説明

複合前面保護板

【課題】薄くても耐衝撃性が高く、好ましくは耐擦傷性も高い透光性前面保護板を提供する。
【解決手段】透光性の硬質層とその両面に少なくとも一つの機能を持つ機能層とを積層してなる複合前面保護板であって、機能層の厚みが各々1〜50μmであり、硬質層の厚みが100〜600μmであり、複合前面保護板の全光線透過率が90%以上で、50%衝撃破壊エネルギー(JIS K5600、ASTM D2794、ISO6272)が70mJ以上である複合前面保護板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合前面保護板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機器、特に光学機器において、外部への光出射又は外部からの光入射により光学機能を発揮する光学機能部が使用されている。
【0003】
このような光学機能部は外部に面する表面が光透過性を有するように構成されている。
【0004】
例えば、フラットディスプレイの一種である液晶表示装置においてバックライトにより背後から面照明される液晶表示素子では、液晶セルの後面側及び前面側に偏光板が配置されており、液晶表示素子の前面、即ち液晶表示装置の前面は前面側偏光板で構成される。
【0005】
また、太陽電池装置の前面は、起電力素子であるPN接合セルの透明電極で構成されている。
【0006】
更に、表示機能と入力機能とを備えた静電容量タイプのタッチパネルの前面は、表面側のパターン状透明導電膜で構成されている。
【0007】
以上のような光学機能部の表面は、その保護のための保護板(保護シート、保護フィルム及び保護層等と称されるものをも含む)により覆われるのが一般的である。
【0008】
このような保護板としては、従来、ポリメチルメタクリレート(PMMA)板、メチルメタクリレート−スチレン(MS)樹脂板、ポリカーボネート(PC)板又はガラス板が使用されている。
【0009】
また、例えば、特許文献1には、ガラス等と粘着層を介して硬質ハードコートフィルムを積層し、高い表面硬度を保持できる保護粘着フィルムが開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、衝撃吸収層と衝撃拡散層とから構成された耐衝撃性能を有する平面画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−95064号公報
【特許文献2】特開2008−191336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような透光性前面保護板としては透過光量低減を避けるために可能な限り厚みが薄いことが好ましく、外部物体(機器を操作する手指及び用具等を含む)の擦過接触に対する耐久性、即ち耐擦傷性が可能な限り高いことが好ましく、外部物体の衝突の際の衝撃に対する耐久性、即ち耐衝撃性が可能な限り高いことが好ましい。
【0013】
しかしながら、上記のポリメチルメタクリレート(PMMA)板、メチルメタクリレート−スチレン(MS)樹脂板、ポリカーボネート(PC)板又はガラス板からなる従来使用されている保護板はいずれも以上のような要求特性の全てを十分に満たすものではない。
【0014】
このような状況において、特許文献1に記載されている保護シートは、粘着弾性体組成物が持つ粘弾性により、情報表示面を構成するガラス板等に直接粘着することができると共に、応力緩和性によって情報表示面を保護するものとして提案されている。
【0015】
しかしながら、この保護シートは耐擦傷性には優れているが、耐衝撃性に関する具体的な記載がなく、情報表示面を保護するシートとして十分な耐衝撃性を備えているとは言えない。
【0016】
また、特許文献2に記載されている衝撃吸収層と衝撃拡散層との積層体は、衝撃吸収層が動的貯蔵粘弾性率及び厚みで規定され、液晶パネルのガラス基板を保護できるものとして提案されている。
【0017】
しかしながら、この積層体の表層であるハードコート処理プラスチックフィルムの耐擦傷性に関する具体的な記載がなく、液晶パネルの保護シートとして十分な耐擦傷性を備えているとは言えない。
【0018】
本発明は、以上のような従来の技術の有する課題を解決し、薄くても耐衝撃性が高く、好ましくは耐擦傷性も高い透光性前面保護板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、透光性の硬質層とその両面に少なくとも一つの機能を持つ機能層とを積層してなる複合前面保護板であって、機能層の厚みが各々1〜50μmであり、硬質層の厚みが100〜600μmであり、複合前面保護板の全光線透過率が90%以上で、50%衝撃破壊エネルギー(JIS K5600、ASTM D2794、ISO6272)が70mJ以上である複合前面保護板を要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、薄くても硬度が高く且つ耐衝撃性が高い透光性前面保護板が提供されることから、液晶表示装置等の光学機能部を保護するための保護板として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)本発明の複合前面保護板の具体例を示す模式的断面図 (b)本発明の複合前面保護板に粘着層が積層された具体例を示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1(a)及び図1(b)に本発明の複合前面保護板の実施形態を示す。これらの実施形態では、複合前面保護板が光学機器である液晶表示装置を構成する液晶表示素子(液晶パネル)の表面の保護に適用された例が示されており、図1(a)及び図1(b)には本発明の複合前面保護板と共に液晶パネルも図示されている。
