説明

製品設計支援システム及び方法

【課題】製品の設計開発が短時間の内に行えるように製品設計業務を支援する。
【解決手段】この製品設計支援システムでは、設定された設計パラメータに対してL行直交表を作成し、L組の設計パラメータ群それぞれについて、各部の寸法の公差を足して多数回の仮想試作を実行し、この仮想試作で得たL組の評価指標の平均値と分散量を処理し応答曲面化して応答曲面モデルを作成し、さらに評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を作成し、この要因効果図を吟味し、評価指標に対して感度を持つ設計パラメータの任意の組み合わせを作成し、これを応答曲面モデルに当てはめることで設計目標値を達成し得る全設計パラメータを任意に組み合わせた多数の設計解を作成し、さらに、設計解群から指定された評価指標の制限値を達成する最尤設計解候補群を抽出するフィルタリングを行って最尤設計解群を選定し、ユーザに提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロケットエンジンシステムのような高度技術製品に対する製品設計支援システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロケットエンジンシステムのような高度技術製品の設計では、高信頼性設計が必要であり、信頼性の評価結果を設計にフィードバックし、設計に信頼性指標をも盛り込み、またその妥当性を確実に検証する技術も盛り込むことが要求されている。そしてそのために必要とされる基盤技術は、体系的リスクマネージメント技術、シミュレーション技術、L&L、詳細FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)、各種要素試験、システム試験データ、材料特性データ等の体系的データベース、さらには信頼性検証試験技術がある。
【0003】
そして各設計フェーズでそれぞれ以下の目標を達成することが求められる。概念設計から基本設計のフェーズでは、体系的システム分析、徹底的なリスク識別、設計方策の抽出を行うことで、サブシステム、コンポーネントへ適切な要求仕様が設定できるようにする。詳細設計以降のフェーズでは、詳細FMEAによる全図面、スペック情報の精査することで、サブシステム、コンポーネント仕様要求へフィードバックできるようにする。そして開発試験フェーズでは、事前の予測結果を検証することにより信頼性を実証し、予め識別した故障モードのリスクを排除できるようにする。
【0004】
ところが、従来の設計手法はワンポイント設計であり、このような高信頼性設計の要求には応えることができない問題点があった。
【特許文献1】特開2000−331035号公報
【特許文献2】特開平8−166876号公報
【特許文献3】特開2006−31488号公報
【特許文献4】特開平2−150972号公報
【特許文献5】特開2006−11729号公報
【特許文献6】特開平10−149384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、高信頼性設計が求められる高度技術製品の設計開発が短時間の内に行えるようにする製品設計支援システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの特徴は、データ入力操作のための入力装置、データ表示及びプリントアウトのための出力装置、データ及びプログラムライブラリをそれぞれ保持するためのプログラム保持部とデータ記憶部を備えたデータ保持装置及び前記入力装置にて入力されたデータ、前記データ保持装置に保持されているデータを取得し、前記データ保持装置に保持されているプログラムライブラリから適宜のプログラムを呼び出して実行するコンピュータ本体を備えた製品設計支援システムであって、前記入力装置からの設計対象の設計パラメータの入力を受け付けて前記データ保持装置に登録するパラメータ設定登録部と、前記データ保持装置に登録されている設計パラメータを用いて直交表作成プログラムを実行することで、そのパラメータの数に応じたL行の直交表を作成し、前記データ保持装置に登録する直交表作成部と、前記L行直交表のデータを用いて、前記データ保持装置から寸法決定プログラムを呼び出して実行し、直交表の行数Lの設計点に対して設計目標値を達成するように設計対象の各部の寸法を決定し、データ記憶部に登録する寸法演算部と、前記データ保持装置に保持されている設計対象のシミュレーションプログラムを呼び出し、前記寸法演算部にて得たL組の設計解それぞれについて、前記データ保持装置に登録されている各部の寸法の公差を足して多数回の仮想試作を実行し、シミュレーション結果を当該データ保持装置に登録するシミュレーション実行部と、前記データ保持装置に登録された設計パラメータ、各部寸法及びシミュレーション結果を呼び出し、かつ、設計対象の評価指標演算プログラムを呼び出して実行することで、設定された設計パラメータに対応する評価指標を算出し、前記データ保持装置に登録する評価指標演算部と、前記データ保持装置から応答曲面化演算プログラムを呼び出し、前記シミュレーション実行部で得たL組の評価指標の平均値と分散量を処理し、応答曲面化して応答曲面モデルを作成し、データ保持装置に登録する応答曲面モデル演算部と、前記データ保持装置からL行直交表及び評価指標を呼び出し、かつ前記データ保持装置に保持されている要因効果図作成プログラムを呼び出して実行し、評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を作成して表示出力し、またデータ保持装置に登録する要因効果図作成部と、ユーザが表示出力されあるいはプリントアウトされた評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を吟味し、評価指標に対して感度を持つ設計パラメータを特定する操作を行った後で、この操作入力に対して、前記データ保持装置に保持されている設計解探索プログラムを実行し、設計パラメータの任意の組み合わせを作成し、これを前記データ保持装置に登録さている応答曲面モデルに当てはめることで、設計目標値を達成し得る全設計パラメータを任意に組み合わせた多数の設計解を網羅的に作成し、前記データ保持装置に登録する設計解群算出部と、任意数の評価指標の制限値の指定操作入力を受け付け、前記データ保持装置からフィルタリングプログラムを呼び出して実行し、前記設計解群算出部にて得た設計解群から指定された評価指標の制限値を達成する最尤設計解候補群を抽出し、前記データ保持装置に登録するフィルタリング部と、前記フィルタリング部にてフィルタリングされた最尤設計解候補群に対して、ユーザが一又は複数種の評価指標を指定し、最尤設計解群を選定する指令を入力したときに、前記最尤設計解候補群から指定された評価指標を満足する最尤設計解群を選定して前記データ保持装置に登録する最尤設計解群選定部とを備えた製品設計支援システムである。
