説明

複合シート

【課題】 本発明は、架橋されたエチレン-プロピレン-ジエンターポリマ及びポリプロピレンを含むいわゆるオレフィン系レザーの廃材を、効率良く再利用した品質良好な複合シートを提供するにある。
【解決手段】 少なくとも架橋されたエチレン-プロピレン-ジエンターポリマ及びポリプロピレンを含む材料からの再生物50〜90重量%、及び、エチレン・酢酸ビニル共重合体50〜10重量%の混合物に対して、0.1〜1部の割合で添加される金属石鹸との組成物をシート体(1)に成形し、この表面に上張材(2)を積層する。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも架橋されたエチレン・プロピレン-ジエン ターポリマ及びポリプロピレンを含むオレフィン系樹脂廃材の有効利用に関する。
【従来の技術】
【0001】自動車のドア内側の上張りや運転席前面の操作パネルには、通常、架橋されたエチレン・プロピレン・ジエン ターポリマ(EPDM)、架橋されたエチレン・プロピレン ラバ(EPR)、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるオレフィン系シートに、架橋ポリプロピレンフォームや架橋ポリエチレンフォーム等で裏打ちして補強されたいわゆるオレフィン系レザーが用いられている。
【0002】上記オレフィン系レザーを用いて上記上張りやパネルを製作するとき、窓や計器等に相当する部分を打ち抜いたり、製作する大きさよりも余裕をもった大きさに裁断したりするので、いわゆるトリミングによるロスが実際使用されるレザー全体の約50%程度に相当することにもなる。
【0003】従来、このようなトリミングにより排出される廃材は、焼却処理するか、射出成形用材料として再利用する事が行われている。
【0004】しかしながら、上記廃材は嵩高く、焼却処理に付すにはその運搬等に費用がかかり、コスト高となって経済効率が悪い。
【0005】一方、射出成形用材料として使用する場合、通常ポリプロピレンに混入して用いられるが、上記廃材は架橋体を含んでいるので混入の割合が増せば流動性が落ちて射出に適さないものとなるので、射出材料全体のせいぜい20〜30%しか混入できなくて処理効率が悪い。
【0006】また、押出成形用の材料に混入させて再利用することもでき、射出成形用の時よりも比較的混入量を多くできるが、流動性が不良になり易く、口金のところで滑りが悪くなって、押出成形品(B)に濃淡の筋模様からなるいわゆる「目やに」現象(図3参照)が生じ、良好な押出成形品が製造できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のごときオレフィン系レザーの廃材を、効率良く再利用した品質良好な複合シートを提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】かくして本願『請求項1』にかかる発明によれば、『少なくとも架橋されたエチレン・プロピレン・ジエン ターポリマ及びポリプロピレンを含む材料からの再生物50〜90重量%、及び、エチレン・酢酸ビニル共重合体50〜10重量%の混合物と、該混合物に対して0.1〜1部の割合で添加される金属石鹸との組成物からなるシート体(1)の表面に上張材(2)が積層されてなる複合シート(A1)』が提供される。
【0009】本発明において、再生物は、少なくとも架橋されたエチレン・プロピレン・ジエン ターポリマ(以下、EPDMと略記する)及びポリプロピレンを含むものを材料として再生されたものが使用される。従って、架橋されたEPDM、架橋されたエチレン・プロピレン ラバ(以下、EPRと略記する)、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるオレフィン系シートに、ポリプロピレンフォームやポリエチレンフォーム等で裏打ちして補強されたいわゆるオレフィン系レザーの廃材が好適に用いられる。
【0010】上記再生物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略記する)と混合される。上記EVAは、上記再生物に例えば成形等に有利な流動性を付与しうるものとして用いられる。
