説明

製品長が異なるプレス品のプレス装置

【課題】
絞り加工を行う際、金型の共用を可能にするとともに、製品長の長さ調整を簡単に行うことができ、コスト低減を図ることができる製品長が異なるプレス品のプレス装置を提供する。
【解決手段】
プレス装置の上型60及び下型20は、それぞれ、ダイ本体62、ポンチ本体22と、各本体62、22に接続可能なロング製品形成用の分割ダイ66,分割ポンチ26と、分割ダイ66,分割ポンチ26よりもダイ本体62の長さ方向において短い形成されて前記本体62、22にそれぞれ接続可能なショート製品形成用のシワ押さえ金型72、32を備える。ロング製品形成用の分割ダイ66,分割ポンチ26とシワ押さえ金型72、32とを使い分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品長が異なるプレス品のプレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品長が異なる製品をそれぞれプレス成形することが行われている。図8(a)及び図8(c)に、製品長が異なるプレス成形品の例が示されている。両図に示す製品A1,A2中、製品A2は、ハッチング部分の領域a分だけ、製品A1よりも長く形成され、領域aを除いた他の領域は、製品A1と同一に形成されている。以下、製品A1のように、製品長の短い製品をショート製品といい、製品A2のように製品長が長い製品をロング製品という。
【0003】
従来はショート製品をプレス成形で製造する場合、図8(b)に示すポンチP1を使用し、ロング製品をプレス成形で製造する場合、図8(d)に示すように、ポンチP1よりも長さが異なるポンチP2を使用するようにしている。
【0004】
特許文献1は、上型及び下型にそれぞれ固定部及び可動部が設けられて、製品長が異なる折り曲げ品に応じて前記可動部の位置調整を行うことにより、ワークに対して折り曲げ成形を行うようにしている。
【0005】
特許文献2には、金型及びパンチを少なくともいずれか一方を分離可能にして、その分離した部材間にシムを配置することにより、長さ調節を行うことができるクロスメンバーの製造装置が提案されている。特許文献2は、シムを分離した部材間に挿入し、ネジ付きロッドで前記シムと分離した部材を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−47445号公報
【特許文献2】特表2009−509774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、製品長が異なる製品を絞り加工により製造する場合、製品長の異なる製品毎に異なる大きさのポンチを使用するため、金型の共用ができず、コスト高となる問題があった。
【0008】
特許文献1は、折り曲げ箇所に応じて、可動部の位置調整を行うようにした折り曲げ成形の技術であり、絞り加工を行うことはできないものである。
特許文献2は、シムを使用することが前提であり、又、分離した部材とシムとはネジ付きロッドにより取付けされるため、長さ調整作業が繁雑になる問題がある。
【0009】
この発明は、絞り加工を行う際、金型の共用を可能にするとともに、製品長の長さ調整を簡単に行うことができ、コスト低減を図ることができる製品長が異なるプレス品のプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、上型と下型とにより、絞り加工を行う金型装置において、前記上型及び下型は、それぞれ、本体と、前記本体に接続可能なロング製品形成用の第1可動型と、前記第1可動型よりも前記本体の所定方向において短く形成され、前記本体に接続可能なショート製品形成用の第2可動型を備え、ロング製品成形時に上型の第1可動型を上型の本体に接続移動させるとともに、ショート製品成形時に上型の第1可動型を上型の本体から待避させる第1駆動手段と、ロング製品成形時に上型の第2可動型を上型の本体から待避させるとともに、ショート製品成形時に上型の第2可動型を、上型の第1可動型の代わりに上型の本体に接続移動させる第2駆動手段とを備え、ロング製品成形時に下型の第1可動型を下型の本体に接続移動させるとともに、ショート製品成形時に下型の第1可動型を下型の本体から待避させる第3駆動手段と、ロング製品成形時に下型の第2可動型を下型の本体から待避させるとともに、ショート製品成形時に下型の第2可動型を、下型の第1可動型の代わりに下型の本体に接続移動させる第4駆動手段とを備えることを特徴とするプレス装置を要旨としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記上型の本体及び下型の本体の4方周辺には、少なくとも互いに対向する2つの方向において、シワ押さえを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