製鉄用容器の耐火物ライニング構造
【課題】 溶銑を保持する製鉄用容器の耐火物ライニング構造において、施工が容易であって施工工数を抑えることができるとともに、溶湯温度降下量の低減及び鉄皮変形の抑制などを長期間にわたって十分に発揮することのできる耐火物ライニング構造を提供する。
【解決手段】 高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器1の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮2、永久耐火物層3、ワーク耐火物層4をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする。
【解決手段】 高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器1の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮2、永久耐火物層3、ワーク耐火物層4をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための製鉄用容器の耐火物ライニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球環境保全のために、全世界的規模でCO2排出量の削減活動がなされている。製鉄業においても、多量の炭素源を使用することから、特に製銑分野及び製鋼分野においては、CO2排出量削減への取り組みが急務となっており、高炉での還元剤比の低減、熱ロスの低減、熱の有効利用化などの熱余裕度創出技術が研究・開発されている。また、熱余裕度の創出は、転炉におけるフェロシリコンなどの熱源原単位の削減が見込めるため、製鉄コスト合理化の面からも技術開発が重要である。
【0003】
製鉄プロセスにおいては、一般に、高炉で製造されて高炉から出湯される溶銑は、トピードカーまたは溶銑鍋に代表される容器で受銑され、次工程の製鋼工程へと輸送される。また、製鋼工程の転炉或いは電気炉で溶製された溶鋼は、取鍋などの容器に出湯され、二次精錬工程や連続鋳造工程などの次工程へと輸送される。これらの製鉄用容器は、一般的には、稼働面(溶湯との接触面)側から順に、ワーク耐火物層、永久耐火物層、鉄皮の3層から形成されるライニング構造である。ワーク耐火物層及び永久耐火物層は、ともに成形煉瓦(定形耐火物)または不定形耐火物で構成され、成形煉瓦で構成されるときには、ワーク煉瓦層及び永久煉瓦層とも呼ばれ、ワーク煉瓦層及び永久煉瓦層を構成する成形煉瓦はそれぞれワーク煉瓦、永久煉瓦と呼ばれている。尚、本発明においては、溶銑及び溶鋼を受けるための容器をまとめて製鉄用容器と称する。
【0004】
溶銑或いは溶鋼を次工程へ輸送する場合、その経過時間(以下、「リードタイム」と記す)が長くなると、溶銑或いは溶鋼が有する熱量のうちで、開口部から外気に放出する熱量や、耐火物層を伝達して鉄皮から外気に放出する熱量が増大し、溶銑或いは溶鋼の温度降下量が増大するという問題が発生する。この問題は、転炉での鉄スクラップの消費量を低下させてCO2排出量の増加を招くばかりでなく、転炉での熱源使用量を増加させ、製造コストの増加にも影響する。また、リードタイムが長くなると、最外殻である鉄皮の温度が上昇し、鉄皮のクリープ変形や亀裂発生を引き起こす恐れがある。そこで、これらの問題を解決する手段の一つとして、製鉄用容器のライニング構造を見直し、熱ロスを低減化する技術が幾つか提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、鉄皮に断熱ボード及びワーク煉瓦層をこの順に施工してなる取鍋において、断熱ボードとワーク煉瓦層との間にロー石煉瓦などの断熱煉瓦を設けた断熱ライニング構造が提案されている。そして、特に、断熱煉瓦層の厚みは60mm以上、ワーク煉瓦層の厚みは30mm以下が望ましいとしている。
【0006】
しかしながら、溶銑を受銑する溶銑鍋に対して、特許文献1に記載されている技術を適用した場合には、断熱煉瓦の厚みが大きく、溶銑鍋の容積が低下するという問題点がある。また、断熱煉瓦の厚みが大きいことから断熱煉瓦内の温度勾配が大きくなり、断熱煉瓦内に亀裂が発生して耐火物寿命が低下する恐れもある。また更に、ワーク煉瓦層の厚みを30mm以下にすると、断熱煉瓦の稼働面側温度が高温になることから、それに応じて熱伝達量が増加し、結果的に断熱性能が低下するという懸念もある。
【0007】
一方、特許文献2及び特許文献3には、熱伝導率の範囲を規定した断熱材を、永久耐火物層と鉄皮との間に配置し、稼働面側から、ワーク耐火物層、永久耐火物層、断熱材、鉄皮からなる4層構造の製鉄用容器のライニング構造が提案されている。そして、特に、断熱材は、厚みを30mm以内とし、3〜100nmの細孔を有するものが望ましいとしている。
【0008】
特許文献2及び特許文献3に開示される技術は、一見、断熱性の効果が得られるように見える。しかしながら、特許文献2及び特許文献3に開示される技術を溶銑鍋において適用した場合、各部位のライニング厚みによっては断熱材の適用温度範囲を超える可能性もあり、長期間にわたって断熱効果を得るためには十分な技術とはいえない。つまり、断熱材は一般的な耐火物に比較して耐熱性は低く、通常、1000℃程度が断熱材使用の上限温度であり、それ以上の温度では変質し、断熱性能を劣化させる。また更に、細孔を有する断熱材を使用した場合には、耐火物施工時に断熱材と水分とが反応し、その結果、断熱性能が損なわれるという問題が生じる。
【0009】
特許文献2及び特許文献3における耐火物施工時での断熱性能の劣化を防止するために、特許文献4では、ワーク耐火物層と永久耐火物層との間に保護板を配置する技術を提案している。しかし、この方法では耐火物施工時に保護板を施工する工程が増えるため、耐火物施工費が増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−50256号公報
【特許文献2】特開2000−104110号公報
【特許文献3】特開2000−226611号公報
【特許文献4】特開2003−42667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
溶湯温度降下量の低減及び鉄皮変形の抑制などを目的として、溶銑鍋のような製鉄用容器のライニング構造を設計する場合には、耐火物の材質や特性、或いは、断熱材の配置位置や厚みを十分に考慮した上で、しかも、施工工数を抑えることのできる耐火物ライニング構造とする必要がある。これらの観点から上記従来技術を検証すれば、未だ改善すべき点が多々あるのが実情である。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための製鉄用容器の耐火物ライニング構造において、施工が容易であって施工工数を抑えることができるとともに、溶湯温度降下量の低減及び鉄皮変形の抑制などを長期間にわたって十分に発揮することのできる、製鉄用容器の耐火物ライニング構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮、永久耐火物層、ワーク耐火物層をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする、製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(2) 前記ワーク耐火物層は、耐火物の圧縮強度σC(MPa)、熱膨張係数α(1/K)、静的弾性率E(MPa)及びポアソン比ν(−)と、ワーク耐火物層の使用温度と室温との温度差ΔT(K)とが、下記の(1)式の関係を満足する材質の耐火物からなることを特徴とする、上記(1)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【0014】
【数1】
【0015】
