製紙用および工業用の布の縫合を製造する方法、ならびにその方法により製造した縫合
【課題】レーザー結合技術を利用して、布の縫合領域の改良を図る技術の提供。
【解決手段】この発明は、製紙機械布(PMC)やその他の工業および工学分野の布に適用する技術である。レーザーエネルギーを用いることにより、布の選択した位置を溶融あるいは結合し、改良を図る。改良した縫合領域は、強度、耐久性、開放性、適切な支持位置の数、および本質的に布本体と同じFSIなどの諸特性をもつことになる。この発明は、また、MD方向に測った縫合幅が今までの一般的な技術で形成した縫合の幅の一部であっても同じ強度をもつ、耐久性のある布にも関する。
【解決手段】この発明は、製紙機械布(PMC)やその他の工業および工学分野の布に適用する技術である。レーザーエネルギーを用いることにより、布の選択した位置を溶融あるいは結合し、改良を図る。改良した縫合領域は、強度、耐久性、開放性、適切な支持位置の数、および本質的に布本体と同じFSIなどの諸特性をもつことになる。この発明は、また、MD方向に測った縫合幅が今までの一般的な技術で形成した縫合の幅の一部であっても同じ強度をもつ、耐久性のある布にも関する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願については、2007年9月5日出願の米国仮特許出願第60/967,489号の優先権を主張し、それが明らかにした内容を参照によってここに組み入れる。
【技術分野】
【0002】
ここに開示する発明は、製紙機械布(「PMC」、Paper Machine Clothing)や他の工業および工学の分野の布について、レーザのエネルギーを用いることによって、選択した位置で結合あるいは溶融させる技術に関する。
【引用による組み入れ】
【0003】
ここで引用する特許、特許出願、文書および/または文献のすべてを参照によってここに組み入れ、しかもまた、この発明を実施する上で使用する。
【背景技術】
【0004】
この発明は、製紙機械の成形、プレスおよび乾燥の各部分で用いる布およびベルトを含む製紙技術に関し、そしてまた、工業用処理布およびベルト、TAD(through-air-drying、通し風乾)布、通常コルゲータベルトを伴う工学布およびベルトに関する。
【0005】
ここでいう布およびベルトには、また、他の物の製造にも用いられるものも含む。たとえば、紙および板紙のような湿式製品、TADによる生理用のティッシュやナプキン製品であり、さらに、コルゲート(波形)板紙の製造に用いるコルゲータベルト、湿式および乾式のパルプの製造に用いる工学布があり、スラッジフィルタやケミウオッシャを用いる製紙の処理、およびハイドロエンタングリング(hydroentangling、湿式処理)、溶融ブロー(meltblowing)、スパンボンド(spunbonding)、エアレイド(airlaid)あるいはニードルパンチングによる不織製品の製造に用いられる。そのような布およびベルトには、それに限定されるわけではないが、不織製品、ろ過布およびろ過織物の製造処理で用いるエンボス、運搬および支持用の布およびベルト、ならびに、カレンダー加工や皮革なめしのようなテキスタイル仕上げ処理に用いる布およびベルトを含む。
【0006】
そのようなベルトや布は、広範囲ないろいろな状況にさらされるので、それらに対する機能的な特性が考慮されるべきである。たとえば、製紙処理において、セルロースを含む繊維状のウェブは、製紙機械の成形部分を移動する成形布上に繊維状のスラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液を堆積させることによって形作られる。スラリーからは成形布を通して多量の水が排水され、成形布の表面にセルロースを含む繊維状のウェブを残すことになる。
【0007】
製紙機械布(たとえば、成形、プレスおよび乾燥の各布)のような布は、製紙機械上ですべてエンドレス(無端)の形態であり、コンベヤのような役目をすることを認識されたい。
【0008】
そのような布の構造物は、織りのような一般に行われているテキスタイル処理方法によって、合成繊維およびモノフィラメントから構成される。しばしば要求されることは、布構造を選択的に仕立てることによって、たとえば、布寿命、シート成形、運転操作性あるいは紙特性というような製紙業者にとって重要な性能特性に影響しあるいは高めるという要求である。
【0009】
紙やティッシュ製品の成形、またはティッシュ/ナプキンの製造に用いる布、あるいは「TAD」布のような布は、シーム(縫合)によって何度も結合される。この場合、布は糸(通常、モノフィラメント)による平織りが一般的である。各布縁には、縦方向(「MD」)糸の「フリンジ」がある。このフリンジは、布本体としての同じ基礎パターンの中の横方向(「CD」)糸と再び織られる。無端にするためのこの縫合処理は、いわゆる当業者に良く知られている。したがって、縫合領域は、MD糸の端を含む。縫合の強度は、MD糸の強度、使われたMD糸およびCD糸の数、およびCD糸周りに自らを物理的にある程度「ロック」するMD糸自体の織縮み(クリンプ)に依存する。しかし、布がたとえば製紙機械あるいはティッシュ/ナプキンの製造機械の運転によって張力を受けるとき、それらのMD糸の端は、文字通り互いにすべり抜けて引き出されてしまう。そして、その「端」自体は、布の表面の上にはみ出し、紙/ティッシュ製品に小さな穴を生じる原因となったり、あるいは、最終的にすべり抜けが大きいと、布の縫合が失敗に終わって布が引き離されてしまう。一般的に、MD方向に測定した縫合領域の広さは、今までの技術によれば、たとえば、3インチ半から20インチ(つまり、およそ10cmから50cm)あるいはそれ以上の大きさである。
【0010】
これを最小に抑えるために、縫合の糸に対して、通常、接着剤をスプレーしたり塗ったりする。しかし、残念ながら、これによって縫合領域の流体処理特性が変わってしまったり、接着剤が摩耗しすり切れてしまうこともある。
【0011】
縫合領域において糸を互いに部分的に溶融あるいは融合させるように熱を加えることが検討されたが、熱を使用することは、一般的に、縫合領域の流体処理特性が変化するという受け入れがたいことを生じる。というのは、すべての糸が影響を受け、縫合によって、たとえば布本体と異なる空気透過性を来すからである。
【0012】
今までの試みによる他の欠点は、MD方向で用いる糸の数、あるいは用いる糸の大きさのいずれかによって、たとえ接合用接着剤/接着剤を補助的に用いたとしても、今までの縫合方法によっては充分な縫合強度を得ることができない。
【0013】
製紙機械布および/または工業布の技術として、熱的エネルギーを利用することによって糸を一体に溶融し、たとえば縦糸(MD)と横糸(CD)との織り布における縫合を
形成することが知られている。
【0014】
縫合領域における布特性だけでなく糸特性をも維持することが重要である。PMCや他の工学布に用いる糸は、ポリエステルなどの方向性のポリマーから作られ、しかも、必要な形や大きさをもつ。熱的なエネルギーを加えた後で、糸の大きさ、形および特性を本質的に維持させておくことが必要である。しかし、熱はこれらの材料にいろいろな悪影響を及ぼす。たとえば、 熱は、 (a)熱可塑性材料のガラス転移点(それは、寸法の変化に影響する温度である)より高い熱での軟化、あるいは(b)溶融点よりも高い溶融による軟化を生じる。
【0015】
縫合の開放性については、縫合領域の糸に大きなひずみが生じないようにすることによって、維持されるべきである。そしてまた、糸の大きな引張強度、特にMD糸のそれは維持されるべきであり、結果として生じる縫合強度は受認されない。
【0016】
少なくとも互いに結合する隣接する糸および/または横切るCD糸と結合する部分には、いくらかの「溶融流れ」が必要であるが、糸に大きなひずみを生じさせるべきではない。そこで、図1に例示するように、吸収される熱的エネルギーの量および位置に対し、必要な糸、縫合及び布の各特性をバランスさせることが必要である。
【0017】
ポリマーを熱的に結合するとき、たとえば二つのMD糸をある距離だけ一体に結合するか、あるいは二つの糸の端同士を結合するかのいずれか、または、それらのいずれかを布の他の方向に方向付けられた糸、たとえば少なくとも一つのCD糸とともに行う。また、まさしく一つのMD糸を、交差するCD糸に結合するように結合が生じる。
【0018】
レーザーを用いて熱可塑性材料を結合する試みがなされてきた。しかし、材料の「結合の質」およびオーバーヒュージング(over-fusing)が疑わしい。そのような「オーバーヒュージング」は、布へ適用しようとする糸にとっては容認できない。
【0019】
レーザー技術が進歩し、熱的なエネルギーをうまく制御しフォーカスするタイプのものができている。
【0020】
さらなる進展は、トランスミッションの原理に基づく。あるレーザー波長は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルおよびポリアミド(PA)を通過する。吸収には、ポリマー基質内か、あるいは、たとえば熱的な溶融あるいは結合をしようとする位置とは別のポリマー糸表面に付けた放射線吸収材料を用いるべきである。溶接学会に譲渡された米国特許出願US2004/0056006A1が、そのような技術の一例を示す。しかし、この出願の中には、成形布あるいは他の工学布の縫合における隣接した糸に同様の技術を用いるという提案は何も見られない。
【0021】
レーザーエネルギーおよびエネルギー吸収材料を用いる別の例は、イーアイ デュポン デ ニューモアズ アンド カンパニーに譲渡されたWO02/057353A2による開示である。しかし、これは、射出成形した材料の結合のためのものであり、布の製造や方向性のポリマー糸を用いる布における縫合への取組みではない。
【0022】
ヘイムバッハ ジーエムビィーエイッチ アンド カンパニー,ケイジーに譲渡されたカナダ特許出願2,552,009は、製紙機械のシート成形部分に用いる成形布に関する。その成形布は、平織り構造であり、固有の安定性を増すために、交差位置で交差糸を互いに取り付け、さらに糸を互いに結合している。その特徴は、交差する第1および第2の糸のうち、第1の糸がレーザーを吸収する特性があり、吸収したレーザーエネルギーによって少なくとも表面が融解温度になること、そして、第1および第2の糸が交差位置の少なくともいくつかの部分で互いに結合することである。
【0023】
この出願は、二つの糸の一方がレーザーエネルギー吸収材料を含むことを教える。さらに、この出願は、織り布の縫合領域について、縫合領域における第1の糸(レーザーエネルギー吸収材料を含む)は横方向に伸ばし、縦方向に伸びる第2の糸に対し結合すべきであることを教える。特に大きな縫合強度をそこに得るためには、縫合領域における第1の糸の集中度を成形布の残りの領域よりも高くすべきであり、そして、第1および第2の布(原文のまま)をできるだけ多くの交差位置で互いに結合すべきである、とする。縫い工程のとき、縦糸を各向かい合う端に正しく織るように挿入し、その後に第1の糸に溶融結合する。これによって、縫合強度を損なうことなく、縫合領域の長さを詰めることができる可能性がある。このようにして、縫合領域を一般的な広がりよりも小さく、たとえば100mmの長さ方向の領域をたとえば60mmと小さくすることができる。すなわち、縫合領域を縦方向における20〜60%分だけ短くすることができる。
【0024】
しかし、この提案の技術には、明らかに大きな欠点がある。その欠点とは、通気あるいは通水性、シート支持位置の数、およびファイバサポートインデックス(FSI)といった他の特性が、CD方向のエンド打込数が異なるにつれて、布本体と異なることになることである。
【0025】
以上のように、この発明の主題は次の通りである。すなわち、合成ポリマー糸、特には、織り布の縫合領域における糸を糸特性に目立つような損失を起こさずに、そして、糸の大きさおよび/または形を大きく変更することなく、集束レーザーエネルギーで溶融あるいは結合すること、また、縫合が通常に用いるMD方向の長さと同じとしたとき、その縫合が大きな耐久性、および溶融あるいは結合しないものと同等か、あるいはより大きな強度をもつこと、そしてまた、縫合が通常に用いるMD方向の長さより短くしたとしても、製紙機械あるいは他の工業機械に設置したとき布が充分な有効寿命をもつような強度を備えることである。
【発明の概要】
【0026】
この発明は、以上に述べたような今までの技術的な欠点を解消するものであり、その目的は次に述べるとおりである。
【0027】
この発明の一つの目的は、製紙機械または他の工業の布あるいはベルトのための縫合についての改良技術を提供することである。
【0028】
この発明の他の目的は、製紙機械または他の工業の布あるいはベルトのための縫合についての改良技術を提供することであるが、強度、耐久性、開放性、適切な支持位置の数、および本質的に布本体と同じFSIなどの諸特性をもつようにすることである。
【0029】
この発明のさらに他の目的は、布の縫合についての改良技術であり、糸の端部の引き戻し、および縫合端部の摩耗を最小にすることである。
