説明

補正装置、無線センサータグ、データ収集システム及びプログラム

【課題】精度の高い水位計測ができる補正装置、無線センサータグ、データ収集システム及びプログラム等を提供すること。
【解決手段】補正装置100は、環境の測定温度情報を取得する温度情報取得部120と、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値の温度による変化の補正処理に使用される補正係数を記憶する記憶部130と、測定温度情報と補正係数とに基づいて、静電容量センサーケーブルSCBの計測された静電容量値についての補正処理を行う補正処理部110とを含む。記憶部130は、静電容量センサーケーブルSCBの長さに応じて値が異なる補正係数を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正装置、無線センサータグ、データ収集システム及びプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量を計測し、計測された容量値から水位(液面の高さ)を求める手法として、例えば特許文献1には2本の電極間の静電容量を計測して水位を求める手法が開示されている。
【0003】
しかしながらこの手法では、計測装置の個体差や温度による誤差を補正することができないため、精度の高い水位計測が難しいなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−121225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、精度の高い水位計測ができる補正装置、無線センサータグ、データ収集システム及びプログラム等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、環境の測定温度情報を取得する温度情報取得部と、静電容量センサーケーブルの静電容量値の温度による変化の補正処理に使用される補正係数を記憶する記憶部と、前記測定温度情報と前記補正係数とに基づいて、前記静電容量センサーケーブルの計測された静電容量値についての前記補正処理を行う補正処理部とを含み、前記記憶部は、前記静電容量センサーケーブルの長さに応じて値が異なる前記補正係数を記憶する補正装置に関係する。
【0007】
本発明の一態様によれば、測定温度情報と静電容量センサーケーブルの長さに応じて値が異なる補正係数とに基づいて、補正処理部が計測された静電容量値についての補正処理を行うことができる。こうすることで、温度変化による静電容量センサーケーブルの伸び縮みなどによってセンサーケーブルの容量値が変化しても、それを補正することができる。その結果、補正装置を例えば水位計測などに適用することで、精度の高い水位計測などが可能になる。
【0008】
また本発明の一態様では、前記補正処理部は、前記測定温度情報により表される測定温度の2次関数で表される補正関数により、前記補正処理を行ってもよい。
【0009】
このようにすれば、記憶部は2次関数を決定する3つの係数を補正係数として記憶し、補正処理部は3つの係数により決定される補正関数に基づいて補正処理を行うことができる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記補正処理部は、前記静電容量センサーケーブルの静電容量値を計測する容量値計測回路から出力される容量値計測情報を補正することで、前記補正処理を行ってもよい。
【0011】
このようにすれば、容量値計測回路が静電容量センサーケーブルの静電容量値を計測し、補正処理部が容量値計測回路から出力される容量値計測情報を補正することができる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記容量値計測回路は、前記静電容量センサーケーブルの静電容量値に応じて変化する発振信号の周期を計測し、計測された前記発振信号の周期に基づいてカウント値を出力する抵抗周波数変換回路であり、前記抵抗周波数変換回路が出力する前記容量値計測情報は、前記静電容量センサーケーブルの静電容量値に対応する前記カウント値であってもよい。
【0013】
このようにすれば、抵抗周波数変換回路が静電容量センサーケーブルの静電容量値に対応するカウント値を出力し、補正処理部が抵抗周波数変換回路から出力されるカウント値を補正することができる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記記憶部は、前記抵抗周波数変換回路が有する回路素子の温度変化による前記カウント値の変化を補正する第2の補正係数を記憶し、前記補正処理部は、前記測定温度情報と前記補正係数及び前記第2の補正係数とに基づいて前記補正処理を行ってもよい。
【0015】
このようにすれば、補正処理部が抵抗周波数変換回路が有する回路素子の温度変化によるカウント値の変化を補正することができるから、静電容量センサーケーブルの容量値を精度良く計測することができる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記記憶部は、前記容量値計測回路の個体差及び非線形性に基づく第3の補正係数を記憶し、前記補正処理部は、前記補正係数、前記第2の補正係数及び前記第3の補正係数に基づいて前記補正処理を行ってもよい。
