説明

製紙助剤および製紙方法

【課題】製紙用添加剤が過剰に添加された抄紙条件、特に、カチオン基を有する製紙用添加剤が過剰添加された抄紙条件において、低濃度の使用で、紙力増強剤、サイズ剤を効率的にパルプ繊維に定着させ、優れた紙力強度、サイズ効果を発現させることができ、さらに歩留・濾水性を改善することができる製紙助剤およびこれを用いた製紙方法を提供すること。
【解決手段】製紙助剤は、製紙用添加剤が添加されたパルプ懸濁液に添加され、アニオン性基と疎水基とを有する水溶性重合体を含有する。この水溶性重合体は、アニオン基と疎水基の両方を有するものであれば特に限定なく使用することができ、合成物であっても、天然物(天然物の改変物を含む)であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙助剤およびこれを用いた製紙方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙(板紙を含む)の抄紙工程では、紙力増強剤、サイズ剤、歩留向上剤および濾水性向上剤等の様々な薬品(製紙用添加剤)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
各製紙用添加剤は、所定の目的を達成するために添加されており、例えば、紙力増強剤は、繊維間の結合を強め、紙の強度を増強することを目的として使用されている。また、サイズ剤は、紙に耐水性を与え、インクや水に対する浸透抵抗性を付与するために使用されている。さらに、歩留向上剤ないし濾水性向上剤は、抄紙機のワイヤー上での歩留や濾水性を改善すべく、使用されている。
【0004】
一方、近年、紙の抄紙工程では、機械的な力をかけて木材からパルプを作る機械パルプの不純物や古紙を原料とした脱墨パルプの不純物として、系内にアニオントラッシュと称されるアニオン性の不純物(機械パルプではリグニン、脱墨パルプではインク等を主成分とする)が増加している。特に、環境保全の面から、原料としての古紙の使用量が増加し、白水のクローズド化が進行しているため、系内のアニオントラッシュはさらに増加傾向にある。また、古紙の使用量増加や白水のクローズド化の進行は、繊維長が短い微細分を系内で増加させる要因となっている。
【0005】
このアニオントラッシュや微細分が増加すると、紙力増強剤、サイズ剤、歩留向上剤および濾水性向上剤等の製紙用添加剤と製紙原料であるパルプ繊維との反応が阻害され、製紙用添加剤のパルプ繊維への定着不良や、パルプ繊維の凝集不良が発生する。紙力増強剤やサイズ剤が定着不良を起こすと、水中での紙力増強剤やサイズ剤等の濃度が上昇し、発泡の原因となり、発泡による欠点や汚れの濃縮、さらには用具への汚れ付着による欠点や断紙を引き起こし、抄紙に多大な悪影響を及ぼす。また、歩留向上剤および濾水性向上剤の効果が劣ると、歩留の低下および抄速の低下による抄紙性の低下といった問題が生じる。
【0006】
また、以上のような製紙用添加剤の効果不良により、適正な紙力強度、サイズ度、歩留および濾水性が維持できないため、紙力増強剤、サイズ剤、歩留向上剤および濾水性向上剤等の製紙用添加剤が所定の規定量を超えてさらに添加されることになるが、製紙用添加剤の添加量を増加させるだけでは改善できないケースが頻発していた。特に、カチオン基を有する製紙用添加剤が過剰に添加され、パルプ繊維の表面がカチオンに帯電している場合は、さらにカチオン基を有する製紙用添加剤を添加しても、製紙用添加剤がパルプ繊維に定着しないため、紙力強度、サイズ効果、歩留および濾水性の向上を図ることは困難であった。
【特許文献1】特開2002−212896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、製紙用添加剤が過剰に添加された抄紙条件、特に、カチオン基を有する製紙用添加剤が過剰添加された抄紙条件において、低濃度の使用で、紙力増強剤、サイズ剤を効率的にパルプ繊維に定着させ、優れた紙力強度、サイズ効果を発現させることができ、さらに歩留・濾水性を改善することができる製紙助剤およびこれを用いた製紙方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 製紙用添加剤が添加されたパルプ懸濁液に添加される製紙助剤であって、アニオン性基と疎水基とを有する水溶性重合体を含有することを特徴とする製紙助剤。
【0010】
水溶性重合体は、アニオン基と疎水基の両方を有するものであれば特に限定なく使用することができ、合成物であっても、天然物(天然物の改変物を含む)であってもよい。合成された水溶性重合体としては、アニオン基を有する単量体と疎水基を有する単量体とを重合させた共重合体や、アニオン基及び疎水基を有する単量体同士を重合させた重合体等が挙げられる。天然物の改変物の水溶性重合体としては、リグニンの変性物等が挙げられる。水溶性重合体の分子量は特に限定されないが、好ましくは、数平均分子量1,000〜1,000,000が適当である。