【0007】
上記発明の製品設計支援システムは、ユーザが前記入力装置から前記最尤設計解群選定部にて選定した最尤設計解群を参照して客先に推奨できる推奨設計解の設計パラメータを指定することで、指定された設計パラメータを用いてシミュレーションプログラム及び評価指標演算プログラムを実行して推奨設計解の評価指標を算出し前記出力装置に表示し、かつ、前記データ保持装置に登録する推奨設計解作成部を備えたものとすることができる。
【0008】
また、上記発明の製品設計支援システムは、前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータに対するユーザの理解度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記ユーザの理解度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ理解度登録部と、前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータの曖昧さが設計対象の設計解に及ぼす影響度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記設計対象の設計解に及ぼす影響度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ影響度登録部と、前記パラメータ毎のユーザの理解度と影響度を用いて設計対象の設計解のリスク度合を算出するリスク度合演算部と、前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を一覧表にして前記出力装置に出力して表示させるリスクデータベース管理部とを備えたものとすることができる。
【0009】
さらに、上記発明の製品設計支援システムは、前記リスクデータベース管理部は、前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を入力及び演算日時に対応したリスク度合の推移一覧表にして前記出力装置に出力して表示させるものとすることができる。
【0010】
また、本発明の別の特徴は、ユーザが入力装置、出力装置を用いて決定した設計対象の設計パラメータの入力を受け付けてデータ保持装置に登録するパラメータ登録ステップと、前記パラメータ登録ステップにて前記データ保持装置に登録されている設計パラメータを用い、かつ、直交表作成プログラムを実行することでそのパラメータの数に応じたL行の直交表を作成する直交表作成ステップと、前記L行直交表のデータを用いて、また、前記データ保持装置から寸法決定プログラムを呼び出して実行し、直交表の行数Lの設計点に対して設計目標値を達成するように設計対象の各部の寸法を決定し、前記データ保持装置に登録する寸法演算ステップと、前記データ保持装置に保持されている設計対象のシミュレーションプログラムを呼び出し、前記寸法演算ステップにて得たL組の設計解それぞれについて、前記データ保持装置に登録されている各部の寸法の公差を足して多数回の仮想試作を実行し、シミュレーション結果をデータ保持装置に登録するシミュレーションステップと、前記データ保持装置に登録された設計パラメータ、各部の寸法及びシミュレーション結果を呼び出し、かつ、設計対象の評価指標演算プログラムを呼び出して実行することで、設定された設計パラメータに対応する評価指標を算出し、データ保持装置に登録する評価指標演算ステップと、前記データ保持装置から応答曲面化演算プログラムを呼び出し、前記シミュレーションステップで得たL組の評価指標の平均値と分散量を処理し、応答曲面化して応答曲面モデルを作成し、前記データ保持装置に登録する応答曲面モデル演算ステップと、前記データ保持装置に登録されているL行直交表及び前記評価指標演算ステップで算出した評価指標を呼び出し、プログラム保持部に保持されている要因効果図作成プログラムを実行し、評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を作成し、データ保持装置に登録する要因効果図作成ステップと、ユーザが前記評価指標毎の設計パラメータ毎の要因効果図を吟味し、評価指標に対して感度を持つ設計パラメータを特定した後に、前記データ保持装置に保持されている設計解探索プログラムを実行し、設計パラメータの任意の組み合わせを作成し、これをデータ保持装置に登録さている応答曲面モデルに当てはめることで、設計目標値を達成し得る全設計パラメータを任意に組み合わせた多数の設計解を網羅的に作成し、前記データ保持装置に登録する設計解群算出ステップと、前記設計解群算出ステップにて前記データ保持装置からフィルタリングプログラムを呼び出して実行し、任意数の評価指標の制限値の指定操作入力を受け付け、前記設計解群算出ステップにて得た設計解群から指定された評価指標の制限値を達成する最尤設計解候補群を抽出し、前記データ保持装置に登録するフィルタリングステップと、前記フィルタリングステップにてフィルタリングされた最尤設計解候補群に対して、ユーザが1又は複数種の評価指標を指定して最尤設計解群を選定する指令を入力することで、前記最尤設計解候補群から指定された評価指標を満足する最尤設計解群を選定してデータ保持装置に登録する最尤設計解群選定ステップとを有する製品設計支援方法である。
【0011】
また、上記発明の製品設計支援方法は、前記最尤設計解群選定ステップにて選定した最尤設計解群からユーザが客先に推奨できる推奨設計解の設計パラメータを指定することで、指定された設計パラメータを用いてシミュレーションプログラム及び評価指標演算プログラムを実行して推奨設計解の評価指標を算出し、前記データ保持装置に記憶し、前記出力装置に出力する推奨設計解作成ステップを有するものとすることができる。
【0012】
また、上記発明の製品設計支援方法は、前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータに対するユーザの理解度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記ユーザの理解度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ理解度登録ステップと、前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータの曖昧さが設計対象の設計解に及ぼす影響度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記設計対象の設計解に及ぼす影響度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ影響度登録ステップと、前記パラメータ毎のユーザの理解度と影響度を用いて設計対象の設計解のリスク度合を算出するリスク算出ステップと、前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を一覧表にして前記出力装置に出力して表示させるリスク管理ステップとを有するものとすることができる。
