説明

補強膜付き触媒層−電解質膜積層体、補強膜付き膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池

【課題】補強膜の剥離を防止することを課題とする。
【解決手段】イオン伝導性高分子電解質膜2と、電解質膜2の両面に形成され、炭素粒子、イオン伝導性高分子電解質、及び触媒を含む触媒層3と、中央に開口部41を有しており、内周縁部が触媒層3の外周縁部31上に接着するよう触媒層−電解質膜積層体10の両面に接着された補強膜4と、を備え、触媒層3は外周縁部31に触媒を含んでいない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強膜付き触媒層−電解質膜積層体、補強膜付き膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の両面に電極が配置され、水素と酸素の電気化学反応により発電する電池であり、発電時に発生するのは水のみである。このように従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないために次世代のクリーンエネルギーシステムとして普及が見込まれている。その中でも特に固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、電解質膜の抵抗が少ないことに加え、活性の高い触媒を用いるので小型でも高出力を得ることができ、家庭用コージェネレーションシステム等として早期の実用化が見込まれている。
【0003】
この固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用い、この電解質膜の両面に触媒層及び導電性多孔質基材を順に積層している。そして、この触媒層及び導電性多孔質基材からなる電極の周囲を囲むようにガスケットを配置し、さらにこれをセパレータで挟んだ構造を有している(特許文献1の図3又は図4参照)。しかし、ガスケットが設置される電解質膜の外周縁部は発電に寄与しない部分であり、一般的に高価な電解質膜を有効に利用できていない。このため、膜電極接合体の外周縁部から外方に延びる補強膜を別途設け、この補強膜上にガスケットを配置する固体高分子形燃料電池が提案されている(特許文献1の図1及び図2参照)。また、その他にも、特許文献2のように、各電極によって抑えられていない電解質膜部分の膨張収縮を抑制するために補強膜を設けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−47230号公報
【特許文献2】特許第3052536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、種々の理由で補強膜を有する固体高分子形燃料電池が提案されているが、このような固体高分子形燃料電池を長時間運転させると補強膜が剥離するという問題が生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、補強膜の剥離を防止することのできる補強膜付き触媒層−電解質膜積層体、補強膜付き膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者らは、上記補助膜を有する固体高分子形燃料電池の補強膜が剥離するという問題がどのような原因で起こるのかを鋭意研究した結果、過酸化水素と白金などの触媒との反応が原因であることが判明した。すなわち、固体高分子形燃料電池の運転条件によってはカソード(空気極)における酸素の還元が2電子反応で止まってしまい過酸化水素(H2O2)が生成されることがある。また、アノード(燃料極)においても、電解質膜内を通過してアノードに拡散してきた酸素が触媒に吸着する水素と反応し、過酸化水素が生成されることがある。この生成された過酸化水素は、固体高分子形燃料電池の運転時にカソードにおいて水素と酸素とから生成される生成水に溶解する。この生成水は電極、特に触媒層の外周縁部に滞留する傾向にあり、また、生成水は運転時に蒸発するが過酸化水素は沸点が高いために蒸発しにくく特に残留しやすい傾向にある。このように電極の触媒層外周縁部に滞留した過酸化水素は、触媒層中の触媒の存在下でラジカル分解することで、補強膜を攻撃して補強膜を剥離させる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明に係る補強膜付き触媒層−電解質膜積層体は、イオン伝導性高分子電解質膜と、前記電解質膜の両面に形成され、炭素粒子、イオン伝導性高分子電解質、及び触媒を含む触媒層と、中央に開口部を有しており、内周縁部が前記触媒層の外周縁部上に接着するよう、前記電解質膜及び触媒層から構成された触媒層−電解質膜積層体の両面に接着された補強膜と、を備え、前記触媒層は、前記外周縁部に触媒を含まない。
【0009】
このように本発明に係る補強膜付き触媒層−電解質膜積層体は、過酸化水素が溶解された生成水が滞留しやすい触媒層の外周縁部は、触媒が含まれていない。このため、触媒層の外周縁部に過酸化水素が溶解した生成水が滞留しても過酸化水素はラジカル分解せず、補強膜を攻撃することがない。この結果、補強膜が剥離するという問題を解消することができる。
【0010】
