説明

製鋼用炉壁保護材及びその製造方法

【課題】これまでの製鋼用炉壁保護材は、軽焼ドロマイトを主体としたものであって、製造後3ヶ月程度大気中に放置すると、粉化して保護材としての性能が低下した。そこで、さらに長い期間放置しても、性能の低下しない保護材を提供する。
【解決手段】マグネシウム、カルシウム及び鉄をそれぞれMgO、CaO及びFeOに換算して、重量で60〜80%、5〜30%及び0.5〜10%含まれているように調整した混合物を、粉砕し、ブリケットに成形し、焼成して製鋼用炉壁保護材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製鋼用炉壁保護材及びその製造方法に関するものである。とくに、この発明は、転炉により鋼を製造する際に用いられる炉壁保護材に関するものであり、またその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼用炉壁保護材については、その詳細を記載した文献が少ない。鉄鋼便覧は、転炉により鋼を製造する際に耐火煉瓦からなる炉壁を保護するための炉壁保護材として、生ドロマイト又は軽焼ドロマイトを使用すると記載している。生ドロマイトとしてはMgOが20重量%以上のものが用いられ、軽焼ドロマイトとしてはMgOが30重量%以上のものが用いられている。
【0003】
また、杉田清著の「製銑・製鋼用耐火物」は、生ドロマイト又は軽焼ドロマイトを造滓材として使用して転炉内張材を保護する技術が開発され、日本で実用されていると記載している。これは、生ドロマイト又は軽焼ドロマイトが、炉壁保護材として働くことを教えたものである。
【0004】
また、特開2010−138428号公報は、転炉により鋼を作る場合には、発生するスラグにより耐火物が浸食されるので、これを防止して転炉の寿命を延長するために、MgOを含有するドロマイト又は軽焼ドロマイト、又は転炉解体時に発生するMgOレンガ屑を20mm以下に破砕したものを用いることを提案している。
【0005】
ドロマイトは、上記文献が記載しているように、炉壁耐火物を保護する物として、有効な成分だとされている。とくに、生ドロマイトは、劣化の原因となるフリーライム(CaO)が少ない為、或る程度の期間保管をしても劣化、粉化することはほとんどない。ところが、生ドロマイトは加工した製品よりも炉内で溶けにくく、また、ドロマイト鉱石は分解反応時に吸熱して炉湯温度を低下させる。また、ドロマイト鉱石はCaOの値が高い為、造滓材として投入する生石灰と合わせると、CaOを過剰に投入することとなり、MgOの値の調整の為に、使用原単位が増加する。また、ドロマイトには、結合水(H2O)が多く含有されているため、鋼に対して害物として働く水素が熔湯内に多く含まれることになり、その結果鋼が脆弱となり易い。
【0006】
上記公報がドロマイトと並べて記載する軽焼ドロマイトは、上記生ドロマイトを焼成したものである。ドロマイトは、理想化学組成がCaCO3・MgCO3とされるものであるが、軽焼ドロマイトは、CaO・MgOの理想化学組成を持つものとされる。その中のMgOは、大気中に放置した場合、CaOほど反応性は強くないが、CaOは吸水してCa(OH)2となり易く、吸水すると体積が増大する。そのため軽焼ドロマイトは製造後、ある程度の期間が経過すると粉化する。従って、軽焼ドロマイトは使用期限が限定される。
【0007】
生ドロマイト及び軽焼ドロマイトが持つ上記欠点を改良するものとして、MgOボールと呼ばれる炉壁保護材が提供されている。MgOボールは、軽焼ドロマイトの粉末に、結合剤と水とを加えてブリケットにしたものである。この為、MgOボールは大きさが揃っていて粉末がなく集塵ロスが少ない。また、MgOボールは、粉末を固めたものである為、溶鋼中に溶解し易く、その上に結合剤で固められているから、CaOの吸湿性が抑えられ、従って使用期間が軽焼ドロマイトよりも長くなっている。また、MgO値も高い為、使用原単位の減少となる。この為、MgOボールは現在も広く使われている。しかし、MgOボールはなおCaOを含むために、3ヶ月程度保管されると、吸水により劣化し、粉化するという欠点をまだ伴なっている。従って、矢張り可使期間が限定されるという欠点を持っている。
【0008】
生ドロマイト、軽焼ドロマイト、及びMgOボールのようなマグネシウム含有の添加物は、転炉による製鋼時に転炉の内壁を保護するものとして、絶対必要なものとされている。ところが、これらの添加物はそれぞれ上述のような欠点を持っている。そのため、そのような欠点のない添加物の出現が強く要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−138428号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】鉄鋼便覧、丸善株式会社 昭和57年12月25日発行
