説明

製造システム

【課題】 加工品質、加工精度を変更することなく、製造時間を短縮することおよび加工機の稼働の効率化を図ることができる製造システムを提供すること。
【解決手段】 製造システム(1)は、工程毎に仕様変更可能な複数の加工機(11〜15)と、被加工品(P)を一品一様な形状に加工中に前記加工機(11〜15)の加工負荷の進捗状況を確認し、前記複数の加工機(11〜15)の加工負荷を比較し、他の加工機(11〜15)の加工負荷と比較して大となる加工機の加工負荷を、他の加工機に振り分けて工程変更をする制御部(7)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程毎に仕様変更可能な複数の加工機と、該加工機と接続された制御部と、を有する製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、製造システムは、複数の加工機と、該加工機を制御する制御部とを有していた。そして、該複数の加工機における工程が一定のサイクルタイムで稼働するように前提条件があった。
図7(A)(B)に示すのは、従来技術における製造システムの一例である。
尚、縦軸は、稼働時間を示す。一方、横軸は、第1加工機〜第4加工機の仕様状態を示す。
【0003】
図7(A)に示す如く、従来技術における製造システムは、第1加工機31〜第4加工機34を有していた。そして、例えば、第1加工機31は、仕様Aの状態である加工機Aとして機能する。また、第2加工機32は、仕様Bの状態である加工機Bとして機能する。またさらに、第3加工機33および第4加工機34は、仕様Cの状態である加工機Cとして機能する。
そして、加工機Aのサイクルタイムは10、加工機Bのサイクルタイムは1、加工機Cのサイクルタイムは2とする。
【0004】
ここで、加工機Aにおいて工具を作成し、加工機Bが該工具を使用して加工をする場合を考える。係る場合、工具を作成するための稼働時間であるサイクルタイムは、工具の寿命と加工機Bのサイクルタイムとの積と一致していないと、加工機Aおよび加工機Bのいずれか一方において設備停止が発生する。
また、加工機Bの工程の後に、加工機Bで作成した部品を加工機Cで使用する場合を考える。係る場合、加工機Bのサイクルタイムと加工機Cの台数との積が、加工機Cのサイクルタイムと一致していないと、加工機Bおよび加工機Cのいずれか一方において設備停止が発生する。
【0005】
そこで、前述したように、加工機Aのサイクルタイムは10、加工機Bのサイクルタイムは1、加工機Cのサイクルタイムは2としていた。そして、加工機Bは、加工機Aにおいて作成した工具を使用して、工具の寿命分として部品を10個作成するように構成されていた。また、2台の加工機Cは、加工機Bが作成した部品を使用して、目的物である工作物をそれぞれ5個ずつ作成するように構成されていた。これによって、工程の稼働バランスが保たれていた。
【特許文献1】特開2001−242927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の製造現場では、各設備のサイクルタイムを均一にすることができない。そして、図7(B)に矢印で示す如く、停止時間が発生する。ここで、工作物は一品一様である。従って、次の計画において作成する工作物は、全く同じ工程を有していない。従って、工程の稼働バランスの不均衡が是正されることがなかった。即ち、工程の稼働バランスを均一に保つことができないことによって、製造時間が無駄に延長され、稼働効率が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、加工品質、加工精度を変更することなく、製造時間を短縮することおよび加工機の稼働の効率化を図ることができる製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の製造システムは、工程毎に仕様変更可能な複数の加工機と、被加工品を一品一様な形状に加工中に前記加工機の加工負荷の進捗状況を確認し、前記複数の加工機の加工負荷を比較し、他の加工機の加工負荷と比較して大となる加工機の加工負荷を、他の加工機に振り分けて工程変更をする制御部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、前記製造システムは、前記制御部を有する。従って、被加工品を一品一様な形状に加工中に前記加工機の加工負荷の進捗状況を確認し、前記複数の加工機の加工負荷を比較し、他の加工機の加工負荷と比較して大となる加工機の加工負荷を、他の加工機に振り分けて工程変更をすることができる。その結果、前記製造システムは、加工負荷を前記他の加工機に振り分けない構成と比較して、各加工機の加工負荷のバランスを均一に近づけることができる。即ち、障害である所謂、ネックとなっている一の加工機の加工負荷を他の加工機へ分散させることができる。その結果、加工品質、加工精度を変更することなく、各加工機が停止する停止時間を短縮することができ、効率化を図ることができる。
