説明

製造設備

【課題】人に対する労力を減らし、異物混入の少ない製品を作りやすくする。
【解決手段】複数の工程毎に個別の処理室1を設け、各処理室1夫々に、複数種の粉体原料または製造中間品からなる処理物に対する第1出入り口部6を設けると共に、作業員の第2出入り口部7を設け、複数の第1出入り口部6同士を接続する処理物搬送路8を設け、複数の第2出入り口部7同士を接続する作業員移動通路9を設け、処理物搬送路8を介して各工程毎に第1出入り口部6から別の第1出入り口部6に処理物を搬送する自動搬送装置を設け、複数の処理室1を環状に配置して環状処理室群2Bを形成し、環状処理室群2Bの内側に作業員移動通路9を配置すると共に、外側に処理物搬送路8を配置し、第1出入り口部6を環状処理室群2Bの各処理室1夫々の外側に設け、第2出入り口部7を環状処理室群2Bの各処理室1夫々の内側に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の粉体を原料として複数の工程を経て製品を製造するのに、
前記複数の工程毎に個別の処理室を設けてある製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、前記製造設備で各工程毎に、原料又は製造中間品からなる処理物を、人が台車で各処理室に運び、それらの処理室で製造のための処理を行っている。
しかし、人と処理物の動線が同じであるために、人の移動に伴って原料の粉体や埃などが人に付着して処理室間で移動して処理物中に異物が混入するコンタミネーションが発生する虞がある。
そこで、人と処理物との動線を分けるべく、スタッカークレーンからなる搬送装置の移動路を挟んでその両側に処理室を設けるシステム構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−31008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のシステム構成では、人と処理物との動線が干渉しないようにするためには、人の移動通路が搬送装置の移動路の両側に配置された処理室よりも、さらに外側に配置されなければならず、複数の工程毎に異なった処理室を移動する労力が多くなり、人に対する負担が増えるという問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、人に対する労力を減らすと共に、異物混入の少ない製品を作りやすい製造設備を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、複数種の粉体を原料として複数の工程を経て製品を製造するのに、前記複数の工程毎に個別の処理室を設けてある製造設備であって、前記各処理室夫々に、原料または製造中間品からなる処理物に対する第1出入り口部を設けると共に、前記処理室における作業員の第2出入り口部を設け、複数の前記処理室の前記第1出入り口部同士を接続する処理物搬送路を設け、複数の前記処理室の前記第2出入り口部同士を接続する作業員移動通路を設け、前記処理物搬送路を介して各工程毎に前記第1出入り口部から別の前記第1出入り口部に処理物を搬送する自動搬送装置を設け、複数の前記処理室を環状に並設配置して環状処理室群を形成し、前記環状処理室群の内側に前記作業員移動通路を配置すると共に、外側に前記処理物搬送路を配置し、前記第1出入り口部を前記環状処理室群の各処理室夫々の外側に設け、前記第2出入り口部を前記環状処理室群の各処理室夫々の内側に設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、処理物搬送路と作業員移動通路を分けることにより人が処理物と共に粉体等の異物の原因になるものを処理室に持ち込むことを防止しやすくでき、しかも、処理物の搬送に自動搬送装置を使用することにより、より一層コンタミネーションの原因になる異物を、処理室に持ち込む確率が減少し、異物混入の少ない製品を作り易くなった。
