化させる工程と、硬化した第1表皮(1)の上に補強ハニカムコア(3)を載せ、第1表皮(1)と補強ハニカムコア(3)とを接着する工程と,第1表皮(1)と補強ハニカムコア(3)とを接着する工程の後に、第2表皮(2)により補強ハニカムコア(3)を被覆し,サンドイッチ構造体を得る工程とを備えていることが好ましい。
【0027】
他の一観点から、サンドイッチ構造体を形成する工程(ステップS30)は,第1表皮(1)及び第2表皮(2)のそれぞれとして,未硬化の樹脂を含むプリプレグを準備する工程と,補強ハニカムコア(3)を未硬化の第1表皮(1)上に配置する工程と,未硬化の第1表皮上に配置する工程の後に,未硬化の第2表皮(2)により,補強ハニカムコア(3)を被覆し,サンドイッチ構造体を得る工程とを備え,前記接着させる工程(ステップS40)は,加熱により,第1表皮(1)及び第2表皮(2)を,同時に,補強ハニカムコア(3)に接着させる工程を含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、縁部の形状が崩れることがなく、コアクラッシュを防止することのできる、ハニカムコア及びサンドイッチパネルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】サンドイッチパネルの製造方法を示す工程図である。
【図2】コアクラッシュのメカニズムを示す説明図である。
【図3】コアクラッシュのメカニズムを示す説明図である。
【図4】ハニカムコアの厚みと変形量との関係を示す説明図である。
【図5A】サンドイッチパネルを示す斜視図である。
【図5B】サンドイッチパネルを示す側断面図である。
【図6】ハニカムコアを拡大して示す斜視図である。
【図7】サンドイッチパネルの製造工程を示す工程図である。
【図8】ハニカムコアを示す斜視図である。
【図9】ハニカムコアを示す断面図である。
【図10】コアクラッシュが防止されるメカニズムを説明するための説明図である。
【図11】(a)ハニカムコアの拡大図、及び(b)ハニカムコアのグレードとせん断強度との関係を示すグラフである。
【図12】ハニカムコアの製造方法を示すフローチャートである。
【図13A】補強ハニカムコアの製造方法を示す工程断面図である。
【図13B】補強ハニカムコアの製造方法を示す工程断面図である。
【図13C】補強ハニカムコアの製造方法を示す工程断面図である。
【図13D】補強ハニカムコアの製造方法を示す工程断面図である。
【図14A】液状樹脂を用いた場合の工程図である。
【図14B】液状樹脂を用いた場合の工程図である。
【図14C】液状樹脂を用いた場合の工程図である。
【図15A】シート状発泡性樹脂を用いた場合の工程図である。
【図15B】シート状発泡性樹脂を用いた場合の工程図である。
【図16】シート状発泡性樹脂を用いた場合のハニカムコアの断面図である。
【図17】ハニカムコアを示す斜視図である。
【図18】Co−cure法によるサンドイッチパネルの製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0031】
図5Aは、サンドイッチパネル8の斜視図である。また、図5Bは、サンドイッチパネル8の側断面図である。サンドイッチパネル8は、第1表皮1と、第2表皮2と、ハニカムコア3とを備えている。
【0032】
ハニカムコア3は、第1表皮1及び第2表皮2により、覆われている。ハニカムコア3は、上面6と、下面7と、側面15とを有している。ハニカムコア3は、下面7で第1表皮1に接着され、上面6及び側面15で第2表皮2に接着されている(図では若干離れているが、これは見易くする為である)。ハニカムコア3は、上面6及び下面7が曲面となるように、曲げられている。また、側面15は、ハニカムコア3が上面6から下面7へ向かって広がる形状となるように、傾斜している。
【0033】
図6を参照して、ハニカムコア3の材質について説明する。図6は、ハニカムコア3の構造を示す斜視図である。図6中のT方向は、厚み方向であり、上面から下面へ向かう方向に対応する。図6には、幅方向(W方向)と長さ方向(L方向)も記載されている。図6に示されるように、ハニカムコア3は、六角形又は長方形の開口を有するセルが隙間なく敷き詰められた構造を有している。このような構造は、いわゆるハニカム構造と呼ばれ、軽量であるにもかかわらず、高い強度を有する。しかし、上下面からの力に対しては安定であるが、側面からの力に対しては変形し易い性質を持つ。
