説明

複合型画像形成装置

【課題】 裁断マークやヘッダー、フッダー等の最大画像範囲外に印刷されるマークを大幅なコスト上昇を来たすことなく印刷できる複合型画像形成装置を提供する。
【解決手段】 孔版印刷部の用紙搬送方向下流側に位置するインクジェット印刷部において、用紙幅方向に延びる案内レール70に2つのインクジェット記録ヘッド26A、26Bが支持され、各インクジェット記録ヘッド26A、26Bは用紙幅方向にステッピングモータにより、互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動可能となっている。各インクジェット記録ヘッド26A、26Bは、孔版印刷部の最大画像形成幅Kを超えて移動し、A3ノビサイズの用紙2Eの最大画像範囲外に印刷される裁断マークMの位置に位置付けられ、裁断マークMを印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方式の異なる複数の印刷部を備えた複合型画像形成装置(以下、「ハイブリッド印刷装置」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷画像全体の中の一部分をカラー画像にしたり、一部分において1枚毎に異なる画像(カラー画像を含む)を印刷したいという要望があり、これに応えるべく、いわゆるハイブリッド印刷装置が開発、実用化されている。
ハイブリッド印刷装置では、例えば、ハガキや封筒、DM(ダイレクトメール)文書等での宛名が1枚毎に異なる場合、共通画像部(固定画像部)を大量印刷の場合にコスト的に有利な有版印刷(例えば孔版印刷)で行い、宛名等の可変画像部を、版を用いずにデータ制御だけで行う無版印刷(例えばインクジェット印刷)で行う方式となっている。
【0003】
孔版印刷装置にインクジェット印刷装置を組み合わせてなる従来のハイブリッド印刷装置では、インクジェット印刷装置のタイプとしてはライン固定方式とシリアル方式があり、いずれにおいてもインクジェット記録ヘッドの用紙搬送方向と直交する方向における長さ(最大画像形成幅)は、低コスト化の観点から、孔版印刷装置の同方向における最大画像形成幅内に設定されている。
特開2003−334993号公報には、インクジェット記録ヘッドを含むインクジェット印刷部全体をステッピングモータを駆動源として用紙搬送方向と直交する方向に移動させ、インクジェット印刷部における印刷用紙の中心位置を孔版印刷装置の用紙位置合わせ基準に合わせる構成が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−334993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、孔版印刷装置で用いられる用紙の最大サイズはA3であるが、A3サイズよりも大きいいわゆる「A3ノビサイズ」の用紙を用い、最大画像範囲外に裁断マークを印刷して印刷後に裁断して仕上げる印刷方式がある。
このような場合、孔版印刷装置のサーマルヘッドの長さを大きくすれば上記規格外サイズの用紙において裁断マーク(いわゆる十字マーク、あるいはトンボマーク)を印刷することができるが、そのためだけに規格外の長さのサーマルヘッドを搭載することは大幅なコスト上昇を来たし、不経済である。なお、サーマルヘッドの最大印字幅以下の用紙においては上記マーク形成は汎用サイズのサーマルヘッドで対応できる。
一方、インクジェット印刷装置側で裁断マークを印刷しようとしても、上述のように、インクジェット記録ヘッドの長さは孔版印刷装置の最大画像形成幅内に設定されており、ラインヘッドの長さを大きくした場合同様に大幅なコスト上昇を来たす。
このような問題は、裁断マークに限らず、ヘッダーやフッダー等の最大画像範囲外に印刷される他のマークについても同様に生じていた。
【0006】
本発明は、裁断マークやヘッダー、フッダー等の最大画像範囲外に印刷されるマークを大幅なコスト上昇を来たすことなく印刷できる複合型画像形成装置の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、版を用いて印刷を行う有版印刷部と、版を用いずに印刷を行う無版印刷部とを備えた複合型画像形成装置において、記録媒体の搬送方向と直交する方向における上記無版印刷部の最大画像形成幅が上記有版印刷部の同一方向における最大画像形成幅よりも小さく、且つ、上記無版印刷部が上記有版印刷部の最大画像形成幅を超えた位置で印刷可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の複合型画像形成装置において、上記無版印刷部が複数の印刷ヘッドを有し、記録媒体の搬送方向の両側において同時に印刷可