【0011】
水溶性重合体のアニオン基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、疎水基としては、炭素数1から16のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等が挙げられる。
【0012】
水溶性重合体中におけるアニオン基と疎水基の分布構造は特に限定されず、アニオン基と疎水基とは重合体に不均一に分散していてもよいが、均一に分散していることが好ましい。特に、連続した疎水性単位(疎水基)を有する重合(重縮合を含む、以下同じ)体にアニオン性部位(アニオン基)がほぼ均一に分散するように導入された構造を有するものが好ましい。
【0013】
また、アニオン基の量は本発明に係る製紙助剤が添加されるパルプ懸濁液の電荷の中和に必要な量とすることが好ましい。一方、疎水基の量は水溶性重合体に疎水性を付与するのに十分な量とする。上記の水溶性重合体におけるアニオン基と疎水基の比率は特に限定されない。
【0014】
製紙助剤には、前記の水溶性重合体以外の成分が含まれてもよい。水溶性重合体以外に含まれる成分としては、安定剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0015】
本発明の製紙助剤に含まれる水溶性重合体の構造は疎水基とアニオン基とを有しているため、疎水基は、疎水性相互作用により製紙原料であるパルプ繊維に吸着する。そして、この状態でアニオン基がパルプ繊維の表面の電荷を中和する。したがって、本発明の製紙助剤は、低濃度でも効率的に紙力増強剤やサイズ剤等の製紙用添加剤をパルプ繊維に定着させ、優れた紙力強度やサイズ効果等を発揮させることができ、さらに、歩留・濾水性を改善することができる。
【0016】
(2) 前記水溶性重合体として、アニオン性単量体と疎水性単量体との共重合体、芳香族ビニル化合物スルホン酸の重合体、およびリグニンにアニオン基を導入した変性物から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の製紙助剤。
【0017】
アニオン性単量体としては、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPS)等が挙げられる。また、疎水性単量体としては、炭素数3から18のアルケン、スチレン、および炭素数1から12の置換基をもつスチレン誘導体等が挙げられる。本発明に係る水溶性重合体は、これらの単量体をアニオン重合させることにより得られる。アニオン性単量体と疎水性重合体との割合は特に限定されないが、アニオン性単量体:疎水性単量体を50:50の比率とすることが好ましい。アニオン性単量体と疎水性単量体の共重合の好ましいものとして、マレイン酸・プロペン共重合体、マレイン酸・2−メチルプロペン共重合体、マレイン酸・1−ブテン共重合体、マレイン酸・2−メチル−1ブテン共重合体等が挙げられる。
【0018】
芳香族ビニル化合物スルホン酸の重合体には、芳香族ビニル化合物スルホン酸の単独重合体、及び芳香族ビニル化合物スルホン酸と他の単量体との共重合体が含まれる。芳香族ビニル化合物スルホン酸の単独重合体としては、スチレンスルホン酸を単独重合させて得られたスチレンスルホン酸重合体などが挙げられる。
【0019】
芳香族ビニル化合物スルホン酸と共重合させる他の単量体としては、アルデヒド等が挙げられる。芳香族ビニル化合物スルホン酸とアルデヒドとの重縮合体としては、ナフタレンスルホン酸・ホルマリン重縮合体などが挙げられる。ナフタレンスルホン酸・ホルマリン重縮合体はナフタレンスルホン酸がメチレン基を介して結合した構造になっている。
【0020】
リグニンにアニオン基を導入した変性物としては、リグニンにスルホン化処理、または加水分解処理等を行うことによりスルホン基等のアニオン基を導入した変性物があげられる。このような変性物の好ましいものとして、リグニンスルホン酸があげられる。リグニンスルホン酸は、フェニルプロパン構造の単位が複雑に重縮合した無定形の高分子物質であるリグニンがスルホン化されて、スルホン基が導入された構造となっている。
【0021】
(3) 前記アニオン性単量体と疎水性単量体との共重合体がマレイン酸または下記一般式(A)で示されるアニオン性単量体と下記一般式(B)で示される疎水性単量体との共重合体であり、芳香族ビニル化合物スルホン酸の重合体がスチレンスルホン酸重縮合体またはナフタレンスルホン酸・ホンマリン重縮合体であり、前記リグニンにアニオン基を導入した変性物が、リグニンスルホン酸である(2)に記載の製紙助剤。
【化1】