2において、前記シワ押さえが、前記上型の本体及び下型の本体の4方周辺全体に設けられていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3において、上型の前記第1可動型及び第2可動型、下型の前記第1可動型及び第2可動型にシワ押さえが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項2乃至請求項4のうちいずれか1項において、上型並びに下型における前記シワ押さえのシワ押さえ面のいずれか一方には、ロング製品及びショート製品にクリンチ形状を形成するための凹部が、他方には凸部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項において、前記下型の本体がポンチであり、前記上型の本体がダイであることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項において、ロング製品成形時に、上型の前記第2可動型及び下型の前記第2可動型が待避した位置は、上型の第1可動型及び下型の第1可動型内に、上型の前記第2可動型及び下型の前記第2可動型がそれぞれ収納された位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、絞り加工を行う際、金型の共用ができるとともに、製品長の長さ調整を簡単に行うことができ、コスト低減を図ることができる効果を奏する。
請求項2の発明によれば、上型の本体及び下型の本体の4方周辺に、少なくとも互いに対向する2つの方向において、シワ押さえを有することにより、厚みの薄いプレス品をシワ押さえで、プレス品の少なくとも対向する2つの方向において、シワ押さえすることにより、絞り成形を行うことができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、上型の本体及び下型の本体の4方周辺全体において、厚みの薄いプレス品をシワ押さえすることにより、絞り成形を行うことができる。
請求項4の発明によれば、上型の第1可動型及び第2可動型、下型の第1可動型、及び第2可動型にシワ押さえが設けられていることにより、厚みの薄いプレス品をシワ押さえすることにより、絞り成形を行うことができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、上型並びに下型におけるシワ押さえのシワ押さえ面に、クリンチ形状を形成するための凹部、凸部により、プレス品の周辺にクリンチ形状、すなわち、ビードを形成してフランジしわの発生を防止することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、下型の本体がポンチであり、上型の本体をダイとすることにより、請求項1乃至請求項6の効果を実現することができる。
請求項7の発明によれば、ロング製品成形時の上型の第2可動型及び下型の第2可動型の待避位置が上型の第1可動型及び下型の第1可動型内に収納された位置であることにより、プレス装置の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、ショート製品製造時の下型の説明図、(b)はロング製品製造時の下型の説明図。
【図2】(a−1)は、ショート製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(a−2)はショート製品製造時のプレス装置の短手方向断面図、(b−1)はショート製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(b−2)はショート製品製造時のプレス装置の短手方向断面図。
【図3】(a−1)は、ショート製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(a−2)はショート製品製造時のプレス装置の短手方向断面図、(b−1)はショート製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(b−2)はショート製品製造時のプレス装置の短手方向断面図。
【図4】(a−1)は、ショート製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(a−2)はショート製品製造時のプレス装置の短手方向断面図、(b−1)はショート製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(b−2)はショート製品製造時のプレス装置の短手方向断面図。
【図5】(a−1)は、ロング製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(a−2)はロング製品製造時のプレス装置の短手方向断面図、(b−1)はロング製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(b−2)はロング製品製造時のプレス装置の短手方向断面図。
