説明

複合シート及び複合体

【課題】本発明は、支持体層と薄膜層は剥離可能に接着され、且つ薄膜層と接合層は完全に一体化した構成の複合シート、及びこの複合シートを用いた複合体を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂製又は金属製のシート状の支持体層11と、この支持体層11
の片面(もしくは両面)に形成された薄膜層12と、前記支持体層11の一方の主面に薄膜層12を介して形成された接合層13とを具備することを特徴とする複合シート10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シート及びこの複合シートの一部を用いた複合体に関する。本発明は、特に、液晶ディスプレイ等の電子機器の電極端子部と駆動回路が搭載されたフレキシブルプリント基板の導電部との圧縮による接続に使用される複合シート、あるいはコンベアベルトの表面材、あるいは管体の接合部に使用されるガスケットの表面材、あるいは基板プレスのクッション材の表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ふっ素樹脂膜(又はフィルム)は耐摩耗性や離型性、滑り性等の特性に優れているため、各種の用途として使用されている。具体的には、次のような用途が挙げられる。
【0003】
1)管体の接合部に使用されるガスケットとして使用される。
液体やガス等の流体を輸送するパイプ状配管で接続部に漏れ防止として、通常、ゴムや樹脂製のパッキンが使用される。しかし、経年変化や薬液浸透の劣化によって定期交換の際に接続面に前記パッキンが接続面に固着して交換に手間がかかることがある。そこで、ガスケット表面にフッ素樹脂性フィルムを貼り合せることにより容易に取り替えることが可能となる。
【0004】
2)基板プレスクッション材の表面離型として使用される。
昨今のガラスエポキシ基板やFP基板は、何層も積層した多層化が著しい。この積層プレス成形には、耐熱ゴムシートや不織布のクッションシートの表面にフッ素樹脂フィルムが使用されている。
【0005】
3)熱圧着用シートの表面薄膜として使用される。
電子機器の製造プロセスにおいては、図7に示すような圧着工程が行なわれている。
図中の符番1は、端部に電極端子部2が形成されたガラス基板を示す。このガラス基板1の端部には、フレキシブルプリント基板(FPC)3の端部が熱圧着により積層される。ここで、FPC3は、駆動回路4を形成したフィルム5と、駆動回路4の一部に形成された異方性導電フィルム(ACF)6とを有している。前記ガラス基板1とフレキシブルプリント基板3との熱圧着予定部上には、下端部にシリコーンゴムシート7を備えたヒータ8が配置されている。なお、付番9はレイ・フィルム(保護フィルム)を示す。
【0006】
図7では、ガラス基板1の端子2とFPC3の駆動回路4間にACF6を介在させた状態で、ACF6上のフレキシブルプリント基板3とヒータ8の間にシリコーンゴムシート7を介してヒータ8により熱圧着させることにより、ガラス基板1の電極端子部2とFPC3の駆動回路4との電気的な接続を行う。
しかし、クッションシートとしてシリコーンゴムシートを使用した場合、被圧着材である電極端子部2や駆動回路4からはみ出したACF6がシリコーンゴムシート7に付着し、不具合が生じる。従って、通常、シリコーンゴムシート7と被圧着材の間にACF6に対して離型性のよい四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)シートが併用されている。
【0007】
ところで、圧着工程において、通常、シリコーンゴムシートは同一プレス箇所を複数回使用することができる。しかし、離型用に使用しているPTFEシートは変形しやすく弾力性がないため、1回のプレスで変形してしまい、同一プレス箇所を複数回使用することができない。
【0008】
4)コンベア搬送ベルトの表面材として使用される。
合成樹脂、ゴム材、食品など粘着性の高い物を連続的に搬送する際、コンベアベルトの表面材としてフッ素樹脂フィルムが使用される。
従来、ふっ素樹脂膜又はフッ素樹脂フィルムを用いた技術としては、例えば下記の特許文献1〜3が知られている。
特許文献1:本特許は、フッ素樹脂性膜用転写箔およびフッ素樹脂性膜の製造方法に関する。ここで、フッ素樹脂性膜用転写箔は、支持フィルム上にフッ素樹脂粉末と熱可塑性樹脂を適宜配合した転写層を形成し、必要に応じて、転写層の上に樹脂接着層を設けた構成になっている。
【0009】
特許文献2:本特許は、特にポリエチレンテレフタレート樹脂からなる支持層上に樹脂製のアンカーコート層を介してフッ素樹脂フィルムを積層した構成になっている。
特許文献3:本特許は、基材表面に形成された含フッ素薄膜および該薄膜を有する基材の製造方法に関する。
【特許文献1】特開平1−128900号公報
【特許文献2】特開2002−120335号公報