【0024】
本発明の複合前面保護板には、光学機器に適用することを可能とするために高い光学特性が必要である。また、本発明の複合前面保護板には、外部物体の擦過接触の際の形状維持が可能なように硬質であることが好ましく、更に、外部物体の衝突の際の衝撃に対する耐久性、即ち耐衝撃性が可能な限り高いことが好ましい。例えば、光学特性として全光線透過率や複屈折等が挙げられるが、本発明の複合前面保護板の全光線透過率は90%以上である。また、本発明の複合前面保護板の前面に配置される面は外部物体の擦過接触に対する耐久性として耐擦傷性を有することが好ましい。本発明の複合前面保護板の前面に配置される面の耐擦傷性としては、鉛筆引っかき硬度(JIS K5600−5−4)が好ましくは3H以上、より好ましくは4H以上、更に好ましくは5H以上である。また、本発明の複合前面保護板の前面に配置される面は耐衝撃性も可能な限り高いことが好ましい。以下、本発明について詳述する。

硬質層

本発明において、硬質層は図1(a)及び図1(b)における硬質層2で示される層である。
【0025】
硬質層は100〜600μmの厚みを有する。硬質層の厚みを100〜600μmとすることにより、本発明の複合前面保護板の50%衝撃破壊エネルギー(JIS K5600、ASTM D2794、ISO6272)(以下、「本耐衝撃性」という)を70mJ以上とすることができる。
【0026】
硬質層としては、本発明の複合前面保護板の全光線透過率を90%以上とするために、例えば、メチルメタクリレート単位を50質量%以上含有する樹脂層が挙げられる。
【0027】
メチルメタクリレート単位を50質量%以上含有する樹脂層を得るために使用される原料としては、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物(イ)が挙げられる。
【0028】
活性エネルギー線硬化型組成物(イ)としては、例えば、重合性単量体及び活性エネルギー線重合開始剤(イ)を含有する組成物が挙げられる。
【0029】
また、本発明においては、活性エネルギー線硬化型組成物(イ)中に必要に応じて重合体(イ)並びに熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、離型剤及び重合禁止剤等の各種添加物を含有することができる。
【0030】
重合性単量体の組成としては、例えば、メチルメタクリレート50〜100質量%及び他の共重合可能な単量体0〜50質量%を含有するものが挙げられる。
【0031】
他の共重合可能な単量体としては、例えば、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメチルメタクリレート以外のアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体;2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の窒素含有単量体;アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等の架橋性単量体が挙げられる。これらは1種で又は2種以上を併せて使用できる。
【0032】
尚、本発明においては、「(メタ)アクリ・・・」は「メタクリ・・・」又は「アクリ・・・」を示す。
【0033】
活性エネルギー線重合開始剤(イ)としては、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生し、硬化した樹脂の透明性を阻害しない限り、特に制限されず、各種の活性エネルギー線重合開始剤を使用することができる。
【0034】
活性エネルギー線重合開始剤(イ)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等のリン化合物が挙げられる。
【0035】
活性エネルギー線重合開始剤(イ)の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184(商品名))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製ダロキュア1173(商品名))及びベンゾインエチルエーテル(例えば、精工化学(株)製セイクオールBEE(商品名))が挙げられる。
【0036】
活性エネルギー線硬化型組成物(イ)中の活性エネルギー線重合開始剤(イ)の含有量としては、重合速度及び重合時間の点で、重合性単量体及び重合体(イ)の合計量100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。また、活性エネルギー線重合開始剤(イ)の含有量としては、樹脂層の光学性能及び耐候性の点で、重合性単量体及び重合体(イ)の合計量100質量部に対して2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0037】
活性エネルギー線硬化型組成物(イ)中に含有することができる重合体(イ)としては、例えば、得られる硬質層の組成としてメチルメタクリレート単位を50質量%以上含有するものとなる組成のものが好ましい。