【0013】
またさらに、上記発明の製品設計支援方法は、前記リスク管理ステップにて、前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を入力及び演算日時に対応したリスク度合の推移一覧表にして前記出力装置に出力して表示させるものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製品設計支援システム及び方法によれば、高信頼性設計が求められる高度技術製品の設計開発が短時間の内に行えるように製品設計業務を支援することができる。
【0015】
また本発明の製品設計支援システム及び方法によれば、製品設計の各段階にて寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータを漸進的に補正してゆくことで、最終設計段階ではリスク要因を極力小さくした製品設計ができるように製品設計業務を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の1つの実施の形態の製品設計支援方法に使用する製品設計支援システムを示している。本実施の形態の製品設計支援システムは、汎用のコンピュータシステムに本実施の形態の製品設計支援方法を実行するソフトウェアプログラムを組み込み、実行させることにより実現されるものであるが、以下、専用のシステムとして説明する。
【0018】
本実施の形態の製品設計支援方法を使用する製品設計支援システムは、設計対象が高度技術製品の場合には全体設計用の専用プログラムと共に多数の構成部品毎の部品設計用のプログラム、また所定のパラメータを入力することによって設計対象の動作をシミュレーションするシミュレーションプログラムをライブラリとして保持するプログラム保持部1、入力される多種類のパラメータ、評価指標、シミュレーション結果のデータ等の諸データを保存するデータ記憶部2、HMIとしてのキーボード、マウスなどのデータ入力装置3、ディスプレイやプリンタ等のデータ出力装置4、そして前記プログラム保持部1から該当するプログラムを読み出して実行し、諸演算を実行するコンピュータ本体5から構成されている。尚、コンピュータ本体5は、他のコンピュータシステムとネットワークにて接続され、他のコンピュータシステムとデータの送受信が可能である。
【0019】
図2は、本実施の形態の製品設計支援システムの諸機能構成を示している。本製品設計支援システムは、後述する諸演算処理を実行するパラメータ設定登録部11、直交表作成部12、寸法演算部13、シミュレーション実行部14、評価指標演算部15、応答曲面モデル演算部16、要因効果図作成部17、設計解群算出部18、フィルタリング部19、最尤設計解群選定部20、推奨設計解作成部21を備えている。
【0020】
パラメータ設定登録部11は、ユーザである設計技術者が入力装置3、出力装置4にて決定した設計対象の設計パラメータの入力を受け付けてデータ記憶部2に登録する。
【0021】
直交表作成部12は、データ記憶部2に登録されている設計パラメータを用いて、プログラム保持部1に保持されている直交表作成プログラムを実行することで、そのパラメータの数に応じたL行の直交表を作成し、データ記憶部2に登録する。この直交表作成機能は後述する。
【0022】
寸法演算部13は、L行直交表のデータを用いて、また、プログラム保持部1から寸法決定プログラムを呼び出して実行し、直交表の行数Lの設計点に対して設計目標値を達成するように設計対象の各部の寸法を決定し、データ記憶部2に登録する。
【0023】
シミュレーション実行部14は、プログラム保持部1に保持されている設計対象のシミュレーションプログラムを呼び出し、寸法演算部13にて得たL組のモデルそれぞれについて、データ記憶部2に登録されている各部の寸法の公差を足して多数回の仮想試作を実行し、シミュレーション結果をデータ記憶部2に登録する。
【0024】
評価指標演算部15は、データ記憶部2に登録された設計パラメータ、各部寸法及びシミュレーション結果を呼び出し、かつ、プログラム保持部1に保持されている設計対象の評価指標演算プログラムを実行することで、設定された設計パラメータに対応する評価指標を算出し、データ記憶部2に登録する。
【0025】
応答曲面モデル演算部16は、プログラム保持部1から応答曲面化演算プログラムを呼び出し、シミュレーション実行部14で得たL組の評価指標の平均値と分散量を処理し、応答曲面化して応答曲面モデルを作成し、データ記憶部2に登録する。
【0026】
要因効果図作成部17は、データ記憶部2からL行直交表及び評価指標を呼び出し、プログラム保持部1に保持されている要因効果図作成プログラムを実行し、評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を作成して表示出力し、またデータ記憶部2に登録する。
【0027】
設計解群算出部18は、ユーザが表示出力されあるいはプリントアウトされた評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を吟味し、評価指標に対して感度を持つ設計パラメータを特定する操作を行った後で、この操作入力に対して、プログラム保持部1に保持されている設計解探索プログラムを実行し、設計パラメータの任意の組み合わせを作成し、これをデータ記憶部2に登録さている応答曲面モデルに当てはめることで、設計目標値を達成し得る全設計パラメータを任意に組み合わせた多数の設計解を網羅的に作成し、データ記憶部2に登録する。
【0028】
フィルタリング部19は、プログラム保持部1からフィルタリングプログラムを呼び出して実行し、例えば、システム寿命、動作安定性、システム性能、ロバスト等のいくつかの評価指標の制限値の指定操作入力を受け付け、設計解群算出部18にて得た設計解群から指定された評価指標の制限値を達成する最尤設計解候補群を抽出し、データ記憶部2に登録する。
【0029】
最尤設計解群選定部20は、フィルタリング部19にてフィルタリングされた最尤設計解候補群に対して、ユーザがシステム寿命、動作安定性、システム性能等の一又は複数種の評価指標を指定し、最尤設計解群を選定する指令を入力することで、上記の最尤設計解候補群から指定された評価指標を満足する最尤設計解群を選定してデータ記憶部2に登録する。
【0030】
