説明

複合体組成物

本発明は、弾性およびレオロジー特性が向上した中空ガラス微小球およびポリマーの複合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国を除くすべての国を指定国とする出願人である米国国内企業であるツンドラ コンポジッツ, エルエルシー、ならびに米国のみを指定国とする出願人である米国市民ヘイキッラ,カート イー、米国市民ウィリアムズ,ロドニー ケイ、および米国市民クロル,ジョン エス名義で2010年4月29日にPCT国際特許出願として出願され、2009年4月29日に出願された米国特許出願第61/173,791号、2010年4月28日に出願された米国特許出願第12/769,553号の優先権を主張し、これらの内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明は、製造物の機能が向上された製品を製造するために性質を改質することが可能な、中空ガラス微小球およびポリマーの複合体に関する。この複合体の構成成分が新規な相互作用をすることによってこの複合体に新規な性質が生みだされる。中空ガラス微小球およびポリマーの複合体材料は、通常、粒子状成分である中空ガラス微小球とポリマー材料との独自の組合せであり、真の複合体の性質を得るためにベースポリマー材料の90%までの中空ガラス微小球とポリマーとをブレンドすることによって複合体の構造および特性を最適化したものである。
【背景技術】
【0003】
独自の性質を有する複合体材料の生成が大きな注目を集めている。この種の材料としては、改善された性質を有する材料を構築する目的で使用することができる、改善された粘弾特性、様々な密度、様々な表面特性、および他の性質を有する材料が挙げられる。
【0004】
複合体材料は長年に亘って作製されており、これは、通常2種類の異なる材料を組み合わせて両者から有利な性質を得ることにより行われてきた。材料の相互作用によって最適な性質と両成分の特性とが得られるので、真の複合体は独特なものである。多くの種類の複合体材料が知られている。一般に、金属を特定の種類および比率で組み合わせて合金を形成することにより金属/金属合金材料に独自の性質を与えることが当該技術分野において認識されている。金属/セラミック複合体の作製には、一般に、焼成により金属/セラミック複合体を得ることができる金属の粉末または繊維をクレー材料と組み合わせることが含まれる。
【0005】
一般に、熱可塑性または熱硬化性ポリマー相に強化用の粉末または繊維を組み合わせると、様々に充填された材料が生成され、適切な条件下においては真のポリマー複合体を形成することができる。添加剤として充填剤を含むポリマーは複合体の性質を示すことができない。充填剤材料は、通常、顔料またはポリマー系の増量剤のいずれかとして作用する無機材料から構成される。充填剤は組成物中のより高価な成分の代替品である場合が多い。多種多様な繊維強化複合体が作製されているが、その典型的な目的は、特定の複合体に繊維による強化特性をもたらすことによってポリマーの機械的性質を改善することにある。
【0006】
ポリマーおよび粒子を含むこれらの材料の多くは混合物であって真の複合体ではない。混合物は、比較的容易にその構成部分に分離することが可能であり、一旦分離されたらその構成成分の個々の性質を示す。真の複合体は分離することが難しく、投入材料よりも向上された性質を示すが、個々の投入材料としては向上した性質を示さない場合が多い。真の複合体は、個々の構成成分の性質を示さず、複合体特有の特性を示す。
【0007】
一般に、複合体材料に関する研究はかなり行われているが、ポリマー複合体中に無機、非金属、または鉱物粒子を使用したものは得られていない。これらの材料の密度を調整してポリマーおよび無機鉱物または非金属の複合体に形成することによって、複合体に新規な機械的および物理的特性がもたらされ、これを使用すると、他の材料に存在しない性質が得られる。密度の調整が可能であり、低毒性であり、かつ適合性、弾性、柔軟性の増大に関する性質が改善された材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、改善されかつ新規な性質を有する中空ガラス微小球およびポリマーの複合体、この材料の作製方法および適用に関する。本発明の材料は、非金属中空ガラス微小球種の粒子、粒度(P)分布、分子量、および粘弾特性、および加工条件を選択することにより得られる。この粒子は、本発明の構成成分と連係して複合体に必要とされる性質を提供する特定の新規な粒子形態を有するものである。中空ガラス微小球を選択するとともにポリマーを選択することによって、当該材料の化学的/物理的性質が調節可能となる。得られる複合体材料は、現在の複合体を、密度、表面特性、毒性の低減、展性の改善、延性の改善、粘弾特性(引張弾性率、貯蔵弾性率、弾塑性変形等)の改善、電気的/磁気的性質、電気、振動、または音響状態に対する抵抗、および機械成形特性という点で上回っている。本発明者らは、密度およびポリマーの粘弾特性(伸びとして測定される)が、当技術における複合体の有用な性質であるとともに有用な予測パラメータであることを見出した。有用な性質を向上させるに当たっては、選択された粒度(P、P等)の充填率、粒子集団の分布、および粒子または混合される非金属、無機、セラミックもしくは鉱物粒子の選択に応じて製造物の性質が向上するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】シーラントの粘弾特性の向上を示すものである。
【図2】シーラントの粘弾特性の向上を示すものである。
【図3】シーラントの粘弾特性の向上を示すものである。
【図4】シーラントの粘弾特性の向上を示すものである。
【図5】シーラントの粘弾特性の向上を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、新規な物理的/電気的表面特性および粘弾特性を達成することを目的として中空ガラス微小球粒子をポリマーと組み合わせることにより作製される新規な複合体に関する。本発明においては粒度が約10ミクロン〜約1500ミクロンの範囲の中空ガラス微小球粒子を使用することができる。最大粒度は、粒子の粒度(P)が、最終用途の物品の応力下における最小寸法または最薄肉部分のいずれかの20%未満となるようなものである。このような粒子には実質的に中空かつ球体のものを用いることができる。
【0011】
本発明には熱可塑性および熱硬化性樹脂のどちらも使用することができる。このような樹脂について以下により詳細に検討する。具体的には、熱可塑性樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂を粒子および界面改質剤とブレンドし、次いでこの材料を最終的な複合体に形成することにより複合体が形成される。熱硬化性樹脂を用いる場合は、粒子および界面改質剤を未硬化材料と合一した後、この材料を硬化させて最終的な複合体とすることにより複合体が作製される。
【0012】
どちらの場合も、粒子材料は、通常、複合体の最終特性を補助または向上する界面化学処理剤で被覆されている。
【0013】
複合体は単純な混合物を超えるものである。複合体は、様々な組成比で混合された2種以上の物質の合一物と定義され、各構成成分から別個の材料の組合せが得られ、その結果として、その構成成分の性質にさらなる性質が加わるかまたはそれを上回る性質が得られる。単純な混合物においては、混合された材料はほとんど相互作用せず、また特性の向上もほとんど見られない。材料のうちの1種は、剛性、強度、または密度を増大させる目的で選択される。原子および分子は他の原子および分子と幾つかの機構を使って結合を形成することができる。このような結合には、分子間相互作用、原子−分子相互作用、原子間相互作用などがあり、これは原子または分子表面の電子雲間で生じ得るものである。この結合機構には、それぞれ、原子中心間(分子相互作用でさえも)の特徴的な力および寸法が関与している。このような結合力の重要な面は、強度、距離に亘る結合強度の変化、および方向性である。この種の結合の主要な力としては、イオン結合、共有結合、およびファンデルワールス(VDW)型結合が挙げられる。イオン半径および結合は、NaCl、Li等のイオン種に生じる。このようなイオン種は原子中心間でイオン結合を形成する。このような結合はかなり強力で、100kJ・mol−1を実質的に超える場合が多く、250kJ・mol−1を超える場合が多い。さらに、イオン半径に対する原子間距離は小さい傾向にあり、1〜3Å程度である。共有結合は、原子を取り囲む電子雲の重なりにより生じ、原子中心間に直接共有結合を形成する。共有結合の強度はかなり強く、ほぼイオン結合に匹敵し、原子間距離は幾分短くなる傾向にある。
【0014】
ファンデルワールス力には様々な形態があり、共有およびイオン結合とは異なっている。このファンデルワールス力は原子中心間ではなく分子間の力になる傾向がある。一般に、ファンデルワールス力は、双極子間力、分散力、および水素結合を含む3種類の力に分けられる。双極子間力は、分子上の電荷の量または分布の一時的または恒常的な変化により生じるファンデルワールス力である。
【0015】
【表1】

【0016】
双極子構造は、分子上で電荷が分離して、全体的または部分的に正になり、反対端が全体的または部分的に負になることによって生じる。分子の負の領域と正の領域との間の静電相互作用によって力が発生する。水素結合は、分子内の水素原子と、典型的には酸素、フッ素、窒素、または他の比較的電気陰性度の高い(Hと比較して)部位を含む電気陰性領域との双極子−双極子相互作用である。これらの原子は、正電荷を有する水素原子との双極子−双極子相互作用を引き起こす双極子の負電荷を獲得する。分散力は実質的に無極性かつ無電荷の分子間に存在するファンデルワールス力である。この力は無極性分子に生じるものであるが、この力は電子が分子内で移動することにより発生する。電子が電子雲内で高速で移動するため、この移動が分子の分極に一時的な変化を引き起こし、無極性分子内には小さいけれども有効な電荷が瞬間的に発生する。このような電荷の小さな変動がファンデルワールス力の分散部分となる。
【0017】
このようなファンデルワールス力は、分子の双極子または分極変動の性質により、結合強度が小さくなる傾向にあり、典型的には50kJ・mol−1以下である。さらに、この力で引き寄せることができる範囲もイオンまたは共有結合よりも実質的に広く、約3〜10Åとなる傾向にある。
【0018】
本発明者らは、本発明のファンデルワールス複合体材料において、粒子と、粒子成分の様々な(但し制御されている)粒度と、粒子およびポリマー間の相互作用の改質とを独自に組み合わせることにより、特有のファンデルワールス結合が生じることを見出した。ファンデルワールス力は、粒子の原子/粒子中の結晶間に生じ、複合体中の粒度、ポリマー、および界面改質剤の組合せによって生じる。
【0019】
これまで「複合体」として特徴づけられていた材料は、単に粒子が充填されたポリマーを含むものであって、粒子充填剤材料間のファンデルワールス相互作用はほとんどまたは全く存在しなかった。本発明においては、選択された粒度分布および界面改質された粒子の相互作用により、粒子に高いファンデルワールス結合強度を生じさせる分子間距離を達成することができる。従来技術の材料は粘弾特性をほとんど有しておらず、真の複合体構造が得られない。このことにより、本発明者らは、従来技術ではこの分子間距離が達成されていないという結論に至った。上の議論における「分子」という用語は、粒子、非金属結晶またはアモルファス凝集体を含む粒子、非金属または無機混合物の他の分子または原子単位または下位単位(sub−unit)に関し用いることができる。本発明の複合体中におけるファンデルワールス力は、鉱物、無機物質、または非金属原子集合体の形態の「分子」として作用する金属原子集団間に生じる。
【0020】
本発明の複合体は、粒子間の分子間力が約30kJ・mol−1であり、結合間距離(bond dimension)が3〜10Åの複合体であることを特徴とする。本発明の複合体中の粒子は、粒子の少なくとも約5重量%が約10〜500ミクロンの範囲にあり、粒子の少なくとも約5重量%が約10〜250ミクロンの範囲にあるような粒度範囲およびポリマーを有し、複合体の隣接する粒子の分子間のファンデルワールス分散結合強度が約4kJ・mol−1未満かつ結合間距離が1.4〜1.9Åであるか、または、約2kJ・mol−1未満かつファンデルワールス結合間距離が約1.5〜1.8Åである。
【0021】
本複合体における強化材は、マトリックスよりも通常はるかに強力かつ剛性が高く、複合体に良好な特性をもたらす。マトリックスは秩序化された高密度パターンの強化材を保持している。強化材は通常不連続であるので、マトリックスは強化材間で負荷の伝達を助ける役割も果たす。強化材または粒子の混合および充填を促す加工を行うことができる。混合を補助するために、界面改質剤は、マトリックスが複合体の実質的に連続する相を形成するのを妨げる力に打ち勝つように助けることができる。丁寧な加工および製造を行うことによって密接な会合が起こることにより複合体の特性が表れる。111111111
本発明者らは、界面改質剤は、粒子上に密接な会合を促すがポリマーおよび粒子の反応による結合は生じない外部被覆をもたらす有機材料と考えている。使用可能な改質剤の最小量としては、約0.0005〜8重量%や約0.02〜3重量%等が挙げられる。本開示における「粒子」という用語は、典型的には、ある分布または範囲の粒度を有する製造物に製造された材料を指す。粒度は10ミクロンを超えてもよく、10〜4000ミクロンの範囲の粒度の粒子を少なくともある程度含む粒度分布を有する。粒子は様々な粒度および円形度パラメータを有する。充填状態におけるこの粒子の排除体積は約13〜61容量%または約30〜75容量%である。あるいは、この粒子の粒子配合率は、約30容量%超、約40容量%超、または約40〜70容量%であってもよい。本発明においては、粒子は化学および物理的性質の異なる材料のブレンドにおいて2種、3種、またはそれを超える粒子供給源を含んでいてもよい。粒子材料に関連する「粒子の大部分」という用語は、粒子は微細物および列挙した範囲よりも大きい粒子をある程度の少量で含んでいてもよいが、大部分(95%超、90%超、85%超等)は、列挙した範囲内にあって複合体の物理的特性に寄与することを指す。ガラスを第2の粒子と組み合わせてもよく、第2の粒子はガラスとは少なくとも±5ミクロンの差があるかまたは式P≧2PもしくはP≦0.5P(式中、Pは中空ガラス微小球の粒度であり、Pは粒子の粒度である)に従うような粒度を有するようにする。
【0022】
本開示における「非金属」という用語は、酸化状態の金属を実質的に含まない(ほぼ0)の材料に関連する。
【0023】
本開示における「無機」という用語は、有機炭素または共有結合した炭素化合物の形態の炭素を実質的に含まない材料に関連する。したがって、炭酸カルシウムや炭酸水素ナトリウム等の化合物は無機材料と見なされるが、メタン、エタン、エチレン、プロピレン等の小分子、関連ポリマー種等の大多数の有機化合物は一般に有機材料と見なされる。
【0024】