【0011】上記再生物と上記EVAとの混合物において、再生物が50重量%よりも少ない場合、材料の処理効率が低下する点で好ましくなく、また、90重量%を越えると混合物の流動性が不足する点で好ましくない。
【0012】本発明において、上記再生物は再生ペレットの形態で用いられることが最も好ましい。通常、このような再生ペレットは、廃材を約4mm以下に粉砕した破砕粒をダイスに2回通して製造されたものが好適である。このとき、再生原料を再び加熱に付することになるので、酸化防止剤等も適宜添加されることが好ましい。
【0013】本発明において、再生物とEVAとの前記混合物には、さらに金属石鹸が添加されて、シート体成形用の組成物が調製される。この場合、金属石鹸は上記混合物に滑り性を付与して例えば押出成形等に付し易くするために添加される。上記金属石鹸は、前記混合物に対して、0.1〜1部の割合で添加される。0.1部よりも少ない場合は、混合物に十分な滑り性が付与されない点で好ましくなく、1部よりも多い場合は、ブリードによる表面汚染の点で好ましくない。
【0014】上記金属石鹸としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、ステアリン酸カルシウムが金属面との滑性の点で好ましい。
【0015】なお、上記金属石鹸は、上記混合物に添加されるものであっても良いが、前記再生物をペレット化する際に添加されるものであっても良い。この場合、ペレットを押し出すダイス口金での滑り性が良好となる点でより好ましい。
【0016】本発明において、前記混合物に上記金属石鹸が添加された組成物は、シート体(1)に製造され、その表面側に上張材(2)が積層される。上記上張材(2)としては、不織布、織布、植毛された基布、パイル生地、化粧シート、裏面に印刷したPPフィルム等が挙げられ、不織布が適しているが、別段これに限定されない。
【0017】上記シート体(1)を製造する場合、本願『請求項2』に示すように、『上記シート体(1)が押出成形により形成されると共に上記上張材(2)が押出時に貼合され』るようにする事が工程上の点から好ましい。
【0018】また上張材(2)には、本願『請求項3』に示すように、難燃剤が塗布されていてもよい。
【0019】本発明において、上記シート体(1)には、本願『請求項4』に示すように、『該シート体(1)の裏面に、直径0.5〜2.5mm、高さ0.5〜2.5mmの円錐状突起(3)が点在するようにエンボス加工が施されて』いれば、滑り止め効果が付されるので、好ましい態様である。
【0020】本願『請求項1』に係る発明によれば、少なくとも架橋されたエチレン-プロピレン-ジエン ターポリマ及びポリプロピレンを含む材料からの再生物は、その所定量に対してエチレン・酢酸ビニル共重合体の所定量が混合されて流動性が付され、その上金属石鹸が所定量添加されて滑り性が付与されて、その結果、成形に適した組成物となり、シート体(1)に成形された上でその表面側に上張材(2)が積層されて、複合シート(A1)が得られることとなる。
【0021】本願『請求項2』に係る発明によれば、請求項1における組成物がシート体(1)に成形されて押出されると共にこの時に表面側に上張材(2)が貼合されるので、上張材が一体化された複合シート(A1)が簡単に得られることとなる。
【0022】本願『請求項3』に係る発明によれば、上張材(2)に難燃剤が塗布されているので、難燃性の表面を有する複合シートとなる。
【0023】本願『請求項4』に係る発明によれば、シート体(1)の裏面に、直径0.5〜2.5mm、高さ0.5〜2.5mmの円錐状突起(3)が点在するようにエンボス加工が施されるので、裏面に滑り止めが形成された複合シート(A2)となる。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これにより本発明は限定されるものではない。
【0025】[実施例1]
再生ペレットの製造下記組成よりなるオレフィン系レザーの裏面に、ゲル分率53%、発泡倍率15倍、厚さ2.5mmの架橋PPフォームを押し出しにてラミネートしたシートの廃材を、穴径5mmのスクリーンを取付けたクラッシャーで粉砕して、粒径4mm以下の粉粒体を得た。
【0026】〔オレフィン系レザーの組成〕
架橋EPDM 50%ホモPP 25%ランダムPP 25%
