説明

製紙用表面サイズ剤および紙

【課題】機械的安定性、各種サイズ効果、および塗工時の低発泡性に優れる、エマルジョン型の製紙用表面サイズ剤を提供すること。
【解決手段】不飽和ジカルボン酸類およびα−オレフィン類を含み、かつスチレン類を含まない単量体群(a)を原料とする共重合体塩(A)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(B)を乳化重合してなるエマルジョン、を含有する製紙用表面サイズ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙用表面サイズ剤、および該製紙用表面サイズ剤を塗工してなる紙に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用表面サイズ剤は、原紙表面にほぼ100%歩留まるのでサイズ効果を効率よく発揮し、また、抄紙系の温度変化等の影響を受けにくいなど、種々の利点を有する。こうした製紙用表面サイズ剤は、一般に水溶液型とエマルジョン型とに大別できるが、後者は固形分を高く設定しても比較的低粘度であり、ハンドリング性に長ける等の利点を有する。
【0003】
かかるエマルジョン型の表面サイズ剤としては、例えばアニオン性やノニオン性の低分子乳化剤の存在下に各種不飽和単量体類を乳化重合してなるエマルジョンを用いたものが一般的であるが、サイズ効果が十分ではない。また、ロッドメタリングサイズプレスやゲートロール等のように強い剪断力を伴う塗工方式において、糟が多量に発生するなど、一般に機械的安定性が劣る場合がある。なお、この糟は、表面サイズ剤の希釈液が硬水系である場合に発生しやすく、例えば、希釈状態の表面サイズ剤を原紙に塗工する際に原紙から炭酸カルシウム等の填料が溶出するとその量が多くなる傾向にある。
【0004】
機械的安定性を改善する方法としては、例えば、前記低分子乳化剤と共に、各種の高分子量化合物を保護コロイドとして用いる手段が考えられる。具体的には、スチレン−マレイン酸系共重合体塩の存在下で、スチレン類等の疎水性不飽和単量体類のみを乳化重合してなるエマルジョンを含む表面サイズ剤が提案されている(特許文献1を参照)。しかし、前記機械的安定性がやや良好であるものの、紙へ塗工する際に強く泡立つなど操業上の問題があり、また、サイズ効果も不十分である。
【0005】
なお、特許文献1には他にも、保護コロイドとしてのα−オレフィン/マレイン酸系共重合体塩の存在下で、スチレン類等の疎水性不飽和単量体類のみを乳化重合してなるエマルジョンを含む表面サイズ剤も開示されている。しかし、サイズ効果がやや良好ではあるものの、前記機械的安定性が不十分である。
【0006】
他のエマルジョン型の表面サイズ剤としては、例えば、保護コロイドとしての不飽和塩基酸変性ロジンエステル存在下に、疎水性不飽和単量体類と親水性不飽和単量体類の双方を乳化重合してなるエマルジョンを含む表面サイズ剤が提案されている(特許文献2を参照)が、サイズ効果の点で不十分である。
【特許文献1】特開平8−246391号公報
【特許文献2】特開2005−171418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記機械的安定性および各種サイズ効果に優れ、かつ、紙へ塗工する際に泡立ちが少ない(以下、低発泡性という)、エマルジョン型の製紙用表面サイズ剤を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、特定の保護コロイドの存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類の双方を乳化重合してなるエマルジョンが、前記課題を解決できる製紙用表面サイズ剤に適していることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、不飽和ジカルボン酸類およびα−オレフィン類を含み、かつスチレン類を含まない単量体群(a)を原料とする共重合体塩(A)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(B)を乳化重合してなるエマルジョン、を含有する製紙用表面サイズ剤(以下、単にサイズ剤という);該サイズ剤を紙に塗工してなる紙、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のサイズ剤は、これをなすエマルジョンの機械的安定性が、特に硬水系の場合においても優れており、強い剪断力を伴う塗工方式においても糟を生じにくい。また、該エマルジョンは低発泡性であり、塗工時の操業性にも長ける。また、該サイズ剤は、前記各種サイズ効果(特にドロップサイズ度やペン書きサイズ度)に優れているので、該サイズ剤を塗工した紙は各種印刷用紙として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のサイズ剤は、前記したように、不飽和ジカルボン酸類およびα−オレフィン類を含み、かつスチレン類を含まない単量体群(a)を原料とする共重合体塩(A)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(B)を乳化重合してなるエマルジョンを含有するものである。
