複合型巻線電子部品
【課題】寄生インダクタンスを減少させ、コイル本来の性能を劣化させることなく、ノイズを低減させることができる複合型巻線電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の複合型巻線電子部品は、入力端子と出力端子との間に外部端子を有する。コイル部とインピーダンス素子部が外部端子を介して直列に接続される。コイル部とインピーダンス素子部がコアに線材を巻回して形成される。本発明の複合型巻線電子部品は、コイル部とインピーダンス素子部が一体化した構造を有する。
【解決手段】
本発明の複合型巻線電子部品は、入力端子と出力端子との間に外部端子を有する。コイル部とインピーダンス素子部が外部端子を介して直列に接続される。コイル部とインピーダンス素子部がコアに線材を巻回して形成される。本発明の複合型巻線電子部品は、コイル部とインピーダンス素子部が一体化した構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばDC−DCコンバータの回路基板上に搭載される電子部品に関し、特に複合型巻線電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器において用いられる、リチウムイオンバッテリー等のバッテリーパックから供給される電圧を必要とする電圧に変換する同期整流タイプの降圧型DC−DCコンバータは、図11に示す様に、同期整流タイプの降圧型DC−DCコンバータを構成するIC50の出力端にコイルL3の一端を接続し、コイルL3の他端とアース間にコンデンサC2を接続し、コイルL3とコンデンサC2の接続点をIC50のフィードバック端に接続したものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
この種の同期整流タイプのDC−DCコンバータは、電気機器の多機能化に伴い、低消費電力化、小型化が望まれている。このような状況の中、この種の降圧型DC−DCコンバータでは、ICを低電圧で動作させて消費電力を小さくすると共に、DC−DCコンバータのICの出力側に接続されるコイルの形状を小さくする様にICの制御方法を改良し、制御速度(fsw=スイッチング周波数)を高速化させて回路の小型化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様なDC−DCコンバータのICから出力される電流は、高電流、かつ高速の三角波が重畳されており、そのエネルギーの変化速度も数百MHzになるといわれ、このエネルギーによるノイズも発生し易くなっている。例えば、6MHzで動作する同期整流タイプの降圧型DC−DCコンバータでは、200〜300MHz近傍でノイズが観測されている。現在、この様なノイズを除去するために、コンデンサC2近傍に、ノイズが発生する周波数帯で大きな減衰効果が得られる高周波用のコンデンサを接続することが行われている。
また、この様なDC−DCコンバータのICに接続されるコイルL3やコンデンサC2を電子機器の配線基板上で接続した場合、配線基板に電子部品を配置するスペースや配線パターンを引き回すスペースを設ける必要があり、コイルL3とコンデンサC2を接続するための配線パターンが長くなりやすく、この配線基板の配線パターンによって、コイルL3とコンデンサC2の接続点に、図12に示す様に、ぞれぞれ寄生インダクタンス61が発生し、DC−DCコンバータの効率が悪化すると共に、ノイズが発生し易くなるという問題があった。特に、従来のDC−DCコンバータのICが1MHz未満の速度でスイッチングされていたのに対し、近年のDC−DCコンバータのICでは6MHzを超える速度でスイッチングされており、数nHの誤差による位相差であっても波形制御に大きな影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
本発明は、寄生インダクタンスを減少させ、コイル本来の性能を劣化させることなく、ノイズを低減させることができる複合型巻線電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の複合型巻線電子部品は、入力端子と出力端子との間に外部端子を有する。コイル部とインピーダンス素子部が外部端子を介して直列に接続される。コイル部とインピーダンス素子部がコアに線材を巻回して形成され、且つ、一体化した構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合型巻線電子部品は、コイルとインピーダンス素子とを一体とし、入力端子と出力端子との間に外部端子を設ける。その外部端子を介してコイルとインピーダンス素子が直列に接続するように形成させるため、寄生インダクタンスを減少させ、コイル本来の性能を劣化させることなく、ノイズを低減することができる。そして、銅線などの線材を巻回した構造であるため低抵抗化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の複合型巻線電子部品を用いたDC−DCコンバータの回路図である。
【図2】本発明の第1実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図4】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品のコイル部の線材の引き出し方を説明する図である。
