複合基板、及び該複合基板の製造方法
【課題】インサート物質を介して接合された2枚の基板からなる複合基板において、該インサート物質の移動(流出)が抑制された構造を有する複合基板、及び該複合基板の製造方法の提供。
【解決手段】第一基板2と第二基板3とは、離間して互いの主面2a,3aを向き合わせ、且つその間にインサート物質4を介して接合されており、第一基板2及び第二基板3のうち少なくとも一方の主面に、インサート物質4の移動を阻害する部位1が設けられていることを特徴とする複合基板10。
【解決手段】第一基板2と第二基板3とは、離間して互いの主面2a,3aを向き合わせ、且つその間にインサート物質4を介して接合されており、第一基板2及び第二基板3のうち少なくとも一方の主面に、インサート物質4の移動を阻害する部位1が設けられていることを特徴とする複合基板10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の基板が接合された複合基板、及び該複合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の微細加工技術の発展に伴い、LSIやMEMS等の電子デバイスをウエハレベルでパッケージ加工する要求が高まっている。MEMSのような微小機械構造や駆動部を保護するパッケージ構造として、MEMSを搭載したデバイス基板に、キャップ基板を覆い被せて、これら2枚の基板の間に形成したキャビティ内にMEMSを収納して封止するパッケージ構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
デバイス基板とキャップ基板とを接合させる方法として、両基板の間に樹脂やハンダ等のインサート物質を挟んで接着させる方法が多用される。インサート物質は、両基板を接合するだけでなく、インサート物質の厚みを利用して両基板を所定の距離で離間させて、両基板の間にキャビティを形成・維持する役割も担っている。さらに、インサート物質がハンダである場合には、封止された電子デバイスと基板の貫通配線とを電気的に導通する電極バンプとして機能する場合もある。このような例として、図10及び11に示すパッケージ構造100が挙げられる。
図10は、従来のパッケージ構造100の平面図であり、図11は、図10のA−A線における断面図である。
【0004】
パッケージ構造100は、デバイス基板101とキャップ基板102とが離間して互いの主面101a,102aを向き合わせ、且つその間にインサート物質103を介して接合されたものである。
デバイス基板101の主面101aには、電子デバイス105と、これに導通するI/Oパッド106が備えられている。キャップ基板102には貫通配線107と、これに導通するI/Oパッド106及び再配線108が備えられている。両基板間のI/Oパッドを接合するインサート物質103としてハンダが用いられている。
また、両基板の主面101a,102aには封止ランド109がそれぞれ配されている。両基板の封止ランド109は、インサート物質103(ハンダ)を介して、接合されている。
【0005】
ところで、パッケージ構造100の製造過程では、溶融状態或いは低粘度状態にしたインサート物質103を一方の基板に載せて、両基板を重ねた上で荷重を加えて、両基板を接合する必要がある。この際、流動性のあるインサート物質103は、所定の領域(封止ランド109、I/Oパッド106)以外の場所へ流れ出してしまう問題がある。
この問題を図12及び13に示す。図12は前記問題が生じた従来のパッケージ構造100の平面図であり、図13は、図12のB−B線に沿う断面図である。
流れ出たインサート物質は、I/Oパッド106(電極)間の短絡を引き起こしたり(図12のインサート物質X)、電子デバイスを破損させてしまうこともある(図12のインサート物質Y、図13のインサート物質Y)。さらには、デバイス基板101とキャップ基板102との離間距離(キャビティの高さ)を確保するために、接合時の荷重を厳密に制御する困難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−109221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インサート物質を介して接合された2枚の基板からなる複合基板において、該インサート物質の移動(流出)が抑制された構造を有する複合基板、及び該複合基板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の複合基板は、第一基板と第二基板とは、互いの主面を向き合わせ、且つその間にインサート物質を介して接合されており、前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位が設けられていることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の複合基板は、請求項1において、前記阻害する部位は、前記主面に形成された凸部であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の複合基板は、請求項2において、前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の内部に形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の複合基板は、請求項2において、前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の片側に形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の複合基板は、請求項2において、前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の両側に形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の複合基板は、請求項1において、前記阻害する部位は、前記主面に形成された凹部であり、該凹部内に前記インサート物質が配されていることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の複合基板は、請求項6において、前記凹部内に配された前記インサート物質の存在する領域の内部に、凸部が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の複合基板は、請求項1〜7のいずれか一項において、前記第一基板と前記インサート物質との間、及び/又は前記第二基板と前記インサート物質との間に、金属層が介在していることを特徴とする。
本発明の請求項9に記載の複合基板は、請求項1〜8のいずれか一項において、前記第一基板と前記第二基板との間のスペースで、前記第一基板の主面又は前記第二基板の主面に電子デバイスが備えられていることを特徴とする。
本発明の請求項10に記載の複合基板は、請求項9において、前記電子デバイスを備えた前記スペースが、前記インサート物質に囲まれて封止されていることを特徴とする。
本発明の請求項11に記載の複合基板の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合基板の製造方法であって、前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位を設ける工程と、前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質を付ける工程と、前記第一基板の主面と前記第二基板の主面とを向かい合わせて、前記インサート物質を介して接合する工程と、を少なくとも有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合基板によれば、インサート物質の移動を阻害する部位が設けられているので、インサート物質が所定の領域外に移動(流出)することを阻害する(抑制する)ことができる。この結果、インサート物質を介した接合の長期信頼性を高められる。
前記阻害する部位が、前記主面に形成された凸部である場合、該凸部が障壁になって、流動性を有したインサート物質の所定領域外への流出を抑制することができる。
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部をインサート物質の存在する領域の内部に形成した場合、該インサート物質が移動することを該凸部が妨げるので、該インサート物質が所定領域外に流出することを抑制することができる。
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部をインサート物質の存在する領域の片側に形成した場合、該インサート物質が、その片側へ流出することを抑制することができる。
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部をインサート物質の存在する領域の両側に形成した場合、該インサート物質が、両側の凸部で挟まれた領域外へ流出することを抑制することができる。
また、前記凸部によって、前記第一基板の主面と前記第二基板の主面との離間距離を、該凸部の高さ以上に維持することができる。
【0010】
前記阻害する部位が、前記主面に形成された凹部であり、該凹部内に前記インサート物質が配されている場合、該凹部内に該インサート物質をとどめて、該凹部の外へインサート物質が流出することを抑制することができる。
前記凹部内に配されたインサート物質の存在する領域の内部に凸部が形成されている場合、該インサート物質が移動することを該凸部が妨げるので、該インサート物質が凹部外に流出することを一層抑制することができる。
【0011】
前記第一基板と前記第二基板との間のスペースで、前記第一基板の主面又は前記第二基板の主面に電子デバイスが備えられた場合、該電子デバイスを外部からの物理的作用(光、熱、音、振動等)から保護することができる。この結果、該電子デバイスの使用における長期信頼性を高められる。
前記電子デバイスを備えた前記スペースが、前記インサート物質に囲まれて封止されている場合、前記電子デバイスを外部からの化学的作用(空気、湿気、埃、化学物質を含む気体等)から保護することができる。この結果、該電子デバイスの使用における長期信頼性を高められる。