【0017】
このようにすれば、補正処理部は、容量値計測回路の個体差及び非線形性を補正することができるから、静電容量センサーケーブルの容量値を精度良く計測することができる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記容量値計測回路は、前記静電容量センサーケーブルの静電容量値を計測し、計測された前記静電容量値に基づいて、水位を計測してもよい。
【0019】
このようにすれば、補正処理部が容量値計測回路から出力される容量値計測情報を補正することで、水位を精度良く計測することができる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記温度情報取得部は、前記静電容量センサーケーブルに取り付けられた温度測定素子から前記測定温度情報を取得してもよい。
【0021】
このようにすれば、補正処理部は、温度情報取得部により取得された測定温度情報に基づいて補正処理を行うことができるから、静電容量センサーケーブルの容量値の温度による変化を補正することができる。その結果、水位を精度良く計測することができる。
【0022】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の補正装置と、前記容量値計測回路と、前記静電容量センサーケーブルとを含む無線センサータグに関係する。
【0023】
本発明の他の態様によれば、計測された水位情報を離れた場所へ無線送信することなどができる。
【0024】
本発明の他の態様は、上記に記載の無線センサータグと、前記無線センサータグとの間で無線通信を行うホスト装置とを含むデータ収集システムに関係する。
【0025】
本発明の他の態様によれば、ホスト装置と無線センサータグとの間で無線通信することで、離れた場所の水位情報を精度良く効率的に収集することなどが可能になる。
【0026】
本発明の他の態様は、環境の測定温度情報を取得する温度情報取得部と、静電容量センサーケーブルの静電容量値の温度による変化の補正処理に使用される補正係数を記憶する記憶部と、前記測定温度情報と前記補正係数とに基づいて、前記静電容量センサーケーブルの計測された静電容量値についての前記補正処理を行う補正処理部として、コンピューターを機能させるプログラムに関係する。
【0027】
本発明の他の態様によれば、例えばマイクロコンピューターなどを用いて、計測された静電容量値についての補正処理を行うことができる。こうすることで、温度変化による静電容量センサーケーブルの伸び縮みなどによってセンサーケーブルの容量値が変化してもそれを補正することができるから、精度の高い水位計測などが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】補正装置及び無線センサータグの基本的な構成例。
【図2】抵抗周波数変換回路とローパスフィルターの構成例、及び静電容量センサーケーブルの等価回路。
【図3】図3(A)は、抵抗周波数変換回路200の信号波形の一例。図3(B)は、カウント値を説明する図。
【図4】第1の補正係数及び第2の補正係数に基づく補正処理の一例。
【図5】第3の補正係数に基づく補正処理の一例。
【図6】データ収集システムの基本的な構成例。
【図7】ホスト装置の基本的な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0030】
1.補正装置及び無線センサータグ
図1に本実施形態の補正装置100及び無線センサータグ300の基本的な構成例を示す。本実施形態の補正装置100は、補正処理部110、温度情報取得部120及び記憶部130を含む。無線センサータグ300は、補正装置100、容量値計測回路200、静電容量センサーケーブルSCBを含む。また、無線センサータグ300は、無線通信部210、制御部220、電源部230、温度測定素子TS1、TS2、ローパスフィルターLPF及びアンテナANTをさらに含んでもよい。なお、本実施形態の補正装置100及び無線センサータグ300は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0031】
