複合センサおよびその製造方法
【課題】一連の接合工程の過程中において加速度センサと角速度センサにそれぞれ対応した圧力雰囲気で封止し、それぞれのセンサの検出感度の向上を図る。
【解決手段】加速度センサ11の可動体111と角速度センサ12の振動体121とを壁16で隔てて、同一のセンサウエハ10上に作製する。加速度センサ11及び角速度センサ12の可動体111及び振動体121に対応したギャップ21,22を設けたキャップウエハ20を形成し、角速度センサ12のギャップ22近傍にバンプ23を配置する。加速度センサ11を大気圧封止した後、高温、高荷重を印加して、角速度センサ12を真空封止する。その後、ダイアモンド砥石による切断、回路基板、配線基板を実装して、複合センサを形成する。
【解決手段】加速度センサ11の可動体111と角速度センサ12の振動体121とを壁16で隔てて、同一のセンサウエハ10上に作製する。加速度センサ11及び角速度センサ12の可動体111及び振動体121に対応したギャップ21,22を設けたキャップウエハ20を形成し、角速度センサ12のギャップ22近傍にバンプ23を配置する。加速度センサ11を大気圧封止した後、高温、高荷重を印加して、角速度センサ12を真空封止する。その後、ダイアモンド砥石による切断、回路基板、配線基板を実装して、複合センサを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量の測定に用いられる物理量センサ、およびその物理量検出センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、静電容量型の物理量センサには、様々なものが提供されている。物理量センサは、シリコン基板、ガラス基板上にマイクロマシニングにより、振動体、可動体等の可動機構部品を設け、キャップ基板には、振動体、可動体等の可動機構部品に対応した箇所に駆動ギャップを設けておき、これらの基板を接合、接着等で封止する。これらの可動機構部品のサイズは、μmオーダとなっており、空気抵抗等の影響により、特性低下の課題が生じ、それぞれの振動体、可動体等の可動機構部品に対応した圧力雰囲気でセンシング部を封止する必要がある。
【0003】
複合センサは、加速度センサ、角速度センサ等を同一基板上に設置するため、加速度センサ、角速度センサのそれぞれが特性低下しない圧力雰囲気で封止する。一般的に加速度センサのセンシング部は、大気圧封止、角速度センサのセンシング部は、真空封止することで特性低下しない複合センサが提供される。
【0004】
角速度センサは、可動機構部品が振動体であり、この振動体がある一定の周波数で駆動振動させているときに、角速度が加わると、コリオリ力が発生する。このコリオリ力により、振動体が変位する。このコリオリ力による振動体の変位量を検出することで角速度を検出する。振動体の駆動速度が速いほど、コリオリ力が大きくなるため、角速度センサの検出感度を良好にするには、振動体を高周波数かつ数μmというような大きな振幅で振動させる必要がある。
【0005】
しかしながら、マイクロマシニングにより作製した振動体は、微小ギャップで形成するため、駆動雰囲気が大気圧の場合、空気(封止気体)のダンピング効果の影響が大きくなる。このダンピング効果が、角速度センサの高周波数、かつ大振幅での振動に影響を与えてしまい、角速度センサの検出感度を低下させる。したがって、ダンピング効果の影響の小さい、すなわち真空雰囲気下で角速度センサのセンシング部を封止することで、高周波数、かつ大振幅できる角速度センサを得ることができる。
【0006】
一方、加速度センサは、可動機構部品が錘、梁等で構成された可動体であり、加速度が加わると、可動体が変位する。この可動体の変位量を検出することで、加速度を検出する。加速度センサを角速度センサと同じ真空雰囲気下で封止すると、加速度センサの可動体は、ダンピング効果が小さくなるため、振動し続ける現象が発生して、加速度を感度良く検出できない。したがって、加速度センサは、ダンピング効果の大きい、すなわち大気雰囲気下で封止する。
【0007】
加速度センサ、角速度センサを複合化した複合センサの公知例として、特許文献1には、加速度センサ、角速度センサを封止するキャップ基板の加速度センサ側に貫通孔(通気路)を設けておき、加速度センサ、角速度センサを真空封止した後、通気路よりダンピング剤を充填し、貫通孔を半田、樹脂等で埋めて、加速度センサを大気雰囲気下で、また、角速度センサを真空雰囲気下で封止する構成が提示されている。
【0008】
また、特許文献2には、加速度センサ、角速度センサを大気圧雰囲気で封止した後、角速度センサ上のキャップ基板もしくはセンサ基板に貫通孔を形成する。その後、シリコン等のChemical Vapor Deposition(CVD)法で、その貫通孔を埋めることで、角速度センサをCVD法での圧力すなわち真空雰囲気下で封止する。この方法で、加速度センサを大気圧雰囲気で、また、角速度センサを真空雰囲気で封止する構成が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−5950号公報
【特許文献2】特表2008−501535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、同一基板上に設置した加速度センサ、角速度センサの検出感度を向上させるため、それぞれのセンサに対応した圧力で封止する必要がある。同一基板上で封止するため、加速度センサ、角速度センサの片方のセンシング部に対応した圧力雰囲気での封止は容易であるが、両方のセンシング部に対応した圧力雰囲気とするためには、上記の特許文献1と2に記載されているように、キャップ基板に貫通孔等の通気路を形成し、センサ基板と接合した後、別材料を用いて、貫通孔を埋め込みする方法が存在する。
【0011】
しかしながら、上記の貫通孔の埋め込み方法では、シリコンもしくはガラス基板と貫通孔を埋める材料との線膨張係数差による伸縮、貫通孔を埋め込む材料との密着性劣化による信頼性低下の課題、製造工程の複雑化による高コスト化等の課題が発生する。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、加速度センサと角速度センサにそれぞれ対応した圧力雰囲気で封止することができ、その封止が一連の接合工程の過程中に形成可能であり、さらに高信頼性の封止と低製造コストを確保することのできる複合センサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、から生成される複合センサの製造方法であって、大気圧雰囲気下において、前記センサウエハと前記キャップウエハを前記バンプが介在するように接合し、前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止するとともに、前記角速度センサに形成した前記ギャップ近傍の前記バンプによって前記角速度センサを大気圧雰囲気で接合阻害する接合封止・接合阻害工程と、真空雰囲気下において、前記バンプによる前記接合阻害の隙間を通して前記角速度センサを真空雰囲気に浸す真空雰囲気形成工程と、前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によって、前記バンプを変形させて前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する接合封止工程と、を順に行う工程を有する複合センサの製造方法。
【0014】
また、前記接合封止・接合阻害工程と、前記真空雰囲気形成工程と、前記接合封止工程とに続いて、前記センサウエハと前記キャップウエハの切断により複合センサウエハを複合センサチップにする個片化工程と、外部入出力端子を有する配線基板上に、前記加速度センサ及び前記角速度センサからの検出とその補正を行う回路基板を設置する第1の設置工程と、前記回路基板上に前記複合センサチップを設置する第2の設置工程と、前記複合センサチップ、前記回路基板、及び前記配線基板をワイヤで接続する接続工程と、前記配線基板、前記回路基板、及び前記複合センサチップを樹脂封止する樹脂封止工程、若しくは、蓋付きのセラミックスパッケージ化又は蓋付きの樹脂パッケージ化するパッケージ工程と、を有する複合センサの製造方法。さらに、前記センサウエハはシリコン、前記キャップウエハはガラス又はシリコン、からなる複合センサの製造方法。さらに、前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止する接合封止工程と、前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する封止工程は、陽極接合又は表面活性化接合である複合センサの製造方法。
【0015】
また、振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、を元にして製造された複合センサであって、前記センサウエハは、センサウエハ平面のX軸とY軸の加速度をそれぞれ検出する加速度センサを有し、前記センサウエハ平面のZ軸廻りの角速度を検出する角速度センサを有し、前記加速度センサは、大気圧雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハの接合によって大気圧雰囲気で接合封止される構造であり、前記角速度センサは、真空雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によるバンプの変形によって真空雰囲気で接合封止される構造である複合センサ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、同一基板上に配置した加速度センサ、角速度センサの検出感度を向上させる圧力雰囲気を微小調整でき、低コストで製造可能な複合センサおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサウエハとキャップウエハからなる複合センサウエハの接合状態を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサチップとキャップチップからなる複合センサチップの拡大した分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第2実施例を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第2実施例を示す断面図である。
【図7】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第3実施例を示す断面図である。
【図8】本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第3実施例を示す断面図である。