(3) 前記静的弾性率Eを200MPa以上とすることを特徴とする、上記(2)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(4) 前記ワーク耐火物層は、酸化アルミニウム及び炭化珪素を含有する成形煉瓦または不定形耐火物で構成されることを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)の何れかに記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(5) 前記ワーク耐火物層は、その炭素含有量が10質量%以下であることを特徴とする、上記(1)ないし上記(4)の何れかに記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(6) 前記鉄皮と前記永久耐火物層との間に、断熱材が配置されていることを特徴とする、上記(1)ないし上記(5)の何れかに記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(7) 前記断熱材は、厚みが5mm以下であることを特徴とする、上記(6)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(8) 前記断熱材は、その熱伝導率が0.1W/(m・K)以下であることを特徴とする、上記(6)または上記(7)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空鍋時の製鉄用容器開口部から放出される熱流束平均値を18kW/m2以下に抑制するべく、熱伝導率が12W/(m・K)以下である成形煉瓦または不定形耐火物をワーク耐火物層として施工するので、特別な施工方法を用いる必要はなく施工が容易であり、施工工数を増加させることなく、長期間にわたって製鉄用容器の開口部からの熱ロス量を低減することが達成される。その結果、溶銑の熱余裕度の創出が長期間にわたって実現でき、転炉におけるフェロシリコンなどの熱源原単位の削減が可能になり、また、熱余裕度の創出により鉄スクラップ使用量の増加が可能でありCO2排出量の削減が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層の表面温度の変化を示す図である。
【図2】転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層表面からの抜熱量を示す図である。
【図3】ワーク耐火物層の熱伝導率と溶銑温度降下抑止量との関係を示す図である。
【図4】耐火物の炭素含有量と熱伝導率との関係を示す図である。
【図5】耐火物の炭素含有量と動的弾性率との関係を示す図である。
【図6】耐火物の静的弾性率とスポーリング指数との関係を示す図である。
【図7】耐火物のAl2O3含有量と圧縮強度との関係を示す図である。
【図8】熱応力σthと圧縮強度σCとの比σth/σCと、繰り返し熱応力負荷時の破壊回数との関係の調査結果を示す図である。
【図9】断熱材を施工した場合でのワーク耐火物層の熱伝導率と溶銑温度降下抑止量との関係を示す図である。
【図10】耐火物ライニングのモデル構造を示す概略図である。
【図11】断熱材の施工位置を変えたときの断熱効果の算出結果を示す図である。
【図12】断熱材の厚みを変化させたときの断熱材内面側の温度変化の算出結果を示す図である。
【図13】本発明のライニング構造で施工された溶銑鍋の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
溶銑鍋に代表される取鍋型形状の製鉄用容器の場合、その抜熱形態は、(a)耐火物層を通じた鉄皮から外気への放熱、(b)上部の開口部からの外気への放熱の2通りが挙げられる。これらの放熱は何れも、放熱面から外気への輻射伝熱及び放熱面からの対流伝熱による2種の伝熱機構で抜熱されると考えられる。
【0020】
下記の(2)式に輻射伝熱による放熱量を示す。但し、(2)式において、QRは輻射伝熱による放熱量(J/sec)、σはステファン‐ボルツマン定数(=5.67×10-8J/(m2・sec・K4))、εは輻射率(−)、Snは伝熱面面積(m2)、Tは物体表面温度(K)、T0は外気温度(K)である。
【0021】
【数2】
【0022】
また、下記の(3)式に対流伝熱による放熱量を示す。但し、(3)式において、QCは対流伝熱による放熱量(J/sec)、hCは自然対流熱伝達係数(J/(m2・sec・K))、Snは伝熱面面積(m2)、Tは物体表面温度(K)、T0は外気温度(K)である。
【0023】
【数3】
【0024】
また、耐火物層の伝熱機構は、各ライニング層で下記の(4)式に示す非定常熱伝導によって伝達されると考えられている。但し、(4)式において、λiは材質iの熱伝導率(W/(m・K))、Cpは材質iの比熱(J/(kg・K))、Tは物体温度(K)、ρiは材質iの密度(kg/m3)、tは時間(sec)、xは端部からの距離(m)である。
【0025】
【数4】
【0026】
また更に、各耐火物内の蓄熱量は下記の(5)式で算出される。但し、(5)式において、Hは耐火物の蓄熱量(W/m2)、Cpは材質iの比熱(J/(kg・K))、T0及びT1は間隔Δx間の両端温度(K)、ρiは材質iの密度(kg/m3)、Δxは一端からの距離間隔(m)である。
【0027】
【数5】
【0028】
本発明者らは、事前検討として、(2)式〜(4)式を用いて温度計算するとともに実機溶銑鍋の温度測定を行い、実機溶銑鍋での抜熱量及びその内訳を調査した。その結果を表1に示す。表1に示すように、上記(a)の「鉄皮からの抜熱」が全体の約40%、上記(b)の「開口部からの放熱」が全体の約60%であることが判明した。
【0029】
【表1】
【0030】
更に、溶銑鍋に保持した溶銑を転炉にて払出した後、高炉に戻るまでの空鍋状態における溶銑鍋の熱ロスを調査した。転炉への払出し時の溶銑温度は1280℃であった。転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層の表面温度の変化を測定した結果を図1に示す。払出し後から1時間経過時では、ワーク耐火物層の表面温度は約300℃低下し、2時間経過時では約500℃低下した。このワーク耐火物層の表面温度の変化から、転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層表面からの抜熱量を(2)式〜(5)式により算出すると、図2のようになる。図2に示すように、払出し後から1時間の間に溶銑鍋開口部から放出される平均の熱流束は20.0kW/m2になることが判明した。これは、ワーク耐火物層に蓄積された熱量の外気への放散(主に輻射による放散)が挙げられる。
【0031】
この調査により、溶銑鍋の抜熱量を少なくするためには、転炉に溶銑を払出した後の空の溶銑鍋開口部からの放熱を低下することが特に重要であることが分かった。また、耐火物ライニングの改善により、溶銑温度の低下抑止に十分な効果を発揮するためには空鍋時の開口部から放出される熱流束平均値を18kW/m2以下にすることが必要であることも分かった。これ以上の熱量が放出されると、熱ロス低減効果が極めて小さくなるか、或いは、熱ロス低減効果が得られず、溶銑温度の降下量、具体的には受銑時の溶銑温度降下量が増大してしまい好ましくない。そこで、この空鍋の開口部からの放熱を少なくすることを検討した。
【0032】
取鍋型製鉄用容器の開口部からの放熱量低減に関しては、溶鋼搬送用の取鍋で一般的に適用されている、開口部を覆うための蓋の設置が考えられるが、蓋の着脱に大規模な設備を要すること、及び、溶銑鍋では収容した溶銑に溶銑予備処理(脱燐処理及び脱硫処理)を実施しており、この溶銑予備処理時の地金付着によって蓋の着脱不可などの懸念事項が多く、溶銑鍋に蓋を設置することは現実的ではない。
【0033】
そこで、比較的簡便な手段を用いて開口部からの熱ロスを低減化することを検討した。その結果、ワーク耐火物層の熱伝導率を低減化してワーク耐火物層に蓄積される熱量を減少することにより開口部からの熱ロスが低減化されることを知見した。
【0034】
図3に、ワーク耐火物層の熱伝導率の変化と溶銑温度降下抑止量との関係を検討した結果を示す。ワーク耐火物層の熱伝導率を低下すると、当然ながら鉄皮からの熱ロスは抑制されるが、図3に示すように、開口部からの熱ロスも比較的大きく低減されることを見出した。これは、ワーク耐火物層の熱伝導率が低下すると、(4)式からも明らかなように、ワーク耐火物内部の温度勾配(温度の時間的変化)が低下し、ワーク耐火物層自身に蓄積された熱量の外気への放散(主に輻射による放散)が抑制されるためである。これにより、溶銑鍋の空鍋状態時における開口部から放出される熱流束の最大値を18kW/m2以下に抑えることが可能であることが分かった。
【0035】
ワーク耐火物層の熱伝導率は、図3に示すように、低ければ低いほど熱ロス低減の効果があるが、具体的には12W/(m・K)以下とすることが必要である。これを超える熱伝導率では、熱ロス低減効果が極めて小さくなるか、或いは、熱ロス低減効果が得られずに溶銑温度降下量が増大してしまうためである。更に、好ましくは熱伝導率を7W/(m・K)以下とすることである。
【0036】
開口部からの放熱量低減策としては、前述したワーク耐火物層の低熱伝導度化の他に、炭素含有物質、鉄鋼スラグなどをはじめとする保温材の投入や、溶銑鍋回転率の向上などが挙げられる。但し、保温材の投入は処理費や材料費を考慮すると、場合によってはコスト増加になりかねず、また、溶銑鍋回転率の向上は、トラブル時など、滞留時間が増大すると、放熱量が増大してしまうため、確実な手段とは言い難い。従って、ワーク耐火物層を低熱伝導度化することが、コスト増加を低くとどめ、操業条件に左右されず確実な熱ロス低減を達成できる。
【0037】
