説明

複合ナノジルコニア粒子、分散液および歯科用硬化性組成物

【課題】
X線像影性と透明性に共に優れた歯科用硬化性組成物の硬化体を得る。
【解決手段】
平均一次粒子径が1nm以上20nm未満の範囲にあるナノジルコニア粒子と、その表面を改質するオルガノシランとを有する複合ナノジルコニア粒子を、レジン中に分散させた歯科用硬化性組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ナノジルコニア粒子、当該複合ナノジルコニア粒子が分散媒中に分散した分散液および当該複合ナノジルコニア粒子がレジン中に分散した歯科用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用硬化性組成物は、例えば、歯科医院において、修復すべき歯牙の窩洞に充填して歯牙の形に成形した後に、専用の光照射器を用いて活性光を照射して重合硬化させて歯の修復を行うのに使用されている。また、歯科用硬化性組成物は、歯科技工所内において、当該歯科用硬化性組成物を石膏模型上で修復すべき歯牙の形に築盛し、これを光照射により重合硬化させ、続いて歯科医院において、得られた硬化体を歯科用接着剤により歯質に接着させて、歯を修復する際にも使用されている。
【0003】
上記のような修復に使用される歯科用硬化性組成物には、主に、X線像影性と透明性が要求される。前者は、修復後にX線を用いた予後観察の際に必要な特性であり、後者は、本物の歯牙に近い審美性を発揮させるのに必要な特性である。X線像影性を高めるには、重金属化合物、特にジルコニアを添加する方法が一般的である。
【0004】
しかし、ジルコニアは非常に高い屈折率(n)を有するため(20℃におけるnは約2.2)、歯科用レジンにジルコニアを添加した場合、透明性を発揮できないという問題が生じる。かかる問題を解決するために、ジルコニア粒子の表面を酸にて改質して、メタクリレートに代表されるモノマーに、これを分散させる方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特表2003−512404(段落番号0053〜0058等)
【特許文献2】特表2003−512405(段落番号0058〜0073等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の従来技術には、次のような問題がある。特許文献1および2に開示される従来技術の場合、メタクリレート中におけるジルコニア粒子の分散性は十分とは言えず、歯科用硬化性組成物の硬化体の透明性を高めることは難しい。加えて、酸を用いてジルコニア粒子の表面を改質しても、なお、ジルコニア粒子の屈折率の高さが起因して、硬化体の透明性を十分に高めることは難しい。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、X線像影性と透明性に共に優れた歯科用硬化性組成物の硬化体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ナノレベルのジルコニア粒子をモノマー中に良く分散させることに加え、ジルコニア粒子の表面処理剤としてオルガノシランを用いることにより、マトリックスモノマーにナノジルコニア粒子を分散させた歯科用硬化性組成物の硬化体の透明性を高めることができることを見出だし、本発明を完成するに至った。歯科用硬化性組成物とは、いわゆる直接法に用いられる歯科用コンポジットレジン、いわゆる間接法に用いられる硬質レジン、接着・合着用材料であるセメント、シーラントあるいはコーティング材等の被覆材などを含む組成物である。本発明に係る歯科用硬化性組成物は、特に、上記歯科用コンポジットレジンとして有用である。
【0009】
すなわち、本発明は、平均一次粒子径が1nm以上20nm未満の範囲にあるナノジルコニア粒子と、その表面を改質するオルガノシランとを有する複合ナノジルコニア粒子としている。特に、平均一次粒子径が20nm未満のナノジルコニア粒子を用いることにより、複合ナノジルコニア粒子を分散媒中に分散させた分散液において、分散性を高めることができ、もって複合ナノジルコニア粒子をフィラーに用いた歯科用硬化性組成物を硬化させた際に、硬化体の透明性を高めることができる。
【0010】
また、別の本発明は、さらに、オルガノシランとして、20℃における屈折率が1.30以上1.60未満のものを用いた複合ナノジルコニア粒子としている。このため、特に、複合ナノジルコニア粒子の屈折率を1.5あるいはそれに近い値まで近づけることができ、歯科用硬化性組成物の硬化体の透明性を高めることができる。
【0011】
また、別の本発明は、さらに、オルガノシランの含有量を、ナノジルコニア粒子100質量部に対して、200質量部以上400質量部以下の範囲とした複合ナノジルコニア粒子としている。このため、ナノジルコニア粒子の屈折率を有効に低下させることができ、歯科用硬化性組成物の硬化体の透明性をより高めることができる。
【0012】