【図9】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第4実施例を示す断面図である。
【図10】本実施形態に係る複合センサの製造方法における樹脂モールドパッケージの実装に関する第5実施例を示す図である。
【図11】本実施形態に係る複合センサの製造方法におけるセラミックスパッケージと樹脂パッケージの実装に関する第6と第7実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法について、その基盤的な概要を工程にしたがって説明する(具体的な製造方法の実施例については後述する)。本発明の実施形態に係る複合センサウエハ3は、加速度センサ11と角速度センサ12を隣接した配置で、同一基板上に複数設置したセンサウエハ1と、センサを封止するキャップウエハ2とから構成される。
【0019】
複合センサは、(1)センサウエハ1とキャップウエハ2と接合してセンシング部を封止して複合センサウエハ3とする工程、(2)複合センサウエハ3を個片化して、複合センサチップ30とする工程、(3)複合センサチップ30、外部入出力端子を有する配線基板50、検出と補正を行う回路基板40を共に実装する工程、(4)複合センサチップ30、配線基板50、回路基板40の電極をワイヤ60で接続する工程、(5)樹脂パッケージ70、セラミックスパッケージ80等で封止する工程、によって形成される。
【0020】
「センサ構成および加工方法」
センサウエハ1には、角速度に起因したコリオリ力により振動変位する角速度センサ12の振動体121および検出素子122、加速度印加により可動変位する加速度センサ11の可動体111および検出素子112が、壁16に隔てられた空間に複数設置され、加速度センサ11と角速度センサ12の対により複合センサを形成する。また、それぞれの複合センサの間には、センサウエハ外周と連結した通気路13を形成する。
【0021】
加速度センサ11の可動体111および検出素子112と、角速度センサ12の振動体121および検出素子122は、SOI(Silicon on Insulator)基板の活性層側にフォトリソグラフィでパターンを形成し、シリコンのドライエッチング加工でエッチングして加工する。その後、可動体111、振動体121、検出素子112,122として機能させるため、加工したシリコン底面にある酸化膜(ボックス層)を除去することで、駆動できる構成とする。信号の取り出しを行うため、SOI基板の活性層、ハンドル層にシリコンのドライエッチング等で貫通孔を形成し、貫通孔側壁にシリコン酸化膜等で絶縁膜を形成した後、貫通孔をポリシリコン、金属等で埋め込んで、ハンドル層側に電極14を形成する。
【0022】
「キャップ構成および加工方法」
キャップウエハ2には、加速度センサ11と角速度センサ12にそれぞれ対応した箇所に複数のギャップ21,22を設置し、角速度センサ12のギャップ22近傍に複数のバンプ23を配置した構成である。キャップウエハ2には、シリコン、ガラス等のセンサウエハ1と同等の線膨張係数を有する材料を選定する。シリコンを用いた場合、水酸化カリウム水溶液を用いた異方性エッチング、フッ酸、硝酸、酢酸の混合液を用いた等方性エッチング、ドライエッチング等でギャップ21,22を形成する。一方、ガラスを用いた場合、フッ酸を用いた等方性エッチング、ドライエッチング等でギャップ21,22を形成する。
【0023】
角速度センサ12のギャップ22近傍に形成するバンプ23は、シリコンを用いた場合、金属膜をパターニングすることで形成する。一方、ガラスを用いた場合、金属膜のパターニングもしくは、ガラスをフッ酸、フッ化アンモニウムの混合水溶液を用いて、等方性エッチングで形成する。金属膜の材料としては、接合時に荷重をかけた際に変形しやすい材料を選定する。また、金属膜を用いる場合、SOI基板の接合する側(活性層側)に形成した角速度センサ12の近傍に設置しても良い。
【0024】
角速度センサ12の駆動環境の信頼性を向上させるために、角速度センサ12のギャップ22内に圧力調整用の吸着材24を配置しておくと、キャップチップ20、センサチップ10表面に吸着していたガスが脱離しても、吸着材24に付着するため、角速度センサ12の駆動環境に影響を与えない構成とすることができる。
【0025】
「接合・封止工程」
センサウエハ1とキャップウエハ2との位置を合わせた後、接合することで加速度センサ11と角速度センサ12を封止する。1段階目の接合で、加速度センサ11を大気圧雰囲気で封止する。このとき、角速度センサ12のギャップ22近傍に配置したバンプ23により、接合が阻害されて、角速度センサ12は封止されない。また、バンプ23により形成される通気路13とセンサウエハ外周と連結した通気路13を介して、角速度センサ12の内部圧力を調整することが可能である。
【0026】
次に、2段目の接合で、真空雰囲気下において、センサウエハ1とキャップウエハ2とに荷重を印加して、バンプ23を変形させて接合することで、角速度センサ12を真空雰囲気で封止する。上述した方法により、一連の接合行程の過程中において、加速度センサを大気圧雰囲気、角速度センサを真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。
【0027】
キャップウエハ2にガラスを用いた場合(バンプ23もガラス)、センサウエハ1とキャップウエハ2との位置を合わせた後、1段階目の接合で、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで大気圧に調整し、200−400℃で、センサウエハ1とキャップウエハ2とに電圧を印加して、加速度センサ11を封止する。このとき、バンプ23により、接合が阻害されて、角速度センサ12は封止されない。次に2段階目の接合で、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで、角速度センサ12の駆動圧力(真空雰囲気)に調整し、500℃以上で、荷重を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2とに電圧を印加して、角速度センサ12を封止する。高温雰囲気で荷重を印加することで、バンプ23が変形して、ウエハ同士1,2が接触して接合され、角速度センサ12が真空雰囲気で封止される。
【0028】
また、金属製バンプ23を用いた場合、2段階目の接合において、200−400℃で、金属製バンプ23の変形する荷重を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2とに電圧を印加して、角速度センサ12を封止しても良い。
【0029】
また、キャップウエハ2にシリコンを用いた場合、センサウエハ1とキャップウエハ2との位置を合わせた後、1段階目の接合で、ウエハ表面を活性化した後、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで大気圧に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2とに金属製のバンプ23が変形しない荷重で押圧して、加速度センサ11を封止する。このとき、バンプ23により、接合が阻害されて、角速度センサ12は封止されない。
【0030】
次に、2段階目の接合で、表面を活性化した後、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで、角速度センサ12の駆動圧力(真空雰囲気)に調整し、金属製のバンプ23が変形する荷重で押圧して、角速度センサ12を封止する。金属製のバンプ23を変形させることで、ウエハ同士1,2が接触して接合され、角速度センサ12が真空雰囲気で封止される。
【0031】
「個片化工程」
複合センサウエハ3を複合センサチップ30に切断する。切断には、ダイアモンド砥石による切断方法(ダイシング)、もしくはレーザーを用いた切断方法を用いる。
【0032】
「実装工程」
外部入出力端子を有する配線基板50(例えば、リードフレーム、セラミックスパッケージ、樹脂パッケージ等)上に、加速度センサ11と角速度センサ12の変位を増幅し検出する回路、温度の影響や実装傾き等を補正する回路を配置した回路基板40を設置して、その上に複合センサチップ30を実装する。複合センサチップ30、回路基板40、配線基板50は、それぞれの電極パッドをAu等のワイヤ60で接続する。
【0033】
リードフレーム等の配線基板50を用いた場合、インジェクションモールド、ポティング等の方法で樹脂封止する。一方、セラミックスパッケージ80、樹脂パッケージ70等の配線基板50を用いた場合、蓋82をはんだによる接合、圧着等で封止して、複合センサを形成する。
【0034】
以上説明した複合センサの構成により、同一基板上の加速度センサ11と角速度センサ12をそれぞれのセンサに適合した駆動雰囲気下で封止でき、かつ低コストで製造可能な複合センサおよびその製造方法とすることができる。
【0035】
次に、本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法の実施例について、図面を参照しながら以下説明する。
【0036】
「第1実施例」キャップ:ガラス、バンプ:ガラス、陽極接合
本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法に関する第1実施例について、図1、図2、図3及び図4を参照しながら以下説明する。図1は本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサウエハとキャップウエハからなる複合センサウエハの接合状態を説明する図であり、図2は本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサチップとキャップチップからなる複合センサチップの拡大した分解斜視図である。
【0037】
また、図3は本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図であり、図4は本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図である。
【0038】
図1に示すように、加速度センサ11及び角速度センサ12からなるセンサチップ10を複数配置したセンサウエハ1と、加速度センサ用ギャップ21及び角速度センサ用ギャップ22を形成したキャップチップ20を複数配置したキャップウエハ2と、を接合封止して、複合センサウエハ3を形成する。
【0039】