本発明は上記検討結果に基づきなされたもので、本発明に係る製鉄用容器の耐火物ライニング構造は、高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮、永久耐火物層、ワーク耐火物層をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を転炉に払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする。
【0038】
本発明で用いるワーク耐火物層の材質としては、耐食性及び耐熱衝撃性(耐スポーリング性)に優れることから、Al2O3‐SiC‐C系などの炭素を含有する成形煉瓦または不定形耐火物が好適である。但し、炭素を含有する耐火物は炭素自身が熱伝導の媒体となることから、つまり熱伝導率を上昇させることから、本発明を適用するにはなるべく炭素含有量を低下させたほうが望ましい。しかしながら、炭素含有量を低下させると、耐火物自身の硬度が増加し、耐熱衝撃性、また、スラグとの反応量も増加することから、これらの特性を改良した材質を適用することが望ましい。
【0039】
そこで、ワーク耐火物層の炭素含有量と耐火物の物性・特性との関係に関して、本発明者らは最適材質を求めるべく更なる調査を行なった。
【0040】
図4に、耐火物の炭素含有量と熱伝導率との関係を示す。一般的に、耐火物の熱伝導率は耐火物中の炭素濃度に依存し、炭素濃度が高くなるほど熱伝導率は高くなる。しかしながら、図4の傾向を見ると、炭素含有量が10質量%を境界として、10質量%を超えると熱伝導率は急激に増大し、一方、炭素含有量が10質量%以下の範囲では熱伝導率の増加の傾きは低下する。これは、耐火物の伝熱機構は、耐火物が含有する炭素の熱伝導率で決定されると仮定すると、炭素含有量が10質量%以下では耐火物中の炭素分布が疎となるために、熱伝導率が低下すると考えられる。また、炭素含有量が低下すると、その低下した炭素の分をAl2O3やSiO2などの熱伝導率の低い耐火物構成物質で補充するため、熱伝導率は高位になりにくくなる。以上の検討結果から、ワーク耐火物層の炭素含有量は10質量%以下とすることが好ましいことが分かった。
【0041】
ところで、耐火物の炭素含有量が変化すると、耐火物自身の機械特性も変化し、特に耐熱衝撃性が劣化する。上記のように、ワーク耐火物層の炭素含有量を10質量%以下に制限すると、稼動中のワーク耐火物層での破壊や亀裂の発生により製鉄用容器の寿命の低下を招きかねない。そこで、本発明者らは本発明の優位性を確認するための検討を更に行なった。
【0042】
図5に、耐火物の炭素含有量と動的弾性率との関係を示す。図5から明らかなように、炭素含有量が低下すると動的弾性率は増加する傾向にある。各種耐火物材質を用いて、溶銑への浸漬法によるスポーリング試験を実施し、試験前後の動的弾性率を測定した。或る耐火物を用いた場合での試験前後における動的弾性率の変化割合を1として、各種耐火物での試験前後における動的弾性率の変化割合を指数化した値をスポーリング指数として評価した。ここで、静的弾性率とは、等温変化に伴う材料の弾性率であり、通常、引っ張り試験や曲げ試験から得られる弾性率のことであり、動的弾性率とは、断熱変化に伴う材料の弾性率であり、通常、硬い材料であれば高い値を有する。また、材料中に亀裂が発生すると、動的弾性率は低下する。
【0043】
各種耐火物を調査した結果として得られた、耐火物の静的弾性率とスポーリング指数との関係を図6に示す。図6に示すように、スポーリング指数は静的弾性率が200MPa以下の耐火物では急激に減少し、材料強度が低下することが分かった。このことから、ワーク耐火物層として使用する耐火物材料における静的弾性率は少なくとも200MPa以上であることが好ましい。
【0044】
また、耐火物のAl2O3含有量と圧縮強度との関係を図7に示す。Al2O3含有量の増加により、圧縮強度は上昇することから、耐火物の炭素含有量を低下する際には、その低下分をAl2O3で補い、耐火物の圧縮強度を確保することが好ましい。
【0045】
また更に、実際の製鉄用容器のワーク耐火物層では、受銑→払い出し→受銑の熱サイクルに起因してワーク耐火物層内部に熱応力が発生し、それが周期的に変動する。ここで、製鉄用容器に施工されたワーク耐火物層に発生する熱応力は、耐火物の熱膨張率と静的弾性率との積として、下記の(6)式で表される。
【0046】
【数6】
【0047】
但し、(6)式において、σthは、耐火物内に発生する熱応力(MPa)、αは、耐火物の熱膨張係数(1/K)、Eは、耐火物の静的弾性率(MPa)、νは、耐火物のポアソン比、ΔTは、ワーク耐火物層の使用温度と室温との温度差(K)である。
【0048】
上記の(6)式より、温度差ΔTが大きくなるほど熱応力σthは大きくなることから、ワーク耐火物層内に発生する熱応力の最大値は、溶銑を保持した状態のときと考えられる。本発明者らは、(6)式で示される熱応力σthと耐火物の圧縮強度σCとの比σth/σCと、繰り返し熱応力破壊の回数(疲労寿命)との関係を調査し、図8に示す結果を得た。
【0049】
ここで、本発明においては、発生する熱応力σthを算出するにあたり、温度差ΔTとして、耐火物が受ける最高温度(溶銑または溶鋼の温度)と室温との差を用いている。溶銑や溶鋼が非充填時においても耐火物は溶銑や溶鋼の充填時に受けた顕熱が蓄熱されるため、実際には、耐火物内の温度は室温よりも高位となる。しかし、溶銑や溶鋼が非充填時における耐火物の温度は設備の稼働状況や、溶銑または溶鋼の条件によって随時変化することから正確な温度を把握することは難しい。そこで、本発明では、最も熱応力σthが高くなる条件としたときに圧縮強度σCとの比較をするべく、温度差ΔTとして室温との差を適用した。
【0050】
図8に示すように、繰り返しの熱応力による破壊を改善するには、耐火物に発生する熱応力σthと耐火物の圧縮強度σCとの比σth/σCを0.7以下にすることが好ましいことが分かった。これは、繰り返しの熱応力σthの圧縮強度σCに対する割合が70%の付近に、耐火物の疲労限界が存在し、この値以下の応力値では繰り返す熱負荷による破壊は殆ど起きないことを示唆している。従って、ワーク耐火物層を施工するにあたり、下記の(1)式を満足する材質の耐火物を選定すれば1年以上の高寿命を有し、熱ロスの低い耐火物材質を有効に適用することが可能となる。
【0051】
【数7】
【0052】
また、溶銑鍋の耐火物ライニング構造において、溶銑温度降下量を更に低減するべく鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工した場合でのワーク耐火物層の熱伝導率の変化と溶銑温度降下抑止量との関係を検討した。検討結果を図9に示す。図9は、鉄皮と永久耐火物層との間に厚み5mmの断熱材を施工した例を示す図で、図9に示すように、鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工し、且つ、ワーク耐火物層の熱伝導率を低下した場合、放熱ロスの効果が更に大きくなることが分かった。
【0053】
製鉄用容器に断熱材を施工する場合は、鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工することが好ましい。その理由は以下の通りである。即ち、図10に、計算に用いた耐火物ライニングのモデル構造の概略図を示すように、断熱材の施工位置を、ワーク耐火物層4と永久耐火物層3との間、永久耐火物層3を構成する2層の成形煉瓦3aと成形煉瓦3bとの間、永久耐火物層3と鉄皮2との間の3種類とし、断熱材の厚みを変化させた場合について非定常伝熱計算を用いて検討した。尚、図10では、永久耐火物層3は2層の成形煉瓦を仮定し、永久耐火物層3を構成する2層の成形煉瓦を3a及び3bで表示しており、断熱材は表示していない。また、図10に示す●印は温度分布を表している。
【0054】
検討結果を図11に示す。図11の縦軸は、断熱材を設置しないときを基準とし、断熱材を配置したときの溶銑温度の上昇を負の数値で表示しており、負の数値が大きくなるほど、断熱効果が大きいことを示している。図11に示すように、ワーク耐火物層と永久耐火物層との間に断熱材を施工した場合に最も抜熱量が大きく、永久耐火物層と鉄皮との間に断熱材を施工した場合に最も抜熱量が抑制されることが分かった。
【0055】
また、断熱材を施工した場合において、断熱材の厚みを変化させたときの断熱材の内面側(=稼働面側)の温度変化を算出した結果を図12に示す。断熱材の厚みを5mm以上とした場合、その内側温度は1000℃を超え、断熱材厚みに対する温度の変化割合は低下した。また、図12より、断熱材厚みが5mm以上の場合の抜熱量変化割合は大きく低減している。このことから、断熱材の厚みを5mm以上にしても、抜熱量の変化は単純には増大せず、抜熱量の変化割合は徐々に停滞することが判明した。
【0056】