【0012】
本発明の複合基板の製造方法によれば、前記第一基板と前記第二基板とを接合する際に、インサート物質の所定領域外への流出が抑制されているため、当該複合基板を歩留まり良く製造することができる。また、前記阻害する部位が、前記主面に形成された凸部である場合、前記第一基板と前記第二基板とを接合する際に、該凸部がストッパーとなって、両基板の主面が互いに接触することを防止できる。この結果、該凸部の高さ以上の離間距離で、両基板を離間して接合することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の複合基板の概略平面図
【図2】図1のC−C線に沿う概略断面図
【図3】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図4】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図5】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図6】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図7】本発明にかかる複合基板の製造方法の一例
【図8】本発明にかかる複合基板の製造方法の一例
【図9】本発明にかかる複合基板の製造方法の一例
【図10】従来のパッケージ構造の概略平面図
【図11】図10のA−A線に沿う概略断面図
【図12】従来のパッケージ構造の概略平面図
【図13】図12のB−B線に沿う概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
<第一実施形態>
図1は、本発明にかかる複合基板の第一実施形態である複合基板10の概略平面図である。図2は、図1のC−C線に沿う断面図である。
この複合基板10において、第一基板2と第二基板3とは、離間して互いの主面2a,3aを向き合わせ、且つその間にインサート物質4を介して接合されており、第一基板2の主面2aに、インサート物質4の移動を阻害する部位1が設けられている。
【0015】
前記阻害する部位1は、第一基板2の主面2aに形成された凸部S1である。凸部S1はインサート物質4の存在する領域の内部に形成されている。この構成によって、インサート物質4が流動性を有した場合であっても、インサート物質4の電子デバイス8へ向かう移動を凸部S1で阻害できるため、インサート物質4が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。また、凸部S1は、流動性を有したインサート物質4を拘束する作用を呈するため、電子デバイス8の方向への移動を抑制する効果がある。
なお、インサート物質4の電子デバイス8から離れる方向への流出は、仮に起こったとしても特に問題は無い。
【0016】
インサート物質4としては、第一基板2と第二基板3とを接合(接着)できるものであれば特に制限されず、例えばPb−Sn(ハンダ)、Al−Ge、Au−Sn等の合金、Al金属、重合性化合物からなるポリマー樹脂や接着剤等が挙げられる。
【0017】
インサート物質4が流動性を有する場合として、複合基板10の製造過程が挙げられる。第一基板2と第二基板3とを、例えばAl−Ge共晶合金からなるインサート物質4で接合する場合、合金の融点(420℃)以上に加熱して、第一基板2と第二基板3とに荷重を加えてプレスすることによって、インサート物質4を溶融して潰すか或いは広げて、接合することができる。この際、インサート物質4が冷却固化するまでは、該インサート物質4は流動性を有する。
【0018】
また、インサート物質4が流動性を有する別の場合として、インサート物質4が融点の低い物質からなるもの(例えば、熱可塑性樹脂)であり、当該複合基板10を、前記融点に近い温度で使用した場合が挙げられる。
【0019】
図2では、接合領域Rにおいて、第一基板2とインサート物質4との間、及び第二基板3とインサート物質4との間に金属層6がそれぞれ介在している。該金属層6が介在することによって、第一基板2(第二基板3)とインサート物質4とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。このような場合として、金属層6がAlからなる金属層6であり、インサート物質4がGeである場合が挙げられる。
【0020】
金属層6の材料としては、第一基板2及び/又は第二基板3の接合領域Rに金属層として形成できるものであれば特に制限されず、例えば、Ti,Cu,W,Ni,Ta,Cr,Mo,Al、及びこれらの金属の合金が挙げられる。金属層6は、スパッタリングやCVDによって形成することができる。金属層6の材料は、インサート物質4の材料と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0021】
図2において、第一基板2及び第二基板3は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板10の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板2及び第二基板3の表面には、絶縁層7(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0022】
第一基板2と第二基板3との間のスペースGにおいて、第二基板3の主面3aには、電子デバイス8が備えられている。第一基板2の主面2aの、電子デバイス8に対向する位置には、キャビティ9が形成されている。キャビティ9は、第一基板2の主面2aと電子デバイス8とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0023】
凸部S1の高さhおよび幅は、凸部S1によってインサート物質4が接合領域Rから押し出され、電子デバイス8側へ流出しないように、適宜設定することができる。具体的には、凸部S1の高さhとしては、第一基板2の主面2aと第二基板3の主面3aとの離間距離Hにもよるが、離間距離Hの1/2以上が好ましく、離間距離Hの2/3以上がより好ましく、離間距離Hの3/4以上がさらに好ましい。凸部S1の高さhと、離間距離Hとが同じであっても良い。凸部S1の高さhの上限値は、離間距離Hである。
凸部S1の高さhが上記範囲であると、インサート物質4の移動を充分に阻害することができる。
【0024】
電子デバイス8は、複合基板10の用途に応じて、種々のデバイスが適用可能である。例えば、圧力センサ、加速度センサ、磁気センサ等のMEMSや、LSI等を配置することができる。
【0025】
図1において、第一基板2と第二基板3との間のスペースGに備えられた電子デバイス8は、接合領域Rにおけるインサート物質4に囲まれて封止されている。
【0026】
<第二実施形態>
図3は、本発明にかかる複合基板の第二実施形態である複合基板20の断面図である。第二実施形態の複合基板20の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図3に示す断面図である。
【0027】
この複合基板20において、第一基板22と第二基板23とは、離間して互いの主面22a,23aを向き合わせ、且つその間にインサート物質24を介して接合されており、第一基板22の主面22aに、インサート物質24の移動を阻害する部位21が設けられている。
【0028】
前記阻害する部位21は、第一基板22の主面22aに形成された凸部S21である。凸部S21はインサート物質24の存在する領域の片側であって、電子デバイス28に近い側に形成されている。この構成によって、インサート物質24が流動性を有した場合であっても、インサート物質24の移動を凸部S21で阻害できるため、インサート物質24が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。
インサート物質24の電子デバイス28から離れる方向への流出は、仮に起こったとしても特に問題は無い。
【0029】
インサート物質24の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0030】
図3では、接合領域Rにおいて、第一基板22とインサート物質24との間、及び第二基板23とインサート物質24との間に金属層26がそれぞれ介在している。該金属層26が介在することによって、第一基板22(第二基板23)とインサート物質24とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0031】
金属層26の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0032】
図3において、第一基板22及び第二基板23は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板20の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板22及び第二基板23の表面には、絶縁層27(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0033】
第一基板22と第二基板23との間のスペースGにおいて、第二基板23の主面23aには、電子デバイス28が備えられている。第一基板22の主面22aの、電子デバイス28に対向する位置には、キャビティ29が形成されている。キャビティ29は、第一基板22の主面22aと電子デバイス28とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0034】
凸部S21の高さhとしては、第一基板22の主面22aと第二基板23の主面23aとの離間距離Hにもよるが、離間距離Hの1/2以上が好ましく、離間距離Hの2/3以上がより好ましく、離間距離Hの3/4以上がさらに好ましい。凸部S21の高さhと、離間距離Hとが同じであっても良い。凸部S21の高さhの上限値は、離間距離Hである。凸部S21の高さhが上記範囲であると、インサート物質24の移動を充分に阻害することができる。
【0035】
