説明

複合材料

【課題】 受動素子を直接、プリント配線板の表面あるいは内部に形成するために有用であり、高誘電率、低誘電正接および高体積抵抗率を呈する複合材料を提供すること。
【解決手段】 金属粒子1と前記粒子1を被覆する金属酸化物からなる被覆層2とを備える無機フィラー10が有機樹脂マトリクス3内に分散してなる複合材料。好ましくは、有機樹脂マトリクス3内には無機フィラー10とともに金属酸化物粒子20が分散している。被覆層2および金属酸化物粒子20の材質は好ましくはチタン酸バリウムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機樹脂マトリクス内に無機フィラーが分散されてなる複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化、軽量化、小型化、薄型化などを考慮して、コンデンサや抵抗などといった受動素子を多層回路基板の内部に形成することが提案されている。但し、セラミック基板で行われているような、金属や絶縁体のペーストを用い塗布焼結する方法は、特に耐熱的に劣る有機基板上にはそのまま適用できない。
【0003】
受動素子を有機基板の表面や内部に形成する方法としては、有機高分子と高誘電率フィラとの混合物を塗布する方法(非特許文献1、2)、チタン酸バリウム等の無機フィラを高充填化する技術(特許文献1)、低温で成膜可能な電子サイクロトロン共鳴化学気相生長法(ECR−CVD)を用いる方法(非特許文献3)等が提案されている。また、特許文献2には、金属粉を絶縁処理および表面処理して得られる無機フィラを有機樹脂に分散してなる高誘電率複合材料が開示されている。特許文献2における絶縁処理はリン酸塩やクロム酸塩などを用いた化成処理によってなされる。
【特許文献1】特開平6−172618号公報
【特許文献2】特開2002−334612号公報
【非特許文献1】P. Chanel ほか、第46回Electric Componets and Technology Conference, 第125−132頁,1996年
【非特許文献2】Y. Rao ほか、2000 Electric Componets and Technology Conference,第615−618頁,2000年
【非特許文献3】松井輝仁ほか、サーキットテクノロジ,第9巻,第497−502頁,1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機樹脂との複合材として比誘電率を高めるには無機微粒子を高充填しなくてはならない。しかし、樹脂中に上記無機微粒子を高充填化すると、無機微粒子と樹脂との相溶性が悪いため、樹脂硬化時に空隙が発生しやすく、高い信頼性が得られにくい。金属フィラーを用いる場合には、金属フィラーを確実に絶縁化する必要がある。さもなくば不所望な導通が生じてしまう。また、ECR−CVDを用いる方法は、特殊な装置が必要であること、バッチ処理で安価に誘電体薄膜を形成できないこと、形状の複雑な誘電体薄膜の形成が困難であることなどに問題があった。エポキシ樹脂等にチタン酸バリウムなどの高誘電率を呈する粒子のみを分散させたものは、高周波領域において誘電正接が大きく、言い換えれば、エネルギー損失が大きくなりやすい。特許文献2では無機塩を用いた化成処理という煩雑な処理を要する。
【0005】
本発明の目的は、受動素子を直接、プリント配線板の表面あるいは内部に形成するために有用であり、高誘電率、低誘電正接(tanδ)、高抵抗を呈する複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は以下のとおりである。
(1)金属粒子と前記粒子を被覆する金属酸化物からなる被覆層とを備える無機フィラーが有機樹脂マトリクス内に分散してなる複合材料。
(2)被覆層の金属酸化物がチタンとアルカリ土類金属との複合酸化物である(1)記載の複合材料。
(3)アルカリ土類金属がバリウムである(2)記載の複合材料。
(4)金属粒子がAl、Si、Mg、Cr、Mo、Cu、Fe、Zn、SnおよびTiからなる群から選ばれる(1)〜(3)のいずれかに記載の複合材料。
(5)無機フィラーの平均粒径が10μm以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の複合材料。
(6)無機フィラーの平均粒径が1μm以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の複合材料。
(7)さらに、金属酸化物粒子が上記有機樹脂マトリクス内に分散してなる(1)〜(6)のいずれかに記載の複合材料。
