説明

補強要素の分離を検出するための方法

本発明は、乗物における乗物ボディのボディスキン要素(1)に取り付けられる補強要素(2)の分離を検出するための方法に関し、ボディスキン要素(1)及び補強要素(2)は、中間の接着層(3)を伴って共に電気コンデンサ(4)を構成し、前記コンデンサは、補強要素(2)からのボディスキン要素(1)の少なくとも部分的な分離がある場合に変化する静電容量(C)を有し、補強要素(2)の分離を検出するために、コンデンサ(4)の静電容量(C)又はコンデンサ(4)の静電容量における変化が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物のボディスキン要素に固定される補強要素の分離を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量構造の乗物が、益々製造されてきており、重量を軽減することは、燃費を最小にすることにつながる。
【0003】
航空機の乗物ボディは、複数のセクションから構成され得る。1つのセクションは、フォーマ、長手方向の補強要素、及びそこに固定されるボディスキン要素のような、構造要素部分又は構造要素からなる。
【0004】
図1は、乗物ボディの基礎構造アセンブリを示す。安定化ストラット(支柱)又はストリンガが、乗物の長手方向に延び、かつ、ボディの長手方向の軸に対して横切って延びる横フォーマに取り付けられている。安定化ストラット又はストリンガ要素及び横フォーマは、車体に強固な断面形状を与える。ボディスキン要素は、補強要素、例えば、長手方向の補強要素及び横フォーマにリベット止めされ、「シェル(殻)」を構成する。複数のシェルは、「バレル」として参照されるボディのセクションを構成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗物の組み立て及び運行中に、荷重を受けるボディスキン要素から、部分的に又は完全に、平坦な補強要素が分離し得る。補強要素の分離は、特に航空機において、安全性に関して危機的なものである。乗物の製造後に、乗物のシェルの外部の目視検査が、分離したボディスキン要素又は補強要素があるかどうかを確認するために、品質管理工程の一部として実行される。これらのチェックは、非常に時間を浪費するものである。加えて、より時間の浪費になるが、内部の目視検査もまた、内部のクラッディング部品の分解後に実行され得る。
【0006】
それ故、本発明の目的は、最小限の労力で、かつ、最小の時間で実行され得る補強要素の部分的又は完全な分離を決定するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乗物の乗物ボディのボディスキン要素に取り付けられる補強要素の分離を検出するための方法であって、ボディスキン要素及び補強要素は、中間の接着層を伴って共に電気コンデンサを構成し、前記コンデンサは、ボディスキン要素からの補強要素の少なくとも部分的な分離があるときに変化する静電容量を有し、コンデンサの静電容量又は静電容量における変化が補強要素の分離を検出するために測定される方法を提供する。
【0008】
本発明による方法の一実施形態において、調整可能な周波数を伴う交流電圧信号が、その静電容量を測定するためにコンデンサに適用される。
【0009】
本発明による方法の一実施形態において、電気パルスがコンデンサに導入される。
【0010】
本発明による方法の一実施形態において、電気コンデンサの測定される静電容量は、セットポイント静電容量と比較される。
【0011】
本発明による方法の一実施形態において、測定された静電容量とセットポイント静電容量との間の差が調整可能な許容閾値を越える場合に、補強要素の少なくとも部分的な分離が検出される。
【0012】
本発明による方法の一実施形態において、後方散乱測定によって静電容量の変化が検出された場合に、補強要素の少なくとも部分的な分離が検出される。
【0013】
本発明は、さらに、補強要素に取り付けられるボディスキン要素を備える乗物ボディにおいて、ボディスキン要素及び補強要素は、中間の接着層を伴って共に1以上の電気コンデンサを構成し、前記コンデンサは、1以上の補強要素が各ボディスキン要素から分離した場合に、静電容量又はコンデンサの静電容量の変化が、補強要素の分離を検出するために測定可能となる乗物ボディを提供する。
【0014】
本発明による乗物ボディの一実施形態において、補強要素及びボディ要素は、金属又は炭素繊維強化プラスチック材料(CFRP)からなる。
【0015】
本発明による乗物ボディの一実施形態において、接着層は、誘電材料からなる。
【0016】
本発明による乗物ボディの一実施形態において、ジェネレータによって生成される調整可能な周波数を伴う電子交流電圧信号が、静電容量を測定するために補強要素又はボディスキン要素に適用される。
【0017】
本発明による乗物ボディの一実施形態において、ジェネレータによって生成される電気パルスが、静電容量の変化を検出するために、補強要素又はボディスキン要素に沿って導かれる。
【0018】
本発明による乗物ボディの一実施形態において、補強要素は、乗物ボディの長手方向に延びる安定化ストラットである。
【0019】
本発明による乗物ボディの一実施形態において、前記乗物ボディは、航空機の機体である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来技術による乗物ボディの構造アセンブリを示す。