【0030】
また、この発明の他の目的は、糸からの織り構造物のための縫合技術であり、織り構造物および縫合について、今までの一般的な縫合方法を用いた際の強度を改良した新たなものを提供することである。
【0031】
この発明の他の目的は、今までの一般的な縫合技術では充分な強度をもつ縫合ができなかったという理由で商品化できなかった布設計を可能にすることである。
【0032】
この発明のさらに他の目的は、レーザーエネルギー吸収剤として働く適切な材料を必要な位置に設けることである。
【0033】
この発明の他の目的は、レーザーエネルギーを吸収する適切な材料を必要な位置に施すための方法を提供することである。
【0034】
さらに、この発明の他の目的は、耐久性のある縫合をもつ布を形成することであり、MD方向に計った縫合幅あるいは広がりが、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部となるような技術である。その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である。たとえば、今までの縫合方法によるMD方向の広さを「X」とすると、この発明によって形成した縫合の広さは、たとえば0.7X以下、好ましくは0.5X以下、最も好ましくは0.3X以下であり、大きさが小さくとも同等の強度をもつ。
【0035】
この発明のさらに他の目的は、溝付きの糸を含む縫合であり、溶融/接合をさらに改善し、より一層の縫合強度を得ることができる技術を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】合成モノフィラメント糸の強度に影響するレーザーエネルギー吸収量、および溶融し一体になった二つの合成モノフィラメントの結合強度を例示するグラフである。
【図2】図2a〜2dは、今までの一般的な織り縫合技術に伴う問題の一つを描写している。
【図3】この発明の実施例による成形布およびその縫合領域を示す写真である。
【図4a】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸のSEM写真である。
【図4b】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸の低倍率でのSEM写真である。
【図4c】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸のSEM写真である。
【図4d】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸の高倍率でのSEM写真である。
【図4e】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸の高倍率での別のSEM写真である。
【図5a】非水性と水性とのレーザー染料との比較のための糸の写真(非水性の場合)である。
【図5b】非水性と水性とのレーザー染料との比較のための糸の写真(水性の場合)である。
【図6a】二つの縦糸の単一の末端を示す図である。
【図6b】図6aの末端の両側をスポット溶接した図を示す。
【図6c】図6bのものにおけるストレスの移動を示す図である。
【図6d】図6bのものとは別の位置でのスポット溶接の場合を示す図である。
【図7a】互いに側を通る二つの縦糸端を示す図である。
【図7b】図7aの二つの縦糸端を一体にスポット溶接した図を示す。
【図7c】図7bのものにおけるストレスの移動を示す図である。
【図8】縫合領域におけるMDおよびCD糸の模式図であり、点(ドット)は糸の末端位置を示す。
【図9】この発明の一実施例による100%の結合を示す図である。
【図10】この発明の一つの考え方に基づく、一群のCD結合ストライプを示す図である。
【図11】この発明の一つの考え方に基づく、一群のスポット溶接したものを示す図である。
【図12】好適な溶接(結合)パターンを示す図である。
【図13a】溝付きモノフィラメントの断面図である。
【図13b】編み構造となった溝付きモノフィラメントの交差部を示す図である。
【図13c】編み構造を示す図である。
【図14a】この発明の一実施例であって、結合した布の断面図である。
【図14b】図14aの変形例を示す断面図である。
【詳細な説明】
【0037】
この発明は、レーザーエネルギーを活用することによって、製紙機械や他の工学用の布における縫合の改良技術に関する。この発明は、特には、製紙機械の成形、プレスおよび乾燥の各部分で用いる布およびベルト、工業用処理布およびベルト、TAD布、工学布ならびにコルゲータベルトに関する。この発明の解決すべき問題の一つは、より強くかつ/またはより耐久性のある縫合を形成するという要求である。また、他の解決すべき問題は、今まで一般に用いられるものよりもMD方向の長さが短いが、適切な強度をもつ縫合を提供することである。さらに別の解決すべき問題は、今までの一般的な縫合技術では充分な強度をもつ縫合ができなかったという理由で製造できなかった織り布構造物を提供可能にすることである。
【0038】
この発明は、また、そのような改良した縫合を用いて製造する布のも関する。
【0039】
さらに、この発明は、そのような改良した縫合および布を製造する方法にも関する。
【0040】
大抵の議論は、平織り布の縫合に関するが、他のタイプの縫合(シーム)、たとえば一般に知られるピンシームあるいはインラインスパイラルシームもまた、ここで述べるレーザー結合技術によって改良を図ることができる。そのシームもまた布本体へMD糸を織り直すことが必要であり、そのため、糸のすべりおよび抜け出しによってフェールする可能性がある。そのような縫合において、縫合ループ自体を形成するMD糸をCD糸に溶融あるいは結合し、使用時に作用する張力によって抜け出すことを防ぐことができる。
【0041】
これらの縫合を作るには、いろいろな異なる方法が考えられる。一つの方法は、布の縫合における縫合終端位置のような分離した位置にレーザーを集束することである。大抵のポリマー材料がレーザーエネルギーを吸収しないので、各位置に吸収性材料を存在させることが必要であろう。そうでなければ、レーザーエネルギーが布の糸に集束する所で、レーザーエネルギーによって溶け出しおよび/または分子配向ロスを生じるであろう。
【0042】
吸収剤を組み入れる一つの方法は、糸自体の押出しのとき用いるポリマー樹脂の一部とすることである。そうすれば、必要な各位置にレーザーを集束させ、局所的に溶融および結合を生じさせることができる。
【0043】
吸収剤を組み入れる他の方法は、糸を織って布にする前に、吸収性の材料を糸に塗布することである。その場合、レーザーエネルギー吸収性の材料、たとえば特定の染料を布に織る前に糸上に染料コーティングで施すか、あるいは、布を織り縫合した後に正確に形作ったパターンとしてスプレーする。次の操作は、必要な各位置にレーザーを集束させることであり、それにより、局所的に溶融を生じさせる。
【0044】
吸収剤を組み入れるさらに他の方法は、布における目的とする別の各位置に吸収剤を塗るか付着させることである。米国公開第2004/0126569号公報が、別の位置に樹脂材料を付ける方法を示している。そこでは、レーザーエネルギー吸収性の材料を制御しつつ布上に付着し、所定のパターンを作り出している。
【0045】
さらにまた、吸収剤を組み入れる他の方法は、たとえば、織り、かつ縫合した布の縫合領域のような目的とする場所のCDバンド(帯)に吸収性の材料をスプレーすることである。
【0046】
レーザーエネルギー吸収性の材料を用いる基本的な原理といえば、必要な場所における糸のコアを明らかには熱することなく、糸の表面を加熱するエネルギーのもとを与えることである。そのようにして、糸の表面を加熱し、糸の断面のすべてを溶融することはなく、表面を他の糸に溶融し結合することができる。たとえば、図3に示すように、CD糸14およびMD糸20とを織り、かつ縫合した布の縫合領域10における、二つの隣接した糸は、それらの表面にレーザーエネルギー吸収性の材料をもち、しかも、互いに接触している。そのような糸は、適切に制御したレーザー源の照射を受けると、一体に溶融および結合する。もし、過剰なレーザーエネルギーが与えられると、糸は破壊するように溶けるか、蒸発するだろう。また、もし過小なエネルギーが与えられるとすれば、繊維表面は充分には加熱されず、溶融および一体に結合することはないだろう。適切なエネルギー量が与えられると、糸は、実質的な強度を失うことなく、一体に結合することになる。
【0047】
図4aは、多層の成形布のSEM(走査型電子顕微鏡)写真であり、溶媒中に分散したレーザー吸収性の材料を一部にコーティングしたものを示す。溶媒を乾燥した後、布にYAGレーザーを225ボルトで1msパルス照射した。レーザーの集束ビーム径は300ミクロン程度である。このシングルパルスを多数生じさせ、構造物の全体を通し、レーザービームを照射したエリアを結合する。縦方向と横方向のモノフィラメントとの間に、微小な結合が明確に形成されている。この写真のモノフィラメントは、ポリエチレンテレフタレート(PET)製である。
【0048】
図4bは、パルスの長さを1.1msまで増大した場合の布を示す。パルスを長くしたことにより、ダメージ28が生じていることに気付くであろう。
【0049】
図4cは、第1のサンプルと同様に作ったものであるが、違う点は、コーティングした布の上下面をアセトンで湿らせた布切れでぬぐった点である。この布切れでぬぐったことにより、布サンプルの上下面からレーザー吸収性の材料の多くが取り除かれる。その結果、布の外側表面での溶融はほとんどなく、糸の内部が溶融することになる。そのように溶融したものの断面構造を図14aおよび14bに示す。それらの図には、構造物の内部の溶融が見られ、布の外部表面の溶融あるいは結合はほとんど見られない。
【0050】
この発明の一実施例において、この技術を溝付きのPETモノフィラメントで構成した組み(編み)構造物100に適用した。組み構造物100は、径6mmのポリオレフィン管材料上に形成される。図13aが、溝付きのPETモノフィラメント50の断面を示している。
【0051】
溝付きのPETモノフィラメントの名目上の径は9.27mmである。モノフィラメントに溝があることにより、組み構造物100の互いに交差する二つのモノフィラメント間のエリアにレーザー染料を立ち入らせることができる。この交差は、織り布で生じる交差に非常に似ている。モノフィラメントから作る一般的なテキスタイル構造物において、モノフィラメントは、一般的に、溝のない(表面がなめらかな)丸か矩形の断面形状である。溝付きのモノフィラメントは、レーザーエネルギー吸収性の材料を捕らえるための手段として用いる。表面がなめらかなモノフィラメントは、コーティングを捕らえるエリアおよび表面積が小さい。その上、表面がなめらかなモノフィラメントを交差するテキスタイル設計、たとえば織り布に用いるとき、表面がなめらかな二つのモノフィラメント間の自由なスペースがほとんどないか全くない。そのため、レーザーエネルギー吸収性の材料、たとえば特定の染料がモノフィラメント間のエリアに侵入しそうもない。それに対し、溝付きの二つのモノフィラメント間の交差部、あるいは溝付きのモノフィラメントと表面がなめらかなモノフィラメントとの交差部に施される染料は、どれもモノフィラメント間のエリアに侵入する。それは、コーティングが溝に沿って流れ、モノフィラメント間のスペースを満たすからである。このように、溝付きのモノフィラメントを用いることにより、レーザー染料を交差する二つのモノフィラメント間のスペースに配置することができる。
【0052】
上のことから分かるように、この技術を図13bに示す溝付きモノフィラメント50からなる組み構造物100に適用した。レーザーで結合した後、構造物の交差部60はしっかりと結合されていた(図13c参照)。組んだ物をその軸線方向に圧縮および伸長して曲げても、結合が壊れることは何らなかった。比較のために、表面がなめらかなPETモノフィラメントを用いて同様の組み構造物を用意した。結合した後で、同様に軸線方向に圧縮および伸長した。その圧縮および伸長の結果、交差部の結合の多くが壊れた。それらの結合の壊れから、表面がなめらかなモノフィラメントで形成した微小結合(micro-welds)よりも、溝付きモノフィラメントで形成した方がより耐久性のある微小結合を得ることができることが分かった。
【0053】
以上に述べた微小結合の技術を用いて、たとえば成形布の縫合の強度および/または耐久性を増すことができる。今までの一般的な縫合においては、繊維/糸のけん縮およびフリクションに頼って、縫合を保持している。そのような縫合において、縦方向と横方向とを一体に結合することによって、縫合の強度および/または耐久性を増すことができる。
【0054】
