説明

複合乾麺およびその製造方法

【課題】見て楽しめ、食の場を演出することもできるように、外観美麗な複数色の複合乾麺を得る。
【解決手段】
色が異なる複数種類の麺層10a,10bが、長さ方向全体にわたって長く形成された複合乾麺10。色素や食材の違いにより色が異なる複数本の麺糸を得て、これら麺糸を束ねるように合わせて一本にし、圧延成形して所望太さの麺糸にする。この麺糸16を延ばして乾燥し、複数の麺層10a,10bを有する新規な複合乾麺10を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾麺、たとえば素麺や冷麦のように、麺生地を延ばしてから切らないで乾燥させて製造する乾麺に関し、より詳しくは、目で見て楽しめるような新規な複合乾麺とその製造方法に関する。なお、この発明における「乾麺」とは、外側だけを乾燥させた半生麺を含む意味である。
【背景技術】
【0002】
手延べ素麺は、小麦粉などに水を加えて混捏して麺生地を得た後、この麺生地から麺帯を切り出し、この麺帯に対して圧延を行って麺紐を得て、油返し作業を行った後、麺紐をさらに細くして、手延べを可能にするための作業に移行して、延ばして乾燥するという工程を経て製造されている(たとえば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−67372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにして製造される手延べ素麺は、絹糸のように美しい。しかしながら、前述のように徐々に細くしながら製造される1本の乾麺は、一色のみからなる。素麺であれば、通常白色である。白色のほかに、色素や食材を入れることにより、赤や緑、黄色を呈する素麺もある。
【0005】
ところが、1本の乾麺は、あくまでも一色であり、複数色のものは無かった。
【0006】
そこでこの発明は、見て楽しんだり華やかさなどを演出したりできるような、1本で複数色を呈する新規な複合乾麺を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段は、線状をなす乾麺であって、色が異なる複数種類の麺層が長さ方向に長く形成された複合乾麺である。
【0008】
色が異なる複数の麺層が、それぞれの色彩によって、見る者を楽しませ、食欲をそそったり雰囲気を盛り上げたりする。
【0009】
前記麺層が、白色を呈する白色麺層と赤色を呈する赤色麺層であると、おめでたい席で食すのに好適である。
【0010】
また、前記麺層が、白色を呈する白色麺層と、他の色を呈する他色麺層である場合には、前記白色麺層の厚さを前記他色麺層の厚さよりも厚くするとよい。茹で上げたときに白色麺層が見えにくくなるのを防止できる。
【0011】
別の手段は、混捏して得た麺生地から麺帯を切り出したのち、麺帯を圧延して麺紐を得て、該麺紐を圧延してさらに細い麺糸に形成しながら所望太さの麺糸を得て、該所望太さの麺糸を延ばして乾燥する乾麺の製造法であって、色が異なる複数本の前記麺糸を得るとともに、これらの麺糸を束ねるようにして1本に合わせて圧延し、前記所望太さの麺糸を得た後、前記延ばして乾燥する工程に移行する複合乾麺の製造方法である。
【0012】
この後で延ばされることになる所望太さの麺糸を得る直前に合わせられた色の異なる複数本の麺糸は、圧延されながら、所望太さの1本の麺糸になり、この麺糸には、色が異なる複数の層が麺の長さ方向に長く形成されている構造となる。麺糸をさらに延ばして乾燥させると、色が異なる複数種類の麺層が長さ方向に長く形成された複合乾麺が得られる。
【0013】
前記色が異なる麺糸を、当該麺糸となる麺糸素材にでんぷん粉を塗布して圧延して得ると、でんぷん粉が表面にまばらに圧着された麺糸となる。このため、細くなってくっつき易くなった麺糸同士のくっつきを抑制して、円滑に合わせ工程に移行できるようにできる。この一方で、合わせ工程においては、色が異なる麺糸同士の一体化を阻害することがなく、所望の複合化が行え、一体性が高い所望太さの麺糸が得られる。この麺糸を延ばして乾燥させるので、麺層がきれいに分かれた外観美麗な複合乾麺が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、たとえば紅白など、色が異なる複数の麺層を有する複合乾麺が得られる。この複合乾麺では、これまでに無い外観によって、見る者の目を楽しませ、祝いの気持ちを表現するなど、演出等も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】複合乾麺の斜視図。