【非特許文献2】製銑・製鋼用耐火物 杉田 清著 地人書館 平成7年6月23日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、マグネシウム含有の炉壁保護材についての上記要望を満たそうとしてなされたものである。すなわち、この発明は、MgOボールの持つ長所をそのまま保有しながら、製造後より長い期間大気中に放置しても粉化することなく、従って製造後可使期間の長い炉壁保護材を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明者は、重量で70部の酸化マグネシウムMgOと、25部の酸化カルシウムCaOと、5部の酸化鉄FeOを混合して混合物を作り、この混合物を粉砕し、得られた粉末を1400℃の温度に加熱して焼成し焼結体を作った。そして、この焼結体を大気中に放置して重量の変化などを観察した。その結果、この焼結体は6ヶ月放置しても、殆ど重量が変化せず、従って、その中に含まれているCaOが吸湿せず、二酸化炭素とも反応しないことを見出した。また、この焼結体は強度も大きく、容易に崩壊しないことを見出した。
【0013】
しかも、この焼結体は溶鋼に溶解し易く、また、水分含有量も少なく、さらに炉壁保護材としての良好な性能を保持していることを見出した。この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
この発明は、重量を基準として、酸化マグネシウムMgOが酸化カルシウムCaOよりも多く含まれている原材料に、酸化カルシウムより少ない量の酸化鉄FeOを加えて混合物とし、この混合物の粉末をブリケット状に成形し、成形物を焼成して焼結体とした物を炉壁保護材として使用することを骨子とするものである。
【0014】
この炉壁保護材では、CaOの融点がMgOの融点よりも高いため、CaOがMgOに対して多くなると焼結体が強固でなくなり、またFeOがCaOに対して極端に少ないときにはFeOの効果が顕著に現われない。そのために加えるべきCaOとFeOとにはそれぞれ限界を設ける必要があることが判明した。そこでその混合割合について種々実験を試みた結果、三者の割合は、重量でMgOを60〜80%とし、CaOを5〜30%とし、FeOを0.5〜10%とすることが適していることを見出した。
【0015】
かくして、この発明はマグネシウム含有化合物、カルシウム含有化合物及び鉄含有化合物を混合し、この混合物ではマグネシウム、カルシウム及び鉄がそれぞれ酸化マグネシウムMgO、酸化カルシウムCaO及び酸化鉄FeOに換算して、重量で60〜80%、5〜30%及び0.5〜10%含まれているように調整し、この混合物の粉末をブリケットに成形し、焼成して焼結体にしたことを特徴とする製鋼用の炉壁保護材を提供するものである。
【0016】
また、この発明は、炉壁保護材の製造方法を提供するものである。その製造方法は、マグネシウム含有化合物、カルシウム含有化合物及び鉄含有化合物を混合し、その混合物中ではマグネシウム、カルシウム及び鉄が、それぞれ酸化マグネシウムMgO、酸化カルシウムCaO及び酸化鉄FeOに換算して、重量でそれぞれ60〜80%、5〜30%及び0.5〜10%となるように調整し、この混合物を粉砕して得られた粉末をブリケットに成形し、成形体を1200〜1550℃の温度で焼成して、焼結体とすることを特徴とするものである。
【0017】
上記の比率は、マグネシウム、カルシウム及び鉄の相対的な比率を規定したものであって、炉壁保護材全体を基準とした含有率を規定したものではない。その理由は炉壁保護材は上記三者のほかにSiO2などの成分を含むことが許されるからである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る炉壁保護材では、酸化マグネシウムMgOと酸化カルシウムCaOとが混在している原材料に酸化鉄FeOを加えて焼成するから、FeOはCaOと結合してCaO・FeO又はCaO・Fe23の形態となる。このCaO・FeO又はCaO・Fe23はCaOよりも水及び二酸化炭素との親和性が弱く、しかも加熱されると流動し易いので、CaO・FeO又はCaO・Fe23がMgO及びCaOの表面を覆うこととなり、CaOの水及び二酸化炭素との反応性が押さえられる。またMgOはCaOよりも水及び二酸化炭素との親和性が弱いところ、重量でMgOがCaOよりも多く含まれているから、少量のFeOを加えただけでCaOの水及び二酸化炭素との反応性が押さえられる。従って、この炉壁保護材は製造後に長期間放置しても、貯蔵中に変化し難い。その結果、長い可使期間を持つことになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明では、酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化鉄を材料として用いる。それらの材料は化学的に純粋なものであってもよいが、またその他の介在物を含んだものであってもよい。例えば材料としてマグネシウム含有鉱石、カルシウム含有鉱石及び鉄含有鉱石を用いることができる。