一般式(A)
(但し、Rは-COOH、-SOH、-CHSOH、-CONHC(CHSOH、-CHOCHCH(OH)CHSOHのいずれかを示し、Rは-H、-CH、 -CHCOOHのいずれかを示す。)

【化2】

一般式(B)
(但し、Rは-H、-CHのいずれかを示し、Rは-CH、-C、-Cのいずれかを示す。)
【0022】
(4) 製紙原料が懸濁されたパルプ懸濁液に(1)から(3)のいずれかに記載の製紙助剤を添加して、前記製紙原料を抄紙する方法。
【0023】
本発明の製紙助剤は、製紙原料が懸濁されたパルプ懸濁液に対して0.0001重量%から5重量%で添加されることが好ましく、0.001重量%から1重量%で添加されることが好ましく、0.005重量%から0.1重量%がより好ましい。
【0024】
「製紙原料」とは、紙(板紙を含む)を製造するための原料であり、化学(クラフト)パルプ、機械パルプ、脱墨パルプ等のパルプ繊維を指す。パルプ懸濁液は、製紙原料とし
てパルプ繊維を水に懸濁させた液体で、パルプ懸濁液が白水で希釈される前の濃厚パルプ懸濁液及び、濃厚パルプ懸濁液が白水で希釈されて得られる抄紙用の希釈パルプ懸濁液を含む。濃厚パルプ懸濁液は、パルプ繊維を2〜20重量%程度含み、希釈パルプ懸濁液は、パルプ繊維を0.1〜2重量%程度含む。
【0025】
パルプ懸濁液には、通常、紙力増強、濾水性向上、または歩留向上剤等を目的として、種々の製紙用添加剤が添加される。本発明においては、パルプ懸濁液は、これら製紙用添加剤と本発明に係る製紙助剤とを共に含んだ状態で抄紙され、得られた水分を多く含んだ紙(湿紙)が乾燥されて紙(板紙を含む)が得られる。製紙助剤は、予め製紙用添加剤が添加されているパルプ懸濁液に添加されてもよく、製紙助剤を添加したパルプ懸濁液に製紙用添加剤を添加するようにしてもよい。従って、本発明の製紙助剤を添加する場所は任意に決定し得るが、濃厚パルプ懸濁液が白水を希釈される前に添加すると本発明の製紙助剤とパルプ繊維との反応性が良好であるため、濃厚パルプ懸濁液に添加するように、ミキシングチェスト、マシンチェス、種箱等に添加することが好ましい。
【0026】
(5) 前記パルプ懸濁液はカチオン基を含む製紙用添加剤を含むことを特徴とする(4)に記載の製紙方法。
【0027】
本発明に係るパルプ懸濁液には、製紙工程で循環利用される懸濁用水に由来する製紙用添加剤が含まれていてもよく、本発明の製紙助剤の添加前に製紙用添加剤が添加されていてもよい。本発明に係る製紙助剤は、パルプ懸濁液のカチオンを中和して製紙用添加剤の効果向上に寄与することから、特に、カチオン基を有する製紙用添加剤が過剰添加され、パルプ繊維の表面がカチオンに帯電しているカチオンリッチなパルプ懸濁液に好適に用いられる。本明細書において、カチオンリッチなパルプ懸濁液とは、循環利用される水にカチオン基を有する製紙用添加剤が含まれ、または製紙用助剤の添加に先立ちカチオン基を有する製紙用添加剤が含まれ、または製紙用助剤の添加に先立ちカチオン基を有する製紙用添加剤が添加されることにより、ゼータ電位が−20mV以上、好ましくは−10mV〜+20mV、さらに好ましくは−5mV〜+15mVとなっているパルプ懸濁液を指す。カチオン基を有する製紙用添加剤としては、カチオン基を含む紙力増強剤、歩留向上剤、サイズ剤等がある。カチオンを有する製紙用添加剤としては、硫酸バンド等がある。具体的にはカチオン基を含む紙力増強剤としてポリアクリルアミド主鎖にカチオン基を導入したカチオン重合体、及びポリアクリルアミド主鎖にカチオン基およびアニオン基を導入した両性重合体、カチオン化デンプン、両性デンプン等が挙げられる。