推奨設計解作成部21は、ユーザが入力装置3から最尤設計解群選定部20にて選定した最尤設計解群を参照して客先に推奨できる推奨設計解の設計パラメータを指定することで、指定された設計パラメータを用いてシミュレーションプログラム及び評価指標演算プログラムを実行して推奨設計解の評価指標を算出して出力装置4としてのディスプレイに表示し、データ記憶部2に登録し、またユーザの指定によって出力装置4としてのプリンタにてプリントアウトする。
【0031】
上記構成の製品設計支援システムによる製品設計支援方法について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
ステップS1:設計技術者であるユーザが入力装置3、出力装置4を用いて決定した設計対象の設計パラメータの入力を受け付けてデータ記憶部2に登録するパラメータ登録ステップ。
【0033】
ステップS2:S1のステップにてデータ記憶部2に登録されている設計パラメータを用いて、プログラム保持部1に保持されている直交表作成プログラムを実行することで、そのパラメータの数に応じたL行の直交表を作成する直交表作成ステップ。例えば、13パラメータであれば、L=27行の直交表を作成する。また、パラメータ数が増加すればその数に応じてさらに上位の直交表を作成する。この直交表は、膨大な組み合わせの設計パラメータの中から設計パラメータをまんべんなく選択し、少ない試行回数で各設計パラメータの影響を取得するもので、L=27行の直交表によれば27種類の異なった設計パラメータの組み合わせが得られる。
【0034】
ステップS3:S2のステップにて得たL行直交表のデータを用いて、また、プログラム保持部1から寸法決定プログラムを呼び出して実行し、直交表の行数Lの設計点に対して、設計目標値を達成するように設計対象の各部の寸法を決定し、データ記憶部2に登録する寸法演算ステップ。
【0035】
ステップS4:プログラム保持部1に保持されている設計対象のシミュレーションプログラムを呼び出し、S3のステップにて得たL行の直交表のL組の設計解それぞれについて、データ記憶部2に登録されている各部の寸法の公差を足して多数回の仮想試作を実行し、シミュレーション結果をデータ記憶部2に登録するシミュレーションステップ。
【0036】
ステップS5:データ記憶部2に登録された設計パラメータを呼び出し、かつ、プログラム保持部1に保持されている設計対象の評価指標演算プログラムを実行することで、設定された設計パラメータに対応する評価指標を算出し、データ記憶部2に登録する評価指標演算ステップ。
【0037】
ステップS6:プログラム保持部1から応答曲面化演算プログラムを呼び出し、S5のステップで得たL組の評価指標の平均値と分散量を処理し、応答曲面化して応答曲面モデルを作成し、データ記憶部2に登録する応答曲面モデル演算ステップ。
【0038】
ステップS7:S2のステップで得たL行直交表及びS5のステップで算出した評価指標を呼び出し、プログラム保持部1に保持されている要因効果図作成プログラムを実行し、評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を作成し、データ記憶部2に登録する要因効果図作成ステップ。
【0039】
ステップS8:ユーザがS7ステップで作成した評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を吟味し、評価指標に対して感度を持つ設計パラメータを特定した後に、プログラム保持部1に保持されている設計解探索プログラムを実行し、設計パラメータの任意の組み合わせを作成し、これをデータ記憶部2に登録さている応答曲面モデルに当てはめることで、設計目標値を達成し得る全設計パラメータを任意に組み合わせた多数の設計解を網羅的に作成し、データ記憶部2に登録する設計解群算出ステップ。
【0040】
ステップS9:プログラム保持部1からフィルタリングプログラムを呼び出して実行し、例えば、システム寿命、動作安定性、システム性能、ロバスト等のいくつかの評価指標の制限値の指定操作入力を受け付け、S8のステップにて得た設計解群から指定された評価指標の制限値を達成する最尤設計解候補群を抽出し、データ記憶部2に登録するフィルタリングステップ。
【0041】
ステップS10:S9のステップにてフィルタリングされた最尤設計解候補群に対して、ユーザが一又は複数種の評価指標を指定し、最尤設計解群を選定する指令を入力することで、上記の最尤設計解候補群から指定された評価指標を満足する最尤設計解群を選定してデータ記憶部2に登録する最尤設計解群選定ステップ。
【0042】
ステップS11:S10のステップにて選定した最尤設計解群から、ユーザが客先に推奨できる推奨設計解の設計パラメータを指定することで、指定された設計パラメータを用いてシミュレーションプログラム及び評価指標演算プログラムを実行して推奨設計解の評価指標を算出し、出力装置4としてのディスプレイに表示し、データ記憶部2に記憶し、またユーザの指定によって出力装置4としてのプリンタにて出力する推奨設計解作成ステップ。
【0043】
以上により、本実施の形態の製品設計支援システム及びそれが実行する製品設計支援方法によれば、複雑で高度な技術が必要となる高度技術製品の設計を、ユーザが設計パラメータの指定から始めて、設計の各段階で必要とされる評価指標や設計パラメータを選択操作するだけで、入力された設計パラメータを用いて与えられた評価指標を満たす最尤設計解群を作成し、さらには最終的な推奨設計解を作成することができる。例えば、ある設計対象の設計において、性能はベストではないが、性能をベストにすれば寿命、安定性、ロバスト特性が犠牲にされるので、性能はベストから少し抑えて、寿命、安定性、ロバスト特性に優れ、バランスに優れた設計解を得、これを客先に提案することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の製品設計支援システム及び製品設計支援方法について説明する。本実施の形態の特徴は、例えば、製品の寸法決定プログラムやシミュレーションプログラムを作成する際に、ユーザが設定する諸パラメータについては、それらのユーザの確信度に応じたリスク指標を登録させ、リスク設定したパラメータについてそのパラメータ名、リスク度合をリストにして表示し、またプリントアウトすることで、製品設計の各段階、例えば、初期設計段階、サブモデル試作段階、フルモデル試作段階等での寸法決定プログラムやシミュレーションプログラムのリスク度合やリスク低減の推移をユーザに提示することができる製品設計支援システム及びそれが実行する製品設計支援方法である。
【0045】