【特許文献3】特開2006−1014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、支持体層と薄膜層が剥離可能のように接着され、且つ薄膜層と接合層は完全に一体化した複合シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、支持体層を前記複合シートの薄膜層から剥して平坦又は湾曲した被着体に容易に接合可能な複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の複合シートは、樹脂製又は金属製のシート状の支持体層と、この支持体層の片面もしくは両面に形成された薄膜層と、この薄膜層上に形成された接合層とを具備することを特徴とする。
また、本発明の複合シートは、樹脂製又は金属製のシート状の支持体層と、この支持体層の片面もしくは両面に形成された,表面が接合可能に処理された薄膜層とを具備することを特徴とする。
【0012】
本発明の複合体は、被着体と、この被着体に接合された,請求項1乃至6いずれか記載の複合シートのうち支持体を剥した積層体とを具備し、前記積層体は、複合シートを、接合層側又は薄膜層の表面処理側が被着体の主面に接するように加圧もしくは加熱下のいずれか一方の手段により前記被着体に積層した後、支持体を剥すことにより構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合シートによれば、接合層を備えた場合においては、支持体層と薄膜層は剥離可能のように接着され、且つ薄膜層と接合層は完全に一体化した構成のものが得られる。また、本発明の複合体によれば、支持体層を薄膜層から剥してゴム系の平坦なシートや配管等の湾曲した面に容易に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の複合シート及び複合体について詳しく説明する。
本発明の複合シート10の基本構成は、図1に示すとおり、樹脂製又は金属製のシート状の支持体層11と、この支持体層11の片面に形成された薄膜層12と、前記支持体層11の一方の主面に薄膜層12を介して形成された接合層13とを備えた構成になっている。なお、薄膜層12は支持体層11の両面に形成されていてもよい。ここで、薄膜層12と接合層13は完全に一体化しており、支持体層11は薄膜層12から剥離できるように軽く付着していることが好ましい。
【0015】
前記支持体層の厚みは5〜500μmが好ましく、更に好ましくは25〜100μmである。ここで、前記薄膜層として各種のふっ素樹脂の焼結した薄膜を得るためには、支持体層はフッ素樹脂の溶融温度である200〜330℃以上の熱を耐えることが必要である。
【0016】
支持体層の材料としては、フッ素樹脂の溶融温度に耐えるため、芳香族ポリイミド,芳香族ポリアミド,ポリエーテルエーテルケトン樹脂,芳香族ポリエステル樹脂,ポリサルファイド樹脂等の樹脂、あるいはステンレス鋼,アルミニウム,アルミニウム合金,亜鉛箔,銅,鉛,ニッケル,ニッケル合金等の金属が挙げられる。ここで、被着体の主面が平坦な場合は支持体層の材質は樹脂製が好ましく、被着体の主面が配管のように湾曲している場合は金属製を使用することが好ましい。また、支持体層の材料としては、被着体の表面形状によって、その表面への薄膜層の転移追従性を考慮して、前記樹脂,金属を適宜に組合わせて使用してもよい。
【0017】
前記薄膜層としては、比重2.13〜2.20で完全に焼結されたPTFEシートであることが好ましい。また、薄膜層の厚みは0.2〜20μmであることが好ましい。ここで、厚みが20μmを超えると支持体層にクラックが発生し易く、厚みが0.2μm未満では薄膜層を形成しにくい。前記薄膜層としては、ふっ素樹脂単体による層、あるいはふっ素樹脂層中に導電性物質、補強物質、熱伝導性物質が少なくともいずれか一種が充填されている層が挙げられる。
【0018】
ふっ素樹脂単体の場合、その材質としては、例えば、四ふっ化エチレン樹脂(PTFE),四ふっ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、四ふっ化エチレン−六ふっ化プロピレン共重合樹脂(FEP),三ふっ化塩化エチレン樹脂(PCTFE),四ふっ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE),三ふっ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTFE),ふっ化ビニル樹脂(PVDF)が挙げられる。このうち、本発明の複合シートがACF圧着工程で使用される場合は、耐熱性を考慮して、PTFE、PFAが好ましい。
【0019】
前記導電性物質としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。補強物質としては、例えばチタン酸カリウムウィスカー,石英粉末が挙げられる。熱伝導性物質としては、例えば、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,アルミナ,酸化ケイ素,酸化鉄,酸化ベリリウム,酸化クロム等の金属酸化物、あるいは窒化ホウ素,窒化アルミニウム等の金属窒化物、あるいは炭化ホウ素,炭化チタン,炭化珪素等の金属炭化物が挙げられる。
