説明

製剤

本発明は、(i)カプセルと、(ii)結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び液体担体を含む核とを含む薬学的製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な薬学的製剤に関する。より具体的には、本発明は、癌の治療及び/又は予防において治療的に有用なピリミジンヌクレオシド誘導体である2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン用の新規なカプセル製剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
増殖性疾患の治療においてピリミジンヌクレオシドを治療的に使用することは、当該技術分野において十分に実証されてきた。例として、商業的に入手可能なピリミジン系抗癌剤として、5−フルオロウラシル(非特許文献1)、テガフール(非特許文献2)、UFT(非特許文献3)、カルモフール(非特許文献4)、ドキシフルリジン(非特許文献5)、シタラビン(非特許文献6)、アンシタビン(非特許文献7)及びエノシタビン(非特許文献8)が挙げられる。
【0003】
特許文献1(Sankyo社)には、有益な抗癌活性を示すことが明らかとされてきた1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの各種2’−シアノ−2’−デオキシ誘導体が開示されている。欧州特許第536936号で特に開示される化合物の1つに、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(以降、「CYC682」と呼ぶ)があるがこの化合物は、現在、さらに検討されている。
【0004】
1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N−パルミトイルシトシン(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)としても知られるCYC682は、ヌクレオシドCNDAC、即ち1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンの経口投与される新規な2’−デオキシシチジン代謝拮抗プロドラッグである。
【0005】
【化1】

【0006】
CYC682は自発的なDNA鎖切断作用を有し、結果として、様々な細胞株、異種移植及び転移性癌モデル中で強力な抗癌活性を生ずる点において、ゲムシタビンのような他のヌクレオシド代謝物とは異なる作用形態を有する。
【0007】
CYC682は、その経口生体利用性並びに固形腫瘍での前臨床データに基づいてゲムシタビン(指導的な上市されたヌクレオシド類似体)及び5−FU(広く使用されている代謝拮抗剤)より改良されたその活性の観点から多くの研究で注目されてきた。最近、研究者によれば、CYC682は結腸癌モデルにおいて強力な抗癌活性を示すことが報告された。同一のモデルで、CYC682は、生存の延長及び結腸癌の肝臓への転移の拡散の予防についても、ゲムシタビン又は5−FUの一方より優れていることが見出された(非特許文献12)。今までのところ、様々な癌の患者からの第1相データによれば、CYC682はヒトにおいて良好な耐容性を示すが、用量規定毒性として骨髄抑制を有することが示唆されている。
【0008】
今までに、CYC682の数多くの異なる製剤が検討されてきた。先行技術の製剤は、典型的には、非晶形の活性剤を使用して調製され粒状粉体が充填されたカプセルに関するものであった。しかしながら、これらの製剤は製造が困難であり、製剤過程中の水の吸収の結果、形成された結晶性材料を様々な量で含むカプセルとなっていた。その結果として、これらのカプセルは安定性に乏しく、低温(4℃)での保存が必要であった。
【特許文献1】欧州特許第536936号
【非特許文献1】Duschinsky, R., et al., J. Am. Chem. Soc., 79, 4559 (1957)
【非特許文献2】Hiller, SA., et al., Dokl. Akad. Nauk USSR, 176, 332 (1967)
【非特許文献3】Fujii, S., et al., Gann, 69, 763 (1978)
【非特許文献4】Hoshi, A., et al., Gann, 67, 725 (1976)
【非特許文献5】Cook, A. F., et al., J. Med. Chem., 22, 1330 (1979)
【非特許文献6】Evance, J. S., et al., Proc. Soc. Exp. Bio. Med., 106. 350 (1961)
【非特許文献7】Hoshi, A., et al., Gann, 63, 353, (1972)
【非特許文献8】Aoshima, M., et al., Cancer Res., 36, 2726 (1976)
【非特許文献9】Hanaoka, K., et al, Int. J. Cancer, 1999:82:226-236
【非特許文献10】Donehower R, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2000: abstract 764
【非特許文献11】Burch, PA, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2001: abstract 364
【非特許文献12】Wu M, et al, Cancer Research, 2003:63:2477-2482
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、今までに検討された先行技術の製剤に伴う1つ又は複数の問題を軽減するCYC682の新規な製剤を提供しようとするものである。特に、本発明は、より簡便な加工を可能とし、改良された安定性を示すカプセルが得られるCYC682の製剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の様態は、(i)カプセルと、(ii)結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び液体担体を含む核とを含む薬学的製剤に関する。