本実施の形態の製品設計支援システムのハードウェア構成は、第1の実施の形態と同様に図1に示したコンピュータシステムにて構成される。本製品設計支援システムの機能構成は図4に示すものであり、第1の実施の形態の要素に加えて、計算モデルである寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムに対して、図5に示すパラメータ毎のリスク登録画面をディスプレイに表示させ、ユーザである技術者が設定した各パラメータに対する確信の度合あるいは自信の度合を例えば「現象理解度」、「環境理解度」、「実証理解度」に分けて設定入力させ、データ保持装置2のリスクデータベースに登録する機能と、リスク設定するパラメータ毎に最終システムに及ぼす影響度も同じくリスク登録画面から入力させてリスクデータベースに登録する機能を有するリスク指標登録部22を備えている。このリスク指標登録部22は、特許請求の範囲におけるパラメータ理解度登録部及びパラメータ影響度登録部を兼備している。
【0046】
本実施の形態の製品設計支援システムはまた、リスク指標登録部22にて入力された「現象理解度」、「環境理解度」、「実証理解度」に対して、図7に示した算定式にて演算し、さらに図8に示す換算表にて「技術理解度」を算出し、これをリスク登録画面の該当箇所に表示させると共にデータ記憶部2のリスクデータベースに登録し、さらに、登録された諸パラメータと技術理解度及び影響度を用いてリスク度合を演算し、リスク登録画面のリスク度合表示欄に表示させると共にリスク度合としてリスクデータベースに登録するリスク度合演算部23を備えている。
【0047】
本実施の形態の製品設計支援システムはさらに、リスクデータベースに登録された諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を一覧表にして出力装置4であるディスプレイに表示させるリスクデータベース管理部24を備えている。このリスクデータベース管理部24はさらに、諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を入力及び演算日時に対応した図9に示すようなリスク度合の推移一覧表にして出力装置4としてのディスプレイに表示し、またユーザの指定によって出力装置4としてのプリンタにてプリントアウトすることができる。
【0048】
本実施の形態の製品設計支援システムによる製品設計支援方法では、リスク管理には、次の手順をとる。
【0049】
(1)モデルの準備
シミュレーションプログラムに、計算モデルを登録しておく。パラメータ設定登録部11にて諸パラメータを設定登録する。
【0050】
(2)計算モデルの内部パラメータのリスク関連指標の設定
図5に示したリスク登録画面を出力装置4であるディスプレイに表示させ、各計算モデルに対して、内部パラメータの選定と選定した内部パラメータに対する上述したリスク指標の設定を行う。このリスク指標は、ユーザの計算モデルに設定する諸パラメータの仮定値に対する自信度あるいは確信度を反映させた指標である。そしてその仮定値が想定される最悪の値をとった場合にどうなるかを「影響度」として設定する。これらはリスク指標登録部22にて行う。
【0051】
本実施の形態の場合、技術的理解度=現象の理解度×環境条件の理解度×実証度と定義している。そして、図7の表に示したように、「現象の理解度」、「環境条件の理解度」、「実証度」それぞれのリスク関連指標を格付けに応じたスコアとして入力すると、これらに対して上記定義式に基づいて図8の表に示すような格付けで「技術的理解度」のポイントを算出する。
【0052】
(3)影響度解析
インタフェース条件と内部パラメータの変動がシステムの出力、特性、性能等にどのように影響を及ぼすのかをシミュレーションプログラムを実行させた結果により確認し、影響度のポイントとして入力する。これもリスク指標登録部22にて設定する。
【0053】
(2)の技術的理解度のポイントとこの影響度のポイントとが求められると、リスクはこれらのかけ算値として求められる。技術者が図5に示したリスク登録画面を用いて必要と考えられるすべてのパラメータについて、そのパラメータ名とリスク関連指標を入力することで、リスク度合演算部23は入力されたすべてのパラメータについてリスク度合を演算してディスプレイに表示されているリスク登録画面の該当欄に反映させると共に、リスクデータベースに登録する。
【0054】
ここまでで諸パラメータ毎に設定登録されたリスク関連指標は、ユーザのリスト要求に対して、図9に例示したリスク一覧にしてディスプレイに表示させることができる。この機能はリスクデータベース管理部24にて行う。
【0055】
(4)補正操作
システム出力、特性、性能等をどの程度元に戻せるかを、ユーザが意識的に関連すると思うパラメータを指定して補正操作し、シミュレーションプログラムを実行させることで検討する。
【0056】
(5)得失の確認
補正操作による得失を評価する。(例:パレート解の明示)
補正操作が有効である場合は、「影響度」のレベルを低くする。
【0057】
(6)許容不可リスクの抽出
補正操作により損失その他、システム出力、特性、性能等に影響が大きく出る事象を特定し、事象毎に対処方針も含めてパラメータ毎のリスク管理レコードにリスクデータベースに登録する。例えば、図9のリスク一覧の場合、シミュレーションプログラムの概念設計時に文献に基づいて設定した諸パラメータに対して、要素試験を実行する段階に諸パラメータを補正することで自信度を高め、結果的にリスクを低減させている。そしてさらに、コンポーネントサブスケール試験時に計算モデルの諸パラメータについてさらに厳密に補正することでリスクをいっそう低減できる。尚、図6では、特定のパラメータについてのリスク低減計画を示している。
【0058】
パラメータの補正設定はパラメータ設定登録部11にて行い、また、シミュレーションプログラムの実行するシミュレーション実行部14にて行う。また、その他、必要な演算処理は第1の実施の形態と同様に実行する。
【0059】
このようにして、本実施の形態の製品設計支援システム及び方法によれば、製品設計段階でリスクを許容範囲まで低減した設計解を得、これに基づいて設計対象の試作モデルを作成することができる。また、試作モデルの作成前でも仮想的な試作モデルによりリスク低減を確認することも可能であり、設計対象の最尤設計解をそれに内在する諸パラメータのリスク情報も含めて求めることができる。
【実施例1】
【0060】
図10に示すロケットエンジンについて、ロケット燃焼時間の98%を占める定常運転での設計、つまり、定常作動点設計を実施した。
【0061】
定常作動点計算には、点火などの初期化機能に関わる部分は分離して考えることができるため、必要な項目のみを抽出すれば、図11に示すように、1つの系統図で対処できる。
【0062】
設計対象とした系統図に対して、図11の系統図を用い、設定が必要な各部の設計パラメータとその範囲を入力した。図12は設計パラメータとその範囲を設定した表を示している。