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の複合型画像形成装置において、上記無版印刷部が記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動可能な印刷ヘッドを有していることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の複合型画像形成装置において、上記印刷ヘッドが複数設けられ、記録媒体の搬送方向の両側において同時に印刷可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の複合型画像形成装置において、上記印刷ヘッドが2つ設けられているとともに、記録媒体の搬送方向と直交する方向に延びる1つの軸に支持され、各印刷ヘッドは1つの駆動源により互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明では、請求項4記載の複合型画像形成装置において、上記印刷ヘッドが2つ設けられているとともに、記録媒体の搬送方向と直交する方向に延びる2つの軸に個別に支持されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の複合型画像形成装置において、上記各印刷ヘッドは1つの駆動源により互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明では、請求項1乃至7のうちの何れかに記載の複合型画像形成装置において、上記有版印刷部が孔版印刷方式の構成を有し、上記無版印刷部がインクジェット印字方式の構成を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、版を用いて印刷を行う有版印刷部と、版を用いずに印刷を行う無版印刷部とを備えた複合型画像形成装置において、記録媒体の搬送方向と直交する方向における上記無版印刷部の最大画像形成幅が上記有版印刷部の同一方向における最大画像形成幅よりも小さく、且つ、上記無版印刷部が上記有版印刷部の最大画像形成幅を超えた位置で印刷可能であることとしたので、有版印刷部における製版手段(サーマルヘッド等)を大きくすることなく、また、無版印刷部における最大画像形成幅を大きくすることなく、低コスト構成で最大画像範囲外に裁断マーク等を容易に印刷することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の複合型画像形成装置において、上記無版印刷部が複数の印刷ヘッドを有し、記録媒体の搬送方向の両側において同時に印刷可能であることとしたので、1回の搬送工程で最大画像範囲外における記録媒体の両側に裁断マーク等を容易に印刷することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の複合型画像形成装置において、上記無版印刷部が記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動可能な印刷ヘッドを有していることとしたので、最大画像範囲外に印刷すべき裁断マーク等のマークの印刷位置が異なっても自在に印刷できる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の複合型画像形成装置において、上記印刷ヘッドが複数設けられ、記録媒体の搬送方向の両側において同時に印刷可能であることとしたので、最大画像範囲外に印刷すべき裁断マーク等のマークの印刷位置が異なっても1回の搬送工程で自在に印刷できる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の複合型画像形成装置において、上記印刷ヘッドが2つ設けられているとともに、記録媒体の搬送方向と直交する方向に延びる1つの軸に支持され、各印刷ヘッドは1つの駆動源により互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動可能であることとしたので、位置合わせが容易であるとともに構成の簡易化を図ることができる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、請求項4記載の複合型画像形成装置において、上記印刷ヘッドが2つ設けられているとともに、記録媒体の搬送方向と直交する方向に延びる2つの軸に個別に支持されていることとしたので、記録媒体の両側でマークの印刷位置が異なっても自在に対応できる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の複合型画像形成装置において、上記各印刷ヘッドは1つの駆動源により互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動可能であることとしたので、位置合わせが容易であるとともに構成の簡易化を図ることができる。