【図5】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品のコイル部の斜視図である。
【図6】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品のインピーダンス素子部の斜視図である。
【図7】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図8】本発明の第4実施例の複合型巻線電子部品のコイル部の斜視図である。
【図9】本発明の第4実施例の複合型巻線電子部品のインピーダンス素子部の斜視図である。
【図10】本発明の第4実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図11】従来のDC−DCコンバータの回路図である。
【図12】従来のDC−DCコンバータを説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に本発明の複合型巻線電子部品を用いたDC−DCコンバータの回路図を示す。図1から明らかなように、コイルL1は、一端が入力端子T1を介してDC−DCコンバータのIC10の出力端に接続され、他端が外部端子T2に接続される。インピーダンス素子Z1は一端が外部端子T2に接続され、他端が出力端子T3に接続される。インピーダンス素子Z1は、DC−DCコンバータのIC10から出力された電流が存在する低い周波数で機能する低インダクタンスL2と、ノイズが存在する高い周波数で機能する抵抗R1とからなる。コイルL1とインピーダンス素子Z1の接続点である外部端子T2は、コンデンサC1を介してアースされるとともに、DC−DCコンバータのIC10のフィードバック端にも接続される。
【0010】
このように形成された回路の一点鎖線で囲まれた部分が本発明の複合型巻線電子部品の等価回路となる。従って、本発明の複合型巻線電子部品は、DC−DCコンバータのIC10に接続されるコイルL1とインピーダンス素子Z1を一体に備えたものである。そのため、コイルL1の出力端とDC−DCコンバータのIC10のフィードバック端間に寄生インダクタンスを抑制することができる。また、電子機器の配線基板におけるコイルL1とインピーダンス素子Z1の配線パターンの設計が簡単になると共に、配線基板の形状の小型化にも有利である。さらに、コイルL1とインピーダンス素子Z1の配線距離を配線基板上で接続した場合よりも短くすることができる。
【実施例】
【0011】
(第1実施例)
図2を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第1実施例を説明する。図2に本発明の第1実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示す。図2に示す様に、磁性コア11に線材12を巻回してコイル部16とインピーダンス素子部17を連続で形成する。このとき、コイル部16とインピーダンス素子部17とが磁気的に結合しないようにする。例えば、コイル部16とインピーダンス素子部17とを離間して形成するか、もしくはコイル部16とインピーダンス素子部17の一方あるいは両方を閉磁路構造に形成すればよい。本実施例では閉磁路構造にするために、コイル16とインピーダンス素子部17の巻線部の表面に磁性樹脂を被覆した。次に、磁性コア11の1つの側面に入力端子13、外部端子14、出力端子15をめっき処理を用いて形成する。このとき、入力端子13はコイル部16の一端と接続する。外部端子14はコイル部16の他端とインピーダンス素子部17の一端と接続する。出力端子15はインピーダンス素子部17の他端と接続する。これより、コイル部16とインピーダンス素子部17は外部端子14を介して直列に接続する。
【0012】
このような複合型巻線電子部品を図1に示す回路に用いると、DC−DCコンバータのIC(10)から出力された電流が入力端子13(T1)から入力され、この入力された電流がコイル部16(L1)とインピーダンス素子部17(Z1)を介して出力端子15(T3)から負荷に出力されると共に、入力された電流の一部が外部端子14(T2)からDC−DCコンバータのIC(10)のフィードバック端とコンデンサ(C1)に出力される。このとき、入力された電流に混入したノイズはインピーダンス素子部17(Z1)の抵抗成分によって熱に変換されて除去され、出力端子15(T3)からはノイズを除いた電流が出力される。
【0013】
(第2実施例)
図3を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第2実施例を説明する。なお、第1実施例と共通する部分についての説明は割愛する。図3に本発明の第2実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示し、(b)は(a)と対向する方向からの斜視図である。図3に示す様に、第1実施例と同様に磁性コア21に線材22を巻回してコイル部26とインピーダンス素子部27を連続で形成した。このとき、コイル部26とインピーダンス素子部27とが磁気的に結合しないようにし、本実施例はコイル部26とインピーダンス素子部27のの表面を磁性樹脂で被覆して閉磁路となるようにした。磁性コア21の下面に並列するように入力端子23、外部端子24、出力端子25を金属フレームを用いて形成する。第1実施例と同様に、入力端子23はコイル部26の一端と接続する。外部端子24はコイル部26の他端とインピーダンス素子部27の一端と接続する。出力端子25はインピーダンス素子部27の他端と接続する。これより、コイル部26とインピーダンス素子部27は外部端子24を介して直列に接続する。