これらの計算結果を実証するために実験室的実験を行ったところ、断熱材を永久耐火物層と鉄皮との間に施工した条件において、最も熱流束が低位となった。また、各条件で断熱材厚みが5mmまでは断熱材厚みが増加するほど熱流束は低位となったが、5mmと10mmとでは熱流束の増加は見られなかった。この実験結果から、上記計算結果の妥当性が確認できた。
【0057】
断熱材の熱伝導率は、抜熱量低減の効果を得る観点から、0.1W/(m・K)以下とすることが望ましい。0.1W/(m・K)を超えると、放熱量が増大し、期待される断熱効果が得られない。尚、市販の断熱材は1000℃を超える高温では、断熱材自身の収縮が起こり、熱伝導率の増大が起こり得るため、その使用温度は1000℃以下にすることが好ましい。また、断熱材の施工に関しては、断熱材への水分吸収を避けるような施工方法を採ることが望ましい。
【0058】
このような構成の本発明によれば、ワーク耐火物層の熱伝導率を規定するだけで十分であるので、施工が容易であり、施工工数を増加させることなく、長期間にわたって製鉄用容器の開口部からの熱ロス量を低減することが達成される。
【実施例1】
【0059】
図13に示す、開口部の面積が17m2であるヒートサイズ300トンの取鍋型溶銑鍋に、ワーク耐火物層、永久耐火物層、一部の例では断熱材も施工した。ワーク耐火物層は、熱伝導率を種々に変更した。本発明例及び比較例の施工条件を表2に示す。尚、図13において、符号1は溶銑鍋、2は鉄皮、3は永久耐火物層、4はワーク耐火物層、5は断熱材であり、図13は、本発明例4の例を示している。また、表2中の圧縮応力比とは、ワーク耐火物の熱応力σth(MPa)と圧縮強度σC(MPa)との比σth/σCのことであり、使用したワーク耐火物の熱膨張係数α(1/K)は7.0×10-6、ポアソン比ν(−)は0.3である。
【0060】
【表2】
【0061】
本発明例1では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が17kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が12.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.70、静的弾性率が800MPa、炭素含有率が10質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。
【0062】
本発明例2では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が14kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が7.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.65、静的弾性率が700MPa、炭素含有率が10質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。
【0063】
本発明例3では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が14kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が6.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.40、静的弾性率が400MPa、炭素含有率が7質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。
【0064】
本発明例4では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が14kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が7.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.50、静的弾性率が600MPa、炭素含有率が7質量%の成形煉瓦を施工した。また、熱伝導率が0.02W/(m・K)、厚みが5mmの断熱材を鉄皮と永久耐火物層との間に施工した。
【0065】
これに対し、比較例1では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.80、静的弾性率が850MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は20kW/m2になった。
【0066】
比較例2では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.70、静的弾性率が180MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は19.8kW/m2になった。
【0067】
比較例3では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.90、静的弾性率が750MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は19.8kW/m2になった。
【0068】
比較例4では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.80、静的弾性率が600MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。また、熱伝導率が0.02W/(m・K)、厚みが5mmの断熱材を鉄皮と永久耐火物層との間に施工した。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は19.8kW/m2になった。
【0069】
本発明例及び比較例ともに何回かの「溶銑の受銑〜払出し」を行い、その「溶銑の受銑〜払出し」における溶銑温度降下量(ΔT1)及び受銑時の溶銑温度降下量(ΔT2)を調査した。更に、ワーク耐火物層が熱疲労により損耗・脱落するまでの使用回数(チャージ数)を調査するとともに、そのときのワーク煉瓦における亀裂発生状況、そのときまでのワーク煉瓦の1チャージ(受銑〜払出〜再受銑)あたりの損耗量(mm/ch)を調査した。調査結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
本発明例1〜4では、何れの比較例に対しても溶銑温度降下量(ΔT1)及び溶銑温度降下量(ΔT2)が低減した。特に、受銑時における溶銑の温度降下量(ΔT2)が低減した。また、本発明例1〜4では、ワーク耐火物層の亀裂発生頻度が少なく、破壊脱落するまでの使用回数も向上し、損耗量も低位であった。更に、ワーク耐火物層を低熱伝導度化し、且つ鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工した本発明例4では、最も温度降下量が低位となり、ワーク耐火物層の損傷も比較的低位であった。
【符号の説明】
【0072】
1 溶銑鍋
2 鉄皮
3 永久耐火物層
4 ワーク耐火物層
5 断熱材
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための製鉄用容器の耐火物ライニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球環境保全のために、全世界的規模でCO2排出量の削減活動がなされている。製鉄業においても、多量の炭素源を使用することから、特に製銑分野及び製鋼分野においては、CO2排出量削減への取り組みが急務となっており、高炉での還元剤比の低減、熱ロスの低減、熱の有効利用化などの熱余裕度創出技術が研究・開発されている。また、熱余裕度の創出は、転炉におけるフェロシリコンなどの熱源原単位の削減が見込めるため、製鉄コスト合理化の面からも技術開発が重要である。
【0003】
製鉄プロセスにおいては、一般に、高炉で製造されて高炉から出湯される溶銑は、トピードカーまたは溶銑鍋に代表される容器で受銑され、次工程の製鋼工程へと輸送される。また、製鋼工程の転炉或いは電気炉で溶製された溶鋼は、取鍋などの容器に出湯され、二次精錬工程や連続鋳造工程などの次工程へと輸送される。これらの製鉄用容器は、一般的には、稼働面(溶湯との接触面)側から順に、ワーク耐火物層、永久耐火物層、鉄皮の3層から形成されるライニング構造である。ワーク耐火物層及び永久耐火物層は、ともに成形煉瓦(定形耐火物)または不定形耐火物で構成され、成形煉瓦で構成されるときには、ワーク煉瓦層及び永久煉瓦層とも呼ばれ、ワーク煉瓦層及び永久煉瓦層を構成する成形煉瓦はそれぞれワーク煉瓦、永久煉瓦と呼ばれている。尚、本発明においては、溶銑及び溶鋼を受けるための容器をまとめて製鉄用容器と称する。
【0004】