【0012】
当該共重合体塩(A)は、前記エマルジョンをなす粒子の保護コロイドないし分散剤として主に機能すると考えられる。本発明では、当該共重合体塩(A)と前記単量体群(B)とを組み合わせることによって、粒子径が相対的に小さなエマルジョンを得ることができ、その結果、該エマルジョンの機械的安定性や分散性が良好になるのであろうと考えられる。
【0013】
なお、「粒子径」とは、具体的にはエマルジョン粒子の平均一次粒子径をいい、例えば、動的光散乱法により測定できる。また、当該粒子径は、前記機械的安定性や低発泡性、サイズ効果等のバランスを考慮して、通常20〜80nm程度、好ましくは20〜70nm程度、更に好ましくは20〜60nmであるのがよい。なお、当該粒子径の測定機器は特に限定されないが、例えばレーザー粒径解析装置(製品名「LPA−3000/3100」、大塚電子(株)製)が挙げられる。
【0014】
該単量体群(a)のうち不飽和ジカルボン酸類としては、各種公知のものを特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、(無水)マレイン酸(無水マレイン酸またはマレイン酸をいう。以下、同様。)、マレイン酸中和塩、マレイン酸半エステル、マレイン酸半エステル中和塩、(無水)イタコン酸、イタコン酸中和塩、イタコン酸半エステル、イタコン酸半エステル中和塩、(無水)シトラコン酸、シトラコン酸中和塩、シトラコン酸半エステル、シトラコン酸半エステル中和塩などが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。なお、これらの中でも、後述するα−オレフィン類(特に、炭素数5〜22の直鎖状α−オレフィン)との重合性や、前記サイズ効果を考慮すると、マレイン酸、マレイン酸中和塩、マレイン酸半エステル、マレイン酸半エステル中和塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0015】
なお、前記中和塩の形成に用いる中和剤としては、アルカリ金属類〔水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等〕、アンモニア類〔アンモニア、炭酸アンモニウム等〕、炭素数1〜12程度の脂肪族アミン類〔モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノブチルアミン等〕、脂環族アミン類〔シクロヘキシルアミン等〕、芳香族アミン類〔アニリン等〕などが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。
【0016】
また、前記半エステルとは、前記不飽和ジカルボン酸類(カルボキシル基を二つ有するものに限る)と、炭素数1〜18程度のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい)を有するアルコールとをエステル化反応させてなるものをいう。当該アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0017】
該単量体群(a)のうちα−オレフィン類としては、各種公知のものを特に制限なく使用することができ、このものは分岐状、直鎖状、または環状のいずれかの形態であればよく、また、構成炭素数は5〜22程度、好ましくは12〜18である。該分岐状αオレフィンとしては、例えば、2,4,4−トリメチルペンテン−1、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が、た、該直鎖状α−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−テトラコセン、1−トリアコンテン等が、また、該環状α−オレフィンとしては、例えば、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン等が挙げられ、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。これらのなかでも、前記不飽和カルボン酸類との重合性や、エマルジョン粒子の分散性、前記サイズ効果等を考慮すると、該分岐状αオレフィンおよび/または直鎖状α−オレフィンが好ましい。また、該分岐状αオレフィンとしては、特に2,4,4−トリメチルペンテン−1が好ましく、該直鎖状α−オレフィンとしては、構成炭素数が5〜22程度、好ましくは12〜18の直鎖状α−オレフィンが好ましい。
【0018】
なお、本発明では該単量体群(a)として、必要に応じ、その他の各種不飽和単量体(以下、その他の不飽和単量体という)を併用できる。具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類(好ましくは、アルキル基の炭素数が1〜18であるもの)〔(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸N−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸N−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデセニル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等〕、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類〔(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等〕、(メタ)アクリルアミド類〔アクリルアミド、メタクリルアミド、および、N−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミドとして、(アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、およびN−シクロヘキシル置換アルキル(メタ)アクリルアミド等、ならびに、N−置換ジアルキル(メタ)アクリルアミドとして、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジダーシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等)〕、アミノアルキル系不飽和単量体類〔(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−メチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N−メチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノブチル等〕、ポリオキシアルキレン系不飽和単量体類〔ポリオキシアルキレン(メタ)アクリル酸エステル類、ポリオキシアルキレングリセリン(メタ)アクリル酸エステル類、ポリオキシアルキレンモノアルキル(メタ)アクリル酸エステル類、ポリオキシアルキレンモノアルケニル(メタ)アクリル酸エステル類、ポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシアルキレングリセリン(メタ)アリルエーテル等〕、スルホン酸系不飽和単量体類〔スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルアミド−N−メチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドフェニルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、(メタ)アクリル酸スルホ2−ヒドロキシプロピル等〕、硫酸エステル系不飽和単量体類〔(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルの硫酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル硫酸エステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレン硫酸エステル、硫酸(メタ)アリルエステル、アリロキシポリオキシアルキレン硫酸エステル等〕、ビニルエステル系単量体類〔プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等〕、(メタ)アクリルニトリル等のニトリル系単量体類、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸ベンジルエステル類を例示ができ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、その他の不飽和単量体としては、サイズ効果の観点より前記アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル類が好ましい。
【0019】
なお、該単量体群(a)にはスチレン類が含まれない。スチレン類が含まれると、得られる共重合体塩(A)の水溶液の粘度が高くなりすぎ、また、エマルジョンをなす粒子径も相対的に大きくなる傾向にあるため、前記機械的安定性やサイズ効果が得られ難くなる。該スチレン類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、クロルビニルトルエン等が挙げられる。
【0020】
該単量体群(a)における、該不飽和カルボン酸類、α−オレフィン類、およびその他の不飽和単量体の使用重量%は特に制限されないが、通常は、単量体群(a)を100重量%とした場合において、順に、20〜80重量%程度(好ましくは25〜75重量%程度)、80〜20重量%程度(好ましくは75〜25重量%程度)、0〜10重量%程度(好ましくは0〜5重量%)である。該不飽和カルボン酸類を20重量%以上、該α−オレフィン類を80重量%以下とする場合には、エマルジョン粒子の分散性がいっそう良好になる。また、該不飽和カルボン酸類を80重量%以下、該α−オレフィン類を20重量%以上とする場合には、前記サイズ効果がいっそう得られやすくなる傾向にある。