「鉱物」は、通常は結晶性であり、地質学的過程の結果として形成された元素または化学的化合物として定義される(Ernest H.Nickel,1995,The definition of a mineral,The Canadian Mineralogist,第33巻、pp.689〜690)。本発明における「非金属、無機、または鉱物」(鉱物)という用語は、上述したように、通常結晶性であり、地質学的過程の結果として形成された元素または化学的化合物として定義される。
【0025】
粒子形態指数(Morphology Index)
界面改質技術は、粒子を連続ポリマー相から隔離する能力が関わる技術である。粒子を隔離するには、粒子表面全体に分配させるべき界面改質剤の連続分子層を配することが必要である。一旦この層が適用されたら、界面における界面改質剤のポリマーに対する挙動が複合体の物理的性質(例えば、引張および伸び挙動)を支配し、その一方で、粒子のバルク特性が複合体のバルク材料特性(例えば、密度、熱伝導性、圧縮強度等)を支配する。本技術に付随して粒子相が高い体積百分率で配合されるので、粒子のバルク特性と最終複合体のバルク特性とは特に強く相関する。
【0026】
界面を上首尾に改質する能力を定める鍵となる粒子表面の属性は2つある。1)巨視的に見た粒子の総表面積(巨視的とは、界面改質剤分子の大きさと比較して約100倍以上と定められる。NZ−12の場合、分子の直径は約2260ρmである。)および2)適用される界面改質剤の大きさのスケールで見た粒子の表面特性である。
【0027】
以下の粒子形態の属性は、粒子を効果的に界面改質する能力に特に寄与する。本発明者らは、異なる粒子属性を組み合わせることにより粒子形態指数を導出した。これを検討することにより、大径、平滑、球形、不浸透性の表面形態(粒子形態指数:低)から小径、でこぼこ、不規則、多孔質(粒子形態指数:高)のものまで大きく異なる形態の粒子を効果的に改質できることがわかるであろう。
【0028】
粒度(P
幅広い粒度のものを効果的に界面改質することが可能である。長軸寸法(major dimension)が−635USメッシュ(<20μm)という小粒子〜−40USメッシュ(−425μm)という大粒子まで上首尾に改質される。粒度が大きい(1500μm以上)方が効果的に改質できることは明白である。改質される粒子の絶対的な粒度は重要ではない。最終物品の最小限界寸法に対する最大粒子の長軸寸法の相対的な大きさの方が重要である。本発明者らの複合体に関する経験から、最大粒子の長軸寸法が最終物品の最小限界寸法の5分の1を超えるべきでないことが導かれた。
【0029】
粒子が小さくなるほど粒子表面積は増加する。球体が平滑で密度が一定の場合、所与の質量の材料中においては、直径425μmの球体と比較すると直径15μmの球体の表面積は28倍となる。15μmの粒子と比較すると直径1500μmの球体の表面積は100倍である。
【0030】
粒度の変化による表面積の変化を補うために界面改質剤の投与量が効果的に調節される。
【0031】
粒子形状/アスペクト比(Psh
界面改質の利点は全体の粒子形状と無関係である。アスペクト比が1(中空ガラスバブルiM30KおよびセラミックG200微小球)〜10(ある程度の特定の不規則形状を有するざくろ石)の粒子は有利に界面改質されている。現在の上限の制約に関与するのは、実験室用配合設備内で高アスペクト比の繊維を著しく損傷することなく繊維を上首尾に分散させるという課題である。さらに、高アスペクト比の繊維には固有のレオロジー上の課題が伴う。適切な技術を用いることにより、アスペクト比が10を超える繊維フラグメントの界面改質された繊維を上首尾に配合して生成させることができることは想定内である。
【0032】
所与の短軸寸法(minor dimension)の粒子に関し、粒子のアスペクト比対表面積の関係は:
球体=πD
AR物体=πD(r+0.5)
(式中、Dは、粒度(P)または直径であり、rはアスペクト比である)で与えられる。
【0033】
所与の短軸寸法の場合、アスペクト比が10の粒子の表面積は球状粒子の表面積の10.5倍である。形状効果による表面積の変動を補うために界面改質剤の投与量を調節することができる。
【0034】
粒子粗さ(P
巨視的な粒子粗さ(本明細書においては界面改質剤の直径の100倍と定義される)は、粒子の円形度により定義することができる。凹凸のある実質的に非球形の鉱物または無機粒子を界面改質することにより規則的な形状の粒子と同等の有利なレオロジーおよび物理的性質が得られることが示されている。粒子の円形度または粗さの測定は、粒子の粗さを自動または手動測定で算出することができる顕微鏡検査により行うことができる。このような測定においては、代表値として選択された粒子外周を選択し、粒子断面の面積も測定する。粒子の円形度は以下の式により求められる:
円形度=(外周)/面積。
【0035】
中空ガラスバブル等の材料は、円形度が4π(平滑な球状粒子の場合)〜50(アスペクト比が10である平滑な粒子)である。多くの無機および鉱物粒子は、長円、多葉、凹凸のある不規則な形状または外観を有する。このような材料は円形度が13〜35または13〜30であり、本発明の改善された粘弾特性が得られる。適切な光学および画像解析技術を用いることにより、巨視的な粒子粗さを定量化するための適切な拡大倍率下で表面粗さおよびアスペクト比の分離を測定することができる。粒子形態指数を導出するための乗数は粒子のアスペクト比に応じて調節する必要がある。
【0036】
光学的手順の別法は、粒子相の比表面積を測定するためにBET分析を用いることから構成される。比表面積は、特定の粒度および形状分布を有する粒子に関する巨視的な粒子粗さおよび以下に検討する粒子多孔性の両方を捉えるものである。
【0037】
粒子多孔性(P
界面改質剤の分子量は数百〜数千程度と非常に大きい。ある種の化合物に関しては、改質剤分子の有効径は分子量に比例する。NZ−12ジルコン酸エステル改質剤の予測径は2260ピコメートルであり、分子量は2616g/molである。改質剤分子の最小サイズは約400ピコメートル(推定分子量460g/mol)であろう。チタン酸エステル改質剤の大きさは、所与の有機リン酸エステル構造が一致する場合は対応するジルコン酸エステルよりも幾分小さくなるであろう。
【0038】
BET表面分析に関する文献調査から、鉱物粒子の粒子表面積には大きな差があることがわかる(0.1〜>100m・gm−1)。直径1500ミクロンの非多孔質球体の比表面積は0.017m・gm−1となる。どの場合においても、改質剤の配合量を変化させることにより粒子の上首尾な界面改質が可能となる。必要とされる投与量の増加はBET表面測定とは直接比例しないことに留意することが重要である。BET探査(probing)ガスが浸透可能な細孔サイズは界面改質剤よりもはるかに小さい(例えばクリプトンで20.5Å)。BET分析により測定された珪砂の細孔サイズは0.90nmなので、界面改質剤分子は細孔入口に橋架けすることができる。界面改質剤(大)、橋架けされる細孔サイズ(小)、および界面改質剤を通過して吸収体粒子中に拡散する吸収体分子(窒素、アルゴン、水等)のサイズ間に相対的なサイズの差があることから、多孔質吸収体を上首尾に界面改質し、粒子複合体のレオロジーを改善しながら、粒子の吸収特性を維持することが可能であろう。
【0039】
粒子形態指数(PMI)は:
PMI=(P)(Psh)(P)(P
として定義される。大きな球形の平滑な非多孔質粒子の場合、粒子形態指数=1〜200である。アスペクト比が10の凹凸のある小さな多孔質粒子の場合は、最大粒子形態指数=100×10.5×100/0.1=10である。一定範囲の粒度(P)または直径およびアスペクト比、ある程度の凹凸、および多孔性を有する特定の粒子では、200〜10の範囲となり得る。幅広い範囲の粒度または直径およびアスペクト比、かなりの凹凸、および高い多孔性を有する他の粒子の場合は、2×10〜10の範囲となり得る。界面改質剤の量は粒子形態指数に伴い増加する。
【0040】
上述の粒子属性(粒度および分布、粒子形状、ならびに粗さ)の結果として、特定の粒子充填挙動が生じる。これらの変数の関係から、その結果として得られる充填率が導かれる。充填率は:
=P/dpync
(式中、P=充填率、P=充填密度、dpync=比重ビン(pyncnometer)密度)として定義される。
【0041】
粒子充填挙動に関するこれらの変数の関係は十分に特定されており、粉末冶金科学に用いられている。球状粒子の場合、大〜小粒子のサイズの差が増大すると粒子の充填率が増加することが周知である。重量比が大粒子73重量部:小粒子27重量部であり、サイズ比が7:1の単分散球体の場合、小粒子は大粒子の隙間に嵌まることができ、充填レベルは約86容量パーセントとなる。実際は単分散の球体を得ることは不可能である。本発明者らは、サイズの差が可能な限り大きい幅広い粒度分布を有する粒子を用いて充填率を高めることが最良であることを見出した。このような場合、80容量%に迫る充填率が得られることを見出した。
【0042】
球状粒子の体積配合率が高い複合体の場合、充填率の高い複合体のレオロジー挙動は、粒子同士の接点の特性および粒子間距離に依存する。ポリマーの体積が粒子相の排除体積とほぼ等しい複合体を形成する場合は、粒子間相互作用が材料の挙動を支配する。粒子は互いに接触し、鋭いエッジと柔らかい表面との相互作用(その結果、えぐれ(gouging)が生じる)に表面間摩擦が重なって、さらなる充填または最適な充填が妨げられる。界面改質の化学作用により、配位結合、ファンデルワールス力、共有結合、またはこれら3つすべてが連係して粒子表面を変えることができる。界面改質された粒子の表面は界面改質剤の粒子として挙動する。この有機物質により粒子間の摩擦が低減され、えぐりが防止され、粒子間の移動がより自由になる。上述の許容可能な範囲の粒子形態指数を有する粒子を利用することの利点は、充填率が最大充填率のかなりの割合(通常は、複合体の粒子相の約40容量%を超える値)に到達するまで明確にならない。
【0043】
本発明の粒子の空間特性は粒子の円形度およびアスペクト比で定義することができる。本発明の驚くべき一面は、平滑な球状粒子形状と離れた非球形またはかなり大きなアスペクト比を有する粒子でさえも、本発明の複合体に効果的に充填されることである。凹凸を有するアモルファスの実質的に非球形形状の鉱物または無機粒子が、規則的形状を有する粒子と同等の有利なレオロジーを達成する。本発明のより規則性の高い粒子のアスペクト比は1:5未満であるべきであり、多くの場合は1:1.5未満である。同様に、アスペクト比が10未満または約5:1の粒子でも本発明の複合体の利点が得られる。
【0044】
本発明者らは、本明細書に開示した界面改質剤を使用することにより、球状粒子および実質的に非球状粒子のいずれを用いても、理想的な球状粒子から離れた粒子を用いてさえも、有効な複合体が作製できるような密接な会合が得られることを見出した。多くの無機または鉱物粒子は、供給源および加工に応じて、狭い粒度分布、非常に規則性の高い表面、低アスペクト比、および高い永続性(secularity)を有することができる一方で、他のこのような粒子は非常にアモルファス性が高く不規則な形状および表面性を有する可能性がある。本発明者らは、本発明の方法および本発明の界面改質剤を用いて作製された複合体を用いることにより、本明細書に開示されたほとんどの種類の粒子から有用な複合体を得ることができることを見出した。
【0045】
本発明の複合体においては、結晶または他の鉱物粒子集合体の形態で「分子」として作用する中空ガラス微小球集団の間でファンデルワールス力が発生する。本発明の複合体は、ガラス微小球、非金属、無機、または鉱物粒子間の分子間力を有し、これがファンデルワールス強度の範囲(すなわち適切な範囲および定義のもの)にある複合体であることを特徴とする。
【0046】
複合体においては、中空ガラス微小球は通常はマトリックスよりもはるかに強力かつ高剛性であり、設計された特性を複合体にもたらす。マトリックスは中空ガラス微小球を秩序化された高密度パターンで保持する。中空ガラス微小球は通常は不連続であるので、マトリックスは中空ガラス微小球間に負荷を伝達するのを助ける役割も果たす。複合体中における中空ガラス微小球の混合および充填を加工により促すことができる。混合を補助する表面化学試剤は、マトリックスが、複合体の実質的に連続する相を形成するのを妨げる力に打ち勝つように助けることができる。複合体の調整可能な性質は、丁寧な加工および製造を行うことにより密接な会合が起こることによって生じるものである。本発明者らは、表面化学試剤は、ポリマーおよび粒子の密接な会合を促す粒子上の外部被覆を提供する有機材料であると考えている。約0.005〜8重量%、または約0.02〜3重量%等の最小量の界面改質剤を使用することができる。材料を被覆して形態を向上させる場合はより多量を使用する。
【0047】
中空ガラス球体(中空および中実の両方を含む)は有用な非金属または無機粒子である。これらの球体は、ポリマー化合物のさらなる加工、例えば、高圧噴霧、混練、押出成形、射出成形等の最中に破砕や破壊を起こさない十分な強度を有している。多くの場合、これらの球体は、ポリマー化合物に導入および混合する際に均一に分布するように、これらが導入されるポリマー化合物に近い(但しそれよりも高いかまたは低い)密度を有する。さらに、この球体は、これらが会合するポリマー化合物との間で浸出や他の化学的相互作用が起こらないような耐性を有することが望ましい。中実ガラス粒子を加熱することにより中空ガラス球体に膨張させる方法は周知である。例えば、米国特許第3,365,315号明細書を参照されたい。ガラスは粒子形態に粉砕され、次いで、粒子が可塑化し、ガラス内の気体物質が起泡剤として作用して粒子を膨張させるように加熱される。加熱および膨張の際は、粒子の下に気体流を当てるかまたは加熱帯域内を自由落下させるかのいずれかによって粒子は浮遊状態に維持される。硫黄、または、酸素および硫黄の化合物が主な起泡剤の役割を果たす。
【0048】
中空ガラス球体の密度、粒度、強度、化学的耐久性、および収率(加熱された粒子のうち中空になるものの重量または体積百分率)には多くの要素が影響する。これらの要素としては、ガラスの化学組成;炉に供給された粒子の粒度;粒子の加熱温度および時間;ならびに加熱中に粒子が曝される化学的雰囲気(例えば、酸化または還元)が挙げられる。中空ガラス球体の形成に使用されるガラス中のシリカ(SiO)の割合は65〜85重量パーセントであるべきであり、SiOの重量百分率が60〜65パーセントを下回ると中空球体の収率が劇的に低下することになる。
【0049】
中実ガラス粒子を加熱することにより、平均密度が約0.1グラム・cm−3〜約0.7グラム・cm−3または約0.125グラム・cm−3〜約0.6グラム・cm−3の有用な中空ガラス球体が調製される。
【0050】
特定の所望の平均密度を有する中空ガラス球体製造物に関し、最大平均強度が得られる製造物を製造する球状粒子の粒度には最適な範囲がある。より大きいおよびより小さい中空ガラス球体の組合せ(より小さい球体を約0.1〜25重量%およびより大きい粒子を約99.9〜約75重量%)を用いることができ、より大きい粒子の粒度(P)の比率対より小さい粒度の比率は約2〜7:1である。
【0051】
商業的に用いられる中空ガラス球体には中実および中空ガラス球体の両方が含まれる。炉で加熱された粒子全部が膨張するわけではなく、ほとんどの中空ガラス球体製品は中実球体から中空のものを分離することなく販売されている。
【0052】