図2は、図1のセンサウエハ1とキャップウエハ2の一部分を拡大した図であり、センサチップ10は、加速度センサ11、角速度センサ12、ウエハ外周と連結する通気路13、キャップチップ20と接合する接合部17(図3を参照)、をSOI(Silicon on insulator)基板上に形成する。SOI基板とは、シリコンとシリコンとの間にシリコン酸化層が形成された基板である。加速度センサ11の可動体111と検出素子112、角速度センサ12の振動体121と検出素子122、および通気路13は、SOI基板の活性層側にSi DRIE(deep Reactive Ion Etching)により形成する。
【0040】
その後、シリコン酸化層を除去することでリリースされて、可動体111、振動体121、検出素子112,122を形成する。また、可動体111とその検出素子112と、振動体121とその検出素子122とは、壁16で隔てて(隙間をもって)配置する。加速度センサ11の検出素子112、角速度センサの振動体121の検出素子122は、貫通電極を介してSOI基板の裏面の電極パッド14と接続されており(図3と図4を参照)、その電極パッド14より信号を入出力することで、駆動、変位量を検出する構成である。
【0041】
図2に示す複合センサチップ30の分解斜視図から分かるように、複合センサは、同一平面上に、可動体111とその検出素子112からなる加速度センサ11と、振動体121とその検出素子122からなる角速度センサ12を設置しており、ここで、加速度センサ11は、上記平面のX軸とY軸の2軸の加速度をそれぞれ検出する2つの加速度センサからなる加速度検出部を備え(図2において、通気路13の左側で、可動体111がX軸とY軸にそれぞれ対応して設けることが図示されている)、角速度センサ12は、X軸とY軸にそれぞれ直交するZ軸の廻り、すなわち1軸廻りの角速度を検出する1つの角速度センサからなる角速度検出器を備えている。
【0042】
第1実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図3と図4を用いて説明する。図3は、図2の角速度センサのAA’断面図、図4は、図2の加速度センサのBB’断面図である。キャップウエハ2はガラスであり、加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22、角速度センサ12のギャップ近傍に設置したバンプ23で構成する。封止信頼性を向上させるため、角速度センサ12のギャップ22内に吸着材24を形成した構造である。
【0043】
キャップチップ20に形成するバンプ23(ガラス自体を加工してバンプを形成)は、バッファードフッ酸による等方性エッチングにより、φ15μm、高さ1μm、ピッチ150μmで形成した(陽極接合で、φ10μm以上、高さ0.5μm以上であればギャップ15を形成することができ潰れない)。また、加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22は、フッ酸による等方性エッチングにより、深さ60μmで形成した。その後、角速度センサ12のギャップ22の中に、吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0044】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図3(a)と図4(a))後、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1、キャップウエハ2間に電圧を印加して、接合温度250℃で陽極接合した(200℃〜400℃で有効)(図3(b)と図4(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0045】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は、真空雰囲気下となる。ここで、接合温度500℃以上として、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で(1MPa以上でバンプ23が変形)、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して陽極接合した(図3(c)と図4(c))。このとき、バンプ23が変形して、角速度センサ12外周部のギャップ15が潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気(300Pa)で封止できる。上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。
【0046】
「第2実施例」キャップ:シリコン、バンプ:金属膜(例.In)、表面活性化接合
第2実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図5と図6を用いて説明する。図5は、図2の角速度センサのAA’断面図、図6は、図2の加速度センサのBB’断面図である。キャップウエハ2の材質はシリコンであり、加速度センサ11のギャップ21と角速度センサ12のギャップ22は、水酸化カリウム水溶液でエッチングして、深さ60μmで形成した。次に、角速度センサ12のギャップ22横に、メタルマスクを用いて、蒸着でInを0.2μm成膜しバンプ23を形成した(表面活性化接合で、In高さが0.2μm以上であればギャップ15を形成することができ潰れない)。角速度センサ12のギャップ22の中に吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0047】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図5(a)と図6(a))後、センサウエハ1とキャップウエハ2との表面をアルゴンプラズマで活性化して、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2を接触させて、表面活性化接合した(図5(b)と図6(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0048】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は真空雰囲気下となる。ここで、表面をアルゴンプラズマで活性化させて、接合温度200℃以上として、バンプ23を軟化させて、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2とを接触させて、表面活性化接合した(図5(c)と図6(c))。
【0049】
このとき、バンプ23が変形して、角速度センサ12外周部のギャップ15が潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気(300Pa)で封止できる。上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハを形成する。
【0050】
「実施例3」キャップ:ガラス、バンプ:金属(例.Cr)、陽極接合
第3実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図7と図8を用いて説明する。図7は、図2の角速度センサのAA’断面図、図8は、図2の加速度センサのBB’断面図である。キャップウエハ2の材質はガラスであり、加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22は、フッ酸水溶液でエッチングして、深さ55μmで形成した。次に、角速度センサ12のギャップ22横に、メタルマスクを用いて、スパッタでCrを1.2μm成膜しバンプ23を形成した(陽極接合で、Cr高さが0.5μm以上であればギャップ15を形成することができ潰れない)。角速度センサ12のギャップ22の中に、吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0051】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図7(a)と図8(a))後、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して、接合温度250℃で陽極接合した(図7(b)と図8(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0052】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は真空雰囲気下となる。ここで、圧力を350Pa、接合温度500℃以上として、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で、複合センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して陽極接合した(図7(c)と図8(c))。
【0053】
このとき、バンプ13が変形して、角速度センサ12外周部のギャップ15が潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気で封止できる。上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。
【0054】
「実施例4」キャップ:ガラス、バンプ:ガラス、陽極接合、ダイシングラインにバンプ設置
第4実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図9を用いて説明する。図9は、図2の角速度センサ12のAA’断面図である。キャップウエハ2の材質はガラスであり、バンプ23は、バッファードフッ酸水溶液でエッチングして、φ18μm、高さ1.2μm、ピッチ120μmで形成した。加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22は、フッ酸水溶液でエッチングして、深さ60μmで形成した。角速度センサ12のギャップ22の中に、吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0055】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図9(a))後、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して、接合温度250℃で陽極接合した(図9(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0056】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は真空雰囲気下となる。ここで、接合温度500℃以上として、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して陽極接合した(図9(c))。このとき、バンプ13が変形して、角速度センサ12外周部のギャップが潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気(350Pa)で封止できる。