【0038】
重合体(イ)の具体例としては、重合性単量体の単独重合物又は共重合物が挙げられるが、硬質層の光学性能の観点から、ポリメチルメタクリレートが好ましい。
【0039】
活性エネルギー線硬化型組成物(イ)の具体例としては以下の組成が挙げられる。
【0040】
重合性単量体:メチルメタクリレート(MMA)60質量部
重合体:ポリメチルメタクリレート(商品名:VHK000、三菱レイヨン(株)製)40質量部
活性エネルギー線重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.3質量部
離型剤:ジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(商品名:エアロゾルOT−100、三井サイアナミッド(株)製)0.05質量部

機能層

本発明において、機能層は図1(a)及び図1(b)における機能層3及び3’で示される層である。
【0041】
本発明において、機能層は硬質層2の両面に積層されている。
【0042】
機能層の厚みは1〜50μmである。
【0043】
また、機能層の機能としては本耐衝撃性を有する。
【0044】
本発明においては、本耐衝撃性以外の機能層の機能としては、例えば、物理化学的機能、光学的機能及び電気的機能が挙げられる。
【0045】
物理化学的機能としては、例えば、耐擦傷性機能、防汚機能及び除菌機能が挙げられる。
【0046】
光学的機能としては、例えば、防眩機能、反射防止機能、着色機能、光拡散機能、光偏向機能、集光機能、偏光機能及び遮光機能が挙げられる。
【0047】
電気的機能としては、例えば、導電機能及び除電機能が挙げられる。
【0048】
これらの機能層の機能は機能層を構成する材料により発揮されるものであってもよいし、機能層の表面構造により発揮されるものであってもよい。
【0049】
機能層の機能として耐擦傷性を付与する場合、機能層の耐擦傷性としては好ましくは3H以上、より好ましくは4H以上、更に好ましくは5H以上である。耐擦傷性を有する機能層は積層体表面の耐擦傷性を向上させるものであり、例えば、耐擦傷性をもたらす各種の硬化性化合物を膜状に硬化させたものが挙げられる。
【0050】
硬化性化合物としては、例えば、紫外線硬化性化合物のようなラジカル重合系の硬化性化合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等の縮合重合系の硬化性化合物が挙げられる。これらの硬化性化合物は、電子線、放射線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化するものでも加熱により硬化するものでもよい。
【0051】
硬化性化合物は1種を単独で又は2種以上を併せて使用できる。
【0052】
本発明においては、硬化性化合物としては、生産性及び物性の観点から、紫外線によって硬化される紫外線硬化性化合物が好ましい。
【0053】
紫外線硬化性化合物としては、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体及び活性エネルギー線重合開始剤(ロ)を含有する紫外線硬化性組成物が生産性の観点から好ましい。
【0054】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体としては、例えば、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物及び多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物が挙げられる。
【0055】
1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の3官能以上のポリオールのポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、多価カルボン酸又はその無水物/多価アルコール/(メタ)アクリル酸の組合せとして、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0057】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体のその他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モル当たり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、15,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系モノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレートのポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;及びウレタンポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
活性エネルギー線重合開始剤(ロ)としては、硬化層を形成するために使用される活性エネルギー線硬化型組成物に使用することができる活性エネルギー線重合開始剤(イ)と同様のものが挙げられる。
【0059】
