説明

複合材料及びその製造方法

【課題】 少量の炭素材料であっても高い導電性を有する複合材料の提供。
【解決手段】 炭素材料と、二種類以上のポリマーを含有するポリマーマトリックスと、を含む複合材料において、
前記ポリマーマトリックスが、二種類以上のポリマー相を有し、
前記炭素材料が、マトリックス中に分散していることを特徴とする、複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料とポリマーとを含む複合材料及びその製造方法に関し、特にカーボンナノチューブとエラストマーとを含む複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックやゴム等のポリマー化合物に、無機系フィラーを添加することは一般的に行われている。その中でも、炭素系フィラーは、強度や導電性の点で、従来から幅広く用いられている。炭素系フィラーには、古くからカーボンブラックが用いられ、その他には最近、炭素繊維や、特にカーボンナノチューブ(CNT)のようなナノカーボンを用いることがよく検討されている。最近これらの中でも特に、CNTが、生成物に対して高い強度や高い導電性を付与できるため、多く用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−143240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術によれば、CNTをある程度の量を加えなければ満足な導電性を得ることができず、(1)CNTの添加量の増大によってコストがかさむ、(2)ポリマーが本来有している特性が失われてしまうといった問題があった。そこで、本発明は、少量の炭素材料であっても高い導電性を有する複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
導電性を有する複合材料において、CNT等の炭素材料がある程度の濃度で存在し、例えば、炭素材料が重なり合うこと等により導電性のネットワークを形成すると推測される。そこで、本発明者は、当該導電性ネットワークを構築するための空間一定の領域に限定し、複合材料内の空間を有効利用することにより、複合材料全体量に対して比較的少ない量の炭素材料であっても高い導電性を付与できることを見出した。
【0006】
即ち、本発明(1)は、炭素材料と、二種類以上のポリマーを含有するポリマーマトリックスと、を含む複合材料において、
前記ポリマーマトリックスが、二種類以上のポリマー相を有し、
前記炭素材料が、前記ポリマーマトリックス中に分散していることを特徴とする、複合材料である。
【0007】
本発明(2)は、前記ポリマーマトリックスが、海相を形成するポリマーと、島相を形成するポリマーとを有する海島構造を有し、
前記ポリマーマトリックス中に前記炭素材料が分散していることを特徴とする、前記発明(1)の複合材料である。
【0008】
本発明(3)は、前記炭素材料が、前記海相にのみ存在していることを特徴とする、前記発明(2)の複合材料である。
【0009】
本発明(4)は、前記島相を形成するポリマーがエラストマーであることを特徴とする、前記発明(2)又は(3)の複合材料である。
【0010】
本発明(5)は、前記海相を形成するポリマーが、熱可塑性樹脂であることを特徴とする、前記発明(2)〜(4)のいずれか一項記載の複合材料である。
【0011】
本発明(6)は、炭素材料と、二種類以上のポリマーとを含有するポリマーマトリックスと、を含む複合材料を製造する方法において、
前記ポリマーが、少なくとも一種の熱可塑性樹脂を含み、
前記炭素材料と前記二種類以上のポリマーとを、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度条件で混練する溶融混練工程を有することを特徴とする、
前記炭素材料が前記ポリマーマトリックス中に分散している複合材料の製造方法である。
【0012】
本発明(7)は、前記ポリマーが、少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする、前記発明(6)の製造方法である。
【0013】
本発明(8)は、前記熱硬化性樹脂が、架橋されたエラストマーであることを特徴とする、前記発明(7)の製造方法。
【0014】
本発明(9)は、前記ポリマーが、二種類以上の熱可塑性樹脂を含み、
前記炭素材料と前記二種類以上のポリマーとを、一方の熱可塑性樹脂の融点以上であって、一方の熱可塑性樹脂の融点以下の温度条件で混練する溶融混練工程を有することを特徴とする、前記発明(6)の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明(1)によれば、少量の炭素材料であっても高い導電性を有する複合材料を得ることができる。
【0016】
本発明(2)によれば、海島構造を有するポリマーマトリックスを用いることにより、連続相を形成する海相に炭素材料が主に存在することとなる。したがって、限定された空間内に炭素材料が配されるため、高い導電性を有する材料を得ることが可能となる。
【0017】
本発明(3)によれば、海相のみに存在することで、より高い導電性を有する複合材料を得ることができる。
【0018】
本発明(4)によれば、島相がエラストマーであることにより、複合材料全体として弾性を有する複合材料を得ることが可能となる。また、炭素材料がほとんど存在しない島相部分がエラストマーであるため、炭素材料の添加による弾性への影響を最小限にとどめることができる。
【0019】
本発明(5)によれば、熱可塑性樹脂であることにより、炭素材料との混練によって容易に複合材料を製造できる。
【0020】