補正処理部110は、温度情報取得部120により取得された測定温度情報と記憶部130に記憶された補正係数とに基づいて、静電容量センサーケーブルSCBの計測された静電容量値についての補正処理を行う。具体的には、補正処理部110は、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値を計測する容量値計測回路200から出力される容量値計測情報を補正することで補正処理を行う。より具体的には、補正処理部110は、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値の温度による変化の補正処理に使用される第1の補正係数(広義には補正係数)と、容量値計測回路200が有する回路素子(トランジスターなど)の温度変化によるカウント値の変化の補正処理に使用される第2の補正係数と、容量値計測回路200の個体差及び非線形性に基づく第3の補正係数とに基づいて補正処理を行う。例えば第1の補正係数に基づく補正処理では、測定温度情報により表される測定温度の2次関数で表される補正関数により補正処理を行う。なお、補正処理の詳細については後述する。補正処理部110は、ASICのロジック回路などにより実現することができる。或いは、プログラムにより制御されるマイクロコンピューター(マイコン)等によって、上記の補正処理を行ってもよい。
【0032】
このプログラムは、マイクロコンピューター(広義にはコンピューター)を、環境の測定温度情報を取得する温度情報取得部120と、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値の温度による変化の補正処理に使用される補正係数を記憶する記憶部130と、測定温度情報と補正係数とに基づいて、静電容量センサーケーブルSCBの計測された静電容量値についての補正処理を行う補正処理部110として機能させる。このプログラムは、マイクロコンピューターの記憶装置に記憶され、プログラムに書かれた命令(命令コード)がCPUにより順次読み出されて実行される。このプログラムは、例えば環境の測定温度情報を取得する処理や、補正係数を記憶部から読み出す処理や、上記補正処理における補正関数(2次関数など)に基づく演算処理などを行う命令を含む。
【0033】
記憶部130は、静電容量センサーケーブルSCBの温度による静電容量値の変化の補正処理に使用される補正係数(第1の補正係数)を記憶する。具体的には、静電容量センサーケーブルSCBの長さに応じて値が異なる補正係数を記憶する。また記憶部130は、抵抗周波数変換回路(広義には容量値計測回路200)が有する回路素子の温度変化によるカウント値の変化の補正処理に使用される第2の補正係数をさらに記憶する。また記憶部130は、容量値計測回路200の個体差及び非線形性に基づく第3の補正係数をさらに記憶する。記憶部130は、例えばフラッシュメモリーなどの不揮発性記憶装置により実現することができる。なお、図1の構成例では記憶部130が補正装置100に設けられているが、補正装置100の外部であって無線センサータグ300の内部に設けられてもよい。
【0034】
温度情報取得部120は、環境の測定温度情報を取得する。ここで環境とは、例えば静電容量センサーケーブルSCBによる容量測定の対象である媒体(水又は液体など)の温度環境である。具体的には、静電容量センサーケーブルSCBに取り付けられた温度測定素子TS1から測定温度情報としてセンサーケーブルSCBの周囲の媒体の温度を取得する。また温度情報取得部120は、容量値計測回路200に設けられた温度測定素子TS2から測定温度情報としてトランジスターなど回路素子の温度をさらに取得してもよい。温度情報取得部120は、CMOSトランジスターを用いたアナログ回路及びデジタル回路などにより実現することができる。
【0035】
温度測定素子TS1、TS2は、例えばサーミスターなどの温度センサーである。TS1はセンサーケーブルSCBに取り付けられて、センサーケーブルSCBの温度、又はセンサーケーブルSCBの周囲の水温(液温)を測定する。またTS2は容量値計測回路200に設けられて、容量値計測回路200の回路素子の温度を測定する。回路素子は例えばトランジスターである。
【0036】
容量値計測回路200は、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値を計測して、容量値計測情報を出力する。具体的には、容量値計測回路200は例えば静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値に応じて変化する発振信号の周期を計測し、計測された発振信号の周期に基づいてカウント値を出力する抵抗周波数変換回路である。抵抗周波数変換回路が出力する容量値計測情報は、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値に対応するカウント値である。容量値計測回路200は、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値を計測し、計測された前記静電容量値に基づいて、水位(液面の高さ)を計測する。なお、抵抗周波数変換回路の構成及び容量計測の手法については後述する。
【0037】
ローパスフィルターLPFは、センサーケーブルSCBの一端と容量値計測回路200との間に設けられる。こうすることで、センサーケーブルSCBが有する寄生インダクタンスによって生じる寄生発振を抑えることができる。
【0038】