【図6】(a−1)は、ロング製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(a−2)はロング製品製造時のプレス装置の短手方向断面図、(b−1)はロング製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(b−2)はロング製品製造時のプレス装置の短手方向断面図。
【図7】(a−1)は、ロング製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(a−2)はロング製品製造時のプレス装置の短手方向断面図、(b−1)はロング製品製造時のプレス装置の長手方向断面図、(b−2)はロング製品製造時のプレス装置の短手方向断面図。
【図8】(a)は、ショート製品の説明図、(b)はロング製品の説明図、(c)は従来のショート製品製造用のポンチP1の説明図、(d)は従来のロング製品製造用のポンチP2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化したプレス装置の一実施形態を、図1〜図7を参照して説明する。図2(a−1)に示すように、プレス装置10は、下型20に対して上型60が対向配置されている。
【0021】
(下型20)
図1、(a)、(b)、及び図2(a−1)に示すように、下型20を構成するポンチ本体22は、下型の略中央部を占めるように配置され、図示しないボルスタ上に固定されている。ポンチ本体22は下型の本体に相当する。ポンチ本体22の上面には、製品形成面22aが形成されている。製品形成面22aは、ブランク材Wを所定の形状に絞り成形するために設けられた面である。
【0022】
ポンチ本体22の三方向周囲を囲むように平面視コ字状に形成されたブランクホルダ24が隣接して配置されている。ブランクホルダ24の上面であるシワ押さえ面24aには前記コ字状の外形形状に沿って凹部としての凹溝25が形成されている。
【0023】
ブランクホルダ24は、ブランクホルダ24の下方に位置して連結されている図示しないクッションピンにより、図2(a−1)及び図5(a−1)に示す上限位置に保持されている。この上限位置は、図2(a−2)に示すように、ポンチ本体22の上面の最上部の位置よりも高い位置である。
【0024】
又、ブランクホルダ24が配置されていないポンチ本体22の残りの一方向側には下型の第1可動型としての分割ポンチ26が配置されている。
分割ポンチ26は、下型20を保持する固定部28に取付けられた第3駆動手段としての油圧シリンダ30により、図2(a−1)に示すポンチ本体22から離間した第1待避位置と、図1(b)及び図5(a−1)に示すポンチ本体22の一方向側面に当接して接続される第1接続位置との間を移動可能にされている。分割ポンチ26の水平方向の移動は、図示しないガイドにより、ガイドされてポンチ本体22に対して密接及び離間可能である。
【0025】
分割ポンチ26は、図1(b)に示す第1接続位置に位置する際には、ブランクホルダ24の離間した一対の端部21,23間に挟まれるように配置される。なお、第3駆動手段は油圧シリンダ30に限定されるものではなく、他のアクチュエータ、例えば空圧シリンダ等から構成してもよい。
【0026】
ポンチ本体22の長さ方向(図1(a)、図2(a−1)では左右方向)において、分割ポンチ26は、分割ポンチ26のポンチ本体22側の領域26aと、油圧シリンダ30側の領域26bとを有する。領域26bには、ブランク材にクリンチ形状を形成するための凹部としての凹溝27が図1(b)に示すように、端部21,23に向かうように延出して形成されている。領域26aの面は製品形成面であり、分割ポンチ26が図5(a−1)に示すように第1接続位置に位置するときは、ポンチ本体22の製品形成面に連続するように形成されている。
【0027】
分割ポンチ26は、この領域26aの分だけ、後述するシワ押さえ金型32よりも長くされている。又、領域26bの面は、シワ押さえ面となる。
図5(a−1)に示すように、分割ポンチ26の下部において、製品形成面である領域26aの180度反対側面は、領域26aの180度反対側面よりも高さが高くなるように段部26cが形成されている。
【0028】
又、図5(a−1)に示すように、第1接続位置に位置する分割ポンチ26の段部26cに収納されるようにシワ押さえ金型32が配置されている。以下、シワ押さえ金型32が段部26cに重なって配置される位置を第2待避位置という。第2待避位置は、下型の第2可動型の待避位置に相当する。
【0029】