【0014】
(第3実施例)
図4〜図7を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第3実施例を説明する。なお、第1実施例および第2実施例と共通する部分についての説明は割愛する。図4に本発明の第3実施例で用いるコイル部の線材の引き出し方を説明する斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図5に本発明の第3実施例で用いるコイル部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図6に本発明の第3実施例で用いるインピーダンス素子部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図7に本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示す。
【0015】
まず、コイル部について説明する。図4に示す様に、磁性コア31に線材32を巻回し、線材32の両端をそれぞれ磁性コア31の隣り合う側面から引き出す。線材32の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。次に、図5に示す様に、金属フレームを用いて入力端子33、外部端子34a、出力端子35aを磁性コア31の下面に並列するように形成し、外部端子34aと出力端子35aは磁性コア31の下面から上面に引き出されるようにコ字状に形成してコイル部36を形成する。このとき、コイル部36の一端は入力端子33と接続し、他端は外部端子34aと接続するようにする。
【0016】
次に、インピーダンス素子部について説明する。図6に示す様に、磁性コア37に線材38を巻回し、磁性コア37の対向する側面側から下面に線材38の両端のそれぞれを引き出す。線材38の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。そして、磁性コア37の下面に金属フレームを用いて外部端子34bと出力端子35bを形成してインピーダンス素子部39を形成する。このとき、インピーダンス素子部39の一端は外部端子34bと接続し、他端は出力端子35bと接続するようにする。
【0017】
最後に、図7に示す様にコイル部36の上面にインピーダンス素子部39を積載し、はんだ等を用いて、外部端子34aと外部端子34b、出力端子35aと出力端子35bとを接合して導通させる。
【0018】
本実施例の複合型巻線電子部品は第1実施例と第2実施例とは異なり、コイル部36とインピーダンス素子部39を別々に形成し、コイル部36とインピーダンス素子部39の一方に入力端子、出力端子、外部端子を形成する。そして、コイル部36とインピーダンス素子部39の一方に他方を導通するように積載する。これにより、第1実施例と第2実施例と同様の動作を行うことができる。そして、本実施例の場合にはコイル部36とインピーダンス素子部39を別々に形成してそれらを組み合わせるため、回路上で要求される特性に合わせて、それぞれに最適なものを選択あるいは変更することが容易となる。
【0019】
(第4実施例)
図8〜図10を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第4実施例を説明する。第1実施例乃至第3実施例と共通する部分についての説明は割愛する。図8に本発明の第3実施例で用いるコイル部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図9に本発明の第3実施例で用いるインピーダンス素子部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図10に本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示す。
【0020】
まず、コイル部について説明する。図8に示す様に、磁性コア41に線材42を巻回し、線材42の両端をそれぞれ磁性コア41の隣り合う側面から引き出す。第3実施例同様に、線材42の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。次に、金属フレームを用いて入力端子43、外部端子44a、出力端子45aを磁性コア41の下面に並列するように形成する。第3実施例と異なる点は、入力端子45を中央ではなく磁性コア41の下面の端に沿うように形成し、外部端子44aを中央に形成する。そして、外部端子44aと出力端子45aは第3実施例と同様に、磁性コア41の下面から上面に引き出されるように形成してコイル部46を形成する。このとき、コイル部46の一端は入力端子43と接続し、他端は外部端子44aと接続するようにする。
【0021】