【0057】
上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。本実施例4の構成では、その後の実装工程において、切断部(ダイシングライン又はカット面26)にバンプ23があるため、最終形状では、複合センサチップ30の切断によってバンプ23が取り除かれてバンプ23のない構成とすることができる(図9(d))。
【0058】
以上説明した実施例1から実施例4においては、加速度センサ封止、角速度センサ封止の順に接合したが、加速度センサのギャップ近傍にバンプを形成しておき、角速度センサ封止、加速度センサ封止の順に接合しても良い。ただし、2段階目の接合が高温(500℃以上)となるため、センサ内の圧力は、接合時の圧力よりも室温では低下する。例えば、1段階目の接合で、加速度センサを大気圧(0.1MPa)、250℃で接合した場合、56800Pa程度となる。一方、加速度センサを大気圧(0.1MPa)、高温(500℃)で接合した場合、38400Pa程度となり、ダンピング効果が低減するが、加速度センサの可動体とその検出素子の微細化に伴い、ダンピング効果は向上するため、上記圧力でも良い。
【0059】
「第5実施例」樹脂モールドパッケージの実装方法
図10は、本発明の第5実施例であり、実施例1〜実施例4に記載の複合センサウエハ3を切断し実装して複合センサとする工程の断面図である。図10(a)は、図2のC−C’断面である。図10(b)では、複合センサウエハ3をCO2レーザーで切断して、複合センサチップ30に分割する。
【0060】
外部入出力電極51を金属で形成したリードフレーム等の配線基板50上に、複合センサチップ30の変位を検出する回路、温度や傾き等を補正する回路を搭載した回路基板40をダイアッタッチフィルムやAgペースト等を用いて配置した(図10(c))。続いて、回路基板40上に複合センサチップ30のキャップウエハ側をダイアタッチフィルム、Si接着材等を用いて配置する(図10(d))。
【0061】
次に、図10(e)のように、複合センサチップ30の電極14、回路基板40の電極41、配線基板50の電極51をワイヤ60で接続する。最後に、インジェクションモールド、ポッティング等により、複合センサチップ30、回路基板40、配線基板50、ワイヤ60を樹脂70で封止する(図10(f))。樹脂材料には、シリカ等の粒子を混合したエポキシ系樹脂を用いる。
【0062】
「実施例6」セラミックスパッケージの実装方法
図11は、本発明の第6実施例であり、実施例1〜実施例4に記載の複合センサウエハ3を切断し実装して、複合センサとする工程の断面図である。図11(a)は、図2のC−C’断面である。図11(b)のように、複合センサウエハ3をダイアモンド砥石により切断して、複合センサチップ30に分割する。
【0063】
外部入出力電極81をセラミックスの多層配線と接続したセラミックスパッケージ80上に、複合センサチップ30の変位を検出する回路、温度や傾き等を補正する回路を搭載した回路基板40をダイアッタッチフィルムやAgペースト等を用いて配置する(図11(c))。図11(d)に図示するように、回路基板40上に複合センサチップ30のキャップウエハ側をダイアタッチフィルム、Si接着材等を用いて配置する。
【0064】
次に、図11(e)のように、複合センサチップ30の電極14、回路基板40の電極41、セラミックスパッケージ80の電極81をワイヤ60で接続する。最後に、セラミックスパッケージ80の開口部に蓋82を不活性ガス中において、はんだ接合する(図11(f))。
【0065】
「実施例7」樹脂パッケージの実装方法
本発明の第7実施例について図11を用いて説明する。図11は、実施例1〜実施例4に記載の複合センサウエハ3を切断し実装して、複合センサとする工程の断面図である。図11(a)は、図2のC−C’断面である。図11(b)のように、複合センサウエハ3をダイアモンド砥石により切断して、複合センサチップ30に分割する。
【0066】
外部入出力電極81を樹脂基板の多層配線と接続した樹脂パッケージ80上に、複合センサチップ30の変位を検出する回路、温度や傾き等を補正する回路を搭載した回路基板40をダイアッタッチフィルムやAgペースト等を用いて配置する(図11(c))。図11(d)に図示するように、回路基板40上に複合センサチップ30のキャップウエハ側をダイアタッチフィルム、Si接着材等を用いて配置する。
【0067】
次に、図11(e)に図示するように、複合センサチップ30の電極14、回路基板40の電極41、樹脂パッケージ80の電極81をワイヤ60で接続する。最後に、樹脂パッケージ80の開口部に蓋82を圧着する(図11(f))。
【符号の説明】
【0068】
1 センサウエハ
2 キャップウエハ
10 センサチップ
11 加速度センサ
111 可動体
112 検出素子
12 角速度センサ
121 振動体
122 検出素子
13 通気路
14 電極
15 ギャップ
16 壁
17 接合部
20 キャップチップ
21 加速度センサ用ギャップ
22 角速度センサ用ギャップ
23 バンプ
24 吸着材(ゲッタ)
26 ダイシングライン又はカット面
3 複合センサウエハ
30 複合センサチップ
40 回路基板
41 回路基板電極
50 配線基板
51 配線
60 ワイヤ
70 樹脂
80 セラミックスパッケージ又は樹脂パッケージ
81 パッケージ電極
82 蓋
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量の測定に用いられる物理量センサ、およびその物理量検出センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、静電容量型の物理量センサには、様々なものが提供されている。物理量センサは、シリコン基板、ガラス基板上にマイクロマシニングにより、振動体、可動体等の可動機構部品を設け、キャップ基板には、振動体、可動体等の可動機構部品に対応した箇所に駆動ギャップを設けておき、これらの基板を接合、接着等で封止する。これらの可動機構部品のサイズは、μmオーダとなっており、空気抵抗等の影響により、特性低下の課題が生じ、それぞれの振動体、可動体等の可動機構部品に対応した圧力雰囲気でセンシング部を封止する必要がある。
【0003】
複合センサは、加速度センサ、角速度センサ等を同一基板上に設置するため、加速度センサ、角速度センサのそれぞれが特性低下しない圧力雰囲気で封止する。一般的に加速度センサのセンシング部は、大気圧封止、角速度センサのセンシング部は、真空封止することで特性低下しない複合センサが提供される。
【0004】
角速度センサは、可動機構部品が振動体であり、この振動体がある一定の周波数で駆動振動させているときに、角速度が加わると、コリオリ力が発生する。このコリオリ力により、振動体が変位する。このコリオリ力による振動体の変位量を検出することで角速度を検出する。振動体の駆動速度が速いほど、コリオリ力が大きくなるため、角速度センサの検出感度を良好にするには、振動体を高周波数かつ数μmというような大きな振幅で振動させる必要がある。
【0005】
しかしながら、マイクロマシニングにより作製した振動体は、微小ギャップで形成するため、駆動雰囲気が大気圧の場合、空気(封止気体)のダンピング効果の影響が大きくなる。このダンピング効果が、角速度センサの高周波数、かつ大振幅での振動に影響を与えてしまい、角速度センサの検出感度を低下させる。したがって、ダンピング効果の影響の小さい、すなわち真空雰囲気下で角速度センサのセンシング部を封止することで、高周波数、かつ大振幅できる角速度センサを得ることができる。
【0006】
一方、加速度センサは、可動機構部品が錘、梁等で構成された可動体であり、加速度が加わると、可動体が変位する。この可動体の変位量を検出することで、加速度を検出する。加速度センサを角速度センサと同じ真空雰囲気下で封止すると、加速度センサの可動体は、ダンピング効果が小さくなるため、振動し続ける現象が発生して、加速度を感度良く検出できない。したがって、加速度センサは、ダンピング効果の大きい、すなわち大気雰囲気下で封止する。
【0007】
加速度センサ、角速度センサを複合化した複合センサの公知例として、特許文献1には、加速度センサ、角速度センサを封止するキャップ基板の加速度センサ側に貫通孔(通気路)を設けておき、加速度センサ、角速度センサを真空封止した後、通気路よりダンピング剤を充填し、貫通孔を半田、樹脂等で埋めて、加速度センサを大気雰囲気下で、また、角速度センサを真空雰囲気下で封止する構成が提示されている。
【0008】
また、特許文献2には、加速度センサ、角速度センサを大気圧雰囲気で封止した後、角速度センサ上のキャップ基板もしくはセンサ基板に貫通孔を形成する。その後、シリコン等のChemical Vapor Deposition(CVD)法で、その貫通孔を埋めることで、角速度センサをCVD法での圧力すなわち真空雰囲気下で封止する。この方法で、加速度センサを大気圧雰囲気で、また、角速度センサを真空雰囲気で封止する構成が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−5950号公報
【特許文献2】特表2008−501535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、同一基板上に設置した加速度センサ、角速度センサの検出感度を向上させるため、それぞれのセンサに対応した圧力で封止する必要がある。同一基板上で封止するため、加速度センサ、角速度センサの片方のセンシング部に対応した圧力雰囲気での封止は容易であるが、両方のセンシング部に対応した圧力雰囲気とするためには、上記の特許文献1と2に記載されているように、キャップ基板に貫通孔等の通気路を形成し、センサ基板と接合した後、別材料を用いて、貫通孔を埋め込みする方法が存在する。
【0011】