本発明(6)によれば、二種類以上存在するポリマーのうちのいずれかに炭素材料が偏って存在し易くなるため、高い導電性を有する複合材料を得ることができる。
【0021】
本発明(7)によれば、熱硬化性樹脂が、熱可塑性樹脂を混練可能な温度以上の高温条件であっても軟化しないため、炭素材料が熱可塑性樹脂内に分散し易くなるため、高い導電性を得ることができる。
【0022】
本発明(8)によれば、熱硬化性樹脂として架橋されたエラストマーを用いることにより高温状態であっても架橋剤成分が更に架橋し硬化するため、熱可塑樹脂に炭素材料が分散し易くなるのでより高い導電性を有する複合材料を得ることができる。
【0023】
本発明(9)によれば、融点以上となる熱可塑性樹脂に炭素材料が分散し易くなるため、高い導電性を有する複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本最良形態に係る複合材料の概念構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る複合材料は、炭素材料と、二種類以上のポリマーを含有するポリマーマトリックスとを含む。また、任意で、オイル、架橋剤等の添加剤が含まれていてもよい。そして、本発明に係る複合材料は、前記ポリマーマトリックスが、二種類以上のポリマー相を有し、前記炭素材料が、マトリックス中に分散していることを特徴とする。ここで、分散している炭素材料は、マトリックス中の一部に偏在していることが好適である。ここで、マトリックス中の一部とは、マトリックス内に形成されているポリマー相のいずれかに偏在していてもよく、ポリマー相の境界に偏在していてもよい。このような構成を有することにより、複合材料内の空間を有効に使用することが可能となるため、少量の炭素材料の添加量であっても、高い導電性を付与することが可能となる。ここで、「ポリマー相」とは、一種類又は一定組成のポリマーが存在している領域を意味する。
【0026】
本最良形態に係る複合材料は、炭素材料と、二種類以上のポリマーとを含有する複合材料において、ポリマーマトリックスが、海相を形成するポリマーと、島相を形成するポリマーとを有する海島構造を有し、炭素材料が当該ポリマーマトリックス中に分散していることを特徴とする。炭素材料は、前記海相に偏在して分散していることが好適であり、前記海相にのみ分散していることがより好適である。ここで、「海相」とは、複合材料全体に連続相を形成するポリマー相を意味する。一方、「島相」とは、複合材料中で分散相を形成するポリマー相を意味する。
【0027】
図1は、本最良形態に係る複合材料の概念構成を示した図である。本最良形態に係るポリマーは、複合材料中で連続相を形成する海相110と、分散相を形成する島相120とを有する。炭素材料は、海相中に分散している。即ち、このような構造を構成するポリマーの組合せを選択することによって、導電性が顕著に高くなるという効果を奏する。このように、顕著に導電性が高くなる推定理由として、以下の理由が挙げられる。即ち、炭素材料は複合材料中の限られた空間内に存在することにより、より炭素材料が互いに重なり合い易くなり複合材料の微視的には海相の導電性が高まる。更に、海相は複合材料中で連続相を形成するため、導電性のネットワークが複合材料全体に張り巡らされることなるため、海相のみの導電性が高いに過ぎないにもかかわらず、巨視的には複合材料全体で導電性が低く計測されると推測される。このように、複合材料中の一部の空間を使用して、導電性のネットワークを形成することにより、少ない量であっても高い導電性を発揮することができると考えられる。
【0028】
ポリマー
本最良形態に係るポリマーは、海相を形成するポリマーと、島相を形成するポリマーとを含有する。島相を形成するポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、エラストマーが好適である。ここで、エラストマーとしては、天然ゴムであっても、エチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーゴム(EPDM)、スチレンブロックコポリマーゴム(SEBS、SI、SIS、SB、SBS、SIBSなどを含む。ここで、Sはスチレン、EBはランダムエチレン+ブテン、Iはイソブチレン、及びBはブタジエンを意味する)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレン/パラ‐アルキルスチレンコポリマー、イソブチレン/パラ‐アルキルスチレンコポリマー、イソブチレン/パラ‐アルキルスチレンハロゲン化コポリマー、ポリイソブチレン、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩素化イソブチレンゴム、アクリロニトリル塩化イソブチレンゴム、ポリブタジエンゴム等の合成ゴムであってもよい。これらの中でも、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーゴム(EPDM)のようなエチレン/α‐オレフィン/ジエンターポリマーを含むエラストマーであることが好適である。
【0029】
エチレン/α‐オレフィン/ジエンターポリマーにおいて使用されるジエンモノマーとしては、炭素数30以下(好適には20以下)の整数である共役(又は非共役)ジエンであることが好適である。ここでジエンとしては、5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン(ENB)、1,4‐ヘキサジエン、1,6‐オクタジエン、5‐メチル‐1,4‐ヘキサジエン、3,7‐ジメチル‐1,6‐オクタジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンや、これらのうち二種類以上の組合せが挙げられる。ジエンモノマーの含有量は、ポリマー全体の質量に対して、1〜15質量%が好適であり、5〜11質量%がより好適である。