好ましい中空ガラス球体は比較的薄肉の壁を有する中空球体である。このような球体は、典型的には、シリカ−ライン−オーラル−シリケート(silica−line−oral silicate)中空ガラスを含み、バルク形態では白色粉末粒子の外観を呈する。中空球状材料の密度は約0.1〜0.8g/ccの範囲になる傾向があり、これは実質的に水に不溶であり、平均粒度(P)は10〜250ミクロンの範囲となる。
【0053】
これまで、無機中空ガラス球体は、ナイロン、ABS、もしくはポリカーボネート組成物等のポリマーまたはこれらのアロイ中で使用されてきた。ナイロン中の粒子配合率は数パーセント〜多くても20容量%程度の範囲であったが、本発明者らの観察から、従来技術の無機材料は粒子の容量百分率が20または25容量%を超えると脆化して粘弾特性を失ってしまう。本出願人らの組成物における材料は、配合率が20%を超えても有効な複合体の形成を維持するだけでなく、25容量%超、35容量%超、40容量%超の範囲、典型的には約40容量%〜95容量%という高量の範囲の配合率でも、高い粘弾性およびポリマー特性も維持する。本出願の複合体は、粒子配合率がこれらの範囲内にある場合は、ポリマー相におけるポリマーの粘弾特性が維持される。そのようなものとして、これらの配合率の範囲内において、本出願人らは、伸びが5%超、10%超、20%超となることができる有用な破断伸びを得ており、約20〜500%の範囲の破断伸びを得ることができる。さらに、引張降伏点は従来技術の材料を実質的に超えることができ、約5〜10%の範囲の伸びを得ることができる。
【0054】
本発明の複合体材料は、典型的には溶融加工を用いて製造され、溶融加工を用いた製品の成形にも利用される。典型的な熱可塑性ポリマー材料が粒子と合一され、材料が例えば均一な密度に達するまで加工される(密度が決定要素として用いられる特性である場合)。別法として、材料の製造において、非金属、無機物質、もしくは鉱物、または熱可塑性ポリマーを界面改質剤とブレンドしてもよく、次いで、改質された材料を溶融加工して材料を得てもよい。一旦、材料に十分な特性(例えば、密度等)が得られたら、材料を押出成形して製品を得るかまたはペレット、チップ、ウエハ、プリフォーム、または従来の加工技法を用いて容易に加工できる他の材料の形態の原料にしてもよい。
【0055】
本発明の複合体を用いた有用な製品の製造においては、典型的には押出設備で加熱および加圧した後、適切な形状(適切な物理的形状に正確な量の材料を有する)に成形することにより、適切な量の複合体製造物を得ることができる。適切な製造物設計においては、複合体製造中または製造物製造中に、顔料または他の染色材料を加工設備に添加することができる。この材料の利点の1つは無機染料または顔料を一緒に加工できることにあり、その結果として、魅力的、機能的、または装飾的な外観を得るために外側に塗装やコーティングを施す必要がない材料が得られる。このポリマーブレンドには顔料を含有させることが可能であり、材料全体に均一に分散させることができ、その結果として、欠けや傷がなく、装飾的外観を損なうこともない表面を得ることができる。特に重要な顔料材料の1つは二酸化チタン(TiO)を含む。この材料は、複合体材料の新規な特性を向上させるとともに最終複合体材料に白い色調を付与する目的で用いられる明白色の無毒性粒子であり、非金属、無機、もしくは鉱物粒子のいずれかおよび/またはポリマー複合体と容易に合一することができる。
【0056】
本発明者らは、粒子形態にある2種、3種、またはそれ以上の非金属、無機物質、または鉱物のブレンドを用いると、ポリマー複合体構造において非金属、無機物質、または鉱物すべてに由来する重要な複合体特性を得ることができることを見出した。このような複合体はそれぞれ独自のまたは特殊な性質を示すことができる。この複合体の加工および材料は独自の能力および特性を有し、この複合体は、融点および他の加工上の難点が原因で本発明の方法を用いなければブレンドを作製することができなかった2種または3種の異なる非金属、無機物質、または鉱物がブレンドされた複合体として作用する。
【0057】
本発明の複合体材料には多種多様なポリマー材料を使用することができる。本出願におけるポリマーは、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の両方を含む一般用語である。本発明者らは、本発明に有用なポリマー材料には縮合ポリマー材料および付加またはビニルポリマー材料の両方が含まれることを見出した。ここにはビニルおよび縮合ポリマーならびにこれらのアロイの両方が包含される。ビニルポリマーは、典型的には、エチレン不飽和オレフィン基を有するモノマーを重合させることにより製造される。縮合ポリマーは、典型的には、通常は2種以上の分子が結合する段階的化学反応と見なされる縮合重合反応により製造され、多くの場合(必ずではないが)、水または他の単純な何らかの(典型的には揮発性の)物質の分離を伴う。このようなポリマーは重縮合と呼ばれるプロセスで形成することができる。ポリマーの密度は少なくとも0.85g・cm−3であるが、製造品全体の密度を高めるためには密度が0.96を超えるポリマーが有用である。密度は多くの場合は1.7までまたは2g・cm−3までであるが、約1.5〜1.95g・cm−3であってもよい。
【0058】
ビニルポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリブチレン共重合体、ポリアセチル樹脂、ポリアクリル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデンを含む単独重合体または共重合体、フルオロカーボン共重合体等が挙げられる。縮合ポリマーとしては、ナイロン、フェノキシ樹脂、ポリアリールエーテル(ポリフェニルエーテル等)、ポリフェニルスルフィド材料、ポリカーボネート材料、塩素化ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタンエラストマー、および他の多くの樹脂材料が挙げられる。
【0059】
本発明の複合体材料に使用することができる縮合ポリマーとしては、ポリアミド、ポリアミド−イミドポリマー、ポリアリールスルホン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリアミド、ポリフェニレンエーテルブレンド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、熱可塑性ポリウレタン等が挙げられる。好ましい縮合系エンジニアリングポリマーとしては、ポリカーボネート材料、ポリフェニレンオキシド材料、およびポリエステル材料(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート材料等)が挙げられる。
【0060】
ポリカーボネートエンジニアリングポリマーは、衝撃強度、透明性、耐熱性、および寸法安定性が高い高機能非晶質エンジニアリング熱可塑性樹脂である。一般に、ポリカーボネートは、有機ヒドロキシ化合物と炭酸とのポリエステルに分類される。最も一般的なポリカーボネートは炭酸と共重合されるヒドロキシル化合物としてのビスフェノールAをベースとするものである。この材料はビスフェノールAをホスゲン(O=CCl)と反応させることにより製造される場合が多い。ポリカーボネートは耐熱性等の特性を改善する目的でフタル酸エステルモノマーを重合用押出機に導入することにより製造することができ、さらに押出ブロー成形された材料の溶融強度を増大するために三官能性材料を使用することができる。ポリカーボネートは、アロイ製造における構成成分としての多用途のブレンド用材料として他の市販のポリマーと一緒に使用できる場合が多い。ポリカーボネートは、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン無水マレイン酸等と併用することができる。好ましいアロイはスチレン共重合体およびポリカーボネートを含むものである。好ましいポリカーボネート材料はメルトインデックスが0.5〜7、好ましくは1〜5g/10分であるべきである。
【0061】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の様々なポリエステル縮合ポリマー材料が本発明の複合体に有用となり得る。ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートは高機能縮合ポリマー材料である。このようなポリマーはジオール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオール)とテレフタル酸ジメチルとの共重合により製造される場合が多い。この材料の重合においては、重合混合物を高温に加熱することによって、メタノールが放出されるエステル交換反応が起こり、その結果としてエンジニアリングプラスチックが形成される。同様に、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンナフタレート材料は、上述したように酸供給源であるナフタレンジカルボン酸を用いて共重合により製造することができる。ナフタレート熱可塑性樹脂はテレフタレート材料よりもTgおよび高温安定性が高い。しかしながら、これらのポリエステル材料はいずれも本発明の複合体材料に有用である。このような材料はメルトフロー特性で表される好ましい分子量を有している。有用なポリエステル材料は265℃における粘度が約500〜2000cP、好ましくは約800〜1300cPである。
【0062】
ポリフェニレンオキシド材料は330℃という高温範囲において有用なエンジニアリング熱可塑性樹脂である。ポリフェニレンオキシドは、機械的性質、寸法安定性、および誘電特性が非常に優れている。一般に、フェニレンオキシドが他のポリマーまたは繊維と併用される場合はポリマーアロイまたはブレンドとして製造および販売される。ポリフェニレンオキシドは、典型的には、2,6−ジメチル−1−フェノールの単独重合体を含む。このポリマーは、一般にポリ(オキシ−(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン))として周知である。ポリフェニレンは、ポリアミド、典型的にはナイロン6−6とのアロイまたはブレンド、ポリスチレンまたは高耐衝撃性スチレン等とのアロイとして使用される場合が多い。本発明に有用なポリフェニレンオキシド材料に好ましいメルトインデックス(ASTM 1238)は、典型的には約1〜20、好ましくは約5〜10g/10分の範囲にある。265℃における溶融粘度は約1000cPである。
【0063】
他の熱可塑性樹脂の分類としては、スチレン系共重合体挙げられる。「スチレン系共重合体」という用語は、スチレンが第2のビニルモノマーと共重合され、結果としてビニルポリマーとなったものを指す。このような材料は、スチレンを少なくとも5mol%含み、残りは1種またはそれ以上の他のビニルモノマーである。この種の材料の中で重要なものはスチレンアクリロニトリル(SAN)ポリマーである。SANポリマーは、スチレン、アクリロニトリルおよび場合により他のモノマーの共重合により製造されるアモリファス直鎖ランダム共重合体である。乳化、懸濁、および連続塊状重合技法が用いられている。SAN共重合体は、透明性、非常に優れた熱特性、良好な耐薬品性、および硬さを有する。このようなポリマーは、剛性、寸法安定性、および耐荷重性も特徴的である。オレフィン変性SAN(OSAポリマー材料)およびアクリルスチレンアクリロニトリル(ASAポリマー材料)が知られている。これらの材料は未変性SANよりも幾分軟質であり、延性、不透明性を有し、驚くほど耐候性が改善された2相三元共重合体である。
【0064】
ASAポリマーは塊状共重合またはグラフト共重合のいずれかにより製造されるアモルファスランダム三元共重合体である。塊状共重合体においては、アクリルモノマー、スチレンおよびアクリロニトリルを組み合わせて不均一(heteric)三元共重合体が形成される。代替的な製造技法においては、スチレンアクリロニトリルオリゴマーおよびモノマーをアクリル系エラストマー主鎖にグラフトすることができる。このような材料は、屋外耐候性および耐UV性を有する製造物であることを特徴とし、屋外曝露に際し極めて優れた色安定性保持性および特性安定性を示す。このような材料はまた、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等の他の各種ポリマーとブレンドまたはアロイ化することもできる。スチレン共重合体の重要な分類としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンモノマーを含む。これらのポリマーは3種のモノマーの共重合により製造される非常に用途の広いエンジニアリング熱可塑性樹脂群である。各モノマーが最終3元共重合体材料に重要な特性を付与する。最終材料は非常に優れた耐熱性、耐薬品性、および表面硬度と、加工性、剛性、および強度とを兼ね備えている。このポリマーはまた、強靱かつ耐衝撃性を有している。スチレン共重合体群のポリマーのメルトインデックスは約0.5〜25、好ましくは約0.5〜20の範囲にある。
【0065】
本発明の複合体に使用することができるエンジニアリングポリマーの重要な分類としては、アクリル系ポリマーが挙げられる。アクリル樹脂には、主要なモノマー構成要素がアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルである幅広い重合体および共重合体が含まれる。これらのポリマーは、硬質の透明シートまたはペレットの形態で提供される場合が多い。アクリル系モノマーは、典型的には、過酸化物、アゾ化合物、または放射エネルギーによって開始されるフリーラジカルプロセスにより重合される。市販のポリマー配合物が提供される場合が多く、重合時に使用される様々な添加剤および改質剤によって、特定の用途向けに特定の特性の組合せがもたらされる。ポリマーグレード用途用として製造されるペレットは、典型的には、バルクのいずれか(連続溶液重合)で製造され、次いで、押出機で押出成形および造粒されるかまたは連続重合され、未反応モノマーが減圧下で除去されて再利用のために回収される。アクリル系プラスチックは、一般に、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸高級アルキルエステルと他の共重合可能なビニルモノマーとを用いて製造される。本発明の複合体に有用な好ましいアクリル系ポリマー材料のメルトインデックスは約0.5〜50、好ましくは約1〜30g/10分である。
【0066】
ビニルポリマーとしては、アクリロニトリル;エチレンやプロピレン等のアルファ−オレフィンの重合体;塩化ビニルや塩化ビニリデン等の塩素化モノマー、アクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリレートモノマー;スチレン、アルファメチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル;および他の一般に入手可能なエチレン性不飽和モノマー組成物が挙げられる。
【0067】
ポリマーブレンドまたはポリマーアロイは本発明のペレットまたは線状押出物の製造に有用な可能性がある。このようなアロイは典型的には均一な組成物を形成するようにブレンドされた2種の相溶性ポリマーを含む。ポリマーブレンド分野における科学および工業上の発展により、新規なポリマー材料を開発することなく、相溶性のポリマーブレンドまたはアロイを形成することによって、重要な物理的性質の改善が実現できた。平衡状態のポリマーアロイは2種類のアモルファスポリマーの混合物を含み、これは2種類の高分子成分のセグメントが密接に混合された単相として存在する。相溶性のアモルファスポリマーは十分に冷却されるとガラスを形成し、均質または相溶性ポリマーブレンドは組成に応じた単一のガラス転移温度(Tg)を示す。非相溶性またはアロイ化しないポリマーのブレンドは、通常、相溶化されなかったポリマー相に付随する2以上のガラス転移温度を示す。最も単純な場合、ポリマーアロイの性質には、その構成成分が保有する性質の組成加重平均が反映される。しかしながら、通常、性質の組成依存性は、特定の性質、構成成分の性質(ガラス状、ゴム状、または半結晶性)、ブレンドの熱力学的状態、ならびに分子および相がどのように配向しているかという機械的状態に応じて複雑な様式で変化する。
【0068】
実質的に熱可塑性のエンジニアリングポリマー材料の主要な要件は、粘度や安定性等の十分な熱可塑性を保持することにより、粒子との溶融ブレンドを可能にし、線状押出物、ペレットの形成を可能にし、かつ有用な製造物を形成する加熱塑性加工において組成物材料またはペレットを押出成形または射出成形可能にすることにある。エンジニアリングポリマーおよびポリマーアロイはDyneon LLC、B.F.Goodrich、G.E.、Dow、DuPont等の多くの製造業者より入手可能である。
【0069】
ポリエステルポリマーは二塩基酸をグリコールと反応させることにより製造される。ポリエステル製造に使用される二塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、およびアジピン酸が挙げられる。フタル酸は、剛性、硬さ、および耐温度性をもたらし、マレイン酸はフリーラジカル硬化を引き受けるビニル飽和を提供し、アジピン酸は硬化したポリマーに可撓性および延性をもたらす。慣用されているグリコールは、結晶化の傾向を低減し、スチレンへの溶解性を改善するプロピレングリコールである。エチレングリコールおよびジエチレングリコールは、結晶化の傾向を低減する。二塩基酸およびグリコールは縮合して水を脱離し、次いで好適な粘度にするためにビニルモノマーに溶解される。ビニルモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、メタクリル酸メチル、およびジアリルフタレートが挙げられる。ヒドロキノン、第3級ブチルカテコール、フェノチアジン等の重合禁止剤を添加すると未硬化のポリエステルポリマーの貯蔵寿命が延長される。無水フタル酸をベースとするポリマーをオルトフタル酸ポリエステルと称し、イソフタル酸をベースとするポリマーをイソフタル酸ポリエステルと称する。不飽和ポリエステルポリマーの粘度は用途に合わせて調整することができる。繊維強化複合体の作製には、強化層を十分に湿潤させ、続いてその下の基材に強固に接着させることを確実にするために低粘度であることが重要である。湿潤が不十分な場合は機械的性質が大幅に低下する可能性がある。典型的には、ポリエステルは、未硬化状態での粘度が200〜1000mPa・s(cP)であるポリマーを製造するようなスチレン含有量または他のモノマー含有量で製造される。特殊ポリマーは約20cP〜2000cPの範囲の粘度を有していてもよい。典型的には、不飽和ポリエステルポリマーは、一般に過酸化物材料を用いて製造されるフリーラジカル開始剤により硬化される。幅広い種類の過酸化物開始剤が入手可能であり、慣用されている。過酸化物開始剤は熱分解してフリーラジカル開始種を形成する。
【0070】
フェノール系ポリマーも本発明の構造部材の製造に使用することができる。フェノール系ポリマーは、典型的には、フェノール−ホルムアルデヒドポリマーを含む。この種のポリマーは、本来、難燃性、耐熱性を有し、かつ低コストである。フェノール系ポリマーは、典型的には、フェノールおよび化学量論量未満のホルムアルデヒドをブレンドすることにより作成される。このような材料は酸触媒を用いて縮合され、ノボラックと称される熱可塑性樹脂中間体ポリマーとなる。このようなポリマーは、フェノール系基を末端とするオリゴマーである。このオリゴマーは、硬化剤および任意的な加熱の存在下に硬化して、非常に分子量の高い熱硬化性ポリマーを形成する。ノボラックの硬化剤は、典型的には、アルデヒド化合物またはメチレン(−CH−)供与体である。アルデヒド系硬化剤としては、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グリオキサール、およびヘキサメチルメトキシメラミンが挙げられる。
【0071】
本発明に有用なフッ素樹脂は、フッ素原子を1個もしくはそれ以上含むモノマーを用いて製造された過フッ素化または部分フッ素化されたフッ素樹脂または2種以上のこの種のモノマーの共重合体である。これらのポリマーまたは共重合体に有用な含フッ素モノマーの一般的な例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニリデン(VDF)、パーフルオロ−(n−プロピル−ビニル)エーテル(PPVE)やパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)のようなパーフルオロアルキルビニルエーテルが挙げられる。非含フッ素モノマー等の他の共重合可能なオレフィン性モノマーも存在してもよい。
【0072】
含フッ素ポリマーに特に有用な材料は、TFE−HFP−VDF3元共重合体(溶融温度約100〜260℃;265℃、荷重5kgでのメルトフローインデックス約1〜30g・10分−1)、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン−エチレン(HTE)3元共重合体(溶融温度約150〜280℃;297℃、荷重5kgでのメルトフローインデックス約1〜30g・10分−1)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体(溶融温度約250〜275℃;297℃、荷重5kgでのメルトフローインデックス約1〜30g・10分−1)、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン(FEP)共重合体(溶融温度約250〜275℃;372℃、荷重5kgでのメルトフローインデックス約1〜30g・10分−1)、およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルコキシアルカン)(PFA)共重合体(溶融温度約300〜320℃;372℃、荷重5kgでのメルトフローインデックス約1〜30g・10分−1)である。これらのフルオロポリマーはそれぞれDyneon LLC,Oakdale,Minnから市販されている。TFE−HFP−VDF3元共重合体は「THV」の名称で販売されている。
【0073】
主としてフッ化ビニリデンのモノマーから製造されるフッ化ビニリデンポリマー(単独重合体および共重合体の両方を含む)も同様に有用である。この種の共重合体としては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、およびフッ化ビニリデンと容易に共重合する他の任意のモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合された、フッ化ビニリデンを少なくとも50モルパーセント含むものが挙げられる。このような材料は米国特許第4,569,978号明細書(Barber)にさらに記載されており、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。好ましい共重合体は、フッ化ビニリデンを少なくとも約70〜99モルパーセントまでおよびそれに対応してテトラフルオロエチレンを約1〜30パーセントから構成されるもの(英国特許第827,308号明細書に開示されているものなど);フッ化ビニリデンを約70〜99パーセントおよびヘキサフルオロプロペンを1〜30パーセントから構成されるもの(例えば、米国特許第3,178,399号明細書を参照されたい);ならびにフッ化ビニリデンを約70〜99モルパーセントおよびトリフルオロエチレンを1〜30パーセントから構成されるものである。米国特許第2,968,649号明細書に記載されているようなフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、およびテトラフルオロエチレンの3元共重合体、ならびに、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、およびテトラフルオロエチレンの3元共重合体も、本発明に有用なフッ化ビニリデン共重合体の代表的な種類である。このような材料は、King of Prussia,PA所在のArkema GroupからKYNARの商標で、または、Oakdale,MNのDyneon LLCからDYNEONの商標で市販されている。
【0074】
フッ素ゴム材料も本発明の複合体材料に使用することができる。フッ素ゴムは、VFおよびHFPモノマーおよび場合によりTFEを含み、密度が1.8g・m−3を超える。これらのポリマーはほとんどの油、薬品、溶剤、およびハロゲン系炭化水素に対し十分な耐性を示し、オゾン、酸素、および天候に優れた耐性を示す。有用な使用温度範囲は−40℃〜300℃である。フッ素ゴムの例としては、Lentzに付与された米国特許第4,257,699号明細書に詳細に記載されているものに加えて、Eddyらに付与された米国特許第5,017,432号明細書およびFergusonらに付与された米国特許第5,061,965号明細書に記載されているものが挙げられる。各特許の開示内容全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0075】
フッ素樹脂系ラテックスは、PFA、FEP、ETFE、HTE、THV、およびPVDFモノマーを含むポリマーの形態で入手可能である。一般に、フッ素化ポリ(メタ)アクリレートは、当業者に周知のラジカル開始剤を用いてそのまままたは溶媒中のいずれかでフリーラジカル重合により調製することができる。これらのフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと共重合することができる他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、置換アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、スチレン、ハロゲン化ビニル、およびビニルエステルが挙げられる。フッ素樹脂は、極性構成要素を含んでいてもよい。この種の極性基または極性基含有モノマーは、アニオン性、非イオン性、カチオン性、または両性であってもよい。一般に、より慣用されている極性基または極性基含有有機基としては、有機酸、特にカルボン酸、スルホン酸、およびホスホン酸;カルボン酸塩、スルホン酸エステル、ホスホン酸エステル、リン酸エステル、アンモニウム塩、アミン、アミド、アルキルアミド、アルキルアリールアミド、イミド、スルホンアミド、ヒドロキシメチル、チオール、エステル、シラン、およびポリオキシアルキレンに加えて、1種またはそれ以上のこの種の極性基で置換されたアルキレンまたはアリーレン等の他の有機基が挙げられる。本明細書において記載されるフッ素樹脂系ラテックスは典型的には水分散固体であるが、溶媒物質も使用してもよい。フッ素樹脂は、様々な溶媒と組み合わせて液体形態の乳化液、溶液、または分散液を形成してもよい。含フッ素ポリマーの分散液は、米国特許第4,418,186号明細書、米国特許第5,214,106号明細書、米国特許第5,639,838号明細書、米国特許第5,696,216米国特許、またはModern Fluoropolymers,John Scheirs編、1997(特にpp.71〜101および597〜614)に加えて、本譲受人らの同時係属出願である2001年1月31日に出願された第01/03195号明細書に記載されているものなどの従来の乳化重合法を用いて調製することができる。
【0076】
所望の濃度を得るために液体形態をさらに希釈してもよい。水性乳化液、溶液、および分散液が好ましいが、メタノール、イソプロパノール、メチルパーフルオロブチルエーテル等の共溶媒を約50%まで添加してもよい。好ましくは、水性乳化液、溶液、および懸濁液は、共溶媒を約30%未満、より好ましくは共溶媒を約10%未満含み、最も好ましくは、水性乳化液、溶液、および懸濁液は共溶媒を実質的に含まない。
【0077】
界面改質剤を用いることにより粒子とポリマーとが密接に会合する。非反応性または非架橋性用途に用いられる界面改質剤には幅広い種類があり、例えば、ステアリン酸誘導体、チタン酸エステル化合物、ジルコン酸エステル化合物、ホスホン酸エステル化合物、アルミン酸エステル化合物が含まれる。有用なアルミン酸エステル、ホスホン酸エステル、チタン酸エステル、およびジルコン酸エステルは、ヒドロカルビルリン酸エステルおよび/またはヒドロカルビルスルホン酸エステルを含む配位子を約1〜約3個と、不飽和および酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子をさらに含んでいてもよいヒドロカルビル配位子を約1〜3個とを含むものである。好ましくは、チタン酸エステルおよびジルコン酸エステルは、ヒドロカルビルリン酸エステルおよび/またはヒドロカルビルスルホン酸エステルを含む配位子を約2〜約3個含み、好ましくはこの種の配位子を3個およびヒドロカルビル配位子を約1〜2個、好ましくはヒドロカルビル配位子を1個含む。
【0078】
界面改質剤の選択は、粒子、ポリマー、および用途に応じて決まる。粒子は例え十分な形態を有するものであっても被覆が施される。複合体の最大密度は、材料のそれぞれの密度および体積分率の関数となる。材料の単位体積当たりの最大密度を最大にすることによってより高密度の複合体が得られる。材料はほとんどすべてがタングステンやオスミウム等の耐熱性金属である。これらの材料は極めて硬度が高く、変形し難いため、通常は脆性破壊する。これらの脆性材料を変形可能なポリマーバインダーと一緒に配合すれば、従来の加熱塑性加工設備を用いて使用可能な形状に成形することができる。しかしながら、達成可能な最大密度はより小さくそして最適になるであろう。ポリマーの体積が充填剤の排除体積とほぼ等しい複合体を形成する場合、材料の挙動は粒子間相互作用に支配される。粒子は互いに接触し、鋭いエッジと柔らかい表面との相互作用(先端は通常加工硬化されており、その結果としてえぐれが生じる)に表面間の摩擦が重なって、さらなる充填または最適な充填が妨げられる。したがって、特性の最大化は、表面の軟度、エッジの硬度、先端の先端サイズ(鋭度)、表面摩擦力、および材料に加わる圧力、円形度、ならびに通常時の形状、粒度分布の関数となる。この粒子間摩擦により、形成時の圧力は印加された力からの距離に対し指数関数的に低下することになる。界面改質の化学作用は、高密度充填剤の表面を、配位結合、ファンデルワールス力、共有結合、またはこれら3つの組合せにより改質することができる。粒子表面は界面改質剤の粒子として挙動する。この有機物質は粒子間の摩擦を低減し、えぐれを防止するとともにより自由な粒子間移動を可能にする。これらの現象により、成形時に印加される力が成形体のより深部まで到達することが可能になり、より均一な圧力勾配が得られる。