【0010】
また、加工中に前記加工機の加工負荷の進捗状況を確認するので、常に最適な状態に工程変更、即ち、スケジュール変更を行うことができる。
例えば、次の被加工品が投入されたとき、瞬時にスケジュール変更して最適化を図ることができる。また、加工中における形状変更などの急な変更に対して、スケジュール変更して対応することができる。
即ち、工程の内容および前記加工機の設備仕様をフレキシブルに変更することによって、常に稼働バランスの平準化を実現することができると共に、製造コストの最小化を行うことができる。
またさらに、前記製造システムは、加工負荷を前記他の加工機に振り分けない構成と比較して、加工するときにおけるその製造オーダが発行されてから完成するまでの期間である所謂、リードタイムを短縮することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、前記複数の加工機の加工負荷を比較する際、各加工機の加工負荷がしきい値を超えているか否かを判定し、前記しきい値を超えた加工機の加工負荷を、前記しきい値を超えていない他の加工機へ振り分けることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記制御部は、前記複数の加工機の加工負荷を比較する際、各加工機の加工負荷がしきい値を超えているか否かを判定し、前記しきい値を超えた加工機の加工負荷を、前記しきい値を超えていない他の加工機へ振り分ける。従って、前記複数の加工機の間において、容易に加工負荷を比較することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記制御部は、前記他の加工機に加工負荷を振り分ける際、加工負荷を振り分けられる他の加工機の仕様を、加工負荷の振り分け元の加工機の仕様と同じ仕様に変更することを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記制御部は、前記他の加工機に加工負荷を振り分ける際、加工負荷を振り分けられる他の加工機の仕様を、加工負荷の振り分け元の加工機の仕様と同じ仕様に変更する。従って、より前記最適化を図ることができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記制御部は、前記他の加工機に加工負荷を振り分ける際、加工負荷の振り分け元の加工機の仕様と同じ仕様の加工機と、異なる仕様の加工機とがある場合、優先的に前記同じ仕様の加工機に振り分けることを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記制御部は、前記他の加工機に加工負荷を振り分ける際、加工負荷の振り分け元の加工機の仕様と同じ仕様の加工機と、異なる仕様の加工機とがある場合、優先的に前記同じ仕様の加工機に振り分ける。即ち、仕様変更をする必要がない加工機に加工負荷を優先的に振り分ける構成である。従って、仕様変更をする必要がある加工機に加工負荷を振り分けて仕様変更をする構成と比較して、仕様変更をする分の時間を短縮することができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記制御部は、次に投入される被加工品についての加工負荷を前記複数の加工機に振り分けて工程変更することを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記制御部は、次に投入される被加工品についての加工負荷を前記複数の加工機に振り分けて工程変更する。従って、随時変わる状況に応じて常に最適化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る製造システムにおける設備構成の概略を示す図である。また、図2に示すのは、本発明に係る製造システムにおけるフロー工程図である。