この微小結合の技術は、また、新しい布設計のものを商品化させることにもなる。過去においては、いわゆる「ストレート縦糸(straight warps)」をもつ布の織り設計がずっと検討されてきた。ただ、縫合のMD糸は、縫合を一体に保持する上で必要なだけの充分なけん縮およびフリクションをもたない。そのため、ストレート縦糸の設計には問題がある。その反対に、ストレート縦糸の設計は、大変魅力的な面をもつ。その面とは、縦糸を充分にけん縮して強い縫合を形成する一般的な成形布の設計と比較して、引張応力(モジュラス)の改良を図ることができることである。「ストレートライン」の考え方による別の例は、多層布の中央にストレート縦糸を存在させるものである。縦糸は、縫合を作るためのけん縮およびフリクションが不充分である。ここで述べる微小結合の技術を利用することにより、ストレート縦糸の布設計で縫合を形成することができる。縦糸と横糸モノフィラメントとの間の微小結合を行うことによって、布構造物の縫合内の末端の周りおよびクロスするようにストレスを移すことができる。MDあるいはCDのいずれかに非常に細い糸を用いたり、あるいは、比較的に低い打込数(粗い布を意味する)を用いるような他の場合には、縫合がレーザー微小結合によって強化されていない限り、適切な縫合強度を得ることができないだろう。
【0055】
上に述べたように、微小結合を行う他のアプローチでも、レーザー染料あるいはレーザー顔料を利用する。この場合、レーザー染料あるいはレーザー顔料を、モノフィラメントを構成する材料の中に分散する。一般的に、レーザー染料あるいはレーザー顔料の濃度は0.4%以下である。レーザー染料あるいはレーザー顔料が存在することにより、エネルギー源の周波数でモノフィラメントを「エネルギー吸収性」にする。好ましくは、レーザーを放射するレーザーエネルギー源の設計を、特定の位置に正確な量のエネルギーを与えられるようにするのが良い。図4dは、0.3%のレーザー染料(エポリン社のエポライト2057)を含有するポリエステルモノフィラメント14であって、「非吸収性の」ポリエステルモノフィラメント20に結合したものを示す。二つのモノフィラメントは、互いに90°に交差した状態で接触するように置かれている。二つのモノフィラメントの交差部に、YAGレーザーを223ボルトで1msパルス照射した。集束したレーザービームの径はおよそ300μmであった。そのパルスの一発で二つのモノフィラメントを一体に結合した。「非吸収性の」モノフィラメント20は、レーザー染料あるいは顔料なしで作り、エネルギー源の周波数で非吸収性である。
【0056】
別の例では、着用側のモノフィラメントとして0.4%のレーザー吸収剤を含むCDPETモノフィラメントで布を織った。布の他のモノフィラメントは、すべて「非吸収性の」PETモノフィラメント20で構成した。布の300μm径のエリアをYAGレーザーを225ボルトで1msパルス照射した。照射エリアは、CDモノフィラメントと二つのMDモノフィラメントとの間の交差部であった。図4eに示すように、CDモノフィラメント14は、溶融しMDモノフィラメント20に結合した。
【0057】
以上に述べた技術のどれかを織り布の縫合領域に利用すれば、縫合における末端の抜出しおよび/または穴傷などの問題を事実上除去することができる。図2における2a〜2dは、この好ましくない現象を示し、二つの布の端の末端部が、縫合領域および危険限界12で「オーバーラップ」している(図2の2a)。そのような所で、それらの端はMD方向に「抜け出し」、それらの端自体が紙側の表面から突き出るであろう。ついには、布における局部的なストレスが増大することに起因し、オーバーラップするエリアの滑りが、矢印で示すように増す(図2の2b)。そして、滑りが完結し、布の縫合領域のオーバイラップ部に穴16が現れる(図2の2c)。したがって、縫合のオーバーラップ部分について、一般的に、接着剤18を手で付けることにより補強し(図2の2d)、強度を大きくする。しかし、接着剤を付けることは労力がいるし、時間がかかる処理作業である。また、精度が低いため、接着剤をオーバーラップする糸だけに付けることが難しい。その上、接着剤は、布の屈曲および/または摩耗によって結局は機能しなくなる。
【0058】
レーザー吸収性の材料については、多くのものを選択することができる。最も早期のものはカーボンブラックであった。材料の選択、材料の量、および材料の位置のすべてが、結果として生じる溶融結合の特性を決める。
【0059】
上に述べたように、糸の溶融は、レーザーエネルギー吸収性の材料をコーティングし、しかもまた、適正なレーザーエネルギー源を照射した表面で生じる。
【0060】
溶融するエリア、あるいはその広さを制御するために、水溶性の特定の染料を用いることが有益であることが分かった。
【0061】
そのような染料を水溶液から布に塗布し、乾かすと、染料がモノフィラメント間のすき間に移動し、互いに接触する。これは、有機溶媒にだけ溶ける他のレーザー染料と対照をなしている。それらの非水溶性の染料は、モノフィラメントの表面全体に付着し、モノフィラメントの表面全体で溶融を生じる。
【0062】
図5aは、非水溶性のレーザー染料で生じたことを示す。レーザーエネルギーを照射した後、モノフィラメント20の表面全体が溶融していることに留意されたい。これについては、溶融しないモノフィラメント30の滑らかで光った表面と対照的なモノフィラメント20のまだらな表面によって観察される。この場合に用いた染料は、アセトン溶液から塗布したエポライト2057であった。
【0063】
図5bは、水溶性のレーザー染料(エポライト2340)で生じたことを示す。モノフィラメント間のすき間にレーザー染料を含ませ、レーザーエネルギーを照射して結合したが、モノフィラメント20の表面は滑らかで光っていることに留意されたい。この結果は、非水溶性のレーザー染料を越えた大きく、しかも思いも寄らない改良である。成形布の縫合に関し、水溶性染料によってモノフィラメントの溶融を低減することができるため、縫合領域における歪みが少なくなり、その代わりレーザー結合から生じるシート模様付けの可能性を減じる。
【0064】
しかし、どちらのタイプの染料を用いるかは、選択の問題である。MD糸とCD糸との間の交差部を密にすることは、たとえば、成形やTAD布に支持される。というのは、密な交差部は、溶融のときに材料の流れを生じ、通常は表面張力によってそこに存在するであろう水の量を減じるからである。運ばれる水の量が減ると、製紙におけるエネルギーコストを低減する。密な交差部は、また、MD糸とCD糸とによって形成される交差部の間のピンチ部に汚れがたまることを減らすという意義がある。
【0065】
明らかに、レーザー結合による縫合は、今までの一般的な製造技術で得た縫合よりも、強度および大きさの安定性の点で勝っている。この技術によってより強い縫合を得ることができるが、この技術は、また、今までの一般的な成形布パターンと一緒に、新しい特徴のものをも製造することができる。これは、標準ヒートセッチングの実務に結合の縫合技術が影響を与えたことにより成し遂げられる。今までのヒートセッチング実務には、大きさの安定性と縫合強度との間のかね合いに起因し、制限がある。布に大きな伸び(MDモノフィラメントのけん縮除去)を生じるような粗いヒートセッチング条件を用いるとすれば、その結果として生じる製品は、縫合強度が低く、しかし、大きさの安定性は高い。一般的に、粗いヒートセッチング条件は、縫合強度の低すぎる結果を生じるので、用いられていない。レーザー結合の縫合技術を利用するとき、縫合強度の低さを結合による縫合強度によって補うので、粗いヒートセッチング条件を用いることができる。これは、結果として生じる構造物が、今までの一般的な布より高い大きさの安定性をもつことを意味する。これは、また、MDおよびCDモノフィラメント間により大きな平面差を生じることを意味する。このことは、着用側には利点である。というのは、そのことによって、大きな径のモノフィラメントを使用することに頼ることなく、布の着用耐性を増すことができるからである。その代わり、それによって、布の厚さを薄くし、たとえば、成形布が運ぶ水を減らすことになる。
【0066】
上に述べたように、いろいろな方法によって、織り構造物の交差部、あるいは織り構造物における隣接した糸間の接触部をレーザー結合あるいは溶融によって微小結合することが考えられる。
【0067】
縫合領域における糸のフリクションとけん縮とにだけに依存し、縫合の完全性を得ることなく、結合によって、MD方向のストレスを末端の周りあるいはそれをクロスするように移すことができる。結合については、いろいろなパターンで行うことができ、縫合の全領域を完全に(100%)結合することも、定まった配列をスポット溶接することも、そして、一群のCDストライプを溶接することもできる。それらの組合せ、たとえば、スポット溶接と一群のCDストライプの溶接との組合せをすることもできる。製紙機械のロールが整列していないため、たとえば成形布縫合領域の機械的な特性に対し、斜めのことも見込んでおかなければならない。この点、製紙処理で使用する際、布が曲がったりしわを生じたりする問題を起こすことなく、縫合が布の平面の剪断力に対応できなければならない。それらの全体を結合(縫合の100%結合)した縫合領域は、平面内の剪断による変形に対して不動かつ高い耐性を示す。
【0068】
一例として、成形布の縫合に対する理想的な結合パターンには、二つのゴールがある。第1のパターンは、布縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにしたものである。変形例として、互いに交差する縦糸と横糸のような単一の糸の長さ方向に沿って多数の結合を行い、交差部で同じ負荷をたくさんの縦糸および横糸に分配させ、それにより、布の歪みをなくすようにすることができる。これらの結合によって、製紙機械上で非常に耐久性のある縫合を得ることができる。第2のパターンは、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路があるものである。結合しない布のこれらの隣接経路によって、縫合の平面内の剪断特性を布本体の平面内の剪断特性と同様にすることができる。この特徴によって、縫合を含む布を製紙機械上の整列しないロールが生じる悪分布なストレスにうまく対応させることができる。もしも布がストレスの悪分布に対応できないならば、布は製紙機械上で曲りあるいはしわを生じてしまうだろう。
【0069】
結合しない縦糸の隣接経路は、縦方向について対称になるようにするのが好ましい。そうすれば、平面内の剪断特性が縦方向について対称になる。
【0070】
次に、パターンについてさらに詳しく述べよう。結合した縫合におけるストレス移動について、縦方向のストレスを布の結合および引き続くモノフィラメントを通して各端部周りに移動(伝達)させるため、いずれの端部もその長さ方向に沿うある位置(好ましくは、各端の所あるいはその近く)で結合すべきである。今までの一般的な織り縫合におけるストレスの移動については、縦糸とシュートモノフィラメントとの間のモノフィラメントのけん縮およびフリクションを利用しているが、このタイプのストレス移動は無視する。図6aは、二つの縦糸の端14の単一の末端を示し、また、図6bは、この末端のいずれの側をも結合する二つのスポット溶接を示す。
【0071】
図6cは、この末端の周囲あるいはクロスしてストレスが移動する最小の経路を示す。各経路は、連続的なモノフィラメントと、モノフィラメントを一体に結びつける結合との組合せによって定まる。図6cの例では、等しい長さの二つの経路があることが分かる。
【0072】
図6bに示すスポット溶接の位置に代わるものを図6dに示す。この図6dでは、スポット溶接が実際の末端からより一層離れている。末端の周りのストレス移動の最小経路が、図6dに示されている。これらの図に示すストレス移動のロジックを結合パターンのどうようなものにも適用することができる。末端の周りのストレス移動は、縫合の一方の側から他方の側へ連続する経路であって、その経路が連続的なモノフィラメントと、縦糸および横糸モノフィラメントを連結するスポット溶接から構成されるものである限り、好結果を生む。
【0073】
また、末端について、図7aに示すように、互いに側を通る二つの縦糸端14で末端を構成することができる。この末端は図6bあるいは図6dに示すものと同じ方法で結合することができるが、図7bに示すように、二つの縦糸端14を一体に結合することもまたできる。この場合、ストレスは、図7cに示すように、一つの縦糸モノフィラメントから他の縦糸モノフィラメント14へとまっすぐな経路で移動する。
【0074】
この発明の一実施例について、図8が、支持シュートバインダー(「SSB」)成形布のための末端パターン24を示す。この図の上下方向が縦方向(MD)になる。図の中の各ドットが、単一の縦糸端を表す。パターンが規則的であり、末端が大きなエリアに広がっていることに気付くであろう。縫合の縦方向の長さは、およそ3インチ(7.6cm)である。図8の上と下の点線によって、縫合の二つの側を示している。
【0075】