【0021】
該共重合体塩(A)は、各種公知の方法で製造できる。具体的には、例えば、前記不飽和カルボン酸類、αオレフィン類、および前記その他の不飽和単量体を、有機溶剤の存在下、通常80〜180℃程度において、2〜10時間程度重合反応させ、得られた共重合物を必要に応じて中和し、水で希釈することにより、水溶液状の共重合体塩(A)が得られる。なお、中和剤としては前記したものを用いることができる。
【0022】
該有機溶剤としては、具体的には、例えば、アルコール類〔エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等〕、低級ケトン類〔アセトン、メチルエチルケトン〕、芳香族炭化水素類〔トルエン、ベンゼン等〕、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。
【0023】
重合反応においては、各種公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。具体的には、例えば、無機過酸化物類〔過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等〕、有機過酸化物類〔t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等〕、アゾ系化合物〔2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等〕などが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。その使用量は、単量体群(a)を100重量%とした場合において、通常0.01〜5重量%程度である。
【0024】
また、共重合体塩(A)の分子量を調整する目的で、各種公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、例えば、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタンなどが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。その使用量は、単量体群(a)を100重量%とした場合において、通常0.01〜5重量%程度である。
【0025】
共重合体塩(A)の物性は特に限定されないが、例えばpHが通常7〜10程度、粘度(20重量%の水溶液の場合における、B型粘度計による25℃での測定値をいう)が通常20〜1000mPa・s、数平均分子量が通常1000〜100000程度である。
【0026】
前記単量体群(B)には、前記したように、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類の双方が含まれる点に特徴がある。当該単量体群(B)成分、前記共重合体塩(A)の存在下で乳化重合することにより、本発明のサイズ剤をなすエマルジョンの粒子径が相対的に小さくなり、前記機械的安定性(特に硬水系における機械的安定性)が向上すると考えられる。
【0027】
該単量体群(B)のうち親水性不飽和単量体類とは、具体的には、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1つ、および親水性官能基を少なくとも1つ有する不飽和単量体類をいう。該重合性炭素−炭素二重結合としてはビニル基や(メタ)アクリロイル基が、また、該親水性官能基としては、アミド基、カルボキシル基、および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
該親水性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、および不飽和モノアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。該(メタ)アクリルアミド類とは、前記したものと同様であり、エマルジョンの機械的安定性、特に硬水系における機械的安定性を考慮すると、前記アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドが好ましい。該不飽和カルボン酸類としては、前記不飽和ジカルボン酸類、および各種公知の不飽和モノカルボン酸類〔アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびこれらの中和塩等〕が挙げられ、これらの中でも、エマルジョンの機械的安定性が良好になることから該不飽和モノカルボン酸類、特に、アクリル酸、アクリル酸中和塩、メタクリル酸、およびメタクリル酸中和塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。該不飽和モノアルコール類としては、前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類や、アリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、エマルジョンの機械的安定性が良好になることから、当該(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類が、特に(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。なお、これらのうち2種以上を用いる場合におけるそれぞれの使用量は特に制限されず、エマルジョン粒子の分散性等を考慮して適宜決定できる。