しかしながら、上記の貫通孔の埋め込み方法では、シリコンもしくはガラス基板と貫通孔を埋める材料との線膨張係数差による伸縮、貫通孔を埋め込む材料との密着性劣化による信頼性低下の課題、製造工程の複雑化による高コスト化等の課題が発生する。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、加速度センサと角速度センサにそれぞれ対応した圧力雰囲気で封止することができ、その封止が一連の接合工程の過程中に形成可能であり、さらに高信頼性の封止と低製造コストを確保することのできる複合センサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、から生成される複合センサの製造方法であって、大気圧雰囲気下において、前記センサウエハと前記キャップウエハを前記バンプが介在するように接合し、前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止するとともに、前記角速度センサに形成した前記ギャップ近傍の前記バンプによって前記角速度センサを大気圧雰囲気で接合阻害する接合封止・接合阻害工程と、真空雰囲気下において、前記バンプによる前記接合阻害の隙間を通して前記角速度センサを真空雰囲気に浸す真空雰囲気形成工程と、前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によって、前記バンプを変形させて前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する接合封止工程と、を順に行う工程を有する複合センサの製造方法。
【0014】
また、前記接合封止・接合阻害工程と、前記真空雰囲気形成工程と、前記接合封止工程とに続いて、前記センサウエハと前記キャップウエハの切断により複合センサウエハを複合センサチップにする個片化工程と、外部入出力端子を有する配線基板上に、前記加速度センサ及び前記角速度センサからの検出とその補正を行う回路基板を設置する第1の設置工程と、前記回路基板上に前記複合センサチップを設置する第2の設置工程と、前記複合センサチップ、前記回路基板、及び前記配線基板をワイヤで接続する接続工程と、前記配線基板、前記回路基板、及び前記複合センサチップを樹脂封止する樹脂封止工程、若しくは、蓋付きのセラミックスパッケージ化又は蓋付きの樹脂パッケージ化するパッケージ工程と、を有する複合センサの製造方法。さらに、前記センサウエハはシリコン、前記キャップウエハはガラス又はシリコン、からなる複合センサの製造方法。さらに、前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止する接合封止工程と、前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する封止工程は、陽極接合又は表面活性化接合である複合センサの製造方法。
【0015】
また、振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、を元にして製造された複合センサであって、前記センサウエハは、センサウエハ平面のX軸とY軸の加速度をそれぞれ検出する加速度センサを有し、前記センサウエハ平面のZ軸廻りの角速度を検出する角速度センサを有し、前記加速度センサは、大気圧雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハの接合によって大気圧雰囲気で接合封止される構造であり、前記角速度センサは、真空雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によるバンプの変形によって真空雰囲気で接合封止される構造である複合センサ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、同一基板上に配置した加速度センサ、角速度センサの検出感度を向上させる圧力雰囲気を微小調整でき、低コストで製造可能な複合センサおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサウエハとキャップウエハからなる複合センサウエハの接合状態を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサチップとキャップチップからなる複合センサチップの拡大した分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第2実施例を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第2実施例を示す断面図である。
【図7】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第3実施例を示す断面図である。
【図8】本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第3実施例を示す断面図である。
【図9】本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第4実施例を示す断面図である。
【図10】本実施形態に係る複合センサの製造方法における樹脂モールドパッケージの実装に関する第5実施例を示す図である。
【図11】本実施形態に係る複合センサの製造方法におけるセラミックスパッケージと樹脂パッケージの実装に関する第6と第7実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法について、その基盤的な概要を工程にしたがって説明する(具体的な製造方法の実施例については後述する)。本発明の実施形態に係る複合センサウエハ3は、加速度センサ11と角速度センサ12を隣接した配置で、同一基板上に複数設置したセンサウエハ1と、センサを封止するキャップウエハ2とから構成される。
【0019】
複合センサは、(1)センサウエハ1とキャップウエハ2と接合してセンシング部を封止して複合センサウエハ3とする工程、(2)複合センサウエハ3を個片化して、複合センサチップ30とする工程、(3)複合センサチップ30、外部入出力端子を有する配線基板50、検出と補正を行う回路基板40を共に実装する工程、(4)複合センサチップ30、配線基板50、回路基板40の電極をワイヤ60で接続する工程、(5)樹脂パッケージ70、セラミックスパッケージ80等で封止する工程、によって形成される。
【0020】
「センサ構成および加工方法」
センサウエハ1には、角速度に起因したコリオリ力により振動変位する角速度センサ12の振動体121および検出素子122、加速度印加により可動変位する加速度センサ11の可動体111および検出素子112が、壁16に隔てられた空間に複数設置され、加速度センサ11と角速度センサ12の対により複合センサを形成する。また、それぞれの複合センサの間には、センサウエハ外周と連結した通気路13を形成する。
【0021】
加速度センサ11の可動体111および検出素子112と、角速度センサ12の振動体121および検出素子122は、SOI(Silicon on Insulator)基板の活性層側にフォトリソグラフィでパターンを形成し、シリコンのドライエッチング加工でエッチングして加工する。その後、可動体111、振動体121、検出素子112,122として機能させるため、加工したシリコン底面にある酸化膜(ボックス層)を除去することで、駆動できる構成とする。信号の取り出しを行うため、SOI基板の活性層、ハンドル層にシリコンのドライエッチング等で貫通孔を形成し、貫通孔側壁にシリコン酸化膜等で絶縁膜を形成した後、貫通孔をポリシリコン、金属等で埋め込んで、ハンドル層側に電極14を形成する。
【0022】
「キャップ構成および加工方法」
キャップウエハ2には、加速度センサ11と角速度センサ12にそれぞれ対応した箇所に複数のギャップ21,22を設置し、角速度センサ12のギャップ22近傍に複数のバンプ23を配置した構成である。キャップウエハ2には、シリコン、ガラス等のセンサウエハ1と同等の線膨張係数を有する材料を選定する。シリコンを用いた場合、水酸化カリウム水溶液を用いた異方性エッチング、フッ酸、硝酸、酢酸の混合液を用いた等方性エッチング、ドライエッチング等でギャップ21,22を形成する。一方、ガラスを用いた場合、フッ酸を用いた等方性エッチング、ドライエッチング等でギャップ21,22を形成する。
【0023】
角速度センサ12のギャップ22近傍に形成するバンプ23は、シリコンを用いた場合、金属膜をパターニングすることで形成する。一方、ガラスを用いた場合、金属膜のパターニングもしくは、ガラスをフッ酸、フッ化アンモニウムの混合水溶液を用いて、等方性エッチングで形成する。金属膜の材料としては、接合時に荷重をかけた際に変形しやすい材料を選定する。また、金属膜を用いる場合、SOI基板の接合する側(活性層側)に形成した角速度センサ12の近傍に設置しても良い。
【0024】
角速度センサ12の駆動環境の信頼性を向上させるために、角速度センサ12のギャップ22内に圧力調整用の吸着材24を配置しておくと、キャップチップ20、センサチップ10表面に吸着していたガスが脱離しても、吸着材24に付着するため、角速度センサ12の駆動環境に影響を与えない構成とすることができる。
【0025】
「接合・封止工程」
センサウエハ1とキャップウエハ2との位置を合わせた後、接合することで加速度センサ11と角速度センサ12を封止する。1段階目の接合で、加速度センサ11を大気圧雰囲気で封止する。このとき、角速度センサ12のギャップ22近傍に配置したバンプ23により、接合が阻害されて、角速度センサ12は封止されない。また、バンプ23により形成される通気路13とセンサウエハ外周と連結した通気路13を介して、角速度センサ12の内部圧力を調整することが可能である。
【0026】
次に、2段目の接合で、真空雰囲気下において、センサウエハ1とキャップウエハ2とに荷重を印加して、バンプ23を変形させて接合することで、角速度センサ12を真空雰囲気で封止する。上述した方法により、一連の接合行程の過程中において、加速度センサを大気圧雰囲気、角速度センサを真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。
【0027】
キャップウエハ2にガラスを用いた場合(バンプ23もガラス)、センサウエハ1とキャップウエハ2との位置を合わせた後、1段階目の接合で、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで大気圧に調整し、200−400℃で、センサウエハ1とキャップウエハ2とに電圧を印加して、加速度センサ11を封止する。このとき、バンプ23により、接合が阻害されて、角速度センサ12は封止されない。次に2段階目の接合で、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで、角速度センサ12の駆動圧力(真空雰囲気)に調整し、500℃以上で、荷重を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2とに電圧を印加して、角速度センサ12を封止する。高温雰囲気で荷重を印加することで、バンプ23が変形して、ウエハ同士1,2が接触して接合され、角速度センサ12が真空雰囲気で封止される。
