説明

製本装置及びこれを備えた画像形成システム

【課題】連続して処理経路に給送するシート束に、製本綴じ処理、トリミング断裁処理を施す際に一連の処理時間の高速化を可能にする。
【解決手段】シートを束状に集積する集積トレイ手段41と、集積トレイ手段からシート束を塗布位置E、製本綴じ位置F、断裁位置Gの順に送る製本経路33と、塗布位置のシート束に接着剤を塗布する塗布手段Eと、製本綴じ位置のシート束を綴じ合わせる綴じ手段61、62と、断裁位置のシート束の周縁をトリミングカットする断裁手段65と、束搬送経路に配置されシート束を順次下流側に移送する束搬送手段47と、束搬送手段及び断裁手段を制御する制御手段75を備える。そして製本綴じ位置から断裁位置に至る搬送経路に複数の冷却ステージを設け、制御手段に製本綴じ位置で綴じ合わされたシート束を上流側に位置する第1冷却ステージか下流側に位置する第2冷却ステージで冷却するか設定する冷却条件設定手段78を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部揃え集積したシート束の背部に接着剤を塗布してくるみ製本或いは天糊製本し、そのシート束の周縁を断裁揃えするシート束断裁装置に係わり、シート束に塗布した接着剤の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種のシート束断裁装置は束状に部揃えされたシート束の背部端面に接着剤を塗布し、この状態で綴じ固めるか或いは表紙シートに綴じ合わせる製本装置の仕上げ装置として広く知られ、最近ではプリンタ、印刷機などの画像形成装置の端末装置として、画像形成されたシートをページ順に部揃えし、このシート束の背部端面に接着剤(例えば熱溶融性糊)を塗布して表紙シートと綴じ合わせ、その後にシート束の周縁を断裁する製本システムが提案されるに至っている。
【0003】
従来このような製本装置としては、処理経路に接着剤の塗布位置と、表紙製本綴じ位置と、断裁位置を順次下流側に配置し、この経路を移動するシート束に接着剤を塗布処理、表紙綴じ合わせ、トリミング断裁の各処理を実行する装置が例えば特許文献1に知られている。
【0004】
このような処理装置では、製本綴じ位置から断裁位置に移送する際にシート束の接着糊を冷却固化する必要がある。そして断裁に支障がない程度に冷却固化されたシート束の周縁をトリミングカットして端面揃えしている。従来この接着糊の冷却は、特許文献1の装置のように製本綴じ位置に金属などの冷却板(突当板)を設け、この冷却板にシート束の接着面を突当てた状態で所定時間待機させ、その後に下流側の断裁位置でトリミングカットしている。
【0005】
このような構成ではシート束を待機させる冷却時間を最大サイズ用紙で許容最大厚さの製本処理に合わせて設定する必要があり、同時に製本綴じ位置の上流側の処理経路には後続シートを搬入することなく、待機させている。従って一連の製本を連続して処理する場合には先行するシート束が製本綴じ位置で冷却されるまでは後続するシート束を製本綴じ位置の上流側に待機させるか、或いは上流側の画像形成を中断させている。
【0006】
そこで特許文献2にはシート束に接着剤を塗布して表紙シートと綴じ合わせる第1ステージと、このシート束に穿孔処理を施す第2ステージとの間にコンベア状の循環搬送路を設け、シート束がこの循環搬送路を循環する間に接着剤が乾燥するように構成したシステムが提案されている。そして循環搬送路の長さを接着剤の乾燥時間に合わせて長短調整することが提案されている。また、特許文献3にも同様に製本処理の過程でシート束をベルトコンベア状の搬送路で処理時間を調整するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−305822号公報
【特許文献2】特開平07−257809号公報
【特許文献3】特開平11−099768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように束状に集積したシート束を接着剤で綴じ合わせて製本処理し、このシート束の周縁をトリミングカットして仕上げる装置は既に知られている。
【0009】
この場合に、接着剤をその後の断裁処理に適した程度に冷却固化する必要があり、従来は前掲特許文献1のように製本綴じ位置の上流側の処理(例えば画像形成、部揃え集積、接着剤の塗布など)を中断して、製本綴じ位置でシート束の接着剤が冷却固化するのを待っている。また、前掲特許文献2のように製本綴じ位置から断裁位置に移送するシート束の移動時間を接着剤の乾燥時間に合わせて調整することも提案されている。
【0010】
このように背綴じする接着剤には、その特性に応じた冷却時間(乾燥時間)が必要であり、製本綴じ位置から断裁位置に送るシート束は、この間で所定の冷却時間を経た後に段位処理することが必要となる。この場合に従来は製本綴じ位置から断裁位置に至る経路(コンベア搬送の長さ)を長短調整することが提案されているに過ぎない。このコンベアベルトで冷却時間を調整するため装置は大型となり設置スペースを要する問題がある。
【0011】
そこで本発明者は、製本綴じ位置と断裁位置との間に第1第2の冷却ステージを複数設け、断裁位置における断裁処理に要する時間に応じてこの第1第2の冷却ステージにおける冷却時間を長短調整するとの着想に至った。これによって製本綴じ位置から断裁位置に至るシート束は下流側に位置する断裁処理状況に応じて、上流側の第1ステージで冷却するか下流側の第2ステージで冷却するか時間調整が可能となり一連の製本処理を高速化することが出来る。
【0012】
本発明は、連続して処理経路に給送するシート束に、製本綴じ処理、トリミング断裁処理を施す際に一連の処理時間の高速化を可能にする製本装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を達成するため、シート束を接着剤で綴じ合わせる製本綴じ位置からシート束の周縁をトリミングカットする断裁位置に至る束搬送経路に複数の冷却ステージを設け、束搬送手段と断裁手段を制御する制御手段に、製本綴じされたシート束を上流側に位置する第1冷却ステージで冷却するか、下流側に位置する第2冷却ステージで冷却するかと、その冷却時間を設定する冷却条件設定手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