静電容量センサーケーブルSCBは、例えば絶縁体を挟んで平行する2本の導体(導線)から成るケーブルであって、その一端はローパスフィルターLPFを介して容量値計測回路200に接続され、他端は何処にも接続されない、即ち開放端である。図1に示すように、静電容量センサーケーブルSCBの開放端は、水(液体)の入った容器の底面に配置される。静電容量センサーケーブルSCBの開放端は、水(液体)等によりショートしないように、防水封止されている。このようにすれば、センサーケーブルSCBの容量値は、水位(液面の高さ)によって変化する。例えば、水の比誘電率は80であり、空気の誘電率は1であるから、水位の上昇と共にセンサーケーブルSCBの容量値は増加する。この容量値の変化を測定することで、水位を計測することができる。
【0039】
実際には、水温(液温)が変化するとセンサーケーブルSCBの伸び縮みなどによってセンサーケーブルSCBの容量値が変化する。また、容量値計測回路200の回路特性も温度によって変化し、その結果カウント値が変化する。従って正確に水位を計測するためには、センサーケーブルSCBの温度と容量値計測回路200の温度とを測定し、測定された温度に基づいて補正を行う必要がある。さらに容量値計測回路200の個体差、及びセンサーケーブルSCBの容量値と水位との関係の非線形性による補正を行う必要がある。
【0040】
本実施形態の補正装置100によれば、温度情報取得部120がセンサーケーブルSCBに設けられた温度測定素子TS1から測定温度情報を取得し、取得された測定温度情報と第1の補正係数(広義には補正係数)とに基づいて、補正処理部110がセンサーケーブルSCBの容量値の温度による変化を補正することができる。第1の補正係数は、センサーケーブルSCBの長さに応じて値が異なる。
【0041】
また、本実施形態の補正装置100によれば、温度情報取得部120が容量値計測回路200に設けられた温度測定素子TS2から測定温度情報をさらに取得し、取得された測定温度情報と第2の補正係数とに基づいて、補正処理部110が容量値計測回路200の温度によるカウント値の変化を補正することができる。
【0042】
さらに本実施形態の補正装置100によれば、第3の補正係数に基づいて、補正処理部110が容量値計測回路200の個体差、及びセンサーケーブルSCBの容量値と水位との関係の非線形性による補正を行うことができる。
【0043】
このように本実施形態の補正装置100によれば、温度測定素子TS1、TS2により測定された温度情報と第1、第2、第3の補正係数とに基づいて、容量値計測回路200から出力されるカウント値を補正することができるから、水位(液面の高さ)を精度良く計測することができる。
【0044】
なお、計測の対象となるものは水又は液体に限定されず、多様な混合物を含む液体であってもよい。混合物を含む液体であっても、比誘電率が空気と異なるものであればセンサーケーブルSCBの静電容量が変化するから、その液面までの高さを精度良く計測することができる。
【0045】
無線通信部210は、アンテナANTを介してホスト装置(図示せず)からのコマンド等を受信し、受信したコマンド等に基づいて、補正処理部110から出力された水位(水位情報)をホスト装置に送信する。無線通信部210は、低ノイズアンプ、フィルター回路、復調回路、PLL回路、変調回路、パワーアンプなどのアナログ回路により実現される。
【0046】
制御部220は、容量値計測回路200の容量測定処理、補正装置100の補正処理、無線通信部210の送受信処理などを制御する。制御部220は、ASICのロジック回路やマイクロコンピューター(マイコン)等により実現することができる。
【0047】
電源部230は、電池(乾電池、バッテリー)や電源回路などを含み、無線センサータグ300の各部分に必要な電源を供給する。
【0048】
2.容量値計測回路
図2に、本実施形態の抵抗周波数変換回路200(広義には容量値計測回路)とローパスフィルターLPFの構成例、及び静電容量センサーケーブルSCBの等価回路を示す。
【0049】
抵抗周波数変換回路200は、抵抗素子R1、R2、P型トランジスターTP、N型トランジスターTN、シュミットトリガー入力のバッファーBUF、遅延回路DL1、DL2、ANDゲートAND1、AND2、NORゲートNOR1、NOR2、NOR3、インバーターINV1、INV2及びカウンターCNTを含む。
【0050】
静電容量センサーケーブルSCBの等価回路は、可変容量CA、CB及びインダクタンスLA、LBを含む。可変容量CA、CBの容量値は、水位(液面の高さ)に対応してそれぞれ変化する。インダクタンスLA、LBは、センサーケーブルSCBの2本の導体がそれぞれ有する寄生インダクタンスである。
【0051】
ローパスフィルターLPFは、抵抗素子R3及びキャパシターC1を含む。センサーケーブルSCBは寄生インダクタンスLA、LBを含み、また他端が開放端になっているために、高い周波数の寄生発振が生じる場合がある。ローパスフィルターLPFは、この寄生発振を抑えるためのものである。
【0052】
なお、本実施形態の抵抗周波数変換回路200及びローパスフィルターLPFの構成例、並びに静電容量センサーケーブルSCBの等価回路は図2に示すものに限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0053】