次に、インピーダンス素子部について説明する。図9に示す様に、磁性コア47に線材48を巻回し、磁性コア47の対向する側面側から下面に線材48の両端のそれぞれを引き出す。線材48の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。そして、磁性コア47の下面に金属フレームを用いて外部端子44bと出力端子45bを形成してインピーダンス素子部49を形成する。このとき、インピーダンス素子部49の一端は外部端子44bと接続し、他端は出力端子45bと接続するようにする。
【0022】
最後に、図10に示す様にコイル部46の上面にインピーダンス素子部49を積載し、はんだ等を用いて、外部端子44aと外部端子44b、出力端子45aと出力端子45bとを接合して導通させる。
【0023】
以上、本発明の複合型巻線電子部品の実施例を述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施例では入力端子、出力端子、外部端子をめっき処理と金属フレームを用いて形成したが、これに限定されることなく導電ペーストを用いる方法など、各種の方法を用いて形成してもよい。
【0024】
第1実施例と第2実施例において、同じ線材を用いてコイル部とインピーダンス素子部を連続で形成したが、異なる線材を用いて形成してもよい。そして、コイル部とインピーダンス素子部の磁性コアとして1つの磁性コアを用いたが、それぞれ別の磁性コアを用い、貼り付け等で一体化させてもよい。また、本実施例では磁性コアの形状を四角形状に形成したが、円状や多角形状など条件に合わせて適宜選択すればよい。
【0025】
第3実施例と第4実施例において、コイル部の上面にインピーダンス素子部を積載したが、インピーダンス素子部にコイル部を積載した構造でもよい。
【符号の説明】
【0026】
L1…コイル
Z1…インピーダンス素子
C1…コンデンサ
11、21、31、37、41、47…磁性コア
12、22、32、38、42、48…線材
13、23、33、43…入力端子(T1)
14、24、34a、34b、44a、44b…外部端子(T2)
15、25、35a、35b、45a、45b…出力端子(T3)
16、26、36、46…コイル部(L1)
17、27、39、49…インピーダンス素子部(Z1)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばDC−DCコンバータの回路基板上に搭載される電子部品に関し、特に複合型巻線電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器において用いられる、リチウムイオンバッテリー等のバッテリーパックから供給される電圧を必要とする電圧に変換する同期整流タイプの降圧型DC−DCコンバータは、図11に示す様に、同期整流タイプの降圧型DC−DCコンバータを構成するIC50の出力端にコイルL3の一端を接続し、コイルL3の他端とアース間にコンデンサC2を接続し、コイルL3とコンデンサC2の接続点をIC50のフィードバック端に接続したものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
この種の同期整流タイプのDC−DCコンバータは、電気機器の多機能化に伴い、低消費電力化、小型化が望まれている。このような状況の中、この種の降圧型DC−DCコンバータでは、ICを低電圧で動作させて消費電力を小さくすると共に、DC−DCコンバータのICの出力側に接続されるコイルの形状を小さくする様にICの制御方法を改良し、制御速度(fsw=スイッチング周波数)を高速化させて回路の小型化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様なDC−DCコンバータのICから出力される電流は、高電流、かつ高速の三角波が重畳されており、そのエネルギーの変化速度も数百MHzになるといわれ、このエネルギーによるノイズも発生し易くなっている。例えば、6MHzで動作する同期整流タイプの降圧型DC−DCコンバータでは、200〜300MHz近傍でノイズが観測されている。現在、この様なノイズを除去するために、コンデンサC2近傍に、ノイズが発生する周波数帯で大きな減衰効果が得られる高周波用のコンデンサを接続することが行われている。
また、この様なDC−DCコンバータのICに接続されるコイルL3やコンデンサC2を電子機器の配線基板上で接続した場合、配線基板に電子部品を配置するスペースや配線パターンを引き回すスペースを設ける必要があり、コイルL3とコンデンサC2を接続するための配線パターンが長くなりやすく、この配線基板の配線パターンによって、コイルL3とコンデンサC2の接続点に、図12に示す様に、ぞれぞれ寄生インダクタンス61が発生し、DC−DCコンバータの効率が悪化すると共に、ノイズが発生し易くなるという問題があった。特に、従来のDC−DCコンバータのICが1MHz未満の速度でスイッチングされていたのに対し、近年のDC−DCコンバータのICでは6MHzを超える速度でスイッチングされており、数nHの誤差による位相差であっても波形制御に大きな影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
