説明

補整帯を有する衣類

【課題】段差のない滑らかなボディラインを形成しつつ、ずり下がりの防止を可能にした補整帯を有する衣類を提供する。
【解決手段】 ショーツ1は、本体部10と、着用者のウエストラインに沿って延在する幅広のベルト20を備える。ベルト20の長手方向の右端20aと左端20bとは、左右外腹位置で本体部10に縫着され、右端20aと左端20bとの間の部分は本体部10から遊離している。本体部10の上端縁10aは、腹部中心位置から後中心位置に向かって下方に傾斜し、ベルト20の下端縁20dは、縫着ラインA1,A2の位置から後中心位置に向かって上方に傾斜している。本体部10とベルト20とは本体部10の脇位置で重なり合い、重合領域Tを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補整帯を有する衣類に関し、特に体形補整機能を有する補整帯を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許第3555939号公報がある。この公報に記載されたハイウエストガードルは、横方向に伸縮性を有するベルトと、ウエストラインからアンダーバストまでを覆うウエスト布と、腹部と臀部を覆うパンティ布、大腿部を覆う大腿布とを備える。そして、着用者のアンダーバストから大腿部までを完全に被覆することで、ウエストを引き締め、美しいボディライン作りが図られている。
【0003】
また、特開2002-38302号公報に記載された女性用ショーツは、伸縮性のある前身頃と後身頃とを備え、前身頃の側端部及び後身頃の側端部を三角形として互いに重ね合わせている。そして、前身頃及び後身頃の側端部上縁と側端部同士の交差点とでこれらの側端部を互いに縫着することで、生地の伸縮性を保ち、着用者の腰骨部への圧迫感や窮屈感を軽減している。
【特許文献1】特許第3555939号公報
【特許文献2】特開2002-38302号公報
【特許文献3】実公昭43-4170号公報
【特許文献4】実用新案登録第3069403号公報
【特許文献5】実公平6-19522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの衣類では、一定の締め付け力を得るため、収縮性を有するベルトやウエストゴムが用いられる。このため、着用時にベルトやウエストゴムが体に食い込み、体にベルトやウエストゴムによる段差が生じ、滑らかなボディラインを形成し難かった。また、着用者が立ったり座ったりする動作の繰り返しによって、衣類が臀部に引きずられ、衣類のずり下がる現象が発生し、快適なはき心地を得られない問題点があった。
【0005】
本発明は、段差のない滑らかなボディラインを形成しつつ、ずり下がりの防止を可能にした補整帯を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る補整帯を有する衣類は、少なくとも着用者の腹部から臀部までを被覆する本体部と、本体部の外側に配置され、着用者のウエストラインに沿って延在する幅広の補整帯とを備え、補整帯と本体部とは、本体部の脇位置で重なり合い、補整帯の長手方向の両端は、本体部の左右外腹位置で丈方向に沿って本体部にそれぞれ縫着され、補整帯の長手方向の両端の間の部分は、本体部から遊離していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、補整帯の長手方向の両端は左右外腹位置で本体部に縫着され、長手方向の両端の間の部分は本体部から遊離しているので、着用時に本体部による引き締め力と、補整帯による引き締め力とがそれぞれ生じ、これらの引き締め力は、着用者の腹部を押え、ウエスト周りの肉を引き締める。加えて、本体部と補整帯とは本体部の脇位置で重なり合っているため、脇腹の肉を引き締める力を大きくすることで、脇腹のたるみがちな肉を整えることができる。更に、補整帯が幅広く形成されているので、補整帯による引き締め力が広範囲にわたって腹部とウエスト周りの肉をサポートし、本体部による体への締め付けを軽減することができる。このように本体部による引き締め力と補整帯による引き締め力との協働により、腹部を押さえ、ウエスト周りの肉を引き締め、本体部による段差の発生を確実に防止することができ、滑らかなボディラインを形成することが可能となる。
【0008】