電子デバイス28の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0036】
図3において、第一基板22と第二基板23との間のスペースGに備えられた電子デバイス28は、接合領域Rにおけるインサート物質24に囲まれて封止されている。
【0037】
<第三実施形態>
図4は、本発明にかかる複合基板の第三実施形態である複合基板30の断面図である。第三実施形態の複合基板30の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図4に示す断面図である。
【0038】
この複合基板30において、第一基板32と第二基板33とは、離間して互いの主面32a,33aを向き合わせ、且つその間にインサート物質34を介して接合されており、第一基板32の主面32aに、インサート物質34の移動を阻害する部位31が設けられている。
【0039】
前記阻害する部位31は、第一基板32の主面32aに形成された凸部S31である。凸部S31はインサート物質34の存在する領域の両側に形成されている。この構成によって、インサート物質34が流動性を有した場合であっても、インサート物質34の移動を凸部S31で阻害できるため、インサート物質34が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。
【0040】
インサート物質34の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0041】
図4では、接合領域Rにおいて、第一基板32とインサート物質34との間、及び第二基板33とインサート物質34との間に金属層36がそれぞれ介在している。該金属層36が介在することによって、第一基板32(第二基板33)とインサート物質34とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0042】
金属層36の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0043】
図4において、第一基板32及び第二基板33は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板30の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板32及び第二基板33の表面には、絶縁層37(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0044】
第一基板32と第二基板33との間のスペースGにおいて、第二基板33の主面33aには、電子デバイス38が備えられている。第一基板32の主面32aの、電子デバイス38に対向する位置には、キャビティ39が形成されている。キャビティ39は、第一基板32の主面32aと電子デバイス38とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0045】
凸部S31の高さhとしては、第一基板32の主面32aと第二基板33の主面33aとの離間距離Hにもよるが、離間距離Hの1/2以上が好ましく、離間距離Hの2/3以上がより好ましく、離間距離Hの3/4以上がさらに好ましい。凸部S31の高さhと、離間距離Hとが同じであっても良い。凸部S31の高さhの上限値は、離間距離Hである。
凸部S31の高さhが上記範囲であると、インサート物質34の移動を充分に阻害することができる。
【0046】
電子デバイス38の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0047】
図4において、第一基板32と第二基板33との間のスペースGに備えられた電子デバイス38は、接合領域Rにおけるインサート物質34に囲まれて封止されている。
【0048】
<第四実施形態>
図5は、本発明にかかる複合基板の第四実施形態である複合基板40の断面図である。第四実施形態の複合基板40の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図5に示す断面図である。
【0049】
この複合基板40において、第一基板42と第二基板43とは、互いの主面42a,43aを向き合わせ、且つその間にインサート物質44を介して接合されており、第一基板42の主面42aに、インサート物質44の移動を阻害する部位41が設けられている。
【0050】
前記阻害する部位41は、第一基板42の主面42aに形成された凹部C41である。凹部C41内にはインサート物質44が配されている。この構成によって、インサート物質44が流動性を有した場合であっても、インサート物質44の移動を凹部C41で阻害できるため、インサート物質44が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。
【0051】
インサート物質44の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0052】
図5では、接合領域Rにおいて、第一基板42とインサート物質44との間、及び第二基板43とインサート物質44との間に金属層46がそれぞれ介在している。該金属層46が介在することによって、第一基板42(第二基板43)とインサート物質44とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0053】
金属層46の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0054】
図5において、第一基板42及び第二基板43は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板40の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板42及び第二基板43の表面には、絶縁層47(酸化膜)が形成されている。
【0055】
第一基板42と第二基板43との間のスペースGにおいて、第二基板43の主面43aには、電子デバイス48が備えられている。第一基板42の主面42aの、電子デバイス48に対向する位置には、キャビティ49が形成されている。スペースGは主にキャビティ49によって構成されている。キャビティ49は、第一基板42の主面42aと電子デバイス48とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0056】
凹部C41の深さdは、インサート物質34が接合領域Rから押し出され、電子デバイス38側へ流出しないように、適宜設定することができる。このとき、凹部C41の体積がインサート物質34の体積よりも大きくなるように設定することが好ましい。
具体的には、凹部C41の深さdとしては、第一基板42の基板厚Tにもよるが、基板厚Tの3/4以下が好ましく、基板厚Tの2/3以下がより好ましく、基板厚Tの1/2以下がさらに好ましい。
凹部C41の深さdが上記範囲であると、インサート物質44の移動を充分に阻害することができると共に、両基板を接合するために十分な量のインサート物質44を凹部C41内に配することができる。
【0057】
電子デバイス48の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0058】
図5において、第一基板42と第二基板43との間のスペースGに備えられた電子デバイス48は、接合領域Rにおけるインサート物質44に囲まれて封止されている。
【0059】
<第五実施形態>
図6は、本発明にかかる複合基板の第五実施形態である複合基板50の断面図である。第五実施形態の複合基板50の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図6に示す断面図である。
【0060】
この複合基板50において、第一基板52と第二基板53とは、互いの主面52a,53aを向き合わせ、且つその間にインサート物質54を介して接合されており、第一基板52の主面52aに、インサート物質54の移動を阻害する部位51が設けられている。
【0061】
前記阻害する部位51は、第一基板52の主面52aに形成された凹部C51である。凹部C51内にはインサート物質54が配されている。さらに、該インサート物質54の存在する領域の内部には凸部S51が形成されている。この構成によって、インサート物質54が流動性を有した場合であっても、該インサート物質54が移動することを該凸部S51が妨げるため、且つインサート物質54の移動を凹部C51で阻害できるため、インサート物質54が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。また、凸部S51は、流動性を有したインサート物質54を拘束する作用を呈するため、電子デバイス58の方向への移動を抑制する効果がある。
【0062】
インサート物質54の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0063】
図6では、接合領域Rにおいて、第一基板52とインサート物質54との間、及び第二基板53とインサート物質54との間に金属層56がそれぞれ介在している。該金属層56が介在することによって、第一基板52(第二基板53)とインサート物質54とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0064】
金属層56の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0065】
図6において、第一基板52及び第二基板53は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板50の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板52及び第二基板53の表面には、絶縁層57(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0066】