【0063】
続いて、図12の設計パラメータ群を用い、L27直交表を用いて27種類の異なった設計パラメータの組み合わせを得た。図13はL27直交表を示している。
【0064】
次に、27個の設計点に対して、10トンの推力が発生できるように寸法決定プログラムを実行して代表点の寸法決定を行った。次に、シミュレーションプログラムにより、決定された寸法に実際の公差を足した寸法を用いて多数回の仮想試作を実施した。
【0065】
このそれぞれの仮想試作結果に対して評価指標演算プログラムを実行して得られた評価指標群を図14に示してある。
【0066】
さらに、上のシミュレーションで得られた27組の評価指標の平均値と分散量を処理し、応答曲面化したモデルを作成した。27組の平均値と分散量を補間して得られた近似モデルであり、これを用いると次の計算速度を速くできる。L27直交表に割り付けたことにより、各統計量や状態量は図12の設計パラメータの範囲内で内挿が可能となる。また各値の影響度は試作数100×9=900データに基づき決められる。この段階で、本システムは単純な2次関数の和で表現される。図15に全影響度係数(応答曲面関数群)の係数の表の一部を示してある。また、図16は応答曲面モデルを示している。これに、設計パラメータを代入すれば、瞬時に評価指標の物理量の平均値と分散が得られる。
【0067】
応答曲面モデルで評価指標毎に設計パラメータの変化によりどの程度変化するかを示す、図17に示したような要因効果図を全評価指標について作成した。そして、要因効果図により、設計パラメータを吟味して、感度が無いにもかかわらず偶然に選ばれてしまう可能性のあるパラメータを特定した。今回、最初に選定した11設計パラメータの内、2設計パラメータはエンジンシステムへの影響が小さいか影響方向が決まっているため、この段階で固定した。したがって、残り9設計パラメータについて振って最尤解探索を実施することにした。
【0068】
そのために、まず、応答曲面モデルにより、任意の設計パラメータの組み合わせに対して、評価指標や状態量の平均値と分散量が瞬時に得られるようになったので、9設計パラメータを網羅的に振って10000台のモデルを仮想試作した。図18には、その結果を示している。この3次元グラフの各点は、推力10トンのロケットエンジンの設計解を示している。この10000設計解に対して4評価指標、寿命、性能、安定性、ロバスト性にまとめ、それぞれのチャンピオンデータを取得した。図19はチャンピオンデータを示している。
【0069】
続いて、設計者の意図する設計解を得るためにフィルタリングを行った。つまり、図20に示したように、同図(a)の10000設計解の中から、同図(b)のように超臨界燃焼(高周波安定)+ポンプ改修リスク小の制約でフィルタリングし、次に、同図(c)のようにインジェクタ温度250K以上(高周波安定)の制約でさらにフィルタリング、さらに、同図(d)のように寿命、低周波安定性、SN比の制約でフィルタリングし、同図(e)のようにオリフィス調整代確保の制約で最終フィルタリングを行った。こうして、バランスに優れた最尤設計解の集合(27個)を得た。
【0070】
これら最尤設計解群から元の設計パラメータを吟味し、推奨設計解の設計パラメータの組み合わせを決定し、これに対して寸法決定プログラム及び評価指標演算プログラムを実行し、寸法を確定した。以上のような動作点に基づき設計された推奨設計解のエンジンの外観は図10に示したものであった。推奨設計解のスペックは、一部図21に示すものであった。
【0071】
この定常作動点設計結果について、評価の一例は以下の通りである。
【0072】
・燃焼器寿命はモデルの詳細化に伴い4倍マージンで30回程度を確保している。
【0073】
・平均ISPeng(エンジンシステム比推力)は354.7秒であり、3σlow(対象の確率分布の偏差がσであるとした場合、3σ下方にずれた値)でも350secは確保できている。しかし、GGガス温(ガスジェネレータで発生した高温ガスの温度)を下げなければならない場合は、−1sec/10K程度の性能低下がある。
【0074】
・安定性モデルが詳細化されたため、メイン燃焼器、GG(ガスジェネレータ)ともにバランスよく配分できた。O=22%PC、F=17%PCの値そのものも妥当な数値と考えられる。ただし今回は、再生冷却圧損が少なく出たために、その影響をポンプにまわすのではなくF=22%PCとして、インジェクタ圧損でバッファーを確保した。これによりGGに供給するLNGの圧力も大きめに取れるので、F=17%Pgの状態で調整代が同時に確保できた。
【0075】
・Pcは設計で5.2MPaであるが、仮想試作で統計をとると5.17MPaに落ちている。各部の公差が必ずしも±平等に作用しているわけではないと思われる。差分0.03MPaはオリフィスで戻せる量である。σ=0.0379MPaの偏差が生じるために、5.2MPaへ調整したのちには、3σlowのケースでも5.0MPaLOX臨界圧燃焼は確保できる見込みである。
【0076】
・推力は、97.3Nを平均値として、3σで±2.8kNばらつくことが考えられるが、これはPcを±0.15MPa調整できれば吸収可能である。調整抵抗により吸収できると考えられる。
【0077】
・ポンプ運転状況に関係する指標は、既存同クラス製品での運転と同程度であることを示唆している。特に今回はボリュートケーシングサイズを変えないで済むように気をつけた。
【0078】
・ノズル冷却にLNGブリードが必要となる場合は、0.1kg/sのサービス毎にISPengが約1secずつ低下していくことに注意しなければならない。
【0079】
本実施の形態のシステムを用いた今回の設計結果は、従来設計の結果と大差ないが、信頼性が作り込まれていっていることで設計結果に対して設計者に安心感を抱かせることができることが実証できた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態の製品設計支援システムのハードウェア構成のブロック図。
【図2】上記第1の実施の形態の製品設計支援システムの機能構成のブロック図。
【図3】上記第1の実施の形態の製品設計支援システムによる製品設計支援方法のフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施の形態の製品設計支援システムの機能構成のブロック図。
【図5】上記第2の実施の形態の製品設計支援システムによるリスク登録画面の説明図。
【図6】上記第2の実施の形態の製品設計支援システムによるリスク低減計画の設定画面の説明図。
【図7】上記第2の実施の形態の製品設計支援システムにおいて設定パラメータに対する理解度の種類と格付けとスコアの対応表及びこれらを統合して技術理解度を求める演算式を説明する図。