また、別の本発明は、上記各複合ナノジルコニア粒子を分散媒に分散させた分散液としている。このため、この分散液は高い分散性を有する。この分散液に用いられる分散媒には、重合性単量体を含めても、含めていなくても良い。この分散液に重合性単量体が含まれる場合には、少なくとも光重合開始剤を加えて光照射することにより、透明性の高い硬化体を得ることができる。一方、この分散液に重合性単量体が含まれない場合には、少なくとも重合性単量体と光重合開始剤を加えて光照射することにより、透明性の高い硬化体を得ることができる。
【0013】
また、別の本発明は、上記各複合ナノジルコニア粒子がレジン中に分散した歯科用硬化性組成物としている。このため、この歯科用硬化性組成物を硬化させた硬化体も、また、高い透明性を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、X線像影性と透明性に共に優れた歯科用硬化性組成物の硬化体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る複合ナノジルコニア粒子、分散液および歯科用硬化性組成物の実施の形態について説明する。なお、複合ナノジルコニア粒子については、歯科用硬化性組成物の説明の中で述べる。
【0016】
「1.歯科用硬化性組成物」
本発明の実施の形態に係る歯科用硬化性組成物は、モノマー(重合性単量体)に、X線像影性に優れた高屈折率を有するジルコニア粒子をナノレベルで分散させたものである。ジルコニア粒子をナノレベルで重合性単量体中に分散させるために、フィラーとしてナノジルコニア粒子(平均一次粒径:1nm以上20nm未満)を用い、かつ重合性単量体に分散させるに先立ち、当該ナノジルコニア粒子に対して、オルガノシランを用いて表面処理を施している。オルガノシランとして、20℃における屈折率(n)が1.30以上1.60未満のものを好適に用いる。
【0017】
歯科用硬化性組成物は、マトリックス材としての重合性単量体と、フィラー材としての、上述のオルガノシランにて表面処理された複合ナノジルコニア粒子に加え、少なくとも重合開始剤を含む。以下、重合性単量体、複合ナノジルコニア粒子および重合開始剤について、詳しく説明する。
【0018】
(1)重合性単量体
本実施の形態に係る歯科用硬化性組成物の主成分は重合性単量体である。重合性単量体には、ラジカル重合性単量体や、エポキシ化合物、オキセタン化合物等のカチオン重合性単量体等が挙げられるが、ここでは、ラジカル重合性単量体を好適に用いる。ラジカル重合性単量体としては、ビニル基等の重合性不飽和結合を有するものであれば、特に限定されることなく、例えば、(メタ)アクリレート系、ジビニルベンゼン等の芳香族化合物系、アルキルビニルエーテル等のエーテル系の重合性単量体を使用することができる。それらの中でも、重合性の良さなどから、(メタ)アクリレート系の単量体が好適に用いられる。当該(メタ)アクリレート系の重合性単量体を具体的に例示すると、次に示すものが挙げられる。
【0019】
(1.1)単官能ラジカル重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピオンオキシエチル(メタ)アクリレート、ブタノンオキシエチル(メタ)アクリレート;1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
(1.2)二官能ラジカル重合性単量体
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジプロポキシフェニルプロパン、2−(4−メタクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロキシジプロポキシフェニル−2−(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシイソプロポキシフェニルプロパン、及びこれらのアクリレート等が挙げられる。
【0021】
(1.3)三官能ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
(1.4)四官能ラジカル重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピオンオキシエチル(メタ)アクリレート、ブタノンオキシエチル(メタ)アクリレート;1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレートを好適に用いることができ、これらのモノマーに他のモノマーを組み合わせて使用することも好ましい。
【0023】
更に、上記(メタ)アクリレート系重合性単量体以外に、他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。これらの他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物を挙げることができる。これらの他の重合性単量体は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
(2)複合ナノジルコニア粒子
複合ナノジルコニア粒子は、ナノジルコニア粒子の表面にオルガノシランを有する複合粒子である。複合ナノジルコニア粒子は、歯科材料として必要となる機械的特性に応じて、その含有量を調整可能である。特に、重合性単量体100質量部に対して1〜40質量部の割合で複合ナノジルコニア粒子を添加するのが好ましい。