シワ押さえ金型32の下面には、復帰付勢手段としてのリターンスプリング34が配置されている。リターンスプリング34により、常にシワ押さえ金型32は、下方に付勢されている。ポンチ本体22の下面には、図5(a−1)に示すように、第4駆動手段としての油圧シリンダ36が固定されている。油圧シリンダ36のロッドの先端には、作動部材としてのプッシャ38が固定されている。
【0030】
プッシャ38は、油圧シリンダ36のロッドの縮退により、図5〜図7の(a−1)、(b−1)に示す第1位置と、前記ロッドの伸張により、図2〜図4の(a−1)、(b−1)に示す第2位置の間を移動可能である。プッシャ38は、第1位置に位置する際、先端に形成された斜面38aにより、リターンスプリング34に抗してシワ押さえ金型32の下部に形成された斜面32aを押圧し、シワ押さえ金型32を第2待避位置に位置するように保持可能である。
【0031】
なお、プッシャ38は、図5(a−1)等において、紙面と直交する方向に延びているが、リターンスプリング34に対しては干渉しないように長さが制限されるとともに配置されている。又、図5(a−1)等では、油圧シリンダ36及びプッシャ38は1組のみ図示されているが、複数組、併設して、各組間にリターンスプリング34を配置するようにしてもよい。なお、第4駆動手段は油圧シリンダ36に限定されるものではなく、他のアクチュエータ、例えば空圧シリンダ等から構成してもよい。
【0032】
又、図2(a−1)に示す分割ポンチ26がポンチ本体22から離間して第1待避位置に位置することにより、ポンチ本体22と分割ポンチ26との間にスペースが形成可能となっている。この状態において、油圧シリンダ36のロッドが伸張してプッシャ38が、第2位置迄に移動すると、斜面38aにより、上方へ押圧されてシワ押さえ金型32は、リターンスプリング34に抗して、前記スペース内の第2接続位置に位置させるようにされている。この第2接続位置は、図2(a−1)に示すようにシワ押さえ金型32がポンチ本体22に対して接続される位置である。なお、シワ押さえ金型32の上下方向の移動は、図示しないガイドにより、ガイドされてポンチ本体22に対して密接及び離間可能である。
【0033】
シワ押さえ金型32の上面(シワ押さえ面)は、第2接続位置に位置する際には、ポンチ本体22の製品形成面22aと同じ高さに位置するように配置される。又、シワ押さえ金型32の上面には、図2(a−1)に示すように、分割ポンチ26の領域26bに形成された凹溝27と同様にブランク材にクリンチ形状を形成するための凹部としての凹溝39が形成されている。
【0034】
ポンチ本体22(下型の本体)、分割ポンチ26(下型の第1可動型)、及びシワ押さえ金型32(下型の第2可動型)により下型20が構成されている。
(上型)
次に上型60について説明する。
【0035】
図2(a−1)に示すように、上型60を構成するダイ本体62は、図示しない昇降装置に連結されたスライド68に取り付けられている。ダイ本体62は、上型の本体に相当する。このダイ本体62の下面には製品形成面62aが形成されている。製品形成面62aは、前記製品形成面22aとの協働により、絞り成形が可能である。
【0036】
また、ダイ本体62の最外周部において、前記下型のブランクホルダ24のシワ押さえ面24aと対向する領域には、平面視コ字状のシワ押さえ面62bが形成されている。シワ押さえ面62bには凹溝25と対向するとともに嵌合可能することにより、ブランク材にクリンチ形状を形成するための凸部としての突条63が形成されている。
【0037】
ダイ本体62において、分割ポンチ26と対向するように一側方には上型の第1可動型としての分割ダイ66が配置されている。分割ダイ66は、上型60を保持するスライド68に取付けられた第1駆動手段としての油圧シリンダ70により、図2(a−1)に示すダイ本体62から離間した第3待避位置と、図5(a−1)に示すダイ本体62の一方向側面に当接して接続される第3接続位置との間を移動可能にされている。分割ダイ66の水平方向の移動は、図示しないガイドにより、ガイドされてダイ本体62に対して密接及び離間可能である。
【0038】
なお、第1駆動手段は油圧シリンダ70に限定されるものではなく、他のアクチュエータ、例えば空圧シリンダ等から構成してもよい。
ダイ本体62の長さ方向において、分割ダイ66は、ダイ本体62側の領域66aと、油圧シリンダ70側の領域66bとを有する。領域66aの前記長さ方向の長さは、領域26aと同一長さである。領域66bの面には、前記凹溝27と協働してブランク材にクリンチ形状を形成するために凸部としての突条77が図2(a−1)に示すように、凹溝27の延出方向と同方向に延出して形成されている。領域66aの面は製品形成面であり、分割ダイ66が図5(a−1)に示すように第3接続位置に位置するときは、ダイ本体62の製品形成面62aに連続するように形成されている。又、領域66bの面は、シワ押さえ面となる。