【0027】上記粉粒体10kgに対して、ステアリン酸カルシウム100g及び酸化防止剤(フェノール系)としてのlrg.1010を50g、顔料カーボン50gを添加・混合して、温度210℃で、40mmφ・L/D=28の真空ベント付押出機にて混練した後、口径6mmのダイスを通して線状に押出し、この押出を2回繰返して、9kgの再生ペレットを得た。
【0028】複合シートの製造上記再生ペレットの全量に対して、EVA2kgを添加して良く混合して、押出成形用組成物を得た。上記組成物を厚さ2mm×幅220mmの口径を有する口金を取付けた40mmφ・L/D=24の押出機から押出して、幅(a)180mm、厚さ(b)1.5mmの長尺シート体(1)を成形すると同時に、この押出機の出口で、上記シート体(1)の表面側に200g/m2のPP製スパンボンド不織布からなる上張材(2)を、上記シート体(1)の熱で貼り合わせ、図1に示す複合シート(A1)を得た。
【0029】なお、上記シート体(1)に押し出す際には、この組成物中に混入しておいた金属石鹸(ステアリン酸カルシウム)の影響で、口金部での滑りが良好で、該シート体表裏面にはいずれもいわゆる「目やに」現象は生じなかった。また、上記押出成形用組成物には、再生ペレットが80重量%混入できたので、再生ペレットの処理量が大変に増えるものであった。
【0030】上記得られた複合シート(A1)は、例えば浅いトレイ状に加熱型押しして成形することにより、自動車マットとして使用することができる。また、上記上張材(2)に難燃剤を塗布すれば、難燃性が付された複合シートとなり、更に有効な利用ができる。
【0031】[実施例2]実施例1と同様にして得られた複合シートを、更にその裏面側に、図2に示すように直径4mm、高さ1mmの円錐状突起(3)を点在させたエンボス加工を施した複合シート(A2)を製造した。
【0032】本例で得られた複合シート(A2)を、110℃の老化試験にて500時間熱老化させ、寸法変化を測定したところ、縦方向・横方向共に寸法変化率は2.5%以下で、外観の変化は認められなかった。
【0033】本例で得られた複合シート(A2)は、裏面に施したエンボス加工が滑り止め作用を奏するので、マットとして使用するには好適なものであった。
【0034】[実施例3]
再生ペレットの製造下記組成よりなるオレフィン系レザーの裏面に、ゲル分率49%、発泡倍率15倍、厚さ5mmの架橋PEフォームを押し出しにてラミネートしたシートの廃材を、穴径5mmのスクリーンを取付けたクラッシャーで粉砕して、粒径4mm以下の粉粒体を得た。
【0035】〔オレフィン系レザーの組成〕
架橋EPDM 40%ホモPP 40%メタロセンPE 20%
【0036】上記粉粒体10kgに対して、酸化防止剤(フェノール系)としてのlrg.1010を50g、顔料カーボン50gを添加・混合して、温度210℃で、40mmφ・L/D=28の真空ベント付押出機にて混練した後、口径6mmのダイスを通して線状に押出し、この押出を2回繰返して、9kgの再生ペレットを得た。
【0037】ステアリン酸カルシウムのマスターバッチの製造酢酸濃度10%のEVA2.7kgに対し、ステアリン酸カルシウム0.3kgを加えて、3リッタの加圧式ニーダにて、ジャケット温度110℃にて20分間溶融混合した。この混合物を室温まで冷却後、穴径5mmφのスクリーンを取付けたクラッシャにて粒径4mmの粉粒体を得た。上記粉流体を140℃の40mmφ・L/D=28の押出機にて溶融混合後、口径6mmのダイスを通して線状に押出し、1.5kgのマスターバッチを得た。
【0038】複合シートの製造上記再生ペレット8kgに対して、酢酸濃度15%のEVA1kgとステアリン酸カルシウムのマスターバッチ1kgを添加して良く混合して、押出成形用組成物を得た。上記組成物を厚さ2mm×幅220mmの口径を有する口金を取付けた40mmφ・L/D=24の押出機から押出して、幅180mm、厚さ1.5mmの長尺シート体を成形すると同時に、この押出機の出口で、上記シート体の表面側に200g/m2のポリエステル製スパンボンド不織布からなる上張材を、上記シート体の熱で貼り合わせ、複合シート(図示せず)を得た。
【0039】上記シート体に押し出す際にも、この組成物中に混入しておいた金属石鹸(ステアリン酸カルシウム)の影響で、口金部での滑りが良好で、該シート体表裏面にはいずれもいわゆる「目やに」現象は生じなかった。