その上、複数の前記処理室を環状に並設配置して環状処理室群を形成し、前記環状処理室群の内側に前記作業員移動通路を配置すると共に、外側に前記処理物搬送路を配置し、前記第1出入り口部を前記環状処理室群の各処理室夫々の外側に設け、前記第2出入り口部を前記環状処理室群の各処理室夫々の内側に設けてあることにより、人の移動が極力少なくなり、労力が減少して作業能率を上げ易くなった。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記自動搬送装置が無人搬送車(Automated Guided Vehicle:以下AGVと略する)であり、建物の同じフロアに、前記環状処理室群を挟んで無人搬送車移動廊下から成る前記処理物搬送路と前記作業員移動通路とを設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、自動搬送装置を無人搬送車(AGV)から構成することにより、無人搬送車の移動する処理物搬送路は、特にガイドレール等を設けない普通の廊下などの簡単な構造で済み、建物全体の建築コストを安くできる。
しかも、建物の同じフロアに、環状処理室群を挟んで無人搬送車移動廊下から成る前記処理物搬送路と前記作業員移動通路とを設けることにより、建築構造そのものを簡単で安価のものにできる。
また、処理物搬送路を簡単な廊下などで構成できることにより、もし万が一無人搬送車が故障したとしても、人が旧来通り処理物を搬送して製造のための処理を続行できる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記第1出入り口部に前後に一対の扉を設けたパスルームを設け、前記パスルームに前記無人搬送車が進入した状態で、その無人搬送車から前記処理室に処理物を受け渡すコンベアを設け、前記第2出入り口部に前後に一対の扉を設けたエアーロック室を設けてあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、無人搬送車による処理物の搬送時に、無人搬送車と共に処理室に侵入しようとする異物などは、無人搬送車をパスルームに留めた状態で、コンベアにより処理物が処理室内に搬送されるために、処理室内への異物の侵入を極力抑えることができる。また、処理室への人の出入りは、エアーロック室を通らなければならないために、人と共に処理室に異物が侵入するのを抑えることができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記製品が錠剤又は顆粒状の医薬品であるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、特に錠剤や顆粒状の医薬品を製造する製造設備に本発明の構成を採用すれば、簡単な建物構造で、異物の少ないしかも作業効率の良い製品作りができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】建物における1階部分の平面図である。
【図2】建物における2階部分の平面図である。
【図3】建物における3階部分の平面図である。
【図4】別実施形態の処理室の平面図である。
【図5】別実施形態の建物の所定の階の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
複数種の粉体を原料として複数の工程を経て製品を製造するのに、図1〜図3に示すように、複数の工程毎に個別の処理室1を設けた処理室群2を、1階と2階部分に夫々設け、3階部分には、見学者が夫々の処理室1を上から観察できる見学者通路3を設け、原料倉庫4及び製造中間品倉庫5を並設して、製造設備付きの建物を構成してある。
【0016】
前記各処理室1夫々に、原料または製造中間品からなる処理物に対する第1出入り口部6を設けると共に、処理室1における作業員の第2出入り口部7を設け、複数の処理室1の第1出入り口部6同士を接続する処理物搬送路8を設け、複数の処理室1の第2出入り口部7同士を接続する作業員移動通路9を設け、処理物搬送路8を介して各工程毎に第1出入り口部6から別の第1出入り口部6に処理物を搬送する無人搬送車(AGV)からなる自動搬送装置を設けてある。
【0017】
1階部分には、図1に示すように、主に粉体から成る複数種の原料の搬入部分10を設け、その搬入部分10から原料倉庫4を通る原料の搬送路11を設けて、原料又は製造中間品からなる処理物の処理物搬送路8に至る。また、複数の処理室1を直線状に並べた直線状処理室群2Aの両側を挟むように、作業員移動通路9と処理物搬送路8とを並設してある。
【0018】
前記直線状処理室群2Aは、計量室12、前処理室13、混合室14、検査室15、コンテナ洗浄室16などを設けてある。
また、作業員移動通路9に繋がる作業員の出入り口17の他に、見学者などの外来者出入り口18を設けてある。
【0019】
前記製造中間品倉庫5には、スタッカークレーンを設けて複数段の棚に収容した製造中間品を自動的に選択して取出せるように構成してある。
【0020】