【0025】
また、オルガノシランの処理量は、ナノジルコニア粒子100質量部に対して200〜400質量部とするのが好ましく、250〜350質量部とするのがさらに好ましい。かかる範囲の処理量を採用すると、ジルコニアの屈折率は、歯科用硬化性組成物中において、オルガノシランの比較的低い屈折率の影響を受けて低下する。この結果、複合ナノジルコニア粒子の屈折率は、重合性単量体の屈折率に近づく。
【0026】
次に、複合ナノジルコニア粒子を構成するナノジルコニア粒子およびオルガノシランについて説明する。
【0027】
(2.1)ナノジルコニア粒子
ナノジルコニア粒子は、一次粒子の平均粒径が1nm以上20nm未満の範囲の粒子である。より好ましいナノジルコニア粒子は、一次粒子の平均粒径が3nm以上15nm以下の範囲の粒子であり、更に好ましいのは、一次粒子の平均粒径が5nm以上9nm以下の範囲の粒子である。一次粒子の平均粒径が上記の範囲内にあれば、当該一次粒子の凝集体の平均粒径が上記の範囲外であっても良い。ナノジルコニア粒子の結晶形態は、結晶質または非結晶質のいずれでも良いが、X線像影性を高めるには、結晶質のナノジルコニア粒子の方が好ましい。さらには、結晶質のナノジルコニア粒子において、その結晶形態は、単斜晶、正方晶若しくは立方晶から成る単結晶の形態、あるいはそれらの2以上の結晶が混在した多結晶の形態のいずれでも良い。
【0028】
(2.2)オルガノシラン
オルガノシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキエトキシ)シラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン、ω−メタクリロキシデシルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等を挙げることができる。
【0029】
特に、オルガノシランの中でも、20℃における屈折率(n)が1.30以上1.60未満のオルガノシランを用いるのが好ましい。さらには、20℃における屈折率(n)が1.40以上1.50以下のオルガノシランを用いるのが好ましい。理由は、次の通りである。
【0030】
重合性単量体として好適なものは、既述のように、(メタ)アクリレート系の重合性単量体である。一般的な(メタ)アクリレート系重合性単量体を硬化させた硬化体の20℃における屈折率(n)は、1.50〜1.60の範囲にある。一方、ジルコニアの20℃における屈折率(n)は、約2.2である。20℃における屈折率(n)が1.30以上1.60未満、より好ましくは1.40以上1.50以下のオルガノシランを用いてナノジルコニア粒子の表面処理を行うと、複合ナノジルコニア粒子の20℃における屈折率(n)は、(メタ)アクリレート系重合性単量体を硬化させた硬化体の20℃における屈折率(n)に近づく。この結果、(メタ)アクリレート系の重合性単量体をマトリックスとし、複合ナノジルコニア粒子をフィラー材として用いた歯科用硬化性組成物を硬化させると、その結果得られた硬化体の透明性は極めて高くなる。
【0031】
20℃における屈折率(n)が1.40以上1.50以下のオルガノシランを例示すると、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(n=1.429)、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン(n=1.465)、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(n=1.428)、γ−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン(n=1.451)等を挙げることができる。その中でも、特に、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0032】
(3)重合開始剤(重合触媒)
本発明の実施の形態に係る歯科用硬化性組成物には、前記の重合性単量体を重合させるための重合開始剤が配合される。当該重合開始剤としては、公知の重合開始剤が使用可能である。歯科分野で用いられる重合開始剤としては、化学重合開始剤(常温レドックス開始剤)、光重合開始剤、熱重合開始剤等があるが、口腔内で硬化させることを考慮すると、化学重合開始剤及び/又は光重合開始剤が好ましい。
【0033】
(3.1)化学重合開始剤
化学重合開始剤は、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより室温近辺で重合活性種を生じる重合開始剤である。このような化学重合開始剤としては、アミン化合物/有機過酸化物系のものが代表的である。該アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエタノール−p−トルイジンなどの芳香族アミン化合物が例示される。
【0034】