【0039】
分割ダイ66は、この領域66aの分だけ、後述するシワ押さえ金型72よりも長くされている。すなわち、シワ押さえ金型72は、ダイ本体62の長さ方向において分割ダイ66よりも短くされている。
【0040】
図5(a−1)に示すように、分割ダイ66の上部において、製品形成面である領域66aの180度反対側面は、領域66aの180度反対側面よりも高さが低くなるように段部66cが形成されている。
【0041】
又、図5(a−1)に示すように、第3接続位置に位置する分割ダイ66の段部66cに位置して収納されるようにシワ押さえ金型72が配置されている。以下、シワ押さえ金型72が段部66cに重なって配置される位置を第4待避位置という。第4待避位置は、上型の第2可動型の待避位置に相当する。
【0042】
シワ押さえ金型72の上面には、復帰付勢手段としてのリターンスプリング74が配置されている。リターンスプリング74により、常にシワ押さえ金型72は、上方に付勢されている。ダイ本体62の上面には、図5(a−1)に示すように、第2駆動手段としての油圧シリンダ76が固定されている。油圧シリンダ76のロッドの先端には、作動部材としてのプッシャ78が固定されている。
【0043】
プッシャ78は、油圧シリンダ76のロッドの縮退により、図5〜図7の(a−1)、(b−1)に示す第3位置と、前記ロッドの伸張により、図2〜図4の(a−1)、(b−1)に示す第4位置の間を移動可能である。プッシャ78は、第3位置に位置する際、先端に形成された斜面78aにより、リターンスプリング74に抗してシワ押さえ金型72の上部に形成された斜面72aを押圧し、シワ押さえ金型72を第4待避位置に位置するように保持可能である。
【0044】
なお、プッシャ78は、図5(a−1)等において、紙面と直交する方向に延びているが、リターンスプリング74に対しては干渉しないように長さが制限されるとともに配置されている。又、図5(a−1)等では、油圧シリンダ76及びプッシャ78は1組のみ図示されているが、複数組、併設して、各組間にリターンスプリング74を配置するようにしてもよい。なお、第4駆動手段は油圧シリンダ76に限定されるものではなく、他のアクチュエータ、例えば空圧シリンダ等から構成してもよい。
【0045】
又、図2(a−1)に示す分割ダイ66がダイ本体62から離間して第3待避位置に位置することにより、ダイ本体62と分割ダイ66との間にスペースが形成可能となっている。この状態において、油圧シリンダ76のロッドが伸張してプッシャ78が、第4位置迄に移動すると、斜面78aにより、下方へ押圧されてシワ押さえ金型72は、リターンスプリング74に抗して、前記スペース内の第4接続位置に位置させるようにされている。この第4接続位置は、図2(a−1)に示すようにシワ押さえ金型72がダイ本体62に対して接続される位置である。なお、シワ押さえ金型72の上下方向の移動は、図示しないガイドにより、ガイドされてダイ本体62に対して密接及び離間可能である。
【0046】
シワ押さえ金型72の下面(シワ押さえ面)は、第4接続位置に位置する際には、ダイ本体62の製品形成面62aと同じ高さに位置するように配置される。又、シワ押さえ金型72の下面には、図2(a−1)に示すように、分割ダイ66の領域66bに形成された突条77と同様にブランク材にクリンチ形状を形成するための凸部としての突条79が形成されている。
【0047】
ダイ本体62(上型の本体)、分割ダイ66(上型の第1可動型)、及びシワ押さえ金型72(上型の第2可動型)により上型60が構成されている。
(実施形態の作用)
1.ショート製品の製造
上記のように構成されたプレス装置において、まず、ショート製品を絞り成形する場合を図2〜4を参照しながら説明する。
【0048】
図2(a−1)、(b−1)に示すように、ショート製品製造時には、分割ポンチ26及び分割ダイ66は、ポンチ本体22及びダイ本体62から離間した第1待避位置及び第3待避位置にそれぞれ位置する。又、シワ押さえ金型32,72は、ポンチ本体22及びダイ本体62に対して接続された第2接続位置及び第4接続位置にそれぞれ位置するとともに第2位置及び第4位置にそれぞれ位置するプッシャ38,78によりその位置に保持されている。又、図2(a−1)、(b−1)では、ダイ本体62、分割ダイ66、シワ押さえ金型72は、スライド68に対して直接又は間接的に支持されており、上死点の位置に位置している。
【0049】
この状態で、例えば車両のボデイ側板を成形するために、金属板からなる平板状のブランク材Wを、図2(a−1)、(a−2)に示す上限位置に位置するブランクホルダ24に載置する。
【0050】
次に、図2(b−1),(b−2)に示すように、スライド68を介してダイ本体62、分割ダイ66、及びシワ押さえ金型72を下降して、ブランク材Wにダイ本体62の突条63、及びシワ押さえ金型72の突条79に当接させる。