【図2】複合乾麺の製造工程を示す流れ図。
【図3】麺圧作業を示す説明図。
【図4】第1イタギ作業の説明図。
【図5】第2イタギ作業の一部の説明図。
【図6】第2イタギ作業の一部の説明図。
【図7】でんぷん粉の塗布状態を示す説明図。
【図8】細目作業の説明図。
【図9】でんぷん粉の圧着を説明する模式図。
【図10】合わせ作業の説明図。
【図11】合わせた状態の断面図。
【図12】こなし作業の説明図。
【図13】掛巻作業の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、色が異なる複数種類の麺層が長さ方向全体にわたって長く形成された複合乾麺10の斜視図であり、この例では、2つの麺層10a,10bを有する2色の複合乾麺10を説明する。
【0017】
この複合乾麺10は、前述のように、長さ方向に長い2つの麺層10a,10bを有する。色の組み合わせは、たとえば緑と黄色、黒と黄色、赤と白など適宜設定できる。赤と白、すなわち紅白にすると、祝いの席で食す場合に、めでたい雰囲気を演出することができる。白以外の色は、色素や食材を添加することによって出す。また、小麦粉を主とする白いうどんと、そば粉を主とする黒っぽいそばとの組み合わせもできる。
【0018】
2つの麺層10a,10bは、複合乾麺10の断面形状によって複数の形態に形成される。複合乾麺10が偏平な形態である場合には、図1(a)に示したように、長辺方向で分かれる麺層10a,10bや、図1(b)に示したように、短辺方向で分かれる麺層10a,10b、さらには図示しないが対角線方向で分かれる麺層などが形成される。複合乾麺10が断面円形である場合には、図1(c)に示したように、径方向で分かれる麺層10a,10bが形成される。
【0019】
そして、白い白色麺層10cと、それ以外の色の他色麺層10dを形成する場合には、図1に示したように、白色麺層10cの厚みtを他色麺層10dの厚みtよりも厚く設定するとよい。茹で上げたときに、外観上、白色麺層10cの存在感が低くなるのを防止できる。
【0020】
このような構成の複合乾麺10の製造工程を図2に示す。
以下、図2に示した順に従って説明する。
【0021】
まず、小麦粉や水等の材料11を混捏する混捏作業n1を行う。材料11には必要に応じて適宜のものを使用できる。具体的には、小麦粉と葛粉を用いるとよい。小麦粉には、低グルテンのもの、換言すれば薄力粉を用い、麺に柔らかさと腰の強さを出すようにするとよい。また、麺生地の安定のために塩が必要であるが、塩は、前記水に溶かしてから加える。
【0022】
必要な材料に対して行う混捏は、周知の装置で行い、満遍なく均等に混ぜ合わせて捏ねる。
【0023】
混捏作業n1を経た材料11は麺生地12となる。
【0024】
つぎに、麺圧作業n2に移行する。麺圧作業n2では、混捏作業n1で得た麺生地12を、図2に示したように薄い円板状をなす容器21に入れて、圧延ローラ22で押し付けて、容器21内で均等に延びるように圧延して空気を押し出す。前記圧延ローラ22が回転するとともに、前記容器21も回転し、前述の圧延がなされる。
【0025】
この圧延は、人手によって、つまり足で踏んで行うことも、その他の装置を用いて行うこともできる。
【0026】
つづいて、第1イタギ作業n3に移行する。第1イタギ作業n3では、圧延されて円板状になった麺生地12から麺帯13を切り出す。すなわち、麺生地12に対して図4に示したように切断刃23を用いて、麺生地12を切断する。麺生地12の切断は、円板状をなす麺生地12に対して突き立てるように外周側から切り込み、中心に向けて渦巻きを描くように行う。この切断によって、断面四角形をなす麺帯13が形成される。切断は、機械で行うも、人手によって行うも、いずれでもよい。
【0027】
麺帯13は、盥状をなす円形の容器24に(図5参照)、一端側から巻くようにして収められる。
【0028】
次に、第2イタギ作業n4に移行する。第2イタギ作業n4では、前記麺帯13をもとにして幾重にも重合した層状をなす麺紐14を圧延して形成する。すなわち、図5に示したように、麺帯13が収められた複数の容器24から麺帯13の他端を出し、これらを合わせて圧延装置25に入れて重合しながら引き延ばして1本にするとともに、同一の圧延装置25で引き延ばすようにして絞り、断面円形の麺紐14に圧延する。
【0029】
麺紐14は、容器24に他端側から巻くようにして収められる。
【0030】
このような作業を、図6に示したように複数回繰り返す。この作業の繰り返しにより、先の混捏作業n1のときから起こっているグルテンの生成がさらに進行し、グルテンの網目構造の組織が展開する。