図1および図2に示す如く、本発明に係る製造システム装置1は、複数の加工機である第1加工機11〜第5加工機15と、原料ストッカ4と、工具ストッカ5と、加工モジュールストッカ6と、搬送装置2とを有する。
【0016】
このうち、第1加工機11〜第5加工機15の設備基本仕様は同じであるように設けられている。そして、図1に示す如く、第1加工機11および第2加工機12は、仕様Aの状態である加工機Aとして機能する。また、第3加工機13および第4加工機14は、仕様Bの状態である加工機Bとして機能する。またさらに、第5加工機15は、仕様Cの状態である加工機Cとして機能する。
そして、第1加工機11〜第5加工機15は、設備基本仕様が同じであるので後述するように、仕様A〜C間において仕様を変更することができるように構成されている。
【0017】
また、原料ストッカ4は、原料をストックすることができるように設けられている。本実施例では、原料は金属の塊P(図5(A)参照)である。
またさらに、工具ストッカ5は、同一および同種の種々の工具をストックすることができるように設けられている。
また、加工モジュールストッカ6は、加工モジュールをストックすることができるように設けられている。
【0018】
またさらに、搬送装置2は、移動可能なパレット3を有する。パレット3は、原料を第1加工機11〜第5加工機15へ搬送することができるように設けられている。また、第1加工機11〜第5加工機15の一の加工機で加工された工作物を他の加工機へ搬送することができるように構成されている。またさらに、加工モジュールストッカ6から第1加工機11〜第5加工機15へ加工モジュールを搬送して加工モジュールを交換することができるように設けられている。
【0019】
ここで、加工モジュールを交換することによって、第1加工機11〜第5加工機15は、仕様A〜Cの仕様を変更することができるように構成されている。
また、工具ストッカ5から第1加工機11〜第5加工機15へ工具を搬送して工具を交換することができるように設けられている。
尚、工具の交換・装着および加工モジュールの交換は、制御部としての生産管理システム7によって自動で行われるように構成されている。
【0020】
図2に示す如く、製造システム装置1は、さらに工程設計システム8と、生産管理システム7と、を有する。
このうち、工程設計システム8は、生産管理システム7により、第1加工機11〜第5加工機15の仕様A〜Cにおける加工プログラム、工程順、部品納期、製造進捗、工具の寿命、工具の在庫、原料の在庫、加工モジュールの運用、設備の仕様、搬送装置2の運用、製造スケジュール等を管理することができるように構成されている。
【0021】
また、生産管理システム7は、製造計画の投入と製造進捗状況との差異に対して、現工程設計予測時間、工具の在庫、工具の寿命、工具を準備するための工具準備期間、原料の在庫、原料を準備するための原料準備期間、設備の仕様、工具の交換・装着のための換装時間、部品納期等の条件を加味して、所定のしきい値内の製造コストが最小値となるように製造スケジュールを算出するように設けられている。
そして、上記の条件の中で、部品納期を確保することができない場合、障害である所謂、ネックとなる工程を、部品納期を確保することができる稼働時間へと分割する。さらに、工程設計システム8へ分割した加工時間ごとの工程として、加工プログラムの変更を実行するように構成されている。
【0022】
生産管理システム7とそれぞれのシステム等との関係を説明する。
生産管理システム7は、工程設計システム8に対して、工程設計の変更を指示する。これに対して、工程設計システム8は、該指示を実行し、生産管理システム7に対して、加工プログラムを提供するように設けられている。
また、生産管理システム7は、工具ストッカ5に対して、工具の準備を指示する。これに対して、工具ストッカ5は、該指示を実行し、生産管理システム7に対して、工具の準備が完了した旨を通知するように設けられている。
【0023】
またさらに、生産管理システム7は、原料ストッカ4に対して、原料の準備を指示する。これに対して、原料ストッカ4は、該指示を実行し、生産管理システム7に対して、原料の準備が完了した旨を通知するように設けられている。