上記補強膜付き触媒層−電解質膜積層体は種々の構成をとることができるが、例えば、上記補強膜を電解質膜よりも一回り大きく形成し、この電解質膜の外側で補強膜の外周縁部同士を接着させた構成とすることもできる。この構成によれば、この補強膜の外周縁部同士を接着させた部分にガスケットを設置することができ、ひいては従来ガスケットを設置していた電解質膜の発電に寄与しない部分を省略することができる。
【0011】
また、上記触媒層の外周縁部と補強膜の内周縁部との間にわたって延びる繊維状物質をさらに備えてもよい。この繊維状物質のアンカー効果によって、より確実に補強膜の剥離を防止することができる。
【0012】
また、上記補強膜は、触媒層と接着する接着層と、燃料ガス及び酸化剤ガスの透過を防止するガスバリア層と、を有していることが好ましい。この構成によれば、補強膜はより確実に触媒層と接着するとともに、ガスの透過も防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係る第1の補強膜付き膜電極接合体は、上述したいずれかの補強膜付き触媒層−電解質膜積層体と、前記各触媒層上に形成された導電性多孔質基材と、を備えている。
【0014】
この構成によれば、上述した補強膜付き触媒層−電解質膜積層体を備えているため、補強膜の剥離を防止することができる。なお、上記導電性多孔質基材は、各補強膜の開口部内から露出する触媒層上に形成することもできる。
【0015】
また、本発明に係る第2の補強膜付き膜電極接合体は、イオン伝導性高分子電解質膜と、前記電解質膜の両面に形成され、炭素粒子、イオン伝導性高分子電解質、及び触媒を含む触媒層と、前記各触媒層上に形成された導電性多孔質基材と、中央に開口部を有しており、内周縁部が前記導電性多孔質基材の外周縁部上に接着するよう、前記電解質膜、触媒層、及び導電性多孔質基材から構成された膜電極接合体の両面に接着された補強膜と、を備え、前記触媒層は、前記導電性多孔質基材の外周縁部と対向する外周縁部に触媒を含まない。
【0016】
このように本発明に係る第2の補強膜付き膜電極接合体は、過酸化水素が溶解された生成水が滞留しやすい触媒層の外周縁部は、触媒が含まれていない。このため、触媒層の外周縁部に過酸化水素が溶解した生成水が滞留しても過酸化水素はラジカル分解せず、補強膜を攻撃することがない。この結果、補強膜が剥離するという問題を解消することができる。
【0017】
上記第2の補強膜付き膜電極接合体は種々の構成をとることができるが、例えば、上記導電性多孔質基材の外周縁部と補強膜の内周縁部との間にわたって延びる繊維状物質をさらに備えていてもよい。この繊維状物質のアンカー効果によって、より確実に補強膜の剥離を防止することができる。
【0018】
本発明に係る固体高分子形燃料電池は、上述したいずれかの補強膜付き膜電極接合体と、前記各補強膜上に設置されたガスケットと、前記ガスケットが設置された補強膜付き膜電極接合体を両側から挟持するよう設置されたセパレータと、を備えている。
【0019】
この固体高分子形燃料電池は、上述した補強膜付き膜電極接合体を有しているため、補強膜の剥離を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、補強膜の剥離を防止することのできる補強膜付き触媒層−電解質膜積層体、補強膜付き膜電極接合体、固体高分子形燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明に係る固体高分子形燃料電池の実施形態を示す正面断面図である。
【図2】図2は本発明に係る固体高分子形燃料電池のセパレータ及びガスケットを省略した実施形態を示す平面図である。
【図3】図3は本実施形態に係る補強膜付き膜電極接合体の外周縁部の詳細を示す拡大正面断面図である。
【図4】図4は本実施形態に係る固体高分子形燃料電池の製造方法を示す説明図である。
【図5】図5は本実施形態に係る触媒層形成用転写シートの製造方法を示す説明図である。
【図6】図6は本実施形態に係る補強膜付き触媒層−電解質膜積層体の製造方法を示す説明図である。
【図7】図7は本発明に係る固体高分子形燃料電池の他の実施形態を示す正面断面図である。
【図8】図8は本発明に係る固体高分子形燃料電池のさらに他の実施形態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る補強膜付き触媒層−電解質膜積層体、補強膜付き膜電極接合体、及び固体高分子形燃料電池の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、固体高分子形燃料電池1は、電解質膜2及び触媒層3からなる触媒層−電解質膜積層体10と、この触媒層−電解質膜積層体10から外方に延びる補強膜4と、触媒層3上に形成された導電性多孔質基材5とを備えている。また、固体高分子形燃料電池1は、補強膜4上に設置されたガスケット6や、これらを挟持するセパレータ7も備えている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0024】