【図2】図2は、本発明による乗物ボディ内のボディスキン要素と補強要素との接続点の断面図である。
【図3】図3は、本発明による検出方法を例示するために、ボディスキン要素の分離を検出するための測定アセンブリを示す。
【図4】図4は、本発明による検出方法の一実施形態を例示する信号グラフである。
【図5】図5は、本発明による検出方法を例示するために、ボディスキン要素の分離を検出するための他の測定アセンブリを示す。
【図6】図6は、本発明による検出方法のさらなる実施形態を例示する信号グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
補強要素及び乗物ボディの分離を検出するための本発明による両方の方法のさらなる望ましい実施形態が、本発明の本質的な特徴を例示するための添付図面を参照して記述される。
【0022】
図2に示すように、乗物ボディの場合において、ボディスキン要素1は、補強要素2に取り付けられ、すなわち、接着層3を介して接着される。接着層3は、ボディスキン要素1と補強要素2との間で誘電層を構成する。接着層に加えて、ボディスキン要素1及び補強要素2はまた、追加の固定手段、例えば、絶縁されたリベットを介して相互に接続される。可能な実施形態において、誘電層3は、エポキシ系接着剤からなる。ボディスキン要素1及び補強要素2は、中間の接着層3を伴って共に電気コンデンサ4を構成する。
【0023】
コンデンサ4の静電容量は、以下の方程式によって与えられる。
【数1】

ここで、
ε0は、真空誘電率、
εrは、接着材料の誘電体誘電率、
Aは、接着面積、
dは、ボディスキン要素1と補強要素2との間の距離、若しくは接着層3の厚さである。
【0024】
補強要素2がボディスキン要素1から完全に又は部分的に分離する場合には、コンデンサ4の静電容量Cが変化する。コンデンサ4の静電容量Cは、ボディスキン要素1からの補強要素2の部分的な又は完全な分離を検出するために測定される。例えば、補強要素2は、乗物ボディの長手方向又は横方向に延びる安定化ストラット(支柱)である。乗物は、例えば自動車又は航空機等の乗物であり得る。
【0025】
図2は、ボディスキン要素と補強要素2との間の接続点を示す。乗物ボディ内では、異なる補強要素2に関する複数の接続点が、各ボディスキン要素1に備えられ、それぞれの場合に、誘電層3は、ボディスキン要素1と補強要素2との間に設けられる。これらの接続点は、並列に接続されるコンデンサCを構成する。
【0026】
ボディスキン要素1及び補強要素2は、軽量材料からなる。可能な実施形態において、ボディスキン要素1及び補強要素2は、繊維複合材料からなり、特に、炭素繊維強化プラスチック材料(CFRP)からなる。他の実施形態において、ボディスキン要素1及び補強要素2は、軽量金属材料、例えばアルミニウム又はチタニウムからなる。
【0027】
図3は、補強要素2の分離を検出するために、本発明による方法を実行するための測定アセンブリを示す。
【0028】
ボディスキン要素1及び補強要素2は、中間の接着層3とともにコンデンサ4を構成し、前記コンデンサは、スイッチ5を介して、調整可能な周波数fを伴う電気交流電圧信号ACを供給するジェネレータ6に接続可能になっている。測定装置7が、コンデンサ4を横切る電圧降下Uを測定し、コンデンサ4の静電容量Cを決定する。図3に示す測定アセンブリの実施形態において、電気コンデンサ4の測定される静電容量Cは、セットポイント静電容量Cセットポイントと比較される。測定装置7は、測定された静電容量Cとセットポイント静電容量Cセットポイントとの間の差ΔCが調整可能な許容閾値を越える場合に、ボディスキン要素1からの補強要素2の分離を検出する。この例において、測定装置7は、ライン8を経由して警告信号を発信する。問題となるボディスキン要素1は、その後、メンテナンススタッフによって、視覚的にチェックされる。交流電圧ジェネレータ6は、乗物、例えば航空機の内部の交流電圧ジェネレータであり得る。他の実施形態において、外部の交流電圧ジェネレータ6が使用される。可能な実施形態において、測定装置7はまた、乗物内、航空機内に組み込まれる。
【0029】
可能な実施形態において、セットポイント静電容量Cセットポイントは、乗物の製造後に測定され、メモリに保存される。その後、コンデンサ4の静電容量Cが変化したか、又は変化してないかどうかを決定するために定期的に検査が行われる。静電容量Cにおける変化は、部分的に分離したボディスキン要素1の表示となり得る。
【0030】
図4は、図3に例示される測定アセンブリのための本発明による検出方法を例示するグラフを示す。示される曲線は、ボディスキン要素がそれぞれの補強要素2に強固に接着されている損傷してないコンデンサ、すなわち、コンデンサ4に依存する周波数である。静電容量は、適用される交流電圧信号の周波数の増加に従って減少する。コンデンサ4が損傷した場合、又は補強要素2がそれぞれのボディスキン要素1から分離した場合には、コンデンサ4の静電容量Cは、図2のラインIIによって例示されるように減少する。完全なコンデンサ4の静電容量Cは、それ故、測定され、かつ所定の測定周波数fMで選択的に一時的に保存されたセットポイント静電容量(Cセットポイント)に対応する。コンデンサ4が損傷すると、その静電容量Cは、測定周波数fMで静電容量C’に減少する。静電容量C’がオリジナルの静電容量Cから大きく逸脱する、すなわち、調整可能な許容閾値を越えた場合に、測定装置7は、警告信号を発信し、対応するボディスキン要素1が検査される。