【0011】
特許請求される製剤は改良された安定性を示し、先行技術の粉体が充填された製剤の4℃と比較して、室温で保存できる点で有利である。さらに、予備的な研究によれば、液体が充填された製剤により活性剤の血流中への等しい吸収が可能となり、ヒトへの投与の場合、類似の薬力学的効果を示すことが示唆されている。最後に、特許請求される製剤の調製方法は、いったん混合されれば、大規模な閉じ込め施設(containment)を必要とせず全ての充填過程が液体で取り扱われるため、粉体の形態での細胞毒性活性剤の取り扱いを最小限とできる製造上の利点を有する。
【0012】
本発明の第2の様態は、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンのカプセル中の液体担体としての中鎖トリグリセリドの使用に関する。
【0013】
本発明の第3の様態は、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンのカプセル中での使用のための液体担体に関し、該液体担体は、ヤシ油又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。
【0014】
本発明の第4の様態は、
(i)結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び中鎖トリグリセリドを混合し、懸濁液を形成する工程と;
(ii)工程(i)で形成された混合物を予め形成されたカプセルに移送する工程と;
(iii)該カプセルをシール(seal)する工程と
を含む上記の薬学的製剤を調製する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上述の通り、第1の様態において、本発明は、液体が充填されたカプセルの形態中における2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの新規な薬学的製剤を提供する。
【0016】
より具体的には、薬学的製剤は、(i)カプセルと、(ii)結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び液体担体を含む核とを含む。
【0017】
好ましくは、薬学的製剤は経口投与用である。
【0018】
カプセル
本発明の薬学的組成物は、液体の核を封入できる外側のカプセル又はシェル(shell)を含む。
【0019】
適切なカプセル材は当業者によく知られ、例えば、経口投与による活性剤の送達を可能とする望ましい物理的特徴を有している任意のポリマー材料(ポリマー又はコポリマー、天然又は合成)が挙げられる。
【0020】
例として、適切なカプセルとして、水溶性セルロース誘導体、ゲル化剤及び共ゲル化剤より調製されるもの(例えば、米国特許第5,431,917号参照)が挙げられる。他の例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び酢酸フタル酸セルロースのアンモニウム塩より調製されるカプセル、又はゼラチン及びメタクリル酸及びメタクリル酸アルキルエステルのコポリマーのアンモニウム塩より調製されるカプセルが挙げられる。
【0021】
さらなる例として、1種又は複数のポリエーテル含有化合物の存在下で少なくとも1種のビニルエステル及び、ただし適切には、1種又は複数の他の共重合性モノマーを重合して得られるポリマー(例えば、米国特許第6,783,770号参照)が挙げられる。
【0022】
他の適切なカプセル材として、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で少なくとも1種の重合性ビニルモノマーを重合又は共重合して得られるポリマー又はコポリマー(例えば、米国特許出願公開第20050186268号参照)が挙げられる。従来のカプセルと異なり、この型の硬カプセルは液体又は半液体の核と適合する。
【0023】
好ましくは、カプセルは硬カプセルであるが、軟カプセルも使用できる。
【0024】
1つの好ましい実施形態では、カプセルがゼラチンカプセルであり、より好ましくは、硬ゼラチンカプセルである。本発明によるゼラチンカプセルは、従来の技法を使用して調製できる(例えば、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, Ed. Lachman L. et al, Third Edition, Lea & Febiger, 1986, Philadelphia, pp. 398-412参照)。
【0025】
1つの特に好ましい実施形態では、ゼラチンカプセルが1種又は複数の乳白剤及び/又は1種又は複数の顔料を含む。
【0026】
好ましくは、顔料及び/又は乳白剤が約0.1〜約10重量%の量でそれぞれ存在している。
【0027】
適切な顔料としては、例えば、二酸化チタン、レーキ顔料(例えば、FS&Cアルミニウムレーキ又はD&Cレーキ)、酸化鉄顔料、天然色素、合成酸化物など、又はインジゴ、カルミン、キノリン黄、オレンジ黄S、クルクミン、リボフラビン及びコチニールより選ばれる染料が挙げられる。
【0028】
特に好ましい乳白剤は、二酸化チタンである。より好ましくは、二酸化チタンが約2%の量で存在している。
【0029】
加えて、カプセル材は他の添加剤も含んでもよい。これらとして、吸収剤、酸、佐剤、凝固防止剤、流動促進剤、粘着防止剤、消泡剤、抗凝固剤、抗菌剤、酸化防止剤、消炎剤、収斂剤、防腐剤、基剤、結合剤、キレート剤、金属イオン封鎖剤、凝固剤、被覆剤、着色剤、染料、顔料、相溶化剤、錯化剤、軟化剤、結晶成長制御剤、変性剤、吸湿剤、乾燥剤、脱水剤、希釈剤、分散剤、軟化緩和剤、乳化剤、カプセル化剤、酵素、充填剤、増量剤、香味遮蔽剤、香味料、香料、ゲル化剤、硬化剤、補剛剤、保湿剤、滑剤、湿潤剤、緩衝剤、pH制御剤、可塑剤、緩和剤、粘滑剤、緩染剤、展着剤、安定剤、懸濁化剤、甘味料、崩壊剤、増粘剤、稠度制御剤、界面活性剤、乳白化剤、ポリマー、保存料、抗ゲル化剤、流動性制御剤、UV吸収剤、等張化剤及び粘度調節剤が挙げられるが、限定されるものではない。任意の特定の部類からの1種又は複数の添加剤の他にも、1種又は複数の異なる部類の添加剤も組成物中に存在する場合がある。添加剤の具体的な例は、当該技術でよく知られている。好ましい添加剤として、界面活性剤及びポリマーが挙げられる。