抵抗周波数変換回路200は、容量性センサー(ここではセンサーケーブルSCB)を検出ノードNSと第1の電源ノードVSS(低電位側電源ノード)との間に設けることによりRC発振回路を構成する。このRC発振回路の発振周波数は、容量性センサーの容量値が大きいほど低くなるから、発振周波数又は発振周期を計測することで容量性センサーの容量値を計測することができる。
【0054】
カウンターCNTは、RC発振回路の発振信号と基準クロック信号CLKとをカウントして、カウント値Ncntを出力する。上述したように、補正装置100がこのカウント値Ncntを補正することで、正確な水位(液面の高さ)が計測される。カウンターCNTは、CMOSロジック回路などにより構成することができる。
【0055】
イネーブル信号ENBL1、ENBL2は、抵抗周波数変換回路200の発振動作を制御する信号であって、ENBL1、ENBL2が共にHレベル(高電位レベル)である場合にRC発振が生じる。
【0056】
図3(A)に、抵抗周波数変換回路200の信号波形の一例を示す。図3(A)には、検出ノードNSの電圧V(NS)、P型トランジスターTPのゲート電圧V(NP)、N型トランジスターTNのゲート電圧V(NN)の各波形を示す。
【0057】
図2及び図3(A)に従って、抵抗周波数変換回路200の動作を説明する。初期状態ではイネーブル信号ENBL1、ENBL2が共にLレベル(低電位レベル、VSSレベル)に設定されている。この場合には、ノードNA1はLレベルに、ノードNPはHレベルに設定されるから、P型トランジスターTPはオフ状態になる。また、ノードNR2はHレベルに、ノードNR3はLレベルに、ノードNNはHレベルに設定されるから、N型トランジスターTNはオン状態になる。その結果、キャパシターC1、可変容量CA、CBの電荷はTNを介して放電され、図3(A)のA1に示すように、検出ノードNSの電圧V(NS)はLレベルになる。
【0058】
イネーブル信号ENBL1がHレベルに設定されると、ノードNA1はHレベルに、ノードNPはLレベルに変化し(図3(A)のA2)、P型トランジスターTPはオン状態になる。なお、初期状態ではNOR1の入力(ノードND1、ND2)が共にLレベルであるから、ノードNR1はHレベルに設定されている。従って、ENBL1がLレベルからHレベルに変化することで、ノードNA1はLレベルからHレベルに変化する。また、ノードNR2はLレベルに、ノードNR3はHレベルに、ノードNNはLレベルに変化し(図3(A)のA3)、N型トランジスターTNはオフ状態になる。なお、初期状態ではAND2の入力(ノードND1、ND2)が共にLレベルであるから、ノードNA2はLレベルに設定されている。従って、ノードNR2がHレベルからLレベルに変化することで、ノードNR3はLレベルからHレベルに変化する。
【0059】
このようにイネーブル信号ENBL1、ENBL2が共にHレベルに設定されると、P型トランジスターTPはオン状態になり、N型トランジスターTNはオフ状態になるから、第2の電源ノードVDD(高電位側電源ノード)からP型トランジスターTP及び抵抗素子R1、R3を介してセンサーケーブルSCBに電流が流れ、可変容量CA、CBが充電される。その結果、検出ノードNSの電圧V(NS)は、図3(A)のA4に示すように、徐々に上昇する。
【0060】
検出ノードNSの電圧V(NS)が上昇し、バッファーBUFのLレベルからHレベルへのしきい値電圧を越えると、バッファーBUFの出力ノードNBはLレベルからHレベルに変化する。そして遅延回路DL1による所定の遅延時間の経過後にノードND1がLレベルからHレベルに変化する。そしてさらに遅延回路DL2による所定の遅延時間の経過後にノードND2がLレベルからHレベルに変化する。ノードND1がHレベルに変化することで、ノードNR1はLレベルに、ノードNA1はLレベルに、そしてノードNPはHレベルに変化する(図3(A)のA5)。また、ノードND1がHレベルに変化し、さらに遅れてノードND2もHレベルに変化することで、ノードNA2がHレベルに変化する。ノードNA2がHレベルに変化することで、ノードNR3はLレベルに、ノードNNはHレベルに変化する(図3(A)のA6)。
【0061】
このようにV(NS)が上昇し、バッファーBUFのLレベルからHレベルへのしきい値電圧を越えると、P型トランジスターTPはオフ状態になり、N型トランジスターTNはオン状態になるから、キャパシターC1、可変容量CA、CBの電荷はTNを介して放電され、図3(A)のA7に示すように、検出ノードNSの電圧V(NS)は降下する。
【0062】