【0020】
これらの鉱石や介在物を含んだ材料を使用する場合には、予めその中に含まれるマグネシウム分、カルシウム分及び鉄分を測定しておくことが望ましい。また、それらの成分はこれを酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化鉄FeOに換算しておくことが好ましい。それはこれらの材料を混合したあとで、混合物中にこれらの成分が酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化鉄に換算して特定の比率で含まれているように調整するのに好都合だからである。
【0021】
マグネシウム含有の鉱石としては前述のドロマイトのほかに、マグネサイトやブルーサイトが知られている。ところが、これらの鉱石のうち1つを単独で焼成しただけでは、この発明が規定するような割合でMgO、CaO及びFeOが存在している混合物は得られない。その理由は次のとおりである。
【0022】
ドロマイトは前述のように、理想化学組成がCaCO3とMgCO3との複塩とされているから、これを焼成すればCaOとMgOとが等モル生じる筈であり、この発明のようにMgOがCaOより多い混合物は得られない。ドロマイトの実際の分析値は、一例ではCaOが29.90、MgOが22.21、FeOが0.08、CO2が47.77とされ、他の例ではCaOが31.97、MgOが19.42、FeOが1.03、CO2が47.18、不溶物が1.25%とされているから、ドロマイトを単独で焼成したのでは決してこの発明が規定する混合物は得られない。
【0023】
マグネサイトは理想化学組成がMgCO3とされているから、これを焼成するとMgOとなる。ところが、実際のマグネサイトは、これを分析するとMgOが40.28、CaOが4.61、Fe23が0.45、Al23が0.22、SiO2が3.45の割合で含まれている、と報告されている。従って、これを焼成すると、MgOのほかにCaOとFeOとを含むものが得られるが、CaOの量はMgOの量の0.11倍にあたり、この発明が規定する範囲内にない。FeOはCaOの10分の1以下の僅かな量が含まれるに過ぎない。従って、マグネサイトを単独で焼成しただけでは、この発明が規定する混合物は得られない。
【0024】
ブルーサイトは理想化学組成がMg(OH)2とされているから、これを焼成するとMgOとなる。ところが、ブルーサイトを分析した例では、MgOが62.92、SiO2が1.45、Al23+Fe23が1.20、CaOが2.67、MnOが0.07含まれ、灼熱減量が31.75%とされている。従ってブルーサイトを焼成すると、MgOのほかにCaOとFeOとが含まれたものが得られる。ところがCaOはMgOの4%程度の僅かな量であり、FeOはCaOの2分の1以下の僅かな量である。従って、ブルーサイトを単独で焼成したのでは、この発明が規定する混合物は得られない。
【0025】
このように、この発明が規定する混合物はマグネシウムを含む鉱石を単独で焼成したのでは得られない。従って、この混合物を得るためには、これらマグネシウム含有鉱石に他の化合物又は鉱石を特定の割合で混合しなければならない。
【0026】
カルシウム含有鉱石としては石灰石を用いる。石灰石は理想化学組成がCaCO3とされているから、これを焼成すればCaOを生成する筈である。石灰石を分析した結果によれば、石灰石はCaOが54.63、MgOが0.84、SiO2が0.64、Fe23が0.43、Al23が0.43、灼熱減量が43.2%とされているから、MgOやFe23を極めて僅か含むだけである。
【0027】
酸化鉄としては専らミルスケールを用いる。ミルスケールは高温の鉄を高温の空気中に曝したとき、鉄の表面に生じる酸化鉄の厚い層である。鉄の鍛造のときに鉄の表面に生成されるものである。
この発明では、原料として鉱石を用いるときは、前述のように、各鉱石についてMgO、CaO及びFeOの含有量を分析しておき、各鉱石を混合した場合、混合物中のMgO、CaO及びFeOの含まれる割合が規定の範囲、すなわち、重量でそれぞれ60〜80%、5〜30%及び0.5〜10%の範囲内に納まるようにする。
【0028】