溶銑或いは溶鋼を次工程へ輸送する場合、その経過時間(以下、「リードタイム」と記す)が長くなると、溶銑或いは溶鋼が有する熱量のうちで、開口部から外気に放出する熱量や、耐火物層を伝達して鉄皮から外気に放出する熱量が増大し、溶銑或いは溶鋼の温度降下量が増大するという問題が発生する。この問題は、転炉での鉄スクラップの消費量を低下させてCO2排出量の増加を招くばかりでなく、転炉での熱源使用量を増加させ、製造コストの増加にも影響する。また、リードタイムが長くなると、最外殻である鉄皮の温度が上昇し、鉄皮のクリープ変形や亀裂発生を引き起こす恐れがある。そこで、これらの問題を解決する手段の一つとして、製鉄用容器のライニング構造を見直し、熱ロスを低減化する技術が幾つか提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、鉄皮に断熱ボード及びワーク煉瓦層をこの順に施工してなる取鍋において、断熱ボードとワーク煉瓦層との間にロー石煉瓦などの断熱煉瓦を設けた断熱ライニング構造が提案されている。そして、特に、断熱煉瓦層の厚みは60mm以上、ワーク煉瓦層の厚みは30mm以下が望ましいとしている。
【0006】
しかしながら、溶銑を受銑する溶銑鍋に対して、特許文献1に記載されている技術を適用した場合には、断熱煉瓦の厚みが大きく、溶銑鍋の容積が低下するという問題点がある。また、断熱煉瓦の厚みが大きいことから断熱煉瓦内の温度勾配が大きくなり、断熱煉瓦内に亀裂が発生して耐火物寿命が低下する恐れもある。また更に、ワーク煉瓦層の厚みを30mm以下にすると、断熱煉瓦の稼働面側温度が高温になることから、それに応じて熱伝達量が増加し、結果的に断熱性能が低下するという懸念もある。
【0007】
一方、特許文献2及び特許文献3には、熱伝導率の範囲を規定した断熱材を、永久耐火物層と鉄皮との間に配置し、稼働面側から、ワーク耐火物層、永久耐火物層、断熱材、鉄皮からなる4層構造の製鉄用容器のライニング構造が提案されている。そして、特に、断熱材は、厚みを30mm以内とし、3〜100nmの細孔を有するものが望ましいとしている。
【0008】
特許文献2及び特許文献3に開示される技術は、一見、断熱性の効果が得られるように見える。しかしながら、特許文献2及び特許文献3に開示される技術を溶銑鍋において適用した場合、各部位のライニング厚みによっては断熱材の適用温度範囲を超える可能性もあり、長期間にわたって断熱効果を得るためには十分な技術とはいえない。つまり、断熱材は一般的な耐火物に比較して耐熱性は低く、通常、1000℃程度が断熱材使用の上限温度であり、それ以上の温度では変質し、断熱性能を劣化させる。また更に、細孔を有する断熱材を使用した場合には、耐火物施工時に断熱材と水分とが反応し、その結果、断熱性能が損なわれるという問題が生じる。
【0009】
特許文献2及び特許文献3における耐火物施工時での断熱性能の劣化を防止するために、特許文献4では、ワーク耐火物層と永久耐火物層との間に保護板を配置する技術を提案している。しかし、この方法では耐火物施工時に保護板を施工する工程が増えるため、耐火物施工費が増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−50256号公報
【特許文献2】特開2000−104110号公報
【特許文献3】特開2000−226611号公報
【特許文献4】特開2003−42667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
溶湯温度降下量の低減及び鉄皮変形の抑制などを目的として、溶銑鍋のような製鉄用容器のライニング構造を設計する場合には、耐火物の材質や特性、或いは、断熱材の配置位置や厚みを十分に考慮した上で、しかも、施工工数を抑えることのできる耐火物ライニング構造とする必要がある。これらの観点から上記従来技術を検証すれば、未だ改善すべき点が多々あるのが実情である。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための製鉄用容器の耐火物ライニング構造において、施工が容易であって施工工数を抑えることができるとともに、溶湯温度降下量の低減及び鉄皮変形の抑制などを長期間にわたって十分に発揮することのできる、製鉄用容器の耐火物ライニング構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮、永久耐火物層、ワーク耐火物層をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする、製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(2) 前記ワーク耐火物層は、耐火物の圧縮強度σC(MPa)、熱膨張係数α(1/K)、静的弾性率E(MPa)及びポアソン比ν(−)と、ワーク耐火物層の使用温度と室温との温度差ΔT(K)とが、下記の(1)式の関係を満足する材質の耐火物からなることを特徴とする、上記(1)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【0014】
【数1】
【0015】
(3) 前記静的弾性率Eを200MPa以上とすることを特徴とする、上記(2)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(4) 前記ワーク耐火物層は、酸化アルミニウム及び炭化珪素を含有する成形煉瓦または不定形耐火物で構成されることを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)の何れかに記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(5) 前記ワーク耐火物層は、その炭素含有量が10質量%以下であることを特徴とする、上記(1)ないし上記(4)の何れかに記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(6) 前記鉄皮と前記永久耐火物層との間に、断熱材が配置されていることを特徴とする、上記(1)ないし上記(5)の何れかに記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(7) 前記断熱材は、厚みが5mm以下であることを特徴とする、上記(6)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
(8) 前記断熱材は、その熱伝導率が0.1W/(m・K)以下であることを特徴とする、上記(6)または上記(7)に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空鍋時の製鉄用容器開口部から放出される熱流束平均値を18kW/m2以下に抑制するべく、熱伝導率が12W/(m・K)以下である成形煉瓦または不定形耐火物をワーク耐火物層として施工するので、特別な施工方法を用いる必要はなく施工が容易であり、施工工数を増加させることなく、長期間にわたって製鉄用容器の開口部からの熱ロス量を低減することが達成される。その結果、溶銑の熱余裕度の創出が長期間にわたって実現でき、転炉におけるフェロシリコンなどの熱源原単位の削減が可能になり、また、熱余裕度の創出により鉄スクラップ使用量の増加が可能でありCO2排出量の削減が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層の表面温度の変化を示す図である。
【図2】転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層表面からの抜熱量を示す図である。
【図3】ワーク耐火物層の熱伝導率と溶銑温度降下抑止量との関係を示す図である。
【図4】耐火物の炭素含有量と熱伝導率との関係を示す図である。
【図5】耐火物の炭素含有量と動的弾性率との関係を示す図である。
【図6】耐火物の静的弾性率とスポーリング指数との関係を示す図である。
【図7】耐火物のAl2O3含有量と圧縮強度との関係を示す図である。
【図8】熱応力σthと圧縮強度σCとの比σth/σCと、繰り返し熱応力負荷時の破壊回数との関係の調査結果を示す図である。
【図9】断熱材を施工した場合でのワーク耐火物層の熱伝導率と溶銑温度降下抑止量との関係を示す図である。
【図10】耐火物ライニングのモデル構造を示す概略図である。
【図11】断熱材の施工位置を変えたときの断熱効果の算出結果を示す図である。
【図12】断熱材の厚みを変化させたときの断熱材内面側の温度変化の算出結果を示す図である。
【図13】本発明のライニング構造で施工された溶銑鍋の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
溶銑鍋に代表される取鍋型形状の製鉄用容器の場合、その抜熱形態は、(a)耐火物層を通じた鉄皮から外気への放熱、(b)上部の開口部からの外気への放熱の2通りが挙げられる。これらの放熱は何れも、放熱面から外気への輻射伝熱及び放熱面からの対流伝熱による2種の伝熱機構で抜熱されると考えられる。
【0020】