【0029】
該単量体群(B)のうち疎水性不飽和単量体類とは、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1つ有し、かつ、前記親水性官能基を有しない不飽和単量体類をいう。具体例としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、α−オレフィン類、ニトリル系単量体類、およびスチレン類からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でもサイズ効果の観点より、スチレン類および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステル類が好ましく、特に、両者の併用が好ましい。なお、これらのうち2種以上を用いる場合におけるそれぞれの使用量は特に制限されず、エマルジョン粒子の分散性等を考慮して適宜決定できる。
【0030】
また、該単量体群(B)には、サイズ効果を高める目的で、必要に応じて各種公知の架橋性不飽和単量体類を含めることができる。なお、該架橋性不飽和単量体類とは、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ、具体的には、2〜4つ有する不飽和単量体類をいう。例えば、2官能性の架橋性不飽和単量体類としては、ビス(メタ)アクリルアミド類〔N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド等〕、ジビニルエステル類〔アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、フタル酸ジアリルエステル等〕、ジ(メタ)アクリレート類〔エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等〕、その他、ジアリルジメチルアンモニウム、ジビニルベンゼン等が挙げられる。また、3官能性の架橋性不飽和単量体類としては、1,3,5トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、トリアリルトリメリテート、N,N−ジアリルアクリルアミド等が挙げられる。また、4官能性の架橋性不飽和単量体類としては、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等が挙げられる。これらは、一種を単独でまた二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、エマルジョンを製造する際の反応制御が容易になることから、前記2官能性の架橋性不飽和単量体類、特に、ビス(メタ)アクリルアミド類および/またはジ(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0031】
単量体群(B)における該親水性不飽和単量体、および疎水性不飽和単量体、ならびに架橋性単量体類の使用重量%は特に制限されないが、通常は、単量体群(B)を100重量%とした場合において、順に、1〜30重量%程度(好ましくは3〜20重量%)、65〜99重量%程度(好ましくは77〜96.99重量%)、および0〜5重量%程度(好ましくは0.01〜3重量%)である。該親水性不飽和単量体を1重量%以上、および該疎水性不飽和単量体を99重量%以下とする場合には、後述の乳化重合の操業性が容易となり、反応系内で凝集物等が発生し難くなる傾向にある。また、該親水性不飽和単量体を30重量%以下、該疎水性不飽和単量体を65重量%以上とする場合には、前記サイズ効果がいっそう良好になる傾向にある。なお、該架橋性単量体を0.01〜3重量%の範囲で用いる場合には、後述の乳化重合が容易となり、反応系内の凝集物などが発生し難くなる傾向にある。
【0032】
本発明に係るエマルジョンは、各種公知の方法で製造できる。例えば、適当な反応容器に前記共重合体塩(A)の水溶液を仕込み、これに単量体群(B)、前記ラジカル重合開始剤、水、ならびに必要に応じて前記有機溶剤や連鎖移動剤、乳化剤を仕込み、撹拌下に通常40〜150℃程度、2〜12時間程度、乳化重合反応を行うことにより製造できる。また、反応終了後は、得られたエマルジョンに前記した中和剤を添加してもよい。なお、該ラジカル重合開始剤や有機溶剤、連鎖移動剤としては、前記同様のものを用いることができる。また、該ラジカル重合開始剤や連鎖移動剤の使用量はそれぞれ、単量体群(B)100重量%に対して通常0.01〜5重量%程度である。
【0033】