代表的な有機過酸化物としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートに分類される有機過酸化物が好ましい。使用する有機過酸化物は、適宜選択して使用すればよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わないが、中でもハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシエステル類及びジアシルパーオキサイド類が重合活性の点から特に好ましい。さらにこの中でも、硬化性組成物としたときの保存安定性の点から10時間半減期温度が60℃以上の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0035】
また、アリールボレート化合物が酸により分解してラジカルを生じることを利用した、アリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤を用いることもできる。アリールボレート化合物は、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できるが、その中でも、保存安定性を考慮すると、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物を用いることが好ましく、さらには取り扱いや合成・入手の容易さから4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物がより好ましい。これらアリールボレート化合物は2種以上を併用しても良い。
【0036】
上記の酸性化合物としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体が好適に使用でき、1分子中に少なくとも1つの酸性基、又は当該酸性基の2つが脱水縮合した酸無水物構造、あるいは酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基と、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基とを有する化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ここで酸性基とは、該基を有するラジカル重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を呈す基である。当該酸性基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}等、並びにこれらの基が酸無水物や酸ハロゲン化物等となったものが例示される。このような酸性基含有ラジカル重合性単量体の具体例としては、前記ラジカル重合性単量体において例示した通りである。
【0037】
また、このようなアリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤に更に、有機過酸化物及び/又は遷移金属化合物を組み合わせて用いることも好適である。有機過酸化物としては、前記の通りである。遷移金属化合物としては、+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物が好適である。
【0038】
さらに、化学重合開始剤として好ましいものを例示すれば、(x)ピリミジントリオン誘導体(例えば、1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン等)、(y)ハロゲンイオン形成化合物(例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等)及び(z)第二銅形成化合物又は第二鉄イオン形成化合物(例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、アセチルアセトン鉄等)との組み合わせを挙げることができる。
【0039】
(3.2)光重合開始剤
光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等を使用することができる。
【0040】
これらの中でも、重合活性の良さ、生体への為害性の少なさ等の点から、α−ジケトン類がより好ましい。またα−ジケトンを用いる場合には、第3級アミン化合物と組み合わせて用いることが好ましい。これら光重合開始剤は、1種あるいは2種以上を混合して用いても差し支えない。上記の各重合開始剤はそれぞれ単独で併用されるだけでなく、必要に応じて複数の種類を組み合わせて併用することもできる。
【0041】
なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
【0042】
(3.3)熱重合開始剤
熱重合に使用できる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p−フロルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩等のホウ素化合物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。