図8の縫合の結合について、縫合の全領域を完全に(100%)結合26することも、定まった配列をスポット溶接することも、そして、CDストライプ群を溶接することもできる。それぞれの場合について、以下に述べる。第1に示すものは、図9の100%結合26である。はっきりしていることは、この結合パターンが、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路を与えないことである。このパターンは布を堅くし、平面内の剪断剛性を大きくし、そして、製紙機械で運転する際、曲りやしわに対する布の耐性を減じる。しかし、結合パターンは、縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにすることは保証しない。これが、縫合の耐久性を非常に大きくすることになる。
【0076】
次の図の図10は、CD結合ストライプ群26を示す。この結合パターンは、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路を与えないが、この結合パターンは、縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにすることを保証する。しかし、結合ストライプ間の非結合ストライプが、布の歪みをある程度斜めに向けうまくあしらうことに留意されたい。いろいろと試みると、このようなパターンが、必要とする縫合特性と、処理の複雑さおよびコストとの間の見事なバランスを示す。
【0077】
したがって、いくつかのCD帯(バンド、ストライプ)にレーザーエネルギー吸収性材料を伴う布についての基礎的な処理工程は、次のとおりである。
1.縫合してあるが、仕上げ前の布を準備する工程
2.縫合を洗浄する工程
3.布を適切な装置に装着し、特定レベルの張力をかける工程
4.縫合に対し、レーザー染料(目的に合った特定のもの)をスプレーし、余分な染料を除去する工程
5.特定の方法で縫合を結合する工程
6.布をある幅に切断する工程
7.エッジ(端)を仕上げる工程
8.布を荷造りし、運送する工程
【0078】
CD帯にレーザーエネルギー吸収性材料を伴う布を形成する処理工程を上に列挙したが、その工程順は全くの一例であり、この発明はそれに限定されるわけではない。
【0079】
しかし、前にも述べたように、個々の位置のスポット溶接を利用する。図11は、スポット溶接26の一群を示す。この結合パターンは、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路を提供する。このパターンは、スポット溶接が存在する場所近くの布強度を高める。このように特定の場所を結合することは、縫合領域の平面内剪断剛性を大きく増すことはない。結果的には、この縫合設計は、製紙機械を運転するとき、曲りやしわに対し最も良く耐えることができる。しかし、この特別なスポット溶接パターンは、縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにすることは保証しない。そうなるのは、溶接(結合)部分が縦方向の各結合の列間にスペースをもって並んでいるからである。その結果、縫合の部分が、フリクションに依存して、縦方向ストレスを縫合の一方の側から他方へと移すことになる。これは、縫合の耐久性を減じる。
【0080】
図12は、好適な結合パターン26であって、結合しない縦糸の隣接経路を得ることができ、しかも、すべての縦糸の末端を結合したものを示す。このパターンは、平面内の剪断特性と縫合の耐久性との望ましい組合せを成し遂げる。望ましい結果を得るために、すべての布設計および縫合パターンが要求するのは、様式化された特定のスポット溶接パターンである。
【0081】
スポット溶接(結合)については正にレーザーエネルギー自体で達成することができるが、好ましい方法は、必要とする正確な位置に付着したレーザーエネルギー吸収剤を用いることであり、それによって、糸の歪みおよび糸を構成するポリマーの分子配列の喪失を最小限にすることができる。
【0082】
したがって、この発明の利点をまとめると、次のとおりである。
・ 縫合強度および耐久性
・ 縫合の強固さ−たとえば紙の製造で用いる高圧シャワーや摩耗性充てん材のような、摩耗環境に耐える能力
・ MD方向が短い縫合
・ 縫合可能な新しい布構造物を作り出すことができること
・ 製紙のような湿った環境において布を乾燥走行させること
・ 布特性を高めるための処理(たとえば、ヒートセッチング)の広がり
【0083】
したがって、レーザー結合を用いる結果、MD方向の長さが同じ縫合について、より強くそして/またはより耐久性のあるものを得ることができる。また、好ましい形態として、MD方向に測った縫合幅あるいは広がりが、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部となるようにしたものを得ることができる。その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である。たとえば、今までの縫合方法によるMD方向の広さを「X」とすると、この発明によって形成した縫合の広さは、たとえば0.7X以下、好ましくは0.5X以下、最も好ましくは0.3X以下であり、大きさが小さくとも同等の強度をもつ。平織り布の縫合について述べてきたが、この発明のレーザー結合技術は、他のタイプの縫合にも適用することができる。たとえば、ピン縫合あるいはインライン縫合に適用することができ、それらにおいて、縫合ループ自体を形作り、布本体に織り戻されるMD糸を、CD糸に対し結合あるいは溶融し、使用時に作用する張力で抜き出されることを防止し、それによって、縫合強度、およびストレスあるいは負荷の分布の不均一性を改善することができる。
【実例】
【0084】
例1
レーザーエネルギー吸収性材料を含む糸で、二層の布を織り縫合した。レーザーエネルギー源を布の一つの領域に照射し、別の領域は溶融しないものとして残した。そして、対応する各領域からサンプルを採取し、破壊強度を測った。結合したものの破壊強度に53%の増大が見られた。
【0085】
例2
いろいろな設計の三層SSB布を織り、縫合には、必要な位置にレーザーエネルギー吸収性材料を配置した。縫合の一つの領域にレーザーを照射した後、溶融しない部分と溶融した部分の各サンプルを採取した。溶融(結合)したものの縫合強度が129%に接近するほどに増大した。
【0086】
例3
他の例において、レーザーエネルギー吸収性材料を含む糸でMD方向の縫合長さが短い三層SSB布を形成した。そして、縫合の一部にレーザーエネルギーを照射した。溶融しない部分と溶融した部分の各サンプルを採取しテストしたところ、溶融(結合)したものの破壊強度に47%の増大が見られた
【0087】
例4
三層SSB布を織り縫合した。その布の縫合領域には、必要な位置にレーザーエネルギー吸収性材料が存在する。適切なレーザーエネルギー源で縫合を照射した。そして、その布を試験機上、800mpm(m/分)で45gsm(g/平方メートル)の新聞紙を作るギャップ成形機の運搬位置で運転走行させた。試験の条件、たとえば布の張力、カウンターブレード負荷、および真空レベルを変化させた。用いた条件の全範囲において、縫合からはシート排水模様は何も検出されなかった。
【0088】
こうして、この発明の目的および利点を理解されたであろう。この発明の好適な実施例について図面を参照しながら詳しく説明したが、この発明は、そのような実施例に限定されない。当業者は、特許請求の範囲に定めた考え方から離れることなく、いろいろな変形や修正を行うことができる。
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願については、2007年9月5日出願の米国仮特許出願第60/967,489号の優先権を主張し、それが明らかにした内容を参照によってここに組み入れる。
【技術分野】
【0002】
ここに開示する発明は、製紙機械布(「PMC」、Paper Machine Clothing)や他の工業および工学の分野の布について、レーザのエネルギーを用いることによって、選択した位置で結合あるいは溶融させる技術に関する。
【引用による組み入れ】
【0003】
ここで引用する特許、特許出願、文書および/または文献のすべてを参照によってここに組み入れ、しかもまた、この発明を実施する上で使用する。
【背景技術】
【0004】
この発明は、製紙機械の成形、プレスおよび乾燥の各部分で用いる布およびベルトを含む製紙技術に関し、そしてまた、工業用処理布およびベルト、TAD(through-air-drying、通し風乾)布、通常コルゲータベルトを伴う工学布およびベルトに関する。
【0005】
ここでいう布およびベルトには、また、他の物の製造にも用いられるものも含む。たとえば、紙および板紙のような湿式製品、TADによる生理用のティッシュやナプキン製品であり、さらに、コルゲート(波形)板紙の製造に用いるコルゲータベルト、湿式および乾式のパルプの製造に用いる工学布があり、スラッジフィルタやケミウオッシャを用いる製紙の処理、およびハイドロエンタングリング(hydroentangling、湿式処理)、溶融ブロー(meltblowing)、スパンボンド(spunbonding)、エアレイド(airlaid)あるいはニードルパンチングによる不織製品の製造に用いられる。そのような布およびベルトには、それに限定されるわけではないが、不織製品、ろ過布およびろ過織物の製造処理で用いるエンボス、運搬および支持用の布およびベルト、ならびに、カレンダー加工や皮革なめしのようなテキスタイル仕上げ処理に用いる布およびベルトを含む。
【0006】
そのようなベルトや布は、広範囲ないろいろな状況にさらされるので、それらに対する機能的な特性が考慮されるべきである。たとえば、製紙処理において、セルロースを含む繊維状のウェブは、製紙機械の成形部分を移動する成形布上に繊維状のスラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液を堆積させることによって形作られる。スラリーからは成形布を通して多量の水が排水され、成形布の表面にセルロースを含む繊維状のウェブを残すことになる。
【0007】
製紙機械布(たとえば、成形、プレスおよび乾燥の各布)のような布は、製紙機械上ですべてエンドレス(無端)の形態であり、コンベヤのような役目をすることを認識されたい。
【0008】
そのような布の構造物は、織りのような一般に行われているテキスタイル処理方法によって、合成繊維およびモノフィラメントから構成される。しばしば要求されることは、布構造を選択的に仕立てることによって、たとえば、布寿命、シート成形、運転操作性あるいは紙特性というような製紙業者にとって重要な性能特性に影響しあるいは高めるという要求である。
【0009】
紙やティッシュ製品の成形、またはティッシュ/ナプキンの製造に用いる布、あるいは「TAD」布のような布は、シーム(縫合)によって何度も結合される。この場合、布は糸(通常、モノフィラメント)による平織りが一般的である。各布縁には、縦方向(「MD」)糸の「フリンジ」がある。このフリンジは、布本体としての同じ基礎パターンの中の横方向(「CD」)糸と再び織られる。無端にするためのこの縫合処理は、いわゆる当業者に良く知られている。したがって、縫合領域は、MD糸の端を含む。縫合の強度は、MD糸の強度、使われたMD糸およびCD糸の数、およびCD糸周りに自らを物理的にある程度「ロック」するMD糸自体の織縮み(クリンプ)に依存する。しかし、布がたとえば製紙機械あるいはティッシュ/ナプキンの製造機械の運転によって張力を受けるとき、それらのMD糸の端は、文字通り互いにすべり抜けて引き出されてしまう。そして、その「端」自体は、布の表面の上にはみ出し、紙/ティッシュ製品に小さな穴を生じる原因となったり、あるいは、最終的にすべり抜けが大きいと、布の縫合が失敗に終わって布が引き離されてしまう。一般的に、MD方向に測定した縫合領域の広さは、今までの技術によれば、たとえば、3インチ半から20インチ(つまり、およそ10cmから50cm)あるいはそれ以上の大きさである。
【0010】
これを最小に抑えるために、縫合の糸に対して、通常、接着剤をスプレーしたり塗ったりする。しかし、残念ながら、これによって縫合領域の流体処理特性が変わってしまったり、接着剤が摩耗しすり切れてしまうこともある。
【0011】
縫合領域において糸を互いに部分的に溶融あるいは融合させるように熱を加えることが検討されたが、熱を使用することは、一般的に、縫合領域の流体処理特性が変化するという受け入れがたいことを生じる。というのは、すべての糸が影響を受け、縫合によって、たとえば布本体と異なる空気透過性を来すからである。
【0012】
今までの試みによる他の欠点は、MD方向で用いる糸の数、あるいは用いる糸の大きさのいずれかによって、たとえ接合用接着剤/接着剤を補助的に用いたとしても、今までの縫合方法によっては充分な縫合強度を得ることができない。
【0013】
製紙機械布および/または工業布の技術として、熱的エネルギーを利用することによって糸を一体に溶融し、たとえば縦糸(MD)と横糸(CD)との織り布における縫合を
形成することが知られている。
【0014】