【0020】
また、前記接合層に接合成分が含まれていない場合、薄膜層の表面に電気的処理もしくは化学的処理がされて接合可能な構成にされていることが好ましい。ここで、電気的処理としては例えばコロナ放電等のプラズマ処理が挙げられ、化学的処理としては例えばシランカップリング剤,金属ナトリウム−ナフタレン錯体溶液による処理が挙げられる。
前記接合層としては、接合成分(例えば、微粉末シリカ)が配合されたふっ素樹脂層が挙げられる。
【0021】
本発明において、複合体を形成する際、支持体層を薄膜層から離型しにくい場合には、支持体層と接着しない為の離型手段を講じることが好ましい。ここで、離型手段としては、例えば支持体層の表面にエンボス加工を施すことが挙げられる。
【0022】
本発明の複合体14の基本構成は、図2に示すとおり、被着体15と、この被着体15上に形成された,接合層13及び薄膜層12からなる積層体16とを具備した構成となっている。ここで、積層体16は、被着体15上に前記複合シート10を、接合層13を被着体15の主面に接するように加圧により又は加圧下で加熱することにより被着体15に接合した後、支持体15を剥すことにより構成される。
【0023】
前記被着体としては、例えばシリコーンゴムやふっ素ゴムが挙げられる。シリコーンゴムとしては、ゴムに導電性を付与する為にKO・6TiO/SnO(Sb)(商品名:デントールWK200B,大塚化学製)、カーボンブラック,グラファイトやAu,Ag,Cu,Ni,SnO,ZnO,MgO等の金属等を充填したシリコーンゴム、あるいはゴムに熱伝導性を付与する為にBN,AlN,SiO,BeO,ZnO,Al,MgO,SiC等を付与したシリコーンゴムが使用できる。
【0024】
また、被着体としては、例えば樹脂,金属,セラミックスが挙げられる。ここで、樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン,ポリ酢酸ビニル,ABS樹脂,AS樹脂,アクリル樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアセタール,ポリカーボネート,変性ポリフェニレンエーテル,ポリエチレンテレフタレート,ポリフェニレンスルファイド,ポリスルホオン,液晶ポリマー,ポリエーテルエーテルケトン,熱可塑性ポリイミド,ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂、あるいはフェノール樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,ユリア樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
前記金属としては、例えばステンレス鋼,アルミニウム,アルミニウム合金,亜鉛箔,銅,鉛,ニッケル,ニッケル合金が挙げられる。前記セラミックスとしては、例えばチタン酸バリウム,窒化ホウ素,炭化ケイ素,窒化ケイ素,ジルコニア,アルミナが挙げられる。
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例に係る複合シート及び複合体について図面を参照して説明する。
(実施例1)
本実施例1に係る複合シート20について図3を参照して説明する。図中の符番21は、ポリイミドフィルムからなる厚み50μmの樹脂フィルム(支持体層)を示す。この樹脂フィルム21上には、2〜3μm程度のPTFE焼結層(薄膜層)22が形成されている。このPTFE焼結層22上には、微粉末シリカを含んだ厚さ4〜5μm程度のPTFE層(接合層)23が形成されている。
【0026】
こうした構成の複合シート20は、次のようにして製造される。
まず、ポリイミドフィルムからなる樹脂フィルム(厚さ50μm,横500mm,縦500mm)の片面にPTFEディスパージョンをコーティングした後、350〜370℃で焼成して、ポリイミドフィルム表面上に厚さ2〜3μm程度のPTFE焼結層22を形成した。
次に、シリカ微粒子を添加したPFAディスパージョンをPTFE焼結層22上にコーティングした後、350〜370℃で焼成して、PTFE焼結層22上に厚さ4〜5μm程度のPTFE層(接合層)23を形成し、複合シート24を製造した。
【0027】
上記実施例1に係る複合シート20は、ポリイミドフィルムからなる厚み50μmの樹脂フィルム(支持体層)21上に、2〜3μm程度のPTFE焼結層(薄膜層)22,微粉末シリカを含んだ厚さ4〜5μm程度のPTFE層(接合層)23を順次形成した構成になっている。前記複合シート20によれば、複合体を形成する際、樹脂フィルム21をPTFE焼結層22から容易に剥離して被着体に積層することができる。
【0028】
(実施例2)
本実施例2に係る複合体について図4(A),(B)を参照して説明する。