下記の(2)式に輻射伝熱による放熱量を示す。但し、(2)式において、QRは輻射伝熱による放熱量(J/sec)、σはステファン‐ボルツマン定数(=5.67×10-8J/(m2・sec・K4))、εは輻射率(−)、Snは伝熱面面積(m2)、Tは物体表面温度(K)、T0は外気温度(K)である。
【0021】
【数2】
【0022】
また、下記の(3)式に対流伝熱による放熱量を示す。但し、(3)式において、QCは対流伝熱による放熱量(J/sec)、hCは自然対流熱伝達係数(J/(m2・sec・K))、Snは伝熱面面積(m2)、Tは物体表面温度(K)、T0は外気温度(K)である。
【0023】
【数3】
【0024】
また、耐火物層の伝熱機構は、各ライニング層で下記の(4)式に示す非定常熱伝導によって伝達されると考えられている。但し、(4)式において、λiは材質iの熱伝導率(W/(m・K))、Cpは材質iの比熱(J/(kg・K))、Tは物体温度(K)、ρiは材質iの密度(kg/m3)、tは時間(sec)、xは端部からの距離(m)である。
【0025】
【数4】
【0026】
また更に、各耐火物内の蓄熱量は下記の(5)式で算出される。但し、(5)式において、Hは耐火物の蓄熱量(W/m2)、Cpは材質iの比熱(J/(kg・K))、T0及びT1は間隔Δx間の両端温度(K)、ρiは材質iの密度(kg/m3)、Δxは一端からの距離間隔(m)である。
【0027】
【数5】
【0028】
本発明者らは、事前検討として、(2)式〜(4)式を用いて温度計算するとともに実機溶銑鍋の温度測定を行い、実機溶銑鍋での抜熱量及びその内訳を調査した。その結果を表1に示す。表1に示すように、上記(a)の「鉄皮からの抜熱」が全体の約40%、上記(b)の「開口部からの放熱」が全体の約60%であることが判明した。
【0029】
【表1】
【0030】
更に、溶銑鍋に保持した溶銑を転炉にて払出した後、高炉に戻るまでの空鍋状態における溶銑鍋の熱ロスを調査した。転炉への払出し時の溶銑温度は1280℃であった。転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層の表面温度の変化を測定した結果を図1に示す。払出し後から1時間経過時では、ワーク耐火物層の表面温度は約300℃低下し、2時間経過時では約500℃低下した。このワーク耐火物層の表面温度の変化から、転炉への溶銑払出し終了からの経過時間に伴うワーク耐火物層表面からの抜熱量を(2)式〜(5)式により算出すると、図2のようになる。図2に示すように、払出し後から1時間の間に溶銑鍋開口部から放出される平均の熱流束は20.0kW/m2になることが判明した。これは、ワーク耐火物層に蓄積された熱量の外気への放散(主に輻射による放散)が挙げられる。
【0031】
この調査により、溶銑鍋の抜熱量を少なくするためには、転炉に溶銑を払出した後の空の溶銑鍋開口部からの放熱を低下することが特に重要であることが分かった。また、耐火物ライニングの改善により、溶銑温度の低下抑止に十分な効果を発揮するためには空鍋時の開口部から放出される熱流束平均値を18kW/m2以下にすることが必要であることも分かった。これ以上の熱量が放出されると、熱ロス低減効果が極めて小さくなるか、或いは、熱ロス低減効果が得られず、溶銑温度の降下量、具体的には受銑時の溶銑温度降下量が増大してしまい好ましくない。そこで、この空鍋の開口部からの放熱を少なくすることを検討した。
【0032】
取鍋型製鉄用容器の開口部からの放熱量低減に関しては、溶鋼搬送用の取鍋で一般的に適用されている、開口部を覆うための蓋の設置が考えられるが、蓋の着脱に大規模な設備を要すること、及び、溶銑鍋では収容した溶銑に溶銑予備処理(脱燐処理及び脱硫処理)を実施しており、この溶銑予備処理時の地金付着によって蓋の着脱不可などの懸念事項が多く、溶銑鍋に蓋を設置することは現実的ではない。
【0033】
そこで、比較的簡便な手段を用いて開口部からの熱ロスを低減化することを検討した。その結果、ワーク耐火物層の熱伝導率を低減化してワーク耐火物層に蓄積される熱量を減少することにより開口部からの熱ロスが低減化されることを知見した。
【0034】
図3に、ワーク耐火物層の熱伝導率の変化と溶銑温度降下抑止量との関係を検討した結果を示す。ワーク耐火物層の熱伝導率を低下すると、当然ながら鉄皮からの熱ロスは抑制されるが、図3に示すように、開口部からの熱ロスも比較的大きく低減されることを見出した。これは、ワーク耐火物層の熱伝導率が低下すると、(4)式からも明らかなように、ワーク耐火物内部の温度勾配(温度の時間的変化)が低下し、ワーク耐火物層自身に蓄積された熱量の外気への放散(主に輻射による放散)が抑制されるためである。これにより、溶銑鍋の空鍋状態時における開口部から放出される熱流束の最大値を18kW/m2以下に抑えることが可能であることが分かった。
【0035】
ワーク耐火物層の熱伝導率は、図3に示すように、低ければ低いほど熱ロス低減の効果があるが、具体的には12W/(m・K)以下とすることが必要である。これを超える熱伝導率では、熱ロス低減効果が極めて小さくなるか、或いは、熱ロス低減効果が得られずに溶銑温度降下量が増大してしまうためである。更に、好ましくは熱伝導率を7W/(m・K)以下とすることである。
【0036】
開口部からの放熱量低減策としては、前述したワーク耐火物層の低熱伝導度化の他に、炭素含有物質、鉄鋼スラグなどをはじめとする保温材の投入や、溶銑鍋回転率の向上などが挙げられる。但し、保温材の投入は処理費や材料費を考慮すると、場合によってはコスト増加になりかねず、また、溶銑鍋回転率の向上は、トラブル時など、滞留時間が増大すると、放熱量が増大してしまうため、確実な手段とは言い難い。従って、ワーク耐火物層を低熱伝導度化することが、コスト増加を低くとどめ、操業条件に左右されず確実な熱ロス低減を達成できる。
【0037】
本発明は上記検討結果に基づきなされたもので、本発明に係る製鉄用容器の耐火物ライニング構造は、高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮、永久耐火物層、ワーク耐火物層をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を転炉に払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする。
【0038】
本発明で用いるワーク耐火物層の材質としては、耐食性及び耐熱衝撃性(耐スポーリング性)に優れることから、Al2O3‐SiC‐C系などの炭素を含有する成形煉瓦または不定形耐火物が好適である。但し、炭素を含有する耐火物は炭素自身が熱伝導の媒体となることから、つまり熱伝導率を上昇させることから、本発明を適用するにはなるべく炭素含有量を低下させたほうが望ましい。しかしながら、炭素含有量を低下させると、耐火物自身の硬度が増加し、耐熱衝撃性、また、スラグとの反応量も増加することから、これらの特性を改良した材質を適用することが望ましい。
【0039】
そこで、ワーク耐火物層の炭素含有量と耐火物の物性・特性との関係に関して、本発明者らは最適材質を求めるべく更なる調査を行なった。
【0040】
図4に、耐火物の炭素含有量と熱伝導率との関係を示す。一般的に、耐火物の熱伝導率は耐火物中の炭素濃度に依存し、炭素濃度が高くなるほど熱伝導率は高くなる。しかしながら、図4の傾向を見ると、炭素含有量が10質量%を境界として、10質量%を超えると熱伝導率は急激に増大し、一方、炭素含有量が10質量%以下の範囲では熱伝導率の増加の傾きは低下する。これは、耐火物の伝熱機構は、耐火物が含有する炭素の熱伝導率で決定されると仮定すると、炭素含有量が10質量%以下では耐火物中の炭素分布が疎となるために、熱伝導率が低下すると考えられる。また、炭素含有量が低下すると、その低下した炭素の分をAl2O3やSiO2などの熱伝導率の低い耐火物構成物質で補充するため、熱伝導率は高位になりにくくなる。以上の検討結果から、ワーク耐火物層の炭素含有量は10質量%以下とすることが好ましいことが分かった。
【0041】
ところで、耐火物の炭素含有量が変化すると、耐火物自身の機械特性も変化し、特に耐熱衝撃性が劣化する。上記のように、ワーク耐火物層の炭素含有量を10質量%以下に制限すると、稼動中のワーク耐火物層での破壊や亀裂の発生により製鉄用容器の寿命の低下を招きかねない。そこで、本発明者らは本発明の優位性を確認するための検討を更に行なった。
【0042】
図5に、耐火物の炭素含有量と動的弾性率との関係を示す。図5から明らかなように、炭素含有量が低下すると動的弾性率は増加する傾向にある。各種耐火物材質を用いて、溶銑への浸漬法によるスポーリング試験を実施し、試験前後の動的弾性率を測定した。或る耐火物を用いた場合での試験前後における動的弾性率の変化割合を1として、各種耐火物での試験前後における動的弾性率の変化割合を指数化した値をスポーリング指数として評価した。ここで、静的弾性率とは、等温変化に伴う材料の弾性率であり、通常、引っ張り試験や曲げ試験から得られる弾性率のことであり、動的弾性率とは、断熱変化に伴う材料の弾性率であり、通常、硬い材料であれば高い値を有する。また、材料中に亀裂が発生すると、動的弾性率は低下する。