縫合領域における布特性だけでなく糸特性をも維持することが重要である。PMCや他の工学布に用いる糸は、ポリエステルなどの方向性のポリマーから作られ、しかも、必要な形や大きさをもつ。熱的なエネルギーを加えた後で、糸の大きさ、形および特性を本質的に維持させておくことが必要である。しかし、熱はこれらの材料にいろいろな悪影響を及ぼす。たとえば、 熱は、 (a)熱可塑性材料のガラス転移点(それは、寸法の変化に影響する温度である)より高い熱での軟化、あるいは(b)溶融点よりも高い溶融による軟化を生じる。
【0015】
縫合の開放性については、縫合領域の糸に大きなひずみが生じないようにすることによって、維持されるべきである。そしてまた、糸の大きな引張強度、特にMD糸のそれは維持されるべきであり、結果として生じる縫合強度は受認されない。
【0016】
少なくとも互いに結合する隣接する糸および/または横切るCD糸と結合する部分には、いくらかの「溶融流れ」が必要であるが、糸に大きなひずみを生じさせるべきではない。そこで、図1に例示するように、吸収される熱的エネルギーの量および位置に対し、必要な糸、縫合及び布の各特性をバランスさせることが必要である。
【0017】
ポリマーを熱的に結合するとき、たとえば二つのMD糸をある距離だけ一体に結合するか、あるいは二つの糸の端同士を結合するかのいずれか、または、それらのいずれかを布の他の方向に方向付けられた糸、たとえば少なくとも一つのCD糸とともに行う。また、まさしく一つのMD糸を、交差するCD糸に結合するように結合が生じる。
【0018】
レーザーを用いて熱可塑性材料を結合する試みがなされてきた。しかし、材料の「結合の質」およびオーバーヒュージング(over-fusing)が疑わしい。そのような「オーバーヒュージング」は、布へ適用しようとする糸にとっては容認できない。
【0019】
レーザー技術が進歩し、熱的なエネルギーをうまく制御しフォーカスするタイプのものができている。
【0020】
さらなる進展は、トランスミッションの原理に基づく。あるレーザー波長は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルおよびポリアミド(PA)を通過する。吸収には、ポリマー基質内か、あるいは、たとえば熱的な溶融あるいは結合をしようとする位置とは別のポリマー糸表面に付けた放射線吸収材料を用いるべきである。溶接学会に譲渡された米国特許出願US2004/0056006A1が、そのような技術の一例を示す。しかし、この出願の中には、成形布あるいは他の工学布の縫合における隣接した糸に同様の技術を用いるという提案は何も見られない。
【0021】
レーザーエネルギーおよびエネルギー吸収材料を用いる別の例は、イーアイ デュポン デ ニューモアズ アンド カンパニーに譲渡されたWO02/057353A2による開示である。しかし、これは、射出成形した材料の結合のためのものであり、布の製造や方向性のポリマー糸を用いる布における縫合への取組みではない。
【0022】
ヘイムバッハ ジーエムビィーエイッチ アンド カンパニー,ケイジーに譲渡されたカナダ特許出願2,552,009は、製紙機械のシート成形部分に用いる成形布に関する。その成形布は、平織り構造であり、固有の安定性を増すために、交差位置で交差糸を互いに取り付け、さらに糸を互いに結合している。その特徴は、交差する第1および第2の糸のうち、第1の糸がレーザーを吸収する特性があり、吸収したレーザーエネルギーによって少なくとも表面が融解温度になること、そして、第1および第2の糸が交差位置の少なくともいくつかの部分で互いに結合することである。
【0023】
この出願は、二つの糸の一方がレーザーエネルギー吸収材料を含むことを教える。さらに、この出願は、織り布の縫合領域について、縫合領域における第1の糸(レーザーエネルギー吸収材料を含む)は横方向に伸ばし、縦方向に伸びる第2の糸に対し結合すべきであることを教える。特に大きな縫合強度をそこに得るためには、縫合領域における第1の糸の集中度を成形布の残りの領域よりも高くすべきであり、そして、第1および第2の布(原文のまま)をできるだけ多くの交差位置で互いに結合すべきである、とする。縫い工程のとき、縦糸を各向かい合う端に正しく織るように挿入し、その後に第1の糸に溶融結合する。これによって、縫合強度を損なうことなく、縫合領域の長さを詰めることができる可能性がある。このようにして、縫合領域を一般的な広がりよりも小さく、たとえば100mmの長さ方向の領域をたとえば60mmと小さくすることができる。すなわち、縫合領域を縦方向における20〜60%分だけ短くすることができる。
【0024】
しかし、この提案の技術には、明らかに大きな欠点がある。その欠点とは、通気あるいは通水性、シート支持位置の数、およびファイバサポートインデックス(FSI)といった他の特性が、CD方向のエンド打込数が異なるにつれて、布本体と異なることになることである。
【0025】
以上のように、この発明の主題は次の通りである。すなわち、合成ポリマー糸、特には、織り布の縫合領域における糸を糸特性に目立つような損失を起こさずに、そして、糸の大きさおよび/または形を大きく変更することなく、集束レーザーエネルギーで溶融あるいは結合すること、また、縫合が通常に用いるMD方向の長さと同じとしたとき、その縫合が大きな耐久性、および溶融あるいは結合しないものと同等か、あるいはより大きな強度をもつこと、そしてまた、縫合が通常に用いるMD方向の長さより短くしたとしても、製紙機械あるいは他の工業機械に設置したとき布が充分な有効寿命をもつような強度を備えることである。
【発明の概要】
【0026】
この発明は、以上に述べたような今までの技術的な欠点を解消するものであり、その目的は次に述べるとおりである。
【0027】
この発明の一つの目的は、製紙機械または他の工業の布あるいはベルトのための縫合についての改良技術を提供することである。
【0028】
この発明の他の目的は、製紙機械または他の工業の布あるいはベルトのための縫合についての改良技術を提供することであるが、強度、耐久性、開放性、適切な支持位置の数、および本質的に布本体と同じFSIなどの諸特性をもつようにすることである。
【0029】
この発明のさらに他の目的は、布の縫合についての改良技術であり、糸の端部の引き戻し、および縫合端部の摩耗を最小にすることである。
【0030】
また、この発明の他の目的は、糸からの織り構造物のための縫合技術であり、織り構造物および縫合について、今までの一般的な縫合方法を用いた際の強度を改良した新たなものを提供することである。
【0031】
この発明の他の目的は、今までの一般的な縫合技術では充分な強度をもつ縫合ができなかったという理由で商品化できなかった布設計を可能にすることである。
【0032】
この発明のさらに他の目的は、レーザーエネルギー吸収剤として働く適切な材料を必要な位置に設けることである。
【0033】
この発明の他の目的は、レーザーエネルギーを吸収する適切な材料を必要な位置に施すための方法を提供することである。
【0034】
さらに、この発明の他の目的は、耐久性のある縫合をもつ布を形成することであり、MD方向に計った縫合幅あるいは広がりが、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部となるような技術である。その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である。たとえば、今までの縫合方法によるMD方向の広さを「X」とすると、この発明によって形成した縫合の広さは、たとえば0.7X以下、好ましくは0.5X以下、最も好ましくは0.3X以下であり、大きさが小さくとも同等の強度をもつ。
【0035】
この発明のさらに他の目的は、溝付きの糸を含む縫合であり、溶融/接合をさらに改善し、より一層の縫合強度を得ることができる技術を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】合成モノフィラメント糸の強度に影響するレーザーエネルギー吸収量、および溶融し一体になった二つの合成モノフィラメントの結合強度を例示するグラフである。
【図2】図2a〜2dは、今までの一般的な織り縫合技術に伴う問題の一つを描写している。
【図3】この発明の実施例による成形布およびその縫合領域を示す写真である。
【図4a】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸のSEM写真である。
【図4b】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸の低倍率でのSEM写真である。
【図4c】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸のSEM写真である。
【図4d】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸の高倍率でのSEM写真である。
【図4e】レーザーマイクロ結合された布の一領域の中の糸の高倍率での別のSEM写真である。
【図5a】非水性と水性とのレーザー染料との比較のための糸の写真(非水性の場合)である。
【図5b】非水性と水性とのレーザー染料との比較のための糸の写真(水性の場合)である。
【図6a】二つの縦糸の単一の末端を示す図である。
【図6b】図6aの末端の両側をスポット溶接した図を示す。
【図6c】図6bのものにおけるストレスの移動を示す図である。
【図6d】図6bのものとは別の位置でのスポット溶接の場合を示す図である。
【図7a】互いに側を通る二つの縦糸端を示す図である。
【図7b】図7aの二つの縦糸端を一体にスポット溶接した図を示す。
【図7c】図7bのものにおけるストレスの移動を示す図である。
【図8】縫合領域におけるMDおよびCD糸の模式図であり、点(ドット)は糸の末端位置を示す。
【図9】この発明の一実施例による100%の結合を示す図である。
【図10】この発明の一つの考え方に基づく、一群のCD結合ストライプを示す図である。
【図11】この発明の一つの考え方に基づく、一群のスポット溶接したものを示す図である。
【図12】好適な溶接(結合)パターンを示す図である。
【図13a】溝付きモノフィラメントの断面図である。
【図13b】編み構造となった溝付きモノフィラメントの交差部を示す図である。
【図13c】編み構造を示す図である。
【図14a】この発明の一実施例であって、結合した布の断面図である。
【図14b】図14aの変形例を示す断面図である。
【詳細な説明】
【0037】
この発明は、レーザーエネルギーを活用することによって、製紙機械や他の工学用の布における縫合の改良技術に関する。この発明は、特には、製紙機械の成形、プレスおよび乾燥の各部分で用いる布およびベルト、工業用処理布およびベルト、TAD布、工学布ならびにコルゲータベルトに関する。この発明の解決すべき問題の一つは、より強くかつ/またはより耐久性のある縫合を形成するという要求である。また、他の解決すべき問題は、今まで一般に用いられるものよりもMD方向の長さが短いが、適切な強度をもつ縫合を提供することである。さらに別の解決すべき問題は、今までの一般的な縫合技術では充分な強度をもつ縫合ができなかったという理由で製造できなかった織り布構造物を提供可能にすることである。
【0038】
この発明は、また、そのような改良した縫合を用いて製造する布のも関する。
【0039】
さらに、この発明は、そのような改良した縫合および布を製造する方法にも関する。
【0040】
大抵の議論は、平織り布の縫合に関するが、他のタイプの縫合(シーム)、たとえば一般に知られるピンシームあるいはインラインスパイラルシームもまた、ここで述べるレーザー結合技術によって改良を図ることができる。そのシームもまた布本体へMD糸を織り直すことが必要であり、そのため、糸のすべりおよび抜け出しによってフェールする可能性がある。そのような縫合において、縫合ループ自体を形成するMD糸をCD糸に溶融あるいは結合し、使用時に作用する張力によって抜け出すことを防ぐことができる。
【0041】
これらの縫合を作るには、いろいろな異なる方法が考えられる。一つの方法は、布の縫合における縫合終端位置のような分離した位置にレーザーを集束することである。大抵のポリマー材料がレーザーエネルギーを吸収しないので、各位置に吸収性材料を存在させることが必要であろう。そうでなければ、レーザーエネルギーが布の糸に集束する所で、レーザーエネルギーによって溶け出しおよび/または分子配向ロスを生じるであろう。
【0042】
吸収剤を組み入れる一つの方法は、糸自体の押出しのとき用いるポリマー樹脂の一部とすることである。そうすれば、必要な各位置にレーザーを集束させ、局所的に溶融および結合を生じさせることができる。
【0043】
吸収剤を組み入れる他の方法は、糸を織って布にする前に、吸収性の材料を糸に塗布することである。その場合、レーザーエネルギー吸収性の材料、たとえば特定の染料を布に織る前に糸上に染料コーティングで施すか、あるいは、布を織り縫合した後に正確に形作ったパターンとしてスプレーする。次の操作は、必要な各位置にレーザーを集束させることであり、それにより、局所的に溶融を生じさせる。
【0044】