第一基板52と第二基板53との間のスペースGにおいて、第二基板53の主面53aには、電子デバイス58が備えられている。第一基板52の主面52aの、電子デバイス58に対向する位置には、キャビティ59が形成されている。スペースGは主にキャビティ59によって構成されている。キャビティ59は、第一基板52の主面52aと電子デバイス58とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0067】
凹部C51の深さdは、インサート物質54が接合領域Rから押し出され、電子デバイス58側へ流出しないように、適宜設定することができる。このとき、凹部C51の体積がインサート物質54の体積よりも大きくなるように設定することが好ましい。
具体的には、凹部C51の深さdとしては、第一基板52の基板厚Tにもよるが、基板厚Tの3/4以下が好ましく、基板厚Tの2/3以下がより好ましく、基板厚Tの1/2以下がさらに好ましい。
凹部C51の深さdが上記範囲であると、インサート物質54の移動を充分に阻害することができると共に、両基板を接合するために十分な量のインサート物質54を凹部C51内に配することができる。
【0068】
凸部S51の高さjは、インサート物質54が接合領域Rから押し出され、電子デバイス58側へ流出しないように、適宜設定することができる。
具体的には、凸部S51の高さjとしては、凹部C51の深さdにもよるが、該深さdの1/2以上が好ましく、該深さdの2/3以上がより好ましく、該深さdの3/4以上がさらに好ましい。凸部S51の高さjと、該深さdとが同じであっても良い。凸部S51の高さjの上限値は、該深さdである。
凸部S51の高さjが上記範囲であると、インサート物質54の移動を充分に妨げることができる。
【0069】
電子デバイス58の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0070】
図6において、第一基板52と第二基板53との間のスペースGに備えられた電子デバイス58は、接合領域Rにおけるインサート物質54に囲まれて封止されている。
【0071】
<複合基板の製造方法>
次に、本発明の電子回路チップの製造方法の一例として、第一実施形態の複合基板10を製造する方法を図7〜9に示す。
ここで、図7〜9は、複合基板10の概略平面図(図1)におけるC−C線に沿う断面図に相当する断面図である。
【0072】
[工程A:阻害する部位1を設ける工程]
まず、第一のシリコンウエハW2を用意し、その主面W2aの所定位置にフォトリソグラフィによって第一のレジストP1を形成する(図7(a))。KOH等のアルカリ溶液によるウェットエッチング又はドライエッチングによって、深さが5μm〜10μmのキャビティ9を形成する。その後第一のレジストP1を剥離する(図7(b))。
【0073】
第一のシリコンウエハW2の主面W2aの所定位置にフォトリソグラフィによって第二のレジストP2を形成する(図7(c))。KOH等のアルカリ溶液によるウェットエッチング又はドライエッチングによって、高さhが1μm〜5μm、幅が100μm程度の凸部S1を形成する。その後、第二のレジストP2を剥離する(図7(d))。
【0074】
[工程B:インサート物質を付ける工程]
第一のシリコンウエハW2の主面W2aを空気に曝して絶縁層7となる酸化膜を形成し、その後主面2aに、スパッタリング又はCVDによって、厚さが0.1μm〜5μmのAl−Ge合金からなる金属層6を形成する(図8(a))。
【0075】
接合領域Rとすべき領域の金属層6上に第三のレジストP3を形成し(図8(b))、エッチングを行った後で、第三のレジストP3を剥離することによって、厚さが0.1μm〜5μmで、幅が150μm〜500μmとなるように、金属層6をパターニングする(図8(c)))。
【0076】
つぎに、第二のシリコンウエハW3の主面W3aに、絶縁層7、電子デバイス8、及びAlからなる金属層6が形成されたものを用意する。該金属層6は厚さが0.1μm〜5μmで、幅が150μm〜500μmとなるように、接合領域Rとすべき領域にパターニングされている(図9(a))。
【0077】
[工程C:インサート物質を介して接合する工程]
第一のシリコンウエハW2の主面W2aと、第二のシリコンウエハW3の主面3aとを向かい合わせて(図9(b))、それぞれの主面の接合領域Rとすべき領域に形成した金属層6を押し付けあって、Al−Ge合金の融点である420℃に加熱して、0.1MPa〜10MPaの荷重で、1時間プレスすることによって、前記Al−Ge合金からなる金属層6と前記Alからなる金属層6とを溶融して一体化したインサート物質4として、両シリコンウエハを接合した(図9(c))。
【0078】
ここでは、金属層6をインサート物質4に変化させる接合方法を示したが、金属層6の上にインサート物質4となるハンダ等を載せて、金属層6の融点未満の低い温度で加熱プレスすることによって、金属層6とインサート物質4とが異なる材料で、両ウエハを接合することも可能である。
【0079】
最後に、所定位置Qでダイシングすることによって、シリコンウエハから個々の複合基板1を切り出す。このようにウエハレベルで複合基板1を製造することによって、歩留まり良く製造することができる。
【0080】
ここで説明した製造方法において、レジストを用いたフォトリソグラフィとエッチングを適宜利用することによって、所望の形状の凸部や凹部からなる前記阻害する部位を、基板表面に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の複合基板および該複合基板の製造方法は、ICや電子部品の製造に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…阻害する部位、2…第一基板、2a…第一基板の主面、3…第二基板、3a…第二基板の主面、4…インサート物質、5…I/Oパッド、6…金属層、7…絶縁層、8…電子デバイス、9…キャビティ、10…複合基板、G…第一基板と第二基板との間のスペース、H…第一基板と第二基板との離間距離、h…凸部の高さ、R…接合領域、S1…凸部、
20…複合基板、21…阻害する部位、22…第一基板、22a…第一基板の主面、23…第二基板、23a…第二基板の主面、24…インサート物質、26…金属層、27…絶縁層、28…電子デバイス、29…キャビティ、S21…凸部、30…複合基板、31…阻害する部位、32…第一基板、32a…第一基板の主面、33…第二基板、33a…第二基板の主面、34…インサート物質、36…金属層、37…絶縁層、38…電子デバイス、39…キャビティ、S31…凸部、40…複合基板、41…阻害する部位、42…第一基板、42a…第一基板の主面、43…第二基板、43a…第二基板の主面、44…インサート物質、46…金属層、47…絶縁層、48…電子デバイス、49…キャビティ、C41…凹部、d…凹部の深さ、T…第一基板の厚さ、51…阻害する部位、52…第一基板、52a…第一基板の主面、53…第二基板、53a…第二基板の主面、54…インサート物質、56…金属層、57…絶縁層、58…電子デバイス、59…キャビティ、50…複合基板、C51…凹部、S51…凸部、j…凸部の高さ、W2…第一のシリコンウエハ、W2a…第一のシリコンウエハの主面、W3…第二のシリコンウエハ、W3a…第二のシリコンウエハの主面、Q…ダイシングライン、P1…第一のレジスト、P2…第二のレジスト、P3…第三のレジスト、100…従来のパッケージ構造、101…デバイス基板、101a…デバイス基板の主面、102…キャップ基板、102a…キャップ基板の主面、103…インサート物質、104…絶縁層、105…電子デバイス、106…I/Oパッド、107…貫通配線、108…再配線、109…封止ランド、X,Y…インサート物質。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の基板が接合された複合基板、及び該複合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の微細加工技術の発展に伴い、LSIやMEMS等の電子デバイスをウエハレベルでパッケージ加工する要求が高まっている。MEMSのような微小機械構造や駆動部を保護するパッケージ構造として、MEMSを搭載したデバイス基板に、キャップ基板を覆い被せて、これら2枚の基板の間に形成したキャビティ内にMEMSを収納して封止するパッケージ構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
デバイス基板とキャップ基板とを接合させる方法として、両基板の間に樹脂やハンダ等のインサート物質を挟んで接着させる方法が多用される。インサート物質は、両基板を接合するだけでなく、インサート物質の厚みを利用して両基板を所定の距離で離間させて、両基板の間にキャビティを形成・維持する役割も担っている。さらに、インサート物質がハンダである場合には、封止された電子デバイスと基板の貫通配線とを電気的に導通する電極バンプとして機能する場合もある。このような例として、図10及び11に示すパッケージ構造100が挙げられる。
図10は、従来のパッケージ構造100の平面図であり、図11は、図10のA−A線における断面図である。
【0004】
パッケージ構造100は、デバイス基板101とキャップ基板102とが離間して互いの主面101a,102aを向き合わせ、且つその間にインサート物質103を介して接合されたものである。
デバイス基板101の主面101aには、電子デバイス105と、これに導通するI/Oパッド106が備えられている。キャップ基板102には貫通配線107と、これに導通するI/Oパッド106及び再配線108が備えられている。両基板間のI/Oパッドを接合するインサート物質103としてハンダが用いられている。
また、両基板の主面101a,102aには封止ランド109がそれぞれ配されている。両基板の封止ランド109は、インサート物質103(ハンダ)を介して、接合されている。
【0005】
ところで、パッケージ構造100の製造過程では、溶融状態或いは低粘度状態にしたインサート物質103を一方の基板に載せて、両基板を重ねた上で荷重を加えて、両基板を接合する必要がある。この際、流動性のあるインサート物質103は、所定の領域(封止ランド109、I/Oパッド106)以外の場所へ流れ出してしまう問題がある。