【0043】
これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、重合性単量体100質量部に対して通常0.01〜30質量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5質量部の割合で使用される。
【0044】
(4)その他
(4.1)可塑剤
可塑剤は、特に限定されず、通常、歯科用分野に使用されるものが使用できる。代表的なものを例示すれば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブヂルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル、ジブチルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバチート、ジオクチルセバチート、ジブチルマレエート、ジブチルフマレート等のフタル酸以外の二塩基酸エステル、グリセロールトリアセテート等のグリセリンエステル、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル等である。上記エステル類の内、脂肪族エステルは、炭素原子数1〜12、さらには1〜8のものが好ましい。特に、上記記載の可塑剤の内、フタル酸エステルが好適である。これらの可塑剤は、必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
(4.2)紫外線吸収剤・重合禁止剤
本発明の実施の形態に係る歯科用硬化性組成物には、さらに紫外線に対する変色防止のため、公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。また、保存安定性を向上させるために、公知の重合禁止剤を配合することも好ましい。
【0046】
(4.3)充填材
本発明の実施の形態に係る歯科用硬化性組成物には、複合ナノジルコニア粒子とは異なる他の充填材を添加しても良い。充填材を添加することによって、機械的強度、耐水性を向上させることができる。充填材としては、シリカ等の無機粉体、ポリメチルメタクリレート等の有機粉体、または有機無機複合粉体、もしくはこれらの混合物など、公知のものを制限なく使用することができる。有機無機複合粉体は、例えば無機粉体を一度分散させた重合性単量体混合物を重合硬化させて得られる無機酸化物とポリマーの複合体を粉砕して得ることができる。これらの充填材をシランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することは、重合性単量体とのなじみを良好にし、機械的強度および耐水性を向上させるうえで望ましい。
【0047】
「2.分散液」
本発明の実施の形態に係る分散液は、既に説明した複合ナノジルコニア粒子を、分散媒に分散させたものである。ここでは、複合ナノジルコニア粒子についての重複した説明を省略し、分散媒についてのみ説明する。
【0048】
(1)分散媒
分散媒には、「1.歯科用硬化性組成物」にて既に説明した重合性単量体、アルコール、アセトン、または水のいずれかあるいはこれらの1以上の混合物を好適に用いることができる。ただし、分散媒は、これらに限定されるものではない。また、分散液に、オルガノシランを含んでいても良い。上記のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等を例示することができる。
【0049】
(2)複合ナノジルコニア粒子分散液の使用方法
有機無機複合充填材用のマトリックスとして、本発明の複合ナノジルコニア粒子分散液(重合性単量体分散液)を使用することができる。これによって、有機無機複合充填材のメリットである、良好な研磨性、重合収縮の低減、操作性の向上といった特徴だけで無く、X線像影性を更に高めることができる。また、通常のマトリックスレジンとして使用する場合よりも、操作性、強度において優れた物性を得るための設計が容易になる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0051】
1.評価方法
以下に説明する各実施例および各比較例において採用した評価方法は、以下のとおりである。
(1)ジルコニア粒子の分散性
ジルコニア粒子のモノマーに対する分散性を目視にて評価した。ジルコニア粒子が均一に分散し、透明性が極めて高いものを「二重丸」、ジルコニア粒子がほぼ均一に分散し、透明性が高いものを「丸」、ジルコニア粒子が一部凝集、沈降、もしくは液が白濁しているものを「バツ」とした。
【0052】
(2)硬化体の透明性
厚さ1mmの金型に、製造した歯科用硬化性組成物を充填し、上下面からスライドガラスで圧接し、両面からそれぞれ1分間ずつ光照射して、該充填物を硬化させた。この試料について、標準白色板を背後に密着させた状態と暗箱によって透過光を全て吸収した状態で、それぞれY値を測定した。前者をYw、後者をYbとしたとき、コントラスト比(C)=Yb/Ywを、透明性の指標とした。
【0053】
(3)硬化体のX線像影性