活性エネルギー線重合開始剤(ロ)の添加量としては、紫外線硬化性化合物の硬化性の観点から紫外線硬化性組成物中に0.1質量%以上が好ましく、機能層の良好な色調を維持する観点から10質量%以下が好ましい。
【0060】
活性エネルギー線重合開始剤(ロ)は1種を単独で又は2種以上を併せて使用できる。
【0061】
本発明においては、硬化性化合物中には、必要に応じて、スリップ性向上剤、レベリング剤、無機微粒子、紫外線吸収剤、HALS等の光安定剤等の各種添加剤を含有することができる。各種添加剤の含有量としては、本発明の複合前面保護板の透明性の観点から、紫外線硬化性化合物中に10質量%以下が好ましい。
【0062】
耐擦傷性を有する機能層の膜厚としては、本発明の複合前面保護板の表面硬度、反り及び外観の観点から、1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましく、2〜15μmが更に好ましい。
【0063】
本発明においては、例えば、図1における機能層3の表面構造としては特に限定されず、平滑構造、凹凸構造等、目的に応じた構造とすることができる。

粘着層

本発明において、粘着層は図1(b)における粘着層4で示される層である。
【0064】
本発明において、粘着層は複合前面保護板の前面に配置されない面と液晶セルLCとの間に積層される。
【0065】
粘着層の厚みは、50〜500μmを有する。粘着層の厚みを50〜500μmとすることにより、本発明の複合前面保護板の本耐衝撃性を70mJ以上とすることができる。
【0066】
粘着層としては、本発明の複合前面保護板の全光線透過率を90%以上とするために、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート単位を50質量%以上含有する樹脂層が挙げられる。
【0067】
2−エチルヘキシルアクリレート単位を50質量%以上含有する樹脂層を得るために使用される原料としては、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物(ロ)が挙げられる。
【0068】
活性エネルギー線硬化型組成物(ロ)としては、例えば、重合性単量体及び活性エネルギー線重合開始剤(ハ)を含有する組成物が挙げられる。
【0069】
また、本発明においては、活性エネルギー線硬化型組成物(ロ)中に必要に応じて重合体(ロ)並びに熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、離型剤及び重合禁止剤等の各種添加物を含有することができる。重合性単量体の組成としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート50〜100質量%及び他の共重合可能な単量体0〜50質量%を含有するものが挙げられる。
【0070】
他の共重合可能な単量体としては、硬質層を形成するために使用される活性エネルギー線硬化型組成物(イ)に使用することができる単量体と同様のものが挙げられる。これらは1種で又は2種以上を併せて使用できる。
【0071】
活性エネルギー線重合開始剤(ハ)としては、硬質層を形成するために使用される活性エネルギー線硬化型組成物に使用することができる活性エネルギー線重合開始剤(イ)と同様のものが挙げられる。
【0072】
活性エネルギー線硬化型組成物(ロ)中の活性エネルギー線重合開始剤(ハ)の含有量としては、重合速度及び重合時間の点で、重合性単量体及び重合体の合計量100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。また、活性エネルギー線重合開始剤(ハ)の含有量としては、樹脂層の光学性能及び耐候性の点で、重合性単量体及び重合体の合計量100質量部に対して2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0073】
活性エネルギー線硬化型組成物(ロ)中に含有することができる重合体としては、例えば、得られる硬質層の組成として2−エチルヘキシルアクリレート単位を50質量%以上含有するものとなる組成のものが好ましい。
【0074】
重合体(ロ)の具体例としては、重合性単量体の単独重合物又は共重合物が挙げられるが、硬質層の光学性能の観点から、ポリ2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0075】
活性エネルギー線硬化型組成物(ロ)の具体例としては以下の組成が挙げられる。
【0076】
重合性単量体:2−エチルヘキシルアクリレート(商品名:EHA、三菱化学(株)製)66.5質量部
重合性単量体:ポリブチレングリコール(商品名:PBOM、三菱レイヨン(株)製)5質量部
重合体:ポリ2−エチルヘキシルアクリレート(商品名:PEHA、根上工業(株)製)28.5質量部
活性エネルギー線重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.3質量部
離型剤:ジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(商品名:エアロゾルOT−100、三井サイアナミッド(株)製)0.05質量部

複合前面保護板

本発明の複合前面保護板は硬質層の両面に機能層が積層されたものである。
【0077】
本発明の複合前面保護板は全光線透過率が90%以上で、本耐衝撃性が70mJ以上である。
【0078】