【0028】
また、金属製バンプ23を用いた場合、2段階目の接合において、200−400℃で、金属製バンプ23の変形する荷重を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2とに電圧を印加して、角速度センサ12を封止しても良い。
【0029】
また、キャップウエハ2にシリコンを用いた場合、センサウエハ1とキャップウエハ2との位置を合わせた後、1段階目の接合で、ウエハ表面を活性化した後、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで大気圧に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2とに金属製のバンプ23が変形しない荷重で押圧して、加速度センサ11を封止する。このとき、バンプ23により、接合が阻害されて、角速度センサ12は封止されない。
【0030】
次に、2段階目の接合で、表面を活性化した後、アルゴン等の希ガスもしくは不活性ガスで、角速度センサ12の駆動圧力(真空雰囲気)に調整し、金属製のバンプ23が変形する荷重で押圧して、角速度センサ12を封止する。金属製のバンプ23を変形させることで、ウエハ同士1,2が接触して接合され、角速度センサ12が真空雰囲気で封止される。
【0031】
「個片化工程」
複合センサウエハ3を複合センサチップ30に切断する。切断には、ダイアモンド砥石による切断方法(ダイシング)、もしくはレーザーを用いた切断方法を用いる。
【0032】
「実装工程」
外部入出力端子を有する配線基板50(例えば、リードフレーム、セラミックスパッケージ、樹脂パッケージ等)上に、加速度センサ11と角速度センサ12の変位を増幅し検出する回路、温度の影響や実装傾き等を補正する回路を配置した回路基板40を設置して、その上に複合センサチップ30を実装する。複合センサチップ30、回路基板40、配線基板50は、それぞれの電極パッドをAu等のワイヤ60で接続する。
【0033】
リードフレーム等の配線基板50を用いた場合、インジェクションモールド、ポティング等の方法で樹脂封止する。一方、セラミックスパッケージ80、樹脂パッケージ70等の配線基板50を用いた場合、蓋82をはんだによる接合、圧着等で封止して、複合センサを形成する。
【0034】
以上説明した複合センサの構成により、同一基板上の加速度センサ11と角速度センサ12をそれぞれのセンサに適合した駆動雰囲気下で封止でき、かつ低コストで製造可能な複合センサおよびその製造方法とすることができる。
【0035】
次に、本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法の実施例について、図面を参照しながら以下説明する。
【0036】
「第1実施例」キャップ:ガラス、バンプ:ガラス、陽極接合
本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法に関する第1実施例について、図1、図2、図3及び図4を参照しながら以下説明する。図1は本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサウエハとキャップウエハからなる複合センサウエハの接合状態を説明する図であり、図2は本発明の実施形態に係る複合センサの製造方法において、センサチップとキャップチップからなる複合センサチップの拡大した分解斜視図である。
【0037】
また、図3は本実施形態に係る複合センサにおける角速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図であり、図4は本実施形態に係る複合センサにおける加速度センサの製造方法に関する第1実施例を示す断面図である。
【0038】
図1に示すように、加速度センサ11及び角速度センサ12からなるセンサチップ10を複数配置したセンサウエハ1と、加速度センサ用ギャップ21及び角速度センサ用ギャップ22を形成したキャップチップ20を複数配置したキャップウエハ2と、を接合封止して、複合センサウエハ3を形成する。
【0039】
図2は、図1のセンサウエハ1とキャップウエハ2の一部分を拡大した図であり、センサチップ10は、加速度センサ11、角速度センサ12、ウエハ外周と連結する通気路13、キャップチップ20と接合する接合部17(図3を参照)、をSOI(Silicon on insulator)基板上に形成する。SOI基板とは、シリコンとシリコンとの間にシリコン酸化層が形成された基板である。加速度センサ11の可動体111と検出素子112、角速度センサ12の振動体121と検出素子122、および通気路13は、SOI基板の活性層側にSi DRIE(deep Reactive Ion Etching)により形成する。
【0040】
その後、シリコン酸化層を除去することでリリースされて、可動体111、振動体121、検出素子112,122を形成する。また、可動体111とその検出素子112と、振動体121とその検出素子122とは、壁16で隔てて(隙間をもって)配置する。加速度センサ11の検出素子112、角速度センサの振動体121の検出素子122は、貫通電極を介してSOI基板の裏面の電極パッド14と接続されており(図3と図4を参照)、その電極パッド14より信号を入出力することで、駆動、変位量を検出する構成である。
【0041】
図2に示す複合センサチップ30の分解斜視図から分かるように、複合センサは、同一平面上に、可動体111とその検出素子112からなる加速度センサ11と、振動体121とその検出素子122からなる角速度センサ12を設置しており、ここで、加速度センサ11は、上記平面のX軸とY軸の2軸の加速度をそれぞれ検出する2つの加速度センサからなる加速度検出部を備え(図2において、通気路13の左側で、可動体111がX軸とY軸にそれぞれ対応して設けることが図示されている)、角速度センサ12は、X軸とY軸にそれぞれ直交するZ軸の廻り、すなわち1軸廻りの角速度を検出する1つの角速度センサからなる角速度検出器を備えている。
【0042】
第1実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図3と図4を用いて説明する。図3は、図2の角速度センサのAA’断面図、図4は、図2の加速度センサのBB’断面図である。キャップウエハ2はガラスであり、加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22、角速度センサ12のギャップ近傍に設置したバンプ23で構成する。封止信頼性を向上させるため、角速度センサ12のギャップ22内に吸着材24を形成した構造である。
【0043】
キャップチップ20に形成するバンプ23(ガラス自体を加工してバンプを形成)は、バッファードフッ酸による等方性エッチングにより、φ15μm、高さ1μm、ピッチ150μmで形成した(陽極接合で、φ10μm以上、高さ0.5μm以上であればギャップ15を形成することができ潰れない)。また、加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22は、フッ酸による等方性エッチングにより、深さ60μmで形成した。その後、角速度センサ12のギャップ22の中に、吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0044】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図3(a)と図4(a))後、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1、キャップウエハ2間に電圧を印加して、接合温度250℃で陽極接合した(200℃〜400℃で有効)(図3(b)と図4(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0045】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は、真空雰囲気下となる。ここで、接合温度500℃以上として、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で(1MPa以上でバンプ23が変形)、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して陽極接合した(図3(c)と図4(c))。このとき、バンプ23が変形して、角速度センサ12外周部のギャップ15が潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気(300Pa)で封止できる。上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。
【0046】
「第2実施例」キャップ:シリコン、バンプ:金属膜(例.In)、表面活性化接合
第2実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図5と図6を用いて説明する。図5は、図2の角速度センサのAA’断面図、図6は、図2の加速度センサのBB’断面図である。キャップウエハ2の材質はシリコンであり、加速度センサ11のギャップ21と角速度センサ12のギャップ22は、水酸化カリウム水溶液でエッチングして、深さ60μmで形成した。次に、角速度センサ12のギャップ22横に、メタルマスクを用いて、蒸着でInを0.2μm成膜しバンプ23を形成した(表面活性化接合で、In高さが0.2μm以上であればギャップ15を形成することができ潰れない)。角速度センサ12のギャップ22の中に吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0047】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図5(a)と図6(a))後、センサウエハ1とキャップウエハ2との表面をアルゴンプラズマで活性化して、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2を接触させて、表面活性化接合した(図5(b)と図6(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0048】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は真空雰囲気下となる。ここで、表面をアルゴンプラズマで活性化させて、接合温度200℃以上として、バンプ23を軟化させて、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2とを接触させて、表面活性化接合した(図5(c)と図6(c))。