吸収剤を組み入れるさらに他の方法は、布における目的とする別の各位置に吸収剤を塗るか付着させることである。米国公開第2004/0126569号公報が、別の位置に樹脂材料を付ける方法を示している。そこでは、レーザーエネルギー吸収性の材料を制御しつつ布上に付着し、所定のパターンを作り出している。
【0045】
さらにまた、吸収剤を組み入れる他の方法は、たとえば、織り、かつ縫合した布の縫合領域のような目的とする場所のCDバンド(帯)に吸収性の材料をスプレーすることである。
【0046】
レーザーエネルギー吸収性の材料を用いる基本的な原理といえば、必要な場所における糸のコアを明らかには熱することなく、糸の表面を加熱するエネルギーのもとを与えることである。そのようにして、糸の表面を加熱し、糸の断面のすべてを溶融することはなく、表面を他の糸に溶融し結合することができる。たとえば、図3に示すように、CD糸14およびMD糸20とを織り、かつ縫合した布の縫合領域10における、二つの隣接した糸は、それらの表面にレーザーエネルギー吸収性の材料をもち、しかも、互いに接触している。そのような糸は、適切に制御したレーザー源の照射を受けると、一体に溶融および結合する。もし、過剰なレーザーエネルギーが与えられると、糸は破壊するように溶けるか、蒸発するだろう。また、もし過小なエネルギーが与えられるとすれば、繊維表面は充分には加熱されず、溶融および一体に結合することはないだろう。適切なエネルギー量が与えられると、糸は、実質的な強度を失うことなく、一体に結合することになる。
【0047】
図4aは、多層の成形布のSEM(走査型電子顕微鏡)写真であり、溶媒中に分散したレーザー吸収性の材料を一部にコーティングしたものを示す。溶媒を乾燥した後、布にYAGレーザーを225ボルトで1msパルス照射した。レーザーの集束ビーム径は300ミクロン程度である。このシングルパルスを多数生じさせ、構造物の全体を通し、レーザービームを照射したエリアを結合する。縦方向と横方向のモノフィラメントとの間に、微小な結合が明確に形成されている。この写真のモノフィラメントは、ポリエチレンテレフタレート(PET)製である。
【0048】
図4bは、パルスの長さを1.1msまで増大した場合の布を示す。パルスを長くしたことにより、ダメージ28が生じていることに気付くであろう。
【0049】
図4cは、第1のサンプルと同様に作ったものであるが、違う点は、コーティングした布の上下面をアセトンで湿らせた布切れでぬぐった点である。この布切れでぬぐったことにより、布サンプルの上下面からレーザー吸収性の材料の多くが取り除かれる。その結果、布の外側表面での溶融はほとんどなく、糸の内部が溶融することになる。そのように溶融したものの断面構造を図14aおよび14bに示す。それらの図には、構造物の内部の溶融が見られ、布の外部表面の溶融あるいは結合はほとんど見られない。
【0050】
この発明の一実施例において、この技術を溝付きのPETモノフィラメントで構成した組み(編み)構造物100に適用した。組み構造物100は、径6mmのポリオレフィン管材料上に形成される。図13aが、溝付きのPETモノフィラメント50の断面を示している。
【0051】
溝付きのPETモノフィラメントの名目上の径は9.27mmである。モノフィラメントに溝があることにより、組み構造物100の互いに交差する二つのモノフィラメント間のエリアにレーザー染料を立ち入らせることができる。この交差は、織り布で生じる交差に非常に似ている。モノフィラメントから作る一般的なテキスタイル構造物において、モノフィラメントは、一般的に、溝のない(表面がなめらかな)丸か矩形の断面形状である。溝付きのモノフィラメントは、レーザーエネルギー吸収性の材料を捕らえるための手段として用いる。表面がなめらかなモノフィラメントは、コーティングを捕らえるエリアおよび表面積が小さい。その上、表面がなめらかなモノフィラメントを交差するテキスタイル設計、たとえば織り布に用いるとき、表面がなめらかな二つのモノフィラメント間の自由なスペースがほとんどないか全くない。そのため、レーザーエネルギー吸収性の材料、たとえば特定の染料がモノフィラメント間のエリアに侵入しそうもない。それに対し、溝付きの二つのモノフィラメント間の交差部、あるいは溝付きのモノフィラメントと表面がなめらかなモノフィラメントとの交差部に施される染料は、どれもモノフィラメント間のエリアに侵入する。それは、コーティングが溝に沿って流れ、モノフィラメント間のスペースを満たすからである。このように、溝付きのモノフィラメントを用いることにより、レーザー染料を交差する二つのモノフィラメント間のスペースに配置することができる。
【0052】
上のことから分かるように、この技術を図13bに示す溝付きモノフィラメント50からなる組み構造物100に適用した。レーザーで結合した後、構造物の交差部60はしっかりと結合されていた(図13c参照)。組んだ物をその軸線方向に圧縮および伸長して曲げても、結合が壊れることは何らなかった。比較のために、表面がなめらかなPETモノフィラメントを用いて同様の組み構造物を用意した。結合した後で、同様に軸線方向に圧縮および伸長した。その圧縮および伸長の結果、交差部の結合の多くが壊れた。それらの結合の壊れから、表面がなめらかなモノフィラメントで形成した微小結合(micro-welds)よりも、溝付きモノフィラメントで形成した方がより耐久性のある微小結合を得ることができることが分かった。
【0053】
以上に述べた微小結合の技術を用いて、たとえば成形布の縫合の強度および/または耐久性を増すことができる。今までの一般的な縫合においては、繊維/糸のけん縮およびフリクションに頼って、縫合を保持している。そのような縫合において、縦方向と横方向とを一体に結合することによって、縫合の強度および/または耐久性を増すことができる。
【0054】
この微小結合の技術は、また、新しい布設計のものを商品化させることにもなる。過去においては、いわゆる「ストレート縦糸(straight warps)」をもつ布の織り設計がずっと検討されてきた。ただ、縫合のMD糸は、縫合を一体に保持する上で必要なだけの充分なけん縮およびフリクションをもたない。そのため、ストレート縦糸の設計には問題がある。その反対に、ストレート縦糸の設計は、大変魅力的な面をもつ。その面とは、縦糸を充分にけん縮して強い縫合を形成する一般的な成形布の設計と比較して、引張応力(モジュラス)の改良を図ることができることである。「ストレートライン」の考え方による別の例は、多層布の中央にストレート縦糸を存在させるものである。縦糸は、縫合を作るためのけん縮およびフリクションが不充分である。ここで述べる微小結合の技術を利用することにより、ストレート縦糸の布設計で縫合を形成することができる。縦糸と横糸モノフィラメントとの間の微小結合を行うことによって、布構造物の縫合内の末端の周りおよびクロスするようにストレスを移すことができる。MDあるいはCDのいずれかに非常に細い糸を用いたり、あるいは、比較的に低い打込数(粗い布を意味する)を用いるような他の場合には、縫合がレーザー微小結合によって強化されていない限り、適切な縫合強度を得ることができないだろう。
【0055】
上に述べたように、微小結合を行う他のアプローチでも、レーザー染料あるいはレーザー顔料を利用する。この場合、レーザー染料あるいはレーザー顔料を、モノフィラメントを構成する材料の中に分散する。一般的に、レーザー染料あるいはレーザー顔料の濃度は0.4%以下である。レーザー染料あるいはレーザー顔料が存在することにより、エネルギー源の周波数でモノフィラメントを「エネルギー吸収性」にする。好ましくは、レーザーを放射するレーザーエネルギー源の設計を、特定の位置に正確な量のエネルギーを与えられるようにするのが良い。図4dは、0.3%のレーザー染料(エポリン社のエポライト2057)を含有するポリエステルモノフィラメント14であって、「非吸収性の」ポリエステルモノフィラメント20に結合したものを示す。二つのモノフィラメントは、互いに90°に交差した状態で接触するように置かれている。二つのモノフィラメントの交差部に、YAGレーザーを223ボルトで1msパルス照射した。集束したレーザービームの径はおよそ300μmであった。そのパルスの一発で二つのモノフィラメントを一体に結合した。「非吸収性の」モノフィラメント20は、レーザー染料あるいは顔料なしで作り、エネルギー源の周波数で非吸収性である。
【0056】
別の例では、着用側のモノフィラメントとして0.4%のレーザー吸収剤を含むCDPETモノフィラメントで布を織った。布の他のモノフィラメントは、すべて「非吸収性の」PETモノフィラメント20で構成した。布の300μm径のエリアをYAGレーザーを225ボルトで1msパルス照射した。照射エリアは、CDモノフィラメントと二つのMDモノフィラメントとの間の交差部であった。図4eに示すように、CDモノフィラメント14は、溶融しMDモノフィラメント20に結合した。
【0057】
以上に述べた技術のどれかを織り布の縫合領域に利用すれば、縫合における末端の抜出しおよび/または穴傷などの問題を事実上除去することができる。図2における2a〜2dは、この好ましくない現象を示し、二つの布の端の末端部が、縫合領域および危険限界12で「オーバーラップ」している(図2の2a)。そのような所で、それらの端はMD方向に「抜け出し」、それらの端自体が紙側の表面から突き出るであろう。ついには、布における局部的なストレスが増大することに起因し、オーバーラップするエリアの滑りが、矢印で示すように増す(図2の2b)。そして、滑りが完結し、布の縫合領域のオーバイラップ部に穴16が現れる(図2の2c)。したがって、縫合のオーバーラップ部分について、一般的に、接着剤18を手で付けることにより補強し(図2の2d)、強度を大きくする。しかし、接着剤を付けることは労力がいるし、時間がかかる処理作業である。また、精度が低いため、接着剤をオーバーラップする糸だけに付けることが難しい。その上、接着剤は、布の屈曲および/または摩耗によって結局は機能しなくなる。
【0058】
レーザー吸収性の材料については、多くのものを選択することができる。最も早期のものはカーボンブラックであった。材料の選択、材料の量、および材料の位置のすべてが、結果として生じる溶融結合の特性を決める。
【0059】
上に述べたように、糸の溶融は、レーザーエネルギー吸収性の材料をコーティングし、しかもまた、適正なレーザーエネルギー源を照射した表面で生じる。
【0060】
溶融するエリア、あるいはその広さを制御するために、水溶性の特定の染料を用いることが有益であることが分かった。
【0061】
そのような染料を水溶液から布に塗布し、乾かすと、染料がモノフィラメント間のすき間に移動し、互いに接触する。これは、有機溶媒にだけ溶ける他のレーザー染料と対照をなしている。それらの非水溶性の染料は、モノフィラメントの表面全体に付着し、モノフィラメントの表面全体で溶融を生じる。
【0062】
図5aは、非水溶性のレーザー染料で生じたことを示す。レーザーエネルギーを照射した後、モノフィラメント20の表面全体が溶融していることに留意されたい。これについては、溶融しないモノフィラメント30の滑らかで光った表面と対照的なモノフィラメント20のまだらな表面によって観察される。この場合に用いた染料は、アセトン溶液から塗布したエポライト2057であった。
【0063】
図5bは、水溶性のレーザー染料(エポライト2340)で生じたことを示す。モノフィラメント間のすき間にレーザー染料を含ませ、レーザーエネルギーを照射して結合したが、モノフィラメント20の表面は滑らかで光っていることに留意されたい。この結果は、非水溶性のレーザー染料を越えた大きく、しかも思いも寄らない改良である。成形布の縫合に関し、水溶性染料によってモノフィラメントの溶融を低減することができるため、縫合領域における歪みが少なくなり、その代わりレーザー結合から生じるシート模様付けの可能性を減じる。
【0064】
しかし、どちらのタイプの染料を用いるかは、選択の問題である。MD糸とCD糸との間の交差部を密にすることは、たとえば、成形やTAD布に支持される。というのは、密な交差部は、溶融のときに材料の流れを生じ、通常は表面張力によってそこに存在するであろう水の量を減じるからである。運ばれる水の量が減ると、製紙におけるエネルギーコストを低減する。密な交差部は、また、MD糸とCD糸とによって形成される交差部の間のピンチ部に汚れがたまることを減らすという意義がある。
【0065】
明らかに、レーザー結合による縫合は、今までの一般的な製造技術で得た縫合よりも、強度および大きさの安定性の点で勝っている。この技術によってより強い縫合を得ることができるが、この技術は、また、今までの一般的な成形布パターンと一緒に、新しい特徴のものをも製造することができる。これは、標準ヒートセッチングの実務に結合の縫合技術が影響を与えたことにより成し遂げられる。今までのヒートセッチング実務には、大きさの安定性と縫合強度との間のかね合いに起因し、制限がある。布に大きな伸び(MDモノフィラメントのけん縮除去)を生じるような粗いヒートセッチング条件を用いるとすれば、その結果として生じる製品は、縫合強度が低く、しかし、大きさの安定性は高い。一般的に、粗いヒートセッチング条件は、縫合強度の低すぎる結果を生じるので、用いられていない。レーザー結合の縫合技術を利用するとき、縫合強度の低さを結合による縫合強度によって補うので、粗いヒートセッチング条件を用いることができる。これは、結果として生じる構造物が、今までの一般的な布より高い大きさの安定性をもつことを意味する。これは、また、MDおよびCDモノフィラメント間により大きな平面差を生じることを意味する。このことは、着用側には利点である。というのは、そのことによって、大きな径のモノフィラメントを使用することに頼ることなく、布の着用耐性を増すことができるからである。その代わり、それによって、布の厚さを薄くし、たとえば、成形布が運ぶ水を減らすことになる。