この場合、上記冷却条件設定手段にシート束の周縁をトリミングするカット辺を設定する断裁仕上げ設定手段を設け、この設定手段で設定されたカット辺の個所及び/又は辺数に応じて第1冷却ステージにおける冷却時間と第2冷却ステージにおける冷却時間を設定する。例えばカット辺数が多いときには上流側に位置する第1ステージの冷却時間を多く(長く)設定し、下流側に位置する第2ステージの冷却時間を少なく(短く)設定する。
【0015】
これによって連続処理動作時に下流側の断裁位置でトリミング断裁が多辺数(3辺など)で長時間処理されるときには後続するシート束を第1ステージで長時間冷却させ、断裁位置のトリミング断裁が少辺数(1辺など)で短時間処理されているときには後続するシート束を第2ステージで長時間冷却させることによって連続処理の高速化が可能となる。
【0016】
その構成を詳述すると、順次給送されるシートを束状に集積する集積トレイ手段(41)と、集積トレイ手段からシート束を塗布位置(E)、製本綴じ位置(F)、断裁位置(G)の順に移送する束搬送経路(製本経路33)と、塗布位置のシート束に接着剤を塗布する塗布手段(E)と、製本綴じ位置のシート束を綴じ合わせる綴じ手段(61、62)と、断裁位置のシート束の周縁をトリミングカットする断裁手段(65)と、束搬送経路に配置されシート束を順次下流側に移送する束搬送手段(47)と、束搬送手段及び断裁手段を制御する制御手段(75)とを備える。そして製本綴じ位置から断裁位置に至る搬送経路には、複数の冷却ステージが設けられ、制御手段は、製本綴じ位置で綴じ合わされたシート束を上流側に位置する第1冷却ステージか下流側に位置する第2冷却ステージで冷却するかを設定する冷却条件設定手段(78)を設ける。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、製本綴じ位置から断裁位置に至る束搬送経路に複数の冷却ステージを設け、製本綴じされたシート束を上流側に位置する第1冷却ステージで冷却するか、下流側に位置する第2冷却ステージで冷却するかの設定と、この第1第2ステージにおける冷却時間を設定する冷却条件設定手段を設けたものであるから以下の効果を奏する。
【0018】
製本綴じされたシート束をトリミングカットする際に、接着剤の冷却を下流側に位置する断裁位置で先行シートの多辺(例えば天部地部小口部の3方向)を断裁処理しているときには、第1冷却ステージで長時間冷却し、逆に断裁位置で先行シートの少辺(例えば小口部の1方向)断裁処理しているときには第1冷却ステージで長時間冷却することによって冷却ステージの上流側における後続シートの処理の自由度を増大させることが出来、何時連の連続した製本処理をより短時間で効率的に処理することが出来る。
【0019】
更に本発明は、下流側に位置する第2冷却ステージを、例えば断裁刃の近傍に配置するなどシート束の断裁経路内に配置することが可能であり、このように構成することによって装置の小型コンパクト化を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の製本装置を備えた画像形成システムの全体構成の説明図。
【図2】図1のシステムに於ける製本装置の全体構成の説明図。
【図3】図2の装置に於ける製本処理部及び断裁処理部を示す要部説明図。
【図4】図2の装置に於ける第1冷却ステージと第2冷却ステージの構成を示す説明図。
【図5】図2の装置に於ける制御構成の説明図。
【図6】図5の制御構成に於ける製本綴じ動作のフローチャート。
【図7】図5の制御構成に於ける冷却動作のフローチャート。
【図8】図5の制御構成に於ける接着剤の冷却に係わるデータテーブルの概要説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1に示す画像形成システムは、シートに順次印刷を施す画像形成装置Aと、この画像形成装置Aの下流側に付設された製本装置Bと、この製本装置Bの下流に配置された後処理装置Cとから構成されている。そして画像形成装置Aで画像形成したシートを製本装置Bで製本処理し、これに組み込んだ断裁装置で断裁仕上げする。また製本処理しないシートについてはこの製本装置Bを通過して後処理装置Cでシートに後処理を施すように構成されている。
【0022】
[画像形成装置の構成]
まず画像形成装置Aは複写機、プリンタ、印刷機など種々の構造のものが採用可能であるが静電印刷装置を図1に示す。この画像形成装置Aはケーシング1内に給紙部2と、印字部3と、画像形成制御部4とが内蔵されている。給紙部2にはシートサイズに応じた複数のカセット5が準備され、画像形成制御部4から指示されたサイズのシートが給紙経路6に繰り出される。この給紙経路6にはレジストローラ7が設けられ、シートを先端揃えした後所定のタイミングで下流側の印字部3に給送する。
【0023】
印字部3には静電ドラム10が設けられ、この静電ドラム10の周囲には印字ヘッド9、現像器11、転写チャージャ12などが配置されている。そして印字ヘッド9は例えばレーザ発光器などで構成され、静電ドラム10上に静電潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着し、転写チャージャ12でシートに印刷する。この印刷シートは定着器13で定着され排紙経路17に搬出される。排紙経路17には上記ケーシング1に形成した排紙口14と排紙ローラ15が配置されている。尚図示16は循環経路であり、排紙経路17からの印刷シートをスイッチバック経路で表裏反転した後再びレジストローラ7に送り、印刷シートの裏面に画像形成する。このように片面若しくは両面に画像形成された印刷シートは排紙口14から排紙ローラ15で搬出される。
【0024】
尚図示20はスキャナユニットであり、上記印字ヘッド9で印刷する原稿画像を光学的に読み取る。その構造は一般的に知られているように原稿シートを載置セットするプラテン23と、このプラテン23に沿って原稿画像をスキャンするキャリッジ21と、このキャリッジ21からの光学像を光電変換する光学読取手段(例えばCCDディバイス)22とから構成されている。また図示のものは原稿シートを自動的にプラテンに給送する原稿送り装置25がプラテン23上に装備してある。そして上述の構成の画像形成装置Aは画像形成制御部4で各種画像形成の条件が設定され、同時にこの画像形成制御部4で製本装置B及び後処理装置Cの制御を司るようになっている。