【0030】
1つの特に好ましい実施形態では、ゼラチンカプセルがゼラチンバンドでシールされている。
【0031】
液体担体
上述の通り、本発明の製剤は、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(以降、活性剤と呼ぶ)及び液体担体を含む液体又は半液体の核を含む。
【0032】
好ましくは、実質的に全ての活性剤が液体担体中に懸濁されている。しかしながら、いくつかの場合、活性剤は液体担体中に一部溶解され一部懸濁されている場合もある。
【0033】
1つの特に好ましい実施形態では、活性剤が液体担体中に懸濁されている。
【0034】
もう1つの実施形態では、活性剤が液体担体中に一部又は全て溶解されている。
【0035】
1つの特に好ましい実施形態では、液体担体が中鎖トリグリセリド油である。
【0036】
1つの非常に好ましい実施形態では、中鎖トリグリセリドがヤシ油又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。商業的に入手可能なMyglyol 812Nが特に好ましい。
【0037】
室温において、Myglyol 812N(MCT、DAC、中性油剤、CTFA、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(カプリル酸:C、カプリン酸:C10)としても知られる)は、低粘度の液体脂質油である。通常、MCT脂肪酸組成物はC8脂肪酸が大半を占め(50〜65%)、C10(30〜45%)、C12(最大5%)及びC(最大3%)と続く。油は、より長い脂肪酸鎖の脂質より、より生分解性であることが知られている。皮膚及び粘膜において毒性がないため、MCTが透過及び分散を促進する皮膚製品の用途をMCTは有する。また、MCTは、経口製剤中で滑剤及び薬物溶媒として、並びに非経口製剤中で溶液促進剤としても広く使用される。
【0038】
別の実施形態では、液体担体がポリグリコール化グリセリド、例えば、Gelucire(登録商標)を含む。
【0039】
Gelucire組成物は、特性上は両親媒性で様々な物理的特性のものが入手可能な不活性の半固体ワックス状材料である。本来、それらは表面活性で、水性媒体中に分散又は溶解し、ミセル、微細球又は小胞を形成する。それらは、それらの融点/HLB値により識別される。融点は摂氏温度で表され、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance、親水性−親油性バランス)は0〜約20にわたる数値尺度である。より低いHLB値はより親油性及び疎水性の物質を表し、より高い値はより親水性及び疎油性の物質を表す。水又は油性物質に対する化合物の親和性が決定され、そのHLB値は実験的に同定される。融点及び/又はHLB値の所望の特性を達成するために、1種又は異なる等級のGelucire賦形剤の混合物を選ぶことができる。
【0040】
本発明での使用に好ましいGelucireとしては、Gaftefosse社製のGelucire(登録商標)44/14、53/10、50/13、42/12、及び35/10が挙げられる。
【0041】
Gelucire 50/13組成物は、天然油をポリエチレングリコール(PEG)とアルコール分解反応させて調製されるポリグリコール化グリセリドである。それらは、長鎖(C12−C18)脂肪酸のグリセリドのモノエステル、ジエステル及び/又はトリエステル、並びに長鎖(C12−C18)脂肪酸のPEG(モノ及び/又はジ)エステルの混合物であり、遊離のPEGを含んでいてもよい。Gelucire組成物は、ここで一般に、グリセロール及びPEGエステルの脂肪酸エステルとして又はポリグリコール化グリセリドとして記載される。
【0042】
広範なGelucire組成物のファミリーは、約33℃〜約64℃、最も一般には約35℃〜約55℃の広範囲の融点、約1〜約14、最も一般的には約7〜約14の様々なHLB値で特徴付けられる。例えば、Gelucire 50/13は、Gelucireのこの等級に対して、約50℃の融点及び約13のHLB値で規定される。Gelucire又はGelucire組成物の混合物の融点/HLB値を適切に選択することで、具体的な機能、例えば、即時放出性、持続放出性などに必要な送達特性が提供される。低融点の多くの固体Gelucire組成物は、それらのそれぞれの融点より約0℃〜約50℃高い温度において、それらに薬学的活性成分を組み込み、よって硬ゼラチンカプセル中に融液(溶液及び/又は分散液)を充填する手段を提供する。室温まで冷却すると、カプセルの内側で融液が固化する。
【0043】
本発明の1つの非常に好ましい実施形態では、液体担体がGelucire 44/14を含む。この担体は、グリセロール及び長鎖脂肪酸のPEG1500エステルの混合物である半固体の賦形剤である。添字の44及び14は、それの融点及び親水性/親油性バランス(HLB)を、それぞれ参照する。Gelucire 44/14は商業的に入手可能であり(CAS 121548−04−7)、PEG32ラウリン酸グリセロールとしても知られている。
【0044】
Gelucire 44/14及びMiglyol 812Nは、単独、又は1種又は複数の他の共担体若しくは添加剤との組合せのいずれか一方で使用できる。1つの好ましい実施形態では、Miglyol 812Nは、コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200)と組み合わせて使用される。好ましくは、Miglyol 812Nは、2%までのコロイド状二酸化ケイ素と組み合わせて使用される。
【0045】