まず、図3の複合シート20とは別に、ミラブルのシリコーンゴムに、導電成分としてのカーボンブラック,熱伝導成分としての酸化マグネシウム,補強成分としてのシリカ粉末を添加し、混練機で均一に分散させることによってシリコーンゴム系組成物を得た。次に、このシリコーン系組成物に更に過酸化物加硫剤を混合し、厚み0.2mmのカレンダーゴムを押し出し、厚さ0.2mmのカレンダーゴム層25とした。
【0029】
次に、被着体としてのカレンダーゴム層25上に、図3の複合シート20を、PTFE層23が前記カレンダーゴム層25と接するように積層した(図4(A)参照)。この後、カレンダーゴム層25と積層した複合シート20を平プレスで170℃,10分加硫した。ひきつづき、冷却し、樹脂フィルム21を剥離した後、200℃の熱風乾燥炉で4時間処理することによって、表面に完全焼結したPTFE焼結層22を備えた厚さ0.2mmの加硫シート(複合体)26を製造した。なお、PTFE層23,PTFE焼結層22及びカレンダーゴム層25を総称して複合体26と呼ぶ(図4(B)参照)。
【0030】
このようにして製造される複合体26は、被着体としてのカレンダーゴム層25上に、PTFE層23,PTFE焼結層22が順次形成された構成となっている。こうした構成の複合体26を、回路基板の電極端子部とFPCの導電部との熱圧着用のクッションシートとして用いた場合、変形に強く、且つ異方性導電膜との離型性を確保することができる。
事実、試料としての複合体26をプレス下盤とプレス加熱上盤(プレス盤面幅:1.5mm)間において、下記試験機により耐久性試験を行ったところ、本発明の複合体26の各構成であるカレンダーゴム層25,PTFE層23及びPTFE焼結層22に欠陥が生じないことが確認できた。
【0031】
試験機:小型プレス、上盤:230℃、下盤:常温、圧力3.9MPa、保持時間:20sec。
【0032】
(実施例3)
本実施例3に係る複合体について図5を参照して説明する。
図中の符番35は被着体であり、綿帆布36と、この綿帆布36の両面に形成されたNBRゴム層37a,37bとから構成されている。被着体35の一方のNBRゴム層37a上には、PTFE層23を介してPTFE焼結層22が形成されている。
【0033】
こうした構成の複合体は次のようにして製造する。即ち、先ず、実施例1と同様にして、樹脂フィルム21上にPTFE焼結層22及びPTFE層23を形成して複合シート20を製造した。また、これとは別に、厚さ0.3mmの綿帆布36の両面にキシレン溶媒に溶かした白色NBRゴム糊で0.2mm程のゴムコーティングを施した後、50℃の乾燥炉で溶媒を除去して乾燥した。これにより、綿帆布36の両面にNBRゴム層37a,37bが形成された被着体35が得られた。つづいて、被着体35に、図3の複合シート20をPTFE層23が被着体35のNBRゴム層37aに接するように積層した後、平プレス機で150℃,20kg/cm,10分加硫させた。更に、平プレス機から取り出し冷却後、樹脂フィルムを剥して、完全に焼結した厚さ4〜5μmのPTFE焼結層22が表層に転写されたNBRゴム引きシート(複合体)38を製造した。
【0034】
実施例3によれば、フッ素樹脂の成形加工温度より低い耐熱の白色のNBRゴム層37aの表面に、完全に焼結させたPTFE焼結層22を形成することができる。従って、NBRゴムが本来有する柔軟性、反発弾性、色相を損なわずにフッ素樹脂本体の離型性、滑り性を付与することができる。
【0035】
(実施例4)
実施例1で製造した複合シート20を被着体に積層し一体化した複合体について説明する。
まず、被着体として、厚さ1mmのアルミ板の両面をサンダーでバフ研磨した後、キシロールで脱脂し、プライマー(ロードファーイーストインコーポレイテッド製の型式:ケムロック5150)を塗布して常温にて乾燥した。次に、前記アルミ板の両面に厚み0.5mmの未加硫フッ素ゴムカレンダーシートを配置し、更にこの未加硫フッ素ゴムカレンダーシートの両面の夫々に対して、複合シート20の薄膜層面側を突合わせて積層体を得た。
【0036】
この積層体を加熱、加圧プレス盤(図示せず)間に配置し、加熱温度170℃、加圧圧力20kgf/cm、加圧保持時間10分間の条件下で加硫した。次に、ポリイミドフィルムを剥離して、加熱電気炉中で加熱温度200℃、加熱保持時間8時間の処理によって二次加硫を行った。これにより、アルミ板からなる芯体の両面に形成されたフッ素ゴム表面上に、PTFE薄膜が一体化された複合体を得た。
【0037】
こうして得られた複合体は、基板プレス用クッション材として使用されるが、当該クッション材はシロキサン成分を含まないために、耐熱性、繰返し圧縮に耐えるクッションボードである。また、芯体はアルミニウム材を使用しているため軽量であり、且つ最表面がPTFE層であるため極めて離型性が高くなるので、取扱いが良好で製造効率の向上が期待される。更に、基板回路パターンの微小な凹凸にも追従できるので、均一に圧力をかけることが可能となる。
【0038】
(実施例5)