【0034】
ハニカムコア3の素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂(例えばフェノール樹脂)が含浸した繊維材(例えばアラミド繊維材)を用いることができる。
【0035】
一方、第1表皮1及び第2表皮2としては、それぞれ、プリプレグ(樹脂が含浸されたシート状繊維材)が用いられる。そのプリプレグとしては、例えば、熱硬化性樹脂が含浸された強化繊維の織布を用いることができる。その強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などを用いることができる。各表皮(1、2)は、複数のプリプレグが積層された構造を有していてもよい。
【0036】
続いて、本実施形態に係るサンドイッチパネルの製造方法を概略的に説明する。図7は、本実施形態に係るサンドイッチパネルの製造方法を示す工程図である。
【0037】
まず、図7(a)に示されるように、成形型4を用意し、成形型4上に、第1表皮1を配置する。このとき、第1表皮1に含まれる樹脂は未硬化の状態である。
【0038】
次に、図7(b)に示されるように、バッグ材9により第1表皮1を覆う。そして、バッグ材9を介して、加熱及び加圧を行い、第1表皮1を硬化させる。加圧により、第1表皮1の繊維体積含有率が高められ、第1表皮1の強度が高められる。
【0039】
次に、図7(c)に示されるように、第1表皮1上に、接着シート11(図7(c)では図示されていない)を介してハニカムコア3を載せ、ハニカムコア3と第1表皮1とを接着させる。尚、第1表皮1自体が接着力を有する場合には、接着シート11は必ずしも用いる必要はなく、第1表皮1をハニカムコア3に直接に接着させることもできる。
【0040】
次に、図7(d)に示されるように、ハニカムコア3を、接着シート11(図示せず)を介して、未硬化の第2表皮2により被覆する。これにより、第1表皮1、ハニカムコア3、及び第2表皮2を含むサンドイッチ構造体が得られる。尚、第2表皮2自体が接着力を有する場合には、接着シート11は必ずしも用いる必要はなく、第2表皮2とハニカムコア3とを直接に接着させることもできる。
【0041】
続いて、図7(e)に示されるように、再びバッグ材9によってサンドイッチ構造体を覆う。そして、バッグ材9を介して、加圧及び加熱する。加熱により、第2表皮2に含まれる樹脂が硬化し、第2表皮2がハニカムコア3に接着する。また、加圧により、第2表皮2が緻密化され、加圧前に比べて強度が増す。
【0042】
以上の図7(a)〜(e)に示される工程により、サンドイッチパネル8が得られる。
【0043】
サンドイッチ構造体を加圧する工程(図7(e))では、既述のようにコアクラッシュが懸念される。そこで、本実施形態では、ハニカムコア3に工夫が施されている。以下に、ハニカムコア3の構造について詳述する。
【0044】
図8は、ハニカムコア3を示す斜視図である。また、図9は、図8のAA’線に沿う断面図である。図8に示されるように、ハニカムコア3の上面6には、その外周部に、補強部10が形成されている。図9に示されるように、ハニカムコア3の下面7の外周部にも、補強部10が形成されている。補強部10は、ハニカムコア3の内部の表層部に設けられている。補強部10により、ハニカムコア3は、その内部構造自体が強化されている。表層部とは、例えば、ハニカムコアの厚みに対して20%以内の部分を指す。
【0045】
図10は、補強部10による作用を示す説明図である。サンドイッチ構造体を加圧したとき(図7(e)参照)には、ハニカムコア3の側部にも、圧力が加わる。既述の通り、ハニカムコア3は、側方からの圧力に対して変形し易いが、ハニカムコア3の内部の表層部に設けられた補強部10によって圧力が受けられるため、コアクラッシュが抑制される。
【0046】
ここで、例えば補強材がハニカムコア3の表面上に貼り付けられている場合と比較すると、本実施形態では補強部10によりハニカムコア3の内部構造自体が補強されているため、コアクラッシュがより確実に抑制される。
【0047】