なお、前記共重合体塩(A)の使用量は特に制限されないが、通常は単量体群(B)に対し、固形分換算で5〜200重量%程度、好ましくは10〜180重量%の範囲とするのがよい。5重量%以上とすることにより、得られるエマルジョンの機械安定性がいっそう良好になり、また、200重量%以下とすることにより、塗工時の発泡がいっそう低下する傾向にある。
【0034】
前記乳化剤としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、アニオン性界面活性剤〔アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩エステル、α―オレフィンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等〕、ノニオン性界面活性剤〔ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等〕などが挙げられ、1種を単独で、あるいは2種以上を用いることができる。なお、その使用量は通常、単量体群(B)100重量%に対して、通常10重量%程度以下、好ましくは0〜5重量%である。
【0035】
こうして得られるエマルジョンの、前記粒子径以外の物性も特に制限されないが、通常、pHが通常6.0〜10.0程度、固形分濃度30%のときの粘度が5〜500mPa・s程度である。
【0036】
本発明の製紙用表面サイズ剤は、当該エマルジョンをそのまま使用してもよいが、必要に応じて、各種添加剤を配合できる。例えば、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子等の紙力増強剤や、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0037】
本発明の紙は、前記エマルジョンを含む本発明のサイズ剤を、各種公知の手段により、原紙に塗工してなるものである。なお、当該サイズ剤は、塗工に際し、前記エマルジョンの固形分濃度が通常0.01〜2重量%程度となるよう希釈されたサイズ液として実用に供される。
【0038】
該原紙としては、特に制限されないが、通常は木材セルロース繊維を原料とする未塗工の紙を特に制限なく用いることができる。なお、当該原紙は、抄紙用パルプから得られるものであり、該抄紙用パルプとしてはLBKP、NBKP等の化学パルプや、GP、TMP等の機械パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。また、当該原紙中に内添する填料やサイズ剤、紙力増強剤等の各種内添薬品についても特に限定されない。
【0039】
塗工手段としては、サイズプレス法、ゲートロール法、バーコーター法、カレンダー法、スプレー法等の各種手段が挙げられる。本発明のサイズ剤は前記したように機械的安定性に優れるので、塗工時に大きなせん断力が働く、ロッドメタリングサイズプレス塗工方式やゲートロール塗工方式などの転写型マシン塗工手段に適している。なお、塗布量(固形分)は通常、0.001〜2g/m程度、好ましくは0.005〜0.5g/m である。
【0040】
こうして得られた紙は、記録用紙〔フォーム用紙、PPC用紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等〕、コート紙〔アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等〕、包装用紙〔クラフト紙、純白ロール紙等〕、洋紙〔ノート用紙、書籍用紙、印刷用紙、新聞用紙等〕、板紙〔マニラボール、白ボール、チップボール、ライナー等〕などの用途に供される。
【実施例】
【0041】
以下、参考例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお各例中、部および%は特記しない限りすべて重量基準である。
【0042】
また、各例中、粘度はB型粘度計(東機産業(株)製)による測定値を、また粒子径はレーザー粒径解析装置(製品名「LPA−3000/3100」、大塚電子(株)製)による測定値を意味する。
【0043】
合成例1
撹拌機、冷却管、滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えた反応容器に、マレイン酸19.9部、マレイン酸のイソブチルアルコール半エステル23.3部、およびトルエン31.4部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら110℃まで昇温した。次いで、一の滴下ロートよりジイソブチレン(2,2,4−トリメチル−1−ペンテンの含有率76%)24.9部および1−ヘキサデセン37.9部を、また、他の滴下ロートよりt-ブチルパーオキシベンゾエート5.0部およびトルエン11部からなる混合液を、それぞれ約1.5時間を要して当該反応容器内へと滴下し、還流下に約2時間保温した。次いで、別の滴下ロートより、t−ブチルパーオキシベンゾエート2.0部およびトルエン5部からなる混合液を、約30分要して当該反応容器内へと滴下し、さらに同温度で1時間保温することにより、重合反応を完結させた。その後トルエンを減圧留去し、さらに48%水酸化ナトリウム水溶液9.0部(マレイン酸および半エステルに対して20%中和)、所定量の水、および28%アンモニア水29.6部(マレイン酸および半エステルに対して90%中和)からなる混合液を加えた。次いで水で希釈し、共重合体塩(A−1)を含む水溶液を得た。当該水溶液は、固形分濃度が20%、pHが9.0、25℃の粘度が80mPa・sであった。共重合体塩(A−1)のモノマー種および、該水溶液の物性をそれぞれ表1に示す。