また、生産管理システム7は、第1加工機11〜第5加工機15に対して、加工プログラムの提供、加工の開始および加工準備の指示をする。これに対して、第1加工機11〜第5加工機15は、該指示を実行し、生産管理システム7に対して、加工の進捗状況、加工の完了および加工準備の完了の旨を通知するように設けられている。
【0024】
また、生産管理システム7は、加工モジュールストッカ6に対して、加工モジュールの準備を指示する。これに対して、加工モジュールストッカ6は、該指示を実行し、生産管理システム7に対して、加工モジュールの準備が完了した旨を通知するように設けられている。
またさらに、生産管理システム7は、搬送装置2に対して、パレット3を用いた搬送を指示する。これに対して、搬送装置2は、該指示を実行し、生産管理システム7に対して、搬送が完了した旨を通知するように設けられている。
【0025】
[第1の変更例]
図3に示すのは、本発明に係る製造システムにおける工程変更の第1の例を示す図である。尚、縦軸は、サイクルタイムおよび稼働時間を示す。一方、横軸の項目は、第1加工機〜第4加工機の仕様状態を示す。
図3に示す如く、製造システム装置1は、第1加工機11〜第4加工機14を有している。そして、第1加工機11は、仕様Aの状態である加工機Aとして機能する。また、第2加工機12は、仕様Bの状態である加工機Bとして機能する。またさらに、第3加工機13および第4加工機14は、仕様Cの状態である加工機Cとして機能する。
【0026】
そして、図7(B)において前述した従来技術の第1加工機31〜第4加工機34における停止時間の発生と同様に本発明に係る第1加工機11〜第4加工機14において停止時間が発生した場合、生産管理システム7は、ネックとなる工程を判断する。
具体的には、しきい値を9として各加工機の稼働時間がしきい値9を超えているか否かを判断する。そして、超えている加工機と超えていない加工機があれば、超えている加工機の工程負荷を分割して超えていない加工機へ振り分ける。必要に応じて、しきい値を徐々に下げて同様に判断する。そして、第1加工機11の稼働時間8〜10の箇所の仕事2目盛り分を第2加工機12に振り分ける。これにより、加工機の稼働時間である工程負荷を振り分け、工程の稼働バランスを均一に近づけることができる。
【0027】
例えば、第1加工機11の加工機Aにおいて、工具の一例であるドリルaを加工するとする。そして、ドリルaの8割完成である未完成ドリルを、パレット3を介して、第2加工機12へ搬送する。このとき、第2加工機12は、仕様Bの状態である。
そこで、第2加工機12の仕様を仕様Bから仕様Aの状態へ変更する。即ち、第2加工機12が加工機Aとして機能するように仕様を変更すると共に工程を変更する。そして、第2加工機12は、8割完成である未完成ドリルの残り2割の加工を実行する。
【0028】
その後、第2加工機12の仕様を仕様Aから仕様Bの状態へ変更する。即ち、第2加工機12が加工機Bとして機能するように仕様を変更する。そして、第2加工機12は、完成したドリルaを使用して、金属の塊Pを加工し部品bを6個作成する。
続いて、部品bは、パレット3を介して第3加工機13および第4加工機14へ搬送される。ここで、第3加工機13および第4加工機14は、仕様Cの状態で加工機Cとして機能する。そして、第3加工機13および第4加工機14は、部品bを使用して部品cを6個作成する。
このように、仕様変更および工程変更をすることによって、稼働率を向上させることができる。また、納期までの時間を短縮することができる。またさらに、コストを最小にすることが可能である。
【0029】
[第2の変更例]
図4に示すのは、本発明に係る製造システムにおける工程変更の第2の例を示す図である。尚、縦軸は、サイクルタイムおよび稼働時間を示す。一方、横軸の項目は、第1加工機〜第4加工機の仕様状態を示す。また、図5(A)〜(D)に示すのは、第2の例の具体例である。
図4に示す如く、製造システム装置1は、第1加工機11〜第4加工機14を有している。そして、第1加工機11は、仕様Aの状態である加工機Aとして機能する。また、第2加工機12〜第4加工機14は、仕様Cの状態である加工機Cとして機能する。
【0030】