この問題を図12及び13に示す。図12は前記問題が生じた従来のパッケージ構造100の平面図であり、図13は、図12のB−B線に沿う断面図である。
流れ出たインサート物質は、I/Oパッド106(電極)間の短絡を引き起こしたり(図12のインサート物質X)、電子デバイスを破損させてしまうこともある(図12のインサート物質Y、図13のインサート物質Y)。さらには、デバイス基板101とキャップ基板102との離間距離(キャビティの高さ)を確保するために、接合時の荷重を厳密に制御する困難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−109221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インサート物質を介して接合された2枚の基板からなる複合基板において、該インサート物質の移動(流出)が抑制された構造を有する複合基板、及び該複合基板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の複合基板は、第一基板と第二基板とは、互いの主面を向き合わせ、且つその間にインサート物質を介して接合されており、前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位が設けられていることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の複合基板は、請求項1において、前記阻害する部位は、前記主面に形成された凸部であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の複合基板は、請求項2において、前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の内部に形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の複合基板は、請求項2において、前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の片側に形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の複合基板は、請求項2において、前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の両側に形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の複合基板は、請求項1において、前記阻害する部位は、前記主面に形成された凹部であり、該凹部内に前記インサート物質が配されていることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の複合基板は、請求項6において、前記凹部内に配された前記インサート物質の存在する領域の内部に、凸部が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の複合基板は、請求項1〜7のいずれか一項において、前記第一基板と前記インサート物質との間、及び/又は前記第二基板と前記インサート物質との間に、金属層が介在していることを特徴とする。
本発明の請求項9に記載の複合基板は、請求項1〜8のいずれか一項において、前記第一基板と前記第二基板との間のスペースで、前記第一基板の主面又は前記第二基板の主面に電子デバイスが備えられていることを特徴とする。
本発明の請求項10に記載の複合基板は、請求項9において、前記電子デバイスを備えた前記スペースが、前記インサート物質に囲まれて封止されていることを特徴とする。
本発明の請求項11に記載の複合基板の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合基板の製造方法であって、前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位を設ける工程と、前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質を付ける工程と、前記第一基板の主面と前記第二基板の主面とを向かい合わせて、前記インサート物質を介して接合する工程と、を少なくとも有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合基板によれば、インサート物質の移動を阻害する部位が設けられているので、インサート物質が所定の領域外に移動(流出)することを阻害する(抑制する)ことができる。この結果、インサート物質を介した接合の長期信頼性を高められる。
前記阻害する部位が、前記主面に形成された凸部である場合、該凸部が障壁になって、流動性を有したインサート物質の所定領域外への流出を抑制することができる。
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部をインサート物質の存在する領域の内部に形成した場合、該インサート物質が移動することを該凸部が妨げるので、該インサート物質が所定領域外に流出することを抑制することができる。
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部をインサート物質の存在する領域の片側に形成した場合、該インサート物質が、その片側へ流出することを抑制することができる。
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部をインサート物質の存在する領域の両側に形成した場合、該インサート物質が、両側の凸部で挟まれた領域外へ流出することを抑制することができる。
また、前記凸部によって、前記第一基板の主面と前記第二基板の主面との離間距離を、該凸部の高さ以上に維持することができる。
【0010】
前記阻害する部位が、前記主面に形成された凹部であり、該凹部内に前記インサート物質が配されている場合、該凹部内に該インサート物質をとどめて、該凹部の外へインサート物質が流出することを抑制することができる。
前記凹部内に配されたインサート物質の存在する領域の内部に凸部が形成されている場合、該インサート物質が移動することを該凸部が妨げるので、該インサート物質が凹部外に流出することを一層抑制することができる。
【0011】
前記第一基板と前記第二基板との間のスペースで、前記第一基板の主面又は前記第二基板の主面に電子デバイスが備えられた場合、該電子デバイスを外部からの物理的作用(光、熱、音、振動等)から保護することができる。この結果、該電子デバイスの使用における長期信頼性を高められる。
前記電子デバイスを備えた前記スペースが、前記インサート物質に囲まれて封止されている場合、前記電子デバイスを外部からの化学的作用(空気、湿気、埃、化学物質を含む気体等)から保護することができる。この結果、該電子デバイスの使用における長期信頼性を高められる。
【0012】
本発明の複合基板の製造方法によれば、前記第一基板と前記第二基板とを接合する際に、インサート物質の所定領域外への流出が抑制されているため、当該複合基板を歩留まり良く製造することができる。また、前記阻害する部位が、前記主面に形成された凸部である場合、前記第一基板と前記第二基板とを接合する際に、該凸部がストッパーとなって、両基板の主面が互いに接触することを防止できる。この結果、該凸部の高さ以上の離間距離で、両基板を離間して接合することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の複合基板の概略平面図
【図2】図1のC−C線に沿う概略断面図
【図3】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図4】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図5】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図6】本発明にかかる別の複合基板の概略断面図
【図7】本発明にかかる複合基板の製造方法の一例
【図8】本発明にかかる複合基板の製造方法の一例
【図9】本発明にかかる複合基板の製造方法の一例
【図10】従来のパッケージ構造の概略平面図
【図11】図10のA−A線に沿う概略断面図
【図12】従来のパッケージ構造の概略平面図
【図13】図12のB−B線に沿う概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
<第一実施形態>
図1は、本発明にかかる複合基板の第一実施形態である複合基板10の概略平面図である。図2は、図1のC−C線に沿う断面図である。
この複合基板10において、第一基板2と第二基板3とは、離間して互いの主面2a,3aを向き合わせ、且つその間にインサート物質4を介して接合されており、第一基板2の主面2aに、インサート物質4の移動を阻害する部位1が設けられている。
【0015】
前記阻害する部位1は、第一基板2の主面2aに形成された凸部S1である。凸部S1はインサート物質4の存在する領域の内部に形成されている。この構成によって、インサート物質4が流動性を有した場合であっても、インサート物質4の電子デバイス8へ向かう移動を凸部S1で阻害できるため、インサート物質4が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。また、凸部S1は、流動性を有したインサート物質4を拘束する作用を呈するため、電子デバイス8の方向への移動を抑制する効果がある。
なお、インサート物質4の電子デバイス8から離れる方向への流出は、仮に起こったとしても特に問題は無い。
【0016】
インサート物質4としては、第一基板2と第二基板3とを接合(接着)できるものであれば特に制限されず、例えばPb−Sn(ハンダ)、Al−Ge、Au−Sn等の合金、Al金属、重合性化合物からなるポリマー樹脂や接着剤等が挙げられる。
【0017】
インサート物質4が流動性を有する場合として、複合基板10の製造過程が挙げられる。第一基板2と第二基板3とを、例えばAl−Ge共晶合金からなるインサート物質4で接合する場合、合金の融点(420℃)以上に加熱して、第一基板2と第二基板3とに荷重を加えてプレスすることによって、インサート物質4を溶融して潰すか或いは広げて、接合することができる。この際、インサート物質4が冷却固化するまでは、該インサート物質4は流動性を有する。