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至7のうちの何れかに記載の複合型画像形成装置において、上記有版印刷部が孔版印刷方式の構成を有し、上記無版印刷部がインクジェット印字方式の構成を有していることとしたので、技術的に確立された構成を採用でき、高信頼性と低コスト化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて本実施形態における複合型画像形成装置の構成の概要を説明する。
複合型画像形成装置1は、記録媒体としての用紙2を給送する給紙部3と、給紙部3より給送された用紙2に対して孔版印刷を行う有版印刷部としての孔版印刷部4と、該孔版印刷部4の用紙搬送方向下流側に配置され、孔版印刷がなされた用紙2に対してさらにその一部にインクジェット印刷画像(無版印刷画像)を形成する無版印刷部としてのインクジェット印刷部5と、印刷済みの用紙2を機外に排出する排紙部6とを有している。
【0024】
給紙部3は、多数の用紙2が積載される給紙トレイ10と、給紙トレイ10上の用紙2をその最上位のものから1枚ずつ給送する給紙ローラ11と、給紙ローラ11によって給送された用紙2を一時停止させた後に孔版印刷部4の印刷ニップに向けて所定のタイミングで給送するレジストローラ対12とを有している。
孔版印刷部4の右上方には製版部7が配設されている。製版部7は、ロール状に巻成された版としてのマスタ13を収容するマスタ収容部14と、マスタ収容部14よりもマスタ搬送方向下流側に配設されたサーマルヘッド15及びプラテンローラ16、マスタ13を切断する切断手段17、マスタ搬送ローラ対18等を有している。製版部7はマスタ13に穿孔製版画像を形成した後に孔版印刷部4に向けて搬送する。
【0025】
孔版印刷部4は、製版部7において製版された製版済みマスタ19を外周面上に巻装する版胴20と、版胴20の外周面に対して接離自在に設けられたプレスローラ22と、用紙2を版胴20の外周面上から剥離する剥離爪23と、剥離された用紙2を吸引ファン24でベルト面に吸引しつつ搬送するベルト搬送部25とを有している。版胴20の内部には、インキローラ21及びドクターローラ8を有するインキ供給手段9が配設されている。
孔版印刷部4は、給紙部3より給送された用紙2をプレスローラ22によって版胴20の外周面上に巻装された製版済みマスタ19に押圧することにより、インキ供給手段9から供給されたインキを用紙2に転写させて用紙2上に有版印刷画像としての孔版印刷画像を形成する。
【0026】
版胴20の左上方には、版胴20の外周面上から使用済みの製版済みマスタ19を剥離して廃棄する図示しない排版装置が配設されている。
また、孔版印刷部4には、用紙2に形成される孔版印刷画像の位置、すなわち版胴20の外周面上に巻装された製版済みマスタ19の製版画像に対する用紙2の位置を移動調整させる図示しない移動機構が設けられている。この図示しない移動機構は、例えば特開平9−104159号公報に開示された移動機構80、280と同様のものを用いることができる。
【0027】
インクジェット印刷部5は、用紙2の搬送経路上方に配置された印刷ヘッドとしてのライン方式のインクジェット記録ヘッド26と、インクジェット記録ヘッド26の用紙搬送方向上流側及び下流側に配置された用紙搬送ローラ対27、29と、用紙2を搬送案内するガイド板31と、用紙2の搬送方向先端を検出して用紙2に対するインクジェット印刷の開始基準を設定するための用紙検出センサ32とを有している。
ここで、ライン方式とは、インク滴を吐出(噴射)する画像形成素子としてのノズルが用紙2の搬送方向と直交する方向(以下、「用紙幅方向」ともいう)に複数個直線状に又は千鳥状に配列された構成を指す。
【0028】
各用紙搬送ローラ対27、29は、用紙2を所定のインクジェット印刷スピードで搬送する。各用紙搬送ローラ対27、29において、用紙搬送経路の上方に位置するローラは用紙2上に形成された孔版印刷画像に直接接触するため、未乾燥インキによる汚損防止のためにその周面に微細な凹凸を有するものを用いることが望ましい。具体的には、ローラ周面に微細なセラミック砥粒あるいは微細なガラスビーズを散りばめたフィルム等を貼り付けることが効果的である。
【0029】
ライン方式のインクジェット記録ヘッド26は、図2に示すように、移動機構36によって用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に移動自在に構成されている。