【0028】
(6) 前記パルプ懸濁液に製紙用添加剤をさらに添加することを特徴とする(4)または(5)に記載の製紙方法。
【0029】
パルプ懸濁液には製紙助剤の添加の前後に係らず、製紙用添加剤が添加されてよい。パルプ懸濁液に添加される製紙用添加剤としては、紙力増強剤、サイズ剤、歩留向上剤、濾水性向上剤、ピッチコントロール剤、染料、硫酸バンド、填料等が挙げられ、これらが1または2種以上添加されてもよい。また、製紙用添加剤は、カチオン性、アニオン性、両性のいずれを使用してもよい。
【0030】
サイズ剤としては、酸性抄紙工程で添加されるロジンエマルションサイズ剤及び合成サイズ剤、中性抄紙工程で添加される中性ロジンエマルションサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等が挙げられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の製紙用助剤によれば、低濃度の使用で効率的に紙力増強剤、サイズ剤をパルプ繊維に定着させ、優れた紙力強度、サイズ効果を発現させることができ、さらに、歩留・濾水性を改善することができる。
【0032】
本発明の製紙方法では、製紙用添加剤と製紙助剤とを併用することにより、低濃度の使用で効率的に紙力増強剤、サイズ剤等をパルプ繊維に定着させることができ、優れた紙力強度、サイズ効果等を発現させることができ、さらに、歩留・濾水性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、図面・表を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
製紙原料として広葉樹を原料とするクラフトパルプ(LBKP)とコートブローク(CB)を85:15で配合したパルプ繊維を水に溶解させた濃厚パルプ懸濁液を調整し、この濃厚パルプ懸濁液を白水で希釈してパルプ繊維濃度1重量%に調整した。この希釈パルプ懸濁液320mLをビーカーに採取し、ハンドミキサー羽を取り付けた攪拌機で、800rpmで攪拌しながら、カチオン化デンプン0.6重量%、及び硫酸バンド1.25重量%、紙力増強剤0.36重量%、表1の製紙助剤Aを0.005重量%、ロジンエマルションサイズ剤0.15重量%、填料5重量%、カチオン性歩留向上剤0.075重量%となるように順次添加した。各薬品の添加間隔は全て15秒とした。
【0035】
得られた希釈パルプ懸濁液を8Lの水道水を張ったシートマシンに投入した。そして、「JIS P 8209」に準じて抄紙して湿紙を得た。湿紙は3枚の濾紙に挟み、圧力490kPaで1回目は5分間、2回目は2分間プレスした。次いで、回転式ドラムドライヤを用いて115℃で2分間乾燥した。温度23℃、相対湿度50%RHの恒温恒湿室で24時間調湿した後、得られた紙サンプルを「JIS P 8113」に準じて引張り強度を測定した。また、製紙助剤Aの添加率を0.01重量%、0.02重量%として同じ試験を行い、同じく得られた紙サンプルの引張り強度を測定した。結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0036】
[実施例2〜4]
表1の製紙助剤Aの代わりに表3の製紙助剤B〜Dを用い、他は実施例1と同じ条件で抄紙し、得られた紙サンプルの引張り強度を測定した。結果を表2に示す。
【表3】