【0049】
このとき、バンプ23が変形して、角速度センサ12外周部のギャップ15が潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気(300Pa)で封止できる。上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハを形成する。
【0050】
「実施例3」キャップ:ガラス、バンプ:金属(例.Cr)、陽極接合
第3実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図7と図8を用いて説明する。図7は、図2の角速度センサのAA’断面図、図8は、図2の加速度センサのBB’断面図である。キャップウエハ2の材質はガラスであり、加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22は、フッ酸水溶液でエッチングして、深さ55μmで形成した。次に、角速度センサ12のギャップ22横に、メタルマスクを用いて、スパッタでCrを1.2μm成膜しバンプ23を形成した(陽極接合で、Cr高さが0.5μm以上であればギャップ15を形成することができ潰れない)。角速度センサ12のギャップ22の中に、吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0051】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図7(a)と図8(a))後、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して、接合温度250℃で陽極接合した(図7(b)と図8(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0052】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は真空雰囲気下となる。ここで、圧力を350Pa、接合温度500℃以上として、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で、複合センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して陽極接合した(図7(c)と図8(c))。
【0053】
このとき、バンプ13が変形して、角速度センサ12外周部のギャップ15が潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気で封止できる。上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。
【0054】
「実施例4」キャップ:ガラス、バンプ:ガラス、陽極接合、ダイシングラインにバンプ設置
第4実施例における接合によるセンサウエハ1とキャップウエハ2との接合封止に関して、図9を用いて説明する。図9は、図2の角速度センサ12のAA’断面図である。キャップウエハ2の材質はガラスであり、バンプ23は、バッファードフッ酸水溶液でエッチングして、φ18μm、高さ1.2μm、ピッチ120μmで形成した。加速度センサ11のギャップ21、角速度センサ12のギャップ22は、フッ酸水溶液でエッチングして、深さ60μmで形成した。角速度センサ12のギャップ22の中に、吸着材(ゲッタ)24を成膜した。
【0055】
センサウエハ1とキャップウエハ2とをアライメントした(図9(a))後、アルゴンガスで大気圧雰囲気に調整し、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して、接合温度250℃で陽極接合した(図9(b))。このとき、加速度センサ11は、大気圧雰囲気で接合封止されるが、角速度センサ12は、バンプ23が接合を阻害して、ギャップ15が形成される。
【0056】
次に、真空雰囲気とした際に、ウエハ外周と連結した通気路13とギャップ15とを介して、角速度センサ12内は真空雰囲気下となる。ここで、接合温度500℃以上として、センサウエハ1とキャップウエハ2に荷重(2MPa)を印加した状態で、センサウエハ1とキャップウエハ2間に電圧を印加して陽極接合した(図9(c))。このとき、バンプ13が変形して、角速度センサ12外周部のギャップが潰され接合が進行し、角速度センサ12を真空雰囲気(350Pa)で封止できる。
【0057】
上記方法により、加速度センサ11を大気圧雰囲気、角速度センサ12を真空雰囲気で封止した複合センサウエハ3を形成する。本実施例4の構成では、その後の実装工程において、切断部(ダイシングライン又はカット面26)にバンプ23があるため、最終形状では、複合センサチップ30の切断によってバンプ23が取り除かれてバンプ23のない構成とすることができる(図9(d))。
【0058】
以上説明した実施例1から実施例4においては、加速度センサ封止、角速度センサ封止の順に接合したが、加速度センサのギャップ近傍にバンプを形成しておき、角速度センサ封止、加速度センサ封止の順に接合しても良い。ただし、2段階目の接合が高温(500℃以上)となるため、センサ内の圧力は、接合時の圧力よりも室温では低下する。例えば、1段階目の接合で、加速度センサを大気圧(0.1MPa)、250℃で接合した場合、56800Pa程度となる。一方、加速度センサを大気圧(0.1MPa)、高温(500℃)で接合した場合、38400Pa程度となり、ダンピング効果が低減するが、加速度センサの可動体とその検出素子の微細化に伴い、ダンピング効果は向上するため、上記圧力でも良い。
【0059】
「第5実施例」樹脂モールドパッケージの実装方法
図10は、本発明の第5実施例であり、実施例1〜実施例4に記載の複合センサウエハ3を切断し実装して複合センサとする工程の断面図である。図10(a)は、図2のC−C’断面である。図10(b)では、複合センサウエハ3をCO2レーザーで切断して、複合センサチップ30に分割する。
【0060】
外部入出力電極51を金属で形成したリードフレーム等の配線基板50上に、複合センサチップ30の変位を検出する回路、温度や傾き等を補正する回路を搭載した回路基板40をダイアッタッチフィルムやAgペースト等を用いて配置した(図10(c))。続いて、回路基板40上に複合センサチップ30のキャップウエハ側をダイアタッチフィルム、Si接着材等を用いて配置する(図10(d))。
【0061】
次に、図10(e)のように、複合センサチップ30の電極14、回路基板40の電極41、配線基板50の電極51をワイヤ60で接続する。最後に、インジェクションモールド、ポッティング等により、複合センサチップ30、回路基板40、配線基板50、ワイヤ60を樹脂70で封止する(図10(f))。樹脂材料には、シリカ等の粒子を混合したエポキシ系樹脂を用いる。
【0062】
「実施例6」セラミックスパッケージの実装方法
図11は、本発明の第6実施例であり、実施例1〜実施例4に記載の複合センサウエハ3を切断し実装して、複合センサとする工程の断面図である。図11(a)は、図2のC−C’断面である。図11(b)のように、複合センサウエハ3をダイアモンド砥石により切断して、複合センサチップ30に分割する。
【0063】
外部入出力電極81をセラミックスの多層配線と接続したセラミックスパッケージ80上に、複合センサチップ30の変位を検出する回路、温度や傾き等を補正する回路を搭載した回路基板40をダイアッタッチフィルムやAgペースト等を用いて配置する(図11(c))。図11(d)に図示するように、回路基板40上に複合センサチップ30のキャップウエハ側をダイアタッチフィルム、Si接着材等を用いて配置する。
【0064】
次に、図11(e)のように、複合センサチップ30の電極14、回路基板40の電極41、セラミックスパッケージ80の電極81をワイヤ60で接続する。最後に、セラミックスパッケージ80の開口部に蓋82を不活性ガス中において、はんだ接合する(図11(f))。
【0065】
「実施例7」樹脂パッケージの実装方法
本発明の第7実施例について図11を用いて説明する。図11は、実施例1〜実施例4に記載の複合センサウエハ3を切断し実装して、複合センサとする工程の断面図である。図11(a)は、図2のC−C’断面である。図11(b)のように、複合センサウエハ3をダイアモンド砥石により切断して、複合センサチップ30に分割する。
【0066】
外部入出力電極81を樹脂基板の多層配線と接続した樹脂パッケージ80上に、複合センサチップ30の変位を検出する回路、温度や傾き等を補正する回路を搭載した回路基板40をダイアッタッチフィルムやAgペースト等を用いて配置する(図11(c))。図11(d)に図示するように、回路基板40上に複合センサチップ30のキャップウエハ側をダイアタッチフィルム、Si接着材等を用いて配置する。
【0067】
次に、図11(e)に図示するように、複合センサチップ30の電極14、回路基板40の電極41、樹脂パッケージ80の電極81をワイヤ60で接続する。最後に、樹脂パッケージ80の開口部に蓋82を圧着する(図11(f))。
【符号の説明】
【0068】
1 センサウエハ
2 キャップウエハ
10 センサチップ
11 加速度センサ
111 可動体
112 検出素子
12 角速度センサ
121 振動体
122 検出素子
13 通気路
14 電極
15 ギャップ
16 壁
17 接合部
20 キャップチップ
21 加速度センサ用ギャップ
22 角速度センサ用ギャップ
23 バンプ
24 吸着材(ゲッタ)
26 ダイシングライン又はカット面
3 複合センサウエハ
30 複合センサチップ
40 回路基板
41 回路基板電極
50 配線基板
51 配線
60 ワイヤ
70 樹脂
80 セラミックスパッケージ又は樹脂パッケージ
81 パッケージ電極
82 蓋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、から生成される複合センサの製造方法であって、
大気圧雰囲気下において、前記センサウエハと前記キャップウエハを前記バンプが介在するように接合し、前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止するとともに、前記角速度センサに形成した前記ギャップ近傍の前記バンプによって前記角速度センサを大気圧雰囲気で接合阻害する接合封止・接合阻害工程と、
真空雰囲気下において、前記バンプによる前記接合阻害の隙間を通して前記角速度センサを真空雰囲気に浸す真空雰囲気形成工程と、