本発明は、寄生インダクタンスを減少させ、コイル本来の性能を劣化させることなく、ノイズを低減させることができる複合型巻線電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の複合型巻線電子部品は、入力端子と出力端子との間に外部端子を有する。コイル部とインピーダンス素子部が外部端子を介して直列に接続される。コイル部とインピーダンス素子部がコアに線材を巻回して形成され、且つ、一体化した構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合型巻線電子部品は、コイルとインピーダンス素子とを一体とし、入力端子と出力端子との間に外部端子を設ける。その外部端子を介してコイルとインピーダンス素子が直列に接続するように形成させるため、寄生インダクタンスを減少させ、コイル本来の性能を劣化させることなく、ノイズを低減することができる。そして、銅線などの線材を巻回した構造であるため低抵抗化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の複合型巻線電子部品を用いたDC−DCコンバータの回路図である。
【図2】本発明の第1実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図4】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品のコイル部の線材の引き出し方を説明する図である。
【図5】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品のコイル部の斜視図である。
【図6】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品のインピーダンス素子部の斜視図である。
【図7】本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図8】本発明の第4実施例の複合型巻線電子部品のコイル部の斜視図である。
【図9】本発明の第4実施例の複合型巻線電子部品のインピーダンス素子部の斜視図である。
【図10】本発明の第4実施例の複合型巻線電子部品の斜視図である。
【図11】従来のDC−DCコンバータの回路図である。
【図12】従来のDC−DCコンバータを説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に本発明の複合型巻線電子部品を用いたDC−DCコンバータの回路図を示す。図1から明らかなように、コイルL1は、一端が入力端子T1を介してDC−DCコンバータのIC10の出力端に接続され、他端が外部端子T2に接続される。インピーダンス素子Z1は一端が外部端子T2に接続され、他端が出力端子T3に接続される。インピーダンス素子Z1は、DC−DCコンバータのIC10から出力された電流が存在する低い周波数で機能する低インダクタンスL2と、ノイズが存在する高い周波数で機能する抵抗R1とからなる。コイルL1とインピーダンス素子Z1の接続点である外部端子T2は、コンデンサC1を介してアースされるとともに、DC−DCコンバータのIC10のフィードバック端にも接続される。
【0010】
このように形成された回路の一点鎖線で囲まれた部分が本発明の複合型巻線電子部品の等価回路となる。従って、本発明の複合型巻線電子部品は、DC−DCコンバータのIC10に接続されるコイルL1とインピーダンス素子Z1を一体に備えたものである。そのため、コイルL1の出力端とDC−DCコンバータのIC10のフィードバック端間に寄生インダクタンスを抑制することができる。また、電子機器の配線基板におけるコイルL1とインピーダンス素子Z1の配線パターンの設計が簡単になると共に、配線基板の形状の小型化にも有利である。さらに、コイルL1とインピーダンス素子Z1の配線距離を配線基板上で接続した場合よりも短くすることができる。
【実施例】
【0011】
(第1実施例)
図2を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第1実施例を説明する。図2に本発明の第1実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示す。図2に示す様に、磁性コア11に線材12を巻回してコイル部16とインピーダンス素子部17を連続で形成する。このとき、コイル部16とインピーダンス素子部17とが磁気的に結合しないようにする。例えば、コイル部16とインピーダンス素子部17とを離間して形成するか、もしくはコイル部16とインピーダンス素子部17の一方あるいは両方を閉磁路構造に形成すればよい。本実施例では閉磁路構造にするために、コイル16とインピーダンス素子部17の巻線部の表面に磁性樹脂を被覆した。次に、磁性コア11の1つの側面に入力端子13、外部端子14、出力端子15をめっき処理を用いて形成する。このとき、入力端子13はコイル部16の一端と接続する。外部端子14はコイル部16の他端とインピーダンス素子部17の一端と接続する。出力端子15はインピーダンス素子部17の他端と接続する。これより、コイル部16とインピーダンス素子部17は外部端子14を介して直列に接続する。
【0012】
このような複合型巻線電子部品を図1に示す回路に用いると、DC−DCコンバータのIC(10)から出力された電流が入力端子13(T1)から入力され、この入力された電流がコイル部16(L1)とインピーダンス素子部17(Z1)を介して出力端子15(T3)から負荷に出力されると共に、入力された電流の一部が外部端子14(T2)からDC−DCコンバータのIC(10)のフィードバック端とコンデンサ(C1)に出力される。このとき、入力された電流に混入したノイズはインピーダンス素子部17(Z1)の抵抗成分によって熱に変換されて除去され、出力端子15(T3)からはノイズを除いた電流が出力される。