【0030】
エチレン/α‐オレフィン/ジエンターポリマーにおいて使用されるα‐オレフィンとしては、炭素数3〜8の整数のα‐オレフィンを使用することが好適である。これらの中でも特に、プロピレンが好適に用いられる。
【0031】
続いて、島相として使用されるエラストマーは、硬化又は架橋されていることが好適である。このように硬化又は架橋されていることによって、より容易に本形態に係る複合材料を製造することが可能となる。特に、動的に架橋されたエチレン/α‐オレフィン/ジエンターポリマーを使用することが好適である。「動的に架橋された」とは当該ポリマーが溶融混練されている条件等、高せん断の条件の下で架橋されたことを意味する。尚、ここで用いる架橋剤としては、公知の架橋剤を使用することができるが、例えば、硫黄や過酸化物等の架橋剤を用いることができる。また架橋する際に架橋剤に加えて、オキシムニトロソ化合物や、ジメタクリレート系、トリエステル系又はトリアリルイソシアヌレート系のモノマーや、ポリブタジエン等のポリマーを使用してもよい。さらに、公知の架橋促進剤を加えてもよい。
【0032】
海相を形成するポリマーとしては、上記の島相を形成するポリマーと同様のものが使用でき、特に限定されないが、炭素数2〜10の整数であるオレフィンを重合して得られるポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂であることが好適である。また、前記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、1‐ノネン、1‐デセン等のα‐オレフィンが挙げられる。
【0033】
ここで、島相を形成するポリマーのポリマー成分全体の割合は、35〜85質量%が好適であり、40〜80質量%がより好適であり、55〜75質量%がより好適である。
【0034】
炭素材料
本形態における「炭素材料」としては、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、ナノカーボンなどが挙げられる。これらの炭素材料の中でもナノカーボンが好適であり、ナノカーボンの中でもカーボンナノチューブが好適である。「ナノカーボン」とは、1000nm以下の直径を有する炭素材料を意味し、例えば、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン又はフラーレンを挙げることができる。ナノカーボンとして使用可能なカーボンナノチューブは、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)であっても、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)であってもよい。カーボンナノチューブの長さは、0.1〜100μmが好適であり、0.1〜50μmがより好適であり、0.1〜20μmが更に好適である。カーボンナノチューブの直径は、5〜200nmが好適であり、8〜160nmがより好適であり、9〜120nmが更に好適である。尚、当該チューブの長さ、直径は、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、所定範囲内に存在する100個以上の構造体について測定し、90%以上の個数が入る範囲とする。
【0035】
また、カーボンナノチューブの合成法も特に限定されず、いかなる合成方法、例えば、電気放電法(C.Journet et al., Nature 388, 756(1997)及びD.S. Bethune et al., Nature 363, 605(1993))、レーザー蒸着法(R.E.Smally et al., Science 273, 483(1996))、気相合成法(R.Andrews et al., Chem. Phys. Lett.,303,468, 1999)、熱化学気相蒸着法(W.Z.Li et al., Science, 274, 1701(1996)、Shinohara et al., Jpn.J.Appl.Phys. 37, 1257(1998))、プラズマ化学気相蒸着法(Z.F.Ren et al., Science. 282,1105(1998))等により製造されたものでもよい。尚、合成に際し金属触媒が用いられた粗生成物に関しては、酸で処理して金属触媒を除去することが好適である。酸処理に関しては、例えば、特開2001−26410記載のように、酸水溶液としては硝酸溶液又は塩酸溶液を用い、例えば、硝酸溶液は50倍の水に希釈された溶液を、塩酸溶液も50倍の水に希釈された溶液を使用する手法を挙げることができる。そして、このように酸処理した後、洗浄し、フィルタリングし、カーボンナノチューブ水溶液とする。
【0036】
本形態に係る複合材料は、カーボンナノチューブの分散液を使用してもよい。ここで、溶媒としては、水系溶媒、有機溶媒の何れであっても使用することができる。カーボンナノチューブは、当該分散液中で孤立分散していることが好適である。ここで、カーボンナノチューブが孤立分散した分散体を調製する手段としては、カーボンナノチューブを含む溶媒に孤立分散可能な分散剤を添加する方法や、カーボンナノチューブ自体に親水性の官能基を導入する化学修飾法(自己分散化)が挙げられる。ここで、孤立分散可能な分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子量のもので、カルボン酸、アミン等の官能基を複数有する高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