(8)金属酸化物粒子がチタンとアルカリ土類金属との複合酸化物粒子である(7)記載の複合材料。
(9)アルカリ土類金属がバリウムである(8)記載の複合材料。
(10)金属酸化物粒子の平均粒径が10μm以下である(1)〜(9)のいずれかに記載の複合材料。
(11)金属酸化物粒子の平均粒径が1μm以下である(1)〜(9)のいずれかに記載の複合材料。
(12)1MHzの周波数における比誘電率が10以上である(1)〜(11)のいずれかに記載の複合材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合材料は、無機フィラーの各々の粒子が絶縁された金属粒子を含んでいるため、金属粒子の自己分極複合効果に起因して、高周波における表皮効果およびエネルギー損失が小さい。また、無機フィラーが有機樹脂マトリクス中で良好な分散性を示すため、この複合材料を受動素子としてプリント配線板の表面あるいは内部に形成した場合に高周波に対しても安定して高い比誘電率を呈することが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によれば、複合材料は、有機樹脂マトリクスと、このマトリクス内に分散している無機フィラーとを含有する。無機フィラーを分散させている分散媒体の材料が後述する有機樹脂であるため、本明細書では、該有機樹脂からなる分散媒体を有機樹脂マトリクスと呼ぶ。図1は、本発明の複合材料の模式的な断面図である。有機樹脂マトリクス3内に分散している無機フィラー10は、金属粒子1とそれを被覆する被覆層2とを備える。被覆層2は金属酸化物からなる。表皮効果を抑制する点からは、無機フィラー10の平均粒径は小さいほうがよく、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。無機フィラー10の平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、入手の容易性、分散させ易さを考慮すると、好ましくは0.1μm以上である。
【0009】
本発明では、無機フィラー10の平均粒径は、所謂、一次粒径を意味し、レーザー回折・散乱法(いわゆるマイクロトラック法)で測定される。平均粒径は、前記測定により算出されるD50の値である。具体的な測定では、日機装社製のmicrotrac UPA MODEL9340 を用いる。
【0010】
平均粒径が10μm以下の無機フィラーを得るためには、原材料として粒径の小さな金属粒子1を用いるなどすればよい。本発明の好適態様では被覆層2の厚さは十分に薄く、原材料の金属粒子1の大きさは無機フィラーの大きさと同程度である場合がある。本発明で用いることができる無機フィラーは公知であり、例えば、電磁波シールド用材料として市販されているものを用いることができる。
【0011】
本発明によれば、無機フィラー10の金属粒子1は入手が容易であることから、好ましくはAl、Si、Mg、Cr、Mo、Cu、Fe、Zn、SnおよびTiからなる群から選ばれ、中でも、該粒子表面に金属酸化物層を形成させ易く高周波領域で表皮効果によるエネルギー損失が小さいことから、より好ましくはAl、Cr、Cu、FeおよびZnからなる群から選ばれる。
【0012】
無機フィラー10は、金属粒子1を被覆する被覆層2を備えており、コア/シェル構造を有していると言い換えることもできる。被覆層2は金属酸化物からなり、それによって無機フィラー10の絶縁性を高めている。比誘電率を高める観点からは被覆層2は、好ましくはチタンとアルカリ土類金属との複合酸化物であり、より好ましくはアルカリ土類金属がバリウムである。言い換えれば、被覆層2はより好ましくはチタン酸バリウムからなる。
【0013】
被覆層2が金属粒子1を被覆する形態は特に限定はなく、結果的に無機フィラー10の中心部分を金属粒子1が占めてその周りを囲むように金属酸化物が存在していればよく、金属酸化物は複合材料が全体として絶縁を維持できる程度に密な状態であればよい。好ましくは、被覆層2は、金属粒子1の周りを隙間なく覆う金属酸化物からなる。被覆層2の厚さは電子顕微鏡などで測定することができる。被覆層2の厚さは、好ましくは1〜1000nmであり、より好ましくは10〜100nmである。被覆層2の厚さが前記範囲内であれば、優れた絶縁性および分散性を発揮する。
【0014】
金属粒子1への金属酸化物の被覆は、微粒子の表面処理に関する公知技術を適宜援用して行うことができ、そのような公知技術として、例えば、アルコキシド法、ゾル−ゲル法などが挙げられる。また、上述したように、金属酸化物からなる被覆層2が形成された無機フィラーは市販されており該市販品をそのまま用いてもよい。
【0015】