【0051】
続いて、図3(a−1)、(a−2)に示すように、さらにスライド68を介してダイ本体62、分割ダイ66、及びシワ押さえ金型72を下降して、ブランク材Wをダイ本体62とブランクホルダ24とにより拘束し、ダイ本体62とブランクホルダ24により、突条63と凹溝25間で、クリンチ形状、すなわち、ビードを形成する。このとき、図3(a−1)、(a−2)に示すように、シワ押さえ金型72とシワ押さえ金型32間では、ブランク材Wは拘束されていない。
【0052】
さらに、図3(b−1)、(b−2)〜図4(a−1)、(a−2)に示すように、さらにスライド68を介してダイ本体62、分割ダイ66、及びシワ押さえ金型72を、ブランクホルダ24の図示しないクッションピンに抗して下降して、ポンチ本体22に当接させるとともに、シワ押さえ金型72、32間で、シワ押さえ金型72にクリンチ形状、すなわち、ビードを形成する。この図3(b−1)、(b−2)〜図4(a−1)、(a−2)の下降タイミングにより、シワ押さえ金型72とシワ押さえ金型32間にビード形成のためのブランク材Wの素材の流入コントロールができる。
【0053】
この後、図4(b−1)、(b−2)に示すように、下死点までスライド68を介してダイ本体62、分割ダイ66、及びシワ押さえ金型72を下降することにより、ポンチ本体22をダイ本体62の製品形成面62a内に嵌合してブランク材Wを絞り成形する。このようにして、ショート製品が成形される。
【0054】
2.ロング製品の製造
次に、プレス装置において、ロング製品を絞り成形する場合を図5〜7を参照しながら説明する。
【0055】
図5(a−1)、(b−1)に示すように、ロング製品製造時には、分割ポンチ26及び分割ダイ66は、ポンチ本体22及びダイ本体62に対して第1接続位置及び第3接続位置にそれぞれ位置する。又、シワ押さえ金型32,72は、ポンチ本体22及びダイ本体62から離間した第2待避位置及び第4待避位置にそれぞれ位置するとともに第1位置及び第3位置にそれぞれ位置するプッシャ38,78によりその位置に保持されている。又、図5(a−1)、(b−1)では、ダイ本体62、及び分割ダイ66は、スライド68に対して直接又は間接的に支持されており、上死点の位置に位置している。
【0056】
この状態で、例えば車両のボデイ側板を成形するために、金属板からなる平板状のブランク材Wを、図5(a−1)、(a−2)に示す上限位置に位置するブランクホルダ24に載置する。
【0057】
次に、図5(b−1),(b−2)に示すように、スライド68を介してダイ本体62、及び分割ダイ66を下降して、ブランク材Wにダイ本体62の突条63に当接させる。 続いて、図6(a−1)、(a−2)に示すように、さらにスライド68を介してダイ本体62、及び分割ダイ66を下降して、ブランク材Wをダイ本体62とブランクホルダ24とにより拘束し、ダイ本体62とブランクホルダ24により、突条63と凹溝25間で、クリンチ形状、すなわち、ビードを形成する。このとき、図6(a−1)、(a−2)に示すように、分割ダイ66と分割ポンチ26間では、ブランク材Wは拘束されていない。
【0058】
さらに、図6(b−1)、(b−2)〜図7(a−1)、(a−2)に示すように、さらにスライド68を介してダイ本体62、及び分割ダイ66を、ブランクホルダ24の図示しないクッションピンに抗して下降して、ポンチ本体22に当接させるとともに、分割ダイ66と分割ポンチ26間で、クリンチ形状、すなわち、ビードを形成する。この図6(b−1)、(b−2)〜図7(a−1)、(a−2)の下降タイミングにより、分割ダイ66と分割ポンチ26間にビード形成のためのブランク材Wの素材の流入コントロールができる。
【0059】
この後、図7(b−1)、(b−2)に示すように、下死点までスライド68を介してダイ本体62、及び分割ダイ66を下降することにより、ポンチ本体22をダイ本体62の製品形成面62a内に嵌合してブランク材Wを絞り成形する。このようにして、ロング製品が成形される。
【0060】
この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態のプレス装置の上型60及び下型20は、それぞれ、ダイ本体62、ポンチ本体22と、ダイ本体62、ポンチ本体22に接続可能なロング製品形成用の分割ダイ66,分割ポンチ26(第1可動型)と、分割ダイ66,分割ポンチ26よりもダイ本体62の長さ方向よりも短く形成されるとともにダイ本体62、ポンチ本体22にそれぞれ接続可能なショート製品形成用のシワ押さえ金型72、32(第2可動型)を備えている。また、プレス装置は、ロング製品成形時に、分割ダイ66をダイ本体62に接続移動させるとともに、ショート製品成形時に分割ダイ66をダイ本体62から待避させる油圧シリンダ70(第1駆動手段)を備える。又、プレス装置は、ロング製品成形時にシワ押さえ金型72をダイ本体62から待避させるとともに、ショート製品成形時にシワ押さえ金型72を、分割ダイ66の代わりにダイ本体62に接続移動させる油圧シリンダ76(第2駆動手段)を備える。