本発明の複合前面保護板には、必要に応じて、図1(b)に示すように、本発明の複合前面保護板の前面に配置されない面に透光性を有する粘着層を積層することができる。
【0079】
本発明の複合前面保護板を、液晶パネル等の光学機能部の保護のために光学機能部の表面に配置する方法としては、図1(a)のように本発明の複合前面保護板を光学機能部と非接触の状態とする方法及び図1(b)のように本発明の複合前面保護板を光学機能部と接触した状態とする方法のいずれでもよい。
【0080】
本発明の複合前面保護板の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0081】
まず、基材フィルムの表面に機能層の原料である硬化性化合物を塗布した後に、活性エネルギー線等により硬化性化合物を硬化させて機能層を有する積層フィルムを二枚得る。
【0082】
次いで、積層フィルムの機能層の表面に硬質層の原料である活性エネルギー線硬化型組成物を塗布した後に、さらに積層フィルムの機能層を活性エネルギー線硬化型組成物の接するように積層し、紫外線等により活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて、基材フィルム/機能層/硬質層/機能層/基材フィルムの積層体を得る。
【0083】
この後、基材フィルム/機能層/硬質層/機能層/基材フィルムの積層体の両面の基材フィルムを剥離して本発明の複合前面保護板を得る。
【0084】
本発明で使用される基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが挙げられる。
【0085】
基材フィルムの表面に機能層の原料である硬化性化合物を塗布する方法としては、例えば、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、フィルムカバー法及びディッピング法が挙げられる。
【0086】
機能層の原料である硬化性化合物を硬化させるために使用される活性エネルギー線の光源としては、例えば、高圧水銀灯が挙げられる。
【0087】
硬質層の原料である活性エネルギー線硬化型組成物を塗布する方法としては、機能層の原料である硬化性化合物を塗布する方法と同様の方法が挙げられる。
【0088】
硬質層の原料である活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために使用される活性エネルギー線の光源としては、例えば、ケミカルランプが挙げられる。
【0089】
図1(b)に示す粘着層を積層する前面保護板の製造方法としては、たとえば以下のような方法が挙げられる。
【0090】
まず、基材フィルムの表面に粘着層の原料である活性エネルギー線硬化型組成物を塗布した後に、粘着層側へ基材フィルムを積層し、活性エネルギー線等により、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて、基材フィルム/粘着層/基材フィルムを得る。
【0091】
次いで、基材フィルム/粘着層/基材フィルムの片側の基材フィルムのみを剥離し、基材フィルム/粘着層を得る。
【0092】
さらに、図1(a)の複合前面保護板を粘着層側へ積層し、基材フィルム/粘着層/機能層/硬質層/機能層を得る。
【0093】
この後、基材フィルム/粘着層/機能層/硬質層/機能層の基材フィルムを剥離して本発明の複合前面保護板を得る。
【0094】
粘着層の原料である活性エネルギー線硬化型組成物を基材フィルムへ塗布する方法としては、機能層の原料である硬化性化合物を塗布する方法と同様の方法が挙げられる。
【0095】
粘着層の原料である活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために使用される活性エネルギー線の光源としては、例えば、ケミカルランプが挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、実施例及び比較例で使用した化合物の略号は以下の通りである。また、実施例及び比較例で得られた複合前面保護板について以下に示す評価方法で評価した。
「MMA」:メタクリル酸メチル
「EHA」:アクリル酸2−エチルヘキシル(三菱化学(株)製、商品名)
「PBOM」:ポリブチレングリコール(三菱レイヨン(株)製、商品名)
「C6DA」:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
「TAS」:コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合混合物(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
「M−305」:ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(東亞合成(株)製、商品名)
「IRGACURE184」:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名)
「IRGACURE819」:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名)
「TINUVIN123」:デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名)
〔評価方法〕
(1)全光線透過率及びヘーズ値