【0079】
好ましいチタン酸エステルおよびジルコン酸エステルとしては、イソプロピルトリ(ジオクチル)ピロホスファトチタネート(Kenrich ChemicalsよりKR38Sの商品名で入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルチタネート(Kenrich ChemicalsよりLICA 09の商標および名称で入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリオクチルホスファトチタネート(Kenrich ChemicalsよりLICA 12の商標および名称で入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート(Kenrich ChemicalsよりNZ 09の名称で入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート(Kenrich ChemicalsよりNZ 12の名称で入手可能)、およびネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロホスファトジルコネート(Kenrich ChemicalsよりNZ 38の名称で入手可能)が挙げられる。最も好ましいチタン酸エステルはトリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルチタネート(Kenrich ChemicalsよりLICA 09の名称で入手可能)である。界面改質剤は、本発明の複合体中の粒子の粒子表面に層を形成して分子間力を低下させ、ポリマーおよび粒子の混合しやすさを改善し、その結果として複合体密度を高めるように改質する。密度は、密接に会合した粒子表面およびポリマーの数に応じて最大化される。
【0080】
界面改質剤を含む複合体を作製するために未硬化形態の熱硬化性ポリマーを使用することができる。熱硬化性ポリマーが選択される場合は、一旦複合体が形成されたら、反応性材料をポリマー相と化学的に結合させることができる。熱硬化性樹脂中の反応性基としては、メタクリリル(methacrylyl)、スチリル、または他の不飽和もしくは有機材料を挙げることができる。
【0081】
熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイト、アクリル系単独重合体、無水マレイン酸含有ポリマー、アクリル系材料、酢酸ビニルポリマー、ジエン含有共重合体(1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン等)、ハロゲンもしくはクロロスルホニル変性ポリマー、または本発明の複合体系と反応することができる他のポリマーが挙げられる。ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、および類似のポリマー材料等の熱可塑性縮合ポリマーを、末端基をアミノアルキル、クロロアルキル、イソシアネート、または類似の官能基を有するシランと反応させることにより使用してもよい。
【0082】
粒子複合体材料の製造は適切な製造技法に依存する。多くの場合、まず粒子に界面改質剤の溶液を粒子上に散布することにより粒子が界面改質剤で処理され、粒子の被覆が確実に均一になるように慎重にブレンドおよび乾燥が行われる。高速Littlefordまたはヘンシェルブレンダーを用いたバルクブレンド操作により界面改質剤を粒子に添加することもできる。別法として、ダブルコーンミキサーの後に乾燥を行うかまたはスクリュー混練装置に直接添加してもよい。界面改質剤は、トルエン、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、他の周知の溶媒等の非プロトン性溶媒中で粒子と反応させることもできる。
【0083】
複合体材料中に存在するポリマー相の性質、充填剤、粒子表面の化学作用、および任意の顔料、加工助剤または添加剤に応じて、粒子をポリマー相中に界面で結合させることができる。一般に、粒子をポリマーに結合させるために使用される機構には、溶媒和、キレート化、配位結合(配位子の形成)等がある。しかしながら、一般に、粒子または界面改質剤とポリマーとを結合する共有結合は形成されない。チタン酸エステル、ホスホン酸エステル、またはジルコン酸エステル試剤を使用してもよい。このような試剤は以下の式:
(RO)−Ti−(O−X−R’−Y)
(RO)−Zr−(O−X−R’−Y)
(RO)−P−(O−X−R’−Y)
(式中、RおよびR’は独立に、ヒドロカルビル、C1〜C12のアルキル基、またはC7〜20のアルキルもしくはアルカリール基であり、ここでアルキルまたはアルカリール基は、場合により1またはそれ以上の酸素原子または不飽和を含んでいてもよく、Xは、硫酸エステルまたはリン酸エステルであり、Yは、Hまたはアルキルもしくはアリール基に一般的な任意の置換基であり、mおよびnは1〜3である)を有する。チタン酸エステルは酸化防止性をもたらし、硬化作用を修正または制御することができる。ジルコン酸エステルは非常に高い結合強度をもたらすだけでなく硬化を最大限にし、配合された熱可塑性材料の褪色を低減する。有用なジルコン酸エステル材料はネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスファト−ジルコネートである。
【0084】
所望の物理的性質を有する複合体材料は以下のように製造することができる。好ましい形態においては、粒子表面をまず調製し、調製された粒子材料の表面に界面改質剤を被覆し、得られた生成物を単離し、次いで連続ポリマー相と合一することにより、粒子とポリマーとの界面会合に作用させる。一旦複合体材料が調製されたら、最終用途の材料を所望の形状に形成する。別法として、溶液処理を行い、材料加工中に溶媒を回収する。この材料は溶媒を用いることなくドライブレンドしてもよい。Drais Systemsより入手されるリボンブレンダー、Littleford Brothersより入手可能な高密度駆動ブレンダー、ヘンシェル等のブレンドシステムを用いることが可能である。バンバリー、ベフェラール(veferralle)単軸または二軸混練機によるさらなる溶融ブレンドも有用である。材料をプラスチゾルまたはオルガノゾルとして溶媒と一緒に加工する場合は、通常はまず液体成分が加工装置に装入され、次いでポリマー、粒子を装入し、高速で撹拌する。一旦すべての材料を添加したら残留している空気および溶媒を除去するために真空引きしてもよく、生成物が均質かつ高密度になるまで混合を継続する。
【0085】
ドライブレンドは費用面で有利なため一般に好ましい。しかしながら、特定の実施形態においては、粒度の差により組成が不安定となる可能性がある。ドライブレンド工程においては、まずポリマーを導入し、およそ周囲温度〜約60℃の温度で必要に応じてポリマー安定剤をポリマーと合一し、粒子(必要に応じて改質されたもの)を安定化されたポリマーとブレンドし、他の加工助剤、界面改質剤、着色剤、指示薬、または滑剤とブレンドした後、混合して高温混合物とし、貯蔵、包装、または最終用途の製造用に移送することにより複合体を作製することができる。
【0086】
有効量の溶媒を用いて複合体の形成を開始させる溶媒技法により界面改質された材料を作製することができる。界面処理が実質的に完結したら溶媒を揮散させることができる。このような溶媒処理は以下のように実施される:
1)界面改質剤またはポリマーまたは両方を溶媒和させる。
2)粒子をバルク相またはポリマーマスターバッチに混合する。
3)ポリマーのTgを超える加熱および真空の存在下に組成物を脱気する。
【0087】
二軸混練機または押出機を用いて配合を行う場合、以下の二軸混練を含む好ましいプロセスを用いることができる。
1.粒子を添加し、昇温して表面の水分を除去する(バレル1)。
2.充填剤が同温度になったら界面改質剤を二軸スクリューに添加する(バレル3)。
3.粒子上に表面化学処理剤を分散/分布させる。
4.温度を維持して完結させる。
5.副生成物を排気する(バレル6)。
6.ポリマーバインダーを添加する(バレル7)。
7.ポリマーバインダーを圧縮/溶融させる。
8.ポリマーバインダーを粒子中に分散/分布させる。
9.改質された粒子をポリマーバインダーと合一させる。
10.残留生成物を真空で脱気する(バレル9)。
11.得られた複合体を圧縮する。
12.ダイまたは後段の製造ステップで所望の形状、ペレット、線状体、チューブ、射出成形品等を形成する。
【0088】
別法として、連続相を少量含む配合においては、
1.ポリマーバインダーを添加する。
2.ポリマーバインダーが所定の温度になったら界面改質剤を二軸スクリューに添加する。
3.ポリマーバインダー中に界面改質剤を分散/分布させる。
4.充填剤を添加し、粒子を分散/分布させる。
5.温度を昇温する。
6.完結するまで温度を維持する。
7.得られた複合体を圧縮する。
8.ダイまたは後段の製造ステップで所望の形状、ペレット、線状体、チューブ、射出成形品等を形成する。
【0089】
特定のポリマーおよび粒子を選択することにより、界面改質剤およびそれに関連する処理ステップを省略することができる。
【0090】
実験項
THV220A(Dyneon Polymers,Oakdale MN)は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデンの重合体である。この材料は押出成形に用いることが意図されており、融点が120℃であり、比重が1.9g/ccである。
【0091】
NZ 12は、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスファト−ジルコネートである。これはKenRich Petrochemicals(Bayonne,NJ)より入手可能である。NZ 12の比重は1.06g/ccであり、イソプロピルアルコール(IPA)に容易に溶解する。
【0092】
[方法および手順]
粉末特性評価:
粉末特性評価は粉末材料の充填挙動を決定するために行われる。充填率は粉末の充填密度をヘリウムピクノメトリーで測定された真密度で除することにより決定される。
充填率は:
=P/dpync
(式中、P=充填率;P=充填密度、dpync=ピクノメーター密度)として定義される。
【0093】
充填密度は、所定の体積内のバルク粉末重量を測定することにより決定される。一般に、充填密度は、冶金成形プレス内に粉末を装入することにより測定される。プレス機構はBuehler International(LakeBluff,IL)より入手可能である。脆性材料の場合、圧力を適切な水準まで低下させて粉末粒子の破壊を減らし、それによって充填密度値が人為的に高くなることを防ぐ。非常に脆い材料の場合には、タップ密度が用いられる。ピクノメーター密度はヘリウムガスピクノメータ法により測定される(Norcross,GAのMicromeretics Corporation製AccuPync 1330)。
【0094】
界面改質剤の適用:
実験室規模で粒子を界面改質するために、まず界面改質剤をイソプロピルアルコール(IPA)で可溶化(soluabilized)される。回転ステンレス鋼回転調理用スープ鍋(rotating stainless steel rotating cooking stock pot)に粉末材料を予め装入しておき、IPA/改質剤混合物を適用する。3ガロンのステンレス鋼調理鍋に鍋を水平から30°傾けて制御下に回転させるためのDC駆動装置およびモーターを接続しておいた。IPA/改質剤混合物を、粒子を十分に湿潤させるのに十分な量のさらなるIPAと一緒に添加する。次いで、鍋の外側を工業用ヒートガンで外部加熱してIPAを揮発させる。十分な時間が経過した後、改質された粒子は自由流動性となる。これは、本発明者らの実験室用二軸混練設備内でそのまま配合できることを示している。
【0095】
配合:
ポリマーおよび改質粒子は、K−tron K20重量測定式ロスインウェイトフィーダを用いて適切な比率で供給される。19mmB&P二軸混練機内で未処理の原料を一緒に溶融させる。バレル帯域温度(5)、スクリュー速度、吐出流量、およびダイの特徴(開口部の数および開口部径)は、配合される粒子およびポリマーの性質に応じて変化させる。通常は、トルク、圧力、および溶融温度の応答がモニターされる。ポリマーおよび粒子の適切な比率を確実に得るための有用な方法は、配合したペレットを加熱した冶金成形プレスに装入することによるものであり、本発明者らはこれを「パック密度(puck density)」と称する。
【0096】
押出成形:
直径1”の押出機(Al−Be Industries,Fullerton,CA)を用いて配合された製造物を押出成形する。温度および吐出流量は、押し出される材料のレオロジー挙動に応じて変化させる。典型的には、モーター負荷(アンペア)および押出圧力の応答をモニターし、易押出性の判定に用いる。引張特性評価が必要な試料の場合は、材料を19mm×3mmの長方形ダイプレートを通過させ、押出品が下方に引き延ばされるのを最小限に抑えるために移動ベルト上に押出成形する。
【0097】
引張および伸び:
押出細片からASTMダンベル(タイプIV)を打ち抜いた。次いでこのダンベルをAmetek,Inc製Lloyd Instrumentsユニバーサル試験機を用いて引張試験に付した。標線間距離を1インチとして歪みを求めた。引張試験時間が30秒間〜3分間継続するASTM標準に適合するようにクロスヘッド速度を変化させた。試験試料の応力/歪み曲線を作成した。
【0098】
[実施例1]
中空ガラス球体
iM30k中空ガラスバブル供給品を3M Corporation(St.Paul,MN)より入手した。このバブルの密度は約0.6g/ccである。KR238S(KenRich Chemicals)を用いて界面改質剤4.8部対粒子100部でバブルを界面改質した。ポリマー相はDyneon(St.Paul,MN)からのTHV220とした。ポリマー相中の中空ガラスバブル配合量が60容量%となるようにバブルをポリマー相中に配合した。次いでこの試料を押出成形し、ASTM引張ダンベル試験片を作成し、引張試験を行った。さらに、配合が目標値に近いかどうかを確認するために冶金成形プレスを用いてパック試料を作製した。
【0099】
その差は配合の際に明白となった。改質剤を用いない製造物はダイプレートから吐出される際には褐色/黄褐色となっており、材料が変質したことを示していた。さらに、バブルは適切に供給されず、機械の送り込み口に埋まってしまった。その結果、吐出流量が60ml毎分から40ml毎分に低下した。配合された製造物のパック密度は1.23g/ccであり、多くのガラスバブルが配合中に破壊したことを示していた(ガラスバブルの破壊がない場合、目標配合量では1.10g/ccという値が得られるはずである)。複合体製造物は脆く、約0.3インチ伸びて破断した(図2)。
【0100】