この発明が規定するMgOとCaOとFeOとの混合割合の中ではMgOを65〜75%、CaOを20〜30%、FeOを3〜7%とすることが好ましい。さらに好ましいのはMgOを70%、CaOを25%、FeOを5%とすることである。
この発明では、マグネシウム含有化合物、カルシウム含有化合物及び鉄含有化合物の混合物を粉砕して粉末とする。粉末の程度は16〜60メッシュの篩を通過できる程度とすることが好ましい。
【0029】
この発明では、上記の粉末をブリケット状に成形する。成形のために結合剤又は粘結剤を用いることができる。結合剤又は粘結剤としては生石灰を用いることができる。ブリケットの大きさとしては直径が数cmの球又は円板状とすることが好ましい。
この発明ではこうしてブリケットに成形したものを焼成する。焼成温度は1200〜1550℃の範囲内とする。そのうちでは1300〜1400℃の温度で焼成することが好ましい。
【0030】
この発明に係る炉壁保護材は、重量でMgOが60〜80%、CaOが5〜30%、FeOが0.5〜10%含まれているものを1200〜1550℃の温度で焼成したので、CaOとFeOとが結合して、CaO・FeO又はCaO・Fe23が生成され、これがMgO・CaOの表面を覆うこととなるので、CaOの反応性が押さえられる。従って、この焼結体は可使期間が長期にわたる。MgOボールでは可使期間が3ヶ月程度であるのに、この発明に係る炉壁保護材では可使期間が6〜12ヶ月にも延長される。
【0031】
また、この発明に係る炉壁保護材は強度が高い。従来のMgOボールでは吸湿などのために炉壁保護材が劣化して強度が低下するが、この発明の炉壁保護材ではCaO・FeO又はCaO・Fe23が表面に膜を形成しているために強度が高い。また、焼結体となっているために一層強度が高くなっている。従って、取扱い中に粉砕され難い。
【0032】
この発明では1300〜1500℃の温度で焼成して焼結体にして、得られた焼結体を空気中に放置したとき、粉化したり吸湿したりすることをより完全に防止するために、また焼成温度を低下させるために、酸化鉄FeOのほかに酸化アルミニウムAl23を添加することができる。酸化アルミニウムを酸化鉄とほぼ等量、すなわち1〜10%添加すると、焼成が容易となり、1400℃以下の比較的低い温度で焼成することができることとなる。Al23を加えると、Al23はFeOと同様にCaO・Al23を生成し、これがMgO・CaOの表面を覆うに至るので、CaOの反応性が抑制されると考えられる。Al23を添加して得られた焼結体は、より長期間大気中に放置しても、水分吸収により粉化することがなくなっている。
【0033】
さらに、この発明に係る炉壁保護材では焼結させたために付着水と結晶水が少なくなっているので熱エネルギーの損失が少なく、従って添加時に溶湯の温度低下が少なく、また水素により鋼が劣化される危険性も低減させることができる。
以下に実施例と比較例とを挙げて、この発明のすぐれている所以を説明する。
【実施例】
【0034】
実施例1
この実施例では何れも化学的にほぼ純粋な材料を使用して、重量でMgOを65%、CaOを30%、FeOを5%の割合で混合した混合物を作り、これを粉砕して60メッシュ通過の粉末とした。この粉末にバインダーとして1%の消石灰の水溶液を混合物に対して2%加え、これを型内に充填し圧縮して直径30mm、厚み25mmの円板状に成形した。この成形体を1400℃の温度で60分間焼成してブリケットとした。
【0035】
このブリケットはこれを大気中に放置したところ、12ヶ月経過しても重量の増加がなく、外観上も粉化した形跡は全く見られなかった。また、これを炉壁保護材として転炉内での製鋼に使用したところ、溶鋼中に容易に溶解した。溶鋼を流出させたあとで転炉の壁面を調査したところ、壁面は殆ど損傷を受けていなかった。従って、この焼結体は炉壁の保護材としての機能を充分に持ったものと認められた。
【0036】
他方、比較のためにMgOボールを同じ環境下の大気中に放置したところ3ヶ月で粉化した。これを炉壁保護材として使用したところ、吸湿していたために熱エネルギーの損失が大きかった。
【0037】
実施例2
この実施例では実施例1と同じく何れも化学的にほぼ純粋なMgO、CaO及びFeOを用いた。
重量でMgOを75%、CaOを20%、FeOを5%の割合で混合して混合物を作った。この混合物を実施例1と同様に処理してブリケットを作った。このブリケットは、これを大気中に放置したところ、12ヶ月経過しても重量の増加がなく、外観上も粉化した形跡は全く見られなかった。また、これを炉壁保護材として転炉内で製鋼したところ、溶鋼中に容易に溶解して、炉壁保護材として満足なものであった。
【0038】
実施例3