【0037】
本形態において用いられる水系溶媒とは、水又は水と親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、2−ブタノン(MEK)等のケトン類、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド類、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、が挙げられる。)との混合液を意味する。
【0038】
有機溶媒は、特に限定されないが、例えば、芳香族炭化水素類であるトルエン、ベンゼン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、塩化芳香族炭化水素類であるクロルベンゼン、オルト−ジクロルベンゼン、塩化脂肪族炭化水素類である塩化メチレン、クロロホルム(トリクロルメタン)、四塩化炭素(テトラクロルメタン)、1,2−ジクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2,2−テトラクロルエタン、1,2−ジクロルエチレン、トリクロルエチレン、トラクロルエチレン(パークロルエチレン)、アルコール類であるメタノール(メチルアルコール)、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール(イソアミルアルコール)、ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エステル類である酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル(酢酸アミル)、酢酸イソペンチル(酢酸イソアミル)、エーテル類であるエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ケトン類であるアセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホン、グリコールエーテル(セロソルブ)類であるエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、脂環式炭化水素類並びにその誘導体であるシクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、脂肪族炭化水素類であるノルマルヘキサン、脂肪族又は芳香族炭化水素の混合物であるガソリン、ベンジン、ゴム揮発油、大豆揮発油、ミネラルスピリット、クリーニングソルベント、コールタールナフサ(沸点範囲120〜160℃、120〜180℃、140〜200℃)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、ミネラルスピリット、脂環族炭化水素(テレビン油)、混合炭化水素(HAWS、ソルベット100、ソルベット150)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カービトール、ブチルカービトール、メトキシブタノール)及びエステルエーテル類(酢酸セロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カービトール、酢酸メトキシブチル)、シリコーンオイル類(ポリジメチルシロキサン、部分オクチル置換ポリジメチルシロキサン、部分フェニル置換ポリジメチルシロキサン)、ハロゲン化炭化水素(クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、ブロモベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン)、フッ素化物類、その他であるクレゾール、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。またこれらを2種以上混合してもよい。これらの溶剤の中でも、分散性と除去・回収の容易性から、メチルエチルケトン、トルエンが好適である。
【0039】
尚、本形態に係る分散液中に含まれるナノカーボンの濃度は、0.2〜50wt%が好適であり、0.5〜20wt%がより好適であり、1〜10wt%が更に好適である。また、分散剤のナノカーボンに対する重量比は、0.01〜100が好適であり、0.05〜20がより好適であり、0.1〜10が更に好適である。
【0040】
(その他、任意成分)
本形態に係る複合材料には、任意成分として、ナノカーボン類以外のフィラー、例えばガラス繊維、金属系フィラー、その他無機・有機系各種フィラー類等を含有することが出来る。また樹脂・ゴム工業で一般的に用いられている各種添加剤を用いることが出来る。例えば、補強剤、酸化・老化防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0041】
(複合材料の組成)
ここで、本形態に係る複合材料の炭素材料の濃度は、固形分中0.1〜50wt%が好適であり、0.2〜40wt%がより好適であり、0.5〜30wt%であることが更に好適である。
【0042】
(複合材料の性質)
本形態に係る複合材料の体積抵抗値の上限値は、用途によって適宜選択されるが、通常は1×1010Ω・cm以下が好適であり、1×10Ω・cm以下がより好適であり、1×10Ω・cm以下が更に好適である。下限値については特に制限はないが、ナノカーボンの添加量とポリマー物性、コスト等との兼ね合いから、通常は1×10−2Ω・cm、好ましくは10−1Ω・cmである。特に、炭素材料の複合材料における濃度が、固形分中、0.1〜10wt%といった特に低濃度であっても前記のような高い伝導性を有する点で、本発明における複合材料は優れている。