前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によって、前記バンプを変形させて前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する接合封止工程と、を順に行う工程を有する
ことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記接合封止・接合阻害工程と、前記真空雰囲気形成工程と、前記接合封止工程とに続いて、前記センサウエハと前記キャップウエハの切断により複合センサウエハを複合センサチップにする個片化工程と、
外部入出力端子を有する配線基板上に、前記加速度センサ及び前記角速度センサからの検出とその補正を行う回路基板を設置する第1の設置工程と、
前記回路基板上に前記複合センサチップを設置する第2の設置工程と、
前記複合センサチップ、前記回路基板、及び前記配線基板をワイヤで接続する接続工程と、
前記配線基板、前記回路基板、及び前記複合センサチップを樹脂封止する樹脂封止工程、若しくは、蓋付きのセラミックスパッケージ化又は蓋付きの樹脂パッケージ化するパッケージ工程と、を有する
ことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記センサウエハはシリコン、前記キャップウエハはガラス又はシリコン、からなることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止する接合封止工程と、前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する封止工程は、陽極接合又は表面活性化接合であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記キャップウエハに形成する前記バンプは、前記陽極接合の場合に、φ10μm以上、高さ0.5μm以上であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記キャップウエハに形成する前記バンプは、前記表面活性化接合の場合に、高さ0.2μm以上であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記キャップウエハに形成する前記バンプは、ガラス又は金属であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項8】
請求項1または2において、
前記キャップウエハがガラスの場合、前記加速度センサの接合封止を200℃以上400℃以下で行い、前記角速度センサの接合封止を500℃以上で行うことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項9】
請求項1または2において、
前記角速度センサの接合封止工程は、1MPa以上の荷重で封止することを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項10】
請求項2において、
前記個片化工程で、前記角速度センサの前記ギャップ近傍に形成されたバンプが除去されるように前記複合センサウエハを切断することを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項11】
請求項1または2において、
前記センサウエハは、センサウエハ平面のX軸とY軸の加速度をそれぞれ検出する加速度センサからなる加速度検出部と、前記センサウエハ平面のZ軸廻りの角速度を検出する角速度センサからなる角速度検出器とを設置し、前記加速度検出部と前記角速度検出器の検出軸が互いに直交している
ことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項12】
振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、を元にして製造された複合センサであって、
前記センサウエハは、センサウエハ平面のX軸とY軸の加速度をそれぞれ検出する加速度センサを有し、前記センサウエハ平面のZ軸廻りの角速度を検出する角速度センサを有し、
前記加速度センサは、大気圧雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハの接合によって大気圧雰囲気で接合封止される構造であり、
前記角速度センサは、真空雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によるバンプの変形によって真空雰囲気で接合封止される構造である
ことを特徴とする複合センサ。
【請求項1】
振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、から生成される複合センサの製造方法であって、
大気圧雰囲気下において、前記センサウエハと前記キャップウエハを前記バンプが介在するように接合し、前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止するとともに、前記角速度センサに形成した前記ギャップ近傍の前記バンプによって前記角速度センサを大気圧雰囲気で接合阻害する接合封止・接合阻害工程と、
真空雰囲気下において、前記バンプによる前記接合阻害の隙間を通して前記角速度センサを真空雰囲気に浸す真空雰囲気形成工程と、
前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によって、前記バンプを変形させて前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する接合封止工程と、を順に行う工程を有する
ことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記接合封止・接合阻害工程と、前記真空雰囲気形成工程と、前記接合封止工程とに続いて、前記センサウエハと前記キャップウエハの切断により複合センサウエハを複合センサチップにする個片化工程と、
外部入出力端子を有する配線基板上に、前記加速度センサ及び前記角速度センサからの検出とその補正を行う回路基板を設置する第1の設置工程と、
前記回路基板上に前記複合センサチップを設置する第2の設置工程と、
前記複合センサチップ、前記回路基板、及び前記配線基板をワイヤで接続する接続工程と、
前記配線基板、前記回路基板、及び前記複合センサチップを樹脂封止する樹脂封止工程、若しくは、蓋付きのセラミックスパッケージ化又は蓋付きの樹脂パッケージ化するパッケージ工程と、を有する
ことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記センサウエハはシリコン、前記キャップウエハはガラス又はシリコン、からなることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記加速度センサを大気圧雰囲気で接合封止する接合封止工程と、前記角速度センサを真空雰囲気で接合封止する封止工程は、陽極接合又は表面活性化接合であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記キャップウエハに形成する前記バンプは、前記陽極接合の場合に、φ10μm以上、高さ0.5μm以上であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記キャップウエハに形成する前記バンプは、前記表面活性化接合の場合に、高さ0.2μm以上であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記キャップウエハに形成する前記バンプは、ガラス又は金属であることを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項8】
請求項1または2において、
前記キャップウエハがガラスの場合、前記加速度センサの接合封止を200℃以上400℃以下で行い、前記角速度センサの接合封止を500℃以上で行うことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項9】
請求項1または2において、
前記角速度センサの接合封止工程は、1MPa以上の荷重で封止することを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項10】
請求項2において、
前記個片化工程で、前記角速度センサの前記ギャップ近傍に形成されたバンプが除去されるように前記複合センサウエハを切断することを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項11】
請求項1または2において、
前記センサウエハは、センサウエハ平面のX軸とY軸の加速度をそれぞれ検出する加速度センサからなる加速度検出部と、前記センサウエハ平面のZ軸廻りの角速度を検出する角速度センサからなる角速度検出器とを設置し、前記加速度検出部と前記角速度検出器の検出軸が互いに直交している
ことを特徴とする複合センサの製造方法。
【請求項12】
振動体を用いて角速度を検出する角速度センサ及び可動体を用いて加速度を検出する加速度センサからなるセンサチップをそれぞれ複数配置したセンサウエハと、前記角速度センサと前記加速度センサにそれぞれ対応した箇所に凹部のギャップが形成されるとともに、前記角速度センサの前記ギャップの近傍に凸部のバンプが形成されたキャップチップを複数配置したキャップウエハと、を元にして製造された複合センサであって、
前記センサウエハは、センサウエハ平面のX軸とY軸の加速度をそれぞれ検出する加速度センサを有し、前記センサウエハ平面のZ軸廻りの角速度を検出する角速度センサを有し、
前記加速度センサは、大気圧雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハの接合によって大気圧雰囲気で接合封止される構造であり、
前記角速度センサは、真空雰囲気下での前記センサウエハと前記キャップウエハへの加熱と荷重によるバンプの変形によって真空雰囲気で接合封止される構造である
ことを特徴とする複合センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−242371(P2011−242371A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117391(P2010−117391)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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