インクジェット記録ヘッド26は、用紙幅方向に間隔をおいて設けられた2つのインクジェット記録ヘッド26A、26Bからなり、各インクジェット記録ヘッド26A、26Bの上部には、フレーム75に設けられた軸としての案内レール70に案内されて図の左右方向である用紙幅方向に移動可能な保持部71A、71Bが一体的に設けられている。
また、各インクジェット記録ヘッド26A、26Bには中央部を境にしてねじ向きが逆のリードねじ73が螺合しており、フレーム75に設けられたステッピングモータ72によってリードねじ73が回転駆動されると、インクジェット記録ヘッド26A、26Bが用紙幅方向に、互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動される。
【0030】
インクジェット記録ヘッド26A、26Bの位置は、案内レール70に設けられインクジェット記録ヘッド26A、26Bの初期位置を検出するホームポジションセンサ74とステッピングモータ72のステップ数とによって制御される。同図において、符号76は着脱可能なインク容器を、符号77はインク送出用のポンプを、符号78A、78Bはインク搬送用のパイプをそれぞれ示しており、符号Hはインクジェット記録ヘッド26A、26Bの用紙幅方向における画像形成可能長さ(最大画像形成幅)を示している。
【0031】
上述した移動機構36により、用紙2に形成される無版印刷画像であるインクジェット印刷画像の用紙幅方向における位置が調整移動される。また、用紙2に形成されるインクジェット印刷画像の用紙搬送方向における位置は、インクジェット記録ヘッド26A、26Bの作動タイミングによって調整される。
インクジェット記録ヘッド26A、26Bは、複合型画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータ45(図3参照)あるいは複合型画像形成装置1の内部に設けられた可変データ記録メモリ48(図3参照)から送出される画像データに基づいて画像形成を行う。
【0032】
図1に示すように、インクジェット印刷部5の用紙搬送方向下流側には排紙部6が配設されている。排紙部6は、インクジェット印刷部5においてインクジェット印刷画像を形成された用紙2を吸引ファン33でベルト面に吸引しつつ搬送するベルト搬送部34と、ベルト搬送部34によって搬送された印刷済みの用紙2を積載する排紙トレイ35とを有している。
孔版印刷部4の上方には画像読取部40が配設されている。画像読取部40は、原稿42上の画像を読み取る移動自在な走査ユニット41、走査ユニット41によって走査された画像データが入力されるCCD等の画像センサ43等を有する周知の構成である。
【0033】
図3は、複合型画像形成装置1の制御ブロック図を示している。画像読取部40で読み取られた共通画像データ(固定画像データ)は、共通画像データ処理装置38で所定の画像処理が行われた後、画像形成部選択手段39を経由してサーマルヘッド駆動制御装置44に送られ、このデータに基づいてサーマルヘッド15の各発熱素子が選択的に発熱してマスタ13に対して穿孔製版を行う。
一方、パーソナルコンピュータ45から送出された可変画像データは、可変画像データ処理装置46で所定の画像処理が行われた後、画像形成部選択手段39を経由してインクジェットヘッド駆動制御装置47に送られ、このデータに基づいてインクジェット記録ヘッド26A、26Bが選択的にインクを噴射して画像形成を行う。または、予め必要な画像データが記録されている可変データ記録メモリ48から送られた可変画像データが画像形成部選択手段39を経由してインクジェットヘッド駆動制御装置47に送られ、このデータに基づいてインクジェット記録ヘッド26A、26Bが選択的にインクを噴射して画像形成を行う。搬送される用紙2に対するインクジェット記録ヘッド26の位置決めは、記録ヘッド位置決め駆動制御装置49によって制御される。
記録ヘッド位置決め駆動制御装置49にはホームポジションセンサ74からの検知情報が入力され、この情報に基づいてステッピングモータ72が制御される。
【0034】
図4に基づいて、A3ノビサイズの用紙2Eに裁断マークを印刷する動作について説明する。
ハッチングで示した部分は、用紙2Eに印刷される最大画像範囲を示しており、符号Kは、孔版印刷部4の用紙幅方向における製版可能長さ(最大画像形成幅)を示している。長さKは、孔版印刷部4における汎用サイズのサーマルヘッド15の用紙幅方向の長さ(最大製版長さ)でもある。
本実施形態では、用紙2Eの最大画像範囲を超えた用紙搬送方向の両側の前後、すなわち4隅に十字の裁断マークMを印刷するようになっている。