日本電色工業(株)製のHAZE METER NDH2000(商品名)を用いてJIS K7136に示される測定法に準拠して、全光線透過率及びヘーズ値を測定した。
(2)50%破壊エネルギー
耐衝撃性の評価として、JIS K5600−5−3に示された測定方法に準拠して50%破壊エネルギーを測定した。尚、測定に際し、サンプルは50mm角にカットした積層体を使用し、鋼球径が16.0mmφで鋼球重量が16.7gの鋼球を使用し、初期落球高さを150mmとして落球試験を実施した。
(3)鉛筆硬度
耐擦傷性の評価として、JIS K5600−5−4に示される測定法に準拠して、鉛筆硬度を測定した。
〔実施例1〕
TAS/C6DA/M−305/TINUVIN123/IRGACURE819/IRGACURE184=30/25.4/6/0.3/0.12/2.4(質量比)の硬化性化合物を、PETフィルム(東山フィルム(株)製、FHC−H(商品名)、厚み188μm)の表面に、硬化後の機能層の厚みが10μmとなるようにバーコート法により塗布し、高圧水銀灯(120W/cm)で積算光量1,000mJ/cmの光量で紫外線照射し、機能層を有する積層フィルムを得た。
【0097】
上記の積層フィルムの機能層の表面に、アクリル樹脂(VHK000(商品名)、三菱レイヨン(株)製)40重量部、MMA60重量部及びIRGACURE184を0.3重量部含有する活性エネルギー線硬化型組成物を、硬化後の硬質層の厚みが0.4mmとなるように塗布し、更にその上に前記と同様の機能層を有する積層フィルムを活性エネルギー線硬化型組成物と機能層とが接するように積層した後に、ケミカルランプ(FL−20S(商品名)、東芝ライテック(株)製)で積算光量1000mJ/cmの光量で紫外線照射し、その後、PETフィルムを剥離し、100℃の熱風により3分間加熱して複合前面保護板を得た。
【0098】
得られた複合前面保護板の50%破壊エネルギーは146.4mJ、全光線透過率は92.2%、ヘーズ値は0.03%、鉛筆硬度は4Hであった。
〔実施例2〕
活性エネルギー線硬化型組成物を、硬化後の硬質層の厚みが0.2mmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして複合前面保護板を得た。
【0099】
得られた複合前面保護板の50%破壊エネルギーは76.6mJ、全光線透過率は92.2%、ヘーズ値は0.00%、鉛筆硬度は4Hであった。
〔比較例1〕
機能層の硬化後の厚みを20μm、活性エネルギー線硬化型組成物を、硬化後の硬質層の厚みが0.8mmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして複合前面保護板を得た。
【0100】
得られた複合前面保護板の全光線透過率は92.2%、ヘーズ値は0.03%、鉛筆硬度は4Hであった。複合前面保護板の50%破壊エネルギーは63.0mJであり、前面保護板としては不十分な値であった。
【0101】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明による複合前面保護板は、光学機器等、各種用途に好適である。
【符号の説明】
【0103】
1: 前面保護板
2: 硬質層
3,3’:機能層
4: 透光性粘着層
LC: 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の硬質層とその両面に少なくとも一つの機能を持つ機能層とを積層してなる複合前面保護板であって、機能層の厚みが各々1〜50μmであり、硬質層の厚みが100〜600μmであり、複合前面保護板の全光線透過率が90%以上で、50%衝撃破壊エネルギー(JIS K5600、ASTM D2794、ISO6272)が70mJ以上である複合前面保護板。
【請求項2】
機能層の機能の少なくとも一部は機能層の材質により発揮される請求項1に記載の複合前面保護板。
【請求項3】
機能層の機能の少なくとも一部は機能層の表面構造により発揮される請求項1に記載の複合前面保護板。
【請求項4】
機能層の機能の少なくとも1つの機能は耐擦傷性であり、鉛筆引っかき硬度(JIS K5600−5−4)が3H以上である請求項1に記載の複合前面保護板。
【請求項5】
硬質層がメチルメタクリレート単位を70質量%以上含有するものである請求項4に記載の複合前面保護板。
【請求項6】
機能層が分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物及び活性エネルギー線分解重合開始剤を含有する紫外線硬化性混合物である請求項5に記載の複合前面保護板。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の複合前面保護板の前面に配置されない面に透光性を有する粘着層を積層して得られる複合前面保護板であって、全光透過率が90%以上であり、50%衝撃破壊エネルギー(JIS K5600、ASTM D2794、ISO6272)が70mJ以上である複合前面保護板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−254573(P2012−254573A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129118(P2011−129118)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】