電解質膜2は、平面視矩形状であり、この電解質膜2の両面に電解質膜2よりも一回り小さい触媒層3が形成されている。この電解質膜2の両面に触媒層3が形成されたものを触媒層−電解質膜積層体10という。触媒層3は、後述する補強膜4の内周縁部が接着される外周縁部31と、補強膜4の開口部41から露出する中央部32とから構成されている。また、触媒層3は、電解質膜2よりも一回り小さく形成されているために電解質膜2の外周縁部21上には触媒層3が形成されていないが、図7に示すように電解質膜2と同じ大きさに形成することもできる。なお、電解質膜2の外周縁から触媒層3の外周縁までの距離C(図3参照)は、0〜5mmであることが好ましい。また、電解質膜2の厚さは、通常20〜250μm程度、好ましくは20〜80μm程度であり、触媒層3の厚さは、限定的ではないが、通常1〜100μm程度、好ましくは2〜50μm程度である。
【0025】
そして、この触媒層−電解質膜積層体10の上面及び下面に、中央に開口部41を有する枠状の補強膜4がそれぞれ接着されている。補強膜4は、燃料電池の発電に用いられる燃料ガスや酸化剤ガスの透過を防止するガスバリア層42と、触媒層−電解質膜積層体10と接着する接着層43とから構成されており、接着層43が触媒層−電解質膜積層体10側に向けられている。このガスバリア層42の膜厚は、5〜50μmとすることが好ましく、接着層43の膜厚は、1〜50μmとすることが好ましい。補強膜4が触媒層−電解質膜積層体10に接着された状態では、補強膜4の内周縁部が触媒層3の外周縁部31に接着しており、開口部41からは触媒層3の外周縁部31を除いた部分である中央部32が露出している。なお、触媒層3の外周縁から補強膜4の内周縁までの距離B(図3参照)は、1〜10mmとすることが好ましい。
【0026】
また、補強膜4は、電解質膜2よりも一回り大きく形成されており、電解質2の外周縁部21上に接着するとともに、電解質膜2の外側で電解質膜2からはみ出た各補強膜4の外周縁部45同士が接着している。なお、補強膜4は電解質膜2と同じ大きさに形成することもできる。この補強膜4の外周縁から電解質膜2の外周縁までの距離D(図3参照)は0〜100mmであることが好ましい。このように、触媒層−電解質膜積層体10に補強膜4が接着されたものが、本発明の補強膜付き触媒層−電解質膜積層体に相当する。
【0027】
補強膜4の開口部41から露出している触媒層3の中央部32上に平面視矩形状の導電性多孔質基材5が形成されている。この導電性多孔質基材5の外周縁から補強膜4の内周縁までの距離A(図3参照)は、0〜5mmであることが好ましい。このように、触媒層3上に導電性多孔質基材5が形成されて電極Eを構成しており、電解質膜2の両面に電極Eが形成されたものを膜電極接合体20という。なお、本実施形態のように、膜電極接合体20に補強膜4が接着されているものが、本発明の補強膜付き膜電極接合体に相当する。
【0028】
そして、電極Eの周囲を囲むように枠状のガスケット6が設置されているとともに、電極E及びガスケット6上にセパレータ7が設置されている。セパレータ7は、導電性多孔質基材5と対向する領域にガス流路71が形成されている。
【0029】
次に上述したように構成された固体高分子形燃料電池1の各構成要素の材質について説明する。
【0030】
電解質膜2は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。なお、上記の水素イオン伝導性高分子電解質膜以外には、アニオン導電性固高分子電解質膜や液状物質含浸膜も挙げられる。アニオン伝導性電解質膜としては炭化水素系樹脂又はフッ素系樹脂等が挙げられ、具体例としては炭化水素系樹脂としては、旭化成(株)製のAciplex(登録商標)A201,211,221や、トクヤマ(株)製のネオセプタ(登録商標)AM−1,AHA等が挙げられ、フッ素系樹脂としては、東ソー(株)製のトスフレックス(登録商標)IE−SF34等が挙げられる。また液状物質含浸膜としては、例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)が挙げられる。
【0031】
触媒層3は、中央部32において、触媒粒子を担持させた炭素粒子と、水素イオン伝導性高分子電解質とを含有する。水素イオン伝導性高分子電解質としては、上述した電解質膜2に使用されるものと同じ材料を使用することができる。
【0032】
触媒粒子としては、例えば、白金や白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は前記金属と白金との合金である。
【0033】
炭素粒子は、導電性を有しているものであれば限定的ではなく、公知又は市販のものを広く使用できる。例えば、カーボンブラックや、黒鉛、活性炭等を1種又は2種以上で用いることができる。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を挙げることができる。炭素粒子の算術平均粒子径は通常5nm〜200nm程度、好ましくは20〜80nm程度である。この炭素粒子の平均粒子径は、例えば、粒子径分布測定装置LA−920:(株)堀場製作所製等により測定できる。
【0034】
また、触媒層3は、外周縁部31において、上述した炭素粒子や水素イオン伝導性高分子電解質を含有している。この外周縁部31における炭素粒子は触媒粒子を担持しておらず、すなわち外周縁部31において触媒層3は白金や白金化合物などの触媒粒子が含まれていない。