この実施例ではMg源としてマグネサイトを用い、Ca源として石灰石を用い、Fe源としてミルスケールを用いた。マグネサイトとしては、重量%でMgOを40.28、CaOを4.61、Fe23を0.45、Al23を0.22、SiO2を3.45含むものを用いた。
【0039】
上記のマグネサイト1.36kg、石灰石0.54kg、ミルスケール0.1kgを混合し、MgOとしてはほぼ70%、CaOとしては25%、FeOとしては5%を含み、そのほか微量のAl23を含む混合物を得た。この混合物を粉砕して60メッシュ通過の粉末とし、バインダーとして1%の消石灰の水溶液を混合物に対して2%の割合で加え、これを直径30mm、厚み25mmのブリケットに成形した。この成形体を1400℃で60分間焼成して焼結体を得た。この焼結体は湿度90%、温度80℃の試験器の中に48時間放置しても、重量変化がなくて粉化が全く認められなかった。また、これを転炉内で実際に炉壁保護材として使用したところ、焼結体は溶鋼によく溶解した。また、溶鋼流出後に炉壁を調査したところ、炉壁に損傷が認められないので、この焼結体は炉壁保護材として適したものであることを認めた。
【0040】
実施例4
この実施例では、実施例3で用いたマグネサイトと石灰石とミルスケールを用い、これにAl23としてアルミ灰を加えて、Al23含有量の多い炉壁保護材を作った。
具体的にはマグネサイト1.4kg、石灰石0.4kg、ミルスケール0.1kg及びアルミ灰0.1kgを混合して、重量で大凡MgOが70%、CaOが20%、FeOが5%及びAl23が5%の混合物を作った。この混合物を粉砕して60メッシュの篩を通過する粉末を作り、この粉末にバインダーとして1%の消石灰の水溶液を2%の割合で加え、これを直径30mm、厚み25mmのブリケットに成形した。この成形体を焼成したところ、この成形体は、実施例3で得た成形体よりも焼結が容易で、1300℃で焼結体を得ることができた。
【0041】
この焼結体は湿度90%、温度80℃の試験器の中に3日間放置しても、重量変化がなく、また粉化が全く認められなかった。これにより、この焼結体は実施例3の焼結体よりも低温で焼結でき、吸湿性が少なく、従って一層優れていることが確認された。また、この焼結体を転炉内で溶鋼に添加したところ、焼結体は溶鋼によく溶解した。溶鋼を流出させたあとで炉の壁面を調査したところ、炉壁に損傷が認められなかった。従って、この焼結体は炉壁保護材として適したものと認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム含有化合物、カルシウム含有化合物及び鉄含有化合物を混合し、この混合物ではマグネシウム、カルシウム及び鉄が、それぞれ酸化マグネシウムMgO、酸化カルシウムCaO及び酸化鉄FeOに換算して、重量で60〜80%、5〜30%及び0.5〜10%含まれているように調整してこの混合物の粉末をブリケットに成形し、焼成して焼結体にしたことを特徴とする、製鋼用炉壁保護材。
【請求項2】
前記混合物がさらに酸化アルミニウムを含み、酸化アルミニウムがAl23に換算して10重量%以下含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の製鋼用炉壁保護材。
【請求項3】
前記混合物の粉末が16〜60メッシュの篩を通過する粉末とされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製鋼用炉壁保護材。
【請求項4】
マグネシウム含有化合物、カルシウム含有化合物及び鉄含有化合物を混合し、その混合物ではマグネシウム、カルシウム及び鉄が、それぞれ酸化マグネシウムMgO、酸化カルシウムCaO及び酸化鉄FeOに換算して、重量でそれぞれ60〜80%、5〜30%及び0.5〜10%含まれているように調整し、この混合物を粉砕して16〜60メッシュの篩を通過する粉末とし、この粉末をブリケットに成形し、成形体を1200〜1550℃の温度で焼成して焼結体とすることを特徴とする、製鋼用炉壁保護材の製造方法。
【請求項5】
前記混合物がさらに酸化アルミニウムを含み、酸化アルミニウムがAl23に換算して10重量%以下含まれていることを特徴とする、請求項4に記載の製鋼用炉壁保護材の製造方法。

【公開番号】特開2012−158495(P2012−158495A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19426(P2011−19426)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(594054818)日本マテリアル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】