そして、前述したように、第1加工機11〜第4加工機14において停止時間が発生した場合、生産管理システム7は、ネックとなる工程を判断する。具体的には、しきい値を徐々に下げてしきい値を超えている稼働時間(工程負荷量)と、その他の加工機の稼働時間がしきい値に満たない分の時間(工程負荷量)とを比較する。そして、超えている分を分割して前記しきい値に満たない前記その他の加工機へ振り分ける。具体的には、第2加工機12のサイクルタイム5〜9の箇所の仕事4目盛り分を、仕事3目盛り分と仕事1目盛り分とに分割し、仕事3目盛り分を第3加工機13に、仕事1目盛り分を第4加工機14に振り分ける。これにより、加工機の稼働時間である工程負荷を振り分け、工程の稼働バランスを均一に近づけることができる。
【0031】
具体的には、図5(A)〜(D)を例に説明する。
図5(A)は、金属の塊を示す斜視図である。また、図5(B)は、第2加工機における当初の計画の稼働時間0〜9の箇所の工程を完了したときの工作物を示す斜視図である。またさらに、図5(C)は、第3加工機における振り分けられたときの工作物を示す斜視図である。また、図5(D)は、第4加工機における振り分けられたときの工作物を示す斜視図である。
【0032】
図5(A)に示す金属の塊Pの状態から図5(B)に示す工作物P1の状態まで、第2加工機12のみで実行する場合、サイクルタイム9かかり、他の加工機の工程との関係において、工程の稼働バランスが均一でない。
そこで、図5(C)に示す如く、第2加工機12は当初の計画の工程の5/9だけ金属の塊Pを加工する。そして、パレット3を介して、5/9だけ加工された工作物P2を、第3加工機13へ搬送する。
【0033】
第3加工機13は、必要に応じてドリルQを持ち替え、5/9だけ加工された工作物P2に対して、第2加工機12における当初の計画の工程の3/9だけ加工する。従って、工作物の加工は、図5(D)に示す如く、当初の計画の工程の8/9だけ完了した状態となる。そして、パレット3を介して、8/9だけ加工された工作物P3を、第4加工機14へ搬送する。このとき、第3加工機13は、5/9だけ加工された工作物P2を加工する際にドリルQを持ち替えた場合は、元のドリルに持ち替える。そして、第3加工機13は、当初の計画に従って、仕事2目盛り分の加工を実行する。
【0034】
第4加工機14は、必要に応じてドリルQを持ち替え、8/9だけ加工された工作物P3に対して、第2加工機12における当初の計画の工程の1/9だけ加工する。従って、工作物の加工は、当初の計画の工程の全てが完了した状態となる。そして、パレット3を介して、工作物(P1、P3)は別のところへ搬送される。このとき、第4加工機14は、8/9だけ加工された工作物P3を加工する際にドリルQを持ち替えた場合は、元のドリルに持ち替える。そして、第4加工機14は、当初の計画に従って、仕事3目盛り分の加工を実行する。
以上のように、加工機の稼働時間である工程負荷を振り分けることにより、工程の稼働バランスを均一に近づけることができる。
【0035】
[第3の変更例]
図6(A)〜(D)に示すのは、本発明に係る製造システムにおける工程変更の第3の例を示す図である。このうち、図6(A)は投入される第1部品についての工程を示す図である。また、図6(B)は投入される第2部品についての工程を示す図である。またさらに、図6(C)は投入される第3部品についての工程を示す図である。また、図6(D)は変更後の第1部品〜第3部品についての工程を示す図である。
尚、縦軸は、加工機による工程を示す。一方、横軸は時間を示す。
【0036】
図6(A)に示す如く、第1部品についての工程設計は3つの工程からなるものとする。具体的には、先ず、第1部品は、第1加工機11の仕様Aによる加工工程A(以下、第1部品の第1工程)により加工される。次に、パレット3に搬送され、第2加工機12の仕様Bによる加工工程B(以下、第1部品の第2工程)により加工される。その後、パレット3に搬送され、第3加工機13の仕様Cによる加工工程C(以下、第1部品の第3工程)により加工される。
【0037】
図6(B)に示す如く、第2部品についての工程設計は3つの工程からなるものとする。具体的には、先ず、第2部品は、第1加工機11の仕様Aによる加工工程A(以下、第2部品の第1工程)により加工される。次に、パレット3に搬送され、第2加工機12の仕様Bによる加工工程B(以下、第2部品の第2工程)により加工される。その後、パレット3に搬送され、第3加工機13の仕様Cによる加工工程C(以下、第2部品の第3工程)により加工される。
【0038】
図6(C)に示す如く、第3部品についての工程設計は1つの工程からなるものとする。具体的には、第3部品は、第3加工機13の仕様Cによる加工工程C(以下、第3部品の第1工程)により加工される。
ここで、第1部品〜第3部品は、一品一様であるため、加工内容が異なる。具体的には、仕様される工具、加工形状、工程数、各工程における加工時間等が異なる。
【0039】
図6(D)に示す如く、先ず、第1部品が製造システム装置1に投入されたとする。次に、第2部品が製造システム装置1に投入されたとする。
ここで、第2部品についての工程設計を加えるわけだが、ただ単に、第1部品の工程設計の後に加えるだけでは、図6(D)において一点鎖線に示す如く終了時間が著しく延びる虞がある。言い換えると、所謂、リードタイムが著しく長くなる虞がある。
【0040】
そこで、図6(B)における第2部品の第1工程を、図6(D)における第2加工機12の工程へ移動する。そして、第2加工機12の仕様を仕様Bから仕様Aに変更して、第2部品に対して加工を実行する。また、図6(B)における第2部品の第2工程を、図6(D)における第2加工機12の工程へ移動する。具体的には、図6(D)における第2加工機12の工程へ移動した元が図6(B)における第2部品の第1工程の後へ移動する。
【0041】
そして、該第2部品の第1工程が終了した後に、図6(D)における第2加工機12の仕様を仕様Aから仕様Bへ変更して、第2部品に対して第2工程の加工を実行する。このとき、当初計画していた図6(A)における第1部品の第2工程を、図6(D)における第3加工機13の工程へ移動する。そして、第3加工機13の仕様を仕様Cから仕様Bへ変更して、第1部品に対して第2工程の加工を実行する。
【0042】
また、図6(B)における第2部品の第3工程を、図6(D)における第2加工機12の工程へ移動する。具体的には、図6(D)における第2加工機12の工程へ移動した元が図6(B)における第2部品の第2工程の後へ移動する。
即ち、図6(D)において、第1加工機11は、第1部品の第1工程を実行する。
また、第2加工機12は、先ず、第2部品の第1工程を実行する。次に、第2部品の第2工程を実行する。その後、第2部品の第3工程を実行する。
【0043】
またさらに、第3加工機13は、先ず、第1部品の第2工程を実行する。次に、第2部品の第3工程を実行する。
以上より、第2部品を投入した場合であっても、工程変更をすることにより、リードタイムの延長を最小限にすることができる。その結果、コストを低減することができる。また、稼働効率を向上させることができる。
【0044】
さらに、第3部品を投入する場合、図6(C)における第3部品の第1工程を前半工程および後半工程に分けることができる。前半工程の長さは、第1部品の第1工程の長さと同じである。そして、第3部品の第1工程前半を、図6(D)における第3加工機13の工程へ移動する。具体的には、図6(D)における第3加工機13の工程へ移動した元が図6(A)における第1部品の第2工程の前へ移動する。
【0045】
また、第3部品の第1工程後半を、図6(D)における第1加工機11の工程へ移動する。具体的には、第1部品の第1工程の後へ移動する。そして、第1加工機11の仕様を仕様Aから仕様Cへ変更して、第3部品に対して第1工程後半の加工を実行する。
以上より、第3部品を投入した場合であっても、工程変更をすることにより、リードタイムの延長を最小限にすることができる。
【0046】
本実施形態の製造システムである製造システム装置1は、工程毎に仕様変更可能な複数の加工機である第1加工機11〜第5加工機15と、第1加工機11〜第5加工機15と接続され、被加工品である工作物P1を一品一様な形状に加工中に第1加工機11〜第5加工機15の加工負荷の進捗状況を確認し、第1加工機11〜第5加工機15の加工負荷である工程負荷を比較し、他の加工機(例えば第2加工機12〜第5加工機15)の工程負荷と比較して大となる加工機(例えば第1加工機11)の工程負荷を、他の加工機(例えば第2加工機12)に振り分けて工程変更をする制御部としての生産管理システム7と、を有し、ことを特徴とする。
【0047】
また、本実施形態の第1の変更例において、生産管理システム7は、複数の加工機の工程負荷を比較する際、各加工機の工程負荷がしきい値を超えているか否かを判定し、前記しきい値を超えた加工機(例えば第1加工機11)の工程負荷を、前記しきい値を超えていない他の加工機(例えば第2加工機12)へ振り分けることを特徴とする。