また、補整帯により本体部を上方向に引き上げる機能を発揮するため、本体部のずり下がりの発生を防止することができる。更に、補整帯の長手方向の両端の間の部分は、本体部から遊離しているので、本体部と補整帯とは、着用者の腹部とウエスト周りの肉をサポートしながら、互いに影響せずそれぞれ着用者の動きに追従することができ、快適なはき心地を得られる。
【0009】
本発明に係る補整帯を有する衣類において、本体部の上端縁は、腹部中心位置から後中心位置に向かって下方に傾斜していることが好適である。
このようにすれば、本体部の上端縁は、着用者腹部の膨らみの最も大きい位置の上方から臀部の膨らみの最も大きい位置の上方にわたって配置され、着用者の下半身の膨らみの最も大きい位置により引っ掛かられる。従って、臀部に引きずられることに起因する本体部のずり下がりを確実に防止することができ、着用状態での本体部の安定性を高めることができる。
【0010】
本発明に係る補整帯を有する衣類において、着用状態において、補整帯の下端縁は、左右外腹位置から後中心位置に向かって上方に傾斜していることが好適である。
このようにすれば、補整帯は着用者の体の丸みに好適にフィットしながら、腹部とウエスト周りの肉を引き締めることができる。
【0011】
本発明に係る補整帯を有する衣類において、補整帯の長手方向の両端と本体部との縫着ライン同士間の距離は、丈方向の上方から下方に向かって広がっていることが好適である。
この場合、補整帯による腹部を上方に引き上げる働きを大きくすることで、腹部の肉を引き締める効果を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、段差のない滑らかなボディラインを形成しつつ、ずり下がりの防止を可能にした補整帯を有する衣類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る補整帯を有する衣類の実施形態として女性用ショーツの例を詳細に説明する。なお、説明において、上下、左(L)右(R)及び前後方向は着用者から見た方向である。
【0014】
図1〜図4に示すように、ショーツ1は、着用者の肌側に配置され、伸縮性のある生地からなる本体部10と、本体部10の外側に縫着された幅広のベルト(補整帯)20とを備え、着用者の人体にフィットするように形成されている。
【0015】
本体部10は、着用者の腹部を覆う腹部布12と、外腹部から臀部にわたって一体に形成された左右一対の側部布14L,14Rと、股部を覆う股布16と、鼠径部下部位置に対応し股布16と側部布14L,14Rとを連結する裾布18L,18Rとから主として構成されている。
【0016】
本体部10の上縁には、ウエスト口11が設けられ、本体部10の下縁には、着用者の脚を通すための一対の裾口15L,15Rが設けられている。また、ウエスト口11の周りには、着用者のウエストを包囲するウエストゴム13が縫着により取り付けられている。
【0017】
ショーツ1の前面において、左側の側部布14Lと右側の側部布14Rとは、ショーツ1の丈方向に延在する縫着ラインA1,A2に沿ってそれぞれ腹部布12に縫着されている。この縫着ラインA1,A2は、着用者の左右外腹部に対応する位置に配置され、そして、縫着ラインA1と縫着ラインA2との間の距離は、ウエスト口11の位置から裾口15L,15Rの位置に向かって広がるようになっている。一方、ショーツ1の背面では、左側の側部布14Lと右側の側部布14Rとは、着用者の脊柱方向に沿って延在する縫着ラインA3に沿って互いに縫着されている。なお、本体部10の生地として、綿、絹、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。
【0018】
ベルト20は、帯状に形成され、着用者のウエストにフィットするようにウエストラインに沿って配置されている。なお、この場合のウエストラインとは、着用者の外腹部から脇側を経由し、後中心まで延在するラインのことである。ベルト20は、長手方向に伸縮性を有するレースから形成され、その上に綺麗な模様が施されている。ベルト20の上端縁20cと下端縁20dとは、それぞれ波状に形成されている。
【0019】
図4に示すように、ベルト20の長手方向の一端(右端)20aは、縫着ラインA1に沿って本体部10に縫着され、他端(左端)20bは縫着ラインA2に沿って本体部10に縫着されている。そして、ベルト20の右端20aと左端20bとの間の部分は、本体部10に縫着されず、本体部10から遊離している。