【0040】[比較例]
再生ペレットの製造下記組成よりなるオレフィン系レザーの裏面に、ゲル分率53%、発泡倍率15倍、厚さ2.5mmの架橋PPフォームを押し出しにてラミネートしたシートの廃材を、穴径5mmのスクリーンを取付けたクラッシャーで粉砕して、粒径4mm以下の粉粒体を得た。
【0041】〔オレフィン系レザーの組成〕
架橋EPDM 50%ホモPP 25%ランダムPP 25%
【0042】上記粉粒体10kgに対して、酸化防止剤(フェノール系)としてのlrg.1010を50g、顔料カーボン50gを添加・混合して、温度210℃で、40mmφ・L/D=28の真空ベント付押出機にて混練した後、口径6mmのダイスを通して線状に押出し、この押出を2回繰返して、8kgの再生ペレットを得た。
【0043】複合シートの製造上記再生ペレットを、厚さ2mm×幅220mmの口径を有する口金を取付けた40mmφ・L/D=24の押出機から押出して、幅180mm、厚さ1.5mmの長尺シート体を成形すると同時に、この押出機の出口で、上記シート体()の表面側に200g/m2のPP製スパンボンド不織布を、上記シート体の熱で貼り合わせ、複合シートを得た。
【0044】上記シート体に押し出す際には、いわゆる「目やに」が付着し、かつシート体表面に穴あきが生じ、平滑なシートは得られなかった。
【0045】
【発明の効果】本願『請求項1』に係る発明によれば、まず、少なくとも架橋されたエチレン-プロピレン-ジエン ターポリマ及びポリプロピレンを含むいわゆるオレフィン系レザーの廃材を、エチレン酢酸ビニル共重合体に高含量で添加してシート材として処理でき、その上、得られるシート材は、従来のような「目やに」現象が生じない良品であるので、上記廃材を有効に利用できる。
【0046】本願『請求項2』に係る発明によれば、上記廃材を含む組成物を押出成形により処理できるので廃材の処理量が増え、その上、この押出時に上張材を貼合できるので、製造が非常に効率的となる。
【0047】本願『請求項3』に係る発明によれば、難燃剤が塗布された上張材と貼合すれば、難燃性でかつ良好な複合シート製品が簡単に得ることができる。
【0048】本願『請求項4』に係る発明によれば、裏面に円錐状突起が点在したエンボス加工が施された複合シート製品が得られ、滑り止めが付されたより一層利用度の高い良好なシート製品を、廃材から簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例の複合シートの要部概略斜視図
【図2】本発明の他の例の複合シートの裏面側から見た要部概略斜視図
【図3】従来例の問題点を説明する要部概略斜視図
【符号の説明】
(A1)(A2)…複合シート
(1)…シート体
(2)…上張材
(3)…円錐状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも架橋されたエチレン-プロピレン-ジエンターポリマ及びポリプロピレンを含む材料からの再生物50〜90重量%、及び、エチレン・酢酸ビニル共重合体50〜10重量%の混合物と、該混合物に対して0.1〜1部の割合で添加される金属石鹸との組成物からなるシート体の表面に上張材が積層されてなる複合シート。
【請求項2】 上記シート体が押出成形により形成されると共に上記上張材が押出時に貼合されてなる請求項1記載の複合シート。
【請求項3】 上記上張材に難燃剤が塗布されてなる請求項1又は2に記載の複合シート。
【請求項4】 上記シート体の裏面に、直径0.5〜2.5mm、高さ0.5〜2.5mmの円錐状突起が点在するようにエンボス加工が施されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の複合シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−239621(P2001−239621A)
【公開日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−57234(P2000−57234)
【出願日】平成12年3月2日(2000.3.2)
【出願人】(591025082)日泉化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】