検出ノードNSの電圧V(NS)が降下し、バッファーBUFのHレベルからLレベルへのしきい値電圧を越えると、バッファーBUFの出力ノードNBはHレベルからLレベルに変化する。そして遅延回路DL1による所定の遅延時間の経過後にノードND1がHレベルからLレベルに変化する。そしてさらに遅延回路DL2による所定の遅延時間の経過後にノードND2がHレベルからLレベルに変化する。ノードND1がLレベルに変化することで、ノードNA2はLレベルに、ノードNR3はHレベルに、そしてノードNNはLレベルに変化する(図3(A)のA8)。また、ノードND1がLレベルに変化し、さらに遅れてノードND2もLレベルに変化することで、ノードNR1がHレベルに変化する。ノードNR1がHレベルに変化することで、ノードNA1はHレベルに、ノードNPはLレベルに変化する(図3(A)のA9)。
【0063】
このようにV(NS)が降下し、バッファーBUFのHレベルからLレベルへのしきい値電圧を越えると、P型トランジスターTPはオン状態になり、N型トランジスターTNはオフ状態になるから、検出ノードNSの電圧V(NS)は、図3(A)のA10に示すように、再び上昇する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の抵抗周波数変換回路200に静電容量センサーケーブルSCBを接続することにより、図3(A)のV(NS)に示すような発振信号波形を得ることができる。この信号波形のLレベルからHレベルまでの上昇時間TAは、P型トランジスターTPのオン抵抗値、抵抗素子R1、R3の抵抗値、キャパシターC1及び可変容量CA、CBの容量値に依存する。即ち、TPのオン抵抗値、R1、R3の抵抗値、キャパシターC1の容量値が一定であれば、上昇時間TAは可変容量CA、CBの容量値によって決定される。従って、上昇時間TAを計測することで、センサーケーブルSCBの容量値(CA、CBの各容量値の和)を計測することができる。
【0065】
図3(B)は、カウント値Ncntを説明する図である。上昇時間TAを直接に計測することは難しいので、図3(B)に示すように、発振波形V(NS)の立ち下がりエッジをカウントし、第1のエッジから第Nのエッジをカウントするまでの期間TBを計測する。この期間TBは、基準クロックCLKによって計測される。即ち、期間TBにおいて基準クロックCLKをカウントし、このカウント値Ncntとクロック周期TCKとの積が期間TBの長さを与える。クロック周期TCKは一定であるから、カウント値NcntがセンサーケーブルSCBの容量値に対応することになる。
【0066】
発振波形の立ち下がりエッジのカウント及び基準クロックCLKのカウントはカウンターCNTにより実行され、カウント値Ncntが補正装置100に対して出力される。
【0067】
3.補正処理
図4に、第1の補正係数及び第2の補正係数に基づく補正処理の一例を示す。横軸は温度t、縦軸はカウント値の補正値ΔNcntを示す。実線は第1の補正係数に基づく補正処理、破線は第2の補正係数に基づく補正処理、1点鎖線は第1及び第2の補正係数に基づく補正処理を合成した補正処理を示す。なお、以下の説明では、第1の補正係数に基づく補正処理を「第1の補正処理」、第2の補正係数に基づく補正処理を「第2の補正処理」と呼ぶ。
【0068】
第1の補正係数は、上述したように、静電容量センサーケーブルSCBの静電容量値の温度による変化を補正するためのものである。この第1の補正係数は、具体的には図4に示すように温度(測定温度)tを変数とする2次関数F1(t)の3つの係数a1、b1、c1である。即ち、第1の補正処理は、測定温度情報により表される測定温度tの2次関数で表される補正関数F1(t)(図4の実線)により行うことができる。例えば、測定された水温(液温)がtmである場合には、第1の補正処理による補正値ΔNcnt1は、次式で与えられる。
【0069】
ΔNcnt1=F1(tm)=a1×tm+b1×tm+c1 (1)
そして補正されたカウント値CNは、次式で与えられる。
【0070】
CN=Ncnt+ΔNcnt1 (2)
ここでNcntは容量値計測回路200から出力されるカウント値(即ち、補正前のカウント値)である。
【0071】
第2の補正係数は、容量値計測回路200が有する回路素子の温度変化によるカウント値の変化を補正するためのものである。例えば図2の抵抗周波数変換回路200(容量値計測回路)では、P型トランジスターTPのオン抵抗が温度により変化するとRC発振周波数が変化するから、カウント値が変化する。このカウント値の変化を補正するために、第2の補正処理が行われる。第2の補正係数は、具体的には図4に示すように温度(測定温度)tを変数とする1次関数F2(t)の2つの係数a2、b2、である。例えば、測定された回路素子の温度がtnである場合には、第2の補正処理による補正値ΔNcnt2は、次式で与えられる。
【0072】
ΔNcnt2=F2(tn)=a2×tn+b2 (3)
そして第1及び第2の補正処理の合成により補正されたカウント値CNは、次式で与えられる。
【0073】
CN=Ncnt+ΔNcnt1+ΔNcnt2 (4)
(4)式の合成された補正処理は、測定された水温tmと測定された回路素子の温度tnとが同一とみなせる場合には、例えば図4の1点鎖線で示す2次関数F1(t)+F2(t)になる。
【0074】