【0020】
また、着用状態において、ベルト20の上端縁20cは、略水平状に延在し、下端縁20dは、本体部10との縫着ラインA1,A2の位置から後中心位置に向かって上方に傾斜している。換言すれば、ベルト20の幅は、左右外腹位置から後中心位置に向かって小さくなるように形成されている。このようにすれば、ベルト20は着用者のウエストの丸みに好適にフィットすることができる。
【0021】
図2示すように、本体部10の上端縁10aは、腹部中心位置から後中心位置に向かって下方に傾斜するように形成されている。好適には、上端縁10aは、着用者腹部の膨らみの最も大きい位置の上方から臀部の膨らみの最も大きい位置の上方にわたって配置されている。
【0022】
このように本体部10の上端縁10aが腹部中心位置から後中心位置に向かって下方に傾斜し、ベルト20の下端縁20dが縫着ラインA1,A2の位置から後中心位置に向かって上方に傾斜することで、本体部10とベルト20とは、本体部10の脇位置で重なり合い、重合領域Tを形成する。重合領域Tは、外腹位置から後中心位置に向かって幅が徐々に狭くなり、略三角形状に形成されている。そして、着用者の後中心位置近傍において、ベルト20の下端縁20dと本体部10の上端縁10aとは離間し、空間Sを形成している。
【0023】
以上のように構成されたショーツ1にあっては、ベルト20の長手方向の右端20aと左端20bとが左右外腹位置で本体部10にそれぞれ縫着され、右端20aと左端20bとの間の部分が本体部10から遊離しているので、着用時にベルト20による引き締め力F1と、本体部10による引き締め力F2とがそれぞれ生じる(図2参照)。これらの引き締め力F1,F2は、着用者の腹部を押えることができると共に、ウエスト周りの肉を引き締めることができる。
【0024】
また、本体部10とベルト20とは、本体部10の脇位置で重合領域Tを形成しているので、この二重構造を有する重合領域Tは、脇腹を引き締める力を大きくすることで、脇腹のたるみがちな肉をしっかりサポートし、シャープな脇ラインを形成することが可能となる。加えて、ベルト20の右端20aと本体部10との縫着ラインA1と、左端20bと本体部10との縫着ラインA2との間の距離は、ウエスト口11の位置から裾口15L,15Rの位置に向かって広がっているため、ベルト20による腹部を上方に引き上げる働きを大きくすることができ、腹部の肉を引き締める効果を更に高めることができる。更に、ベルト20が幅広く形成されるので、ベルト20による引き締め力F1が広範囲にわたって着用者の腹部とウエスト周りの肉をサポートすることができ、本体部10による体への締め付けを軽減することができる。
【0025】
このように本体部10による引き締め力F2と本体部ベルト20による引き締め力F1との協働により、着用者の腹部をしっかり押さえ、ウエスト周りの肉を引き締めることができる。その結果、従来のように段差の発生を確実に防止し、滑らかなボディラインを容易に形成できる。従って、仮に体にピッタリしたパンツ等を着用した場合でも、パンツ等にひびかず、自然なシルエットを演出することができる。
【0026】
また、ベルト20による引き締め力F2は、本体部10を上方向に引き上げる効果をもたらすため、本体部10のずり下がりの発生を防止することができる。更に、ベルト20の長手方向の右端20aと左端20bとの間の部分は、本体部10に縫着されず遊離しているので、本体部10とベルト20とは、着用者の腹部とウエスト周りの肉をサポートしながら、互いに影響せずそれぞれ着用者の動きに追従することができ、快適なはき心地を得られる。
【0027】
更に、本体部10の上端縁10aは、腹部中心位置から後中心位置に向かって下方に傾斜し、着用者腹部の膨らみの最も大きい位置の上方から臀部の膨らみの最も大きい位置の上方にわたって配置されるため、上端縁10aは、着用者の腹部の最も盛り上がり及び臀部の最も盛り上がりにより引っ掛かられる。その結果、着用者が立ったり座ったりする動作の繰り返しに起因する本体部10のずり下がりを確実に防止することができ、着用状態での本体部10の安定性を高めることができる。
【0028】
以下、図5及び図6を参照し、ショーツ1を着用した着用者が腰を屈める時のショーツ1の動きを説明する。
【0029】
図5示すように、着用者が直立姿勢から腰をかがめると、臀部がカーブを描きながら伸びる。そして、本体部10の後ウエスト部10bは、臀部の伸びに従い下方に移動する。一方、ベルト20は、その長手方向の右端20aと左端20bとの間の部分が本体部10から遊離しているため、本体部10に引っ張られず、直立姿勢時と略同じ位置に位置する。
【0030】
これによって、ベルト20の下端縁20dと本体部10の上端縁10aとの間の空間Sが大きくなる。そして、着用者が更に腰を低くかがめると、臀部の伸びが更に大きくなり、本体部10の後ウエスト部10bは更に下方に移動することで、空間Sが更に大きくなる(図6参照)。
【0031】
この場合、ベルト20に綺麗な模様が施され、ベルト20の下端縁20dが波状に形成されているため、仮にベルト20の下部が露出しても、その露出した部分はショーツ1の一部には見えず、上半身インナー(例えば、キャミソール)の一部として見えるようになるので、「見せる下着」としてのファッション性を高める効果を発揮する。
【0032】
また、本体部10の上端縁10aは、着用者の腹部の最も盛り上がり及び臀部の最も盛り上がりにより引っ掛かられるので、本体部10の後ウエスト部10bが臀部の伸びに従い下方に移動しても、本体部10は臀部によって引きずられない。従って、着用者が腰をかがめる姿勢から直立姿勢に戻ると、本体部10は、図2に示すような状態に復元する。すなわち、ショーツ1は、着用者が立ったり座ったりする動作の繰り返しに起因するずり下がりの発生を確実に防止することができる。
【0033】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば上記の実施形態では、女性用ショーツの例を挙げて説明したが、これに限らず、ガードルやボディスーツなどの補整帯を有する衣類にも適用される。また、女性用補整帯を有する衣類に限定されず、男性用補整帯を有する衣類にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態に係るショーツを着用した状態を示す正面図である。
【図2】実施形態に係るショーツを着用した状態を示す側面図である。
【図3】実施形態に係るショーツを着用した状態を示す背面図である。
【図4】ショーツを示す分解斜視図である。
【図5】腰をかがめる時のショーツの動きを示す斜視図である。
【図6】腰をかがめる時のショーツの動きを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…ショーツ、10…本体部、10a…上端縁、20…ベルト(補整帯)、20a…右端、20b…左端、20d…下端縁、A1,A2…縫着ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着用者の腹部から臀部までを被覆する本体部と、
前記本体部の外側に配置され、着用者のウエストラインに沿って延在する幅広の補整帯とを備え、
前記補整帯と前記本体部とは、前記本体部の脇位置で重なり合い、
前記補整帯の長手方向の両端は、前記本体部の左右外腹位置で丈方向に沿って前記本体部にそれぞれ縫着され、前記補整帯の長手方向の両端の間の部分は、前記本体部から遊離していることを特徴とする補整帯を有する衣類。
【請求項2】
前記本体部の上端縁は、腹部中心位置から後中心位置に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の補整帯を有する衣類。
【請求項3】
着用状態において、前記補整帯の下端縁は、左右外腹位置から後中心位置に向かって上方に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の補整帯を有する衣類。
【請求項4】
前記補整帯の長手方向の両端と前記本体部との縫着ライン同士間の距離は、丈方向の上方から下方に向かって広がっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の補整帯を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−274501(P2008−274501A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122729(P2007−122729)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】