以下、実施例5に係る複合体について図6を参照して説明する。但し、図3と同部材は同符番を付して説明を省略する。複合シート40としては、ポリイミドフィルムからなる厚さ50μmの樹脂フィルム(支持体層)21上に、表面が金属ナトリウム−ナフタレン錯体溶液によって処理された厚さ2〜3μm程度のPTFE焼結層(薄膜層)22が形成され、厚さ10μmのエポキシ接着剤からなる層(接合層)41が形成されているものを用いる。
【0039】
こうした構成の複合シートは、次のようにして製造される。
まず、ポリイミドフィルムからなる樹脂フィルム(厚さ50μm,横500mm,縦500mm)21の片面にPTFEディスパージョンをコーティングした後、350〜370℃で焼成して、ポリイミド表面上に厚さ2〜3μm程度のPTFE焼結層22を形成した。次に、PTFE焼結層面を金属ナトリウム−ナフタレン錯体溶液によって処理した後、PTFE焼結層面にエポキシ接着剤を塗布して接合層41を形成することによって複合シート40を製造した。
次に、この複合シート40の接合層面側と銅箔(被着体/厚さ35μm,横500mm,縦500mm)42とを重ね合せて常温下で加圧成形を行った。これにより、銅箔42面上にPTFE焼結層(薄膜層)43が接合一体化された複合体44を得た。
【0040】
こうして得られた複合体44は、従来工法における銅箔(被着体)42へのPTFE焼結層(薄膜層)43の形成工程としてPTFEディスパージョン塗布後の350〜370℃の焼成による焼結を必要としない為、銅箔(被着体)への酸化や加熱による残留歪等が発生しないものが得られる。
【0041】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要件を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。具体的には、実施例1では、微粉末シリカを含んだPFA層(接合層)について述べたが、これに限らず、微粉末シリカを含まない接合層を用いる場合においては、薄膜層の表面に接着性を向上することを目的として電気的,化学的表面処理を施すことができる。また、複合シートの各材料、厚み等も上記実施例に記載したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る複合シートの基本構成を示す断面図。
【図2】本発明に係る複合体の基本構成を示す断面図。
【図3】本発明の実施例1に係る複合シートの断面図。
【図4】本発明の実施例2に係る複合体の製造方法を工程順に示す断面図。
【図5】本発明の実施例3に係る複合体の断面図。
【図6】本発明の実施例5に係る複合体の断面図。
【図7】回路基板の電極端子部とFPCの導電部との熱圧着を、クッションシートを用いて行う場合の説明図。
【符号の説明】
【0043】
10,20,24,40…複合シート、11…支持体、12…薄膜層、13,23,41…接合層、14,26…複合体、16…積層体、21…ポリイミドフィルム(支持体層)、22,43…PTFE焼結層(薄膜層)、25…被着体、42…銅箔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製又は金属製のシート状の支持体層と、この支持体層の片面もしくは両面に形成された薄膜層と、この薄膜層上に形成された接合層とを具備することを特徴とする複合シート。
【請求項2】
樹脂製又は金属製のシート状の支持体層と、この支持体層の片面もしくは両面に形成された,表面が接合可能に処理された薄膜層とを具備することを特徴とする複合シート。
【請求項3】
前記薄膜層が比重2.13〜2.20の完全に焼結されたPTFEシートであることを特徴とする請求項1又は2記載の複合シート。
【請求項4】
前記薄膜層の厚みが0.2〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一記載の複合シート。
【請求項5】
前記薄膜層の表面に電気的処理もしくは化学的処理がされていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一記載の複合シート。
【請求項6】
前記接合層が接合成分を配合されたふっ素樹脂層であることを特徴とする請求項1記載の複合シート。
【請求項7】
被着体と、この被着体に接合された,請求項1乃至6いずれか記載の複合シートのうち支持体を剥した積層体とを具備し、前記積層体は、複合シートを、接合層側又は薄膜層の表面処理側が被着体の主面に接するように加圧,加熱下又は加圧下のいずれか一方の手段により前記被着体に積層して一体化した後、支持体を剥すことにより構成されていることを特徴とする複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−46998(P2010−46998A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215810(P2008−215810)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000211156)中興化成工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】