【0018】
また、インサート物質4が流動性を有する別の場合として、インサート物質4が融点の低い物質からなるもの(例えば、熱可塑性樹脂)であり、当該複合基板10を、前記融点に近い温度で使用した場合が挙げられる。
【0019】
図2では、接合領域Rにおいて、第一基板2とインサート物質4との間、及び第二基板3とインサート物質4との間に金属層6がそれぞれ介在している。該金属層6が介在することによって、第一基板2(第二基板3)とインサート物質4とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。このような場合として、金属層6がAlからなる金属層6であり、インサート物質4がGeである場合が挙げられる。
【0020】
金属層6の材料としては、第一基板2及び/又は第二基板3の接合領域Rに金属層として形成できるものであれば特に制限されず、例えば、Ti,Cu,W,Ni,Ta,Cr,Mo,Al、及びこれらの金属の合金が挙げられる。金属層6は、スパッタリングやCVDによって形成することができる。金属層6の材料は、インサート物質4の材料と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0021】
図2において、第一基板2及び第二基板3は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板10の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板2及び第二基板3の表面には、絶縁層7(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0022】
第一基板2と第二基板3との間のスペースGにおいて、第二基板3の主面3aには、電子デバイス8が備えられている。第一基板2の主面2aの、電子デバイス8に対向する位置には、キャビティ9が形成されている。キャビティ9は、第一基板2の主面2aと電子デバイス8とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0023】
凸部S1の高さhおよび幅は、凸部S1によってインサート物質4が接合領域Rから押し出され、電子デバイス8側へ流出しないように、適宜設定することができる。具体的には、凸部S1の高さhとしては、第一基板2の主面2aと第二基板3の主面3aとの離間距離Hにもよるが、離間距離Hの1/2以上が好ましく、離間距離Hの2/3以上がより好ましく、離間距離Hの3/4以上がさらに好ましい。凸部S1の高さhと、離間距離Hとが同じであっても良い。凸部S1の高さhの上限値は、離間距離Hである。
凸部S1の高さhが上記範囲であると、インサート物質4の移動を充分に阻害することができる。
【0024】
電子デバイス8は、複合基板10の用途に応じて、種々のデバイスが適用可能である。例えば、圧力センサ、加速度センサ、磁気センサ等のMEMSや、LSI等を配置することができる。
【0025】
図1において、第一基板2と第二基板3との間のスペースGに備えられた電子デバイス8は、接合領域Rにおけるインサート物質4に囲まれて封止されている。
【0026】
<第二実施形態>
図3は、本発明にかかる複合基板の第二実施形態である複合基板20の断面図である。第二実施形態の複合基板20の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図3に示す断面図である。
【0027】
この複合基板20において、第一基板22と第二基板23とは、離間して互いの主面22a,23aを向き合わせ、且つその間にインサート物質24を介して接合されており、第一基板22の主面22aに、インサート物質24の移動を阻害する部位21が設けられている。
【0028】
前記阻害する部位21は、第一基板22の主面22aに形成された凸部S21である。凸部S21はインサート物質24の存在する領域の片側であって、電子デバイス28に近い側に形成されている。この構成によって、インサート物質24が流動性を有した場合であっても、インサート物質24の移動を凸部S21で阻害できるため、インサート物質24が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。
インサート物質24の電子デバイス28から離れる方向への流出は、仮に起こったとしても特に問題は無い。
【0029】
インサート物質24の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0030】
図3では、接合領域Rにおいて、第一基板22とインサート物質24との間、及び第二基板23とインサート物質24との間に金属層26がそれぞれ介在している。該金属層26が介在することによって、第一基板22(第二基板23)とインサート物質24とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0031】
金属層26の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0032】
図3において、第一基板22及び第二基板23は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板20の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板22及び第二基板23の表面には、絶縁層27(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0033】
第一基板22と第二基板23との間のスペースGにおいて、第二基板23の主面23aには、電子デバイス28が備えられている。第一基板22の主面22aの、電子デバイス28に対向する位置には、キャビティ29が形成されている。キャビティ29は、第一基板22の主面22aと電子デバイス28とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0034】
凸部S21の高さhとしては、第一基板22の主面22aと第二基板23の主面23aとの離間距離Hにもよるが、離間距離Hの1/2以上が好ましく、離間距離Hの2/3以上がより好ましく、離間距離Hの3/4以上がさらに好ましい。凸部S21の高さhと、離間距離Hとが同じであっても良い。凸部S21の高さhの上限値は、離間距離Hである。凸部S21の高さhが上記範囲であると、インサート物質24の移動を充分に阻害することができる。
【0035】
電子デバイス28の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0036】
図3において、第一基板22と第二基板23との間のスペースGに備えられた電子デバイス28は、接合領域Rにおけるインサート物質24に囲まれて封止されている。
【0037】
<第三実施形態>
図4は、本発明にかかる複合基板の第三実施形態である複合基板30の断面図である。第三実施形態の複合基板30の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図4に示す断面図である。
【0038】
この複合基板30において、第一基板32と第二基板33とは、離間して互いの主面32a,33aを向き合わせ、且つその間にインサート物質34を介して接合されており、第一基板32の主面32aに、インサート物質34の移動を阻害する部位31が設けられている。
【0039】
前記阻害する部位31は、第一基板32の主面32aに形成された凸部S31である。凸部S31はインサート物質34の存在する領域の両側に形成されている。この構成によって、インサート物質34が流動性を有した場合であっても、インサート物質34の移動を凸部S31で阻害できるため、インサート物質34が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。
【0040】
インサート物質34の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0041】
図4では、接合領域Rにおいて、第一基板32とインサート物質34との間、及び第二基板33とインサート物質34との間に金属層36がそれぞれ介在している。該金属層36が介在することによって、第一基板32(第二基板33)とインサート物質34とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0042】
金属層36の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0043】
図4において、第一基板32及び第二基板33は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板30の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板32及び第二基板33の表面には、絶縁層37(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0044】
第一基板32と第二基板33との間のスペースGにおいて、第二基板33の主面33aには、電子デバイス38が備えられている。第一基板32の主面32aの、電子デバイス38に対向する位置には、キャビティ39が形成されている。キャビティ39は、第一基板32の主面32aと電子デバイス38とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0045】
凸部S31の高さhとしては、第一基板32の主面32aと第二基板33の主面33aとの離間距離Hにもよるが、離間距離Hの1/2以上が好ましく、離間距離Hの2/3以上がより好ましく、離間距離Hの3/4以上がさらに好ましい。凸部S31の高さhと、離間距離Hとが同じであっても良い。凸部S31の高さhの上限値は、離間距離Hである。
凸部S31の高さhが上記範囲であると、インサート物質34の移動を充分に阻害することができる。
【0046】