界面改質されたガラスバブルを含む複合体の密度はより低く(1.15g/cc対1.23g/cc)、加工中のバブル破壊がより少ないことと、最終複合体に含まれるガラスバブルの損傷が、未改質バブルを含む複合体よりも少ないことを示している。さらに、粒子が混練機の口に適切に供給されたため、60ml毎分の吐出流量を維持することができた。混練機のダイプレートから吐出された複合体は白色であった。押し出された複合体は非常に可撓性が高く、破断まで約5〜8インチ伸びた(図4)。
【0101】
iM30k中空ガラスバブルを3M Corporation(St.Paul,MN)より入手した。バブルの密度は約0.62g/ccであった。中空ガラス球体を高い体積配合率で複合体に上首尾に配合すると、密度が非常に低くなるとともに、場合によっては他の利点(すなわち低い熱および音響伝導率)も得られるであろうと想定されていた。NZ−12の量を0〜3重量パーセントの範囲で変化させてガラスビーズに適用した。ペレット配合を本発明者らの3穴ダイプレートを用いて19mm同方向回転二軸押出機で実施した。本発明者らは、本発明者らの目標体積水準に近づくように供給速度を十分に制御した。パック密度の計算を用いて、比重0.6のガラスビーズ対比重1.9のTHVポリマーの比を確認し、生成した試料中のガラスビーズ対ポリマーの比を逆算した。さらに、ガラスビーズをポリマー粉末と一緒に機械の口に添加した。一般に行われることであるが、中空球体の剪断による損傷を低減するためにガラスを溶融ポリマーに加えると有利であろう。配合物は19mm混練機の滞留時間に影響を受けやすい。この材料は機械の中を常に移動していないと即座に焼けてしまうであろう。次いで断面形状が19mm×3mmの異形ダイを用いて1インチの単軸押出機で押出成形を行った。温度設定は、THV220Aベースの配合物の配合および押出成形に用いられる典型的なものと同じ(配合:185℃の一定温度プロファイル、異形押出:バレル1=180℃、バレル2=150℃、バレル3=150℃、ダイ=150℃)。全体を通じて加工記録を付けた。押出成形された細片からASTMダンベル(タイプIV)を打ち抜いた後、引張試験に付した。標線間距離を1インチとして歪みを標準化した。以下の表2のデータはガラス球体/THV複合体材料を用いて得られた結果の記録である。
【0102】
【表2】

【0103】
試料3fにおいては、所望のガラスビーズ充填水準を達成するために2パスを用いた。この手法は、ガラスに関し懸念される損傷の可能性を回避しながら所望の充填水準に到達させるのに最も上手く機能した。試料d、e、およびfについては後日に引張試験を行った(作製から約2ヵ月後)ところ、破断伸びに不利な変化はなかった。上の表の括弧内参照)。
【0104】
ガラスの体積充填率を約50%、ガラス上のiM30k上のNZ−12の適用量を2%とした場合は、複合体の破断歪み(%)が高くなった。興味深いことに、配合量の高い複合体(ガラスビーズが約65容量%の試料f)の破断歪みが、改質剤1%で処理したガラス47%を配合した複合体試料(試料c)を上回った。図3を参照されたい。このデータは、界面改質剤が弾性およびガラスとポリマーとの混和性を向上させる効果を有することを示している。上述の実験から、界面改質剤により中空ガラス球体とフッ素系ポリマーとの界面強度が変化することが分かる。体積充填率が約50%である場合、好ましい特性を維持するためには配合量を2%とすることが必要である。図5を参照されたい。この結果は、50%を超える配合量を達成することは可能であるが、これを機能させるには改質剤配合量をより高くする必要があることを示している。
【0105】
タイヤ側壁コンパウンド中の中空ガラスバブル
これらの実験に用いる標準的なタイヤ側壁ゴムコンパウンドは、Continental Carbon Company(Houston,TX)で調製されたものを入手した。中空ガラスバブルiM30kは3Mより入手した。タイヤ側壁コンパウンドをまず2本ロールミルで帯状にした後、指定量のiM30k(未被覆または被覆物)を加えて混合し、最終コンパウンドの形態にした。被覆されたiM30kは未被覆のiM30kと比較してコンパウンド中に最も混合しやすかった。得られたコンパウンドに関し以下のASTM法に従い加硫特性および物理的性質について評価を行った。結果を以下に示す。
加硫レオロジー(Cure rheology):試験は、Alpha Technologies Moving Die Rheometer(MDR)Model 2000を用いて、ASTM D5289−93aに従い、160℃、予備加熱なし、特定時間(elapsed time)12分、振幅角度0.5°として未加硫の配合試料について実施した。規定時間内に平坦性も最大トルク(M(H))も得られない場合は最小トルク(M(L))および到達した最大トルクの両方を測定した。トルクがM(L)よりも2単位高くなる時間(「t(s)2」)、トルクがM(L)+0.5(M(H)−M(L))に等しい値に到達する時間(「t’50」)、およびトルクがM(L)+0.9(M(H)−M(L))(「t’90」)に到達する時間も測定した。
プレス加硫:特段の指定がない限り、約6.9メガパスカル(MPa)で10分間160℃でプレスすることにより、物理的性質測定用の寸法150×150×2.0mmの試料シートを調製した。
物理的性質:ASTMダイDを用いて切り抜いたプレス加硫シートを試験片として、ASTM D412−92を用いて破断引張強さ、破断伸び、様々な伸びにおけるモジュラスを測定した。MPa単位で報告する。
硬さ:試料をASTM D2240−85A法を用いてタイプA(2)ショアデュロメータで測定した。単位はショアAスケールのポイントで報告する。
引裂き強さ:ASTMダイCを用いて切り抜いたプレス加硫シートを試験片として、ASTM D624−00を用いて引裂き強さを測定した。kN/m単位で報告する。
【0106】
タイヤ用途
本発明の一態様は、中空ガラス微小球、ゴム配合物、および他の従来のタイヤ配合成分を合一することにより形成される複合体を含む層を有するタイヤ部分を有するタイヤに関する。このタイヤ部分は、典型的には、タイヤ構造の内層を含む。重要なタイヤ構造の1つとして、タイヤ側壁またはタイヤトレッド部分を挙げることができる。本発明者らは、界面改質剤の被覆を有する中空ガラス微小球、ゴム配合物、および従来のタイヤ配合成分を組み合わせることによって、高い構造完全性を有する一方で軽量化されたタイヤを得ることができることを見出した。物理的により軽量なタイヤを用いることによって、様々な装輪車輌の燃費効率が向上する場合が多い。本発明者らは、タイヤビード、側壁またはトレッド部分(タイヤの層または区域または部品を含む)に、界面改質剤が被覆された中空ガラス微小球をタイヤゴム配合物中に分散させた改善されたタイヤ配合物を含有させることにより、改善されたタイヤを得ることができることを見出した。本発明の改善されたタイヤ配合物に使用される界面改質剤は、中空ガラス微小球とゴム配合処方との会合を改善する。カップリングも共有結合も伴わないこの物理的性質上の密接な会合により、ゴム配合物の所望の性質を低下させることなく最大限の軽量化が行われる。本発明者らは、ゴム成分および中空ガラス微小球に共有結合を形成させることができる反応試剤またはカップリング剤は粘弾特性を実質的に低下させる傾向にあり、今度はそれによってタイヤの実用寿命および他の有利な面を損なう可能性があるため、望ましくないことを見出した。
【0107】
従来のタイヤ構造は多くの形態に様々な材料を使用している。タイヤトレッドはゴム補強用カーボンブラック、シリカ、および他の加硫剤または構造用材料を含むゴム組成物から作製されている。トレッド材料は、可撓性を有するが類似のゴム配合物を含むタイヤカーカス上に、典型的には密接に関連する製造技法により形成されている。
【0108】
本発明のタイヤは、多くの部品の組立体であり、製造設備で成型した後に、プレス内で加熱および加圧下に加硫されることにより最終タイヤ構造が形成される。加熱を行うことによりゴム配合物が架橋する重合反応が促進されて有用なゴム組成物となる。この加硫または火山(volcanic)ポリマーには、タイヤの接地面の圧縮を可能にするが、元の形状への低および高速での弾性復元を可能にする弾性が生じる。タイヤは複数の独立した部品から作製されており、これらを組み立てることによって最終構造となる。タイヤのインナーライナーは、空気透過性を低下させるあらゆる量の添加剤と配合されて押出成形されたゴムシートである。このインナーライナーは、長い使用期間に亘ってゴムタイヤに高い空気圧を確保させるものである。タイヤのボディプライは、ゴムの層、布の層、ゴムの第2層ならびに強度およびランフラット性能をもたらす他の部品から構成されるカレンダ加工されたシートである。速度および車輌重量に応じて、タイヤは2〜5以上の層を有することができる。タイヤ側壁は補強されていない異形押出品である。側壁配合物によって耐摩耗性および耐環境性がもたらされる。側壁は熱および酸化を不安定化する。タイヤ構造はゴムコンパウンドに内包された高強度スチールワイヤを含み、これがタイヤ構造に機械的強度および安定性をもたらしている。エイペックスおよびビード構造は、タイヤの剛直なビードと可撓性インナーライナーおよびボディプライの組立体との間の緩衝材となる三角形の異形押出品である。タイヤは、典型的にはバイアスまたはラジアルプライベルトのいずれかを含む。この種のベルトは、典型的には、ゴム層、隙間無く配されたスチールコードおよびさらなるゴム層から構成されるカレンダ加工されたシートを含む。ベルトはタイヤの可撓性を保持しながら強度および耐性をもたらす。トレッドはタイヤカーカスを囲む厚肉の異形押出品である。トレッドのコンパウンドは、耐熱および耐酸化性に加えて耐摩耗性および静止摩擦を証明または付与する添加剤を含む。タイヤの多くは、トレッドをスチールベルトによる機械的摩耗から隔離するために、例えば、ベルト集合体(belt package)とトレッドとの間に形成することができる押出成形部品を含む。このような技法を用いてタイヤ内部構造を隔離することにより、タイヤの寿命を改善することができる。タイヤ部品は、典型的には、ポリイソプレンまたは他の従来のエラストマー材料等の天然ゴムまたは合成ゴムから作製されている。エラストマーとしては、スチレンブタジエン共重合体、ポリブタジエンポリマー、ハロ−ブチルゴム等が挙げられる。タイヤ配合物は、補強および摩耗特性を得るためのカーボンブラック、シリカ、硫黄架橋化合物、加硫促進剤等、酸化防止剤、耐オゾン化合物、ならびに織布およびスチール織布および繊維も含有する。
【0109】
タイヤ工場での加工は従来、配合、部品製造、成型、および加硫に分けられる。
【0110】
配合は、ゴムコンパウンドのバッチを混合するために必要な原料をすべて合一する操作である。各部品は、その部品に求められる特性に応じて異なる原料を混合した配合ゴムである。混合は、原料をブレンドして均質な材料にするためにこれらに機械的作用を加える工程である。密閉型ミキサーは、装入されたゴムを添加剤と一緒に剪断するために、大型ハウジング内に逆回転する2本のローターを備えるものが多い。混合は、原料を所望の順序で練り込むために3または4段階で実施される。剪断動作により相当な熱が発生するため、加硫を確実に開始させないようにローターおよびハウジングを両方とも水冷することによって十分な低温が維持される。
【0111】
混合後のゴム装入材料はシュートに落下されて押出スクリューによりローラダイに供給される。別法として、バッチを開放式ラバーミルバッチオフシステムに落下させてもよい。ミルは逆回転する2本のロールから構成され、1本はゴムにさらなる機械的作用を加える鋸歯状突起を有し、厚肉のゴムシートが製造される。シートは細片形態でロールから引き抜かれる。細片を冷却し、タルクをまぶし、パレット箱に寝かせる。この時点における理想的なコンパウンドは材料が非常に均一に分散したものであろう。しかしながら、実際は分散がかなり不均一である。これは、ミキサー、ハウジング、およびローター内に高温および低温部がある、ローターの隙間が広すぎる、ローターの摩耗、流路が十分に循環しないなど幾つかの原因がある。その結果として、カーボンブラックの偏りに加えてカーボンブラックの塊もあちこちに存在する可能性があり、ゴムまたは添加剤が十分に混合されているとは言えない。
【0112】
タイヤ配合工程においては、ダウン(down)またはゴム材料が典型的には混合装置に加えられ、混合が開始され、粉末成分がゴムにブレンドされる。本発明者らは中空ガラス球体をゴム単独または従来の粉末成分を含むゴムに練り込むのが難しいことを見出している。中空ガラスの低密度および微細な性質に加えてガラスとゴムとの間で表面性質が異なるため、粉末中空ガラス球体を容易にゴム材料中に練り込むことができない。本発明者らは、まず低密度ガラスである未被覆の中空ガラス球体を単独でまたは他の粉末成分と一緒にミキサーに加え、次いでさらなる分量のゴムを加えることが可能であることを見出した。この添加順序を用いることにより材料をゴム配合物中に上首尾に練り込むことができる。中空ガラス球体を用いるタイヤ配合物の製造において、続いて従来の配合技法を用いようとする場合、驚くべきことに、中空ガラス球体を有効量の界面改質剤で前処理しておけば、従来の処理を用いることが可能であることを見出した。このような処理においては、有効量の界面改質剤が中空ガラス球体の表面被覆として形成される。この前被覆ステップを用いることにより、ガラス粒子をゴム配合物(単独または他の粉末成分との組合せ)にそのまま練り込むことが可能になる。
【0113】
部品は製造工程別に、カレンダ加工、押出成形、およびビード成型の3つに分けられる。押出機は、スクリューおよびバレル、スクリュー駆動装置、ヒーター、およびダイから構成される。押出機はコンパウンドに2つの状態すなわち熱および圧力を印加する。押出機のスクリューはまた、スクリューの剪断動作によりコンパウンドをさらに混合する。コンパウンドはダイを通じて押し出され、その後、異形押出品が連続オーブンで加硫され、これを冷却することにより加硫過程が停止され、スプールに巻き取るかまたは所定の長さに切断される。多くの場合、タイヤトレッドは、4種の異なるコンパウンド(通常は、ベースコンパウンド、コアコンパウンド、トレッドコンパウンド、およびウイングコンパウンド)を加工する4つのスクリューを有する4層共押出機(quadraplex extruder)を用いて4種の構成要素が押出成形される。押出成形は側壁異形品およびインナーライナーにも用いられる。カレンダ機は工程の最後に用いられる一連の高圧ローラである。織布のカレンダ加工では、織布の層が上側および下側のゴムシートの間に挟持されたものが製造される。スチールカレンダ加工はスチールコードを用いて同様に行われる。カレンダ加工はボディプライおよびベルトの製造に用いられる。クリールルームはカレンダ加工に供給される何百もの織布またはワイヤスプールを収容する施設である。カレンダ加工では、下流設備を利用してカレンダ加工された部品が裁断およびスプライスされる。
【0114】
タイヤ成型はすべての部品をタイヤ成型ドラムで組み立てる工程である。タイヤ成型機(TBM)は手動操作式でも完全自動化されていてもよい。典型的なTBMの操作には、インナーライナー、ボディプライ、および側壁をドラムの周囲に巻き付け、ビードを配置して、集合体をビード上で折り返す第1段階操作が含まれる。第2段階操作においては、ベルト集合体およびトレッドが取り付けられ、このグリーンタイヤが膨張によって成形される。すべての部品はスプライスが必要である。インナーライナーおよびボディプライは四角い端部をオーバーラップさせてスプライスされる。トレッドおよび側壁は接合端を斜めに切断するスカイブ切断により接合される。ベルトは端部同士をオーバーラップさせずにスプライスされる。スプライスが過度に重いかまたは非対称の場合は、力の変動、バランス、バルジの特性(bulge parameter)に不具合が生じるであろう。スプライスが過度に軽量であるかまたは開口部がある場合は外観不良の原因となり得、場合によってはタイヤが破損する可能性がある。TBM工程の最終製造物はグリーンタイヤと呼ばれ、グリーンは未加硫状態にあることを指す。
【0115】
加硫は、グリーンタイヤを最終形状にするために金型内で加圧し、ゴムおよび他の材料間の化学反応を促すために熱エネルギーを与える工程である。この工程においては、グリーンタイヤが自動的に金型下半部のビードシート上に移送され、ゴム製ブラダーがグリーンタイヤ内に装入され、金型が閉合されるとブラダーが膨らむ。金型が閉合されて締結されたら、グリーンタイヤが金型内に流れ込み、金型内でトレッドパターンがもたらされて側壁に文字が刻印されるようにブラダーの圧力が昇圧される。ブラダーには、水蒸気、熱水、不活性ガス等の再循環する熱交換媒体が充填される。加硫温度は350±40°Fの範囲にあり、圧力は約350±25PSIである。乗用車用タイヤの加硫は約15分間で行われる。加硫の最後には圧力を抜き、金型を開放し、タイヤを金型から取り出す。タイヤは、冷却時にタイヤが完全に膨張した状態で保形されるようにするPCIすなわちポストキュアインフレータに装着してもよい。加硫プレスには機械および油圧の2種類の一般的な形態がある。機械プレスは金型をトグル機構により閉合して保圧するものであり、油圧プレスは機械的動作の原動力として作動油を用い、金型はブリーチロック機構で締結される。
【0116】
このような構造においては、本発明のガラス微小球およびゴムエラストマー組成物を様々なタイヤ部品に使用することができる。好ましくは、本発明の組成物は、タイヤカーカス、側壁、またはアンダートレッド部品を作製するための内部部品として使用される。
【0117】
ガラス微小球を含む従来のゴムタイヤ配合物を調製して、側壁構造を作製した。本発明者らの被覆の界面により、ガラスバブルのタイヤ配合物中への円滑な練り込みが可能となり、構造完全性に関し妥協することなく軽量化が達成される。本発明者らのデータを以下に示す。
【0118】
[タイヤ側壁配合物中のガラスバブルの評価]
タイヤ側壁コンパウンド中の中空ガラスバブル
これらの実験に用いる標準的なタイヤ側壁ゴムコンパウンドは、Continental Carbon Company(Houston,TX)で調製されたものを入手した。中空ガラスバブルiM30kは3Mより入手した。タイヤ側壁コンパウンドをまず2本ロールミルで帯状にした後、指定量のiM30k(未被覆または被覆物)を加えて混合し、最終コンパウンドの形態にした。被覆されたiM30kは、未被覆のiM30kと比較してコンパウンド中に最も混合しやすかった。得られたコンパウンドに関し以下のASTM法に従い加硫特性および物理的性質について評価を行った。結果を表2に示す。
加硫レオロジー:試験は、Alpha Technologies Moving Die Rheometer(MDR)Model 2000を用いて、ASTM D5289−93aに従い、160℃、予備加熱なし、特定時間12分、振幅角度0.5°として未加硫の配合試料について実施した。規定時間内に平坦性も最大トルク(M(H))も得られない場合は最小トルク(M(L))および到達した最大トルクの両方を測定した。トルクがM(L)よりも2単位高くなる時間(「t(s)2」)、トルクがM(L)+0.5(M(H)−M(L))に等しい値に到達する時間(「t’50」)、およびトルクがM(L)+0.9(M(H)−M(L))(「t’90」)に到達する時間も測定した。
プレス加硫:特段の指定がない限り、約6.9メガパスカル(MPa)で10分間160℃でプレスすることにより、物理的性質測定用の寸法150×150×2.0mmの試料シートを調製した。
物理的性質:ASTMダイDを用いて切り抜いたプレス加硫シートを試験片として、ASTM D412−92を用いて破断引張強さ、破断伸び、様々な伸びにおけるモジュラスを測定した。MPa単位で報告する。
硬さ:試料をASTM D2240−85A法を用いてタイプA(2)ショアデュロメータで測定した。単位はショアAスケールのポイントで報告する。
引裂き強さ:ASTMダイCを用いて切り抜いたプレス加硫シートを試験片として、ASTM D624−00を用いて引裂き強さを測定した。kN/m単位で報告する。
【0119】
タイヤ用途
本発明の一態様は、中空ガラス微小球、ゴム配合物、および他の従来のタイヤ配合成分を合一することにより形成された複合体を含む層を有するタイヤ部分を有するタイヤに関する。このタイヤ部分は、典型的には、タイヤ構造の内層を含む。重要なタイヤ構造の1つとして、タイヤ側壁またはタイヤトレッド部分を含むものを挙げることができる。本発明者らは、界面改質剤の被覆を有する中空ガラス微小球、ゴム配合物、および従来のタイヤ配合成分を組み合わせることによって高い構造完全性を有する一方で軽量化されたタイヤを得ることができることを見出した。物理的により軽量なタイヤを用いることによって様々な装輪車輌の燃費効率が向上する場合が多い。本発明者らは、タイヤビード、側壁またはトレッド部分(タイヤの層または区域または部品を含む)に、界面改質剤が被覆された中空ガラス微小球をタイヤゴム配合物中に分散させた改善されたタイヤ組成物を含有させることにより、改善されたタイヤを得ることができることを見出した。本発明の改善されたタイヤ配合物に使用される界面改質剤は、中空ガラス微小球とゴム配合処方との会合を改善する。カップリングも共有結合も伴わないこの物理的性質上の密接な会合により、ゴム配合物の所望の性質を低下させることなく最大限の軽量化が行われる。本発明者らは、ゴム成分および中空ガラス微小球に共有結合を形成させることができる反応試剤またはカップリング剤は粘弾特性を実質的に低下させる傾向にあり、今度はそれによってタイヤの実用寿命および他の有利な面を損なう可能性があるため、望ましくないことを見出した。
【0120】
タイヤ工場の加工は従来、配合、部品製造、成型、および加硫に分けられる。タイヤ配合工程においては、ゴム材料が典型的には混合装置に加えられ、混合が開始され、粉末成分がゴムにブレンドされる。本発明者らは、中空ガラス球体をゴム単独または従来の粉末成分を含むゴムに練り込むのが難しいことを見出している。中空ガラスの低密度および微細な性質に加えてガラスとゴムとの間で表面性質が異なるため、粉末中空ガラス球体を容易にゴム材料中に練り込むことができない。本発明者らは、まず低密度ガラスである未被覆の中空ガラス球体を単独でまたは他の粉末成分と一緒にミキサーに加え、次いでさらなる分量のゴムを加えることが可能であることを見出した。この添加順序を用いることにより材料をゴム配合物中に上首尾に練り込むことができる。中空ガラス球体を用いるタイヤ配合物の製造において、続いて従来の配合技法を用いようとする場合、驚くべきことに、中空ガラス球体を有効量の界面改質剤で前処理しておけば、従来の処理を用いることが可能であることを見出した。このような処理においては、界面改質剤を約0.005〜8.0重量パーセント含む有効量の界面改質剤が中空ガラス球体の表面被覆に形成される。この前被覆ステップを用いることにより、本発明者らの粒子をゴム配合物(単独または他の粉末成分との組合せ)にそのまま練り込むことが可能になる。
【0121】
タイヤを製造する様々な部品およびタイヤ材料が合一されるタイヤ成型工程において、本発明のガラス微小球およびゴムエラストマー組成物を様々なタイヤ部品に使用することができる。好ましくは、本発明の組成物は、タイヤカーカス、側壁またはアンダートレッド部品を作製するための内部部品として使用される。
【0122】
ガラス微小球を含む従来のゴムタイヤ配合物を調製して、タイヤ側壁構造を作製した。本発明者らの被覆の界面により、ガラスバブルのタイヤ配合物中への円滑な練り込みが可能となり、構造完全性に関し妥協することなく軽量化が達成される。
【0123】
[ガラスバブルを含むタイヤ側壁コンパウンドの密閉式混合に関する研究]
手順および試験方法
これらの実験に用いる標準的なタイヤ側壁ゴムコンパウンドは、Continental Carbon Company(Houston,TX)で調製されたものを入手した。コンパウンドのうちの1種はカーボンブラックを50phr含み、他は5phr含むものとした。中空ガラスバブルiM30kは3Mより入手した。タイヤ側壁コンパウンドをまず2本ロールミルで帯状にした後、指定量のiM30kまたは5000(未被覆または被覆物)を加えて混合し、最終コンパウンドの形態にした。被覆されたiM30kは未被覆のiM30kと比較してコンパウンド中に最も混合しやすかった。得られたコンパウンドに関し以下のASTM法に従い加硫特性および物理的性質について評価を行った。
加硫レオロジー:試験は、Alpha Technologies Moving Die Rheometer(MDR)Model 2000を用いて、ASTM D5289−93aに従い、160℃、予備加熱なし、特定時間12分、振幅角度0.5°として未加硫の配合試料について実施した。規定時間内に平坦性も最大トルク(M(H))も得られない場合は最小トルク(M(L))および到達した最大トルクの両方を測定した。トルクがM(L)よりも2単位高くなる時間(「t(s)2」)、トルクがM(L)+0.5(M(H)−M(L))に等しい値に到達する時間(「t’50」)、およびトルクがM(L)+0.9(M(H)−M(L))(「t’90」)に到達する時間も測定した。
ムーニースコーチ:ASTM D1646−06に準拠して未加硫の配合試料について試験を実施した。
プレス加硫:約6.9メガパスカル(MPa)で10分間160℃でプレスすることにより、物理的性質測定用の寸法150×150×2.0mmの試料シートを調製した。
物理的性質:ASTMダイDを用いて切り抜いたプレス加硫シートを試験片として、ASTM D412−92を用いて破断引張強さ、破断伸び、様々な伸びにおけるモジュラスを測定した。MPa単位で報告する。
硬さ:試料をASTM D2240−85A法を用いてタイプA(2)ショアデュロメータで測定した。単位はショアAスケールのポイントで報告する。
引裂き強さ:ASTMダイCを用いて切り抜いたプレス加硫シートを試験片として、ASTM D624−00を用いて引裂き強さを測定した。kN/m単位で報告する。
【0124】
表3に示すタイヤ側壁コンパウンドをすべて標準的なFarrel実験室用BRバンバリーで混合した。従来の2パス混合を採用した。1パス目(促進剤および硫黄を除くすべての成分)を160℃で排出し、2パス目(促進剤および硫黄を含む)は100℃で排出した。まず、従来の混合(ポリマーをバンバリーに加えた後に乾燥物を加えることを含む)によって未被覆のiM30Kを60phr含むコンパウンドを作製しようとしたがうまくいかなかった。コンパウンドは一つにまとまろうとしなかった。次は、まず乾燥物、次いでポリマーをバンバリーに添加するアップサイドダウン方式の混合を試した。この方法を用いて、未被覆のiM30KおよびIMが被覆されたiM30Kを30および60phrを含むコンパウンドを混合した。IMが被覆されたiM30Kを60phr含むコンパウンドは従来の方法でも上首尾に混合された。
【0125】
【表3】

【0126】
【表4】

【0127】
混合に要する時間および電力で測定されるように、改質されたガラスバブルは未被覆のガラスバブルよりもコンパウンドに練り込むのが容易であった(1aを他のコンパウンドと比較)。時間および電力に関する利点に加えて、従来の混合方法を用いてタイヤ配合物中に練り込むことができたのは界面改質されたガラスバブルのみであり、未被覆のガラスバブルの場合はアップサイドダウン方式で混合しなければならなかった。予期されたことではあるが、アップサイドダウン方式を用いることによりガラス破壊が増加した。最後に、ガラスバブルを他の成分と一緒に加えることにより物理的性質が改善される。
【0128】
ガラスビーズおよび中空球体に関する研究
中実ガラスビーズを入手した。ビーズの粒度は中実球体粒子の充填理論に基づき選択した。中空ガラス球体の最終的な充填挙動は中空ガラス球体が狭い粒度分布を有することにより制限される。入手可能なビーズの粒度がバブルよりも幅広いことから、このビーズを界面改質して、中空ガラスバブルの代用として使用した。充填量が増加することを示すために、2種類の粒度の中実ガラスビーズを購入し、粉末の充填挙動を測定するために使用した。結果を以下の表5に示す。
【0129】
【表5】

【0130】
異なる粒度のガラス粒子を用いることにより充填密度が増大することが明白である。この知見を用いて、異なる粒度の中空ガラスバブルを作製してブレンドした場合に、連続相中の最終的なガラスバブル配合率を増加させることができる。さらに、側壁の比重を、現在用いられている水準を下回るように低下させることができる中空ガラスバブル配合量が達成できるであろう。また、界面改質された中空ガラス球体の充填密度が未改質のガラスバブルよりも増加することにも注目されたい。
【0131】
熱可塑性樹脂内の熱伝導性
中空ガラスバブルを充填したナイロン対未充填ナイロンの熱伝導性試験を実施した。試料はH.B.Fuller Co.ナイロン(ポリアミド)中に3MK1中空ガラス球体を50容量%を含むブレンドとした。
【0132】
修正ホットワイヤー法を利用したMathis TC−30熱伝導率計を用いて試験を行った。未充填樹脂試料の測定値は0.23±0.01W・K−1−1であった。微小球充填試料の測定値は0.11±0.01W・K−1−1であった。中空ガラス球体をポリマー複合体中に用いることにより熱伝導率が52%低下した。対照としての基準物質としてデルリンを使用した。基準の測定値は、一般に認められている熱伝導率である0.38W・K−1−1であった。
球状粒子を不規則形状の粒子と一緒に用いることのレオロジー的利点
さらに、球状粒子を用いることにより複合体中の流動学的性質が向上した。凹凸粒子(TDIタングステン)および平滑粒子(Ervin Industries S70炭素鋼)を界面改質した。粒子をDyneon PVDF 11008ポリマーに練り込んだ。19mmB&P二軸混練機を用いて球状粒子対粗い粒子を3種類の比率で使用した。この比は(1)すべて凹凸粒子、(2)球状:凹凸50/50容量%、または(3)すべて球状である。各粒子比に関し、ポリマー相内の粒子体積配合量を、過トルクとなるまで体系的に増加させた。溶融温度、トルク、および圧力を記録した。
【0133】
球状粒子が存在することにより図1に示すように流動学的性質が向上した。凹凸粒子および50/50ブレンド粒子と比較すると、球状粒子は所与の粒子配合量における溶融温度を低下させるとともに、過トルクが発生するまでの総粒子配合量も高くなる。完全に球状の粒子を配合した場合、混練機はすべての粒子配合量で過トルクを起こすことがなく、評価を行ったすべての体積配合量で運転された。凹凸粒子が装置に過トルクを発生させた配合量を超えると50/50ブレンド粒子の流動学的性質が球状粒子を上回ることは予期せぬことであった。
【0134】