【0013】
(第2実施例)
図3を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第2実施例を説明する。なお、第1実施例と共通する部分についての説明は割愛する。図3に本発明の第2実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示し、(b)は(a)と対向する方向からの斜視図である。図3に示す様に、第1実施例と同様に磁性コア21に線材22を巻回してコイル部26とインピーダンス素子部27を連続で形成した。このとき、コイル部26とインピーダンス素子部27とが磁気的に結合しないようにし、本実施例はコイル部26とインピーダンス素子部27のの表面を磁性樹脂で被覆して閉磁路となるようにした。磁性コア21の下面に並列するように入力端子23、外部端子24、出力端子25を金属フレームを用いて形成する。第1実施例と同様に、入力端子23はコイル部26の一端と接続する。外部端子24はコイル部26の他端とインピーダンス素子部27の一端と接続する。出力端子25はインピーダンス素子部27の他端と接続する。これより、コイル部26とインピーダンス素子部27は外部端子24を介して直列に接続する。
【0014】
(第3実施例)
図4〜図7を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第3実施例を説明する。なお、第1実施例および第2実施例と共通する部分についての説明は割愛する。図4に本発明の第3実施例で用いるコイル部の線材の引き出し方を説明する斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図5に本発明の第3実施例で用いるコイル部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図6に本発明の第3実施例で用いるインピーダンス素子部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図7に本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示す。
【0015】
まず、コイル部について説明する。図4に示す様に、磁性コア31に線材32を巻回し、線材32の両端をそれぞれ磁性コア31の隣り合う側面から引き出す。線材32の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。次に、図5に示す様に、金属フレームを用いて入力端子33、外部端子34a、出力端子35aを磁性コア31の下面に並列するように形成し、外部端子34aと出力端子35aは磁性コア31の下面から上面に引き出されるようにコ字状に形成してコイル部36を形成する。このとき、コイル部36の一端は入力端子33と接続し、他端は外部端子34aと接続するようにする。
【0016】
次に、インピーダンス素子部について説明する。図6に示す様に、磁性コア37に線材38を巻回し、磁性コア37の対向する側面側から下面に線材38の両端のそれぞれを引き出す。線材38の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。そして、磁性コア37の下面に金属フレームを用いて外部端子34bと出力端子35bを形成してインピーダンス素子部39を形成する。このとき、インピーダンス素子部39の一端は外部端子34bと接続し、他端は出力端子35bと接続するようにする。
【0017】
最後に、図7に示す様にコイル部36の上面にインピーダンス素子部39を積載し、はんだ等を用いて、外部端子34aと外部端子34b、出力端子35aと出力端子35bとを接合して導通させる。
【0018】
本実施例の複合型巻線電子部品は第1実施例と第2実施例とは異なり、コイル部36とインピーダンス素子部39を別々に形成し、コイル部36とインピーダンス素子部39の一方に入力端子、出力端子、外部端子を形成する。そして、コイル部36とインピーダンス素子部39の一方に他方を導通するように積載する。これにより、第1実施例と第2実施例と同様の動作を行うことができる。そして、本実施例の場合にはコイル部36とインピーダンス素子部39を別々に形成してそれらを組み合わせるため、回路上で要求される特性に合わせて、それぞれに最適なものを選択あるいは変更することが容易となる。
【0019】
(第4実施例)
図8〜図10を参照しながら、本発明の複合型巻線電子部品の第4実施例を説明する。第1実施例乃至第3実施例と共通する部分についての説明は割愛する。図8に本発明の第3実施例で用いるコイル部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図9に本発明の第3実施例で用いるインピーダンス素子部の斜視図を示し、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図を示す。図10に本発明の第3実施例の複合型巻線電子部品の斜視図を示す。
【0020】