本発明によれば、有機樹脂マトリクス3の材料としては、回路基板など電子部品の分野で通常用いられる有機樹脂などを適宜用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂といった熱硬化性樹脂;ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフォンといった熱可塑性樹脂;あるいはこれらの混合物;などが挙げられる。場合によってはメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブといった溶媒に有機樹脂を分散させてペースト状にして、スクリーン印刷やスピンコートなどを適用してもよい。好ましくは、有機樹脂マトリクスは、硬化したエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等である。
【0016】
図2は、本発明の好適な複合材料の模式的な断面図である。本発明の好適態様によれば、有機樹脂マトリクス3には、上述した無機フィラー10とともに、金属酸化物粒子20が分散している。金属酸化物粒子20と無機フィラー10とを両方分散させることで、本発明の複合材料の比誘電率がさらに高くなることが期待される。ここで、金属酸化物粒子は粒子全体が金属酸化物からなる粒子である。
【0017】
複合材料の比誘電率を高めることを考慮すると、金属酸化物粒子20は、好ましくはチタンとアルカリ土類金属との複合酸化物粒子であり、より好ましくはアルカリ土類金属がバリウムである。言い換えれば、金属酸化物粒子20の好適態様としてチタン酸バリウム粒子が挙げられる。
【0018】
シート内への均一分散性、シートの曲げ加工性や各種電気特性のシート内均質化の観点からは、金属酸化物粒子20の平均粒径は小さいほうがよく、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。金属酸化物粒子20の平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、入手の容易性、分散させ易さを考慮すると、好ましくは0.1μm以上である。
【0019】
本発明では、金属酸化物粒子20の平均粒径は、所謂、一次粒径を意味し、レーザー回折・散乱法(いわゆるマイクロトラック法)で測定される。平均粒径は、前記測定により算出されるD50の値である。具体的な測定では、日機装社製のmicrotrac UPA MODEL9340 を用いる。
【0020】
このような微粒子の形態の金属酸化物粒子20の製法は公知であり、また、数多く市販されていて、本発明ではそういった製法を適宜取り入れて金属酸化物粒子を製造してもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。例えば、チタン酸バリウムの微粒子を得る方法としては、アルコキシド法、蓚酸塩法、固相法、水熱法、2段焼成法などが公知であり、これら各製法により得られる粒子を特に限定なく用いることができる。
【0021】
本発明によれば、有機マトリクス100重量部に対して含まれる無機フィラーと金属酸化物粒子の合計量は特に限定ない。また、複合材料全体に占める無機フィラーと金属酸化物粒子の合計量の割合は、好ましくは5〜60vol%であり、より好ましくは10〜45vol%である。上記範囲内であれば、均一分散性やシートの曲げ加工性に優れる点で好ましい。有機マトリクス内に無機フィラーを分散させる手段は特に限定はなく、公知の分散手段を適宜用いることができる。
【0022】
本発明の複合材料が金属酸化物粒子を含まず、有機マトリクスと無機フィラーを含む場合には、金属酸化物粒子の量をゼロとみなして上述の好適範囲によって無機フィラーの好適量を求めることができる。
【0023】
本発明の複合材料が金属酸化物粒子および無機フィラーを含む場合には、無機フィラー100体積部に対する金属酸化物粒子の量は、好ましくは10〜200体積部であり、より好ましくは20〜120体積部である。
【0024】
上述した本発明の複合材料は高周波領域においても高誘電率、低誘電損失を呈する。具体的には、1MHzでの測定において、比誘電率が好ましくは10以上、より好ましくは20〜50である。また、この周波数での測定において、誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下である。また、本発明の複合材料の体積抵抗率は、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明するが、これらの例は本発明を何ら限定するものではない。
【0026】
(実施例1)