【0025】
[製本装置の構成]
次に、画像形成装置Aに付設された製本装置Bについて説明する。この製本装置Bはケーシング30内に印刷シートを束状に集積して部揃えする集積部40と、この集積部40からのシート束に接着糊を塗布する接着剤塗布手段55と、接着剤を塗布されたシート束に表紙シートを綴じ合わせる表紙綴じ手段(シート断裁装置に於ける綴じ手段)60とから構成されている。
【0026】
[搬送経路の構成]
各シートの搬送経路について説明すると、上記ケーシング30内には画像形成装置Aの排紙口14に連なる搬入口29を有する搬入経路31が設けられ、この搬入経路31から中紙搬送経路32と表紙搬送経路34が経路切換フラッパ36を介して連結されている。そして中紙搬送経路32には集積部40を介して製本経路(束搬送経路;以下同様)33が連接され、表紙搬送経路34には後処理装置Cの後処理経路38が連設されている。製本経路33は略々鉛直方向に装置を縦断する方向に、表紙搬送経路34は略々水平方向に装置を横断する方向に配置されている。
【0027】
上記製本経路33と表紙搬送経路34とは互いに交差(直交)し、その交差部に後述する表紙綴じ手段60が配置されるようになっている。以上のように構成された搬入経路31は前記画像形成装置Aの排紙口14に連なり、画像形成装置Aから印刷シートを受入れる。この場合画像形成装置Aからはコンテンツ情報を印刷された印刷シート(中綴じシート)と表紙カバーとして使用するタイトルなどを印刷された印刷シート(以下表紙シートと云う)とが搬出される。このように搬入経路31は中紙搬送経路32と表紙搬送経路34とに分岐され経路切換フラッパ36を介して各印刷シートをそれぞれの経路に振り分け搬送することとなる。
【0028】
一方、上記搬入経路31にはインサータ装置26が連結してあり、画像形成装置Aで印刷処理しない表紙シートを給紙トレイ26aから1枚ずつ分離して搬入経路31に供給するように構成してある。このインサータ装置26は1つ若しくは複数段の給紙トレイ26aを備え、このトレイ先端には積載されたシートを1枚ずつ分離して給送する給紙手段と、この給紙手段の下流側に給紙経路27が設けられ、この給紙経路27は経路切換片28を介して搬入経路31に連結している。
【0029】
また上記搬入経路31には搬送ローラ31aが、中紙搬送経路32には搬送ローラ32aが、製本経路33にはグリップ搬送手段(シート束搬送手段;以下同様)47と後述する束姿勢偏向手段64と排紙ローラ(排紙手段)66が配置されている。また表紙搬送経路34には搬送ローラ34aが、後処理経路38には搬送ローラ38aがそれぞれ配置され、それぞれ駆動モータに連結されている。またこれらの経路には図2に示す位置にそれぞれシートセンサSe1〜Se6が配置され、シートの先端及び/又は後端を検出する。
【0030】
[集積部の構成]
前記中紙搬送経路32の排紙口32xに配置された集積トレイ(以下「トレイ」という)41は排紙口32xからのシートを束状に積載収納する。図2に示すようにトレイ41は略々水平姿勢に配置されたトレイ部材で構成され、その上方には正逆転ローラ42aと搬入ガイド42bが設けられている。そして排紙口32xからの印刷シートを搬入ガイド42bでトレイ41上に案内し、正逆転ローラ42aで収納する。
【0031】
この正逆転ローラ42aは正回転で印刷シートをトレイ41の先端側に移送し、逆回転でトレイ後端(図1右端)に配置された後端突き当て部材43にシート後端を突き当て規制する。またトレイ41には図示しないシートサイド整合手段が設けられトレイ上に収納した印刷シートの両側縁を基準位置に幅寄せ整合する。このような構成で中紙搬送経路32からの印刷シートはトレイ41上に順次積み上げられ束状に部揃えされる。
【0032】
[シート束搬送手段の構成]
前記製本経路33にはシート束搬送手段が配置され、このシート束搬送手段は、グリップ搬送手段47と、折ロール63と排紙ローラ66とから構成されている。そしてこれらの搬送手段でトレイ41からシート束を図2に示す「接着剤塗布位置E」「製本綴じ位置F」「断裁位置G」の順に搬送し、収納スタッカ67に収納する。
【0033】
上記グリップ搬送手段47は一対のニップ部材で構成されトレイ41上に集積されたシート束を把持すると共に、この把持した状態でシート束を90度旋回してシート束の姿勢を偏向するように旋回自在のユニットフレーム(不図示)に装備されている。そしてトレイ41に集積したシート束を水平姿勢から鉛直姿勢に偏向し、このシート束を略々鉛直方向に配置された製本経路33に沿って接着剤塗布位置Eに搬送セットする。このため、トレイ41は集積位置(図2実線)から引き渡し位置(図2破線)に移動し、この引き渡し位置で準備されたグリップ搬送手段47にシート束を引き渡すようになっている。
【0034】
上記折ロール63は後述するように製本綴じ位置Fからシート束を下流側の断裁位置Gに搬送するのと同時に背折りしたシート束を折り合わせるように一対のローラ対で構成されている。上記排紙ローラ66はシート束を下流側の収納スタッカ67に搬出する一対のローラで構成されている。尚この折ロール63と断裁位置Gとの間には束姿勢偏向手段64が備えられ、この束姿勢偏向手段64もシート束搬送手段を構成しているが詳細は後述する。
【0035】
[束厚さ検出手段の構成]
上記トレイ41又はグリップ搬送手段47には図示しないがシート束の厚さを検出する束厚さ検出手段Thが設けてある。これはトレイ41上に集積されたシート束の厚さを検出するためであり、次のいずれかの構成で備えられる。
【0036】
第1の方法は前記中紙搬送経路32の排紙口32xに配置されたシートセンサ(排紙センサ)Se3で搬出したシート数をカウントし、平均的な紙厚さから束厚さを演算する。例えば後述する制御CPU75にカウンタを設け画像形成装置Aからの排紙指示信号とジョブ終了信号の間に排紙センサSe3の排紙信号を計数し、この計数値に予め設定された紙厚さを乗算する。このようにシート排紙枚数からシート束厚さを演算すると構成が容易であるがこのときの束厚さは概略となる特徴がある。
【0037】