オペレータにより操作パネル50(図3参照)を介してあるいはパーソナルコンピュータ45により裁断マークMの位置が設定されると、その位置情報は記録ヘッド位置決め駆動制御装置49に入力され、記録ヘッド位置決め駆動制御装置49はインクジェット記録ヘッド26A、26Bが裁断マークMを印刷可能な位置(裁断マークMの位置を覆う大体の位置)になるようにステッピングモータ72を制御する。
インクジェット記録ヘッド26A、26Bによる裁断マークMの印刷は、用紙幅方向に並んだ複数のノズルのうち、インクジェットヘッド駆動制御装置47により選択された使用すべきノズルによるインク吐出によりなされる。ノズルの選択は、可変データ記憶メモリ48に予め記憶されている裁断マークMの画像情報に基づいてなされる。パーソナルコンピュータ45からマークの画像情報が入力された場合にはそれに基づいてノズルの選択がなされる。
【0035】
本実施形態では、インクジェット記録ヘッド26が1軸2ヘッドで且つ移動可能なタイプを示したが、裁断マークMの位置が一定の場合にはインクジェット記録ヘッド26A、26Bが固定された構成でもよい。この場合にはステッピングモータ72やリードねじ73等は不要となる。インクジェット記録ヘッド26A、26Bを手動でスライドさせる構成としてもよい。この場合、案内レール70等に目盛りを付ければ位置決めが容易となる。
また、裁断マークMが用紙2Eの片側にのみ印刷される場合には、1つのインクジェット記録ヘッド26でよく、この場合にも移動可能なタイプと固定タイプが考えられる。
また、リードねじ73を中央で分割して対向配置された2つのステッピングモータ72でインクジェット記録ヘッド26A、26Bを個別に移動させる構成としてもよい。この場合には、用紙2Eの両側において裁断マークMの位置が異なる場合にも任意に対応可能となる。インクジェット記録ヘッド26A、26Bをマーク専用のスタンプ装置としてもよい。
【0036】
上記では、インクジェット記録ヘッド26A、26Bを裁断マークM等を印刷するマーカーとして用いた場合について説明したが、最大画像範囲内にインクジェット印刷画像を形成する場合の動作について説明する。
図5に示すように、インクジェット記録ヘッド26A、26Bの用紙幅方向における画像形成可能長さはHであり、孔版印刷部4の用紙幅方向における製版可能長さ(最大画像形成幅)はKである。通常、製版可能長さKはA3サイズの印刷を可能とするために290mm前後に設定されている。しかし、画像形成可能長さHをこれと同じとすると、インクジェット記録ヘッド26A、26Bが非常に高価なものとなってしまうと共に、画像形成の信頼性も低下してしまう。
そこで、本実施形態ではインクジェット記録ヘッド26A、26Bを安価且つ高信頼性なものとするため、その画像形成可能長さHを60〜100mm程度としている。
【0037】
この複合型画像形成装置1において、インクジェット記録ヘッド26A又は26Bにより可変印刷を行いたい部分は宛名部分あるいは通し番号部分等の全画像領域における一部であるので、この程度の画像形成可能長さHで十分に対応が可能である。なお、図4中における符号28は用紙2に形成される孔版印刷画像を、符号30は用紙2に形成されるインクジェット印刷画像をそれぞれ示している。
インクジェット記録ヘッド26A、26Bはそれぞれ最大画像範囲の半分ずつを受け持ち、図5に示すようにインクジェット印刷画像30が上半部に位置する場合にはインクジェット記録ヘッド26Aが使用されてインクジェット記録ヘッド26Bは不作動となり、逆にインクジェット印刷画像30が下半部に位置する場合にはインクジェット記録ヘッド26Bが使用されてインクジェット記録ヘッド26Aは不作動となる。
印刷形態によっては、インクジェット記録ヘッド26A、26Bを同時に使用する場合もある。
【0038】
図6及び図7に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する。
本実施形態では、インクジェット記録ヘッド26A、26Bがそれぞれ別個の移動機構36により移動されることを特徴としている。
インクジェット記録ヘッド26Aはステッピングモータ72Aで駆動され、その基準位置を規定するホームポジションセンサ74Aは図2で示した位置に設けられている。インクジェット記録ヘッド26Bはステッピングモータ72Bで駆動され、その基準位置を規定するホームポジションセンサ74Bは図2で示した位置と反対側の位置に設けられている。
裁断マークMの位置に対する位置決めは、第1の実施形態と同様に、記録ヘッド位置決め駆動制御装置49によりなされる。
本実施形態では、インクジェット記録ヘッド26A、26Bが個別に移動可能であるので、用紙2Eの両側において裁断マークMの位置が異なる場合にも任意に対応可能となる。なお、各リードねじ73は第1の実施形態の場合と異なり、1つのねじ向きを有している。