補強部10は、上下面(6、7)の全面に設けられていてもよいが、上下面(6、7)の外周部にのみ設けられている方がより好ましい。外周部にさえ補強部10が設けられていれば、コアクラッシュに耐え得るのに十分な強度が得られる。補強部10が全面に設けられている場合には、ハニカムコア3の重量が補強部10を形成する樹脂の分だけ増してしまう。また、全面に補強部10が設けられた場合には、各表皮(1、2)とハニカムコア3との間の接着力の観点から、特別な工夫が必要となることがある。上下面(6、7)の外周部にだけ補強部10が設けられていれば、ハニカムコア3の重量を最小限に抑えつつ、コアクラッシュを抑制できる。また、ハニカムコア3と各表皮(1、2)との間の接着力の観点から特別な工夫が必要となる可能性も少ない。
【0048】
また、補強部10は、ハニカムコア3のセルを埋めるように形成されているのではなく、ハニカムコア3の表層部にのみ設けられていることが重要である。仮に、樹脂がセルに完全に充填されているとする。このような場合、補強部10を形成する樹脂の重みによって、ハニカムコア3の重量が増してしまう。コアクラッシュに耐えうる強度を得る為には、ハニカムコア3の表層部に補強部10が設けられていれば十分である。従って、表層部にのみ補強部10が形成されていることにより、重量を増加させずに、十分な強度を得ることができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、補強部10によってコアクラッシュを防止することができる。
【0050】
コアクラッシュが防止できるため、ハニカムコア3として用いることのできる材料の種類も増えることになる。図11(a)は、ハニカムコア3の横断面を示す拡大図である。セルの大きさ(セルサイズ;図11(a)参照)が同じ条件下であれば、ハニカムコア3の強度は、素材の密度に依存する。素材として例えばフェノール樹脂が含浸したアラミド繊維材を用いた場合、その密度は、フェノール樹脂の含浸量を増やすことにより、高められる。図11(b)は、ハニカムコア3の素材の密度(グレード)と、せん断強度との関係を示すグラフである。図11(b)に示されるように、グレードが上がると、せん断強度が向上する。しかし、グレードを上げると、ハニカムコア3の重量が増してしまう。従って、ハニカムコア3を軽量化したままでコアクラッシュを抑えることは難しい。しかし、本実施形態によれば、比較的グレードの低いハニカムコア3(例示;SAH(Showa Aramid Honeycomb)3/16OX−3.0(商品名;昭和飛行機工業株式会社製;セルサイズ=3/16インチ、密度=3.0LBS/FT))を用いた場合でも、コアクラッシュを確実に防止することができる。
【0051】
続いて、上述したハニカムコア3の製造方法について説明する。尚、以下では、説明の便宜上、補強部10が形成されたハニカムコア3は補強ハニカムコア3と記載され、補強部10が形成される前のものは単にハニカムコア12と記載される。図12は、本実施形態に係る補強ハニカムコア3の製造方法を示すフローチャートである。また、図13A乃至図13Dは、本実施形態に係る補強ハニカムコアの製造方法を示す工程図である。
【0052】
ステップS10;ハニカムコアの変形
まず、平板状のハニカムコア12を用意する。そして、図13Aに示されるように、ハニカムコア12を、所望の形に変形させる。具体的には、曲面を有する成形型4上にハニカムコア12を載せることによって、ハニカムコア12を変形させることができる。
【0053】
ステップS21;補強用樹脂の配置
続いて、図13Bに示されるように、ハニカムコア12の上下面に、補強用樹脂13として、発泡性樹脂を配置する。補強用樹脂13は、ハニカムコア12内部の表層部に押し込まれて配置される。このハニカムコア12は、後工程において側部が削られ、加工される。図13Bにおいて、側部が削られた後の側面が点線で描かれている。本工程において、補強用樹脂13は、側部が削られた後の縁部に対応する位置に配置される。
【0054】
ステップS22;硬化
続いて、図13Cに示されるように、ハニカムコア12を加熱し、補強用樹脂13を硬化させる。補強用樹脂13は、発泡して硬化し、補強部10を形成する。これにより、補強されたハニカムコア(補強ハニカムコア3)が得られる。補強部10により、補強ハニカムコア3の形状が維持される。すなわち、外力を加えなくても、補強ハニカムコア3を曲がった形状に保つことができる。
【0055】
ステップS23;側部の加工