【0035】
補強膜4は、ガスバリア層42と接着層43とから構成されているが、ガスバリア層42は、水蒸気、水、燃料ガス及び酸化剤ガスに対するバリア性を有するポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルテンペン、ポリフェニレンオキサイド、ポリサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドなどを好ましく使用することができる。なお、ポリエステルは、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等を挙げることができる。
【0036】
また、接着層43の材料としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、例えば、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポエイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、あるいはエチレン−アクリル酸共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用することができる。またそれらを変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂を使用することができ、その中でも不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリプロピレンもしくは不飽和カルボン酸で変性したポリエチレンを使用することが絶縁性もしくは耐熱性の点で好ましい。また、その他にもパーフルオロカーボンスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂といったような上記電解質膜2と同様の材料を挙げることができ、具体的には、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等を挙げることができる。
【0037】
導電性多孔質基材5としては、公知であり、アノード(燃料極)、カソードを構成する各種の導電性多孔質基材を使用でき、燃料である燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層3に供給するため、多孔質の導電性基材からなっている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス等が挙げられる。
【0038】
ガスケット6としては、熱プレスに耐えうる強度を保ち、かつ、外部に燃料及び酸化剤を漏出しない程度のガスバリア性を有しているものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートやテフロン(登録商標)シート、シリコンゴムシート等を例示することができる。
【0039】
セパレータ7としては、公知であり、燃料電池内の環境においても安定な導電性板であればよく、一般的には、カーボン板にガス流路71を形成したものが用いられる。また、セパレータ7をステンレス等の金属により構成し、金属の表面にクロム、白金族金属又はその酸化物、導電性ポリマーなどの導電性材料からなる被膜を形成したものや、同様にセパレータを金属によって構成し、該金属の表面に銀、白金族の複合酸化物、窒化クロム等の材料によるメッキ処理を施したもの等も使用可能である。
【0040】
次に上述した固体高分子形燃料電池1の製造方法について図面を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池1の製造方法を示す説明図である。
【0041】
図4に示すように、上述した材料からなる電解質膜2を準備し、この電解質膜2の両面に触媒層形成用転写シート8を重ねて配置する。この触媒層形成用転写シート8とは、転写される触媒層3が転写用基材81に形成されたものである。
【0042】
ここで触媒層形成用転写シート8の製造方法について説明する。まず、上述した触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散して第1の触媒ペーストを作製する。この第1の触媒ペーストは、触媒層3の中央部32に使用される。また、触媒層3の外周縁部31用として、炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散して第2の触媒ペーストを作成する。この第2の触媒ペーストは、第1の触媒ペーストと異なり、触媒粒子が含まれていない。
【0043】