有利なことに、Miglyol 812N及びGelucire 44/14の両方を含む製剤は、他の製剤より優れた安定性を示す。Miglyol 812Nは、そのより好ましい粘度特性の観点から、液体担体として特に好ましい。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態では、核は付加的な成分をさらに含んでもよく、例えば、1種又は複数の植物油、特に、ラッカセイ油若しくはゴマ油、又は他の薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体である。また、核は、1種又は複数の可溶化剤、1種又は複数の界面活性剤及び/又は1種又は複数の共界面活性剤も含んでよい。好ましい可溶化剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである。好ましい界面活性剤としては、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド又はポリオキシエチレンヒマシ油誘導体が挙げられる。特に好ましいポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は、ポリオキシル(40)水素化ヒマシ油又はポリオキシル(35)水素化ヒマシ油である。好ましい共界面活性剤は、ポリエチレングリコール400である。好ましい粘性供与剤は、ポリビニルピロリドンである。特に好ましい粘性供与剤は、ポビドン(PVP K−30)である。
【0047】
付加的な成分の他の例としては、コロイド状二酸化ケイ素(例えば、Aerosil 200)、Gelucire 44/11、PEG4005、Polyoxamers 188及び124、Lipoid PPL、Captex 200及びLabrafilが挙げられる。
【0048】
1つの好ましい実施形態では、核が結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び液体担体から本質的になる。
【0049】
さらに好ましい実施形態では、核が2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び単独の液体担体からなり、即ち、他の成分が存在していない。
【0050】
1つの好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの1重量部に対して、液体担体の量が1〜50重量部である。
【0051】
1つの好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの1重量部に対して、液体担体の量が2〜50重量部である。
【0052】
より好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの1重量部に対して、液体担体の量が1〜10重量部である。
【0053】
より好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの1重量部に対して、液体担体の量が2〜10重量部である。
【0054】
さらにより好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの1重量部に対して、液体担体の量が1〜5重量部である。
【0055】
さらにより好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの1重量部に対して、液体担体の量が2〜5重量部である。
【0056】
1つの非常に好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの約1重量部に対して、液体担体の量が約3重量部である。
【0057】
1つの非常に好ましい実施形態では、製剤が25%重量/重量の活性剤及び75%重量/重量の液体担体を含む。
【0058】
本発明のもう1つの様態は、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンのカプセル中の液体担体としての、中鎖トリグリセリドの使用に関する。
【0059】
好ましくは、中鎖トリグリセリドがヤシ油又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。
【0060】
本発明のさらにもう1つの様態は、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンのカプセル中での使用のための液体担体に関し、該液体担体は、ヤシ油又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。
【0061】
活性剤
本製剤は、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンを、活性成分として含む。この化合物は、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N−パルミトイルシトシンとしても知られ、下に示す構造を有し、全体を通して「CYC682」と呼ぶ。
【0062】
【化2】

【0063】
CYC682は欧州特許第536936号(Sankyo社;日本国特許第2569251号と同等)で初めて開示され、優れた抗癌活性を有することが示された。
【0064】
続いて、様々な結晶形のCYC682が開示されてきた(例えば、欧州特許第1364959号;Sankyo社名義で国際公開第02/64609号からなされた欧州出願を参照)。これらの結晶形は、所望の薬物動態プロファイルを保持したまま、改良された保存安定性及び取り扱いの容易性を示す。
【0065】
本発明の1つの特に好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンがB型を含む。
【0066】
1つの特別に好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンがB型から本質的になる。
【0067】
1つの特別に好ましい実施形態では、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンがB型からなる。B型のCYC682は、欧州特許第1364959号の教示によって調製できる。CYC682それ自身は、欧州特許第536936号の教示によって調製する。
【0068】