第2の方法は前記トレイ41に最上シートと当接するレベルセンサを設け、このレベルセンサの位置を検出することによって束厚さを検出することが出来る。例えばトレイ上に最上シートと接するレバー部材を積載方向に移動自在に配置し、このレバー部材の位置を例えばスライダックセンサによって検出する。
【0038】
第3の方法は前記グリップ搬送手段47を固定グリッパと可動グリッパで構成し、可動グリッパが紙面と当接する位置をスライダックセンサで位置検出する。
【0039】
このような方法で検出したシート束の束厚さは後続する制御に使用する。例えば後述する接着剤塗布手段55でシート束に接着剤を塗布する際に束厚さに応じて塗布量を調整する。また後述する第1冷却ステージFsと第2冷却ステージGsで塗布した接着剤を冷却固化する総冷却時間を設定する情報として使用する。その詳細は後述する。
【0040】
[接着剤塗布手段の構成]
前記製本経路33の接着剤塗布位置Eには接着剤塗布手段55が配置されている。この接着剤塗布手段55は図2に示すように熱溶融性の接着剤を収容する糊容器56と、塗布ロール57と、ロール回転モータMRとで構成されている。糊容器56には接着剤の残量を検出する糊センサ56Sが配置されている。図示の糊センサ56Sは接着剤の温度センサを兼用し、糊容器56内の液化した接着剤の温度を検出するのと同時に接着剤に浸された部位の温度差によって接着剤の残量を検出する。
【0041】
また、糊容器56には電熱ヒータなどの加熱手段(不図示)が埋設してある。そしてこの糊センサ56Sと加熱手段は後述する制御CPU75に結線され、糊容器内の接着剤を所定の溶融温度に温度調整する。また上記塗布ロール57は耐熱性の多孔質材で構成され、糊を含侵してロール周囲に糊の層が盛り上がるように構成されている。そして糊容器56はシート束に沿ってホームポジションから所定ストロークで往復動し、その往復動の過程で糊容器56内の塗布ロール57でシート束の端縁に接着剤を塗布する。
【0042】
[表紙綴じ手段の構成]
上記製本経路33の製本綴じ位置Fには表紙綴じ手段60が配置されている。この表紙綴じ手段60は図3に示すように背当てプレート61と背折りプレート62(62a、62b)と折ロール63で構成される。また、この製本綴じ位置Fには前述の表紙搬送経路34が配置され、画像形成装置A又はインサータ装置26から表紙シートを給送する。
【0043】
[背当てプレートの構成]
上記背当てプレート61は表紙シートをバックアップする板状部材で構成され、表紙搬送経路34から送られた表紙シートと製本経路33から送られた中紙シート(束)を逆T字状に接合する際に表紙シートをバックアップする。更にこの背当てプレート61は冊子状に綴じ合わせたシート束の背綴じ部を冷却する機能を備えている。
【0044】
この背当てプレート61は金属などの熱伝導率に優れた材料で構成され、シート束の背綴じ部(接着部)を冷却して接着剤を固化させる。図示の背当てプレート61には金属プレートに図4に示すように冷却素子(ペルチェ素子)61v、冷却ファン61wなどの強制冷却手段(冷媒手段)が設けてある。このような強制冷却手段は、使用する接着剤の性状(特に固化温度)、使用する装置の環境温度に応じて装備する。
【0045】
この背当てプレート61は製本経路33に進退自在に配置され、製本されたシート束を下流側の断裁位置Gに移送する。このため背当てプレート61は作動モータ61Mに連結されている。図示61bはモータの駆動軸に連結されたピニオンであり、61aは背当てプレート61に一体形成されたラック歯車である。従って背当てプレート61は作動モータ61Mの回転によって製本経路33内部の作動位置と経路外部の待機位置との間で移動可能となる。
【0046】
上記背折りプレート62は背当てプレート61の上流側に配置され背当てプレート61に支持された表紙シートを背折りする。このため背折りプレート62は製本経路33を挟んで左右に一対(62aと62b)配置され、互いに接近・離反可能に構成されている。この左右の背折りプレート62a、62bにはそれぞれラック歯車62rと伝動ピニオン62pで作動モータ62Mに連結されている。
【0047】
従って左右の作動モータ62Mを同一量づつ回転すると背折りプレート62a、62bの加圧面が表紙シートの背綴じ部を折曲げ成形して背表紙を形成する。図3に示す34は表紙搬送経路であり、34aはこの経路中に配置された搬送ローラである。またこの表紙搬送経路34を形成する上部ガイド34gは搬送ローラ34aと共に上下揺動して製本経路33を開放するように構成されている。
【0048】
上述の背当てプレート61と背折りプレート62によって表紙搬送経路34に給送セットされた表紙シートは背当てプレート61にバックアップ支持され、グリップ搬送手段47で製本経路33から送られた中紙シート束がその上に逆T字状に突き当てられる。この接合の後、背折りプレート62を離間位置(図3の状態から)接合する方向に接近させる。すると中紙シート束を挟んで表紙シートが折り合わされ背表紙が形成される。そして背当てプレート61の下流側には折ロール63が配置されている。この折ロール63は互いに圧接したローラ対で構成され、図示しないがローラの一方はシート束の厚さに応じて搬送方向と直交する方向に幅寄せ移動するようになっている。
【0049】
本発明は上述の製本綴じ位置Fと後述する断裁位置Gとの間に第1冷却ステージFs(図示のものは製本綴じ位置)と、後述する第2冷却ステージGs(図示のものは断裁位置)を複数配置したことを特徴としている。その制御構成は後述する。
【0050】
[束姿勢偏向手段と断裁手段の構成]
上記折ロール63の下流側にはシート束の天地方向を偏向する束姿勢偏向手段64と、シート束の周縁を断裁する断裁手段65が配置してある。順次その構成を説明する。上記束姿勢偏向手段64は製本綴じ位置Fから表装されたシート束を所定方向(姿勢)に偏向して下流側の断裁位置Gに給送する。
【0051】
つまり、製本綴じ位置Fから送られたシート束を天部、地部、小口部(3方向トリミングのとき)の順に、束姿勢の偏向と断裁を繰り返す。また、1方向トリミングのときには、背綴じ部を下側に送られたシート束を180度旋回して小口部を断裁位置Gに給送セットする。また、2方向トリミングのときにも同様にシート束を旋回して断裁位置Gに給送し、その断裁後に再びシート束を旋回して断裁位置Gに給送セットする。
【0052】