【0061】
さらに、本実施形態のプレス装置は、ロング製品成形時に分割ポンチ26をポンチ本体22に接続移動させるとともに、ショート製品成形時に分割ポンチ26をポンチ本体22から待避させる油圧シリンダ30(第3駆動手段)を備える。又、プレス装置は、ロング製品成形時にシワ押さえ金型32をポンチ本体22から待避させるとともに、ショート製品成形時にシワ押さえ金型32を、分割ポンチ26の代わりにポンチ本体22に接続移動させる油圧シリンダ36(第4駆動手段)を備える。このため、ロング製品成形時及びショート製品成形時において、ポンチ本体22,ダイ本体62の共用化ができる。又、製品長の長さ調整は、第1〜第4駆動手段である各油圧シリンダを作動することにより、簡単に行うことができる。この結果、プレス装置のコスト低減を図ることができる。
【0062】
(2) 本実施形態のプレス装置は、ダイ本体62の3方向側の周縁にシワ押さえ面62b、及び残りの1方向側には、シワ押さえ金型72、又は、分割ダイ66の領域66b(シワ押さえ面)を配置した。又、ポンチ本体22の3方向周辺にシワ押さえ面24aを有するブランクホルダ24、及び残りの1方向側には、シワ押さえ金型32,又は分割ポンチ26の領域26bの面(シワ押さえ面)を配置した。
【0063】
この結果、ダイ本体62、ポンチ本体22の4方周辺全体において、厚みの薄いプレス品(すなわち、ブランク材)をシワ押さえすることにより、絞り成形を行うことができる。
【0064】
(3) 本実施形態のプレス装置は、上型60の分割ダイ66の領域66bがシワ押さえ面を有し、又、シワ押さえ金型72の下面がシワ押さえ面となっている。又、下型20の分割ポンチ26の領域26bがシワ押さえ面を有し、又、シワ押さえ金型32の上面がシワ押さえ面となっている。
【0065】
この結果、厚みの薄いプレス品(すなわち、ブランク材)をシワ押さえすることにより、絞り成形を行うことができる。
(4) 本実施形態のブレス装置は、ダイ本体62のシワ押さえ面62b、シワ押さえ金型72の下面(シワ押さえ面)、分割ダイ66の領域66bの面(シワ押さえ)には、突条63,79,77(凸部)が形成されている。
【0066】
又、ブランクホルダ24のシワ押さえ面24a、シワ押さえ金型32の上面(シワ押さえ面)、分割ポンチ26の領域26bの面(シワ押さえ面)は、凹溝25,39,27(凹部)が形成されている。
【0067】
この結果、絞り成形時に、プレス品の周辺にクリンチ形状、すなわち、ビードを形成してフランジしわの発生を防止することができる。
(5) 本実施形態のブレス装置は、ロング製品成形時に、上型60のシワ押さえ金型72及び下型20のシワ押さえ金型32が待避した位置は、上型60の分割ダイ66及び下型20の分割ポンチ26内に収納された位置としている。
【0068】
この結果、本実施形態によれば、ロング製品成形時に上型60のシワ押さえ金型72及び下型20のシワ押さえ金型32が、それぞれ分割ダイ66、分割ポンチ26内に収納されることにより、プレス装置の大型化を抑制できる。
【0069】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態のプレス装置10では、シワ押さえを有するようにしたが、プレス品の成形面が形成される凹部の深さが非常に浅いスタンピング成形する場合は、シワ押さえの機能を発揮する金型、或いは部位を省略するようにしてもよい。
【0070】
・ 前記実施形態では、シワ押さえは、ポンチ本体22、ダイ本体62の四方方向の周囲全体に配置した。これに代えて、ブランク材の厚み、及び本体の大きさ、並びにブランク材に形成される凹部の深さに応じて、互いに対向する2方向のみに設けても良く、或いは、3方向にのみシワ押さえを設けるようにしてもよい。
【0071】
・ 前記実施形態のプレス装置10は、下側のポンチ本体22は、前記ボルスタに固定されているため、成形は、上型を構成するダイ本体62の方が下降して(下向きの矢印で示す)行なうようにしているが、これに限定するものではない。プレス装置は、下側のポンチ本体22側を上昇させるように構成しても良く、ポンチ本体22とダイ本体62とが相対的に移動するものであれば良い。
【0072】
・ 前記実施形態のブレス装置では、ダイ本体62のシワ押さえ面62b、シワ押さえ金型72の下面(シワ押さえ面)、分割ダイ66の領域66bの面(シワ押さえ)には、突条63,79,77(凸部)を形成した。又、ブランクホルダ24のシワ押さえ面24a、シワ押さえ金型32の上面(シワ押さえ面)、分割ポンチ26の領域26bの面(シワ押さえ面)は、凹溝25,39,27(凹部)を形成した。