要約すれば、2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン一塩酸塩をイオン交換樹脂(CHCOO型)に通し、2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンを形成する。続いて、この化合物を1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサンと反応させて、2’−シアノ−2’−デオキシ−3’,5’−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンを形成し、それを次にパルミチン酸と反応させて、2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−3’,5’−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンを形成する。最終工程はフッ化テトラブチルアンモニウムを使用する脱保護を伴い、所望の生成物である2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(CYC682)を形成する。
【0069】
また、CYC682は、2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンを無水パルミチン酸と反応させて調製できる。
【0070】
B型のCYC682は、約2.5容量%の水を含む酢酸メチルをCYC682に加え、約55℃まで加熱して透明な溶液を調製することにより調製される。続いて、溶液を特定の条件下で冷却し、板状結晶を溶液より分離する。さらに攪拌後、分離された結晶を濾過して回収し、2.5容量%で水を含む酢酸メチルで洗浄し、所望の結晶Bを与える。
【0071】
1つの好ましい実施形態では、薬学的製剤は単位投薬形態である。好ましくは、製剤は約0.1〜約500mgの活性剤、より好ましくは約1〜約200mg、さらにより好ましくは約1〜約100mgの活性剤を含む。
【0072】
1つの非常に好ましい実施形態では、製剤は約25mgの活性剤を含む。もう1つの非常に好ましい実施形態では、製剤は約75mgの活性剤を含む。
【0073】
方法
上述の通り、本発明のもう1つの様態は、
(i)結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び中鎖トリグリセリドを混合する工程と;
(ii)工程(i)で形成された混合物を予め形成されたカプセルに移送する工程と;
(iii)該カプセルをシールする工程と
を含む上記のような薬学的製剤を調製する方法に関する。
【0074】
好ましくは、CYC682を混合容器中に量り取り、それに液体担体を、正しい量が加えられるまで徐々に加える。成分を、商業的に入手可能な混合機、例えば、Silverson社製混合機を使用して混合する。
【0075】
好ましくは、成分を高速で少なくとも2分、より好ましくは少なくとも3分、さらにより好ましくは少なくとも5分混合する。1つの特定の好ましい実施形態では、成分を約5〜約8分間混合する。
【0076】
理想的には、均一性が達成されるまで、成分を混合する。混合物が均一になれば、好ましくは真空を利用して脱気する。
【0077】
好ましくは、脱気された混合物を、所望の充填重量を与えるように調整したカプセル充填機を使用して、カプセルに移す。完了後、カプセルをシールし、漏出を防ぐ。カプセルをシールするために、様々な方法が利用できる(例えば、F. Wittner, "New Developments in Hermetic Sealing of Hard Gelatin Capsules", Pharm. Manuf. 2: 24-27, 1985参照)。
【0078】
1つの好ましい実施形態では、工程(iii)がゼラチンバンドでゼラチンカプセルをシールすることを含む。典型的には、これは、カプセルを整え、それらをゼラチン浴中で回転する車輪上に1回又は2回通過させることを伴う。ある量のゼラチンが鋸状の車輪で汲み上げられ、蓋及び胴部の繋ぎ目に塗布される。カプセルは、乾燥のための個々の搬送装置中に留まる。
【0079】
別の好ましい実施形態では、工程(iii)がマイクロ噴霧によりゼラチンカプセルをシールすることを含む。典型的には、これは含水アルコール溶液を使用してシールすることを伴い、カプセルの胴部及び蓋の間の領域に水分を塗布することでゼラチンの融点が低下する原理を使用する。その方法は、有向流体噴流を使用して胴部及び蓋の繋ぎ目に微量のシール流体をそれぞれのカプセルに噴霧することを伴う。毛細管作用により、胴部及び蓋の間に流体が引き込まれる。次いで、カプセルを回転ドラムで穏やかに回転させて乾燥する。その方法は、LEMS(商標)30(Liquid Encapsulation by MicroSpray;Warner Lambert社カプセル部製)などの商業的に入手可能な機械を使用して行うことができる。
【0080】
実施例により、本発明をさらに記載する。
[実施例]
【実施例1】
【0081】
B型のCYC682を、両方ともSankyo社名義である欧州特許第536936号及び欧州特許第1364959号に記載される技法により調製した。
【0082】
CYC682の調製(欧州特許第536936号による)
1(a) 2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン
50mlの水中に溶解させた8.66g(30mmol)の2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン一塩酸塩の溶液を、90mlのDowex 1X2(商標)イオン交換樹脂(CHCOO型)を充填したカラムに通し、カラムを300mlの水で洗浄した。流出液及び洗液を混合及び凍結乾燥し、無色の粉体として7.23g(収率95.5%)の表題の化合物を得た。
NMRスペクトル(六重水素化ジメチルスルホキシド,270MHz)δ ppm:
7.28(1H,広幅一重線);
7.23(1H,広幅一重線);
7.83(1H,二重線,J=7.8Hz);
6.17(1H,二重線,J=7.3Hz);
6.17(1H,二重線,J=5.9Hz);
5.77(1H,二重線,J=7.3Hz);
5.12〜5.16(1H,多重線);
4.36〜4.44(1H,多重線);
3.56〜3.80(4H,多重線)。
【0083】
1(b) 2’−シアノ−2’−デオキシ−3’,5’−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン
5.045g(20mmole)の2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン[上の工程(a)で記載したように調製]をピリジンとの共沸蒸留により3回乾燥し、残渣を200mlのピリジン中に懸濁した。6.7ml(21mmole)の1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサンを懸濁液に加え、生じる混合物を窒素雰囲気において室温で1時間攪拌した。溶液を、減圧蒸留により、その元の体積のほぼ半分まで濃縮し、濃縮物を200mlの酢酸エチルで希釈した。希釈した溶液を、各200mlの炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で2回洗浄した。次いで、それを無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧蒸留で除去し、生じる残渣をトルエン及びメタノールの混合物と混合した。混合物を共沸蒸留し、11.21gの残渣を得た。これを、5容量%のメタノールを含む塩化メチレンを溶離液として使用し、300gのシリカゲル(230〜400メッシュ)に通してカラムクロマトグラフィーで精製し、発泡体として8.67g(収率87%)の表題の化合物を得た。
NMR(CDCl,270MHz)δ ppm:
7.69(1H,二重線,J=7.26Hz);
6.31(1H,二重線,J=7.26Hz);
5.74(1H,二重線,J=7.26Hz);
4.64(1H,二重二重線,J=7.26 & 7.26Hz);
4.15〜4.04(2H,多重線);
3.84(1H,三重二重線,J=7.26 & 3.30Hz);
3.67(1H,二重二重線,J=7.26 & 7.26Hz);
1.15〜0.93(28H,多重線)。
【0084】
1(c) 2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−3’,5’−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン
1.48g(3mmole)の2’−シアノ−2’−デオキシ−3’,5’−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン[上の工程(b)で記載したように調製]及び3.07g(12mmole)のパルミチン酸を50mlのベンゼンを用いる共沸蒸留で乾燥し、残渣を30mlのテトラヒドロフラン中に溶解した。2.47g(12mmole)のジシクロヘキシルカルボジイミド及び120mg(0.9mmole)の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンを溶液に加え、生じる混合物を窒素雰囲気において50℃で2.5時間攪拌した。このときの最後に不溶物を濾過して除去し、減圧蒸留によって濾液から溶媒を除去した。残渣を、100mlの酢酸エチル及び50mlの5%重量/容量の炭酸水素ナトリウム水溶液間で分配した。有機層を50mlの塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧下に留去し、残渣を、1%容量/容量のメタノールを含む塩化メチレンを溶離液として使用するシリカゲルに通してカラムクロマトグラフィーで精製し、カラメル状の固体として1.85gの表題の化合物を得た。
NMRスペクトル(六重水素化ジメチルスルホキシド,270MHz)δ ppm:
10.94(1H,一重線);
8.02(1H,二重線,J=7.82Hz);
7.30(1H,二重線,J=7.32Hz);
6.21(1H,二重線,J=7.83Hz);
4.69(1H,一重線);
4.22(2H,多重線);
3.98(1H,二重線,J=2.45Hz);
3.42(1H,二重線,J=3.92Hz);
2.40(2H,三重線,J=7.32Hz);
1.53(2H,一重線);
0.82〜1.23(55H)。
【0085】
1(d) 2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン
0.31ml(5.45mmole)の酢酸及び2.84g(10.9mmole)のフッ化テトラブチルアンモニウムを、氷冷及び攪拌しながら、60mlのテトラヒドロフラン(モレキュラーシーブ3A上で予め乾燥したもの)中の4.0g(5.45mmol)の2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−3’,5’−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン[上の工程(c)で記載したように調製]の溶液に添加し、生じる混合物を窒素雰囲気において40分攪拌した。次いで、反応混合物を減圧下で蒸発させ、乾燥するまで濃縮し、残渣を100mlの塩化メチレン及び50mlの塩化ナトリウム飽和水溶液間で分配した。有機層を50mlの塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。次いで、溶媒を減圧蒸留で除去し、残渣であるカラメル状の固体を、4%容量/容量のメタノールを含む塩化メチレンを溶離液として使用するシリカゲルに通してカラムクロマトグラフィーで精製し、無色の粉体として2.25gの表題の化合物を得た。
NMRスペクトル(六重水素化ジメチルスルホキシド,270MHz)δ ppm:
10.91(1H,一重線);
8.36(1H,二重線,J=7.8Hz);
7.29(1H,二重線,J=7.8Hz);
6.25(1H,二重線,J=5.4Hz);
6.21(1H,二重線,J=7.3Hz);
5.22(1H,広幅一重線);
4.43(1H,多重線);
3.61〜3.93(4H,多重線);
2.40(2H,三重線,J=7.3Hz);
1.54(2H,三重線,J=6.8Hz);
1.24(24H,一重線);
0.83〜0.88(3H,多重線)。
【0086】
2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの代替調製