【0031】
図5は、本発明による方法を実行するための他の測定アセンブリを示す。信号ジェネレータ6によって生成される少なくとも1つの信号パルスが、上記のコンデンサ4の2つのプレート1,2のうちの1つに送られる一方、コンデンサ4の他の1つのプレートはアースとして作用している。少なくとも一部において、コンデンサ4の静電容量が変化する分離又は分離点で、この信号パルスが反射される。図6は、この後方拡散測定を例示する振幅−時間のグラフを示す。下側の信号曲線が、損傷していない、又は取り付けられたボディスキン要素を反映する一方、上側の信号曲線は、少なくとも部分的な分離の場合に与えられる。
【0032】
本発明による方法は、補強要素2の分離を検出するだけでなく、接着層3が望ましいセットポイント厚さdセットホ゜イントを有するかどうかを検査するために使用され得る。
【0033】
本発明による方法は、乗物の部品の複雑な分解を必要とすることなく、素早いチェックを実行することを可能にする。本発明による方法は、補強要素2、すなわち、例えば、圧力下又は非圧力下の範囲において、ストリンガ又は補強されたCFRP構造の分離を検出することを可能にする。本発明による方法は、乗物、つまり航空機の製造の後に、品質管理工程の一部として実行され得る。さらに、本発明による方法は、メンテナンスの間に実行され得る。可能な実施形態において、本発明による方法はまた、乗物の運転中に実施され得る。乗物は、軽量構造のどのような乗物、たとえば、自動車、航空機、鉄道車両、又は海運船舶でもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物ボディのボディスキン要素(1)に取り付けられる補強要素(2)の分離を検出するための方法であって、
ボディスキン要素(1)及び補強要素(2)は、中間の接着層(3)を伴って共に電気コンデンサ(4)を構成し、前記コンデンサは、ボディスキン要素(1)からの補強要素(2)の少なくとも部分的な分離があるときに変化する静電容量(C)を有し、静電容量(C)又はコンデンサの静電容量(C)における変化(ΔC)が補強要素(2)の分離を検出するために測定される方法。
【請求項2】
静電容量(C)を測定するために、調整可能な周波数(f)を伴う交流電圧信号が電気コンデンサ(4)に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
静電容量における変化を測定するために少なくとも1つの信号パルスが電気コンデンサ(4)に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電気コンデンサ(4)の測定される静電容量(C)がセットポイント静電容量(Cセットポイント)と比較される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
測定された静電容量(C)とセットポイント静電容量(Cセットポイント)との間の差が、調整可能な許容閾値を越えた場合に、補強要素(2)の分離が検出される請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
補強要素(2)に取り付けられるボディスキン要素(1)を備える乗物ボディにおいて、
ボディスキン要素(1)及び補強要素(2)は、中間の接着層(3)を伴って共に1以上の電気コンデンサ(4)を構成し、前記コンデンサは、1以上の補強要素(2)が各ボディスキン要素(1)から分離した場合に変化する静電容量(C)を有し、静電容量(C)又はコンデンサ(4)の静電容量における変化が、補強要素(2)の分離を検出するために測定可能となる乗物ボディ。
【請求項7】
前記補強要素(2)及びボディスキン要素(1)が、炭素繊維強化プラスチック材料(CFRP)からなる請求項6に記載の乗物ボディ。
【請求項8】
前記接着層(3)が誘電材料からなる請求項6又は7に記載の乗物ボディ。
【請求項9】
ジェネレータ(G)によって生成される調整可能な周波数(f)を伴う交流電圧信号が、前記静電容量(C)を測定するために補強要素(2)又はボディスキン要素(1)に適用され得る請求項6から8のいずれか1項に記載の乗物ボディ。
【請求項10】
前記補強要素(2)が乗物ボディの長手方向又は横方向に延びる安定化ストラットである請求項6から9のいずれか1項に記載の乗物ボディ。
【請求項11】
乗物が航空機である請求項6から10のいずれか1項に記載の乗物ボディ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−527425(P2011−527425A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517165(P2011−517165)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058793
【国際公開番号】WO2010/004019
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511009721)エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】AIRBUS OPERATIONS GMBH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg(DE)
【Fターム(参考)】