【0073】
この構成に代えて、ダイ本体62のシワ押さえ面62b、シワ押さえ金型72の下面(シワ押さえ面)、分割ダイ66の領域66bの面(シワ押さえ)には、凹溝を形成してもよい。合わせて、又、ブランクホルダ24のシワ押さえ面24a、シワ押さえ金型32の上面(シワ押さえ面)、分割ポンチ26の領域26bの面(シワ押さえ面)に前記凹溝と嵌合可能な突条を形成してもよい。
【0074】
・ 前記プレス装置を提灯プレス装置に具体化することも可能である。
・ 前記実施形態では、シワ押さえ金型72、32(第2可動型)は、分割ダイ66,分割ポンチ26よりもダイ本体62の長さ方向よりも短く形成したが、短くする方向はダイ本体62の長さ方向に限定するものではなく、例えば、長さ方向とは直交する方向において、シワ押さえ金型72、32(第2可動型)を短く形成するようにしてもよく、その方向は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0075】
10…プレス装置、20…下型、22…ポンチ本体、
24…ブランクホルダ、24a…シワ押さえ面、
25…凹溝、26…分割ポンチ、26a,26b,26c…領域、
27…凹溝、28…固定部、30…油圧シリンダ(第3駆動手段)、
32…シワ押さえ金型、32a…斜面、
34…リターンスプリング、36…油圧シリンダ(第4駆動手段)、
38…プッシャ、38a…斜面、
60…上型、62…ダイ本体
62a…製品形成面、62b…シワ押さえ面、
63…突条、66…分割ダイ、66a,66b,66c…領域、
68…スライド、70…油圧シリンダ(第1駆動手段)、
72…シワ押さえ金型、74…リターンスプリング、
76…油圧シリンダ(第2駆動手段)、
78…プッシャ、78a…斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とにより、絞り加工を行う金型装置において、前記上型及び下型は、それぞれ、本体と、前記本体に接続可能なロング製品形成用の第1可動型と、前記第1可動型よりも前記本体の所定方向において短く形成され、前記本体に接続可能なショート製品形成用の第2可動型を備え、
ロング製品成形時に上型の第1可動型を上型の本体に接続移動させるとともに、ショート製品成形時に上型の第1可動型を上型の本体から待避させる第1駆動手段と、ロング製品成形時に上型の第2可動型を上型の本体から待避させるとともに、ショート製品成形時に上型の第2可動型を、上型の第1可動型の代わりに上型の本体に接続移動させる第2駆動手段とを備え、
ロング製品成形時に下型の第1可動型を下型の本体に接続移動させるとともに、ショート製品成形時に下型の第1可動型を下型の本体から待避させる第3駆動手段と、ロング製品成形時に下型の第2可動型を下型の本体から待避させるとともに、ショート製品成形時に下型の第2可動型を、下型の第1可動型の代わりに下型の本体に接続移動させる第4駆動手段とを備えることを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記上型の本体及び下型の本体の4方周辺には、少なくとも互いに対向する2つの方向において、シワ押さえを有することを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記シワ押さえが、前記上型の本体及び下型の本体の4方周辺全体に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
上型の前記第1可動型及び第2可動型、下型の前記第1可動型及び第2可動型にシワ押さえが設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のプレス装置。
【請求項5】
上型並びに下型における前記シワ押さえのシワ押さえ面のいずれか一方には、ロング製品及びショート製品にクリンチ形状を形成するための凹部が、他方には凸部が形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記下型の本体がポンチであり、前記上型の本体がダイであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項7】
ロング製品成形時に、上型の前記第2可動型及び下型の前記第2可動型が待避した位置は、上型の第1可動型及び下型の第1可動型内に、上型の前記第2可動型及び下型の前記第2可動型がそれぞれ収納された位置であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載のプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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