【0031】
十分に圧延された麺紐14は、盥状をなす円形の容器24に、図7に示したように前記他端側から巻くようにして収められ、熟成(ねかし)される。このように熟成は、必要に応じて適宜の時間、適宜の段階でなされる。重複を避けるため、以下の説明では、熟成についての説明を省略する。
【0032】
なお、最後の圧延作業をして麺紐14を前記容器24に収めるときには、麺紐14に対して、図7に示したように葛粉15を塗布する。葛粉15の塗布は、振り掛けるようにして行うも、パフのような適宜の治具を用いて行うも、適宜行える。このようにして容器24に収めるときに塗布をすると、葛粉15を上から降りかけるようにするだけでも麺紐14の全周に付着させることができ、作業は容易である。
【0033】
葛粉15は、麺紐14の周囲において、麺紐14同士のくっつきを防止するとともに、乾きも防ぐ。
【0034】
熟成後、細目作業n5に移行する。細目作業n5は、前記麺紐14を、それよりもさらに細い麺糸16にするべく、図8に示したように、麺紐14を圧延成形装置26の圧延成形ローラ27で圧延成形する工程である。この圧延成形は、適宜回数行うことができ、この例では、細目作業n5と、合わせ作業n6と、こなし作業n7の3回行う例を示す。つまり、麺紐14から麺糸16を圧延成形し、この麺糸16を用いて合わせて複合化された麺糸16(複合麺糸16a。図10、図11参照)を圧延成形し、さらにその麺糸16からさらに細い所定太さの麺糸16を圧延成形する。
【0035】
この圧延成形では、図8に示したように、麺糸16となる麺糸素材17、すなわち麺紐14及び/又は麺糸16を圧延成形ローラ27間に通して、全周に圧力を掛けて引き延ばしながら成形する。また、このときに、圧延成形ローラ27間を通って出される麺糸16に対して撚りをかける(矢印A参照)。
【0036】
前述の葛粉15の塗布により、圧延成形の前段において、麺糸素材17としての麺紐14の周面には葛粉15が付着しているので、細目作業n5における圧延成形によって、図9に模式的に示したように、葛粉15は、麺糸16の周面に食い込むようになって、圧着された状態なる。換言すれば、葛粉15は麺糸16の周面で一体となる。なお、圧延成形ローラ27間に通して圧延成形をするので、塗布された葛粉15が余分であれば、圧延成形ローラ27間に入る前に落ち、まばらに圧着する。
【0037】
細目作業n5を経た麺糸16は、図8に示したように、前述の場合と同様に盥状の円形の容器24に収められるが、この場合も、必要に応じて、麺糸素材17としての麺糸16に葛粉15が塗布される。
【0038】
次に、図10に示したように、合わせ作業n6に移行する。合わせ作業n6では、前述したように麺糸16(麺糸素材17)を合わせる。このときの麺糸16(麺糸素材17)は、色が異なる2種類の麺糸16(麺糸素材17)を用いる。すなわち、色が異なる2本の麺糸16(麺糸素材17)を圧延成形装置26の圧延成形ローラ27で圧延成形して、2色の細い複合麺糸16a(麺糸16)を形成する。
【0039】
このとき、合わせる前の麺糸16(麺糸素材17)には、前述のように葛粉15がまばらに圧着されているので、細い麺糸16(麺糸素材17)であっても、互いのくっつき合いを抑制できる。つまり、一方の麺糸16に対して、他方の麺糸16が部分的にくっついてしまって引き揃った状態にならないようなことは無く、円滑に合わせ工程に移行できるようにできる。このため同じように延びて、断面方向において偏りがないように、まっすぐに並ぶ。
【0040】
図11は、色が異なる麺糸16(麺糸素材17)を合わせた複合麺糸16aの断面図である。前記圧延成形ローラ27の形態によって、図11(a)に示したように断面円形に形成したり、図11(b)に示したように断面長方形に形成したりできる。
【0041】
なお、色が異なる2本の麺糸16(麺糸素材17)が赤と白などのように、複合乾麺10を茹で上げたときに一方の色が強くあらわれる場合には、強くあらわれるほうの麺糸16(麺糸素材17)の太さを、そうでない方の麺糸16(麺糸素材17)よりも細くする。また、強くあらわれるほうの麺糸16(麺糸素材17)の本数を1本にし、そうでない方の麺糸16(麺糸素材17)を2本合わせるようにしてもよい。
【0042】
つづいて、図12に示したように、こなし作業n7に移行する。こなし作業n7では、前述したような2色の複合麺糸16a(麺糸素材17)を圧延成形装置26の圧延成形ローラ27で圧延成形して、たとえば二分の一ほどの径にするなど、さらに細い、所望太さの麺糸16に形成する。このとき、前述の細目作業n5の場合と同様に、撚りがかけられながら(矢印A参照)、必要に応じて塗布された葛粉15が周面に圧着される。