【0044】
合成例2〜5
用いるモノマーの種類とその使用量を表1に示すように変えた他は合成例1と同様にして、共重合体塩(A−2)〜(A−5)を製造した。
【0045】
合成例6
用いるマレイン酸のアルコール半エステルのアルコール種類と用いるモノマーの使用量を表1に示すように変えた他は合成例と同様にして、共重合体塩(A−6)を製造した。
【0046】
比較合成例1
合成例1と同様の反応容器に、軟水100部とイソプロピルアルコール75部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら加熱して80℃まで昇温した。次いで、スチレン50部、アクリル酸50部を混合した単量体混合物と、過硫酸カリウム5部を水120部に溶解した重合開始剤水溶液とを約3時間かけて系内に滴下し、更に2時間保温して反応を完結させた。次いで、イソプロピルアルコールを留去し、冷却後28%アンモニア水溶液46.4部(アクリル酸に対して100モル%)を加え、共重合体塩(イ)を含む水溶液を得た。該共重合体塩(イ)のモノマー種および、該水溶液の物性を表1に示す。
【0047】
比較合成例2〜3
用いる単量体の種類とその使用量を表1に示すように変えた他は合成例1と同様にして、比較用の共重合体塩(ロ)〜(ニ)を製造した。各共重合体塩のモノマー種および、該水溶液の物性を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1中、AAはアクリル酸を、MAnはマレイン酸を、MA−IBはマレイン酸のi−ブチルアルコール半エステルを、MA−EHはマレイン酸の2-エチルヘキシルアルコール半エステルを、DIBはジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1、3−メチル−1−ブテン含有)を、C12は1−ドデセンを、C16は1−ヘキサデセンを、C18は1−オクタデセンを、BAはアクリル酸N−ブチルを、Stはスチレンを、NVは固形分濃度(重量%)を、Visは粘度(mPa・s/25℃)を表す。
【0050】
比較合成例5(比較用保護コロイドの製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素導入管付きの反応容器に、軟水100部、酸価110mgKOH/gの不飽和多塩基酸変性ロジンエステル(商品名「マルキード3002」:荒川化学工業(株)製)20部と、28%アンモニア水2.4部(当該酸価に対して100モル%)とを加え、よく撹拌することにより、固形分濃度が20%、pHが9.0の水溶液を得た。当該水溶液を保護コロイド(ホ)として用いる。
【0051】
製造例1
撹拌器、還流冷却管、窒素導入管付きの反応器に、窒素雰囲気下、軟水180部、前記(A−1)100部、アニオン性界面活性剤(商品名「ハイテノールLA10」、第一工業製薬(株)製)0.5部、およびN−ドデシルメルカプタン0.5部を仕込み、さらに、アクリルアミド5部、アクリル酸5部、αメチルスチレン10部、スチレン40部、メタクリル酸ブチル40部を仕込んだ(なお、単量体全量に対し、(A−1)は20重量%である)。次いで、48%苛性ソーダ水溶液5.8部(アクリル酸に対して100モル%)を加え、撹拌下に系を加熱し、80℃まで上昇させた。次いで、過硫酸アンモニウム3部を仕込み、系を3時間保温して、乳化重合反応を完結させた。その後、得られた組成物を、共重合体の濃度が30%になるように水で希釈した。こうして得られたエマルジョンは、pHが7.5、25℃における粘度が10mPa・s、光散乱粒子径55nmであった。該エマルジョンの組成と物性を表2に示す。
【0052】
製造例2〜15、比較製造例1〜8
保護コロイドならびに単量体組成を表2に示すように変えた以外は、製造例1と同様にして、実施例用および比較例用のエマルジョンを得た。
【0053】
【表2】

【0054】
表2中、「低分子」は前記ハイテノールLA10、AMはアクリルアミド、AAはアクリル酸、2HEMAはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、αMeStはα−メチルスチレン、Stはスチレン、BMAはメタクリル酸N−ブチル、MBAAはメチレンビスアクリルアミド、DEDAはジエチレングリコールジアクリレート、それぞれ表す。
【0055】
実施例1〜15、比較例1〜8
<表面サイズ液の調製>
10%で糊化を行った酸化澱粉(商品名「王子エースA」:王子コンスターチ(株)製)と、製造例1のエマルジョンと、水とを混合し、該酸化澱粉の固形分濃度が約8.0%、該エマルジョンの固形分濃度が約0.5%となる表面サイズ液を調製した。製造例2〜15および比較製造例1〜8のエマルジョンについてもそれぞれ同様にして表面サイズ液を調製した。