12.9g(51.1mmole)の2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン[上の実施例1(a)で記載したように調製]及び38.1g(76.7mmole)の無水パルミチン酸を1リットルの丸底フラスコ中に入れ、そこに51mlのジメチルホルムアミドを加えた。生じる混合物を、水分から保護するように注意しながら、100℃に維持された油浴中で20分攪拌した。出発化合物の消失を薄層クロマトグラフィーで確認した(展開溶媒として5%容量/容量のメタノールを含む塩化メチレンを使用)。出発化合物が消失した時点で、513mlのジイソプロピルエーテルを攪拌しながら反応混合物に添加し、混合物を氷冷しながら1時間放置した。このときの最後に、不溶物を濾過して回収した。その不溶物を513mlのプロパノールに加熱して攪拌しながら完全に溶解し、溶液を冷蔵庫中で一晩放置し、上の1(d)の生成物と同一の物理化学的特性を有する無色の粉体として18.0gの表題の化合物を得た。
【実施例2】
【0087】
B型のCYC682の調製(欧州特許第1364959号による)
(a)日本国特許第2569251号の実施例1(1d)及び欧州特許第536936号(実施例1で上に記載された)に記載された化合物である2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(30g)に2.5容量%(300ml)で水を含む酢酸メチルを添加し、生じる混合物を約55℃まで昇温し、透明な溶液を調製した。続いて、1分あたり約0.5℃の速度で5℃まで溶液を冷却した。冷却の過程で約45℃まで冷却した時点で、板状結晶を溶液より分離した。5℃で20分間さらに攪拌後、分離された結晶を濾過して回収し、2.5容量%(30ml)で水を含む酢酸メチルで洗浄し、所望の結晶B(28.78g、純度97.9%)を96.0%[モル数/モル数]の収率で得た。
【0088】
(b)日本国特許第2569251号の実施例1(1d)及び欧州特許第536936号(実施例1で上に記載された)に記載された化合物である2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(8.7kg)に1.9容量%(80L)で水を含む酢酸メチルを添加し、生じる混合物を約23℃で1.5時間攪拌した。分離された結晶を濾過して回収し、1.9容量%(20L)で水を含む酢酸メチルで洗浄及び乾燥し、所望の結晶B(7.7kg、純度97.3%)を90.1%[モル数/モル数]の収率で得た。
【実施例3】
【0089】
カプセルの調製
2つの異なる強度:25mg及び75mgのCYC682で、カプセルを調製した。それぞれに見合って、より低強度の方を3号カプセルに充填して製剤したのに対し、より高強度の方を1号カプセルに充填して製剤した。全ての材料は、薬局方品質である。
【0090】
両強度用の核製剤は:
成分 機能 %(重量/重量)
CYC682 活性剤 25
Miglyol 812N欧州薬局方/GRAS 液体担体 75
を含む。
【0091】
核製剤は、活性剤をMiglyol 812Nと混合して調製された単純な懸濁液である。また、Myglyol 812Nはヤシ油としても知られ、欧州薬局方に記載されており、GRASに載っている。製剤中の成分は、カプセル皮膜及びバンド材を別にすれば、これらのみである。
【0092】
米国/欧州薬局方二酸化チタンを2%(重量)と、米国/欧州薬局方ゼラチンを100%までとを含む白色のカプセル皮膜を使用した。漏出を防ぐために、胴部及び蓋の繋ぎ目でカプセルをバンドした。バンド材は、米国/欧州薬局方ゼラチンを含む。
【0093】
両強度のカプセルを、充填重量の違いにより異なる投与量の同一の混合物より製造する。カプセルを、以下のように調製する。
1.CYC682を混合容器に量り入れる。
2.正しい総量が加えられるまで、Miglyol 812Nを徐々に加える。
3.2つの成分を、Silverson社製混合機を使用して高速で5〜8分間、混合する。
4.試料を取り出し、均一性を確かめる。
5.均一であれば、減圧で吸引して混合物を脱気する。
6.Bosch社製1500Lカプセル充填機に3号交換部分を据え付け、25mg投与量用の所望の充填重量が得られるように充填ポンプを調整する。
7.12個のカプセルの平均に対して次の目標、即ち、警告2.5%;処置3.5%;廃棄5.0%を使用し、25mgのカプセルを充填する。それぞれのカプセルの限界は7.5%である。
8.3号交換部分を1号交換部分に交換し、充填重量を再設定して、75mgのカプセル用に繰り返す。全ての他の条件は、同一である。
9.全てのカプセルの充填が完了すれば、透明なゼラチンを使用してカプセルをバンドする。
【0094】
カプセルの2種類の強度に対する充填重量は、それぞれ100mg及び300mgである。
【0095】
カプセル皮膜及びバンド用のゼラチンは、次の供給業者:カプセル−Capsulgel Bornem社, Rijksweg 11, B-2880 Bornem, ベルギー国;ゼラチン(カプセルのバンド用)−Stoess社, Gammelsbacherstr.2, 8412 Eberbach, ドイツ国より入手した。
【実施例4】
【0096】
安定性試験
40℃/75%相対湿度(RH)及び25℃/69%RHのポリプロピレン容器中に、カプセルを配置した。後者は通常の保存条件を構成していると考えられるのに対し、前者は加速保存条件を構成していると考えられる。検討は、6カ月の加速条件下での初期評価と、それに続く通常の保存条件下でのより長期の評価とよりなっていた。6カ月は、加速安定性試験のために認められた期間である。
【0097】
加速条件下で6カ月及び通常の保存条件で18カ月後、カプセルは物理的劣化及び包装との相互作用を一切示さなかった。さらに、HPLC分析により、親化合物のパーセンテージ及び(許容される)不純物のパーセンテージの程度のいずれにも長期にわたり有意な変化がなかったことが示された。
【0098】
本発明の範囲及び精神から逸脱しない、本発明の記載された様態の様々な修正及び変更は、当業者に明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関して記載してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明は、そのような特定の実施形態に必要以上に限定されるべきではないと理解されるべきである。実際、当業者に自明で、本発明を実施するための記載された形態の様々の修正は、特許請求の範囲内となるよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カプセルと、(ii)結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び液体担体を含む核とを含む薬学的製剤。