このため束姿勢偏向手段64は左右一対の回転テーブル64a、64bを備えている。この回転テーブル64a、64bはユニットフレーム64xに回転可能に取付けられ、それぞれ旋回モータMt1、Mt2に連結されている。また回転テーブル64a、64bの一方はシート束厚さ方向に位置移動可能に取付けられ、図示Mgはその可動側回転テーブル64bを幅寄せ移動するグリップモータである。
【0053】
このように構成されたユニットフレーム64xは製本経路33に沿って上下動可能に装置フレームに支持されている。そして昇降モータMSと昇降ベルト53でシート束を断裁位置Gに給送セットし、このときトリミングカット量が設定される。図示Se4は折ロール63を通過したシート束の後端を検出するシートセンサである。
【0054】
従って製本経路33内に導かれたシート束は、左右一対の回転テーブル64a、64bでグリップ把持され旋回モータMt1、Mt2によってシート束の姿勢方向を偏向する。例えば背部を下側に搬入されたシート束を180度旋回して小口部を下側に下流側の排紙ローラ66に送る。またシート束を順次90度ずつ回転して下流側の断裁位置Gに天部・地部・小口部をそれぞれ下側に偏向させシート束の周縁3方向を断裁するトリミングカットが可能となる。なお、上記可動側の回転テーブル64bにはグリップセンサ(図示せず)が設けられ、左右の回転テーブル64a、64b間にシート束が確実にグリップされたのを検知し、この検知後回転テーブル64a、64bを旋回駆動するように構成されている。
【0055】
[断裁手段の構成]
上記束姿勢偏向手段64の下流側には断裁手段65が配置されている。この断裁手段65は図3に示すようにシート束の断裁縁をバックアップ部材58に押圧する断裁縁プレス手段65bと、断裁刃ユニット65aで構成されている。この断裁縁プレス手段65bはシート束を押圧する加圧部材65yと、この加圧部材65yに加圧力を付与する付勢手段(不図示)で構成されている。上記断裁刃ユニット65aは平刃状の断裁刃65xと、この断裁刃65xを往復動するカッタモータ(駆動手段)Mcとから構成されている。このような構成の断裁手段65により、冊子状に製本処理されたシート束の背部を除く周縁を所定量裁断して切り揃える。
【0056】
本発明は上述の断裁位置Gに第2冷却ステージGsを設定し、この位置で断裁刃65xによって製本綴じされたシート束の背綴じ部(接着糊)を冷却することを特徴としている。このため断裁刃65xとこれを搭載するホルダ部材65vをそれぞれ金属材料で熱伝導性に富んだ材料で構成している。
【0057】
前述の第1冷却ステージFsとこの第2冷却ステージGsの構成を図4に示す。製本綴じ位置Fから断裁位置Gに至る束搬送経路(図示の製本経路33)には、上流側に第1冷却ステージFsが、下流側に第2冷却ステージGsが、複数配置されている。図示の形態では第1冷却ステージFsを製本綴じ位置Fに、第2冷却ステージGsを断裁位置Gに設定してある。これは各ステージに配置する冷却手段を製本処理手段と兼用するためである。つまり第1冷却ステージFsに設けられた背当てプレート61でシート束の背綴じ部を強制冷却し、第2冷却ステージGsに設けられた断裁刃65xでシート束の背綴じ部を強制冷却している。従って第1、第2冷却ステージFs、Gsは製本綴じ位置F及び断裁位置Gと異なる位置に配置しても良い。
【0058】
また、上記第1冷却ステージFsと第2冷却ステージGsとの間隔L0は、最大サイズシートの搬送方向長さLsより長く設定してある。つまり先端が断裁位置Gに到達したシート束の後端が製本綴じ位置Fの下流側に位置する寸法に経路長を設定している。これによりシート束は製本綴じ位置Fの下流側で姿勢偏向のための旋回が可能となり、製本綴じ位置Fでは後続するシート束の綴じ動作を並行して実行することが可能となる。
【0059】
このような構成の基で本発明は断裁位置Gにおける先行シートの断裁処理の動作時間に応じて製本綴じしたシート束を第2冷却ステージGsで冷却し、製本綴じ位置Fで後続するシート束の綴じ動作を並行して実行するように制御することを特徴としている。このためシート束搬送手段47と断裁手段65を制御する制御手段(後述の制御CPU75)に「断裁仕上げ設定手段」と「冷却条件設定手段」を設ける。その構成は後述する。
【0060】
上記断裁位置Gの下流側には排紙ローラ(排紙手段)66と収納スタッカ67が配置されている。この収納スタッカ67は図3に示すようにシート束を倒立姿勢で収納するようになっている。そしてこの収納スタッカ67は図1に示すようにケーシング30に引出状に配置され、装置フロント側(図1紙面手前側)に引出可能に構成されている。装置フロント側に引き出した状態で図2上方から使用者が取り出すようになっている。尚図示67Sfは満杯検出センサであり、収納スタッカ67に収納されるシート束の満杯状態を検出して、オペレータにその除去を警告する。
【0061】
[屑収納ボックスの構成]
また断裁位置Gの下流側には収納スタッカ67にシート束を搬出する排紙ローラ(排紙手段)66が設けられ、この排紙手段66は一対のローラ66a、66bで構成されている。図示のローラ66bはシート幅方向に移動自在に構成してありシート束の厚さに応じてニップ位置を変更するように構成されている。
【0062】
また前記断裁位置Gの下方には収納スタッカ67と並列に屑収納ボックス68が設けられ、断裁刃65xで切断した紙片を収納する。このため、断裁位置Gの直下にはスイーパ手段69が設けられ、このスイーパ手段69は図示しない駆動モータによって図2左右方向に揺動し、シート束を断裁する際は断裁位置Gの直下に位置して切断片を屑収納ボックス68に案内し、断裁後は断裁位置Gから退避してシート束を収納スタッカ67に収容可能に退避するようになっている。また、上記屑収納ボックス68には内部に収納された切断紙片の収納量を検出するフル検出センサ(満杯検出センサ)68Sfが配置してある。
【0063】
[後処理装置の構成]
上述の製本装置Bには後処理装置Cが配置され、この後処理装置Cは前記表紙搬送経路34に連なる後処理経路38が設けられ、この後処理経路38にステープルユニット、パンチユニット、スタンプユニットなどの後処理機器が配置され、画像形成装置Aからの印刷シートを、表紙搬送経路34を介して受け取り、この印刷シートにステープル処理、パンチ処理、捺印処理を施し排紙トレイ37に搬出する。また、このような後処理を施すことのない画像形成装置Aからのシートを排紙トレイ37に収納するようになっている。