【0056】
<試験用紙の作成>
ラボゲートロール塗工機((株)エスエムテー製)を用いて、前記表面サイズ液をそれぞれ、中性上質用紙(坪量60g/m、1μlドロップサイズ度5秒)に塗工した。次いで、各塗工紙を回転式ドライヤーにて乾燥(105℃、1分間)し、試験紙を得た。
【0057】
<ドロップサイズ度の測定>
前記方法で得られた各試験用紙を用い、Japan TAPPI No.33に準拠した方法に基づき、試験用紙表面に水1μlを滴下し、水滴が紙面に吸収されるまでの時間を測定し、ドロップサイズ(秒)を測定した。数字が大きいほど当該サイズ効果に優れることを意味する。結果を表3に示す。
【0058】
<ペン書きサイズ度の測定>
前記方法で得られた各塗工紙を用い、J.Tappi No.12に準拠して、ペン書きサイズ度を測定した。数字が大きいほど当該サイズ効果に優れることを意味する。結果を表3に示す。
【0059】
<発泡性の試験>
各表面サイズ液にシリコン系消泡剤(商品名「FSアンチフォーム1277」:東レ・ダウコーニング(株)製)を50ppm添加した後、50℃に加温し、家庭用ミキサーで2分間処理した後に、処理直後の液面の高さを測定した。処理前の液面高さは60mmである。結果を表3に示す。
【0060】
<機械安定性の測定(硬水系)>
各表面サイズ液を、硬度30°dHの水を用いて3倍希釈し、酸化澱粉の固形分濃度が2.7重量%、エマルジョンの固形分濃度が0.33重量%とした液を、2本ロールのラボサイズプレスを用いて一時間循環し、凝集物の発生および2本のロールの汚れを以下の規準にて目視評価した。結果を表3に示す。
◎:機械的安定性に極めて優れる(凝集物は確認できず、ロールの汚れもない)
○:機械的安定性に優れる(凝集物は確認できないが、ロールがかすかに汚れる)
△:機械的安定性がやや劣る(少量の凝集物が確認でき、ロールが汚れる)
×:機械的安定性が劣る(多量の凝集物が確認でき、ロールが著しく汚れる)
【0061】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ジカルボン酸類およびα−オレフィン類を含み、かつスチレン類を含まない単量体群(a)を原料とする共重合体塩(A)の存在下で、親水性不飽和単量体類および疎水性不飽和単量体類を含む単量体群(B)を乳化重合してなるエマルジョンを含有する製紙用表面サイズ剤。
【請求項2】
前記エマルジョンの粒子径が20〜80nmである、請求項1の製紙用表面サイズ剤。
【請求項3】
前記単量体群(a)の不飽和ジカルボン酸類が、マレイン酸、マレイン酸中和塩、マレイン酸半エステルおよびマレイン酸半エステル中和塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2の製紙用表面サイズ剤。
【請求項4】
前記単量体群(a)のα−オレフィン類が、分岐状αオレフィンおよび/または直鎖状α−オレフィンである、請求項1〜3のいずれかの製紙用表面サイズ剤。
【請求項5】
該分岐状α−オレフィンが2,4,4−トリメチルペンテン−1である、請求項4の製紙用表面サイズ剤。
【請求項6】
該直鎖状α−オレフィンが、構成炭素数が5〜22の直鎖状α−オレフィンである、請求項4の製紙用表面サイズ剤。
【請求項7】
前記単量体群(a)が、不飽和ジカルボン酸類を20〜80重量%、α−オレフィン類を80〜20重量%含む、請求項1〜6のいずれかの製紙用表面サイズ剤。
【請求項8】
前記単量体群(B)の親水性不飽和単量体類が、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、および、不飽和モノアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかの製紙用表面サイズ剤。
【請求項9】
当該(メタ)アクリルアミド類がアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドである、請求項8の製紙用表面サイズ剤
【請求項10】
前記単量体群(B)の疎水性不飽和単量体類が、スチレン類および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステル類である、請求項1〜9のいずれかの製紙用表面サイズ剤。
【請求項11】
前記単量体群(B)が架橋性不飽和単量体類を含有するものである、請求項1〜10のいずれかの製紙用表面サイズ剤。
【請求項12】
前記単量体群(B)に対し、前記共重合体塩(A)(固形分換算)を5〜200重量%用いる、請求項1〜11のいずれかの製紙用表面サイズ剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの製紙用表面サイズ剤を紙に塗工してなる紙。

【公開番号】特開2009−97135(P2009−97135A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230877(P2008−230877)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】