本発明の複合体は複合体中の粒子の性質または複合体全体の流動学的性質のいずれかを利用する多くの用途に使用することができる。粘弾性材料は、押出成形、射出成形、圧縮成形等の従来の熱可塑性ポリマー形成技法を用いる物体を形成することができる。本発明の複合体は、輸送(自動車および航空用途等)、塗料、腐食、汚れ、錆等の物質のいずれかの除去に用いる研磨用途、高密度(6〜17g・cm−3)または低密度(0.2〜2g・cm−3)が有用な用途、狩猟または魚釣り用途、または基盤もしくは装着ウェイト(mounting weight)が必要な装着用途(mounting application)等の多くの特定用途に使用することができる。特定の用途としては、魚釣り用ルアーおよびジグ、サンドペーパーやサンディングブロック等に使用される酸化アルミニウム、シリカ、またはざくろ石を有する研磨パッド、Scotchbrigh(登録商標)パッドのように使用される表面洗浄用洗浄剤付き研磨パッド、ブレーキパッド(酸化アルミニウムまたはざくろ石)、Wankel(登録商標)またはロータリーエンジン用アペックスシール、燃料用途(ライナー、タンク、シール)、エンジンまたはドライブトレーンのカウンターウェイト、自動車またはトラックのホイールバランスウェイトが挙げられる。
【0135】
大部分の粒子の粒度が約5ミクロンを超える中空ガラスおよびセラミック、無機、非金属、または鉱物粒子を含む、無機中空ガラス球体、セラミック、非金属、または鉱物粒子/ポリマー複合体を作製することができる。本発明者らは、界面改質剤(IM)は、ポリマーおよび粒子の密接な会合(但し、ポリマーにも粒子にも実質的に共有結合していない)を促進する粒子の外部被覆を提供する有機材料であると考えている。使用可能な改質剤の最小量は、約0.005〜8重量%または約0.02〜3重量%等である。このようなIMの被覆は約0.10〜1ミクロンの厚みを有することができる。粒子の粒度(P)は約5〜1000、10〜200、5〜300、10〜300、15〜300、または75〜300ミクロンとなり得る。
【0136】
複合体の密度は約0.2〜5g・cm−3、0.2〜2g・cm−3、0.2〜0.8g・cm−3となり得る。複合体はポリマー相および界面改質剤を含む粒子被覆を含むことができる。この複合体は、引張強さがベースポリマーの約0.1〜15倍、約0.1〜5倍、約0.2〜10倍、約0.3〜10倍であり、引張伸びはベースポリマーの約5%および100%であり、ポリオレフィン(および高密度ポリエチレン)、ポリ塩化ビニル、含フッ素ポリマー相等の熱可塑性樹脂等のポリマー中に、粒子の大部分の粒度が約5〜1000ミクロンである無機非金属粒子を含んでいてもよい。複合体の引張強さは約2MPaを超えることができ、粒子の粒子形態は1〜10であり、粒子の円形度は12.5〜25または13〜20である。別法として、複合体の引張強さは約2MPaを超え、非金属、無機、または鉱物粒子は、粒子形態が1〜10であり円形度が13〜20の粒子を含む。複合体の引張強さはベースポリマーの約0.1〜10倍であり、引張伸びはベースポリマーの約10%および100%である。複合体の引張強さはベースポリマーの約0.1〜5倍であり、引張伸びはベースポリマーの約15%および100%である。粒子は粒度(P)が約15〜1200ミクロンの鉱物、粒度(P)が約10ミクロンを超えるセラミック、粒度(P)が約15〜250ミクロンの中実ガラス球体、粒度(P)が約5〜1000、10〜200、5〜300、10〜300、15〜300、または75〜300ミクロンのシリカサンドまたはケイ酸ジルコニウム、酸化アルミニウム、ざくろ石、または他の粒子を含む。
【0137】
ポリマーは、含フッ素ポリマー、含フッ素エラストマー、ポリアミド、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、合成ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(高密度ポリエチレンを含む)やポリプロピレン等のポリオレフィン(高密度ポリオレフィン等)等のまたは他のこの種のポリマーまたは混合物を含んでいてもよい。粒子は、界面改質剤の被覆を複合体を基準として約0.01〜3重量%有していてもよい。粒子の排除体積は約13容量%〜約70容量%または約13容量%〜約60容量%である。
【0138】
得られた複合体は、押出し機から押出されたときに剪断速度(thermoplastic shear)が少なくとも5sec−1であり、密度が0.9g・cm−3未満であり、密度が約0.2〜1.4g・cm−3である。
【0139】
好ましいタイヤ配合物においては、複合体は合成ゴムポリマーを含む。粒子は2種類の異なる非金属粒子組成物から得られた粒子の混合物を含む。
【0140】
粒子は少なくとも1種の非金属粒子組成物および少なくとも1種の金属粒子組成物の混合物を含む。複合体の粒子は、界面改質剤の被覆を、複合体を基準として約0.005〜8重量%含んでいてもよい。
【0141】
部品は、魚釣り用ルアーまたはジグ、洗浄用材料を含有するように作製してもよい研磨パッド、ブレーキパッド、ライナー、タンク、またはシール等の燃料部品、ドライブトレーンのカウンターウェイト、自動車、トラックのホイールバランスウェイトを含んでいてもよい。
【0142】
本発明の複合体材料は、粒度が約5μを超える中空ガラス微小球を約30〜87容量パーセントおよび界面改質剤の被覆を約0.005〜5重量パーセントを含む、中空ガラス微小球およびポリマー複合体を含むことができる。この複合体はポリマー相も含み、ポリマーの密度は17g・cm−3を超えてもよい。この複合体は、複合体密度が約0.4〜5g・cm−3、約0.4〜2g・cm−3または約0.4〜0.8g・cm−3であってもよい。複合体は引張強さがベースポリマーの約2〜30倍、引張伸びがベースポリマーの約5%〜100%またはベースポリマーの約20%〜100%であってもよい。さらに複合体は、引張強さがベースポリマーの約10〜20倍であり、引張伸びがベースポリマーの約15%〜90%であってもよい。押出成形される場合は、複合体の押出し機から押出されたときに剪断速度は少なくとも約5〜15sec−1であり、引張強さが少なくとも約0.2または1.0Mpaであってもよい。さらに複合体は、充填度が複合体の約30容量パーセントまたは約50容量パーセントを超えてもよい。複合体の中空ガラス微小球は、粒度Pが約10〜1000ミクロン、又は、約10〜300μ、より具体的には約10〜200の粒子を含む粒度分布を有する。中空ガラス微小球を組み合わせた本発明の複合体は、粒度が微小球と少なくとも5μだけ異なる第2の粒子を有していてもよい。同様に、複合体は、粒度が式P≧2PまたはP≦0.05P(式中、Pは中空ガラス微小球の粒度であり、Pは粒子の粒度である)で定められるような中空ガラス微小球および第2の粒子を有していてもよい。複合体粒子は、中空ガラス微小球とは別に、粒度が約10〜約1000μの範囲にある実質的に任意の他の粒子を含んでいてもよい。この種の粒子としては、金属粒子、中実ガラス球体、第2の中空ガラス微小球、および無機鉱物、セラミック粒子、またはこれらの混合物を挙げることができる。中空ガラス球体の円形度は、実質的に円形の粒子であることを示す15未満であり、一方、複合体を用いる本発明の他の粒子材料の円形度は、凹凸または非晶質粒子の特徴を示す円形度である12.5超であってもよい。本発明の組成物に使用されるポリマーとしては、ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、天然または合成ゴム、ポリ塩化ビニル、含フッ素ポリマー、または含フッ素エラストマー等の様々な熱可塑性材料が挙げられる。複合体は、粒子の5容量%超の粒度Pが約10〜約200ミクロンの範囲にあり、粒子の10容量%超が約5〜1000ミクロンの範囲にある分布を有する粒子を有していてもよい。粒子は異なる非金属組成の粒子の混合物を有していてもよい。複合体は界面改質剤を約0.01〜4重量%含む。複合体は有機もしくは無機顔料または有機蛍光染料をさらに含む。
【0143】
中空ガラス微小球およびポリマー複合体は、密度が0.10g・cm−3を超え、かつ5g・cm−3未満であり、粒度が8ミクロンを超える中空ガラス微小球を約90〜30容量%と、ポリマー相を約10〜70容量%とを含むことができ、この微小球は界面改質剤を約0.005〜8重量%含む被覆を有し、複合体密度は約0.4〜15g・cm−3である。密度は約0.4〜5g・cm−3、約0.4〜2g・cm−3または約0.4〜0.8g・cm−3であってもよい。
【0144】
この複合体を含む成形された物品は、中空ガラス微小球を約87〜50容量%含み、粒子の少なくとも10重量%が約10〜100ミクロンの範囲内にあり、粒子の少なくとも10重量%が約100〜500ミクロンの範囲内にある粒度分布を有し、特定用途の場合は密度が約0.4〜0.8g・cm−3であってもよい。この種の用途としては、請求項1に記載の複合体を含み、複合体層の熱伝導率が従来のポリマー複合体層の熱伝導率の50%または85%未満である断熱層、断熱ガラスユニットに用いることができるシーラント層、接着層、音伝導率を低下させる防音層、衝撃が印加された後に、構造中に使用されている構造部材を回復させる複合体層を備える、耐衝撃性が改善された保護層(この構造は締結具を用いて組み立てらており、構造部材の締結具保持性が改善されている)、気体物質輸送の障壁として作用するバリア層であって、アルゴン、窒素、または大部分が窒素である混合気体の層の透過率を少なくとも50%低減するバリア層が挙げられる。
【0145】
この複合体は、加硫ゴム、界面改質剤の被覆を約0.005〜8重量%有する中空ガラス微小球を約30〜87容量%を含むタイヤ組成物または配合物に使用することができる。この種の組成物は、タイヤゴム配合物を配合する方法を用いて作製することができ、この方法は、界面改質剤約0.005〜8重量%の被覆を有する中空ガラス微小球を約30〜80容量%を、未加硫ゴムを含むタイヤ配合物混練機に加えることを含む。タイヤゴム配合物は、加硫ゴム;界面改質剤の被覆約0.001〜5重量%を有する中空ガラス微小球を約1〜10phr;カーボンブラックを約1〜50phr;プロセス油を約1〜50phr;加硫剤を約0.1〜10phr;および加硫促進剤を約0.1〜10phrを含み、これは、タイヤゴム配合物を配合する方法によって製造することができ、この方法は、約0.0005〜8重量%の界面改質剤の被覆を有する中空ガラス微小球を、未加硫ゴムを含む混練機中のタイヤ配合物に加えることを含む。
【0146】
上の明細書に本発明の複合体技法を実施可能な程度に開示したが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく本発明の他の実施形態も作製可能である。したがって本発明は、以下に添付する特許請求の範囲において実施される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ガラス微小球およびポリマーの複合体であって、
(a)前記複合体を基準として0.005〜8重量%の界面改質剤の被覆を有する、粒度が約5μmを超える中空ガラス微小球を30〜87容量%と、
(b)ポリマーの相と、
を含む複合体。
【請求項2】
前記複合体の密度が0.2〜5g・cm−3である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ポリマーの密度が1.7g・cm−3を超える、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記複合体の引張強さが前記ポリマーの0.1〜10倍である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記複合体の引張伸びが前記ポリマーの5%〜100%である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記複合体の引張強さが少なくとも0.2MPaであり、剪断速度が少なくとも5sec−1である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記複合体が、30容量%を超える前記中空ガラス微小球を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記中空ガラス微小球の粒度Pが5〜300μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
粒度(P)が5〜1000μmである中実ガラス球体をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記ポリマーは、高密度ポリオレフィンを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
中空ガラス微小球およびポリマーの複合体であって、
(a)密度が0.10g・cm−3を超えて5g・cm−3未満であり、粒度が8μmを超える中空ガラス微小球を90〜30容量%と、
(b)ポリマーの相を10〜70容量%と
を含み、
前記微小球が、界面改質剤を0.005〜3重量%含む被覆を有し、かつ
前記複合体の密度が0.20〜15g・cm−3である、ことを特徴とする複合体。
【請求項12】
前記複合体の密度が0.2〜5g・cm−3である、ことを特徴とする請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
請求項11に記載の複合体を含む成形品であって、
前記複合体は、87〜50容量%の中空ガラス微小球を含み、前記中空ガラス微小球は、その少なくとも10重量%が10〜100ミクロンの範囲にあり、その少なくとも10重量%が100〜1000ミクロンの範囲にある粒度分布を有する、ことを特徴とする成形品。
【請求項14】
前記複合体の密度が0.2〜0.8g・cm−3である、ことを特徴とする請求項12に記載の物品。
【請求項15】
タイヤゴム配合物であって、
(a)加硫可能なゴムと、
(b)0.0005〜8重量%の界面改質剤の被覆を有する中空ガラス微小球と、
を含むことを特徴とするタイヤゴム配合物。
【請求項16】
タイヤゴム配合物を配合する方法であって、前記方法は、0.0005〜8重量%の界面改質剤の被覆を有する中空ガラス微小球を、未加硫ゴムを含む混練機中のタイヤ配合物に加える工程を含む、ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−525485(P2012−525485A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508730(P2012−508730)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/032969
【国際公開番号】WO2010/127117
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511261282)ツンドラ コンポジッツ, エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】TUNDRA COMPOSITES, LLC
【住所又は居所原語表記】1823 Buerkle Road, White Bear Lake, Minnesota 55110 U.S.A.
【Fターム(参考)】