そして、形成される触媒層3が所望の膜厚になるよう、第1の触媒ペーストを転写用基材81上に塗工・乾燥して触媒層3の中央部32を形成するとともに、第2の触媒ペーストを中央部32の周りに塗工・乾燥して外周縁部31を形成する。必要に応じて離型層を介して各触媒ペーストを転写用基材81上に塗工する。これにより転写用基材81の触媒層3からの離型性を一層向上させることができる。離型層としては、例えば、転写用基材81の表面に、公知のワックスから構成されたものやフッ素樹脂をコーティングで設けることもできるが、ケイ素酸化物等からなる蒸着層を離型層として設けることが望ましい。なお、この触媒層3の外周縁部31と中央部32の形成順序は特に限定されるものではない。また、各触媒ペーストの塗工方法としては、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。触媒ペーストを塗工した後、所定の温度及び時間で乾燥することにより転写用基材81上に触媒層3が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは10分〜1時間程度である。
【0044】
この第1及び第2の触媒ペーストの塗工方法の一例を図5に基づいて説明すると、まず、転写用基材81上に、触媒層3の中央部32と同じ大きさの開口部91aを有する第1のマスク9aを載置する(図5(a))。そして、第1のマスク9aの開口部91aを介して第1の触媒ペーストを転写用基材81上に塗工・乾燥し触媒層3の中央部32を形成する(図5(b))。次に第1のマスク9aを外して、第1のマスク9aの開口部91aと同じ大きさ、すなわち触媒層3の中央部32と同じ大きさの第2のマスク9bを中央部32上に載置して中央部32をマスクする(図5(c))。そして、第2の触媒ペーストを転写用基材81上に塗工・乾燥して触媒層3の外周縁部31を形成する(図5(d))。そして、第2のマスク9bを外し、外周縁部31の幅が所望の値となるよう触媒層形成用転写シート8を切断して触媒層形成用転写シート8が完成する(図5(e))。
【0045】
上記各触媒ペーストに使用される溶剤としては、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水またはこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。
【0046】
転写用基材81としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。さらに転写用基材81は、高分子フィルム以外にアート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙などの非塗工紙であっても良い。転写用基材81の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から通常6〜100μm程度、好ましくは10〜30μm程度とするのがよい。従って、転写用基材81としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0047】
図4に戻って、固体高分子形燃料電池の製造方法について説明を続ける。上述したように作製した触媒層形成用転写シート8を触媒層3が電解質膜1に対面するように配置し(図4(a))、転写シート8の背面側から加熱プレスを施して触媒層3を電解質膜2に転写させて、転写シート8の転写用基材81を剥離する(図4(b))。作業性を考慮すると、触媒層3を電解質膜2の両面に同時に積層することが好ましいが片面ずつ触媒層3を形成することもできる。加熱プレスの加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20MPa程度、好ましくは1〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜2の破損、変形等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。このように電解質膜2の両面に触媒層3を形成することで触媒層−電解質膜積層体10が形成される。
【0048】
次に、このようにして形成された触媒層−電解質膜積層体10に、補強膜4を取り付ける(図4(c))。この補強膜4の製造方法の一例について説明すると、まず、上述した材料からなるシート状のガスバリア層42を準備する。そして、上述した接着層43の材料を溶融した状態にし、これを溶融押し出し法によってガスバリア層42上に押し出し、接着層43をガスバリア層42上に形成することで補強膜4を作製する。
【0049】
以上のように作製した補強膜4を触媒層−電解質膜積層体10に接合させる(図4(c))。この工程について図6を参照しつつ詳細に説明する。図6は、触媒層−電解質膜積層体10に補強膜4を取り付ける工程を示した平面図である。図6に示すように、上述した材料からなる2枚の補強膜4を重ねて、1辺を残した残り3辺を互いに接着させる。これによって、2枚の補強膜4は、コ字状に接着部が形成されるとともに、左側の一辺が開口している袋体となる(図6(a))。なお、この接着方法は種々の公知の方法を採用することができ、例えば、高周波溶着や、熱風式溶着、熱板式溶着、インパルス式溶着、コテ式溶着、超音波溶着などによって接着させることができる。
【0050】
補強膜4によって袋体を形成すると、次に、この袋体を構成する各補強膜4の中央部に易除去領域44を形成する(図6(b))。この易除去領域44は、触媒層3の中央部32とほぼ同じ大きさとする。なお、この易除去領域44とは、容易に取り除ける領域のことをいい、例えば、その外周縁にミシン目を入れることや、一部だけ残して切込みを入れること等によって形成することができる。このように易除去領域44が形成された袋体に、その接着されていない左側から、触媒層−電解質膜積層体10を挿入して所定位置まで移動させる(図6(c))。この所定位置とは、触媒層−電解質膜積層体10の触媒層3の外周縁部31を除いた部分が易除去領域44に対向している位置のことをいう。