【0037】
[比較例1、2]
製紙助剤Aの代わりに、表4の製紙助剤E、Fを用い、他は実施例1と同じ条件で抄紙し、得られた紙サンプルの引張り強度を測定した。結果を表2に示す。
【表4】

【0038】
表2に示すように、本発明の製紙助剤(A〜D)を含有する紙サンプルは、比較例の製紙助剤(E、F)を含有する紙サンプルよりも引張り強度が向上した。つまり、本発明品(A〜D)は、比較例の製紙助剤(E、F)と比べて、紙力増強剤のパルプ繊維への定着を促進させた。
【0039】
[実施例5〜8、比較例3、4]
実施例1〜4、比較例1、2と同様に抄紙し、得られた紙サンプルのドロップサイズ度を測定した。ドロップサイズ度は、滴下法(JAPAN TAPPI No.33)で測定した。結果を表5に示す。
【表5】

【0040】
表5に示すように、本発明の製紙助剤(A〜D)を含有する紙サンプルは、比較例の製紙助剤(E、F)を含有する紙サンプルよりもドロップサイズ度が大幅に向上した。つまり、本発明の製紙助剤(A〜D)は、比較例の製紙助剤(E、F)と比べて、サイズ剤のパルプ繊維への定着を促進させた。
【0041】
[実施例9]
実施例1と同様に薬品を添加した希釈パルプ懸濁液を作成し、ダイナミックフィルトレーションシステム(ミューテック社製)を用いて歩留試験を行い、濾液側のSS濃度から、ワンパスリテンションを算出した。結果を表6に示す。
【表6】

【0042】
[実施例10〜12、比較例5、6]
製紙助剤Aの代わりに、表3の製紙助剤B〜D、表4の製紙助剤E、Fを希釈パルプ懸濁液に添加し、実施例9と同様にして歩留試験を行い、ワンパスリテンションを算出した。結果を表6に示す。
【0043】
表6に示すように、比較例の製紙助剤(E、F)の場合と比較して、本発明の製紙助剤(A〜D)を添加した場合は、ワンパスリテンションが大幅に上昇した。つまり、本発明の製紙助剤(A〜D)は、比較例の製紙助剤(E、F)と比べて、歩留向上剤のパルプ繊維への定着を促進させた。
【0044】
[実施例13]
実施例1と同様に紙サンプルを作成し、この紙サンプルのドロップサイズ度と引張り強度を測定した。また、実施例9と同様に薬品を添加した希釈パルプ懸濁液を作成し、ダイナミックフィルトレーションシステム(ミューテック社製)を用いて歩留試験を行い、濾液側のSS濃度から、ワンパスリテンションを算出した。なお、実施例13では、製紙助剤Aの添加率を0.01重量%とした以外は、全て実施例1または実施例9と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
【表7】

【0045】
[比較例7]
製紙助剤Aを無添加とした以外は実施例13と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
【0046】
[実施例14]
紙力増強剤を0.7%とした以外は実施例13と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
【0047】
[比較例8]
製紙助剤Aを無添加とした以外は実施例14と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
【0048】
[実施例15]
歩留向上剤を0.015重量%とした以外は実施例13と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
【0049】
[比較例9]
製紙助剤Aを無添加とした以外は実施例15と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
【0050】
表7に示すように、製紙助剤Aの紙力向上効果、サイズ向上効果および歩留向上効果は、紙力増強剤の添加率が多い条件において、有効であることが認識された。これは、紙力増強剤がパルプ繊維に定着されることによって、サイズ剤および歩留向上剤のパルプ繊維への定着が促進されたためと考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用添加剤が添加されたパルプ懸濁液に添加される製紙助剤であって、
アニオン性基と疎水基とを有する水溶性重合体を含有することを特徴とする製紙助剤。
【請求項2】
前記水溶性重合体として、アニオン性単量体と疎水性単量体との共重合体、芳香族ビニル化合物スルホン酸の重合体、およびリグニンにアニオン基を導入した変性物から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の製紙助剤。
【請求項3】
前記アニオン性単量体と疎水性単量体との共重合体がマレイン酸または下記一般式(A)で示されるアニオン性単量体と下記一般式(B)で示される疎水性単量体との共重合体であり、
芳香族ビニル化合物スルホン酸の重合体がスチレンスルホン酸重縮合体またはナフタレンスルホン酸・ホンマリン重縮合体であり、
前記リグニンにアニオン基を導入した変性物が、リグニンスルホン酸である請求項2に記載の製紙助剤。
【化1】

一般式(A)
(但し、Rは-COOH、-SOH、-CHSOH、-CONHC(CHSOH、-CHOCHCH(OH)CHSOHのいずれかを示し、Rは-H、-CH、 -CHCOOHのいずれかを示す。)

【化2】

一般式(B)
(但し、Rは-H、-CHのいずれかを示し、Rは-CH、-C、-Cのいずれかを示す。)
【請求項4】
製紙原料が懸濁されたパルプ懸濁液に請求項1から3のいずれかに記載の製紙助剤を添加して、前記製紙原料を抄紙する方法。
【請求項5】
前記パルプ懸濁液はカチオン基またはカチオンを含む製紙用添加剤を含むことを特徴とする請求項4に記載の製紙方法。
【請求項6】
前記パルプ懸濁液に製紙用添加剤をさらに添加することを特徴とする請求項4または5に記載の製紙方法。

【公開番号】特開2006−97197(P2006−97197A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286530(P2004−286530)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】