【0064】
[制御手段の構成]
次に上述の装置に於ける制御手段の構成を図5に基づいて説明する。図1に示すような画像形成装置Aと製本装置Bとを連結したシステムでは、例えば画像形成装置Aに備えられた制御CPU70にコントロールパネル71と、モード設定手段72を設ける。そして製本装置Bの制御部には制御CPU75を設け、この制御CPU75は製本処理実行プログラムをROM76から呼び出して製本経路33における各処理を実行する。
【0065】
上記制御CPU70(図1に於ける画像形成制御手段4)はコントロールパネル71から画像形成の条件が設定され、この設定条件に従って画像形成制御部73は画像形成装置Aにおける前記印字部3及び給紙部2を制御する。これと同時に制御CPU70にはモード設定手段72が構成され、コントロールパネル71から製本装置Bにおける後処理動作の制御モードが設定される。この制御モードは、「製本モード」「製本断裁モード」「プリントアウトモード」「後処理モード」などを選択するように構成されている。
【0066】
例えば「製本モード」は画像形成したシートを束状に部揃えして表紙綴じ(表紙なしの天糊製本も可能)し、この製本状態でトリミング仕上げすることなく収納スタッカ67に収納する。「製本断裁モード」は製本綴じ位置Fにおいて接着剤を塗布した中紙シート束を表紙シートでくるみ製本するか又は天糊製本し、その周縁をトリミング仕上げして収納スタッカ67に収納する。「プリントアウトモード」は搬入経路31に送られたシートを製本処理することなく表紙搬送経路34を介して後処理装置Cの排紙トレイ37に収納する。「後処理モード」は搬入経路31に送られたシートを製本処理することなく表紙搬送経路34を経由して後処理装置Cに案内して、この装置でステープル処理、パンチ処理、捺印処理を施し排紙トレイ37に搬出する。
【0067】
[断裁仕上げ設定手段]
上記「製本断裁モード」は表紙綴じしたシート束を次のいずれかの方法でトリミング仕上げする。このトリミング仕上げ条件は(1)製本綴じしたシート束の天部、地部、小口部を断裁する3方向断裁(以下「3方向トリミング」という)か、又は(2)小口部を断裁する1方向断裁(以下「小口部トリミング」という)か、或いは天部・地部/天部・小口部/地部・小口部などの2方向断裁(以下「2方向トリミング」という)のいずれかである。
【0068】
このトリミング仕上げ条件を設定する「断裁仕上げ設定手段」は図示のように画像形成装置Aのコントロールパネル71から入力するモード設定手段72で構成するか、或いは製本装置Bにコントロールパネル(不図示)を設け、このパネルから入力するか、或いは製本装置Bに接続したコンピュータなどのコントローラから設定する。このように本発明の「断裁仕上げ設定手段」は製本装置Bの上流側に接続された外部装置に設ける場合と、製本装置B自体に配置する場合がある。以下断裁仕上げ設定手段72を画像形成装置Aに設ける場合についてその詳細を説明する。
【0069】
上記製本装置Bに配置されている制御CPU75には、画像形成装置Aの制御CPU70から後処理モード指示信号、ジョブ終了信号、シートサイズ情報、処理部数情報が伝達される。この後処理モード指示信号には、「製本断裁モード」設定された場合にはトリミング仕上げの情報と、トリミングカット量情報がモードのコマンド信号と共に伝達される。また、制御CPU75には前記搬入経路31、製本経路33、表紙搬送経路34に配置されたシートセンサの検出信号が伝達されるように結線されている。このシートセンサは図2に図示するシートセンサSe1乃至Se6で、それぞれ図示位置に配置されている。
【0070】
制御CPU75は「集積制御部75a」「接着剤塗布制御部75b」「表紙綴じ制御部75c」「断裁制御部75d」「スタック制御部75e」と「接着剤温度制御部75f」で構成されている。そして断裁制御部75dには「冷却条件設定手段78」が設けられている。
【0071】
[冷却条件設定手段の構成]
上記冷却条件設定手段78は、(1)製本綴じ位置Fで製本処理されたシート束の総冷却時間TAを設定し、(2)この総冷却時間TAを前記第1冷却ステージFsで冷却するFtと第2冷却ステージGsで冷却する冷却時間Gtに割り付けるように構成される。
【0072】
まず、総冷却時間TAは使用する接着剤の性状に応じてその冷却固化に必要な冷却時間が設計値として予めRAM77に記憶されている。この場合に図示のものは総冷却時間TAを塗布位置Eにおける接着剤の塗布量に応じて設定するように構成されている。このため前述したシート束搬送手段47には束厚さ検出手段Thが設けられ、接着剤の塗布量はこのシート束厚さに比例する。そこでシート束厚さに応じて総冷却時間TAが予め設定されRAM77に記憶されている。
【0073】
そこで冷却条件設定手段78は束厚さ検出手段Thの検出値に基づいて、これに対応する総冷却時間TAをRAM77から読出す。例えばRAM77には束厚さ0〜10mmのときTA=30sec、束厚さ11〜20mmのときTA=40sec、束厚さ21〜30mmのときTA=50secのようにデータテーブルを準備する。これによって総冷却時間TAが設定される(図8参照)。
【0074】
次に冷却条件設定手段78は、総冷却時間TAに基づいて第1冷却ステージFsの冷却時間Ftと第2冷却ステージGの冷却時間Gtを設定する。この冷却時間の割り付けは断裁位置Gにおける先行シート束のトリミングカット辺の個所及び/又は辺数に応じて設定する。
【0075】
例えば先行シート束が前述の断裁仕上げ設定手段72で3方向トリミングに設定されているときには、Ft=100%,Gt=0%に設定し、断裁仕上げ設定手段72で2方向トリミングに設定されているときにはFt=85%,Gt=25%に設定し、断裁仕上げ設定手段72で小口部トリミングに設定されているときにはFt=60%,Gt=40%に設定する。
【0076】
このように冷却条件設定手段78は、カット辺数が多いときには第1冷却ステージFsの冷却時間Ftを多く設定し、第2冷却ステージGsの冷却時間Gtを少なく設定する。これは先行するシートが断裁位置Gで断裁処理中には第1冷却ステージFsの冷却時間Ftを大きく設定して、その処理動作を妨害しない為である。
【0077】