【0051】
触媒層−電解質膜積層体10を所定位置まで移動させた後、易除去領域44の外周縁のミシン目を切断して易除去領域44を各補強膜4から取り外すことで、各補強膜4の中央部に開口部41が形成される(図6(d))。このように易除去領域44が各補強膜4から取り外されて開口部41が形成されると、触媒層−電解質膜積層体10の触媒層3が外周縁部31を除いて各開口部41から露出した状態となる。そして、この状態で補強膜4の接着されていなかった残りの部分を公知の方法で接着させることで、補強膜4は、触媒層−電解質膜積層体10の触媒層3の外周縁部31や、電解質膜2の外周縁部21に接着するとともに、補強膜4同士でも接着する。以上の工程によって、補強膜付き触媒層−電解質膜積層体が完成する(図6(e)、図4(c))。
【0052】
図4に戻って、固体高分子形燃料電池1の製造方法の説明を続ける。上述した補強膜付き触媒層−電解質膜積層体の開口部41から露出している触媒層3の中央部32上に、導電性多孔質基材5を熱圧着により積層形成して、補強膜付き膜電極接合体が完成する(図4(d))。そして、触媒層3及び導電性多孔質基材5からなる電極Eの周囲を囲むように補強膜4上にガスケット6を配置する。続いて、ガス流路71が導電性多孔質基材5と対向するよう、セパレータ7を導電性多孔質基材5及びガスケット6上に配置する。最後に導電性多孔質基材5とセパレータ7とが電気的に接続するようにセパレータ7で膜電極接合体を挟持することによって、固体高分子形燃料電池1が完成する(図4(e))。
【0053】
以上のように、本実施形態では、補強膜4の内周縁部によって覆われる触媒層3の外周縁部31には触媒が含まれていない。このため、触媒層3の外周縁部に過酸化水素が溶解された生成水が滞留しても、過酸化水素はラジカル分解せず、ひいては補強膜を攻撃して補強膜を剥離させることを防止することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記触媒層3の外周縁部31と補強膜4の内周縁部との間にわたって延びる繊維状物質をさらに備えてもよい。この繊維状物質のアンカー効果によって、触媒層3の外周縁部31と補強膜4との密着性を向上させることができる。固体高分子形燃料電池1を製造する際は、繊維状物質は、触媒層3の外周縁部31に用いられる第2の触媒ペーストに添加させたり、もしくは接着層43内に添加することもできる。繊維状物質の材質としては金属、無機、有機高分子などの使用が可能である。具体例としてマグネシウム合金やステンレスやチタンなどの金属繊維、気相成長法炭素繊維(VGCF(登録商標))、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォールなどの炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維や無機ウィスカー、その他ポリエステルやポリアミドなどの人工高分子、綿や絹などの動物・植物繊維やウォラストナイトなどの天然繊維、セルロースやデキストランなどの多糖類やコラーゲンやセリシンそしてアルブミンなどポリペプチドを用いた再生繊維およびこれらの誘導体、複合体が挙げられる。中でも、好ましい繊維状物質としてはVGCF、ガラス繊維、ステンレス金属繊維が挙げられる。これらの繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。繊維径は限定的でなく、平均が50〜400nm、好ましくは100〜250nm程度とすればよい。繊維長も限定的でなく、平均が5〜500μm、好ましくは10〜200μm程度とすればよい。なお、繊維の繊維径、繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定した画像等により測定できる。
【0055】
また、上記実施形態では、導電性多孔質基材5は、補強膜4の開口部41内から露出した触媒層上に形成されているが、図8に示すように、導電性多孔質基材5を補強膜4の開口部41よりも大きく形成し、外周縁部が補強膜4の内周縁部上に乗り上げるように導電性多孔質基材5を設置することもできる。
【0056】
また、上記実施形態では、補強膜4を一旦、袋体にして、触媒層−電解質膜積層体10を挿入するという製造方法を採用しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、触媒層−電解質膜積層体10の両面に、予め開口部41が形成された補強膜4を、接着層43が触媒層−電解質膜積層体10を向くようにそれぞれ配置し、公知の接着方法などによって触媒層−電解質膜積層体10の両面に補強膜4を接着させて、補強膜付き触媒層−電解質膜積層体を作製することもできる。
【0057】
また、上記実施形態では、補強膜4は、ガスバリア層42と接着層43の2層から構成されているが、3層以上であってもよい。例えば、第2の接着層をさらに設け、接着層43,ガスバリア層42,第2の接着層という3層構造とすることができる。この第2の接着層はガスケットと接着するように構成されていることが好ましい。