JIST6514(X線像影性試験)に準じて評価試験を行った。試験片のX線不透過性に相当するアルミニウムの厚さをX線像影性(mm)とした。
【0054】
2.ジルコニア分散液の製造および評価
表1に、ジルコニア分散液の製造時の組成およびジルコニア分散液の評価結果を示す。表1中、「粒径」とは、平均一次粒子径を意味する。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例1)
10wt%ジルコニア水溶液(ジルコニア:平均一次粒子径7nm、住友大阪セメント製)100g、γ-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「MPS」と略す。)30g、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、「TEGDMA」と略す。)60g、アセトン100mlを混合、攪拌して均一にした後、エバポレーターを用いて溶液中の水、アセトンを減圧留居し、真空ポンプを用いて減圧乾燥を行った。得られた複合ジルコニア分散液は、極めて透明性の高い液体(評価:二重丸)であった。
【0057】
(実施例2)
10wt%ジルコニア水溶液(ジルコニア:平均一次粒子径7nm、住友大阪セメント製)100g、MPS10g、TEGDMA80g、アセトン100mlを混合、攪拌して均一にした後、エバポレーターを用いて溶液中の水、アセトンを減圧留居し、真空ポンプを用いて減圧乾燥を行った。得られた複合ジルコニア分散液は、透明性の高い液体であった(評価:丸)。
【0058】
(比較例1)
10wt%ジルコニア水溶液(ジルコニア:平均一次粒子径7nm、住友大阪セメント製)100g、TEGDMA90g、アセトン100mlを混合、攪拌して均一にした後、エバポレーターを用いて溶液中の水、アセトンを減圧留居し、真空ポンプを用いて減圧乾燥を行った。得られた分散液には、白色の凝集が観察された(評価:バツ)。
【0059】
(比較例2)
10wt%ジルコニア水溶液(ジルコニア:平均一次粒子径20nm、第一希元素製)100g、MPS10g、TEGDMA80g、アセトン100mlを混合、攪拌して均一にした後、エバポレーターを用いて溶液中の水、アセトンを減圧留居し、真空ポンプを用いて減圧乾燥を行った。得られた複合ジルコニア分散液は白濁していた(評価:バツ)。
【0060】
3.硬化体の製造および評価
表2に、硬化体の製造に用いたジルコニア分散液および硬化体の評価結果を示す。表2中、「粒径」とは、平均一次粒子径を意味する。
【0061】
【表2】

【0062】
(実施例3)
実施例1で得られた複合ジルコニア分散液に、カンファーキノン0.3質量部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.5質量部を均一に溶解し、光硬化性のマトリックスモノマーとした。このマトリックスモノマー100質量部に対して、無機粉体としてシリカチタニア粒子(20℃における屈折率(nD)=1.51、平均粒径0.33μm、MPS表面処理物)を200質量部混合し、減圧脱泡することで、均一な光硬化性ペーストを調整した。このペーストを用いて硬化体を作製して評価を行ったところ、コントラスト比(C)は0.10、X線像影性は2.5であり、いずれも良好な値を示した。
【0063】
(実施例4)
10wt%ジルコニア水溶液(ジルコニア:平均一次粒子径7nm、住友大阪セメント製)100g、11−メタクリロイロキシウンデシルトリメトキシシラン(以下、「MUDS」と略す。)24g、2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポ キシフェニル)プロパン(以下、「bis−GMA」と略す。)40g、TEGDMA26g、アセトン100mlを混合、攪拌して均一にした後、エバポレーターを用いて溶液中の水、アセトンを減圧留居し、真空ポンプを用いて減圧乾燥を行った。得られた複合ジルコニア分散液は、透明液体であった。
【0064】
この複合ジルコニア分散液に、カンファーキノン0.3質量部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.5質量部を均一に溶解し、光硬化性のマトリックスモノマーとした。このマトリックスモノマー100質量部に対して、無機粉体としてシリカチタニア粒子(20℃における屈折率(nD)=1.53、平均粒径0.35μm、MPS表面処理物)を200質量部混合し、減圧脱泡することで、均一な光硬化性ペーストを調整した。このペーストを用いて硬化体を作製して評価を行ったところ、コントラスト比(C)は0.14、X線像影性は2.9であり、いずれも良好な値を示した。
【0065】
(実施例5)
15wt%ジルコニア水溶液(ジルコニア:平均一次粒子径7nm、住友大阪セメント製)100g、MPS35g、TEGDMA50g、アセトン100mlを混合、攪拌して均一にした後、エバポレーターを用いて溶液中の水、アセトンを減圧留居し、真空ポンプを用いて減圧乾燥を行った。得られた複合ジルコニア分散液は、透明な液体であった。なお、表2中において、15wt%ジルコニア水溶液を用いたことを明確にすべく、ジルコニア水溶液の質量およびジルコニアの平均一次粒子径の各値をカッコ書にて表示した。