本実施例では、チタン酸バリウムからなる被覆層(10〜50nm厚さ)で覆われた銅紛(三井金属鉱業(株)製、品番1020Y−BTO)を無機フィラーとしてそのまま用いた。1020Y−BTOの平均粒径(マイクロトラックにより測定されるD50値)は0.30μmであった。
【0027】
無機フィラーを分散するために、エポキシ樹脂であるジシクロペンタジエン型のHP−7200(大日本インキ化学工業(株)製)と、エポキシ樹脂の硬化剤であるX1−225−L(三井化学(株)製)と、硬化促進剤であるトリフェニルホスフィン(和光純薬工業(株)製)とを用いた。無機フィラーの分散処理において、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を用いた。尚、界面活性剤などの分散剤は使用しなかった。
【0028】
以下の要領で複合材料を製造した。
(1)配合割合
固形分に占める無機フィラーの割合:40vol%
固形分に占めるエポキシ樹脂の割合:60vol%
塗工前の分散液に占める溶媒(MEK)の割合:25重量%
尚、「固形分」とは、後述の熱処理において散逸せずに複合材料に残る成分をいう。
(2)配合と分散方法
無機フィラーとエポキシ樹脂とをまず混合し、溶媒(MEK)を加えて粘度を調整した後に、ディスパー攪拌翼装置(1500rpm)で30分間攪拌した。その後、室温で真空脱泡処理に供した。このようにして分散液を得た。分散液の一部を取り出して無機フィラーの粒度分布を測定して、D50が0.60μmであるという結果を得た。
(3)ロールコータ((株)ヒラノテクシード製)を用いて、2枚の1oz銅箔の上に、上記(2)で得た分散液を塗布した。塗布量は、溶媒を除去した後の塗布厚が約50μmになるように調節した。分散液を塗布した2枚の銅箔を120℃にて5分間放置して、分散液中の溶媒を除去した。2枚の銅箔を、分散液の塗布面どうしが内側で接触するように重ね合わせて、約5MPaの圧力をかけながら、150℃にて30分間、次いで、200℃にて2時間の熱圧着に供することでエポキシ樹脂を硬化させた。その後、2つの銅箔のうちの1つだけを湿式エッチングで除去することで、エポキシ樹脂からなるマトリクス内に無機フィラーが分散した複合材料が銅箔上に積層している評価用シートを得た。
【0029】
(実施例2)
本実施例では、無機フィラーとして実施例1と同様に三井金属鉱業(株)製、品番1020Y−BTOをそのまま用いた。さらに、金属酸化物粒子として平均粒径0.30μmのチタン酸バリウム微粒子(堺化学工業(株)製、品番BT−03)をそのまま用いた。無機フィラーおよび金属酸化物粒子を分散するために用いるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および溶媒は実施例1と同様のものを用いた。尚、界面活性剤などの分散剤は使用しなかった。
【0030】
上述の材料を用いて、実施例1と同様の要領で、複合材料が銅箔上に積層している評価用シートを製造した。但し、配合割合は以下のようにした。また、実施例1では、無機フィラーとエポキシ樹脂とをまず混合したが、実施例2では、無機フィラー、チタン酸バリウム微粒子およびエポキシ樹脂を混合して、その後の処理に供した。製造過程で得られる分散液の一部を取り出して粒子(無機フィラーと金属酸化物粒子の混合物)の粒度分布を測定して、D50が0.60μmであるという結果を得た。
【0031】
配合割合;
固形分に占める無機フィラーの割合:20vol%
固形分に占める金属酸化物粒子の割合:20vol%
固形分に占めるエポキシ樹脂の割合:60vol%
塗工前の分散液に占める溶媒(MEK)の割合:25重量%
【0032】
(比較例1)
本比較例では、実施例1で用いた無機フィラー(1020Y−BTO)を用いず、その代わりに、チタン酸バリウムの被覆層が無い0.30μmの銅粉(三井金属鉱業(株)製、品番1020Y)をそのまま用いた。この銅粉を分散するために用いるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および溶媒は実施例1と同様のものを用いた。尚、界面活性剤などの分散剤は使用しなかった。
【0033】
無機フィラー(1020Y−BTO)の代わりに銅粉(1020Y)を用いたことの他は実施例1と同様の要領で、複合材料が銅箔上に積層している評価用シートを製造した。製造過程で得られる分散液の一部を取り出して銅粉の粒度分布を測定して、D50が100μmであるという結果を得た。
【0034】
(比較例2)