【図8】上記第2の実施の形態の製品設計支援システムにおいて技術理解度のスコアとポイントとの対応表。
【図9】上記第2の実施の形態の製品設計支援システムにより出力されたリスク管理表。
【図10】本発明の実施例1の製品設計支援システムによる設計対象の最尤設計解に基づく立体モデル図。
【図11】上記実施例1の製品設計支援システムによる設計対象の定常計算系統図。
【図12】上記実施例1の製品設計支援システムによるパラメータ設定画面の説明図。
【図13】上記実施例1の製品設計支援システムにより作成したL27直交表。
【図14】上記実施例1の製品設計支援システムにより出力された評価指標リストの説明図。
【図15】上記実施例1の製品設計支援システムによる作成した応答曲面関数群のリスト。
【図16】上記実施例1の製品設計支援システムによる応答曲面モデルによる系統図。
【図17】上記実施例1の製品設計支援システムによる設定パラメータが評価指標に及ぼす影響を示す要因効果図。
【図18】上記実施例1の製品設計支援システムによる応答曲面モデルに対して全設計パラメータを設定範囲で変化させて作成した10000設計解の全評価指標空間での3次元分布図。
【図19】上記実施例1の製品設計支援システムによる応答曲面モデルに対して全設計パラメータを設定範囲で変化させて作成した10000設計解から得た各評価指標のチャンピオンデータのレーダグラフ。
【図20】上記実施例1の製品設計支援システムによるフィルタリングの経過説明図。
【図21】上記実施例1の製品設計支援システムにより得た推奨設計解のスペック表。
【符号の説明】
【0081】
1 プログラム保持部
2 データ記憶部
3 入力装置
4 出力装置
5 コンピュータ本体
11 パラメータ設定登録部
12 直交表作成部
13 寸法演算部
14 シミュレーション実行部
15 評価指標演算部
16 応答曲面モデル演算部
17 要因効果図作成部
18 設計解群算出部
19 フィルタリング部
20 最尤設計解群選定部
21 推奨設計解作成部
22 リスク登録部
23 リスク度合演算部
24 リスクデータベース管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ入力操作のための入力装置、データ表示及びプリントアウトのための出力装置、データ及びプログラムライブラリをそれぞれ保持するためのプログラム保持部とデータ記憶部を備えたデータ保持装置及び前記入力装置にて入力されたデータ、前記データ保持装置に保持されているデータを取得し、前記データ保持装置に保持されているプログラムライブラリから適宜のプログラムを呼び出して実行するコンピュータ本体を備えた製品設計支援システムであって、
前記入力装置からの設計対象の設計パラメータの入力を受け付けて前記データ保持装置に登録するパラメータ設定登録部と、
前記データ保持装置に登録されている設計パラメータを用いて直交表作成プログラムを実行することで、そのパラメータの数に応じたL行の直交表を作成し、前記データ保持装置に登録する直交表作成部と、
前記L行直交表のデータを用いて、前記データ保持装置から寸法決定プログラムを呼び出して実行し、直交表の行数Lの設計点に対して設計目標値を達成するように設計対象の各部の寸法を決定し、データ記憶部に登録する寸法演算部と、
前記データ保持装置に保持されている設計対象のシミュレーションプログラムを呼び出し、前記寸法演算部にて得たL組の設計解それぞれについて、前記データ保持装置に登録されている各部の寸法の公差を足して多数回の仮想試作を実行し、シミュレーション結果を当該データ保持装置に登録するシミュレーション実行部と、
前記データ保持装置に登録された設計パラメータ、各部寸法及びシミュレーション結果を呼び出し、かつ、設計対象の評価指標演算プログラムを呼び出して実行することで、設定された設計パラメータに対応する評価指標を算出し、前記データ保持装置に登録する評価指標演算部と、
前記データ保持装置から応答曲面化演算プログラムを呼び出し、前記シミュレーション実行部で得たL組の評価指標の平均値と分散量を処理し、応答曲面化して応答曲面モデルを作成し、データ保持装置に登録する応答曲面モデル演算部と、
前記データ保持装置からL行直交表及び評価指標を呼び出し、かつ前記データ保持装置に保持されている要因効果図作成プログラムを呼び出して実行し、評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を作成して表示出力し、またデータ保持装置に登録する要因効果図作成部と、
ユーザが表示出力されあるいはプリントアウトされた評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を吟味し、評価指標に対して感度を持つ設計パラメータを特定する操作を行った後で、この操作入力に対して、前記データ保持装置に保持されている設計解探索プログラムを実行し、設計パラメータの任意の組み合わせを作成し、これを前記データ保持装置に登録さている応答曲面モデルに当てはめることで、設計目標値を達成し得る全設計パラメータを任意に組み合わせた多数の設計解を網羅的に作成し、前記データ保持装置に登録する設計解群算出部と、
任意数の評価指標の制限値の指定操作入力を受け付け、前記データ保持装置からフィルタリングプログラムを呼び出して実行し、前記設計解群算出部にて得た設計解群から指定された評価指標の制限値を達成する最尤設計解候補群を抽出し、前記データ保持装置に登録するフィルタリング部と、
前記フィルタリング部にてフィルタリングされた最尤設計解候補群に対して、ユーザが一又は複数種の評価指標を指定し、最尤設計解群を選定する指令を入力したときに、前記最尤設計解候補群から指定された評価指標を満足する最尤設計解群を選定して前記データ保持装置に登録する最尤設計解群選定部とを備えたことを特徴とする製品設計支援システム。
【請求項2】
ユーザが前記入力装置から前記最尤設計解群選定部にて選定した最尤設計解群を参照して客先に推奨できる推奨設計解の設計パラメータを指定することで、指定された設計パラメータを用いてシミュレーションプログラム及び評価指標演算プログラムを実行して推奨設計解の評価指標を算出し前記出力装置に表示し、かつ、前記データ保持装置に登録する推奨設計解作成部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の製品設計支援システム。
【請求項3】
前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータに対するユーザの理解度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記ユーザの理解度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ理解度登録部と、