第1、第2の補正係数は、例えば基準温度を20°Cとし、水温(液温)又は回路素子の温度が基準温度からずれた場合に、(4)式で与えられる補正後のカウント値CNが基準温度におけるカウント値になるように決める。
【0075】
図4では、第1の補正処理を2次関数で、第2の補正処理を1次関数で表しているが、これに限定されるものではない。3次以上の関数で表現してもよいし、或いはルックアップテーブルを用いてもよい。このルックアップテーブルは、記憶部130に記憶することができる。
【0076】
なお、測定された温度によっては、ΔNcnt1及びΔNcnt2のどちらか一方が十分に小さく無視できる場合がある。このような場合には、無視できる方の補正処理を省略してもよい。
【0077】
図5に、第3の補正係数に基づく補正処理の一例を示す。横軸は補正されたカウント値CN、縦軸は水位(液面の高さ)Hである。第3の補正係数は、容量値計測回路200の個体差(回路特性のばらつき)及びカウント値に対する水位の非線形性を補正するためのものである。第2の補正係数は、具体的には図5に示すように、補正されたカウント値CNを変数とする2次関数F3(CN)の3つの係数a3、b3、c3である。第3の補正係数に基づく補正処理(第3の補正処理)を行うことで、例えば補正されたカウント値CNに対応する水位Hは次式で与えられる。
【0078】
H=F3(CN)=a3×CN+b3×CN+c3 (5)
第3の補正係数a3、b3、c3は無線センサータグ300ごとに異なる値をとり、各無線センサータグ300の記憶部130に記憶される。
【0079】
センサーケーブルSCBの容量値は水位に比例するが、計測された容量値(カウント値)と水位の関係は図5に示すように非線形になる。これはセンサーケーブルSCBが容量値計測回路200内の固定的な静電容量に抵抗素子を介して接続されているために、一種のチャージシェア現象が発生して、発振振幅が変動するためである。
【0080】
なお、図5では第3の補正処理を2次関数で表しているが、3次以上の関数で表してもよいし、或いはルックアップテーブルを用いてもよい。このルックアップテーブルは、記憶部130に記憶することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の補正装置100及び無線センサータグ300によれば、簡素な構成の静電容量センサーケーブルSCBを用いて水位(液面の高さ)を計測することができる。特に、測定された温度情報と第1、第2、第3の補正係数とに基づいて補正することにより、水位(液面の高さ)を精度良く計測することができる。
【0082】
4.データ収集システム
図6に、本実施形態のデータ収集システムの基本的な構成例を示す。データ収集システムは、n(nは自然数)個の無線センサータグ300−1〜300−nと、各無線センサータグ300との間で無線通信を行うホスト装置400とを含む。
【0083】
ホスト装置400は、各無線センサータグ300に対して必要なコマンド等を送信し、各無線センサータグ300は、そのコマンドに基づいて、取得した水位情報をホスト装置400に対して送信する。ホスト装置400は、複数の無線センサータグ300−1〜300−nからの水位情報を順次受信して、複数の離れた場所の水位情報を収集することができる。また、ホスト装置400は、収集した水位情報を表示装置(ディスプレイ)などに表示することができる。表示装置は図示していないが、ホスト装置400に設けられてもよいし、例えばホスト装置400に接続されたパーソナルコンピューター(PC)のディスプレイであってもよい。
【0084】
図7に、本実施形態のホスト装置400の基本的な構成例を示す。ホスト装置400は、アンテナANT、無線通信部410、処理部420、外部I/F(インターフェース)部430、記憶部440を含む。
【0085】
無線通信部410は、低ノイズアンプ、フィルター回路、復調回路、PLL回路、変調回路、パワーアンプなどのアナログ回路により実現される。
【0086】
処理部420は、無線通信のための各種の処理を行うものであり、ASICのロジック回路やプロセッサーなどにより実現できる。記憶部440は、無線通信のためのデータやパラメーターを記憶するものであり、RAM、不揮発性メモリー、或いはマスクROMなどにより実現できる。
【0087】
外部I/F部430は、パーソナルコンピューター(PC)などの外部デバイスとのインターフェース処理を行う。ホスト装置400によって受信された水位情報は、外部I/F部430を介してPCに送られる。そして、PCは、収集した水位情報を適当なアプリケーションソフトにより編集加工して、ディスプレイに表示することができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態のデータ収集システムによれば、簡素な構成の静電容量センサーケーブルSCBを含む無線センサータグ300を用いて、複数の離れた場所での水位情報を効率的に収集することができる。特に、補正装置100を設けることで、測定された温度情報と第1、第2、第3の補正係数とに基づいて容量値を補正することができるから、水位(液面の高さ)を精度良く計測することができる。