本比較例では、実施例2で用いた無機フィラー(1020Y−BTO)を用いず、その代わりに、チタン酸バリウムの被覆層が無い0.30μmの銅粉(三井金属鉱業(株)製、品番1020Y)をそのまま用いた。チタン酸バリウム微粒子として、実施例2と同様に、平均粒径が0.30μmである堺化学工業(株)製、BT−03をそのまま用いた。この銅粉とチタン酸バリウム微粒子とを分散するために用いるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および溶媒は実施例2と同様のものを用いた。尚、界面活性剤などの分散剤は使用しなかった。
【0035】
無機フィラー(1020Y−BTO)の代わりに銅粉(1020Y)を用いたことの他は実施例2と同様の要領で、複合材料が銅箔上に積層している評価用シートを製造した。製造過程で得られる分散液の一部を取り出して粒子(無機フィラーと金属酸化物粒子の混合物)の粒度分布を測定して、D50が50μmであるという結果を得た。
【0036】
(電気的評価)
横河・ヒューレット・パッカード(株)製、インピーダンス/ゲイン・フェーズ・アナライザー、型式HP4194Aおよび誘電特性測定用専用電極、型式HP16451Bを用いて、各複合材料の周波数1MHzにおける比誘電率および誘電正接を測定した。図3に測定法を模式的に示す。銅箔41上に複合材料30を形成してなる各評価用シートの、複合材料30の上に、金を蒸着することによってφ12の薄膜主電極43およびφ14の薄膜ガード電極42を形成した。これを、対電極51上置き、主電極53を薄膜主電極43に接触し、ガード電極52を薄膜ガード電極42に接触させて、測定を行った。また、東亜ディーケーケー(株)製のデジタル絶縁計、型式DSM−8103および抵抗測定用専用電極、型式SME−8311を用いて各複合材料の体積抵抗率(ρv)を求めた。これらの測定結果を表1にまとめる。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から明らかなように、各実施例の複合材料は高い比誘電率、低い誘電正接および高い体積抵抗率を呈する。一方、各比較例の複合材料は、絶縁性が低すぎるため、誘電体としての特性を評価することすらできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の複合材料の模式断面図である。
【図2】本発明の好適な複合材料の模式断面図である。
【図3】複合材料の比誘電率および誘電正接の測定法を模式的に示す。
【符号の説明】
【0040】
1 金属粒子
2 被覆層
3 有機樹脂マトリクス
10 無機フィラー
20 金属酸化物粒子
30 複合材料
41 銅箔
42 薄膜ガード電極
43 薄膜主電極
51 対電極
52 ガード電極
53 主電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と前記粒子を被覆する金属酸化物からなる被覆層とを備える無機フィラーが有機樹脂マトリクス内に分散してなる複合材料。
【請求項2】
被覆層の金属酸化物がチタンとアルカリ土類金属との複合酸化物である請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
アルカリ土類金属がバリウムである請求項2記載の複合材料。
【請求項4】
金属粒子がAl、Si、Mg、Cr、Mo、Cu、Fe、Zn、SnおよびTiからなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
無機フィラーの平均粒径が10μm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
無機フィラーの平均粒径が1μm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
さらに、金属酸化物粒子が上記有機樹脂マトリクス内に分散してなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
金属酸化物粒子がチタンとアルカリ土類金属との複合酸化物粒子である請求項7記載の複合材料。
【請求項9】
アルカリ土類金属がバリウムである請求項8記載の複合材料。
【請求項10】
金属酸化物粒子の平均粒径が10μm以下である請求項7〜9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
金属酸化物粒子の平均粒径が1μm以下である請求項7〜9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
1MHzの周波数における比誘電率が10以上である請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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