前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータの曖昧さが設計対象の設計解に及ぼす影響度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記設計対象の設計解に及ぼす影響度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ影響度登録部と、
前記パラメータ毎のユーザの理解度と影響度を用いて設計対象の設計解のリスク度合を算出するリスク度合演算部と、
前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を一覧表にして前記出力装置に出力して表示させるリスクデータベース管理部とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の製品設計支援システム。
【請求項4】
前記リスクデータベース管理部は、前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を入力及び演算日時に対応したリスク度合の推移一覧表にして前記出力装置に出力して表示させることを特徴とする請求項3に記載の製品設計支援システム。
【請求項5】
ユーザが入力装置、出力装置を用いて決定した設計対象の設計パラメータの入力を受け付けてデータ保持装置に登録するパラメータ登録ステップと、
前記パラメータ登録ステップにて前記データ保持装置に登録されている設計パラメータを用い、かつ、直交表作成プログラムを実行することでそのパラメータの数に応じたL行の直交表を作成する直交表作成ステップと、
前記L行直交表のデータを用いて、また、前記データ保持装置から寸法決定プログラムを呼び出して実行し、直交表の行数Lの設計点に対して設計目標値を達成するように設計対象の各部の寸法を決定し、前記データ保持装置に登録する寸法演算ステップと、
前記データ保持装置に保持されている設計対象のシミュレーションプログラムを呼び出し、前記寸法演算ステップにて得たL組の設計解それぞれについて、前記データ保持装置に登録されている各部の寸法の公差を足して多数回の仮想試作を実行し、シミュレーション結果をデータ保持装置に登録するシミュレーションステップと、
前記データ保持装置に登録された設計パラメータ、各部の寸法及びシミュレーション結果を呼び出し、かつ、設計対象の評価指標演算プログラムを呼び出して実行することで、設定された設計パラメータに対応する評価指標を算出し、データ保持装置に登録する評価指標演算ステップと、
前記データ保持装置から応答曲面化演算プログラムを呼び出し、前記シミュレーションステップで得たL組の評価指標の平均値と分散量を処理し、応答曲面化して応答曲面モデルを作成し、前記データ保持装置に登録する応答曲面モデル演算ステップと、
前記データ保持装置に登録されているL行直交表及び前記評価指標演算ステップで算出した評価指標を呼び出し、プログラム保持部に保持されている要因効果図作成プログラムを実行し、評価指標毎の設計パラメータの要因効果図を作成し、データ保持装置に登録する要因効果図作成ステップと、
ユーザが前記評価指標毎の設計パラメータ毎の要因効果図を吟味し、評価指標に対して感度を持つ設計パラメータを特定した後に、前記データ保持装置に保持されている設計解探索プログラムを実行し、設計パラメータの任意の組み合わせを作成し、これをデータ保持装置に登録さている応答曲面モデルに当てはめることで、設計目標値を達成し得る全設計パラメータを任意に組み合わせた多数の設計解を網羅的に作成し、前記データ保持装置に登録する設計解群算出ステップと、
前記設計解群算出ステップにて前記データ保持装置からフィルタリングプログラムを呼び出して実行し、任意数の評価指標の制限値の指定操作入力を受け付け、前記設計解群算出ステップにて得た設計解群から指定された評価指標の制限値を達成する最尤設計解候補群を抽出し、前記データ保持装置に登録するフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップにてフィルタリングされた最尤設計解候補群に対して、ユーザが1又は複数種の評価指標を指定して最尤設計解群を選定する指令を入力することで、前記最尤設計解候補群から指定された評価指標を満足する最尤設計解群を選定してデータ保持装置に登録する最尤設計解群選定ステップとを有する製品設計支援方法。
【請求項6】
前記最尤設計解群選定ステップにて選定した最尤設計解群からユーザが客先に推奨できる推奨設計解の設計パラメータを指定することで、指定された設計パラメータを用いてシミュレーションプログラム及び評価指標演算プログラムを実行して推奨設計解の評価指標を算出し、前記データ保持装置に記憶し、前記出力装置に出力する推奨設計解作成ステップを有する請求項5に記載の製品設計支援方法。
【請求項7】
前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータに対するユーザの理解度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記ユーザの理解度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ理解度登録ステップと、
前記寸法決定プログラム及びシミュレーションプログラムの諸パラメータの曖昧さが設計対象の設計解に及ぼす影響度の設定画面を前記出力装置に表示し、当該設定画面にて設定入力された前記設計対象の設計解に及ぼす影響度を受け付けて前記データ保持装置に保持されているリスクデータベースに登録するパラメータ影響度登録ステップと、
前記パラメータ毎のユーザの理解度と影響度を用いて設計対象の設計解のリスク度合を算出するリスク算出ステップと、
前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を一覧表にして前記出力装置に出力して表示させるリスク管理ステップとを有する請求項5又は6に記載の製品設計支援方法。
【請求項8】
前記リスク管理ステップにて、前記諸パラメータのパラメータ名、設定登録されたユーザの理解度、設計対象の設計解に及ぼす影響度及び算出されたリスク度合を入力及び演算日時に対応したリスク度合の推移一覧表にして前記出力装置に出力して表示させることを特徴とする請求項7に記載の製品設計支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−93271(P2009−93271A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260974(P2007−260974)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】