更に冷却条件設定手段78は、小口部トリミングのときには総冷却時間TAを2方向及び3方向トリミングのときの総冷却時間より小さく設定している。例えば2方向及び3方向トリミングのときの総冷却時間TAが「30sec」のとき小口部トリミングのときには総冷却時間TAを「20sec」に設定している。これは小口部を断裁するときには背綴じ部をカットしないため冷却中の接着剤を切断することがないためである。
【0078】
[製本断裁動作の説明]
次に図6のフローチャートに従って上述の制御CPU75による製本処理動作を説明する。前記画像形成装置Aのモード設定手段72にコントロールパネル71から画像形成条件と後処理モードを設定する(St001)。この後処理モードは前述のように「製本モード」「製本断裁モード」などに設定する。
【0079】
そこで後処理モードとして「製本断裁モード」が選択された場合、画像形成装置Aは画像形成動作を実行し、画像形成したシートを排紙口14に搬出する(St002)。製本装置Bではこのシートを搬入経路31に受入れる。このとき制御CPU75は経路切換フラッパ36を図2の状態に位置させてシートを中紙搬送経路32に案内する。このシートは搬送ローラ32aで排紙口32xに送られ、トレイ41上に順次積載収納する(St003)。
【0080】
そこで画像形成装置Aからジョブ終了信号(St004)を受けると、制御CPU75は前記グリップ搬送手段47で集積トレイ41上のシート束を搬出し、その姿勢を90度偏向する。このとき制御手段75はシート束の厚さを束厚さ検出手段Thからの検知信号で検出する。この検出値はRAM77に記憶する。次に集積トレイ41上に部揃えされたシート束は水平姿勢から鉛直姿勢に偏向され製本経路33を下流側の接着剤塗布位置Eに移送される(St005)。
【0081】
このシート束の接着剤塗布位置Eへの給送セットと前後して制御CPU75は表紙シートを表紙搬送経路34から給送する。この表紙シートは画像形成装置Aから画像形成されて供給される場合と前記インサータ装置26から供給される場合がある。インサータ装置26から供給する場合には制御CPU75は給紙手段(図示せず)を作動して給紙トレイ26aからシートを1枚ずつ分離して給紙経路27に給送する。
【0082】
給紙経路27に送られたシートは搬送ローラ27aで搬入経路31に搬送される。このとき制御CPU75は経路切換片28を図1の状態に位置させ、表紙搬送経路34に案内する。この表紙搬送経路34にはシートの姿勢を矯正するレジ機構34bが備えられ、このレジ機構34bで整合されたシートはこの位置から所定量搬送されることによって製本綴じ位置Fに到達し静止セットされる(St006)。この表紙シートの給送セットに次いで制御CPU75は接着剤塗布手段55を駆動して接着剤塗布位置Eにセットされているシート束に接着剤を塗布する(St007)。塗布ロール57を備えた糊容器56はシート束の下端縁に沿って移動し、ロール表面に含浸した接着剤をシート束に塗布する。
【0083】
この接着剤塗布動作の終了後、制御CPU75はシート束を前記グリップ搬送手段47で下流側の製本綴じ位置Fに移送する。するとこの位置には表紙シートがセットされているため表紙シートは背当プレート61にバックアップされこれとシート束が逆T字状に接合される。次いでシート束はこの状態で前記背折プレート62が表紙シートの背部をプレス成形して表装する(St008)。
【0084】
次に制御CPU75はトリミング断裁するか否か判断する。これと同時に制御CPU75は総冷却時間TAを設定する。この総冷却時間TAの設定は例えばシート束厚さThに応じて、例えば束厚さTh=0〜10mmのときには30secに、Th=11〜20mmのときには40secに、Th=21〜30mmのときには50secに、Th>30のときにはTh=60secに設定する。この総冷却時間TAは接着剤の性状に応じて予め設定RAM77に記憶されているデータテーブルを読み出して綴じ合わせるシート束の束厚さに応じて設定する(St009)。
【0085】
次に制御CPU75は先行シートの断裁処理条件から第1第2冷却ステージにおける冷却時間Ft、Gtを割り当てる。これは先に説明したように先行シートが3方向トリミングのときにはFt=100%、Gt=0%に、先行シートが2方向トリミングのときにはFt=65%、Gt=35%に設定する。また先行シートが1方向トリミングのときにはFt=35%、Gt=65%に、先行シートがトリミングなしのときにはFt=0%、Gt=100%に設定する(St010)。
【0086】
この設定によって、第1冷却ステージにおける冷却時間Ftと第2冷却ステージにおける冷却時間Gtが設定される。そこで制御CPU75は、表紙綴じ動作の終了信号を前述の背折りプレート62a、62bのポジションセンサで検出する。そして制御CPU75は背折りプレート62a、62bが互いに離間した待機位置に復帰した動作完了信号から所定の冷却時間Ftの経過を待つ(St011)。この設定時間Ftが経過した後、制御CPU75は背当てプレート61を経路33から退避させ、これと同時に束搬送手段47のグリップを解除する。
【0087】
するとシート束は製本位置Fから下方に落下し折りロール手段63にニップされる。そこで制御CPU75は折りロール63を排紙方向に回転させシート束を下流側に送る(St012)。尚この場合に第1冷却ステージFにおける冷却時間Ftがゼロに設定されているときには制御CPU75は背折りプレートの動作完了信号で遅滞なく折りロール63にシート束を落下給送する。
【0088】
上記折りロール手段63の回転制御と同時に制御CPU75は断裁刃65xを切断位置Cp(図3の状態)に位置させる(St013)。するとシート束は断裁刃65x上に落下する。そこでこのシート束が断裁位置Gに到達したタイミング(図示しないシート先端検知センサからの信号)で制御CPU75はタイマを起動し、所定の冷却時間Gtの経過を待つ(St015)。この冷却時間Gtの経過と前後して制御CPU75はトリミングカットが設定されているか否か判断する(St016)。この設定は先に説明したモード設定手段72からの情報に基づいて判断する。次いで制御CPU75は、トリミングカットに設定されている場合には、束姿勢偏向手段64でシート束をニップ保持する(St017)。そして制御CPU75は束姿勢偏向手段64でシート束を所定方向に旋回させ、シートの天部、地部、小口部を断裁位置Gに臨ませる(St018)。