電子デバイス38の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0047】
図4において、第一基板32と第二基板33との間のスペースGに備えられた電子デバイス38は、接合領域Rにおけるインサート物質34に囲まれて封止されている。
【0048】
<第四実施形態>
図5は、本発明にかかる複合基板の第四実施形態である複合基板40の断面図である。第四実施形態の複合基板40の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図5に示す断面図である。
【0049】
この複合基板40において、第一基板42と第二基板43とは、互いの主面42a,43aを向き合わせ、且つその間にインサート物質44を介して接合されており、第一基板42の主面42aに、インサート物質44の移動を阻害する部位41が設けられている。
【0050】
前記阻害する部位41は、第一基板42の主面42aに形成された凹部C41である。凹部C41内にはインサート物質44が配されている。この構成によって、インサート物質44が流動性を有した場合であっても、インサート物質44の移動を凹部C41で阻害できるため、インサート物質44が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。
【0051】
インサート物質44の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0052】
図5では、接合領域Rにおいて、第一基板42とインサート物質44との間、及び第二基板43とインサート物質44との間に金属層46がそれぞれ介在している。該金属層46が介在することによって、第一基板42(第二基板43)とインサート物質44とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0053】
金属層46の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0054】
図5において、第一基板42及び第二基板43は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板40の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板42及び第二基板43の表面には、絶縁層47(酸化膜)が形成されている。
【0055】
第一基板42と第二基板43との間のスペースGにおいて、第二基板43の主面43aには、電子デバイス48が備えられている。第一基板42の主面42aの、電子デバイス48に対向する位置には、キャビティ49が形成されている。スペースGは主にキャビティ49によって構成されている。キャビティ49は、第一基板42の主面42aと電子デバイス48とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0056】
凹部C41の深さdは、インサート物質34が接合領域Rから押し出され、電子デバイス38側へ流出しないように、適宜設定することができる。このとき、凹部C41の体積がインサート物質34の体積よりも大きくなるように設定することが好ましい。
具体的には、凹部C41の深さdとしては、第一基板42の基板厚Tにもよるが、基板厚Tの3/4以下が好ましく、基板厚Tの2/3以下がより好ましく、基板厚Tの1/2以下がさらに好ましい。
凹部C41の深さdが上記範囲であると、インサート物質44の移動を充分に阻害することができると共に、両基板を接合するために十分な量のインサート物質44を凹部C41内に配することができる。
【0057】
電子デバイス48の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0058】
図5において、第一基板42と第二基板43との間のスペースGに備えられた電子デバイス48は、接合領域Rにおけるインサート物質44に囲まれて封止されている。
【0059】
<第五実施形態>
図6は、本発明にかかる複合基板の第五実施形態である複合基板50の断面図である。第五実施形態の複合基板50の概略平面図は、図1のに示す第一実施形態の複合基板10の概略平面図と同様であり、該平面図におけるC−C線に沿う断面図が図6に示す断面図である。
【0060】
この複合基板50において、第一基板52と第二基板53とは、互いの主面52a,53aを向き合わせ、且つその間にインサート物質54を介して接合されており、第一基板52の主面52aに、インサート物質54の移動を阻害する部位51が設けられている。
【0061】
前記阻害する部位51は、第一基板52の主面52aに形成された凹部C51である。凹部C51内にはインサート物質54が配されている。さらに、該インサート物質54の存在する領域の内部には凸部S51が形成されている。この構成によって、インサート物質54が流動性を有した場合であっても、該インサート物質54が移動することを該凸部S51が妨げるため、且つインサート物質54の移動を凹部C51で阻害できるため、インサート物質54が所定の接合領域Rの外へ流出することを抑制することができる。また、凸部S51は、流動性を有したインサート物質54を拘束する作用を呈するため、電子デバイス58の方向への移動を抑制する効果がある。
【0062】
インサート物質54の説明は、前述の第一実施形態のインサート物質4の説明と同様である。
【0063】
図6では、接合領域Rにおいて、第一基板52とインサート物質54との間、及び第二基板53とインサート物質54との間に金属層56がそれぞれ介在している。該金属層56が介在することによって、第一基板52(第二基板53)とインサート物質54とを直接接合するよりも優れた接合性(接着性)を得られる場合がある。
【0064】
金属層56の説明は、前述の第一実施形態の金属層6の説明と同様である。
【0065】
図6において、第一基板52及び第二基板53は、シリコンからなる基板である。しかし、各基板の材料はシリコンに限定されず、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等からなる基板を、複合基板50の用途に応じて適宜選択することができる。
なお、シリコンからなる第一基板52及び第二基板53の表面には、絶縁層57(酸化膜)が形成されていてもよい。
【0066】
第一基板52と第二基板53との間のスペースGにおいて、第二基板53の主面53aには、電子デバイス58が備えられている。第一基板52の主面52aの、電子デバイス58に対向する位置には、キャビティ59が形成されている。スペースGは主にキャビティ59によって構成されている。キャビティ59は、第一基板52の主面52aと電子デバイス58とが衝突又は接触することを防いでいる。
【0067】
凹部C51の深さdは、インサート物質54が接合領域Rから押し出され、電子デバイス58側へ流出しないように、適宜設定することができる。このとき、凹部C51の体積がインサート物質54の体積よりも大きくなるように設定することが好ましい。
具体的には、凹部C51の深さdとしては、第一基板52の基板厚Tにもよるが、基板厚Tの3/4以下が好ましく、基板厚Tの2/3以下がより好ましく、基板厚Tの1/2以下がさらに好ましい。
凹部C51の深さdが上記範囲であると、インサート物質54の移動を充分に阻害することができると共に、両基板を接合するために十分な量のインサート物質54を凹部C51内に配することができる。
【0068】
凸部S51の高さjは、インサート物質54が接合領域Rから押し出され、電子デバイス58側へ流出しないように、適宜設定することができる。
具体的には、凸部S51の高さjとしては、凹部C51の深さdにもよるが、該深さdの1/2以上が好ましく、該深さdの2/3以上がより好ましく、該深さdの3/4以上がさらに好ましい。凸部S51の高さjと、該深さdとが同じであっても良い。凸部S51の高さjの上限値は、該深さdである。
凸部S51の高さjが上記範囲であると、インサート物質54の移動を充分に妨げることができる。
【0069】
電子デバイス58の説明は、前述の第一実施形態の電子デバイス8の説明と同様である。
【0070】
図6において、第一基板52と第二基板53との間のスペースGに備えられた電子デバイス58は、接合領域Rにおけるインサート物質54に囲まれて封止されている。
【0071】
<複合基板の製造方法>
次に、本発明の電子回路チップの製造方法の一例として、第一実施形態の複合基板10を製造する方法を図7〜9に示す。
ここで、図7〜9は、複合基板10の概略平面図(図1)におけるC−C線に沿う断面図に相当する断面図である。
【0072】
[工程A:阻害する部位1を設ける工程]
まず、第一のシリコンウエハW2を用意し、その主面W2aの所定位置にフォトリソグラフィによって第一のレジストP1を形成する(図7(a))。KOH等のアルカリ溶液によるウェットエッチング又はドライエッチングによって、深さが5μm〜10μmのキャビティ9を形成する。その後第一のレジストP1を剥離する(図7(b))。
【0073】
第一のシリコンウエハW2の主面W2aの所定位置にフォトリソグラフィによって第二のレジストP2を形成する(図7(c))。KOH等のアルカリ溶液によるウェットエッチング又はドライエッチングによって、高さhが1μm〜5μm、幅が100μm程度の凸部S1を形成する。その後、第二のレジストP2を剥離する(図7(d))。
【0074】
[工程B:インサート物質を付ける工程]
第一のシリコンウエハW2の主面W2aを空気に曝して絶縁層7となる酸化膜を形成し、その後主面2aに、スパッタリング又はCVDによって、厚さが0.1μm〜5μmのAl−Ge合金からなる金属層6を形成する(図8(a))。
【0075】
接合領域Rとすべき領域の金属層6上に第三のレジストP3を形成し(図8(b))、エッチングを行った後で、第三のレジストP3を剥離することによって、厚さが0.1μm〜5μmで、幅が150μm〜500μmとなるように、金属層6をパターニングする(図8(c)))。
【0076】
つぎに、第二のシリコンウエハW3の主面W3aに、絶縁層7、電子デバイス8、及びAlからなる金属層6が形成されたものを用意する。該金属層6は厚さが0.1μm〜5μmで、幅が150μm〜500μmとなるように、接合領域Rとすべき領域にパターニングされている(図9(a))。