【0066】
上に述べたように、いろいろな方法によって、織り構造物の交差部、あるいは織り構造物における隣接した糸間の接触部をレーザー結合あるいは溶融によって微小結合することが考えられる。
【0067】
縫合領域における糸のフリクションとけん縮とにだけに依存し、縫合の完全性を得ることなく、結合によって、MD方向のストレスを末端の周りあるいはそれをクロスするように移すことができる。結合については、いろいろなパターンで行うことができ、縫合の全領域を完全に(100%)結合することも、定まった配列をスポット溶接することも、そして、一群のCDストライプを溶接することもできる。それらの組合せ、たとえば、スポット溶接と一群のCDストライプの溶接との組合せをすることもできる。製紙機械のロールが整列していないため、たとえば成形布縫合領域の機械的な特性に対し、斜めのことも見込んでおかなければならない。この点、製紙処理で使用する際、布が曲がったりしわを生じたりする問題を起こすことなく、縫合が布の平面の剪断力に対応できなければならない。それらの全体を結合(縫合の100%結合)した縫合領域は、平面内の剪断による変形に対して不動かつ高い耐性を示す。
【0068】
一例として、成形布の縫合に対する理想的な結合パターンには、二つのゴールがある。第1のパターンは、布縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにしたものである。変形例として、互いに交差する縦糸と横糸のような単一の糸の長さ方向に沿って多数の結合を行い、交差部で同じ負荷をたくさんの縦糸および横糸に分配させ、それにより、布の歪みをなくすようにすることができる。これらの結合によって、製紙機械上で非常に耐久性のある縫合を得ることができる。第2のパターンは、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路があるものである。結合しない布のこれらの隣接経路によって、縫合の平面内の剪断特性を布本体の平面内の剪断特性と同様にすることができる。この特徴によって、縫合を含む布を製紙機械上の整列しないロールが生じる悪分布なストレスにうまく対応させることができる。もしも布がストレスの悪分布に対応できないならば、布は製紙機械上で曲りあるいはしわを生じてしまうだろう。
【0069】
結合しない縦糸の隣接経路は、縦方向について対称になるようにするのが好ましい。そうすれば、平面内の剪断特性が縦方向について対称になる。
【0070】
次に、パターンについてさらに詳しく述べよう。結合した縫合におけるストレス移動について、縦方向のストレスを布の結合および引き続くモノフィラメントを通して各端部周りに移動(伝達)させるため、いずれの端部もその長さ方向に沿うある位置(好ましくは、各端の所あるいはその近く)で結合すべきである。今までの一般的な織り縫合におけるストレスの移動については、縦糸とシュートモノフィラメントとの間のモノフィラメントのけん縮およびフリクションを利用しているが、このタイプのストレス移動は無視する。図6aは、二つの縦糸の端14の単一の末端を示し、また、図6bは、この末端のいずれの側をも結合する二つのスポット溶接を示す。
【0071】
図6cは、この末端の周囲あるいはクロスしてストレスが移動する最小の経路を示す。各経路は、連続的なモノフィラメントと、モノフィラメントを一体に結びつける結合との組合せによって定まる。図6cの例では、等しい長さの二つの経路があることが分かる。
【0072】
図6bに示すスポット溶接の位置に代わるものを図6dに示す。この図6dでは、スポット溶接が実際の末端からより一層離れている。末端の周りのストレス移動の最小経路が、図6dに示されている。これらの図に示すストレス移動のロジックを結合パターンのどうようなものにも適用することができる。末端の周りのストレス移動は、縫合の一方の側から他方の側へ連続する経路であって、その経路が連続的なモノフィラメントと、縦糸および横糸モノフィラメントを連結するスポット溶接から構成されるものである限り、好結果を生む。
【0073】
また、末端について、図7aに示すように、互いに側を通る二つの縦糸端14で末端を構成することができる。この末端は図6bあるいは図6dに示すものと同じ方法で結合することができるが、図7bに示すように、二つの縦糸端14を一体に結合することもまたできる。この場合、ストレスは、図7cに示すように、一つの縦糸モノフィラメントから他の縦糸モノフィラメント14へとまっすぐな経路で移動する。
【0074】
この発明の一実施例について、図8が、支持シュートバインダー(「SSB」)成形布のための末端パターン24を示す。この図の上下方向が縦方向(MD)になる。図の中の各ドットが、単一の縦糸端を表す。パターンが規則的であり、末端が大きなエリアに広がっていることに気付くであろう。縫合の縦方向の長さは、およそ3インチ(7.6cm)である。図8の上と下の点線によって、縫合の二つの側を示している。
【0075】
図8の縫合の結合について、縫合の全領域を完全に(100%)結合26することも、定まった配列をスポット溶接することも、そして、CDストライプ群を溶接することもできる。それぞれの場合について、以下に述べる。第1に示すものは、図9の100%結合26である。はっきりしていることは、この結合パターンが、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路を与えないことである。このパターンは布を堅くし、平面内の剪断剛性を大きくし、そして、製紙機械で運転する際、曲りやしわに対する布の耐性を減じる。しかし、結合パターンは、縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにすることは保証しない。これが、縫合の耐久性を非常に大きくすることになる。
【0076】
次の図の図10は、CD結合ストライプ群26を示す。この結合パターンは、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路を与えないが、この結合パターンは、縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにすることを保証する。しかし、結合ストライプ間の非結合ストライプが、布の歪みをある程度斜めに向けうまくあしらうことに留意されたい。いろいろと試みると、このようなパターンが、必要とする縫合特性と、処理の複雑さおよびコストとの間の見事なバランスを示す。
【0077】
したがって、いくつかのCD帯(バンド、ストライプ)にレーザーエネルギー吸収性材料を伴う布についての基礎的な処理工程は、次のとおりである。
1.縫合してあるが、仕上げ前の布を準備する工程
2.縫合を洗浄する工程
3.布を適切な装置に装着し、特定レベルの張力をかける工程
4.縫合に対し、レーザー染料(目的に合った特定のもの)をスプレーし、余分な染料を除去する工程
5.特定の方法で縫合を結合する工程
6.布をある幅に切断する工程
7.エッジ(端)を仕上げる工程
8.布を荷造りし、運送する工程
【0078】
CD帯にレーザーエネルギー吸収性材料を伴う布を形成する処理工程を上に列挙したが、その工程順は全くの一例であり、この発明はそれに限定されるわけではない。
【0079】
しかし、前にも述べたように、個々の位置のスポット溶接を利用する。図11は、スポット溶接26の一群を示す。この結合パターンは、縦方向における縫合の一方の側から他方の側へと伸びる、結合しない縦糸とシュートとの隣接経路を提供する。このパターンは、スポット溶接が存在する場所近くの布強度を高める。このように特定の場所を結合することは、縫合領域の平面内剪断剛性を大きく増すことはない。結果的には、この縫合設計は、製紙機械を運転するとき、曲りやしわに対し最も良く耐えることができる。しかし、この特別なスポット溶接パターンは、縫合における縦糸モノフィラメントのそれぞれのすべての端部をシュートモノフィラメントに対して結合し、それにより、縦方向のストレスをそれらの結合、ならびに、引き続く縫合における整合する周囲のモノフィラメント、あるいは対応する縦糸端を通して移動できるようにすることは保証しない。そうなるのは、溶接(結合)部分が縦方向の各結合の列間にスペースをもって並んでいるからである。その結果、縫合の部分が、フリクションに依存して、縦方向ストレスを縫合の一方の側から他方へと移すことになる。これは、縫合の耐久性を減じる。
【0080】
図12は、好適な結合パターン26であって、結合しない縦糸の隣接経路を得ることができ、しかも、すべての縦糸の末端を結合したものを示す。このパターンは、平面内の剪断特性と縫合の耐久性との望ましい組合せを成し遂げる。望ましい結果を得るために、すべての布設計および縫合パターンが要求するのは、様式化された特定のスポット溶接パターンである。
【0081】
スポット溶接(結合)については正にレーザーエネルギー自体で達成することができるが、好ましい方法は、必要とする正確な位置に付着したレーザーエネルギー吸収剤を用いることであり、それによって、糸の歪みおよび糸を構成するポリマーの分子配列の喪失を最小限にすることができる。
【0082】
したがって、この発明の利点をまとめると、次のとおりである。
・ 縫合強度および耐久性
・ 縫合の強固さ−たとえば紙の製造で用いる高圧シャワーや摩耗性充てん材のような、摩耗環境に耐える能力
・ MD方向が短い縫合
・ 縫合可能な新しい布構造物を作り出すことができること
・ 製紙のような湿った環境において布を乾燥走行させること
・ 布特性を高めるための処理(たとえば、ヒートセッチング)の広がり
【0083】
したがって、レーザー結合を用いる結果、MD方向の長さが同じ縫合について、より強くそして/またはより耐久性のあるものを得ることができる。また、好ましい形態として、MD方向に測った縫合幅あるいは広がりが、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部となるようにしたものを得ることができる。その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である。たとえば、今までの縫合方法によるMD方向の広さを「X」とすると、この発明によって形成した縫合の広さは、たとえば0.7X以下、好ましくは0.5X以下、最も好ましくは0.3X以下であり、大きさが小さくとも同等の強度をもつ。平織り布の縫合について述べてきたが、この発明のレーザー結合技術は、他のタイプの縫合にも適用することができる。たとえば、ピン縫合あるいはインライン縫合に適用することができ、それらにおいて、縫合ループ自体を形作り、布本体に織り戻されるMD糸を、CD糸に対し結合あるいは溶融し、使用時に作用する張力で抜き出されることを防止し、それによって、縫合強度、およびストレスあるいは負荷の分布の不均一性を改善することができる。
【実例】
【0084】
例1
レーザーエネルギー吸収性材料を含む糸で、二層の布を織り縫合した。レーザーエネルギー源を布の一つの領域に照射し、別の領域は溶融しないものとして残した。そして、対応する各領域からサンプルを採取し、破壊強度を測った。結合したものの破壊強度に53%の増大が見られた。
【0085】
例2
いろいろな設計の三層SSB布を織り、縫合には、必要な位置にレーザーエネルギー吸収性材料を配置した。縫合の一つの領域にレーザーを照射した後、溶融しない部分と溶融した部分の各サンプルを採取した。溶融(結合)したものの縫合強度が129%に接近するほどに増大した。
【0086】
例3
他の例において、レーザーエネルギー吸収性材料を含む糸でMD方向の縫合長さが短い三層SSB布を形成した。そして、縫合の一部にレーザーエネルギーを照射した。溶融しない部分と溶融した部分の各サンプルを採取しテストしたところ、溶融(結合)したものの破壊強度に47%の増大が見られた
【0087】
例4
三層SSB布を織り縫合した。その布の縫合領域には、必要な位置にレーザーエネルギー吸収性材料が存在する。適切なレーザーエネルギー源で縫合を照射した。そして、その布を試験機上、800mpm(m/分)で45gsm(g/平方メートル)の新聞紙を作るギャップ成形機の運搬位置で運転走行させた。試験の条件、たとえば布の張力、カウンターブレード負荷、および真空レベルを変化させた。用いた条件の全範囲において、縫合からはシート排水模様は何も検出されなかった。
【0088】