またさらに、本実施形態の第1の変更例において、生産管理システム7は、前記他の加工機(例えば第2加工機12)に工程負荷を振り分ける際、工程負荷を振り分けられる他の加工機(例えば第2加工機12)の仕様(例えば仕様B)を、工程負荷の振り分け元の加工機(例えば第1加工機11)の仕様(例えば仕様A)と同じ仕様に変更することを特徴とする。
【0048】
また、本実施形態の第2の変更例において、生産管理システム7は、前記他の加工機(例えば第3加工機13および第4加工機14)に工程負荷を振り分ける際、工程負荷の振り分け元の加工機(例えば第2加工機12)の仕様(例えば仕様C)と同じ仕様(例えば仕様C)の加工機(例えば第3加工機13および第4加工機14)と、異なる仕様(例えば仕様A)の加工機(例えば第1加工機11)とがある場合、優先的に前記同じ仕様の加工機(例えば第3加工機13および第4加工機14)に振り分けることを特徴とする。
【0049】
またさらに、本実施形態の第3の変更例において、生産管理システム7は、次に投入される被加工品としての第2部品についての工程負荷を第1加工機11〜第5加工機15に振り分けて工程変更することを特徴とする。
【0050】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る製造システムにおける設備構成の概略を示す図。
【図2】本発明に係る製造システムにおけるフロー工程図。
【図3】本発明に係る製造システムにおける工程変更の例を示す図(第1の例)。
【図4】本発明に係る製造システムにおける工程変更の例を示す図(第2の例)。
【図5】(A)〜(D)は本発明に係る製造システムにおける工程変更の例を示す図(第2の例)。
【図6】(A)〜(D)は本発明に係る製造システムにおける工程変更の例を示す図(第3の例)。
【図7】(A)(B)は従来技術におけるサイクルタイムを示す図。
【符号の説明】
【0052】
1 製造システム装置、2 搬送装置、3 パレット、4 原料ストッカ、
5 工具ストッカ、6 加工モジュールストッカ、7 生産管理システム、
8 工程設計システム、11 第1加工機、12 第2加工機、13 第3加工機、
14 第4加工機、15 第5加工機、31 (従来技術の)第1加工機、
32 第2加工機、33 第3加工機、34 第4加工機、P 金属の塊、
P1 加工された工作物、P2 5/9だけ加工された工作物、
P3 8/9だけ加工された工作物、Q ドリル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程毎に仕様変更可能な複数の加工機と、
被加工品を一品一様な形状に加工中に前記加工機の加工負荷の進捗状況を確認し、
前記複数の加工機の加工負荷を比較し、
他の加工機の加工負荷と比較して大となる加工機の加工負荷を、他の加工機に振り分けて工程変更をする制御部と、を有する製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の製造システムにおいて、前記制御部は、前記複数の加工機の加工負荷を比較する際、各加工機の加工負荷がしきい値を超えているか否かを判定し、前記しきい値を超えた加工機の加工負荷を、前記しきい値を超えていない他の加工機へ振り分ける製造システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造システムにおいて、前記制御部は、前記他の加工機に加工負荷を振り分ける際、加工負荷を振り分けられる他の加工機の仕様を、加工負荷の振り分け元の加工機の仕様と同じ仕様に変更する製造システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造システムにおいて、前記制御部は、前記他の加工機に加工負荷を振り分ける際、加工負荷の振り分け元の加工機の仕様と同じ仕様の加工機と、異なる仕様の加工機とがある場合、優先的に前記同じ仕様の加工機に振り分ける製造システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造システムにおいて、前記制御部は、次に投入される被加工品についての加工負荷を前記複数の加工機に振り分けて工程変更する製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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