【0077】
[工程C:インサート物質を介して接合する工程]
第一のシリコンウエハW2の主面W2aと、第二のシリコンウエハW3の主面3aとを向かい合わせて(図9(b))、それぞれの主面の接合領域Rとすべき領域に形成した金属層6を押し付けあって、Al−Ge合金の融点である420℃に加熱して、0.1MPa〜10MPaの荷重で、1時間プレスすることによって、前記Al−Ge合金からなる金属層6と前記Alからなる金属層6とを溶融して一体化したインサート物質4として、両シリコンウエハを接合した(図9(c))。
【0078】
ここでは、金属層6をインサート物質4に変化させる接合方法を示したが、金属層6の上にインサート物質4となるハンダ等を載せて、金属層6の融点未満の低い温度で加熱プレスすることによって、金属層6とインサート物質4とが異なる材料で、両ウエハを接合することも可能である。
【0079】
最後に、所定位置Qでダイシングすることによって、シリコンウエハから個々の複合基板1を切り出す。このようにウエハレベルで複合基板1を製造することによって、歩留まり良く製造することができる。
【0080】
ここで説明した製造方法において、レジストを用いたフォトリソグラフィとエッチングを適宜利用することによって、所望の形状の凸部や凹部からなる前記阻害する部位を、基板表面に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の複合基板および該複合基板の製造方法は、ICや電子部品の製造に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…阻害する部位、2…第一基板、2a…第一基板の主面、3…第二基板、3a…第二基板の主面、4…インサート物質、5…I/Oパッド、6…金属層、7…絶縁層、8…電子デバイス、9…キャビティ、10…複合基板、G…第一基板と第二基板との間のスペース、H…第一基板と第二基板との離間距離、h…凸部の高さ、R…接合領域、S1…凸部、
20…複合基板、21…阻害する部位、22…第一基板、22a…第一基板の主面、23…第二基板、23a…第二基板の主面、24…インサート物質、26…金属層、27…絶縁層、28…電子デバイス、29…キャビティ、S21…凸部、30…複合基板、31…阻害する部位、32…第一基板、32a…第一基板の主面、33…第二基板、33a…第二基板の主面、34…インサート物質、36…金属層、37…絶縁層、38…電子デバイス、39…キャビティ、S31…凸部、40…複合基板、41…阻害する部位、42…第一基板、42a…第一基板の主面、43…第二基板、43a…第二基板の主面、44…インサート物質、46…金属層、47…絶縁層、48…電子デバイス、49…キャビティ、C41…凹部、d…凹部の深さ、T…第一基板の厚さ、51…阻害する部位、52…第一基板、52a…第一基板の主面、53…第二基板、53a…第二基板の主面、54…インサート物質、56…金属層、57…絶縁層、58…電子デバイス、59…キャビティ、50…複合基板、C51…凹部、S51…凸部、j…凸部の高さ、W2…第一のシリコンウエハ、W2a…第一のシリコンウエハの主面、W3…第二のシリコンウエハ、W3a…第二のシリコンウエハの主面、Q…ダイシングライン、P1…第一のレジスト、P2…第二のレジスト、P3…第三のレジスト、100…従来のパッケージ構造、101…デバイス基板、101a…デバイス基板の主面、102…キャップ基板、102a…キャップ基板の主面、103…インサート物質、104…絶縁層、105…電子デバイス、106…I/Oパッド、107…貫通配線、108…再配線、109…封止ランド、X,Y…インサート物質。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と第二基板とは、互いの主面を向き合わせ、且つその間にインサート物質を介して接合されており、
前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位が設けられていることを特徴とする複合基板。
【請求項2】
前記阻害する部位は、前記主面に形成された凸部であることを特徴とする請求項1に記載の複合基板。
【請求項3】
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の内部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の複合基板。
【請求項4】
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の片側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の複合基板。
【請求項5】
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の両側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の複合基板。
【請求項6】
前記阻害する部位は、前記主面に形成された凹部であり、該凹部内に前記インサート物質が配されていることを特徴とする請求項1に記載の複合基板。
【請求項7】
前記凹部内に配された前記インサート物質の存在する領域の内部に、凸部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の複合基板。
【請求項8】
前記第一基板と前記インサート物質との間、及び/又は前記第二基板と前記インサート物質との間に、金属層が介在していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項9】
前記第一基板と前記第二基板との間のスペースで、前記第一基板の主面又は前記第二基板の主面に電子デバイスが備えられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項10】
前記電子デバイスを備えた前記スペースが、前記インサート物質に囲まれて封止されていることを特徴とする請求項9に記載の複合基板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合基板の製造方法であって、
前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位を設ける工程と、
前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質を付ける工程と、
前記第一基板の主面と前記第二基板の主面とを向かい合わせて、前記インサート物質を介して接合する工程と、
を少なくとも有する複合基板の製造方法。
【請求項1】
第一基板と第二基板とは、互いの主面を向き合わせ、且つその間にインサート物質を介して接合されており、
前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位が設けられていることを特徴とする複合基板。
【請求項2】
前記阻害する部位は、前記主面に形成された凸部であることを特徴とする請求項1に記載の複合基板。
【請求項3】
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の内部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の複合基板。
【請求項4】
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の片側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の複合基板。
【請求項5】
前記複合基板において、前記凸部を含む横断面から見て、前記凸部は、前記インサート物質の存在する領域の両側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の複合基板。
【請求項6】
前記阻害する部位は、前記主面に形成された凹部であり、該凹部内に前記インサート物質が配されていることを特徴とする請求項1に記載の複合基板。
【請求項7】
前記凹部内に配された前記インサート物質の存在する領域の内部に、凸部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の複合基板。
【請求項8】
前記第一基板と前記インサート物質との間、及び/又は前記第二基板と前記インサート物質との間に、金属層が介在していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項9】
前記第一基板と前記第二基板との間のスペースで、前記第一基板の主面又は前記第二基板の主面に電子デバイスが備えられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項10】
前記電子デバイスを備えた前記スペースが、前記インサート物質に囲まれて封止されていることを特徴とする請求項9に記載の複合基板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合基板の製造方法であって、
前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質の移動を阻害する部位を設ける工程と、
前記第一基板及び前記第二基板のうち少なくとも一方の主面に、前記インサート物質を付ける工程と、
前記第一基板の主面と前記第二基板の主面とを向かい合わせて、前記インサート物質を介して接合する工程と、
を少なくとも有する複合基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−43901(P2012−43901A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182472(P2010−182472)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
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