駆動源としてのステッピングモータを1つ設け、図示しないギア列を介してインクジェット記録ヘッド26A、26Bを2軸構成で同期移動させる構成としてもよい。
【0039】
複合型画像形成装置1は、孔版印刷部(孔版印刷装置)4にインクジェット印刷部(インクジェット印刷装置)5を付設して電気信号的に接続された1つのシステムとして構成してもよく、孔版印刷部4とインクジェット印刷部5が1つの筐体に一体に設けられた構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態における複合型画像形成装置の概要正面図である。
【図2】インクジェット記録ヘッドの移動機構を示す概要側面図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】裁断マークを印刷する場合の位置関係を示す概要平面図である。
【図5】孔版印刷画像とインクジェット印刷画像との位置関係を示す概要平面図である。
【図6】第2の実施形態における裁断マークを印刷する場合の位置関係を示す概要平面図である。
【図7】第2の実施形態における制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
2 記録媒体としての用紙
4 有版印刷部としての孔版印刷部
5 無版印刷部としてのインクジェット印刷部
26A、26B 印刷ヘッドとしてのインクジェット記録ヘッド
70 軸としての案内レール
72 駆動源としてのステッピングモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版を用いて印刷を行う有版印刷部と、版を用いずに印刷を行う無版印刷部とを備えた複合型画像形成装置において、
記録媒体の搬送方向と直交する方向における上記無版印刷部の最大画像形成幅が上記有版印刷部の同一方向における最大画像形成幅よりも小さく、且つ、上記無版印刷部が上記有版印刷部の最大画像形成幅を超えた位置で印刷可能であることを特徴とする複合型画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の複合型画像形成装置において、
上記無版印刷部が複数の印刷ヘッドを有し、記録媒体の搬送方向の両側において同時に印刷可能であることを特徴とする複合型画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の複合型画像形成装置において、
上記無版印刷部が記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動可能な印刷ヘッドを有していることを特徴とする複合型画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の複合型画像形成装置において、
上記印刷ヘッドが複数設けられ、記録媒体の搬送方向の両側において同時に印刷可能であることを特徴とする複合型画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の複合型画像形成装置において、
上記印刷ヘッドが2つ設けられているとともに、記録媒体の搬送方向と直交する方向に延びる1つの軸に支持され、各印刷ヘッドは1つの駆動源により互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動可能であることを特徴とする複合型画像形成装置。
【請求項6】
請求項4記載の複合型画像形成装置において、
上記印刷ヘッドが2つ設けられているとともに、記録媒体の搬送方向と直交する方向に延びる2つの軸に個別に支持されていることを特徴とする複合型画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の複合型画像形成装置において、
上記各印刷ヘッドは1つの駆動源により互いに近づくようにあるいは互いに離れるように同期移動可能であることを特徴とする複合型画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちの何れかに記載の複合型画像形成装置において、
上記有版印刷部が孔版印刷方式の構成を有し、上記無版印刷部がインクジェット印字方式の構成を有していることを特徴とする複合型画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−82507(P2006−82507A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272087(P2004−272087)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】