【0066】
この複合ジルコニア分散液に、カンファーキノン0.3質量部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.5質量部を均一に溶解し、光硬化性のマトリックスモノマーとした。このマトリックスモノマー100質量部に対して、無機粉体としてシリカチタニア粒子(20℃における屈折率(nD)=1.52、平均粒径0.33μm、MPS表面処理物)を200質量部混合し、減圧脱泡することで、均一な光硬化性ペーストを調整した。このペーストを用いて硬化体を作製して評価を行ったところ、コントラスト比(C)は0.15、X線像影性は3.5であり、いずれも良好な値を示した。
【0067】
(実施例6)
10wt%ジルコニア水溶液(ジルコニア:平均一次粒子径7nm、住友大阪セメント製)100g、ジフェニルジメトキシシラン(以下、「DPDMS」と略す。)30g、bis−GMA36g、TEGDMA24g、アセトン100mlを混合、攪拌して均一にした後、エバポレーターを用いて溶液中の水、アセトンを減圧留居し、真空ポンプを用いて減圧乾燥を行った。得られた複合ジルコニア分散液は透明な液体であった。
【0068】
この複合ジルコニア分散液に、カンファーキノン0.3質量部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.5質量部を均一に溶解し、光硬化性のマトリックスモノマーとした。このマトリックスモノマー100質量部に対して、無機粉体としてシリカチタニア粒子(20℃における屈折率(nD)=1.53、平均粒径0.35μm、MPS表面処理物)を200質量部混合し、減圧脱泡することで、均一な光硬化性ペーストを調整した。このペーストを用いて硬化体を作製して評価を行ったところ、コントラスト比(C)は0.27、X線像影性は2.9であり、いずれも良好な値を示した。
【0069】
(比較例3)
bis−GMA60質量部、TEGDMA40質量部、カンファーキノン0.3質量部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.5質量部を均一に溶解し、光硬化性のマトリックスモノマーとした。このマトリックスモノマー100質量部に対して、無機粉体としてシリカチタニア粒子(20℃における屈折率(nD)=1.53、平均粒径0.35μm、MPS表面処理物)を200質量部混合し、減圧脱泡することで、均一な光硬化性ペーストを調整した。このペーストを用いて硬化体を作製して評価を行ったところ、コントラスト比(C)は0.10であったが、X線像影性は1.5と低い値であった。
【0070】
(比較例4)
比較例2で得られた複合ジルコニア分散液に、カンファーキノン0.3質量部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.5質量部を均一に溶解し、光硬化性のマトリックスモノマーとした。このマトリックスモノマー100質量部に対して、無機粉体としてシリカチタニア粒子(20℃における屈折率(nD)=1.51、平均粒径0.33μm、MPS表面処理物)を200質量部混合し、減圧脱泡することで、均一な光硬化性ペーストを調整した。このペーストを用いて硬化体を作製して評価を行ったところ、コントラスト比(C)は0.51、X線像影性は2.3であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る複合ナノジルコニア粒子、分散液および歯科用硬化性組成物は、歯科用硬化性組成物の硬化体に供することができ、歯を修復するために利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が1nm以上20nm未満の範囲にあるナノジルコニア粒子と、その表面を改質するオルガノシランとを有することを特徴とする複合ナノジルコニア粒子。
【請求項2】
前記オルガノシランは、20℃における屈折率が1.30以上1.60未満であることを特徴とする請求項1に記載の複合ナノジルコニア粒子。
【請求項3】
前記オルガノシランの含有量は、前記ナノジルコニア粒子100質量部に対して、200質量部以上400質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合ナノジルコニア粒子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の複合ナノジルコニア粒子を分散媒に分散させた分散液。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の複合ナノジルコニア粒子がレジン中に分散した歯科用硬化性組成物。

【公開番号】特開2008−303095(P2008−303095A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150312(P2007−150312)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】