【0043】
(複合材料の用途)
本形態に係る複合材料の用途は、特に限定されないが、例えば、タイヤ等各種ゴム製品等に使用される。
【0044】
(製造方法)
本形態に係る複合材料の製造方法は、炭素材料と熱可塑性樹脂を含む二種類以上のポリマーとを、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度条件で混練する溶融混練工程を有する。ここで、ポリマーとして少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含むことが好適であり、熱硬化性樹脂として架橋されたエラストマーを用いることが更に好適である。ポリマーとして、二種類の熱可塑性樹脂を用いる場合、溶融混練は、他方のポリマーの融点以下であることが好適である。すなわち、二種類以上のポリマーのうち、一種以上のポリマーが軟化し、一種類以上のポリマーが固体状態である条件の下で混練することにより、軟化しているポリマー内に炭素材料が練りこまれるため、複合材料中の空間を有効利用することができるので、少ない炭素材料の量であっても、高い導電性を有する複合材料を得ることが可能となる。ここで、融点とは、示差走査熱量計を用いて、室温より20℃/分の割合で280℃まで昇温した際に観測される吸熱ピークを融点{Tm(℃)}とした。当該ピーク値が複数ある場合は最もピーク面積が大きい融解ピークを採用する。当該測定を5回繰り返し、その内の最大値と最小値の2点を省いた残り3点の平均値をTm(℃)とする。
尚、上記の任意成分もまた、上記の溶融混練工程において添加して混練することで複合材料中に適用することが可能となる。
【実施例】
【0045】
(海島構造を有する樹脂を用いた例;実施例1〜4、比較例1)
カーボンナノチューブ(CNT,昭和電工社製VGCF−S、チューブ径100nm)を、下記の表1記載の各種樹脂{エクソンモービル社製サントプレーン(エチレン/プロピレン/ジエンモノマーゴム(EPDM)と、ポリプロピレン(PP)とのポリマーブレンド)、又は、EPDM単体}をラボプラストミルによって190℃で混練した。その後、混練した組成物を200℃にてプレスして実施例1〜4及び比較例1に係る試験片を得た。尚、ここで用いたサントプレーンはポリプロピレン(PP)(海相)に架橋されたEPDM(島相)が存在している海島構造を有する樹脂である。
当該試験片を三菱化学製ロレスタにより体積抵抗値(Ω・cm)を測定した。
【0046】
【表1】

【0047】
結果、海島構造を有する樹脂を用いた場合、EPDM単独の樹脂にCNTを混練した場合と比較すると、同等のCNT含有率であっても、顕著に高い導電性を有することがわかった。
【符号の説明】
【0048】
110:海相
120:島相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料と、二種類以上のポリマーを含有するポリマーマトリックスと、を含む複合材料において、
前記ポリマーマトリックスが、二種類以上のポリマー相を有し、
前記炭素材料が、前記ポリマーマトリックス中に分散していることを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスが、海相を形成するポリマーと、島相を形成するポリマーとを有する海島構造を有し、
前記ポリマーマトリックス中に前記炭素材料が分散していることを特徴とする、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記炭素材料が、前記海相にのみ存在していることを特徴とする、請求項2記載の複合材料。
【請求項4】
前記島相を形成するポリマーが、エラストマーであることを特徴とする、請求項2又は3記載の複合材料。
【請求項5】
前記海相を形成するポリマーが、熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項記載の複合材料。
【請求項6】
炭素材料と、二種類以上のポリマーとを含有するポリマーマトリックスと、を含む複合材料を製造する方法において、
前記ポリマーが、少なくとも一種の熱可塑性樹脂を含み、
前記炭素材料と前記二種類以上のポリマーとを、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度条件で混練する溶融混練工程を有することを特徴とする、
前記炭素材料が前記ポリマーマトリックス中に分散している複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記ポリマーが、少なくとも一種の熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂が、架橋されたエラストマーであることを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、二種類以上の熱可塑性樹脂を含み、
前記炭素材料と前記二種類以上のポリマーとを、一方の熱可塑性樹脂の融点以上であって、一方の熱可塑性樹脂の融点以下の温度条件で混練する溶融混練工程を有することを特徴とする、請求項6記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−162754(P2011−162754A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30672(P2010−30672)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】