【0058】
また、上記実施形態では、アノード及びカソードの両方の触媒層3の外周縁部31が触媒を含んでいないが、アノード側の触媒層3の外周縁部31は触媒を含んでいてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、固体高分子形燃料電池1を構成する電解質膜2や触媒層3、導電性多孔質基材5など全て平面視矩形状として説明したが、特に形状は限定されるものではなく、例えば平面視円形状とすることもできる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
電解質膜2は、63×63mmの大きさに切断された膜厚53μmのNRE212CS(Dupont社製)を使用した。
【0062】
次に、触媒層形成用転写シート8を次の要領で作製した(図5参照)。まず、白金触媒担持カーボン(白金担持量:45.7wt%、田中貴金属社製、TEC10E50E)2gに、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、第1の触媒ペーストを調製した。また、炭素粒子(ファーネスブラック(バルカンxc72R、キャボット社製))2gに、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、第2の触媒ペーストを調製した。
【0063】
次に、転写用基材81としてポリエステルフィルム(東レ製、X44、膜厚25μm)を準備し、この転写用基材81上に50×50mmの開口部91aを持つ第1のマスク9aを載せた(図5(a))。そして、触媒層乾燥後の白金重量が0.4mg/cmとなるように第1の触媒ペーストを第1のマスク9aの開口部91aを介して転写用基材81上に塗工、乾燥し、触媒層3の中央部32を作製した(図5(b))。
【0064】
続いて、第1の触媒ペーストによって形成した触媒層3の中央部32と同じ大きさの第2のマスク9bを触媒層3の中央部32上に重なるように載せ(図5(c))、乾燥後の高さが同じとなるように第2の触媒ペーストを転写用基材81上に塗工、乾燥し、触媒層3の外周縁部31を形成した(図5(d))。このように作製した触媒層形成用転写シート8を触媒層外周縁部が5mm幅となるように60×60mmの大きさに切断して触媒層形成用転写シート8を完成させた(図5(e))。
【0065】
この切断後の触媒層形成用転写シート8を電解質膜2の両面それぞれに触媒層3が電解質膜2側を向くように中心を合わせて配置した。そして、135℃、5.0MPa、150秒の条件で熱プレスすることで、電解質膜2の両面に触媒層3を形成し、触媒層−電解質膜積層体10を作製した。なお、触媒層3の厚さは外周縁部31,中央部32ともに20μmである。
【0066】
続いて、補強膜4を作製した。補強膜4のガスバリア層42として、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(帝人社製、テオネックス、膜厚12μm)を使用した。このバスバリア層42上に、溶融押出し法により、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリプロピレンを30μmの厚さで押し出し、接着層43を形成した。この補強膜4を80×80mmの大きさに切断し、その中央部に50×50mmの大きさの開口部41を形成した。そして、補強膜4を開口部41が触媒層3の中央部32に重なるように触媒層−電解質膜積層体10の両面に配置し、130℃、1.0MPa、30秒の条件で熱プレスすることで補強膜4を触媒層−電解質膜積層体10に溶着し、補強膜付き触媒層−電解質膜積層体を作製した。
【0067】
さらに続いて、開口部41から露出している触媒層3上に、導電性多孔質基材5として、49×49mmの大きさに切断されたカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−090、厚さ280μm)を積層し、補強膜付き膜電極接合体を形成した。
【0068】
(実施例2)
実施例2として、補強膜4の材料が異なる点、導電性多孔質基材5の大きさが異なる点以外は、上述した実施例1と同一の材料、寸法、製造方法で、補強膜付き電解質膜−電極接合体を作製した。
【0069】
なお、補強膜4の材料は、ガスバリア層42として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(帝人社製、テフレックス、膜厚20μm)を使用した。このポリエチレンテレフタレート上に、溶融押出し法により、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリエチレンを30μmの厚さで押し出し、接着層43を形成した。
【0070】
また、導電性多孔質基材5として、50×50mmの大きさに切断されたカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−090、厚さ280μm)を積層し、補強膜付き膜電極接合体を形成した。
(実施例3)