【0043】
このようにして所望の太さに形成された麺糸16は、次の掛巻作業n8に移行する。
【0044】
掛巻作業n8では、周知の掛巻装置によって作業を行う。すなわち、所定間隔を隔てて平行に保持した2本の掛巻棒28(図13参照)に対して麺糸16を巻きつける。巻きつけは、麺糸16に撚りをかけながら8の字を描くようにして行う。
【0045】
このとき、断面円形の麺ではなく、偏平な形態の麺、すなわち平麺を得ようとする場合には、図13に示したように、掛巻を行う直前にて、円柱状をなす一対の成形ローラ29で麺糸16に圧力を加えて偏平に成形する。
【0046】
この後は、図1に示したように、周知の小引作業n9、ふくら出し作業n10、さばき作業n11、乾燥作業n12、そのほか裁断、検品、包装等の工程を経て、複合乾麺10が完成する。
【0047】
前記合わせ作業n6で合わされて1本になった複合麺糸16aがさらに延ばされてそのまま1本の複合乾麺10になるので、この複合乾麺10は前述のように色が違う2つの麺層10a,10bを、長さ方向の全体にわたって有するようになる。麺層10a,10bがきれいに分かれた外観美麗な複合乾麺10である。
【0048】
このように、たとえば紅白など、色が異なる複数の麺層10a(10c),10b(10d)を有する複合乾麺10が得られ、新規な外観によって、見る者の目を楽しませることができる。そのうえ、祝いの気持ちを表現するなど、色によって適宜の演出等も可能となる。
【0049】
また、麺糸素材17を圧延成形ローラ27間に通して圧延成形をする前段で葛粉15を塗布するので、塗布された葛粉が過剰であれば前述のように圧延成形ローラ27間に入る前に落ちるため、油を塗布する場合のように塗布しすぎることはなく、作業が容易で製品のバラ付きをなくすことにも貢献する。この効果は、麺糸素材17を細くするとき、すなわち引き延ばし成形するときに行うので、表面に付きすぎることがないことによっても享受できる。
【0050】
この発明の構成と、前述の一形態この構成との対応において、
この発明の麺糸素材は、前述の麺紐14及び/又は麺糸16、麺糸素材17に対応し、
でんぷん粉は、葛粉15に対応するも、
この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
たとえば、でんぷん粉に代えて周知の油を使用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
10…複合乾麺
10a,10b…麺層
10c…白色麺層
10d…他色麺層
12…麺生地
13…麺帯
14…麺紐
15…葛粉
16…麺糸
16a…複合麺糸
17…麺糸素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状をなす乾麺であって、
色が異なる複数種類の麺層が長さ方向に長く形成された
複合乾麺。
【請求項2】
前記麺層が、白色を呈する白色麺層と、赤色を呈する赤色麺層である
請求項1に記載の複合乾麺。
【請求項3】
前記麺層が、白色を呈する白色麺層と、他の色を呈する他色麺層であり、
前記白色麺層の厚さが前記他色麺層の厚さよりも厚い
請求項1に記載の複合乾麺。
【請求項4】
混捏して得た麺生地から麺帯を切り出したのち、麺帯を圧延して麺紐を得て、該麺紐を圧延してさらに細い麺糸に形成しながら所望太さの麺糸を得て、該所望太さの麺糸を延ばして乾燥する乾麺の製造法であって、
色が異なる複数本の前記麺糸を得るとともに、これらの麺糸を束ねるようにして1本に合わせて圧延し、前記所望太さの麺糸を得た後、
前記延ばして乾燥する工程に移行する
複合乾麺の製造方法。
【請求項5】
前記色が異なる麺糸を、当該麺糸となる麺糸素材にでんぷん粉を塗布して圧延して得る
請求項4に記載の複合乾麺の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−263823(P2010−263823A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117200(P2009−117200)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(509117724)株式会社三輪山勝製麺 (2)
【出願人】(502201686)
【出願人】(509117757)
【Fターム(参考)】