【0043】
各種耐火物を調査した結果として得られた、耐火物の静的弾性率とスポーリング指数との関係を図6に示す。図6に示すように、スポーリング指数は静的弾性率が200MPa以下の耐火物では急激に減少し、材料強度が低下することが分かった。このことから、ワーク耐火物層として使用する耐火物材料における静的弾性率は少なくとも200MPa以上であることが好ましい。
【0044】
また、耐火物のAl2O3含有量と圧縮強度との関係を図7に示す。Al2O3含有量の増加により、圧縮強度は上昇することから、耐火物の炭素含有量を低下する際には、その低下分をAl2O3で補い、耐火物の圧縮強度を確保することが好ましい。
【0045】
また更に、実際の製鉄用容器のワーク耐火物層では、受銑→払い出し→受銑の熱サイクルに起因してワーク耐火物層内部に熱応力が発生し、それが周期的に変動する。ここで、製鉄用容器に施工されたワーク耐火物層に発生する熱応力は、耐火物の熱膨張率と静的弾性率との積として、下記の(6)式で表される。
【0046】
【数6】
【0047】
但し、(6)式において、σthは、耐火物内に発生する熱応力(MPa)、αは、耐火物の熱膨張係数(1/K)、Eは、耐火物の静的弾性率(MPa)、νは、耐火物のポアソン比、ΔTは、ワーク耐火物層の使用温度と室温との温度差(K)である。
【0048】
上記の(6)式より、温度差ΔTが大きくなるほど熱応力σthは大きくなることから、ワーク耐火物層内に発生する熱応力の最大値は、溶銑を保持した状態のときと考えられる。本発明者らは、(6)式で示される熱応力σthと耐火物の圧縮強度σCとの比σth/σCと、繰り返し熱応力破壊の回数(疲労寿命)との関係を調査し、図8に示す結果を得た。
【0049】
ここで、本発明においては、発生する熱応力σthを算出するにあたり、温度差ΔTとして、耐火物が受ける最高温度(溶銑または溶鋼の温度)と室温との差を用いている。溶銑や溶鋼が非充填時においても耐火物は溶銑や溶鋼の充填時に受けた顕熱が蓄熱されるため、実際には、耐火物内の温度は室温よりも高位となる。しかし、溶銑や溶鋼が非充填時における耐火物の温度は設備の稼働状況や、溶銑または溶鋼の条件によって随時変化することから正確な温度を把握することは難しい。そこで、本発明では、最も熱応力σthが高くなる条件としたときに圧縮強度σCとの比較をするべく、温度差ΔTとして室温との差を適用した。
【0050】
図8に示すように、繰り返しの熱応力による破壊を改善するには、耐火物に発生する熱応力σthと耐火物の圧縮強度σCとの比σth/σCを0.7以下にすることが好ましいことが分かった。これは、繰り返しの熱応力σthの圧縮強度σCに対する割合が70%の付近に、耐火物の疲労限界が存在し、この値以下の応力値では繰り返す熱負荷による破壊は殆ど起きないことを示唆している。従って、ワーク耐火物層を施工するにあたり、下記の(1)式を満足する材質の耐火物を選定すれば1年以上の高寿命を有し、熱ロスの低い耐火物材質を有効に適用することが可能となる。
【0051】
【数7】
【0052】
また、溶銑鍋の耐火物ライニング構造において、溶銑温度降下量を更に低減するべく鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工した場合でのワーク耐火物層の熱伝導率の変化と溶銑温度降下抑止量との関係を検討した。検討結果を図9に示す。図9は、鉄皮と永久耐火物層との間に厚み5mmの断熱材を施工した例を示す図で、図9に示すように、鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工し、且つ、ワーク耐火物層の熱伝導率を低下した場合、放熱ロスの効果が更に大きくなることが分かった。
【0053】
製鉄用容器に断熱材を施工する場合は、鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工することが好ましい。その理由は以下の通りである。即ち、図10に、計算に用いた耐火物ライニングのモデル構造の概略図を示すように、断熱材の施工位置を、ワーク耐火物層4と永久耐火物層3との間、永久耐火物層3を構成する2層の成形煉瓦3aと成形煉瓦3bとの間、永久耐火物層3と鉄皮2との間の3種類とし、断熱材の厚みを変化させた場合について非定常伝熱計算を用いて検討した。尚、図10では、永久耐火物層3は2層の成形煉瓦を仮定し、永久耐火物層3を構成する2層の成形煉瓦を3a及び3bで表示しており、断熱材は表示していない。また、図10に示す●印は温度分布を表している。
【0054】
検討結果を図11に示す。図11の縦軸は、断熱材を設置しないときを基準とし、断熱材を配置したときの溶銑温度の上昇を負の数値で表示しており、負の数値が大きくなるほど、断熱効果が大きいことを示している。図11に示すように、ワーク耐火物層と永久耐火物層との間に断熱材を施工した場合に最も抜熱量が大きく、永久耐火物層と鉄皮との間に断熱材を施工した場合に最も抜熱量が抑制されることが分かった。
【0055】
また、断熱材を施工した場合において、断熱材の厚みを変化させたときの断熱材の内面側(=稼働面側)の温度変化を算出した結果を図12に示す。断熱材の厚みを5mm以上とした場合、その内側温度は1000℃を超え、断熱材厚みに対する温度の変化割合は低下した。また、図12より、断熱材厚みが5mm以上の場合の抜熱量変化割合は大きく低減している。このことから、断熱材の厚みを5mm以上にしても、抜熱量の変化は単純には増大せず、抜熱量の変化割合は徐々に停滞することが判明した。
【0056】
これらの計算結果を実証するために実験室的実験を行ったところ、断熱材を永久耐火物層と鉄皮との間に施工した条件において、最も熱流束が低位となった。また、各条件で断熱材厚みが5mmまでは断熱材厚みが増加するほど熱流束は低位となったが、5mmと10mmとでは熱流束の増加は見られなかった。この実験結果から、上記計算結果の妥当性が確認できた。
【0057】
断熱材の熱伝導率は、抜熱量低減の効果を得る観点から、0.1W/(m・K)以下とすることが望ましい。0.1W/(m・K)を超えると、放熱量が増大し、期待される断熱効果が得られない。尚、市販の断熱材は1000℃を超える高温では、断熱材自身の収縮が起こり、熱伝導率の増大が起こり得るため、その使用温度は1000℃以下にすることが好ましい。また、断熱材の施工に関しては、断熱材への水分吸収を避けるような施工方法を採ることが望ましい。
【0058】
このような構成の本発明によれば、ワーク耐火物層の熱伝導率を規定するだけで十分であるので、施工が容易であり、施工工数を増加させることなく、長期間にわたって製鉄用容器の開口部からの熱ロス量を低減することが達成される。
【実施例1】
【0059】
図13に示す、開口部の面積が17m2であるヒートサイズ300トンの取鍋型溶銑鍋に、ワーク耐火物層、永久耐火物層、一部の例では断熱材も施工した。ワーク耐火物層は、熱伝導率を種々に変更した。本発明例及び比較例の施工条件を表2に示す。尚、図13において、符号1は溶銑鍋、2は鉄皮、3は永久耐火物層、4はワーク耐火物層、5は断熱材であり、図13は、本発明例4の例を示している。また、表2中の圧縮応力比とは、ワーク耐火物の熱応力σth(MPa)と圧縮強度σC(MPa)との比σth/σCのことであり、使用したワーク耐火物の熱膨張係数α(1/K)は7.0×10-6、ポアソン比ν(−)は0.3である。
【0060】
【表2】
【0061】
本発明例1では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が17kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が12.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.70、静的弾性率が800MPa、炭素含有率が10質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。
【0062】
本発明例2では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が14kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が7.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.65、静的弾性率が700MPa、炭素含有率が10質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。
【0063】