【請求項2】
結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンがB型を含む、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項3】
結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンがB型から本質的になる、請求項1又は請求項2に記載の薬学的製剤。
【請求項4】
液体担体が中鎖トリグリセリド油である、請求項1〜3のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項5】
中鎖トリグリセリド油がヤシ油又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項6】
液体担体がGelucire 44/14である、請求項1〜3のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項7】
カプセルがゼラチンカプセルである、請求項1〜6のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項8】
カプセルが硬カプセルである、請求項1〜7のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項9】
カプセルが1種又は複数の乳白剤及び/又は1種又は複数の顔料を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項10】
顔料及び/又は乳白剤が約0.1〜約10%の量でそれぞれ存在している、請求項9に記載の薬学的製剤。
【請求項11】
乳白剤が二酸化チタンである、請求項9又は請求項10に記載の薬学的製剤。
【請求項12】
二酸化チタンが約2%の量で存在している、請求項11に記載の薬学的製剤。
【請求項13】
カプセルがゼラチンバンドでシールされている、請求項1〜12のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項14】
核が結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び液体担体から本質的になる、請求項1〜13のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項15】
結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン1重量部に対して、液体担体の量が2〜50重量部である、請求項1〜14のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項16】
結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン1重量部に対して、液体担体の量が2〜10重量部である、請求項1〜15のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項17】
結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン1重量部に対して、液体担体の量が2〜5重量部である、請求項1〜16のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項18】
結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン約1重量部に対して、液体担体の量が約3重量部である、請求項1〜17のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項19】
経口投与のための、請求項1〜18のいずれかに記載の薬学的製剤。
【請求項20】
結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンのゼラチンカプセル中の液体担体としての、中鎖トリグリセリドの使用。
【請求項21】
中鎖トリグリセリドがヤシ油又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
液体担体がヤシ油又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである、結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンのカプセル中での使用のための液体担体。
【請求項23】
(i)結晶性2’−シアノ−2’−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン及び中鎖トリグリセリドを混合する工程と;
(ii)工程(i)で形成された混合物を予め形成されたカプセルに移送する工程と;
(iii)該カプセルをシールする工程と
を含む請求項1〜19のいずれかに記載の薬学的製剤を調製する方法。
【請求項24】
工程(iii)がゼラチンバンドでカプセルをシールすることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(iii)がマイクロ噴霧によりカプセルをシールすることを含む、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2009−520797(P2009−520797A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546637(P2008−546637)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004927
【国際公開番号】WO2007/072061
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506138030)サイクラセル リミテッド (21)
【Fターム(参考)】