【0089】
次いで制御CPU75は前記昇降モータMSを回転駆動してシート束の下端部を所定量(断裁量)断裁位置からオーバランさせる。この断裁量は図示しないシート下端検出センサからの信号を基準に設定する。その後、断裁縁プレス手段65bでシート束を押圧保持保する(St019)。その後制御CPU75は断裁刃65cをカッタモータMcによって待機位置から断裁位置に移動する。これによってシート束は、その下端を所定量断裁される(St020)。
【0090】
次いで制御手段75はシート束を所定角度例えば180度前記回転テーブル手段64で旋回して地部を下端側に位置させ同様に所定量断裁する。その後、更にシート束を90度回転して小口部を下端に位置させ同様に断裁する。そして制御手段75はすべての断裁が終了(St021)すると回転を開始テーブル手段64でシート束の把持を解除する(St022)。するとシート束は排紙ローラ66に落下し、排紙ローラの駆動によって収納スタッカ67に収容される(St023、St024)。
【符号の説明】
【0091】
A 画像形成装置
B 製本装置
F 製本綴じ位置
G 断裁位置
31 搬入経路
32 中紙搬送経路
33 製本経路(束搬送経路)
34 表紙搬送経路
40 集積部
41 集積トレイ
47 グリップ搬送手段(シート束搬送手段)
55 接着剤塗布手段
60 表紙綴じ手段
61 背当てプレート
61v 冷却素子(ペルチェ素子)
61w 冷却ファン
62 背折りプレート
63 折ロール
64 束姿勢偏向手段
65 断裁手段
65x 断裁刃
66 排紙ローラ(排紙手段)
67 収納スタッカ
70 制御CPU(画像形成装置)
71 コントロールパネル
72 モード設定手段(断裁仕上げ設定手段)
73 画像形成制御部
75 制御CPU(製本装置)
78 冷却条件設定手段
Fs 第1冷却ステージ
Gs 第2冷却ステージ
TA 総冷却時間
Ft 冷却時間(第1冷却ステージ)
Gt 冷却時間(第2冷却ステージ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次給送されるシートを束状に集積する集積トレイ手段と、
前記集積トレイ手段からシート束を塗布位置、製本綴じ位置、断裁位置の順に移送する束搬送経路と、
前記塗布位置のシート束に接着剤を塗布する塗布手段と、
前記製本綴じ位置のシート束を綴じ合わせる綴じ手段と、
前記断裁位置のシート束の周縁をトリミングカットする断裁手段と、
前記束搬送経路に配置されシート束を順次下流側に移送する束搬送手段と、
前記束搬送手段及び前記断裁手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記製本綴じ位置から前記断裁位置に至る前記束搬送経路には、複数の冷却ステージが設けられ、
前記制御手段は、
前記製本綴じ位置で綴じ合わされたシート束を上流側に位置する第1冷却ステージか下流側に位置する第2冷却ステージで冷却するかを設定する冷却条件設定手段が設けられていることを特徴とする製本装置。
【請求項2】
前記冷却条件設定手段には、
シート束の周縁をトリミングするカット辺を設定する断裁仕上げ設定手段が設けられ、
この断裁仕上げ設定手段で設定されたカット辺の個所及び/又は辺数に応じて前記第1冷却ステージにおける冷却時間と前記第2冷却ステージにおける冷却時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の製本装置。
【請求項3】
前記断裁仕上げ設定手段は、更に前記断裁位置でシート束の周縁をトリミングカットするか否かを設定するように構成され、
前記制御手段は、前記断裁仕上げ設定手段でトリミングカットしない設定がなされたとき前記第1冷却ステージの冷却時間をゼロ又は前記第2冷却ステージの冷却時間より短く設定することを特徴とする請求項2に記載の製本装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記断裁仕上げ設定手段で設定されたトリミングのためのカット辺の数に応じて、前記第1及び第2冷却ステージにおける冷却時間を設定するように構成され、
この場合カット辺数が多いときには前記第1ステージの冷却時間を多く設定し、前記第2ステージの冷却時間を少なく設定することを特徴とする請求項2に記載の製本装置。
【請求項5】
前記冷却条件設定手段は、
前記断裁仕上げ設定手段でシート束の3辺を断裁する設定がなされたとき前記第2冷却ステージの冷却時間をゼロ又は前記第1冷却ステージの冷却時間より短く設定することを特徴とする請求項2に記載の製本装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記断裁仕上げ設定手段で設定されたトリミングが小口部の一辺のみであるときには、前記第1及び第2冷却ステージの合計冷却時間を、トリミングカットが天部又は地部のいずれかを含んでいるときの合計冷却時間より短く設定することを特徴とする請求項2に記載の製本装置。
【請求項7】
前記綴じ手段は、
前記製本綴じ位置に給送された表紙シートで前記塗布位置から送られたシート束をくるみ綴じする表紙綴じ手段で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の製本装置。
【請求項8】
画像形成装置と、この画像形成装置からのシートを束状に部揃えして製本処理する製本装置とを有する画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
シート上に画像形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段を制御する画像形成制御手段と、
前記画像形成手段で画像形成されたシートを搬出する排紙口と、
を備え、
前記製本装置は請求項1乃至7のいずれか1項に記載の構成を備えていることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264609(P2010−264609A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115891(P2009−115891)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】