本発明例3では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が14kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が6.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.40、静的弾性率が400MPa、炭素含有率が7質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。
【0064】
本発明例4では、溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束が14kW/m2になるように、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が7.0W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.50、静的弾性率が600MPa、炭素含有率が7質量%の成形煉瓦を施工した。また、熱伝導率が0.02W/(m・K)、厚みが5mmの断熱材を鉄皮と永久耐火物層との間に施工した。
【0065】
これに対し、比較例1では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.80、静的弾性率が850MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は20kW/m2になった。
【0066】
比較例2では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.70、静的弾性率が180MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は19.8kW/m2になった。
【0067】
比較例3では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.90、静的弾性率が750MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。断熱材は施工しなかった。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は19.8kW/m2になった。
【0068】
比較例4では、ワーク耐火物層として、Al2O3‐SiC‐C系材質で、熱伝導率が15.5W/(m・K)、熱応力と圧縮強度との比σth/σCが0.80、静的弾性率が600MPa、炭素含有率が12質量%の成形煉瓦を施工した。また、熱伝導率が0.02W/(m・K)、厚みが5mmの断熱材を鉄皮と永久耐火物層との間に施工した。溶銑の転炉への払出し後から1時間の間に空鍋の溶銑鍋の上端部開口部から外部へ放出する平均熱流束は19.8kW/m2になった。
【0069】
本発明例及び比較例ともに何回かの「溶銑の受銑〜払出し」を行い、その「溶銑の受銑〜払出し」における溶銑温度降下量(ΔT1)及び受銑時の溶銑温度降下量(ΔT2)を調査した。更に、ワーク耐火物層が熱疲労により損耗・脱落するまでの使用回数(チャージ数)を調査するとともに、そのときのワーク煉瓦における亀裂発生状況、そのときまでのワーク煉瓦の1チャージ(受銑〜払出〜再受銑)あたりの損耗量(mm/ch)を調査した。調査結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
本発明例1〜4では、何れの比較例に対しても溶銑温度降下量(ΔT1)及び溶銑温度降下量(ΔT2)が低減した。特に、受銑時における溶銑の温度降下量(ΔT2)が低減した。また、本発明例1〜4では、ワーク耐火物層の亀裂発生頻度が少なく、破壊脱落するまでの使用回数も向上し、損耗量も低位であった。更に、ワーク耐火物層を低熱伝導度化し、且つ鉄皮と永久耐火物層との間に断熱材を施工した本発明例4では、最も温度降下量が低位となり、ワーク耐火物層の損傷も比較的低位であった。
【符号の説明】
【0072】
1 溶銑鍋
2 鉄皮
3 永久耐火物層
4 ワーク耐火物層
5 断熱材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮、永久耐火物層、ワーク耐火物層をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする、製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項2】
前記ワーク耐火物層は、耐火物の圧縮強度σC(MPa)、熱膨張係数α(1/K)、静的弾性率E(MPa)及びポアソン比ν(−)と、ワーク耐火物層の使用温度と室温との温度差ΔT(K)とが、下記の(1)式の関係を満足する材質の耐火物からなることを特徴とする、請求項1に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【数1】
【請求項3】
前記静的弾性率Eを200MPa以上とすることを特徴とする、請求項2に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項4】
前記ワーク耐火物層は、酸化アルミニウム及び炭化珪素を含有する成形煉瓦または不定形耐火物で構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項5】
前記ワーク耐火物層は、その炭素含有量が10質量%以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項6】
前記鉄皮と前記永久耐火物層との間に、断熱材が配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項7】
前記断熱材は、厚みが5mm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項8】
前記断熱材は、その熱伝導率が0.1W/(m・K)以下であることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項1】
高炉から出湯される溶銑を受銑して保持し、保持した溶銑を搬送する或いは保持した溶銑に精錬処理を実施するための取鍋型の製鉄用容器の耐火物ライニング構造であって、製鉄用容器の外側から、鉄皮、永久耐火物層、ワーク耐火物層をこの順に有し、前記ワーク耐火物層は、熱伝導率が12W/(m・K)以下の成形煉瓦または不定形耐火物で構成されていて、高炉にて受銑した溶銑を払出した後の空の製鉄用容器の上端部開口部から、払出し後の1時間の間に外部へ放出する平均熱流束が18kW/m2以下であることを特徴とする、製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項2】
前記ワーク耐火物層は、耐火物の圧縮強度σC(MPa)、熱膨張係数α(1/K)、静的弾性率E(MPa)及びポアソン比ν(−)と、ワーク耐火物層の使用温度と室温との温度差ΔT(K)とが、下記の(1)式の関係を満足する材質の耐火物からなることを特徴とする、請求項1に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【数1】
【請求項3】
前記静的弾性率Eを200MPa以上とすることを特徴とする、請求項2に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項4】
前記ワーク耐火物層は、酸化アルミニウム及び炭化珪素を含有する成形煉瓦または不定形耐火物で構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項5】
前記ワーク耐火物層は、その炭素含有量が10質量%以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項6】
前記鉄皮と前記永久耐火物層との間に、断熱材が配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項7】
前記断熱材は、厚みが5mm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【請求項8】
前記断熱材は、その熱伝導率が0.1W/(m・K)以下であることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の製鉄用容器の耐火物ライニング構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−145056(P2011−145056A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277943(P2010−277943)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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