【0089】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また補正装置、無線センサータグ及びデータ収集システムの構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 補正装置、110 補正処理部、120 温度情報取得部、130 記憶部、
200 容量値計測回路(抵抗周波数変換回路)、210 無線通信部、
220 制御部、230 電源部、300 無線センサータグ、400 ホスト装置、
410 無線通信部、420 処理部、430 外部I/F部、440 記憶部、
ANT アンテナ、LPF ローパスフィルター、SCB 静電容量センサーケーブル、
TS1、TS2 温度測定素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境の測定温度情報を取得する温度情報取得部と、
静電容量センサーケーブルの静電容量値の温度による変化の補正処理に使用される補正係数を記憶する記憶部と、
前記測定温度情報と前記補正係数とに基づいて、前記静電容量センサーケーブルの計測された静電容量値についての前記補正処理を行う補正処理部とを含み、
前記記憶部は、
前記静電容量センサーケーブルの長さに応じて値が異なる前記補正係数を記憶することを特徴とする補正装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記補正処理部は、
前記測定温度情報により表される測定温度の2次関数で表される補正関数により、前記補正処理を行うことを特徴とする補正装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記補正処理部は、
前記静電容量センサーケーブルの静電容量値を計測する容量値計測回路から出力される容量値計測情報を補正することで、前記補正処理を行うことを特徴とする補正装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記容量値計測回路は、前記静電容量センサーケーブルの静電容量値に応じて変化する発振信号の周期を計測し、計測された前記発振信号の周期に基づいてカウント値を出力する抵抗周波数変換回路であり、
前記抵抗周波数変換回路が出力する前記容量値計測情報は、前記静電容量センサーケーブルの静電容量値に対応する前記カウント値であることを特徴とする補正装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記記憶部は、
前記抵抗周波数変換回路が有する回路素子の温度変化による前記カウント値の変化を補正する第2の補正係数を記憶し、
前記補正処理部は、
前記測定温度情報と前記補正係数及び前記第2の補正係数とに基づいて前記補正処理を行うことを特徴とする補正装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記記憶部は、
前記容量値計測回路の個体差及び非線形性に基づく第3の補正係数を記憶し、
前記補正処理部は、
前記補正係数、前記第2の補正係数及び前記第3の補正係数に基づいて前記補正処理を行うことを特徴とする補正装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかにおいて、
前記容量値計測回路は、
前記静電容量センサーケーブルの静電容量値を計測し、
計測された前記静電容量値に基づいて、水位を計測することを特徴とする補正装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記温度情報取得部は、
前記静電容量センサーケーブルに取り付けられた温度測定素子から前記測定温度情報を取得することを特徴とする補正装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の補正装置と、
前記容量値計測回路と、
前記静電容量センサーケーブルとを含むことを特徴とする無線センサータグ。
【請求項10】
請求項9に記載の無線センサータグと、
前記無線センサータグとの間で無線通信を行うホスト装置とを含むことを特徴とするデータ収集システム。
【請求項11】
環境の測定温度情報を取得する温度情報取得部と、
静電容量センサーケーブルの静電容量値の温度による変化の補正処理に使用される補正係数を記憶する記憶部と、
前記測定温度情報と前記補正係数とに基づいて、前記静電容量センサーケーブルの計測された静電容量値についての前記補正処理を行う補正処理部として、
コンピューターを機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88222(P2013−88222A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227741(P2011−227741)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】