まず、コイル部について説明する。図8に示す様に、磁性コア41に線材42を巻回し、線材42の両端をそれぞれ磁性コア41の隣り合う側面から引き出す。第3実施例同様に、線材42の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。次に、金属フレームを用いて入力端子43、外部端子44a、出力端子45aを磁性コア41の下面に並列するように形成する。第3実施例と異なる点は、入力端子45を中央ではなく磁性コア41の下面の端に沿うように形成し、外部端子44aを中央に形成する。そして、外部端子44aと出力端子45aは第3実施例と同様に、磁性コア41の下面から上面に引き出されるように形成してコイル部46を形成する。このとき、コイル部46の一端は入力端子43と接続し、他端は外部端子44aと接続するようにする。
【0021】
次に、インピーダンス素子部について説明する。図9に示す様に、磁性コア47に線材48を巻回し、磁性コア47の対向する側面側から下面に線材48の両端のそれぞれを引き出す。線材48の表面に磁性樹脂を被覆して閉磁路を形成する。そして、磁性コア47の下面に金属フレームを用いて外部端子44bと出力端子45bを形成してインピーダンス素子部49を形成する。このとき、インピーダンス素子部49の一端は外部端子44bと接続し、他端は出力端子45bと接続するようにする。
【0022】
最後に、図10に示す様にコイル部46の上面にインピーダンス素子部49を積載し、はんだ等を用いて、外部端子44aと外部端子44b、出力端子45aと出力端子45bとを接合して導通させる。
【0023】
以上、本発明の複合型巻線電子部品の実施例を述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施例では入力端子、出力端子、外部端子をめっき処理と金属フレームを用いて形成したが、これに限定されることなく導電ペーストを用いる方法など、各種の方法を用いて形成してもよい。
【0024】
第1実施例と第2実施例において、同じ線材を用いてコイル部とインピーダンス素子部を連続で形成したが、異なる線材を用いて形成してもよい。そして、コイル部とインピーダンス素子部の磁性コアとして1つの磁性コアを用いたが、それぞれ別の磁性コアを用い、貼り付け等で一体化させてもよい。また、本実施例では磁性コアの形状を四角形状に形成したが、円状や多角形状など条件に合わせて適宜選択すればよい。
【0025】
第3実施例と第4実施例において、コイル部の上面にインピーダンス素子部を積載したが、インピーダンス素子部にコイル部を積載した構造でもよい。
【符号の説明】
【0026】
L1…コイル
Z1…インピーダンス素子
C1…コンデンサ
11、21、31、37、41、47…磁性コア
12、22、32、38、42、48…線材
13、23、33、43…入力端子(T1)
14、24、34a、34b、44a、44b…外部端子(T2)
15、25、35a、35b、45a、45b…出力端子(T3)
16、26、36、46…コイル部(L1)
17、27、39、49…インピーダンス素子部(Z1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間に外部端子を有し、
該外部端子を介してコイル部とインピーダンス素子部を直列に接続し、
該コイル部と該インピーダンス素子部がコアに線材を巻回して形成され且つ一体化した構造を有することを特徴とする複合型巻線電子部品。
【請求項2】
前記入力端子と前記出力端子と前記外部端子が、該複合型巻線電子部品の同一表面上に少なくともそれらの一部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の複合型巻線電子部品。
【請求項3】
前記インピーダンス素子部がビーズ素子である請求項1または請求項2に記載の複合型巻線電子部品。
【請求項4】
前記コイル部と前記インピーダンス素子部の接続点が接続された前記外部端子は半導体素子のフィードバック端に接続するための端子である請求項1乃至請求項3に記載の複合型巻線電子部品。
【請求項1】
入力端子と出力端子との間に外部端子を有し、
該外部端子を介してコイル部とインピーダンス素子部を直列に接続し、
該コイル部と該インピーダンス素子部がコアに線材を巻回して形成され且つ一体化した構造を有することを特徴とする複合型巻線電子部品。
【請求項2】
前記入力端子と前記出力端子と前記外部端子が、該複合型巻線電子部品の同一表面上に少なくともそれらの一部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の複合型巻線電子部品。
【請求項3】
前記インピーダンス素子部がビーズ素子である請求項1または請求項2に記載の複合型巻線電子部品。
【請求項4】
前記コイル部と前記インピーダンス素子部の接続点が接続された前記外部端子は半導体素子のフィードバック端に接続するための端子である請求項1乃至請求項3に記載の複合型巻線電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−79916(P2012−79916A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223571(P2010−223571)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
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