こうして、この発明の目的および利点を理解されたであろう。この発明の好適な実施例について図面を参照しながら詳しく説明したが、この発明は、そのような実施例に限定されない。当業者は、特許請求の範囲に定めた考え方から離れることなく、いろいろな変形や修正を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業布の一部を溶融結合する方法であって、次の各工程を備える方法。
(a)レーザーエネルギー吸収性の材料を伴う前記布を準備する工程。
(b)前記布の離れた位置にレーザー源を集束し、それによって、前記離れた位置で部分的に溶融し、布を永続的に結合する工程。
【請求項2】
前記離れた位置は、布の縫合における糸の交差部か、縫合の末端部のいずれか、または、それら両者の組合せのいずれか一つである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、制御して前記布上に付着し、所定のパターンを作り出すようにする、請求項2の方法。
【請求項4】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、前記工業布を構成するために用いる糸を形成するポリマーマトリックス中に含まれる、請求項2の方法。
【請求項5】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、前記工業布を構成する糸の上に付着したコーティングである、請求項2の方法。
【請求項6】
前記コーティングは、前記布を織る前に、前記糸上に染料コーティングで得るか、あるいは、前記布を織り縫合した後で、制御された正確なパターンの中にスプレーすることによって得るかのいずれかである、請求項5の方法。
【請求項7】
前記離れた位置は、前記布の縫合領域内にあり、その縫合領域のMD方向に測った縫合幅あるいは広がりが、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部となるようにしたものであり、その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である、請求項1の方法。
【請求項8】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、縫合のすべての末端位置を被うことはないパターンとして与えられる、請求項3、4あるいは5のいずれか一つの方法。
【請求項9】
前記溶融接合は、前記布の横方向に帯として行われる、請求項1の方法。
【請求項10】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、水溶性の染料である、請求項1の方法。
【請求項11】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、溶媒あるいは水溶性の染料であり、溶融結合のとき、それぞれ糸の表面を粗くするか、滑らかにする、請求項1の方法。
【請求項12】
工業布の縫合であって、前記布の縫合領域に複数の溶融結合位置があり、
前記溶融結合を行う領域は、レーザーエネルギー吸収性の材料を付着し、その材料にレーザー源を集束し、それによって、その集束した位置で前記布を部分的に溶融し永続的に結合させ、
しかもまた、前記溶融結合が糸の表面に形成される、
ことを特徴とする改良された縫合。
【請求項13】
前記縫合は、開放性、接触位置、および、布本体と同じファイバサポートインデックス(FSI)といった諸特性をもつ、請求項12の縫合。
【請求項14】
前記縫合の強度および耐久性は、同じデザインおよび長さをもつ一般の縫合よりも大きい、請求項12の縫合。
【請求項15】
前記縫合のMD方向に測った縫合幅は、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部の大きさであり、その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である、請求項12の縫合。
【請求項16】
前記溶融結合した縫合領域は、末端の引き戻しをなくす、請求項12の縫合。
【請求項17】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、前記布を織る前に、前記糸上に染料コーティングで得るか、あるいは、前記布を織り縫合した後で、所定のパターンの中に制御しつつ付着させるかのいずれかである、請求項12の縫合。
【請求項18】
前記溶融接合は、前記布の横方向に帯として行われる、請求項12の縫合。
【請求項19】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、水溶性の染料である、請求項12の縫合。
【請求項20】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、溶媒あるいは水溶性の染料であり、溶融結合のとき、それぞれ糸の表面を粗くするか、滑らかにする、請求項12の縫合。
【請求項21】
前記糸の形状、大きさ、特性は、溶融結合しない糸と同じであるか、実質的に同じである、請求項12の縫合。
【請求項22】
前記離れた位置は、単一の縦糸あるいは横糸の長さ方向に沿う、多数の交差部である、請求項1の方法。
【請求項23】
前記溶融結合は、スポット溶接と、布の横方向の帯との組合せとして行われる、請求項1の方法。
【請求項24】
前記溶融結合位置は、単一の縦糸あるいは横糸の長さ方向に沿う、多数の交差部である、請求項12の縫合。
【請求項25】
前記溶融結合は、スポット溶接と、布の横方向の帯との組合せとして行われる、請求項12の縫合。
【請求項26】
前記布は、溝付きの糸を備える、請求項1の方法。
【請求項27】
前記縫合は、ピン縫合あるいはインラインらせん縫合のいずれか一つである、請求項2あるいは7の方法。
【請求項28】
前記布は、溝付きの糸を備える、請求項12の縫合。
【請求項29】
前記縫合は、ピン縫合あるいはインラインらせん縫合のいずれか一つである、請求項12の縫合。
【請求項1】
工業布の一部を溶融結合する方法であって、次の各工程を備える方法。
(a)レーザーエネルギー吸収性の材料を伴う前記布を準備する工程。
(b)前記布の離れた位置にレーザー源を集束し、それによって、前記離れた位置で部分的に溶融し、布を永続的に結合する工程。
【請求項2】
前記離れた位置は、布の縫合における糸の交差部か、縫合の末端部のいずれか、または、それら両者の組合せのいずれか一つである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、制御して前記布上に付着し、所定のパターンを作り出すようにする、請求項2の方法。
【請求項4】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、前記工業布を構成するために用いる糸を形成するポリマーマトリックス中に含まれる、請求項2の方法。
【請求項5】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、前記工業布を構成する糸の上に付着したコーティングである、請求項2の方法。
【請求項6】
前記コーティングは、前記布を織る前に、前記糸上に染料コーティングで得るか、あるいは、前記布を織り縫合した後で、制御された正確なパターンの中にスプレーすることによって得るかのいずれかである、請求項5の方法。
【請求項7】
前記離れた位置は、前記布の縫合領域内にあり、その縫合領域のMD方向に測った縫合幅あるいは広がりが、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部となるようにしたものであり、その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である、請求項1の方法。
【請求項8】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、縫合のすべての末端位置を被うことはないパターンとして与えられる、請求項3、4あるいは5のいずれか一つの方法。
【請求項9】
前記溶融接合は、前記布の横方向に帯として行われる、請求項1の方法。
【請求項10】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、水溶性の染料である、請求項1の方法。
【請求項11】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、溶媒あるいは水溶性の染料であり、溶融結合のとき、それぞれ糸の表面を粗くするか、滑らかにする、請求項1の方法。
【請求項12】
工業布の縫合であって、前記布の縫合領域に複数の溶融結合位置があり、
前記溶融結合を行う領域は、レーザーエネルギー吸収性の材料を付着し、その材料にレーザー源を集束し、それによって、その集束した位置で前記布を部分的に溶融し永続的に結合させ、
しかもまた、前記溶融結合が糸の表面に形成される、
ことを特徴とする改良された縫合。
【請求項13】
前記縫合は、開放性、接触位置、および、布本体と同じファイバサポートインデックス(FSI)といった諸特性をもつ、請求項12の縫合。
【請求項14】
前記縫合の強度および耐久性は、同じデザインおよび長さをもつ一般の縫合よりも大きい、請求項12の縫合。
【請求項15】
前記縫合のMD方向に測った縫合幅は、通常の縫合、つまりは、一般的に用いられる今までの技術で形成した同様な強度の縫合の一部の大きさであり、その一部の割合は、0.7以下、好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.3以下である、請求項12の縫合。
【請求項16】
前記溶融結合した縫合領域は、末端の引き戻しをなくす、請求項12の縫合。
【請求項17】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、前記布を織る前に、前記糸上に染料コーティングで得るか、あるいは、前記布を織り縫合した後で、所定のパターンの中に制御しつつ付着させるかのいずれかである、請求項12の縫合。
【請求項18】
前記溶融接合は、前記布の横方向に帯として行われる、請求項12の縫合。
【請求項19】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、水溶性の染料である、請求項12の縫合。
【請求項20】
前記レーザーエネルギー吸収性の材料は、溶媒あるいは水溶性の染料であり、溶融結合のとき、それぞれ糸の表面を粗くするか、滑らかにする、請求項12の縫合。
【請求項21】
前記糸の形状、大きさ、特性は、溶融結合しない糸と同じであるか、実質的に同じである、請求項12の縫合。
【請求項22】
前記離れた位置は、単一の縦糸あるいは横糸の長さ方向に沿う、多数の交差部である、請求項1の方法。
【請求項23】
前記溶融結合は、スポット溶接と、布の横方向の帯との組合せとして行われる、請求項1の方法。
【請求項24】
前記溶融結合位置は、単一の縦糸あるいは横糸の長さ方向に沿う、多数の交差部である、請求項12の縫合。
【請求項25】
前記溶融結合は、スポット溶接と、布の横方向の帯との組合せとして行われる、請求項12の縫合。
【請求項26】
前記布は、溝付きの糸を備える、請求項1の方法。
【請求項27】
前記縫合は、ピン縫合あるいはインラインらせん縫合のいずれか一つである、請求項2あるいは7の方法。
【請求項28】
前記布は、溝付きの糸を備える、請求項12の縫合。
【請求項29】
前記縫合は、ピン縫合あるいはインラインらせん縫合のいずれか一つである、請求項12の縫合。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図14a】
【図14b】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図14a】
【図14b】
【公表番号】特表2010−538177(P2010−538177A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524025(P2010−524025)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/010361
【国際公開番号】WO2009/032271
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(597098947)オルバニー インターナショナル コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/010361
【国際公開番号】WO2009/032271
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(597098947)オルバニー インターナショナル コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】
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