電解質膜2の大きさが異なる点、触媒層3の外周縁部31に用いられる第2の触媒ペーストが炭素繊維を含む点、及び補強膜4に用いる材料を実施例2と同じにした点以外は、上述した実施例1と同一の材料、寸法、製造方法で補強膜付き膜電極接合体を作製した。なお、第2の触媒ペーストは、炭素粒子(ファーネスブラック(バルカンxc72R、キャボット社製))1.5gに、VGCF(標準品)(昭和電工(株)製)0.5g、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、調製した。なお、電解質膜2の大きさは60mm×60mmとした。
【0071】
(実施例4)
触媒層3の外周縁部31に用いられる第2の触媒ペーストが金属繊維を含む点以外は、上述した実施例1と同一の材料、寸法、製造方法で補強膜付き膜電極接合体を作製した。なお、第2の触媒ペーストは、炭素粒子(ファーネスブラック(バルカンxc72R、キャボット社製))1.5gに、X-SMF300UE-EP(JFEテクノリサーチ(株)製)0.5g、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、調製した。
【0072】
(実施例5)
触媒層3の外周縁部31に用いられる第2の触媒ペーストがガラス繊維を含む点、及び補強膜4の材料として実施例2と同一のものを使用した点以外は、上述した実施例1と同一の材料、寸法、製造方法で補強膜付き膜電極接合体を作製した。なお、第2の触媒ペーストは、炭素粒子(ファーネスブラック(バルカンxc72R、キャボット社製))1.5gに、石英ウール(スーパーファイン(繊維太さ0.5-3μm) 株式会社大興製作所製)0.5g、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、調製した。
【0073】
(評価方法)
実施例1〜5の補強膜付き膜電極接合体について、ガスケット6及びセパレータ7を設置して固体高分子形燃料電池をそれぞれ作製して負荷変動サイクル試験を実施し、その結果を表1に示した。このときの測定条件は、セル温度80℃、燃料利用率70%、酸化剤利用率40%、加湿温度50℃とした。また、負荷変動サイクル試験は、電流密度0.3A/cm2にて1分間発電した後、電流密度0.01A/cm2にて1分間発電するサイクルを繰り返した。この負荷変動サイクル試験の結果、実施例1、2の燃料電池セルは1000時間、実施例3〜5の燃料電池セルは1500時間経過しても電圧が低下することはなかった。また、この負荷変動サイクル試験後に電解質膜を確認したところ、全ての実施例において電解質膜の破損は見られなった。
【0074】
【表1】

【符号の説明】
【0075】
1 固体高分子形燃料電池
2 イオン伝導性高分子電解質膜
3 触媒層
31 外周縁部
4 補強膜
41 開口部
5 導電性多孔質基材
6 ガスケット
7 セパレータ
10 触媒層−電解質膜積層体
20 膜電極接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性高分子電解質膜と、
前記電解質膜の両面に形成され、炭素粒子、イオン伝導性高分子電解質、及び触媒を含む触媒層と、
中央に開口部を有しており、内周縁部が前記触媒層の外周縁部上に接着するよう、前記電解質膜及び触媒層から構成された触媒層−電解質膜積層体の両面に接着された補強膜と、を備え、
前記触媒層は、前記外周縁部に触媒を含まない、補強膜付き触媒層−電解質膜積層体。
【請求項2】
前記補強膜は、前記電解質膜よりも一回り大きく形成されており、前記電解質膜の外側で外周縁部同士が接着している、請求項1に記載の補強膜付き触媒層−電解質膜積層体。
【請求項3】
前記触媒層の外周縁部と前記補強膜の内周縁部との間にわたって延びる繊維状物質をさらに備えた、請求項1又は2に記載の補強膜付き触媒層−電解質膜積層体。
【請求項4】
前記補強膜は、前記触媒層と接着する接着層と、燃料ガス及び酸化剤ガスの透過を防止するガスバリア層と、を有する請求項1〜3のいずれかに記載の補強膜付き触媒層−電解質膜積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の補強膜付き触媒層−電解質膜積層体と、
前記各触媒層上に形成された導電性多孔質基材と、
を備えた、補強膜付き膜電極接合体。
【請求項6】
前記導電性多孔質基材は、前記各補強膜の開口部から露出する触媒層上に形成された、請求項5に記載の補強膜付き膜電極接合体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の補強膜付き膜電極接合体と、
前記各補強膜上に設置されたガスケットと、
前記ガスケットが設置された補強膜付き膜電極接合体を両側から挟持するよう設置されたセパレータと、
を備えた、固体高分子形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−225364(P2010−225364A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70023(P2009−70023)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】