続いて、図13Dに示されるように、補強ハニカムコア3が上面から下面に向かって広がる形状となるように、補強ハニカムコア3の側部を削る。側部は、例えば、NC加工(Numerical control machining)により、削られる。この際、補強部10が形成されているために、加工時にハニカムコア3のセルが変形し、縁部の形状が崩れることを防止することができる。
【0056】
以上のステップS23までの工程により、本実施形態に係るハニカムコア3(補強ハニカムコア)が製造される。
【0057】
その後、図7で示した工程により、サンドイッチパネル8が製造される(ステップS30,S40)。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、補強部10によりハニカムコア3が補強されるので、サンドイッチパネル8の製造時にコアクラッシュが抑制される。
【0059】
また、本実施形態によれば、加工後に縁部になる領域が補強部10によって補強されているため、加工時にハニカムコア3のセルが変形し、縁部の形状が崩れることを防止することができる。また、表層部にのみ補強部10が形成されるため、ハニカムコア3の全体に補強用樹脂を染み込ませる場合と比較して、軽量化することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、補強部10を形成することにより、ハニカムコア3の形状を変形したままに維持することができる。これにより、ハニカムコア3を、簡単に製造することが可能となる。この点について、以下に詳述する。
【0061】
曲げられた形状のハニカムコア3を作製するにあたっては、目的とする形状よりも大きい形状のハニカムコアを用意し、曲がった形状になるように削り出すことが考えられる。しかし、このような方法では、ハニカムコアを削る量が増えてしまい、製造に要する時間が長くなってしまう。これに対して、本実施形態では、補強部10によって曲がった形状が維持されるため、厚み方向ではハニカムコア12を削る必要がない。ステップS23では、ハニカムコア12の側部を削るだけでよく、加工に要する時間を短かくすることができる。
【0062】
尚、ステップS21で配置される補強用樹脂13としては、常温にてシート状に形状が維持された、シート状発泡性樹脂が用いられることが好ましい。
【0063】
シート状発泡性樹脂に対する比較として、液状樹脂を用いた場合について考える。図14A乃至14Cは、液状樹脂を用いた場合のステップS20の工程を示す工程図である。液状樹脂は、所望の位置に選択的に塗布することが困難である。そのため、図14Aに示されるように、マスキングテープ16をハニカムコア12に配置し、非補強部を保護する必要がある。また、液状樹脂を用いた場合には、樹脂がハニカムコア12のセルの壁に沿って流れ落ちてしまう。その結果、硬化時には、図14Bに示されるように、窪み18が形成され、補強部10が不均一に形成されてしまう。補強部10を均一に形成するために、図14Cに示されるように、再度液状樹脂を塗布し、手直しを行う必要がある。手直しを行えば、重量をコントロールすることも難しくなる。また、液状樹脂は、一般に、主剤と硬化剤とを混合することにより、硬化される。その際、硬化反応によって自己発熱することがあるため、一度に多量の主剤と硬化剤を混合するのは作業安全上問題がある。従って、適用量を制限する必要が生じ、大容量の使用には適さない。さらに、誤った位置に液状樹脂を塗布した場合には、その液状樹脂を除去することが困難である。
【0064】
一方、図15A及び図15Bは、シート状発泡性樹脂を用いた場合の工程図を示している。シート状樹脂であれば、誤った位置に配置した場合でも、表層部に押し込まない限りは、容易に剥がすことができる。また、図15Aに示されるように、マスキングテープ16などを用いることなく、所望の位置に貼り付けることができる。また、シート状樹脂であれば、単位面積当たりの重量を容易にコントロールすることができる。また、硬化時には、一定の発泡率で発泡する。図15Bに示されるように、硬化後の形状も均一になる。すなわち、硬化後の補強部10の形状を容易にコントロールすることができる。図16は、実際にシート状発泡性樹脂を用いて補強部10が形成された補強ハニカムコアの断面を示す模式図である。図16に示される例では、発泡前のシート厚が約2.5mmのシート状発泡性樹脂が用いられた。発泡後には、補強部10の厚みが約8mmに増加しており、その厚みは均一であることが確認される。
【0065】
上述のようなシート状発泡性樹脂として、具体的には、FM 410(商品名;Cytec Engineered Materials Inc)が挙げられる。
【0066】
また、ステップS21で配置される補強用樹脂13は、ステップS10で変形されたハニカムコア12の形状が維持される程度に、連続して配置されていることが好ましい。例えば、図17に示されるように、補強用樹脂13が断続的に配置された場合には、ハニカムコア12の形状が維持されにくくなる。
【0067】
尚、本実施形態では、硬化された第1表皮1と補強ハニカムコア3とを接着した後に(図7(c)参照)、未硬化の第2表皮2により補強ハニカムコア3を覆い(図7(d)参照)、サンドイッチ構造体を得る場合について説明した。すなわち、第2表皮2を補強ハニカムコア3に接着させる際には、既に第1表皮1が硬化されており、第1表皮1と補強ハニカムコア3とは接着されている。このような製造方法は、Co−Bond法と呼ばれる。この製造方法によれば、サンドイッチ構造体を加圧したときに、補強ハニカムコア3が側方から押し潰されるなどの変形が生じないので、コアクラッシュ及びリンクルの発生が抑制される。しかし、本発明は、Co−Bond法に限定されるものではない。例えば、Co−Cure法を用いた場合でも、第2表皮2を補強ハニカムコア3に接着させるときのコアクラッシュを抑制することができる。図18は、Co−Cure法を用いた場合のサンドイッチパネルの製造方法を示す工程図である。Co−Cure法では、図18(a)に示されるように、成形型4上に、未硬化の第1表皮1が配置される。続いて、図18(b)に示されるように、補強ハニカムコア3が第1表皮1上に配置される。補強ハニカムコア3は、図示しない接着シートを介して、第1表皮1上に配置されてもよい。次に、図18(c)に示されるように、未硬化の第2表皮2により補強ハニカムコア3が被覆され、サンドイッチ構造体が形成される。第2表皮2と補強ハニカムコア3との間には、図示しない接着シートが配置されてもよい。このサンドイッチ構造体において、第1表皮1及び第2表皮2は、共に未硬化である。次に、図18(d)に示されるように、サンドイッチ構造体が加熱、及び加圧される。これにより、第1表皮1と第2表皮2とが、同時に、補強ハニカムコア3に接着する。Co−Cure法を用いた場合でも、補強部10によって補強ハニカムコア3のコアクラッシュが抑制される点については、Co−Bond法を用いたときと同様である。
【0068】
また、本実施形態では、補強ハニカムコア3が曲げられている場合について説明した。しかし、補強ハニカムコア3は、必ずしも曲げられている必要はない。補強ハニカムコア3に補強部10が形成されていれば、補強部10によるコアクラッシュの抑制効果を享受できる。
【0069】
また、本実施形態に係るサンドイッチパネル8は、軽くて強度が必要とされる部材に好適に用いることができ、例えば、航空機や自動車の構造部材などに用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 第1表皮
2 第2表皮
3 (補強)ハニカムコア
4 成形型
5 リンクル(しわ)
6 上面
7 下面
8 サンドイッチパネル
9 バッグ材
10 補強部
11 接着シート
12 ハニカムコア(補強前)
13 補強用樹脂
15 側面
16 マスキングテープ
17 液状樹脂
18 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び下面を有するハニカムコアを準備する工程と、
前記上面又は前記下面の加工後に縁部となる領域において、前記ハニカムコアの内部の表層部に、前記ハニカムコアを補強するための補強用樹脂を配置する工程と、
前記補強用樹脂を硬化させ前記ハニカムコアを所要の形状に保持し、補強ハニカムコアを得る工程と、
前記補強ハニカムコアを得る工程の後に、前記補強用樹脂が配置された領域が縁部になるように、前記補強ハニカムコアを加工する工程と、
を具備する
補強ハニカムコアの製造方法。
【請求項2】
上面及び下面を有するハニカムコアを準備する工程と、
前記上面又は前記下面の加工後に縁部となる領域において、前記ハニカムコアの内部の表層部に、前記ハニカムコアを補強するための補強用樹脂を配置する工程と、
前記補強用樹脂を硬化させ前記ハニカムコアを所要の形状に保持し、補強ハニカムコアを得る工程と、
前記補強ハニカムコアを得る工程の後に、前記補強ハニカムコアを、前記補強用樹脂が配置された領域が縁部になるように、加工する工程と、
前記加工する工程の後に、第1表皮と第2表皮とによって前記補強ハニカムコアを挟み、サンドイッチ構造体を形成する工程と,
前記サンドイッチ構造体を加熱・加圧し、前記第2表皮を前記補強ハニカムコアに接着させる工程と,
を具備する
サンドイッチパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたサンドイッチパネルの製造方法であって,
前記補強用樹脂は、発泡性樹脂である
サンドイッチパネルの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載されたサンドイッチパネルの製造方法であって,
前記補強用樹脂は、シート状樹脂である
サンドイッチパネルの製造方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載されたサンドイッチパネルの製造方法であって、
前記サンドイッチ構造体を形成する工程は、前記補強ハニカムコアの上面が前記第2表皮と対向し、前記補強ハニカムコアの下面が前記第1表皮と対向するように、前記補強ハニカムコアを挟む工程を含んでいる
サンドイッチパネルの製造方法。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載されたサンドイッチパネルの製造方法であって,
更に
前記加工する工程は、前記補強ハニカムコアが上面から下面へ向かって広がる形状となるように、前記補強ハニカムコアの端部を加工する工程を備えている
サンドイッチパネルの製造方法。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれかに記載されたサンドイッチパネルの製造方法であって、
更に、
前記補強用樹脂を配置する工程の前に、前記ハニカムコアを変形させる工程、
を具備し、
前記補強ハニカムコアを得る工程は、前記補強用樹脂を硬化させることにより、前記補強ハニカムコアの形状を前記変形させる工程で変形した形状に維持させる工程を含んでいる
サンドイッチパネルの製造方法。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれかに記載されたサンドイッチパネルの製造方法であって,
前記サンドイッチ構造体を形成する工程は,
前記第1表皮として、未硬化の樹脂を含むプリプレグを準備する工程と,
前記第1表皮を硬化させる工程と,
硬化した前記第1表皮の上に前記補強ハニカムコアを載せ、前記第1表皮と前記補強ハニカムコアとを接着する工程と,
前記第1表皮と前記補強ハニカムコアとを接着する工程の後に、前記第2表皮により前記補強ハニカムコアを被覆し,前記サンドイッチ構造体を得る工程とを備えている
サンドイッチパネルの製造方法。
【請求項9】
請求項2乃至7のいずれかに記載されたサンドイッチパネルの製造方法であって,
前記サンドイッチ構造体を形成する工程は,
前記第1表皮及び前記第2表皮のそれぞれとして,未硬化の樹脂を含むプリプレグを準備する工程と,
前記補強ハニカムコアを未硬化の前記第1表皮上に配置する工程と,
前記未硬化の第1表皮上に配置する工程の後に,未硬化の前記第2表皮により,前記補強ハニカムコアを被覆し,前記サンドイッチ構造体を得る工程とを備え,
前記接着させる工程は,加熱により,前記第1表皮及び前記第2表皮を,同時に,前記補強ハニカムコアに接着させる工程を含んでいる
サンドイッチパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−1006(P2013−1006A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135164(P2011−135164)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、防衛省、「次期固定翼哨戒機及び次期輸送機(その3)(1)」にかかる試作研究請負契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】