2階部分には、図2に示すように、複数の処理室1を環状に並設配置した環状処理室群2Bを設け、環状処理室群2Bの内側に作業員移動通路9を配置すると共に、外側に処理物搬送路8を夫々環状に形成して配置し、第1出入り口部6を環状処理室群2Bの各処理室1夫々の外側に設け、第2出入り口部7を環状処理室群2Bの各処理室1夫々の内側に設けてある。
【0021】
前記環状処理室群2Bは、予備室19、造粒室20、打錠室21、検査室15、前処理室13、計量室12、混合室14、糖衣室22、等から構成され、環状に並んでいる。
環状の作業員移動通路9の内側には、洗浄室23、乾燥室24、機器備品保管室25、工程検査室26などを直線状に並べてある。
尚、1階部分の作業員移動通路9から2階部分の作業員移動通路9への移動は、作業員専用階段27とエレベータEVとを設けてあり、1階部分から2階部分への処理物の移動は、製造中間品倉庫5のスタッカークレーンを介して行われる。
【0022】
外来者出入り口18から入った見学者は、1階から3階に連続した見学者用階段28を介して3階の見学者通路3に繋がっている(図1〜図3)。
【0023】
処理室1に設けた第1出入り口部6の内の一部は、前後に一対の扉を設けたパスルームPRを設けて自動搬送装置が出入りできるようになっているとともに、第2出入り口部7の内の一部は、前後に一対の扉を設けてエアーシャワーを設置したエアーロック室ALを設けて、作業員の出入りの際に、処理物等の粉体や埃等の異物を処理室1内に持ち込まないように形成してある。
尚、前記処理室は、特に粉体等の異物混入の可能性のある部屋を指すものである。
【0024】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0025】
〈1〉 前記第1出入り口部6には、図4に示すように、パスルームPRに侵入した無人搬送車(AGV)から処理物を処理室1に移し変えるコンベア29を設けて、極力、外部からのコンタミネーションを防止できるようにしてあっても良い。
〈2〉 作業員移動通路9、又は、処理物搬送路8の少なくとも一方は、図5に示すように夫々完全にループ状になっていなくて、外部からの出入り路を夫々の端部に設けてあっても良い。
〈3〉 前記自動搬送装置は、本実施形態では、人も通行できる廊下を形成して処理物搬送路8にして建築構造を単純化できるようにし、その処理物搬送路8に無軌道無人搬送車を走行させる例を示すが、専用軌道を設ける有軌道無人搬送車を採用するようにしてあってもよい。
【0026】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 処理室
6 第1出入り口部
7 第2出入り口部
8 処理物搬送路
9 作業員移動通路
2B 環状処理室群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の粉体を原料として複数の工程を経て製品を製造するのに、
前記複数の工程毎に個別の処理室を設けてある製造設備であって、
前記各処理室夫々に、原料または製造中間品からなる処理物に対する第1出入り口部を設けると共に、前記処理室における作業員の第2出入り口部を設け、
複数の前記処理室の前記第1出入り口部同士を接続する処理物搬送路を設け、
複数の前記処理室の前記第2出入り口部同士を接続する作業員移動通路を設け、
前記処理物搬送路を介して各工程毎に前記第1出入り口部から別の前記第1出入り口部に処理物を搬送する自動搬送装置を設け、
複数の前記処理室を環状に並設配置して環状処理室群を形成し、
前記環状処理室群の内側に前記作業員移動通路を配置すると共に、外側に前記処理物搬送路を配置し、
前記第1出入り口部を前記環状処理室群の各処理室夫々の外側に設け、
前記第2出入り口部を前記環状処理室群の各処理室夫々の内側に設けてある
製造設備。
【請求項2】
前記自動搬送装置が無人搬送車(AGV)であり、建物の同じフロアに、前記環状処理室群を挟んで無人搬送車移動廊下から成る前記処理物搬送路と前記作業員移動通路とを設けてある請求項1に記載の製造設備。
【請求項3】
前記第1出入り口部に前後に一対の扉を設けたパスルームを設け、前記パスルームに前記無人搬送車が進入した状態で、その無人搬送車から前記処理室に処理物を受け渡すコンベアを設け、前記第2出入り口部に前後に一対の扉を設けたエアーロック室を設けてある請求項2に記載の製造設備。
【請求項4】
前記製品が錠剤又は顆粒状の医薬品である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate